JP5378818B2 - 酸化抑制剤 - Google Patents

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本発明は、加熱処理に供される鋼材に塗布される酸化抑制剤に関するものである。
鋼材の製造工程において熱間加工等の加熱処理を加熱炉にて行う場合、大気中等の酸素が存在する環境で鋼材が加熱されるのが通例である。このような状況で鋼材の加熱が行われると、鋼材の表面に酸化鉄等の酸化皮膜が生成する。斯かる酸化被膜は、一般に「スケール」と称されている。
鋼材の表面に生成したスケールは、一般に鋼材自体よりも硬質であるため、スケールが鋼材の表面に残存したままであると、熱間加工時の潤滑作用が阻害されて摩擦抵抗が増大することから、加熱処理後の鋼材の加重増加や形成不良が生じやすい。また、鋼材の表面に生成したスケールは、鋼材の加工時にその表面に食い込んで損傷の要因となったり、加工工具の表面を損傷させる要因となる。工具表面が損傷した場合には、その工具の寿命が短くなって工具に要するコストが上昇したり、工具の表面に付いた損傷が熱間加工された鋼材製品の表面に転写されると、製品の品質が低下するという問題もある。さらに、スケールは鋼材よりも脆弱であるため、鋼材の表面のスケールが剥がれ落ちると、鋼材自体が痩せて細く又は薄くなり、歩留まり低下の要因となったり、砂状に剥がれ落ちたスケールが加熱炉に溜まると、その除去に手間やコストがかかったり、加熱炉が損傷を受けるといった問題もある。また、加熱炉に溜まったスケールが鋼材製品の表面に付着して、製品品質の劣化を招く場合もある。
このように、スケールの生成は鋼材材料や製品ばかりでなく、その製造工程や後の工程で使用される工具や加熱炉のロスの原因となることから、従来より、鋼材の製造においては、スケールの発生の抑制や、スケールの効率的な除去が課題とされてきている。
スケールの発生を抑制することを目的とする方法としては、例えば、熱間仕上タンデム圧延プロセスの少なくとも第1スタンドで、カルシウム炭酸塩、ナトリウム炭酸塩、カリウム炭酸塩のうち1種類若しくは2種類以上の潤滑剤組成物を所定割合以上含有させた潤滑油を鋼材に供給しながら圧延することにより、2次スケールが原因で生成するスケールによる鋼材への疵を防止する方法(特許文献1参照)、チタン合金材の表面に酸化防止剤として炭化珪素と炭化硼素の混合物からなる炭化物を塗布することで、熱間加工中に生成する酸化膜の発生を防止しようとする方法(特許文献2参照)、軟化点の異なるガラスフリットを複数含む酸化防止剤を用いることで、スケールが原因で鋼管の表面に発生する凹み疵(ローラーマーク)を防止する方法(特許文献3参照)などが知られている。
一方、生成したスケールを除去する方法としては、加熱されて取り出されたビレットの熱間鍛造される端面にハンマーを対向させて打撃することで、スケールを鋼材から機械的に離脱させる装置(特許文献4)が知られている。
特開平9−276922号公報 特開平10−140233号公報 特開2007−314875号公報 特開2004−268126号公報
ところが、特許文献1に記載のように、鋼材の加熱工程でスケール生成の抑制を目的として潤滑油を使用する技術は、加熱中に生じる臭気や廃棄の面から、作業現場や周囲の環境に対する負荷が大きく、あまり好ましいとはいえない。また、特許文献2に記載の技術のように、酸化防止剤として用いられる炭化珪素や炭化硼素は非常に高硬度の炭化物であるために、鋼材への加工前にこれらを完全に除去できないと、加工工具や鋼材(及び製品)の表面に損傷を招く虞がある。さらに、特許文献3に記載の技術のように、ガラスフリットを含む酸化防止剤を用いる場合には、加熱処理次にガラスフリットが鋼材の表面に溶けて広がるため、その後の加工前に鋼材からガラスを除去する作業に手間がかかる。
一方、特許文献4に記載のように、鋼材の表面を叩いて機械的にスケールを除去する装置を用いる場合には、その装置に要する費用や当該工程の増加による生産性の低下、あるいは鋼材の変形や、スケールの完全除去の難しさ、といった問題が考えられる。
以上のような問題に鑑みて、本発明は、鋼材の加熱処理時に簡便に用いることができ、鋼材の表面におけるスケールの生成を高効率で抑制することができる酸化抑制剤の提供を主たる目的とするものである。
本発明に係る酸化抑制剤は、加熱処理前の鋼材の表面に塗布されるものであって、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む混合物と、デキストリンとを含有する水溶液であることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の酸化抑制剤は、炭酸マグネシウムのみ、塩化ナトリウムのみ、炭酸マグネシウムと塩化ナトリウムの混合物のみ、またはこれらと他の物質の混合物の何れかからなるものである。炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む混合物は、これまで、加熱処理される鋼材の表面に塗布してその酸化を抑制し、スケールの生成を抑制するという目的では使用されていなかった物質である。本発明者らの試験研究により、本発明の酸化抑制剤を鋼材の表面に塗布しておくことで、作用機序は必ずしも明確ではないが、加熱処理時における鋼材の表面へのスケールの生成を極めて高効率で抑制できることが明らかとなった。そのため、鋼材の表面に残存した酸化抑制剤の除去や、加熱炉や加工工具に与える弊害などといった問題を回避でき、あるいは鋼材を叩いて生成したスケールを除去する場合の手間やコストや鋼材の損傷を回避することができる。また、鋼材の表面に塗布された本発明の酸化抑制剤では、特に炭酸マグネシウムや塩化ナトリウムは加熱処理により昇華するなどして鋼材の表面には残存しないので、鋼材の表面から酸化防止剤を除去するといった手間や時間も不要となる。
このような本発明において炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む混合物を含有する酸化抑制剤を鋼材の表面に万遍なく均一に塗布できるように、混合物を水溶液として酸化抑制剤中に含有させている
なお、本発明の酸化抑制剤には、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウム以外の水溶性化合物をさらに含有させることができる。このような混合物としての水溶性化合物としては、食塩が望ましい。食塩に含まれている可能性のある他の水溶性化合物には、無水硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムのような金属塩を挙げることができる。さらに本発明は混合物をデキストリンと共に水溶液としている。なお、デキストリン以外には、他の水溶性多糖類、水溶性セルロース誘導体、コラーゲンやそれらを原料とするゼラチン等の水溶性化合物、水溶性キトサンなどの天然原料を素材とする水溶性有機化合物、またはポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの水溶性合成高分子化合物等を例示することができる。特に、本発明の酸化抑制剤に天然原料を素材とする水溶性有機化合物または水溶性合成高分子化合物を含有させる場合、水に溶解して粘性を付与することができ、鋼材の表面に付着した状態で流れ落ちにくいため、鋼材表面に炭酸マグネシウムや塩化ナトリウムを留めておくのに適している。また、天然原料を素材とする水溶性有機化合物または水溶性合成高分子化合物の中で、窒素や硫黄を含まない水溶性化合物を選択する場合には、燃焼時に悪臭が生じないという利点がある。このような水溶性化合物のなかでも、デキストリンは水に溶解させると粘性が得られ、また窒素も硫黄も含まず、安価に入手でき、炭酸マグネシウムや塩化ナトリウムによるスケール生成防止効果を低減しない、などの点で、本発明の酸化抑制剤に含有させるのに適している。
本発明の酸化抑制剤によれば、鋼材の表面に塗布して加熱炉内等で加熱処理することで、これまで鋼材の表面におけるスケールの生成を極めて効率的に抑制することが可能である。このように、鋼材表面にスケールが生成しにくくなる結果、スケールによる鋼材や工具に対する損傷も防止することができ、鋼材に痩せが生じず歩留まりや製品の品質が向上する。特に本発明の酸化抑制剤は、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む混合物を含有するものであるため、その作用機作は明らかではないが本発明者らが行った各種試験により鋼管を加熱工程に供しても鋼管表面でのスケールの生成が極めて有効に抑制されることが実証され、またこれらの化合物は燃焼により昇華するなどして鋼材の表面や炉内に酸化抑制剤の成分を残存させないという点や、環境負荷が極めて小さい点、加熱処理後に酸化防止剤を鋼材表面から除去する必要がない点、さらにはコスト面においても優れている。
本発明の一実施形態に係る酸化抑制剤を塗布して行われる鋼材の鍛造加工工程を示す概略図。 同鍛造加工工程後の鋼材表面について、同実施形態の酸化抑制剤を塗布した場合と塗布していない場合の鋼材表面の状態の写真を比較して示す図。 鋼管の外面に生成するスケール量を計測するための試験の工程を示す図。 同試験における炉内温度の経時変化を示す図。 同試験に用いる試料に含まれるデキストリン水溶液を鋼材表面に塗布した場合のスケール生成量をグラフで示す図。 実施例1−3及び比較例1−6について同試験を行った結果、得られた各スケール量をグラフで比較して示す図。 実施例2−7について同試験を行った結果、得られた各スケール量をグラフで比較して示す図。 実施例2−7についての同試験における炉内で加熱中の鋼管の状態を写真で比較して示す図。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態は、鋼材(炭素鋼)からなる試験用の鋼管に塗布される酸化抑制剤であり、一例として、デキストリン水溶液160gに食塩6.1g(7.5ccに相当)を溶解したものである。デキストリン水溶液は、水139.2gに水溶性デキストリン(以下、単に「デキストリン」と称する)20.8gを溶解したもの(13重量%デキストリン水溶液)である。一方、食塩には市販のものを用いているため、少なくとも97重量%以上の塩化ナトリウムを含有しており、その他に微量成分として無水硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を3重量%以下の割合で含有している。ただし、本実施形態で用いた食塩中におけるこれらの微量成分組成の詳細は不明である。
上述の通り、食塩の主成分は塩化ナトリウムであり、本実施形態における酸化抑制剤の主体となるものである。そして、デキストリンは、酸化抑制剤に粘性を持たせることによって、鋼管の表面への食塩(塩化ナトリウム)の付着性能を高めるために用いている。
ここで、本実施形態の酸化抑制剤を塗布した鋼管を熱間処理した場合と、酸化抑制剤を塗布していない鋼材を熱間処理した場合とを比較して、スケール生成の有無若しくは多寡の相違による熱間処理後の鋼管の品質の違いについて行った試験について説明する。
図1は、鋼管1に対する熱間鍛造加工の工程を示す概略図である。同図に例示するように、この熱間鍛造加工工程では、所定寸法の鋼管1を、熱間鍛造装置2における一対のダイス21,21間に下端部側を支持させて鉛直姿勢で挿入するとともに、上端部側をグリップ22,22により強固に保持する。そして、鋼管1を熱しつつ、下端部からダイス21,21に沿わせたポンチ23を挿入して上方へ押しつけることで、熱間鍛造を行う。この試験では、鋼管1の表面、特に下端部1x(本試験の場合、約10mの長手寸法の鋼管の下端部約30cmの領域)に本実施形態の酸化抑制剤を塗布して加熱した場合と、何も塗布しないで加熱した場合とにおいて、グリップ22に保持された部分に滑り跡(グリップ痕)がどのように発生するかを調べた。
図2は、上記のとおり熱間鍛造を行った後の鋼管1の表面、特にグリップ22により保持されていた部分の写真を比較して示したものである。同図(a)は、従来通り鋼管1の表面に酸化抑制剤を塗布していない場合を示している。この場合、鋼管1の表面における周方向には間欠的にグリップ22による滑り跡1aが明確に生成している。この滑り跡1aは、鋼管1を熱間鍛造した場合に、その鋼管1の下端部1xにおける表面での加熱時の酸化被膜(スケール)の生成に伴い、鍛造時に工具と加熱された管表面の間にスケールが介在することによって摩擦抵抗が増大することで多大な鍛造荷重が作用するため、端面から十分離れた部分で鋼管を把持している通常のグリップ力では鍛造荷重を支え切れずに把持部に滑りが発生することで発生するものである。一方、同図(b)は、鋼管1の表面に本実施形態の酸化抑制剤を塗布した場合を示している。酸化抑制剤は、鋼管1の表面に刷毛塗り、噴霧により塗布してもよいし、鋼管1の該当部分を酸化抑制剤に浸漬することで塗布してもよい。この場合、同図(a)に示したような滑り跡1aの発生はほとんど認められない。このことは、鋼管1の下端部1xの表面に酸化抑制剤を塗布した場合には、スケールがほとんど生成しないことを明確に示している。
このように、塩化ナトリウムを主成分とする食塩を含有した本実施形態の酸化抑制剤を表面塗布した鋼管(鋼材)を加熱処理することで、従前は鋼材の表面に生成していた酸化被膜によるスケールを有効に抑制することが可能である。特に、本実施形態では、食塩をデキストリン水溶液に混合しているため、デキストリンの粘性により食塩が鋼材表面に付着し易くなっており、鋼材表面の酸化抑制効果を向上することができる。以上により、加熱処理によるスケールの生成によって生じていた鋼材の所謂「痩せ」が生じ難く、鋼材製品の品質や歩留まりを向上することができるものである。また、本実施形態の酸化抑制剤に含まれる食塩やデキストリンや水は、鋼材の加熱処理時に昇華、蒸発又は燃焼するなどして、加熱処理後の鋼材表面にはほとんど残存することがなく、また加熱により臭気や危険なガスが発生することもないため、従来の酸化抑制剤のように硬化して鋼材表面に残存することにより製品品質の劣化や工具の損傷が生じたり、残存物の除去やスケールの物理的除去が必要であったというような問題も起こらず、鋼材の加工現場においても安価且つ安全に使用することができる。
なお、例えば、本実施形態の酸化抑制剤に代えて、デキストリンを含まない食塩水を酸化抑制剤として用いることも可能であるし、水に溶解していない食塩(好ましくは食塩粉末)を酸化抑制剤として用いても、スケールの生成抑制効果を得ることができると考えられる。本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、塩化ナトリウムを主成分とするものに限られず、炭酸マグネシウムを主成分とする混合物とデキストリンとの水溶液を適用することができ、この混合物には他の化合物を含有させることも可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。このような本発明に係る酸化抑制剤の種々の例については、以下の実施例の項目で言及することとする。
ここでは、本発明に係る各種実施例と各種比較例を試料として鋼管(炭素鋼の素管。上述の実施形態で用いたような鋼管から一部を切り出したもの)の表面に塗布し、試験炉にて加熱し、その後冷却した鋼管の表面にどのようにスケールが生成したかについて行った試験について説明する。
この試験では、図3にその工程を写真を用いて示すように、(1)鋼管の表面に刷毛塗りにより各種試料を塗布し、(2)その鋼管を試験炉にて設定温度1100℃で35分間加熱した後、(3)鋼管を冷却して秤量し(秤量1)、その後、(4)鋼管の表面に付着しているスケールを剥離して鋼管の重量を秤量する(秤量2)という工程で行っている。そして、スケールの除去前後の重量の減少量を生成したスケールの重量{=(秤量1)−(秤量2)}として、試料の違いによる鋼材の外面におけるスケール生成量の比較を行っている。なお、工程(2)の鋼管の写真は、試験炉から取り出した直後の鋼管を撮影したものである。この写真の鋼管において、白っぽく写っている部分が赤熱している鋼材の表面であり、その鋼材の表面で部分的に黒っぽく見える部分がスケールである。なお、このように試験炉で熱した鋼管の状態は、上述した実施形態のように実際に加熱鍛造される鋼管の端部の状態と同様である(後述する図8の写真につていも同様である)。
ここで、使用した鋼管は、外径88.5mm、肉厚10mm、高さ100mm±3mmの寸法であり、重量は1840gである。この鋼管に塗布された試料は、いずれもデキストリン水溶液160g(13重量%デキストリン水溶液)に7.5cc相当の化合物を溶解したものから5g採取して試料としたものである。また、加熱処理中の炉内の設定温度は1100℃(最高1100℃)であるが、図4に示すように、1100℃に熱せられた炉内に鋼管を入れることで、一時的に温度が低下している。
なお、試料中に含まれるデキストリンによるスケール生成抑制に与える効果についても、上述した工程に従って予め調べた結果を図5に示す。すなわち、鋼管の表面に何も塗布していない場合の鋼材の外面のスケール量が約20gであった(図中、棒グラフの左側)のに対して、鋼管の表面に上記のデキストリン水溶液のみを塗布した場合のスケール量は約13gであった(図中、棒グラフの右側)。このことから、デキストリン水溶液のみであっても、一定程度のスケール生成抑制効果があるものといえる。
次に、試験に用いた試料について説明する。各試料は、上述した通り、160gのデキストリン水溶液に7.5cc相当量の下記の化合物をそれぞれ溶解し、そのうち5gを鋼管の表面に塗布している点で共通である。下記の各実施例及び比較例に含まれる化合物は、ナトリウム、マグネシウム、カリウムの塩化物若しくは炭酸塩であり、食塩に含まれているか若しくは含まれている可能性がある化合物である。
(実施例1)食塩 6.1g
(実施例2)塩化ナトリウム 6.1g
(実施例3)炭酸マグネシウム 3.8g
(比較例1)炭酸ナトリウム 5.3g
(比較例2)塩化カルシウム 4.3g
(比較例3)炭酸カルシウム 2.3g
(比較例4)塩化カリウム 5.4g
(比較例5)炭酸カリウム 5.1g
(比較例6)塩化マグネシウム 2.2g
これらの実施例及び比較例を試料として鋼材の表面に塗布し、上述した試験工程により鋼材の外面に生成したスケール量を図6にグラフとして示す。同図からは、実施例1−3の場合は、比較例1−6と比べて生成したスケール量が格段に少ないことが明らかである。具体的には、食塩のデキストリン水溶液(実施例1)と塩化ナトリウムのデキストリン水溶液(実施例2)では、共に約11gのスケール生成量であり、図5に示したデキストリン水溶液のみを塗布した場合よりもスケール生成量が若干少ない結果であったが、炭酸マグネシウムのデキストリン水溶液(実施例3)では、スケール生成量が約4gという、極めて良好なスケール生成抑制効果が認められた。これらの実施例に対して、各比較例では、デキストリン水溶液のみを塗布した場合と同等のスケール生成量か、若しくは何も塗布しなかった場合よりも多くのスケール生成が認められたが、その理由については、これらのスケールは表面に極めて厚く且つ均一に形成されていることから、これらの各種の塩を使用した場合には炭素鋼表面の酸化を推進する化学反応が作用していると考えられるが、詳細は不明である。しかし、炭酸マグネシウムと、塩化ナトリウムと、塩化ナトリウムを主成分とする食塩については、顕著なスケール生成抑制効果があることが確認された。
そこで、デキストリン水溶液中に塩化ナトリウム(NaCl)と炭酸マグネシウム(MgCO)の混合物を配合を種々変えた実施例4−7を作成し、これらと上述した実施例2と実施例3について、再度上述したようにスケール生成量を計測して比較した。以下に、実施例4−7における塩化ナトリウムと炭酸マグネシウムの配合比(重量比)を、両者の混合物の重量に対する炭酸マグネシウムの重量の割合で示す。すなわち、実施例2は炭酸マグネシウムが0%(100%塩化ナトリウム)、実施例3は100%炭酸マグネシウムである。
(実施例4)炭酸マグネシウム 20%
(実施例5)炭酸マグネシウム 40%
(実施例6)炭酸マグネシウム 60%
(実施例7)炭酸マグネシウム 80%
図7に、実施例2−7の試料を鋼管に塗布して加熱した後における、鋼管の外面に生成したスケール量をグラフとして示す。同図から明らかなように、実施例2と実施例3については、図6の試験結果と若干の誤差はあるが、鋼材の外面に生成したスケール量は、炭酸マグネシウムの割合が増えるに従い減少していることが認められる。また、図8に、実施例2−7の試料を塗布して加熱後、試験炉から取り出した直後の鋼管の状態を撮影した写真を並べて示す。これらの写真中、白っぽく写っている部分が赤熱している鋼材の表面であり、その鋼材の表面で部分的に黒っぽく見える部分がスケールである。これらの写真からも分かるように、試料中の炭酸マグネシウムの割合が増えるほど、スケールの生成量が少ないことが認められる。
以上の結果からも、鋼管の表面に塗布しておくことで、鋼管を加熱処理した後に生成するスケールを抑制することができる本発明の酸化抑制剤には、炭酸マグネシウム、塩化ナトリウム、又はこれらの混合物を含有させることが極めて有効であるといえる。
本発明は、鋼材の加熱処理において、鋼材表面に塗布することでスケールの生成を抑制することができるものであるため、鋼材の熱間鍛造や熱間工具の製造等といった鋼材に対する加熱処理工程において好適に利用できるものである。
1…鋼管(鋼材)
1x…下端部
1a…滑り傷
2…鍛造加工装置
21…ダイス
22…グリップ
23…ポンチ

Claims (2)

  1. 加熱処理前の鋼材の表面に塗布される酸化抑制剤であって、
    炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む混合物と、デキストリンとを含有する水溶液であることを特徴とする酸化抑制剤。
  2. 前記混合物は、炭酸マグネシウム塩化ナトリウムを含有する食塩である請求項1に記載の酸化抑制剤。
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