第1の袋体の発明は、充填物を挿入して密封する2枚の外被材の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された袋体において、前記外被材が保護層、アルミニウム箔、熱溶着層で構成されており、前記保護層は表面保護層、内部保護層といった複数のフィルムにより構成されており、かつ前記外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を前記周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、前記封止部に位置する前記熱溶着層が少なくとも一つの凹部を有しており、前記凹部の最深部に前記熱溶着層の厚みが前記最深部の周辺部よりも薄い薄肉部が形成され、前記封止部の前記熱溶着層は両面に他の層との境界面を有し、前記凹部の一方の前記境界面のうねりの波高が、前記凹部の他方の前記境界面のうねりの波高よりも大きいものである。
上記構成において、まず、外被材の周縁部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部の熱溶着層の厚みが局所的に薄い薄肉部を設けていることにより、熱溶着層の薄肉部において、外被材周縁の端面から侵入する気体および水分の透過面積が縮小され、気体および水分の透過抵抗が増大し、気体および水分の透過速度が低減されることから、経時的に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた密封性能を発揮できる。
また、外被材の周縁部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、保護層は複数のフィルムにより構成されているので、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔は、封止部の薄肉部およびその近傍において、熱溶着層は少なくとも一つの凹部の形状に沿って曲がるが、表面保護層、内部保護層といった複数のフィルムにより凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
さらに、熱溶着層の薄肉部においては、熱溶着層の厚みが周辺部よりも薄くなり、その厚み減少分だけ強度が低下するが、熱溶着層の厚みが角部に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、封止部の強度も連続的に滑らかに増減することから、熱溶着層の薄肉部において局所的に応力が集中することが起きにくく、熱溶着層の薄肉部及びその近傍の外被材におけるクラック発生や封止部の破断が極めて起きにくくなる。
以上により、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部及びその近傍において、アルミニウム箔のクラック発生や封止部破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた密封性能を維持する袋体を提供できる。
外被材を構成する熱溶着層としては、特に指定されるものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂あるいはそれらの混合フィルム等が使用できる。
外被材に使用するラミネート接着剤については、特に指定するものではないが、2液硬化型ウレタン接着剤等の従来公知のラミネート用接着剤もしくはエポキシ系樹脂接着剤が使用できる。
外被材の袋形状は、四方シール袋、ガゼット袋、三方シール袋、ピロー袋など、特に指定するものではない。
なお、凹部とは、外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を外被材の周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部に位置する熱溶着層が少なくとも一つの凹んでいる部分であり、熱溶着層と熱溶着層の外側に隣接する他の層との境界線(境界面)が熱溶着層側へ少なくとも一つの凸となる曲線部を指す。
なお、凹部の最深部とは、凹部を形成している点群のうち、対向する境界面上の点との間に位置する熱溶着層の厚みが、最も薄い箇所に位置する点部を指す。
また、充填物は、菓子や飲料などの食品、あるいは液体、気体、固体状の薬品や生活雑貨などに限らず、発泡体、粉末、繊維体を真空密封した真空断熱材の芯材にも適用できる。
薄肉部及びその近傍では、熱溶着層よりも外層側にある外被材が、少なくとも一つの凹である熱溶着層の形状に沿って歪曲することによる応力を受け、強度が低下する。
よって、凹部の一方の境界面のうねりの波高を、凹部の他方の境界面のうねりの波高よりも大きくすることにより、相対的に波高の小さいうねりを有する境界面側の外被材の強度低下は、もう一方の相対的に波高の大きいうねりを有する境界面側の外被材と比べて僅かとなり、外被材の封止部では、強度低下が小さい外被材がもう一方の外被材を支持する形で剛性が保たれ、凹部形成時に外力を受けた場合におけるクラック発生および封止部の破断が極めて起きにくくなる。
なお、境界面とは、封止部において、熱溶着層と、熱溶着層と隣接する外被材が有する他層との境界面を指す。
なお、波高とは、凹部の周辺部に位置する境界面と、凹部の最深部を含む境界面と平行な面との距離を指す。
第2の袋体の発明は、充填物を挿入して密封する2枚の外被材の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された袋体において、前記外被材が保護層、アルミニウム箔、熱溶着層で構成されており、前記保護層は表面保護層、内部保護層といった複数のフィルムにより構成されており、かつ前記外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を前記周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、前記封止部に位置する前記熱溶着層が少なくとも一つの凹部を有しており、前記凹部の最深部に前記熱溶着層の厚みが前記最深部の周辺部よりも薄い薄肉部が形成され、前記封止部の前記熱溶着層は両面に他の層との境界面を有し、前記凹部の一方の前記境界面の前記熱溶着層側に凹となっている部分の最深部と、前記凹部の他方の前記境界面の前記熱溶着層側に凹となっている部分の最深部とが対向していないことを特徴としている。
上記構成において、まず、外被材の周縁部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部の熱溶着層の厚みが局所的に薄い薄肉部を設けていることにより、熱溶着層の薄肉部において、外被材周縁の端面から侵入する気体および水分の透過面積が縮小され、気体および水分の透過抵抗が増大し、気体および水分の透過速度が低減されることから、経時的に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた密封性能を発揮できる。
また、外被材の周縁部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、保護層は複数のフィルムにより構成されているので、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔は、封止部の薄肉部およびその近傍において、熱溶着層は少なくとも一つの凹部の形状に沿って曲がるが、表面保護層、内部保護層といった複数のフィルムにより凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
さらに、熱溶着層の薄肉部においては、熱溶着層の厚みが周辺部よりも薄くなり、その厚み減少分だけ強度が低下するが、熱溶着層の厚みが角部に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、封止部の強度も連続的に滑らかに増減することから、熱溶着層の薄肉部において局所的に応力が集中することが起きにくく、熱溶着層の薄肉部及びその近傍の外被材におけるクラック発生や封止部の破断が極めて起きにくくなる。
以上により、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部及びその近傍において、アルミニウム箔のクラック発生や封止部破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた密封性能を維持する袋体を提供できる。
外被材を構成する熱溶着層としては、特に指定されるものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂あるいはそれらの混合フィルム等が使用できる。
外被材に使用するラミネート接着剤については、特に指定するものではないが、2液硬化型ウレタン接着剤等の従来公知のラミネート用接着剤もしくはエポキシ系樹脂接着剤が使用できる。
外被材の袋形状は、四方シール袋、ガゼット袋、三方シール袋、ピロー袋など、特に指定するものではない。
なお、凹部とは、外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を外被材の周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部に位置する熱溶着層が少なくとも一つの凹んでいる部分であり、熱溶着層と熱溶着層の外側に隣接する他の層との境界線(境界面)が熱溶着層側へ少なくとも一つの凸となる曲線部を指す。
なお、凹部の最深部とは、凹部を形成している点群のうち、対向する境界面上の点との間に位置する熱溶着層の厚みが、最も薄い箇所に位置する点部を指す。
また、充填物は、菓子や飲料などの食品、あるいは液体、気体、固体状の薬品や生活雑貨などに限らず、発泡体、粉末、繊維体を真空密封した真空断熱材の芯材にも適用できる。
薄肉部があると、熱溶着層の厚みが薄く強度が低下するだけでなく、凹部の最深部が位置していることにより、歪曲による外被材の強度低下が起こる。
本発明では、凹部の一方の境界面の熱溶着層側に凹となっている部分の最深部と、凹部の他方の境界面の熱溶着層側に凹となっている部分の最深部とが対向していないことにより、凹部の最深部が位置する封止部の強度低下が抑制され、封止部が外力を受けた際の傷つきや破断が極めて起きにくくなる。同時に、凹部におけるガスバリア層のクラック発生の抑制効果もさらに高くなる。
第3の袋体の発明は、特に、第1から第2のいずれかの発明において、前記封止部に前記薄肉部を少なくとも2個以上有していることを特徴としている。
薄肉部においては、封止部の他箇所に比べて熱溶着層の厚みが薄く、シール強度が低下することにより、例えば、製造工程において芯材物質であるガラス繊維やシリカ粉末等を挟み込んだ状態で外被材が熱溶着された場合、薄肉部において熱溶着不良が発生することが懸念される。
熱溶着不良が発生した箇所では、樹脂が存在しないため、ガス侵入抑制効果が低下する。この対策として、少なくとも2個以上の薄肉部を設けることにより、熱溶着不良に起因する真空断熱材内部への気体および水分侵入促進の影響が緩和される。
特に、芯材としてガラス繊維を用いた場合は、挟雑物として熱溶着の際に挟み込まれた芯材物質が加熱変形し、薄肉部にスルーホールを形成することが多々あることから、本発明の効果がより顕著となる。
また、薄肉部においては、外被材の強度が周囲部よりも低くなり、外力を受けた際の荷重集中が懸念されるが、薄肉部が複数個存在することにより、外力の荷重が分散され、薄肉部におけるクラックの発生や封止部の破断が極めて起きにくくなる。
また、薄肉部を複数個有する場合は、薄肉部が1個のみの場合と比べて、薄肉部における熱溶着層の厚みを増加させても同一の効果が得られるため、薄肉部における外被材強度やシール強度低下が緩和され、薄肉部におけるクラック発生や封止部の破断のリスクが低減される。
第4の袋体の発明は、特に、第1から第3のいずれかの発明において、前記表面保護層が1層のナイロン、前記内部保護層が1層のナイロンであることを特徴としている。
外被材の周縁部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、保護層が表面保護層1層、内部保護層1層の2層で構成され、2層ともナイロンフィルムにより構成されているので、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔は、封止部の薄肉部およびその近傍において、熱溶着層は少なくとも一つの凹部の形状に沿って曲がるが、表面保護層、内部保護層といった複数のフィルムにより凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層より外層側に積層されたアルミニウム箔のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明の前記袋体に、前記充填物としての芯材を挿入して、真空引きを行ったことを特徴としている。
前記袋体を構成する前記外被材に加え、真空断熱材の構成材料について、芯材は、その種類について特に指定するものではないが、気層比率90%前後の多孔体であり、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォームなどの連続気泡体や、グラスウールやロックウール、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの繊維体、パーライトや湿式シリカ、乾式シリカなどの粉体など、従来公知の芯材が使用できる。
芯材と共に袋体に入れる吸着剤は、その種類について特に指定するものではないが、芯材や外被材の残留ガス成分や、真空断熱材内へ侵入する水分や気体を吸着するもので、酸化カルシウム、ゼオライト、シリカゲルなどのガス吸着剤や水分吸着剤等のゲッター物質で、真空断熱材の真空度を下げる作用や維持する作用があるものであれば使用できる。
以上により、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略するものとする。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における袋体の断面図、図2は、同実施の形態の袋体の平面図、図3は、同実施の形態の袋体における薄肉部を含む封止部の一例を示す断面図を示す。
図1に示すように、袋体1は、充填物2と、同一寸法に裁断された長方形の2枚の外被材3よりなり、2枚の外被材3の間に充填物2が密封され、充填物2を覆う2枚の外被材3の周縁近傍の外周部同士が熱溶着されている。
2枚の外被材3は、外層側から、表面保護層4、内部保護層5と、アルミニウム箔6と、熱溶着層7とが積層されてなる。また、外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材の有する熱溶着層同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの少なくとも3辺に薄肉部9を有している。
次に、薄肉部9周辺の封止部8の形状について説明する。
図3において、熱溶着層7とアルミニウム箔6との境界面が有する凹部の波高の大きさには差が設けられており、波高の大きい凹部を有する境界面に設けられた凹部の最深部のみが薄肉部9に位置している。
次に、本実施の形態において、図1〜3に示す本実施の形態の袋体1の製造方法の一例を述べる。
まず、2枚の外被材3を、その熱溶着層7同士が対向するように配置し、外被材3の周囲辺の3辺を熱溶着して袋状とする。この熱溶着時に、金属製の加熱圧縮冶具10(図4参照)とシリコンゴムヒーター(図示せず)とで2枚の外被材3を挟むように加熱圧縮し、図3に示す形状の封止部8を形成する。この後、袋体1内に充填物2を挿入し、外被材3の袋の開口部を熱溶着させて密封することにより袋体1を得る。
本実施の形態の袋体1は、充填物2を挿入して密封する2枚の外被材3の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された袋体1において、外被材3が保護層、アルミニウム箔6、熱溶着層7で構成されており、保護層は表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより構成されており、かつ外被材3の外周部同士が熱溶着された封止部8の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部8に位置する熱溶着層7が少なくとも一つの凹部を有しており、凹部の最深部に熱溶着層7の厚みが最深部の周辺部よりも薄い薄肉部9が形成されている。
また、封止部8の熱溶着層7は、両面に隣接する他の層(アルミニウム箔6)との境界面を有し、凹部の一方の境界面のうねりの波高が、凹部の他方の境界面のうねりの波高よりも大きい。
また、凹部の一方の境界面の熱溶着層7側に凹となっている部分の最深部と、凹部の他方の境界面の熱溶着層7側に凹となっている部分の最深部とが対向していない。
また、図3に示す例では、封止部8に薄肉部9を少なくとも2個以上(4つ)有している。
以上のように構成された袋体1について、以下その動作、作用を説明する。
外被材3は、熱可塑性樹脂やガスバリア性を有する金属箔や樹脂フィルム等をラミネート加工したものであり、外部から袋体1内部への大気ガス侵入を抑制する役割を果たすものである。
表面保護層4および内面保護層5は、外被材が有する層のうち、アルミニウム箔6よりも外層側に位置する、外力から外被材3、特にアルミニウム箔6の傷つきや破れを防ぐ役割を果たすものである。
熱溶着層7より外層側に積層されたアルミニウム箔6は、封止部の薄肉部9およびその近傍において、熱溶着層7は少なくとも一つの凹部の形状に沿って曲がるが、表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層7より外層側に積層されたアルミニウム箔6のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
表面保護層4および内面保護層5としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等の従来公知の材料が使用でき、同一種類でも2種類以上でも、表面保護層4および内面保護層5共に複数枚重ねて使用してもよい。
本実施の形態では、アルミニウム箔6をガスバリア層としたが、高いバリア性を有する1種類もしくは2種以上のフィルムから構成される層であり、外被材3に優れたガスバリア性を付与するものであれば、代用することができる。
例えば、銅箔、ステンレス箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムへアルミニウムや銅等の金属原子もしくはアルミナやシリカ等の金属酸化物を蒸着したフィルムや、金属原子や金属酸化物を蒸着した面にコーティング処理を施したフィルム等が使用できる。
熱溶着層7は、外被材3同士を溶着し、袋体1内部の密封性を保持する役割に加えて、充填物による袋体1内部からの突刺し等からアルミニウム箔6を保護する役割を果たすものである。
熱溶着層7としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等従来公知の材料が使用でき、1種類でも2種類以上重ねて使用してもよい。
封止部8は、外被材3の熱溶着層7同士を溶着することにより構成され、真空断熱材1内部と外部とを遮断する役割を果たしている。
薄肉部9は、外被材3周縁の端面から封止部8を通って袋体1内部へ侵入する大気ガスの透過速度を抑制し、袋体1の密封性を維持する役割を果たしている。
以上のように、本実施の形態においては、封止部8における熱溶着層7とアルミニウム箔6との境界面が有する凹部の最深部位置に薄肉部9が設けられ、この2層の境界面が有する凹部の波高に差が設けられているため、アルミニウム箔6および外被材3の劣化や破断が極めて起きにくくなるとともに、袋体1内部への経時的な大気ガス侵入が抑制される。
また、上記の製造方法にて袋体1を作製した場合、通常、図4に示すような突起部11によって構成される過熱圧縮冶具10により熱溶着層7が加熱圧縮されるため、加圧による外力が突起部11の接線と垂直な方向にも加わることにより、熱溶着層7の樹脂が薄肉部9の両端方向へ流動しやすくなることから、図10のような従来の封止冶具106のような平面部にて圧縮される場合と比べて、同一の薄肉部9の厚みを得る場合の製造時の温度条件および圧力条件が緩和され、アルミニウム箔6および外被材3の劣化が抑制される。
言い換えれば、同一の成形条件によって、より熱溶着層7の薄肉部9の厚みを薄くすることが可能となり、外被材3周縁の端面からの気体および水分侵入量の抑制が容易となる。
本実施の形態の袋体1は、充填物2を挿入して密封する2枚の外被材3の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された袋体1において、外被材3が保護層、アルミニウム箔6、熱溶着層7で構成されており、保護層は表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより構成されており、かつ外被材3の外周部同士が熱溶着された封止部8の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部8に位置する熱溶着層7が少なくとも一つの凹部を有しており、凹部の最深部に熱溶着層7の厚みが最深部の周辺部よりも薄い薄肉部9が形成されている。
上記構成において、まず、外被材3の周縁部同士が熱溶着された封止部8の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、封止部8の熱溶着層7の厚みが局所的に薄い薄肉部9を設けていることにより、熱溶着層7の薄肉部9において、外被材3周縁の端面から侵入する気体および水分の透過断面積が縮小され、気体および水分の透過抵抗が増大し、気体および水分の透過速度が低減されることから、経時的に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。
また、外被材3の周縁部同士が熱溶着された封止部8の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断した場合の断面を見た時、保護層は表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより構成されているので、熱溶着層7より外層側に積層されたアルミニウム箔6は、封止部8の薄肉部9およびその近傍において、熱溶着層7の形状に沿って曲がるが、表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層7より外層側に積層されたアルミニウム箔6のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
さらに、熱溶着層7の薄肉部9においては、熱溶着層7の厚みが周辺部よりも薄くなり、その厚み減少分だけ強度が低下するが、熱溶着層7の厚みが凹部に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、封止部8の強度(曲げ強度など)も位置が変わるにつれて連続的に滑らかに増減することから、熱溶着層7の薄肉部9において局所的に応力が集中することが起きにくく、熱溶着層7の薄肉部9及びその近傍の外被材3におけるクラック発生や封止部8の破断が極めて起きにくくなる。
以上により、封止部8に設けた熱溶着層7の薄肉部9及びその近傍において、クラック発生や封止部8破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた密封性能を維持する袋体1を提供できる。
また、本実施の形態の袋体1は、封止部8の熱溶着層7は両面にアルミニウム箔6との境界面を有し、凹部の一方の境界面のうねりの波高が、凹部の他方の境界面のうねりの波高よりも大きい。
薄肉部9及びその近傍では、熱溶着層7よりも外層側にある外被材3(の各層6,5)が、少なくとも一つの凹部である熱溶着層7の形状に沿って歪曲することによる応力を受け、強度が低下する。
よって、凹部の一方(図1では上側)の境界面のうねりの波高を、凹部の他方(図1では下側)の境界面のうねりの波高よりも大きくすることにより、相対的に波高の小さいうねりを有する境界面側(図1では下側)の外被材3の強度低下は、もう一方の相対的に波高の大きいうねりを有する境界面側(図1では上側)の外被材3と比べて僅かとなり、外被材3の封止部8では、強度低下が小さい(図1では下側の)外被材3がもう一方の(図1では上側の)外被材3を支持する形で剛性が保たれ、外力を受けた場合におけるクラック発生および封止部8の破断が極めて起きにくくなる。
薄肉部9があると、熱溶着層7の厚みが薄く強度が低下するだけでなく、凹部の最深部が位置していることにより、歪曲による外被材3の強度低下が起こる。
本実施の形態では、凹部の一方の(図1では上側の)境界面の熱溶着層7側に凹となっている部分の最深部と、凹部の他方の(図1では下側の)境界面の熱溶着層7側に凹となっている部分の最深部とが対向していないことにより、凹部の最深部が位置する封止部8の強度低下が抑制され、封止部8が外力を受けた際の傷つきや破断が極めて起きにくくなる。同時に、凹部におけるアルミニウム箔6のクラック発生の抑制効果もさらに高くなる。
また、図3に示す例のように、封止部8に薄肉部9を少なくとも2個以上有していることが好ましい。
薄肉部9においては、封止部8の他箇所に比べて熱溶着層7の厚みが薄く、シール強度が低下することにより、例えば、製造工程において充填物2を挟み込んだ状態で外被材3が熱溶着された場合、薄肉部9において熱溶着不良が発生することが懸念される。
熱溶着不良が発生した箇所では樹脂が存在しないため、ガス侵入抑制効果が低下する。この対策として、少なくとも2個以上の薄肉部9を設けることにより、熱溶着不良に起因する袋体1内部への気体および水分侵入促進の影響が緩和される。
特に、ガラス繊維などのような細いものを用いた場合は、挟雑物として熱溶着の際に挟み込まれた芯材2物質が加熱変形し、薄肉部9にスルーホールを形成することが多々あることから、本発明の(本実施の形態の)効果がより顕著となる。
また、薄肉部9においては、外被材3の強度が周囲部よりも低くなり、外力を受けた際の荷重集中が懸念されるが、薄肉部9が複数個存在することにより、外力の荷重が分散され、薄肉部9におけるクラックの発生や封止部8の破断が極めて起きにくくなる。
また、薄肉部9を複数個有する場合は、薄肉部9が1個のみの場合と比べて、薄肉部9における熱溶着層7の厚みを増加させても同一の効果が得られるため、薄肉部9における外被材3強度やシール強度低下が緩和され、薄肉部9におけるクラック発生や封止部8の破断のリスクが低減される。
なお、本実施の形態では、薄肉部9を有する封止部8を3辺としたが、封止部8全周の4辺に設けても良い。
なお、各薄肉部9における熱溶着層7の厚みは、同一でなくても良い。
なお、本実施の形態では、図2に示すように、薄肉部9が直交しているが、薄肉部9は交差していなくてもよい。
なお、各薄肉部9に位置する境界面の凹部の幅は同一ある必要はなく、アルミニウム箔6として使用している金属箔やフィルムが、劣化しない程度の幅を有しておればよい。
なお、薄肉部9の間隔は特に指定するものではなく、また、図5のように、境界面が有する凹部同士の間隔が等しくなくてもよい。
なお、本実施の形態では、薄肉部9の位置は特に指定するのもではないが、境界面の有する凹部位置が、外被材3の封止部8とそうでない部分との境目に存在している場合は、薄肉部9の片側の樹脂が十分に加熱されておらず、樹脂の流動性が悪いため薄肉化が困難となり、好ましくない。
以下、本発明における袋体1の外被材3の材料構成とその効果について、実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのナイロンフィルム(Ny)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる充填物2から構成された袋体1を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとした。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
実施例1では、ナイロンフィルムを2層の保護層として積層したため、薄肉部9における各層の凹部形状も内層になるに従い徐々に緩和されていることが確認され、局所的に応力が集中することが起きにくくなっている本発明(の実施の形態1)による効果がより顕著に現れた。
(実施例2)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる充填物2から構成された袋体1を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとした。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
(実施例3)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのナイロンフィルム(Ny)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる充填物2から構成された袋体1を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとした。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
(比較例1)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み40μmのナイロンフィルム(Ny)のみを保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる充填物2から構成された袋体1を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとした。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生が確認された。
(比較例2)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(HDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み40μmのナイロンフィルム(Ny)のみを保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる充填物2から構成された袋体1を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとした。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は比較例1の形態以上に確認された。
以上、本発明における実施例および比較例を(表1)に示す。
ただし、(表1)における外被材3の劣化に関しては、下記の基準で判定した。
○:劣化なし(封止部8において、アルミニウム箔にクラックが確認されず。)
×:劣化あり(封止部8において、アルミニウム箔にクラックが確認された。)
(表1)の結果より、実施の形態1に示す薄肉部9を設けた袋体1は、外被材3の劣化も確認されなかった。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における真空断熱材の断面図を示す。
図6において、真空断熱材12は、芯材13と芯材13内に配置された吸着剤14と、同一寸法に裁断された長方形の2枚の外被材3よりなり、2枚の外被材3の間に芯材13と吸着剤14が減圧密封され、芯材13を覆う2枚の外被材3の周縁近傍の外周部同士が熱溶着されている。
2枚の外被材3は、実施の形態1と同様の形態で、外層側から、表面保護層4、内部保護層5と、アルミニウム箔6と、熱溶着層7とが積層されてなる。また、外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材の有する熱溶着層同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの少なくとも3辺に薄肉部9を有している。
ここで、薄肉部9周辺の封止部8の形状についても、実施の形態1と同様の形態である。
図3において、熱溶着層7とアルミニウム箔6との境界面が有する凹部の波高の大きさには差が設けられており、波高の大きい凹部を有する境界面に設けられた凹部の最深部のみが薄肉部9に位置している。
次に、本実施の形態において、図6に示す本実施の形態の真空断熱材12の製造方法の一例を述べる。
まず、2枚の外被材3の熱溶着層7同士が対向するように配置し、外被材3の周囲辺の3辺を熱溶着して袋状とする。この熱溶着時に、金属製の加熱圧縮冶具10(図4参照)とシリコンゴムヒーター(図示せず)とで2枚の外被材3を挟むように加熱圧縮し、図3に示す形状の封止部8を形成する。この後、袋内に芯材13と吸着剤14とを挿入し、袋内部を約200Pa以下に減圧しながら、外被材3の袋の開口部を熱溶着させて密封することにより真空断熱材12を得る。
また、図3に示す例では、封止部8に薄肉部9を少なくとも2個以上(4つ)有している。
以上のように構成された真空断熱材12について、以下その動作、作用を説明する。
まず、芯材13は、真空断熱材12の骨材として微細空間を形成する役割を果たし、真空排気後の真空断熱材12の断熱部を形成するものであり、ガラス繊維からなる。
吸着剤14は、真空包装後に芯材13の微細空隙から真空断熱材12中へ放出された残留ガス成分や、真空断熱材12内へ侵入する水分や気体を吸着除去する役割を果たすものである。
外被材3は、実施の形態1と同様の形態で、外部から真空断熱材1内部への大気ガス侵入を抑制する役割を果たすものである。そのため、本実施の形態においては、真空断熱材12内部への経時的な大気ガス侵入が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。
また、保護層は表面保護層4、内部保護層5といった複数のフィルムにより構成されているので、凹部形成時に外力を受けた場合に、内層になるに従い段階的に応力を緩和し、局所的に応力が集中することが起きにくくなり、熱溶着層7より外層側に積層されたアルミニウム箔6のクラックの発生が極めて起きにくくなる。
さらに、熱溶着層7の薄肉部9においては、熱溶着層7の厚みが凹部に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、熱溶着層7の薄肉部9において局所的に応力が集中することが起きにくく、熱溶着層7の薄肉部9及びその近傍の外被材3におけるクラック発生や封止部8の破断が極めて起きにくくなる。
以上により、封止部8に設けた熱溶着層7の薄肉部9及びその近傍において、クラック発生や封止部8破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材12を提供できる。
以下、本発明における真空断熱材12の外被材3の材料構成とその効果について、実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実施の形態2において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのナイロンフィルム(Ny)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる芯材13と、酸化カルシウムからなる吸着剤14から構成された真空断熱材12を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとしたとき、真空断熱材12の外被材3周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、7.8×10-15mol/m2/s/Paであった。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
実施例1では、実施の形態1同様、ナイロンフィルムを2層の保護層として積層したため、薄肉部9における各層の凹部形状も内層になるに従い徐々に緩和されていることが確認され、局所的に応力が集中することが起きにくくなっている本発明(の実施の形態2)による効果がより顕著に現れた。
(実施例2)
実施の形態2において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる芯材13と、酸化カルシウムからなる吸着剤14から構成された真空断熱材12を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとしたとき、真空断熱材12の外被材3周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、8.1×10-15mol/m2/s/Paであった。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
(実施例3)
実施の形態2において、熱溶着層7として厚み50μmの高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み15μmのナイロンフィルム(Ny)と、内部保護層5として厚み25μmのナイロンフィルム(Ny)を2層の保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる芯材13と、酸化カルシウムからなる吸着剤14から構成された真空断熱材12を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとしたとき、真空断熱材12の外被材3周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、1.5×10-15mol/m2/s/Paであった。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は確認されなかった。
(比較例1)
実施の形態2において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み40μmのナイロンフィルム(Ny)のみを保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる芯材13と、酸化カルシウムからなる吸着剤14から構成された真空断熱材12を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとしたとき、真空断熱材12の外被材3周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、2.0×10-14mol/m2/s/Paであった。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生が確認された。
(比較例2)
実施の形態2において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(HDPE)を、アルミニウム箔6(AL)として厚み6μmを、また表面保護層4として厚み40μmのナイロンフィルム(Ny)のみを保護層として積層してなる外被材3と、ガラス繊維からなる芯材13と、酸化カルシウムからなる吸着剤14から構成された真空断熱材12を作製した。
外被材3の周囲辺(外周部)には、外被材3の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、各薄肉部9に位置する一方の(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面の凹部の最深部における幅は1.5mmであり、(図3では上側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mm、かつ、隣り合う凹部の最深部との間隔が1.5mmであった。また、もう一方の(図3では下側のアルミニウム箔6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図3参照)。
この際、シール幅(外被材3同士を熱溶着する幅)を20mmとし、薄肉部9の厚みを10μmとしたとき、真空断熱材12の外被材3周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、2.8×10-14mol/m2/s/Paであった。
ここで、薄肉部9の厚みは、外被材をミクロトームにより外被材の外周部同士が熱溶着された封止部の少なくとも一部を周縁に垂直な平面で切断し、200倍の倍率で顕微鏡により測定した。
以上において、封止部8において、アルミニウム箔6にクラックの発生は比較例1の形態以上に確認された。
以上、本発明における実施例および比較例を(表2)に示す。
ただし、(表2)における外被材3の劣化に関しては、下記の基準で判定した。
○:劣化なし(封止部8において、アルミニウム箔にクラックが確認されず。)
×:劣化あり(封止部8において、アルミニウム箔にクラックが確認された。)
(表2)の結果より、実施の形態2に示す薄肉部9を設けた真空断熱材12は、外被材3の劣化も確認されなかった。