JP5384374B2 - ゴム−スチールコード複合体の製造方法 - Google Patents

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本発明はゴム−スチールコード複合体の製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、略楕円形の断面形状を有する扁平スチールコードを用いたゴム−スチールコード複合体の製造方法に関する。
従来より、タイヤ等のゴム物品の補強用途に使用されるスチールコードは、円形断面を有するものが一般的であった。これに対し、近年、補強材のゴムゲージの薄肉化や、異方性を有する曲げ剛性などのメリットを得る観点から、断面を略楕円形状とした扁平コードを用いた技術が、種々提案されてきている(例えば、特許文献1等)。
かかるスチールコードをゴムにより被覆して補強材を製造する際の被覆方法としては、コードをカレンダーロール間に通して一対のゴムシートを圧着することによりゴム被覆するカレンダー方式と、コードをインサータを介してインシュレーション装置内に通して、装置内に注入されるゴムにより被覆するインシュレーション方式とがある。このうちインシュレーション方式を用いて、断面円形のコードを束にしてゴム被覆する場合に、インサータの穴形状を束形状に対応する略長方形状にする技術が知られている(例えば、特許文献2等)。
特開2003−063209号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−113793号公報([0023],[図2]等)
しかしながら、扁平コードをインシュレーション方式でゴム被覆する場合に、インサータの穴形状をコード断面に対応した楕円または長方形にすると、溶接によるコード接合部が穴部分に引っ掛かって、断線が生ずる場合があった。そのため、インサータの穴形状はコード断面に対応する寸法の円形とする必要があるが、この場合、コードが回転することで略楕円形状断面の長軸方向がコードごとにばらついてしまう。その結果、図4に示すように、インシュレーション後に得られるゴム−スチールコード複合体20において、扁平コード21近傍でゴム22のゲージxの薄い部分xが生じて、これをタイヤのベルト部材に適用すると、ベルト端セパレーションを引き起こす原因となる場合があった。これは、ゴムゲージの薄い部分があると、交錯ベルト間において、その部分で上下のコード間隔が狭くなるために亀裂が繋がりやすくなることに起因する。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消するために、扁平コードをインシュレーション方式でゴム被覆する際における、コード断面の配列方向のバラツキを防止して、コード断面が同一方向に揃ったゴム−スチールコード複合体をより確実に得ることができるゴム−スチールコード複合体の製造方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、インシュレーション装置の入口側に回転自在なロールを配置して、このロールを介してスチールコードをインサータの穴に導くものとすることで、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のゴム−スチールコード複合体の製造方法は、略楕円形状の断面を有する扁平スチールコードの複数本を引き揃えて、インシュレーション装置でゴム被覆することによりゴム−スチールコード複合体を製造する方法において、
前記インシュレーション装置の入口側に回転自在なロールを配置して、前記扁平スチールコードを該ロールを介してインシュレーション装置内に誘導することを特徴とするものである。
本発明においては、前記インシュレーション装置の入口側に配置するロールを、1本または2本とすることが好ましい。また、前記入口側のロールの外径は、好適には50mm〜300mmであり、前記入口側のロールに対する前記扁平スチールコードの押付けテンションは、好適には0.5kg〜5kgである。
また、本発明においては、前記インシュレーション装置の出口側に2本以上の回転自在なロールを配置して、該インシュレーション装置から送出されたゴム−スチールコード複合体を、該2本以上のロール間に通過させることが好ましい。この場合、前記出口側のロールの外径は、好適には50mm〜300mmであり、前記出口側のロールに対する前記ゴム−スチールコード複合体の押付けテンションは、好適には1kg〜7kgである。
本発明によれば、上記構成としたことにより、扁平コードをインシュレーション方式でゴム被覆する際における、コード断面の配列方向のバラツキを防止して、コード断面が同一方向に揃い、ゴムゲージが均一であるゴム−スチールコード複合体を、より確実に得ることができるゴム−スチールコード複合体の製造方法を実現することが可能となった。
本発明のゴム−スチールコード複合体の製造方法の一例に係る概略説明図である。 本発明により得られる、扁平コードを用いたゴム−スチールコード複合体を示す概略断面図である。 本発明のゴム−スチールコード複合体の製造方法の他の例に係る概略説明図である。 従来の、扁平コードを用いたゴム−スチールコード複合体を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明は、略楕円形状の断面を有する扁平スチールコードの複数本、例えば、50〜300本程度を引き揃えて、インシュレーション装置でゴム被覆することによりゴム−スチールコード複合体を製造する方法の改良に係るものである。
図1に、本発明のゴム−スチールコード複合体の製造方法に係る概略説明図を示す。図示するように、本発明においては、インシュレーション装置11の入口側に回転自在なロール12を配置して、扁平スチールコード1を、ロール12を介してインシュレーション装置11内に誘導している。このように、インシュレーション装置11の手前で、扁平スチールコード1をロール12に押し当てることで、扁平スチールコード1のコード断面の配列方向を、略楕円形状の長軸がロール長手方向に沿うよう揃えることができ、結果として、図2に示すように、得られるゴム−スチールコード複合体10において、扁平スチールコード1のコード断面の配列方向が、略楕円形状の長軸がコードの引き揃え方向と一致するように揃うことになる。これにより、ゴム−スチールコード複合体10内におけるゴム2のゲージxの不均一が防止できるので、これをタイヤのベルト部材に適用した場合においても耐ベルト端セパレーション性を損なうことがない。なお、図中、符号14,15はそれぞれインシュレーション装置のインサータおよび口金を示し、符号16は未加硫ゴムの投入口を示す。
本発明においては、インシュレーション装置11の手前で扁平スチールコード1をロール12に押し当てて、そのコード断面の配列方向を揃える点のみが重要であり、それ以外の諸条件については、所望に応じ適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
具体的には例えば、ロール12の配置個数は、図1に示す例では1個であるが、図3に示すように2個にて配置してもよく、さらに、図示はしないが3個以上としてもよい。図1に示すように、ロール12を1個で配置する場合には、インシュレーション装置11への進入方向に対しある程度の角度α、例えば、20〜90°程度の角度αを持った方向から扁平スチールコード1を誘導して、扁平スチールコード1をロール12に押し付けることが考えられる。なお、図示例ではインシュレーション装置11に対し下方から扁平スチールコード1を誘導しているが、上方から誘導するものであってもよいのはもちろんである。一方、図3に示すように、2個のロール12a,12bを配置する場合には、これらロール12a,12b間の間隔を適切に設定することで、これらロール12a,12bを扁平スチールコード1に押し付けることができるので、扁平スチールコード1はインシュレーション装置11への進入方向からそのまま誘導すればよい。なお、ロール12を2個または3個以上配置する場合としては、図1ないし図3の配置形態を複数組み合わせることが考えられる。
ここで、上記入口側のロール12としては、外径が50mm〜300mm、特には130mm〜200mmのものを用いることが好ましい。ロール12の径が小さすぎると、扁平スチールコード1を押し付けた際に、その曲率によりコードが曲がってしまうおそれがある。また、ロール12の径が大きすぎても、さらなる効果は得られないため、設備のコンパクト化の観点からは、大きくしすぎないほうがよい。
上記入口側のロール12に対する扁平スチールコード1の押付けテンションは、好適には0.5kg〜5kg、より好適には1kg〜2kgとする。押付けテンションが小さすぎると、扁平スチールコード1のコード断面の配列方向を揃える効果が得られないおそれがあり、一方、大きすぎると、コードが曲がってしまうおそれがある。
また、本発明においては、図1,3に示すように、インシュレーション装置11の出口側にも、2本以上、図示例では3本の回転自在なロール13a〜13cを配置して、インシュレーション装置11から送出されたゴム−スチールコード複合体10を、これら2本以上のロール13a〜13c間に通過させることが好ましい。インシュレーション装置11の出口側で、ゴムにより被覆された状態の扁平スチールコードを、さらにロール13a〜13c間で押圧することにより、コード断面の配列方向が揃ったゴム−スチールコード複合体を、より確実に得ることが可能となる。
この場合、上記出口側のロール13a〜13cとしては、外径が50mm〜300mm、特には130mm〜200mmのものを用いることが好ましい。ロール13a〜13cの径が小さすぎると、ゴム−スチールコード複合体を押し付けた際に、その曲率により内部のコードが曲がってしまうおそれがある。また、ロール13a〜13cの径が大きすぎても、さらなる効果は得られないため、設備のコンパクト化の観点からは、大きくしすぎないほうがよい。
上記入口側のロール13a〜13cに対するゴム−スチールコード複合体の押付けテンションは、好適には1kg〜7kg、より好適には3kg〜4kgとする。押付けテンションが小さすぎると、ゴム−スチールコード複合体内部のコード断面の配列方向を揃える効果が得られないおそれがあり、一方、大きすぎると、内部のコードが曲がってしまうおそれがある。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1)
図1に示す装置構成にて、略楕円形状の断面を有する扁平スチールコード(長径:0.83mm,短径:0.68mm)1の96本をコード間距離2.1mmにて引き揃えて、インシュレーション装置11でゴム被覆することにより厚み1.22mmのゴム−スチールコード複合体を製造した。
入口側のロール12としては回転自在な外径130mm、幅300mmのものを用い、扁平コード1を、角度αが45°となる方向からこのロール12を介してインシュレーション装置11内に誘導した。この際のロール12に対する扁平コード1の押付けテンションは1.5kgとした。
また、出口側のロール13a〜13cとしては回転自在な外径130mm、幅300mmのものを用い、インシュレーション装置11から送出されたゴム−スチールコード複合体10を、このロール13a〜13c間に通過させた。この際のロール13a〜13cに対するゴム−スチールコード複合体10の押付けテンションは3.5kgとした。
上記のようにして得られたゴム−スチールコード複合体10の断面を調べたところ、図2に示すように、コード断面の略楕円形状の長軸がコードの引き揃え方向と一致するように揃った状態となっていることが確かめられた。
1,21 扁平スチールコード
2,22 ゴム
10,20 ゴム−スチールコード複合体
11 インシュレーション装置
12,12a,12b 入口側のロール
13a〜13c 出口側のロール
14 インサータ
15 口金
16 未加硫ゴムの投入口

Claims (7)

  1. 略楕円形状の断面を有する扁平スチールコードの複数本を引き揃えて、インシュレーション装置でゴム被覆することによりゴム−スチールコード複合体を製造する方法において、
    前記インシュレーション装置の入口側に回転自在なロールを配置して、前記扁平スチールコードを該ロールを介してインシュレーション装置内に誘導することを特徴とするゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  2. 前記インシュレーション装置の入口側に配置するロールを、1本または2本とする請求項1記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  3. 前記インシュレーション装置の出口側に2本以上の回転自在なロールを配置して、該インシュレーション装置から送出されたゴム−スチールコード複合体を、該2本以上のロール間に通過させる請求項1または2記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  4. 前記入口側のロールの外径を50mm〜300mmとする請求項1〜3のうちいずれか一項記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  5. 前記入口側のロールに対する前記扁平スチールコードの押付けテンションを0.5kg〜5kgとする請求項1〜4のうちいずれか一項記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  6. 前記出口側のロールの外径を50mm〜300mmとする請求項3〜5のうちいずれか一項記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
  7. 前記出口側のロールに対する前記ゴム−スチールコード複合体の押付けテンションを1kg〜7kgとする請求項3〜6のうちいずれか一項記載のゴム−スチールコード複合体の製造方法。
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