JP5386066B2 - 炭素質ルツボの保護方法、単結晶引き上げ装置、及び炭素質ルツボの保護用シート - Google Patents
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Description
上記の如く、保護シートが、前記ルツボ間の敷設において一体に組み合わさるような形状とした2以上からなる保護シート片を炭素質ルツボの内面に敷設することにより、一枚の保護シート自体を炭素質ルツボの内面に敷設するのに比べて、格段に作業性が向上し、作業時間を大幅に低減することができる。特に、大型ルツボの場合に、一枚の保護シートを使用すると、かなりの大きさとなり、取り扱いが困難となり、しかも、破損しないよう炭素質ルツボの内面に沿って敷設するために、敷設作業に長時間を要する。これに対して、複数に分割した保護シート片を使用すると、取り扱いが容易であり、作業時間を短縮化できる。加えて、曲面形状のルツボ内面に沿って敷設することが容易な寸法及び形状に裁断分割化すれば、形状追従性が良好となり、ルツボ内面を隙間なく覆うことが可能となる。更に、複数に分割することにより、シートの運搬時に適当な数に区分けして運搬することができ、一枚物のシートを運搬する場合に比べて運搬が容易となる。
膨張黒鉛シートは自己潤滑性が高く、そのため、炭素質ルツボの内面に保護シート片を敷設しても、滑りが生じ位置ずれが生じる場合がある。そこで、保護シート片が、隣接する保護シート片同士を固定する固定手段を備えていれば、位置ずれを生じにくくすることができるので、ルツボ内面のSiC化しやすい箇所を確実に覆うことができる。
上記の如く、隣接する保護シート片同士が略隙間なく敷設されることにより、炭素質ルツボ内面のSiC化しやすい箇所を完全に覆うことができるので、炭素質ルツボ内面のSiC化の抑制を向上できる。また、隣接する保護シート片同士が重なり代が少なく敷設されることにより、炭素質ルツボ全体の温度分布を均一にすることができ、炭素質ルツボの割れを防止できる。なぜなら、隣接する保護シート片同士が重なって敷設されると、その部分で温度ムラが生じるので、炭素質ルツボ全体が均一な温度分布にならず、これに起因して炭素質ルツボが熱膨張する際に割れの原因となるからである。
炭素質ルツボが黒鉛ルツボの場合、複数に分割されたルツボ部分を各々突合せてルツボとしている。そのため、これら突き合わせ部分(所謂分割面)からSiOガスが通過するため、これら突き合わせ部分が選択的にSiC化することが知られている。そこで、短冊状に複数に分割化し、この分割化された保護シート片を突き合わせ部分に沿って敷設することにより、黒鉛ルツボの破損を防止して寿命を長く保たせることができる。
C/Cルツボの場合は、ルツボ内面の全部からSiOガスが通過するため、保護シート片を炭素質ルツボの内面の全部を覆うように敷設することにより、C/Cルツボの破損を防止して寿命を長く保たせることができる。
さらに、本発明においては上記炭素質ルツボの保護方法を用いた単結晶引き上げ装置を要旨とする。この方法をシリコン単結晶等の引き上げ装置に適用することによって、均一な加熱をすることができ、結晶欠陥の少ないシリコン単結晶を製造することができる。
本発明は図1に示す単結晶引き上げ装置におけるルツボ概略構成を先ず説明し、次いで本発明に係る保護シートを用いた炭素質ルツボの内面を保護する方法について説明する。
図1は単結晶引き上げ装置の要部断面図、図2はルツボの拡大断面図である。
図1に示すように、CZ装置は、石英ルツボ1を支持する炭素質ルツボ2、ヒーター3、アッパーリング4、インナーシールド5等によって構成されている。このように、CZ装置では、石英ルツボ1の周囲に配置されたヒーター3で石英ルツボ1内の原料を高温に加熱して原料融液6とし、この原料融液6を引き上げながら単結晶7を得る。
炭素質ルツボ2には、黒鉛材からなる黒鉛ルツボと、炭素繊維強化炭素複合材(C/C材)で形成されているルツボ(以下、C/C材ルツボと称する。)とがある。黒鉛ルツボの場合は、持ち運び等の利便性から、例えば2分割や3分割に分割されたルツボ部分を各々突合せてルツボとしている。そのため、これら突き合わせ部分(所謂分割面)からSiOガスが通過するため、これら突き合わせ部分が選択的にSiC化することが知られている。そこで、図3に示すように、短冊状に形成した1枚の保護シートを予め複数に分割化し、この分割化された保護シート片10Aをそれぞれ突き合わせ部分11に沿って敷設する。図3では2分割した例が示されているが、3分割、4分割等に分割してもよい。また、等分割に限らず、大小含めたサイズに分割してもよい。
上記保護シート片は、以下の方法で作製される。1枚物の膨張黒鉛シートは膨張化黒鉛から製造されたシート状の材料であり、その代表例について説明すると以下の通りである。先ず、天然又は合成燐片状黒鉛やキッシュ黒鉛等を酸化剤で処理して、黒鉛粒子に層間化合物を形成せしめ、次いでこれを高温に加熱好ましくは急激に高温にさらして急膨張せしめる。この処理により黒鉛粒子の層間化合物のガス圧により、層平面直角方向に黒鉛粒子は拡大され通常100〜250倍程度に体積が急膨張するものである。この際使用される酸化剤としては層間化合物を形成せしめ得るものが使用され、例えば硫酸と硝酸との混酸、硫酸に硝酸ナトリウムや過マンガン酸カリ等の酸化剤を混合したものが例示できる。
次いで、不純物を灰分50ppm以下、好ましくは30ppm以下に除去した後、この膨張化黒鉛を適宜な手段、例えば圧縮又はロール成形によってシート状に施して、膨張黒鉛シートを作製する。
次いで、上記方法で製造された膨張黒鉛シートを、上記敷設態様に応じて所定寸法及び形状に裁断分割化して保護シート片を作製する。
上記実施の形態と同様の黒鉛ルツボ(2分割された黒鉛ルツボ)であって、大きさが22インチであるものに、上記実施の形態と同様の方法で作製した2分割化された保護シート片(以下、本発明シート片A1と称する)を黒鉛ルツボの突合せ部に沿って敷設して、CZ装置の実機試験を50回行った。そのときの、保護シート片を黒鉛ルツボに敷設する時間(作業時間)、保護シート片が破損して使用不可となった割合(不良率)、及び、黒鉛ルツボの耐久性を測定したので、その結果を表1に示す。
黒鉛ルツボの大きさが40インチであること、及び、それに対応したサイズの2分割化された保護シート片(以下、本発明シート片A2と称する)を用いたことの他は、実施例1と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表1に示す。
2分割されていない1枚物の短冊状の保護シート(以下、比較シートZ1と称する)を用いたことを除いて、実施例1と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表1に示す。
黒鉛ルツボの大きさが40インチであること、及び、それに対応したサイズの1枚物の短冊状の保護シート(以下、比較シートZ2と称する)を用いたことの他は、実施例1と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表1に示す。
上記実施の形態と同様のC/Cルツボであって、大きさが22インチであるものに、上記実施の形態と同様に分割化された保護シート片(以下、本発明シート片B1と称する)をC/Cルツボ内面を全部覆うように敷設して、CZ装置の実機試験を50回行った。そのときの、保護シート片をC/Cルツボに敷設する時間(作業時間)、保護シート片が破損して使用不可となった割合(不良率)、及び、C/Cルツボの耐久性を測定したので、その結果を表2に示す。
C/Cルツボの大きさが40インチであること、及び、それに対応したサイズの分割化された保護シート片(以下、本発明シート片B2と称する)を用いたことの他は、実施例3と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表2に示す。
2分割されていない1枚物の保護シート(以下、比較シートY1と称する)を用いたことの他は、実施例3と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表2に示す。
C/Cルツボの大きさが40インチであること、及び、それに対応したサイズの1枚物の保護シート(以下、比較シートY2と称する)を用いたことの他は、実施例3と同様の条件で実機試験を行い、作業時間、不良率及び耐久性を測定したので、その結果を表1に示す。
表1及び表2より明らかなように、耐久性については、総合的に判断すると、本発明シート片A1,A2,B1,B2が比較シートZ1,Z2,Y1,Y2より良好であることが分かる。作業時間及び不良率については、本発明シート片A1,A2,B1,B2が比較シートZ1,Z2,Y1,Y2より格段に良好であることが分かる。
特に、22インチのルツボと40インチのルツボの不良率を比較すると、比較シートZ1,Z2,Y1,Y2の場合、ルツボサイズが大きくなると不良率が格段に大きくなることが認められる。これに対して、本発明シート片A1,A2,B1,B2の場合、ルツボサイズが大きくなっても、不良率が0%のままであることが認められる。このことから、本発明シート片を用いる保護方法は、ルツボの大型化に適していると考えられる。
3:ヒーター 4:アッパーリング
5:インナーシールド 6:原料融液
7:単結晶 10A,10B:保護シート片
11:突き合わせ部分
Claims (6)
- 石英ルツボと該石英ルツボが載置される炭素質ルツボとの間に、膨張黒鉛材料からなる保護シートを介在させ、
前記保護シートが、前記ルツボ間の敷設において一体に組み合わさるような形状とした2以上からなる保護シート片を炭素質ルツボの内面に敷設する炭素質ルツボの保護方法であって、
前記保護シート片は、炭素質ルツボの内面に敷設された状態において隣接する保護シート片同士を固定する固定手段を備え、前記固定手段は隣接するシート自体に設けられたものであり、
前記固定手段は、隣接する保護シート片のうちの一方の保護シート片自体の端部に凸部を設け、他方の保護シート片の端部に前記凸部に嵌合する凹部を設け、凸部を凹部に差し込むようにする構成か、又は一方の保護シート片自体の端部に切れ目を入れておき、この切れ目に他方の保護シート片自体の端部を差し込むようにする構成である炭素質ルツボの保護方法。 - 前記保護シート片は、球面状の底部と内周部とに分割されると共に、更に内周部が複数に分割され、隣接する底部自体と内周部自体とには、底部と内周部とを固定する固定手段が各々自体に備えられている請求項1に記載の炭素質ルツボの保護方法。
- 前記炭素質ルツボは黒鉛材料からなり且つ複数に分割されたルツボ部分を各々突合せてルツボとしたものであり、前記保護シート片が少なくとも前記突合せ部を覆うように炭素質ルツボの内面に敷設されている請求項1又は2に記載の炭素質ルツボの保護方法。
- 前記炭素質ルツボは炭素繊維強化炭素複合材からなるものであり、前記保護シート片が炭素質ルツボの内面の全部を覆うように敷設されている請求項1乃至3のいずれかに記載の炭素質ルツボの保護方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の炭素質ルツボの保護方法を使用した単結晶引き上げ装置。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の炭素質ルツボの保護方法に用いられる炭素質ルツボの保護用シート。
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