JP5377255B2 - フライ様食品 - Google Patents

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Description

本発明は、調理前の冷凍食品として供給されるフライ様食品に係り、特に高齢者等の嚥下困難者が容易に咀嚼嚥下できるように工夫されたフライ様食品に関するものである。
従来、油で揚げることにより調理される揚げ物食品としての「フライ食品」は、電子レンジにより加熱して可食状態となるように調理できるようにしたものが、数多く提案されており、(特許文献1参照)、調理に際して、衣液やパン粉を使用しないで済むことから調理場を汚すことがなく、特に加熱した油を使用しないことにより調理の手間や加熱のための火を使わなくて済み、火災等の危険を極端に軽減できる利点がある。
特開2003−102402号公報
特許文献1をはじめとする電子レンジ調理フライ食品は、「油で揚げることなく」フライ食品の食感や風味、特にフライ食品の衣の「サクサク感」等をそこなわないような種々な工夫をこらすことに主眼がある。つまり、フライ食品の「衣部分」は、油で揚げる調理工程において、高温の油中で衣部分に含まれる水分が蒸発して硬くなっており、その硬さが、あの特徴あるサクサク感となっている。
このため、電子レンジ調理等においては、高温の油で調理しない場合に、どのようにして、そのような衣のサクサク感を出すか、あるいは同じと言わないまでも近いものとするかに工夫をこらすものが多い、
しかしながら、高齢になって、咀嚼、嚥下能力が低下した人は、このようなフライ食品の持つサクサクした食感自体が摂食を困難にするものである。なぜなら、「サクサク感」は食品を噛みしめた時に、硬い食品を上下の歯列にて破砕する際、歯の歯根膜に伝えられる感覚であり、「サクサク感」のある食品は「硬い」食品だからである。
そして、このようなフライ食品の「硬度」は、パン粉の粒度、付着具合(密度、厚さ等)により、一定せず、そのことが咀嚼・嚥下困難者の喫食をより困難にしている。
すなわち、これまでの技術ではこのような観点にたってフライ食品、あるいはフライ様食品を改良することを試みたものはなく、高齢者等の嚥下困難者にとっては、かつて味わったことのあるフライ食品を食したいという欲求はあっても、フライ食品が共通して持っている「衣の硬さ」がその喫食を困難にしているのである。これらの人々にとっては、「フライ食品そのもの」を食することはできないことは理解していても、それにできるだけ近いもの、すなわち、フライ食品に近似したものを食したいという欲求を失ってはいない。むしろ、そのようなものが求められているのである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、嚥下困難者によって喫食可能なフライ様食品に求められる「硬度」「粘性」等の物性や見た目、風味を解明することにより、嚥下困難者が見た目にはフライ食品であり、実際に食すると柔らかくなめらかなものとすることにより、咀嚼・嚥下可能なフライ様食品を提供することを目的とする。
上記課題は、本発明にあっては、コロッケやメンチカツ等のフライの種類に合わせて選択される中種と、該中種の外面に適用される衣材を含んでいる調理用フライ様食品であって、該衣材が、水および/または油を主材として、穀粉、たんぱく、生澱粉、加工澱粉から選択される1以上の材料でなるものを衣層形成素材として加えた衣液と、粉粒状衣素材を有しており、前記衣材を構成する成分の種類と配合比、物性を調整することにより、蒸し調理加工後の破断応力値である硬さを、揚げ加工食品の破断応力値である硬さのほぼ半分以下に設定したことを特徴とする。
上記構成によれば、本発明の調理用フライ様食品を蒸し調理することにより、咀嚼・嚥下能力が低下した高齢者等においても、容易に咀嚼できるとともに、柔らかく調理できるので、嚥下することも容易となり、咀嚼・嚥下能力が低下した人もフライと近似した食品を楽しむことができる。
なお、揚げ加工食品の破断応力値の一義的な決定は困難であることから、本発明者等は「揚げ加工食品」として市販の「メンチカツ」を選択した。当該メンチカツの平均的な破断応力値は13.0×10の4乗N(ニュートン)/mであった。このことから、「(一般的な)揚げ加工食品の破断応力値」とは、13.0×10の4乗N(ニュートン)/mとほぼ同義である。
好ましくは、前記蒸し調理加工後の破断応力値である硬さを5.0×10の4乗N(ニュートン)/m程度以下に設定したことを特徴とする。
上記構成によれば、蒸し調理後の食品を高齢者等が咀嚼すること、あるいは箸やスプーンなどで切り取ることが容易で、しかも咀嚼中に大きな抵抗感を生じることなく、喉に詰まらないように適量ずつ嚥下することが可能となる。
好ましくは、前記蒸し調理加工後の破断応力値である硬さを3.0×10の4乗N(ニュートン)/mないし5.0×10の4乗N(ニュートン)/m程度に設定したことを特徴とする請求項2に記載の調理用フライ様食品。
上記構成によれば、より咀嚼・嚥下が容易となり、高齢者等において、より確実に喫食が可能となる。
好ましくは、前記衣液の粘度を500cpsないし3500cpsとすることを特徴とする。なお、cps=センチポアズである。
上記構成によれば、粘度が500cpsより低いと粉粒状衣素材の付着性が悪くなり、粘度が3500cpsより高いと衣液が重くダレてしまい、見た目も劣化する。
より好ましくは、前記衣液の粘度が700cps以上であれば、粉粒状衣素材の付着性も申し分なく、2500cps以内であれば、一般食(一般のフライ食品)と比較して見た目の相違が少なくなり、食欲を向上させることができる。
好ましくは、前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム主体のガム類を1.5重量%を上限として添加することを特徴とする。
上記構成によれば、一般食としてのフライ食品の見た目を得られ、衣液のダレを防止するための粘度を得るには、増粘剤として、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム主体のガム類を用いる場合には、1.5重量%を上限として添加するのが好適である。
好ましくは、 前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、α化澱粉を7重量%を上限として添加することを特徴とする。
上記構成によれば、一般食としてのフライ食品の見た目を得られ、衣液のダレを防止するための粘度を得るには、増粘剤として、α化澱粉を用いる場合には、7重量%を上限として添加するのが好適である。
好ましくは、前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、α化澱粉を7重量%を上限として添加し、さらにガム類を2重量%以下添加することを特徴とする
好ましくは、前記衣層形成素材のとして、たんぱくおよび/または加工澱粉を用いることを特徴とする。
上記構成によれば、衣の固化強度を向上させ、調理後の取り扱いを向上させるとともに、硬すぎない食感を得ることができる。
好ましくは、前記衣層形成素材の衣液中の添加量を0.5重量%ないし25重量%とすることを特徴とする。
上記構成によれば、衣層形成素材を添加して、衣の固化強度を向上させ、調理後の取り扱いを向上させる場合、衣液中の添加量が0.5重量%未満であると、調理後の取り扱いにおいて、衣が崩れやすく、25重量%を超えると、「硬い」食感となってしまう。
好ましくは、前記衣材に、油脂および乳化剤を1重量%以上5重量%以下添加することを特徴とする。
上記構成によれば、調理後の温度低下による食感の低下を有効に防止することができる。
好ましくは、前記衣材に、糖を2.5重量%以上添加することを特徴とする。
上記構成によれば、調理前に冷凍した場合に、冷凍変性における食感の低下を防止することができる。
好ましくは、前記粉粒状衣素材の少なくとも一部としてパン粉を用いる場合に、該パン粉が、揚げ色に着色されるとともに、5Mないし10Mの粒度のものを用いることを特徴とする。
上記構成によれば、揚げ調理しないことから、焦げ色を得ることができない分、パン粉に揚げ色を着色することで、見た目の質感を向上させることができる。そして、パン粉の粒径が5Mより、大きくなると、衣表面が粗くなりすぎ、10Mよりも小さいと衣表面の凹凸が不明確となり、衣の質感を保持できなくなる。ここで、「5M」の「M」とは、「メッシュ」のことであり、「5M」とは、1インチ平方の平面を縦横に各5等分した大きさの網目を通過するサイズを意味する。
好ましくは、前記衣材に、風味付け材料を適量添加することを特徴とする。
上記構成によれば、蒸し調理における特有の「臭い」を低減もしくは消すための風味付け材料、例えば、ウスターソース、カレー粉、醤油その他香辛料等を添加することが有効である。
本発明は、嚥下困難者によって喫食可能なフライ様食品に求められる「硬度」「粘性」等の物性や見た目、風味を解明することにより、嚥下困難者が見た目にはフライ食品であり、実際に食すると柔らかくなめらかなものとすることにより、咀嚼・嚥下可能なフライ様食品を提供することができる。
本発明の実施の形態にかかるフライ様食品の製造工程の一例を簡略に示すフローチャートである。 メンチカツの調理法別破断応力テスト結果を示すグラフである。 表3のAガム類の種類別の添加量に応じた粘度を示すグラフである。 表3のBα化澱粉の種類別の添加量に応じた粘度を示すグラフである。 従来の衣液と本実施形態の衣液の調理後の判断応力を温度別に示すグラフである。 パン粉の種類別破断強度を示すグラフである。
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の実施の形態にかかるフライ様食品の製造工程の一例を簡略に示すフローチャートである。
ステップ1は、フライ様食品の中種の生地を練る工程である(ST1)。
中種は、フライの種類によって異なり、メンチカツ、各種コロッケ(「クリームコロッケ」「ビーフコロッケ」「カニコロッケ」等)等の各種のフライ食品に対応して異なる材料が使用される。
後述する実施例にて、メンチカツとコロッケについて中種の構成例を説明する。
図1において、中種となる生地を作成する(ST1)。
次に所定の型内に中種生地を所定量入れ、保型させる(ST2)。なお、加熱調理により硬さや形状変化をしない生地の場合には、ST2の工程は不要である。
続いて、加熱調理器等により加熱加工、例えば蒸し加工を施す(ST3)。例えば、100度(摂氏、以下、温度表記は全て「摂氏」)で蒸し、中心温度85度に至るまで加熱する。なお、中種の種類によってはこの蒸し加工もしくは加熱加工は省略される。
次に、好ましくは、蒸し調理後の中種に「打ち粉」を施す(ST4)
続いて、中種を冷凍する(ST5)。
次に、冷凍した中種に衣付けを行う(ST6)。衣付けは、後述する衣液を中種の外側に塗布し、それに後述する粉粒状衣素材、例えばパン粉をまんべんなく纏わせることにより行われる。
その後冷凍され(ST7)、出荷のための箱詰めがなされる(ST8)。
そして、ユーザーが喫食する前に、各家庭や施設において、蒸し調理が行われる(ST9)。
表1は、上記した中種につける衣を形成するための一般に広く使用されている衣材に利用される衣液の組成例を示すものである。
Figure 0005377255
本実施形態では、後述するように、水および/または油を主材として、穀粉、たんぱく、生澱粉、加工澱粉から選択される1以上の材料でなるものを衣層形成素材として加えた衣液が使用されており、それに後述する粉粒状衣素材を加えて衣材を構成するものであり、この衣材の成分の種類と配合比、物性を後述するように調整することにより、蒸し調理加工後の破断応力値である硬さを、図2で説明するように、揚げ加工食品の破断応力値である硬さのほぼ半分以下にし、好ましくは最大値M以下で、望ましくは目標値K程度とすることを内容としている。
図2は、この実施形態で説明するフライ様食品の特性を示すグラフである。
グラフ右に示すAは、一般のフライ食品、すなわち、中種に衣材を適用し、それにパン粉等を付着させて、高温の油(170度、9分間)で揚げ調理した食品を喫食する際の破断応力の平均値を示しており13.0×10の4乗N(ニュートン)/mであった。
左側は、同じ中種と衣材を用いたものを蒸し調理(スチームコンベンションで100度にて10分調)したものBを示しており、その破断応力は、5.5×10の4乗N(ニュートン)/mであった。
この計測に当たっては、それぞれ上記調理後に、20度の恒温槽にて、中心温度20度まで冷やした各サンプルについて、レオメータ(山電社製、DEEP METER RE−2−3305S)にて、20φのプランジャーで挿し(圧縮速度10nm/sec)応力測定した(UDF区分2の測定方法)。
既に説明したように、Aの食品の「衣部分」は、油で揚げる調理工程において、高温の油中で衣部分に含まれる水分が蒸発して硬くなっている。この硬さは、高齢になって、咀嚼、嚥下能力が低下した人にとって、その摂食を困難にしている。
そこで、本実施形態では、喫食の際の食品の判断強度である硬さの目標値を3.0×10の4乗N(ニュートン)/m程度(K)とし、最大でも5.0×10の4乗N(ニュートン)/m程度(M)のフライ様食品を、以下のような衣材を用いることにより実現するものである。
また、食品Bは、通常のフライ食品を「蒸し調理」したために、生っぽいパン粉の蒸し臭があり、見た目の色もフライ食品とかけ離れており、食欲を有効に喚起できないものであるが、そのような欠点を後述する衣材の工夫により無くするようにしたものである。
(衣材の調整)
本実施形態の衣材の衣液については、表1に示すように、衣層形成素材として、乳化油脂、α化澱粉、キサンタンガム、水、薄力粉、酸処理澱粉、ヒドロキシプロピル化架橋澱粉等を用いることができ、これに例えば、粉粒状衣素材として、ドライパン粉を用いている。
(粘度の調整)
本実施形態の食品は、調理に際して、従来のように油で揚げるものではなく、「蒸し調理」を前提とし、調理時に水分の蒸発が少ないことから、衣液がそのまま「食感」に影響する。すなわち、衣層の厚さのブレは食感への影響へつながるため、粉粒状衣素材を付着させる衣液の適正粘度が重要になる。
そこで、衣液の粘度と食感や見た目の関係について、以下のようにして検証して、表2にまとめた。
Figure 0005377255
ここでは、段階的に粘度の異なる衣液を水に小麦粉を添加することで作成し(C型粘度計)、咀嚼・嚥下を考慮した冷凍された中種に粉粒状衣素材としてドライパン粉10メッシュ(1インチ平方の面積を縦横にそれぞれ10等分した網目を通過させたパン粉)を付着させ、冷凍し、蒸し調理(100度、10分)後に10人のパネラーにて下記事項(a)(b)を見た目と喫食で評価してもらう 。
(a)粉粒状衣素材の接着性(蒸し調理後中種と衣がしっかりと接着しているか)
(b)見た目(衣の剥げ、形状の変化はないか)
表2中に表示された評価として、丸印は「良い」、三角印は、「悪いと思うほどではないが、より良いものを望む」、バツ印は「悪い」という感想を示している。
表2の結果から、前記衣液の粘度は、500cpsないし3500cpsとすることが好ましい。
粘度が500cpsより低いと粉粒状衣素材の付着性が悪くなり、粘度が3500cpsより高いと衣液が重くダレてしまい、見た目も劣化する。
より好ましくは、前記衣液の粘度が700cps以上であれば、粉粒状衣素材の付着性も申し分なく、2500cps以内であれば、一般食(一般のフライ食品)と比較して見た目の相違が少なくなり、食欲を向上させることができる。
(増粘剤の検討)
上記したような衣液の粘度調整には、例えば表3の増粘剤を用いることができる。
Figure 0005377255
表中のパーセンテージは、増粘安定剤製剤中のガム重量を示している。以下の説明でパーセント(%)表示は全て「重量%」である。
表3のガム類(A)と、α化澱粉(B)について、それぞれ添加量別の粘度を示したのが、図3と図4である。
表3のサンプルの添加量による衣液をつくり粘度のちがいをC型粘度計にて測定する。表3のサンプルは吸水性が高く、水に単体で溶解するとダマができやすく、効果の確認にならないため、液体油脂である大豆油にて分散後、水に溶解させることとする。又、油脂が混合されることで、衣液が分離するため、その防止に乳化剤を添加する。
液体油脂10%、乳化剤2.5%は固定量とし、表−3のサンプルA:ガム類なら0.5%、1.0%、1.5%、2.0%の4段階にて添加量をあげ、その際にあげた添加量分を水にて調整する。
これを、表3サンプルA:ガム類の小分類1ないし6の6種類で比較する。
又、表3サンプルB:α化澱粉もA:ガム類と同様の方法にて表−3サンプルB:α化澱粉の小分類1ないし3の3種類にて比較する。
尚、添加量はA:ガム類より多く必要であることから4%、5%、6%、7%、8%の5段階とした。
図3において、ガム類Aの6であるローカストビーンガム100%の製剤では、増粘性が低いことがわかり、増粘目的として使用するには適するとはいえない。ただし、大きな増粘効果を必要としない場合や安定剤としての効果として使用することは問題ではない。増粘効果を期待して使用する場合はA−1、2、4のようなキサンタンガム、グアガム、ジェランガム主体の増粘剤が好ましい。
特にA−4のジェランガムは57%の含有量で、高粘度を示すことから、少量添加で効果がある。
キサンタンガム、グアガム、ジェランガム主体の増粘剤を単体で使用し、表2のテスト結果から判明した粘度(500ないし3500cps)にするには0.5ないし1.5%程度の添加量が好ましい。
ただし、衣液中に含まれる衣層形成素材のもともとの粘性、その他の増粘剤(α化澱粉)などの併用による粘性により、増粘剤として要求される粘度はこの実験より低いため、添加量の範囲としては下限値は設定せず1.5%以下とする。
図4において、Bのα化澱粉は増粘剤としては1ないし3の種類(表3参照)により効果が異なることがわかる。
添加量としては単体で使用し、表2から判明した粘度(500ないし3500cps)にするには、添加量として、5ないし7%が好ましい。
ただし、衣液中に含まれる衣層形成素材のもともとの粘性、その他の増粘剤(ガム類)などの併用による粘性により、増粘剤として要求される粘度は本テストより低いため、添加量の範囲としては下限値は設定せず7%以下とする増粘目的以外での効果、例えば衣層形成素材としての役割を含むならば上記添加量範囲は適用外とする。
(衣形成強度・・・衣材の調理的性および食感における添加量の検討)
衣液に加える衣層形成素材を以下のように選択し、その配合を調整することにより、衣の強度、すなわち固化力を向上させることにより、衣を崩れにくくし、調理に際して、あるいは調理後の取り扱いを容易にすることができる。ただし、固化力が強すぎると喫食時の硬さに悪影響が出てしまう。
表4は、衣層形成素材の成分として考えられるものをまとめたものであり、表5は各衣層形成素材の成分を選択して、その成分量を調整した際の結果を示している。
Figure 0005377255
Figure 0005377255
この検証では、表4の各サンプルを水に溶解し添加量別に袋に密閉し、100度スチームコンベクションにて10分蒸した。次いで、常温(20度)まで冷却し、硬さを10人のパネラーにより官能評価したものである。
ここで、表5において、丸印は取り扱い可能な強度でソフトな食感、三角印は取り扱い強度、ソフトな食感のどちらかが適正で他方が目標品質内の境界線である場合、バツ印は、取り扱い強度又は食感のどちらかが目標に満たない場合、横線は、溶解できないため判断できない(吸水してペースト化)結果となった場合を示している。
表5を参照すると、次のような判断ができる。
衣層形成素材として穀粉を単体で使用する場合は衣液中2.5%ないし25%の添加が適する。
衣層形成素材としてたんぱくを単体で使用する場合は衣液中0.5%ないし25%の添加が適する。
衣層形成素材として生澱粉を単体で使用する場合は衣液中2.5%ないし25%の添加が適する。
衣層形成素材として加工澱粉を単体で使用する場合は衣液中0.5%ないし25%の添加が適する。
したがって、衣層形成素材として1種類又は2種類以上での添加量は衣液中0.5%ないし25%が適している。
ただし、同様の大分類、小分類であっても商品によっては他社品との差別化のために特殊な製法を加えることで、固化力、保水力など異なる場合があるため、本テスト結果は全ての商品にあてはまるものではない場合がある。
例えば表5のたんぱくの大豆は2種類あるが、適性添加量が異なる。また、加工澱粉のリン酸架橋もAとBの2種類あるが、リン酸架橋Bタイプは架橋強度を極端にあげ、固化しないように加工しており、それを差別化ポイントとしているため、本来の目的である固化させるための衣層形成素材としては、このましくない。
(調理後の喫食の際の食感について)
上記したように、衣層形成素材の成分と配合比により、食感を加味したこれらの適性添加量を得たが、実際の喫食シーンを考慮すれば温かい状態で食べるのか冷めた状態で食べるかは決まっていないため、対象者に安全に安心して食べていただくには、調理した食品が温度によって食感の変化があることは少ないほうがよい。
そこで温度変化による衣液内の衣層形成素材を種類別に比較し、最適な衣層形成素材の種類を以下の方法により、確認する。
表4のサンプルを水に対して15%添加混合しスチームコンベクションにて100度で10分蒸す。喫食温度帯である温かい状態(60度)のものと、これを放置して温度をコントロールして冷めた状態(常温20度)にしたものとの食感の変化を10人のパネラーに官能評価で確認してもらう。
その結果をまとめたものが表6である。
Figure 0005377255
Figure 0005377255
Figure 0005377255
表6を参照すると、食品温度が60から20度になった場合、官能評価にて食感の変化がある場合、それは全て食感が「硬くなる」という変化であった。
表6において、衣層形成素材として穀粉を単体で使用する場合は温度低下による食感の変化がやや見られる。
液付着量を減らすか、他の衣層形成素材との併用、温度低下による食感の変化を抑える目的で油脂、乳化剤などの食感改良剤の併用が好ましい。
また、表6の結果から、衣層形成素材としてたんぱくを単体で使用する場合は温度低下による食感の変化がなく好適である。
ただし、表5よりたんぱくの種類によっては少量で固化するものがあり、衣層形成素材の適正添加量では硬くなりすぎる場合もあるため、たんぱく固化の抑制に効果がある油脂や乳化剤などの食感改良剤の併用が好ましい。また、他の衣層形成素材と併用することで、添加量を少なくすることが考えられる。
表6において、衣層形成素材として生澱粉を単体で使用する場合は温度低下による食感の変化が大きい。そこで、液付着量を減らすか、他の衣層形成素材との併用することで添加量を抑えるか、あるいは、温度低下による食感の変化を抑える目的で油脂、乳化剤などの食感改良剤の併用が好ましい。
また、表6より、衣層形成素材として加工澱粉を単体で使用する場合は温度低下による食感の変化が少ない。少量のたんぱくの補いで併用できれば最適であると思われる。
(さらなる食感の改良)
表6の検討から、調理後に温度低下による食感の硬化が起こることが判明した。具体的には、調理後の食品は、冷めた場合に硬くなっていく。そこで温度が冷めても硬くなることを抑制するために、食感改良剤として油脂、乳化剤を添加し、効果の確認をする。
尚、サンプルとしては、表6より衣層形成素材として、温度による食感の変化が少ない加工澱粉(エーテル架橋)と、温度による食感の変化が大きい生澱粉(コーン)主体の衣液で確認する。
具体的には、表7が加工澱粉(エーテル架橋)を主体に油脂を添加した場合、表8は、生澱粉(コーン)を主体に油脂を添加した場合を示し、それぞれ添加量を変更し、乳化剤は油脂に対して4%の添加と統一した。
表7と表8にそれぞれ示された配合のものをそれぞれ攪拌混合し衣液とし、その衣液を袋に密閉しスチームコンベクションにて100度で10分蒸し、その後常温(20度)まで冷却した食品を油脂添加量0%のものと、表6、表7の配合により油脂添加をした食品を同様に常温にして10人のパネラーに試食してもらい、食感として、その硬さが、軟らかいかどうか、評価してもらった。
表9が評価結果である。
Figure 0005377255
Figure 0005377255
Figure 0005377255
丸印は、「効果あり」すなわち、軟らかい。バツ印は「効果なし」すなわち、硬さが同じということである。
表9の結果より、加熱後温度低下により食感が大きく変化すると思われる生澱粉であっても2.5%以上の油脂及び乳化剤を添加することで、食感の変化を抑えることができる。
加工澱粉のような温度低下による食感の変化が防止に関しては、油脂添加量1%である程度効果を得られることが解る。
ただし、どのような衣層形成素材を使用しても食感改良を目的とした場合には、油脂及び乳化剤の添加量は2.5%以上必要である。
また、もともと、衣層形成素材自体が温度低下による食感の変化がない又は少ないものを使用する場合は、油脂及び乳化剤の添加量は1.0%でも効果がある。
ここで、乳化剤は油脂に対して1〜5%添加を目安とする。
(冷凍による食品の変性防止)
本実施形態の食品は、その多くが冷凍されて出荷・保管されるので、調理前には冷凍処理がなされる。
このため、冷凍による食感の変化も充分に加味していかなければならない。
一般的に架橋処理した加工澱粉は冷凍耐性があり、物性の変化は少ない。逆に生澱粉は冷凍により澱粉粒が破壊されやすく、物性の変化が大きい。そのために冷凍変性の防止を目的に糖を使用した。
ここでは、食品添加に適した代表的な糖を添加することで効果がでる最低量の確認をする。特に、効果の確認が一番必要とされると思われる上記生澱粉にて検証する。
下記の表10、表11は同じものであり、これら表に示された配合量に対応して混合した衣液をそれぞれ冷凍したものとしないものと分け、スチームコンベクションにて100度で10分蒸し、その後、常温(20度)まで冷却する。
表10、表11の配合により油脂添加をした食品を上記したように常温にして10人のパネラーに試食してもらい、評価してもらったのが、表12である。
Figure 0005377255
表12において、1ないし5の数字の評価が表記されている。「5」は、全く冷凍しないで調理したものと同等のものであり、数字が小さいほど変性が大きい。
以上の検証によると、冷凍による食品の変性の防止には、オリゴ糖の添加は2.5%で十分効果があり、トレハオース(粉糖)Aは、添加量を増加させれば効果があるが、オリゴ糖Bの方が添加量が2.5%程度で済むことから、より効率的である。
(風味の検討)
上記した各成分および配合比の検討と合わせて、風味成分の添加を行うことが好ましい。
ここでは、例えば、ウスターソース、カレー粉、醤油その他香辛料等を添加することが有効である。単数、もしくは複数選択して、配合する。配合量としては、フライ様食品にもっとも関係の深いウスターソースであれば、5%以上配合すると好ましい。
これにより、蒸し調理における蒸臭を消すことができ、これに替え/これに加えて、喫食事に特別他の調味料を使用することを省略することができる。
次に、上記の各成分やその配合比の検討結果に基づいて、表13に示す「蒸し調理用の衣液」を完成した。
Figure 0005377255
これを次に示す組成の広く用いられている「揚げ調理用の衣液」と本実施形態の「蒸し調理用の衣液」について、それぞれ「衣部分の」調理後の破断応力において比較してみる。この場合、あわせて、調理後の喫食時を想定して、それぞれ60度、20度(常温)における状態での比較を試みる。
Figure 0005377255
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図5に比較結果を示す。
揚げ調理用衣液で揚げ調理後の「衣部分の」の60度における破断強度Aは、3.69×10の4乗N(ニュートン)/m、同じく20度における破断強度Bは6.21×10の4乗N(ニュートン)/mである。
これに対して、本実施形態の衣液を蒸し調理した「衣部分」の60度における破断強度Cは、2.04×10の4乗N(ニュートン)/m、同じく20度における破断強度Dは3.17×10の4乗N(ニュートン)/mである。
図4の結果から、本実施形態の衣液を蒸し調理した衣部分は、破断強度が非常に低く、十分に柔らかくなっていることがわかる。
そして、調理後の温度(60度)と冷めた際の温度(20度)における破断強度差が、揚げ調理用衣部分では、2.52×10の4乗N(ニュートン)/mであるのに、本実施形態の衣液を行使した衣部分においては、同じ温度差における強度差が、1.13×10の4乗N(ニュートン)/mと小さく、この点においても優れている。
(粉粒状素材の検討)
粉粒状衣素材としては、衣液の外側に付けるものとして、代表的なものパン粉があり、市販の揚げ粉、胡麻、クラッカーの破砕したもの、アーモンドの破砕したもの等種々使用することができる。また、衣材の一部として、中種の衣液をつける前に付着させるものとして、細かいパン粉等でなる「打ち粉」を含む。
以下では、好適な粉粒状衣素材として、衣液に付着させるパン粉に限定して、その粒度や水分について検討する。
中種として4.0×10の4乗N(ニュートン)/m程度に軟らかくしたコロッケを上記した本実施形態の衣液(表13)にて粉粒状衣素材として表15のパン粉を付着させ、冷凍し、スチームコンベクションにて100度で10分蒸した後、喫食条件として一番悪くなる冷めた状態(20度)での食感、硬さ、見た目を評価する。表15のパン粉自体の破断強度は図6に示す。
食感、見た目は10人のパネラーにて表16に示す内容にて5段階評価してもらった。
硬さに関しては破断強度を測定する。測定方法は、レオメータ(山電社製、DEEP METER RE−2−3305S)にて、20φのプランジャー挿し(圧縮速度10nm/sec)で応力測定した(UDF区分2の測定方法)。
尚、揚げ調理しないということは、パン粉に揚げ色がつかないということである。そこで、揚げ調理後のパン粉と同様な揚げ色を最初から、カラメル色素、カロチノイド色素から選択される一つあるいは両方により着色し、これを衣付けすることで、揚げた様な衣にすることとした。表15のパン粉は全て上記のような着色をしたパン粉である。
表17に評価結果を示す。
表17によると、見た目は粒度が大きいほどよい。16Mまで小さくすると、表面の凹凸がなくなり、フリッターのようになってしまうため、パン粉としては10Mより大きい方がよい。
食感に関しては粒度の大きい生パン粉は個々の粒がモッチリとした粘性のある食感になる。また細かい16Mは逆に一枚層になってしまい衣層形成素材のような役割になって、これも粘性のある食感になる。
蒸し調理にて水分を吸収するため、生パン粉、ドライパン粉の水分量の違いによる影響はないと判断される。
硬さの評価は食感同様に反映されており、粘性がでてしまうものは破断強度値が高くなる。
以上より、ドライパン粉の5ないし10Mが衣液に付着させる粉粒状素材として適している。
図1で説明したように、フライ様食品を製造する。
すなわち、まず、中種となる生地を作成する。
この場合、メンチカツであれば、中種成分は例えば表18のようになり、コロッケであれば、表19のように形成する。
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作成した中種生地を所定の型内に中種生地を所定量入れ、保型させる(ST2)。
次に、スチームコンベクションにて100度で10分蒸す。ここでは、中心温度が85度に至るまで加熱する。
次に、好ましくは、蒸し調理後の中種に「打ち粉」を施す(ST4)。
続いて、中種を冷凍する(ST5)。
次に、冷凍した中種に衣付けを行う(ST6)。衣付けは、上述した実施形態の衣液(表13)を中種の外側に塗布し、あるいは保型した中種を衣液に浸け、それに5ないし10Mのドライパン粉をまんべんなく付着させる。
その後冷凍され(ST7)、出荷のための箱詰めがなされる(ST8)。
そして、ユーザーが喫食する前に、各家庭や施設において、蒸し調理が行われる(ST9)。
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。
フライ様食品の中種は様々な組成が考えられ、本発明はあらゆる種類のフライ様食品に適用できることは明らかである。
調理法はスチームコンベンションに限らず、あらゆる蒸し器を用いることができる。
上記実施形態に記載された事項は、その一部を省略してもよいし、上記で説明しない他の構成と組み合わせることによっても本発明の範囲を逸脱するものではない。

Claims (11)

  1. コロッケやメンチカツ等のフライの種類に合わせて選択される中種と、該中種の外面に適用される衣材を含んでいる調理用フライ様食品であって、
    該衣材が、水および/または油を主材として、穀粉、たんぱく、生澱粉、加工澱粉から選択される1以上の材料でなるものを衣層形成素材として加えた衣液と、粉粒状衣素材を有しており、
    前記衣材を構成する成分の種類と配合比、物性を調整することにより、蒸し調理加工後の破断応力値である硬さとして、
    前記蒸し調理加工後の破断応力値を5.0×10の4乗N(ニュートン)/m 以下に設定し、
    前記粉粒状衣素材の少なくとも一部であるパン粉が、カラメル色素および/またはカロチノイド色素を含有せしめて揚げ色に着色されており、
    前記衣材に、フライ食品に関係の深い風味付け材料として、ウスターソース、醤油、カレー粉等の香辛料から選ばれる少なくともひとつのものが適量添加されている
    ことを特徴とする調理用フライ様食品。
  2. 前記蒸し調理加工後の破断応力値である硬さを3.0×10の4乗N(ニュートン)/m2ないし5.0×10の4乗N(ニュートン)/m に設定したことを特徴とする請求項1に記載の調理用フライ様食品。
  3. 前記衣液の粘度を500cpsないし3500cpsとすることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  4. 前記衣液の粘度を700cpsないし2500cpsとすることを特徴とする請求項3に記載の調理用フライ様食品。
  5. 前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム主体のガム類を1.5重量%を上限として添加することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  6. 前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、α化澱粉を7重量%を上限として添加することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  7. 前記衣液の粘度を調整するための増粘剤として、α化澱粉を7重量%を上限として添加し、さらにガム類を2重量%以下添加することを特徴とする請求項6に記載の調理用フライ様食品。
  8. 前記衣層形成素材のとして、たんぱくおよび/または加工澱粉を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  9. 前記衣層形成素材として衣液中の添加量を0.5重量%ないし25重量%とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  10. 前記衣材に、油脂および乳化剤を1重量%以上5重量%以下添加することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の調理用フライ様食品。
  11. 前記衣材に、糖を2.5重量%以上添加することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の調理用フライ様食品。

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