JP5375768B2 - シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、近年、{110}面を主表面とするシリコンウェーハを用いてその主表面上にpMOSトランジスタを形成した場合、キャリア移動度が{100}面を主表面としたウェーハに比べて高くすることができることが見出されたことによって、{110}面を主表面としたシリコンウェーハが注目されている。
このため、{110}面を主表面としたエピタキシャルウェーハは、MPU等の高性能、高速デバイス用基板としての需要が高まってきている。
また、ヘイズの発生している部分は、高さ1〜10nm、サブミクロンから数十ミクロン程度の波長成分を有した凹凸によって表面粗さが悪化しており、デバイス特性を劣化させる問題も生じる。
その為、研磨によってエピタキシャル層の層厚均一性が劣化し、研磨起因による表面欠陥(PID:Polish−Induced Defect)を発生させてしまい、新たな問題が生じるという欠点がある。
なお、気相成長時の基板温度が1170℃未満では、ヘイズレベルや表面粗さが{100}基板と同水準にならず、高品質なエピタキシャルウェーハの製造が困難となる。また基板温度が1190℃より高温では、スリップ欠陥が発生するため、表面欠陥の少ないエピタキシャルウェーハを得ることが困難となる。このため、気相成長時の基板温度は1170℃以上1190℃以下とする必要がある。
このように、エピタキシャル層の成長後に、連続して1130℃〜1190℃の温度で水素雰囲気にて熱処理を行うことで、シリコン単結晶エピタキシャル層表面の平坦化をより図ることができ、更にヘイズレベルの改善および表面粗さの低減を達成することができる。
上述のように、1170℃〜1190℃の間の温度でシリコン単結晶エピタキシャル層を気相成長させることにより、高さ1〜10nm、サブミクロンから数十ミクロン程度の波長成分を有した凹凸を抑えることができる為、気相成長後に、エピタキシャル層表面を仕上げ研磨する事でさらにヘイズレベルを改善できる。
そして仕上げ研磨の研磨量を0.01μm〜0.05μmの範囲に設定することで、エピタキシャル層の層厚均一性を劣化させず、研磨起因の表面欠陥の無いヘイズレベルの良好なシリコンエピタキシャルウェーハをより確実に製造することが可能となる。
気相成長直後はシリコンエピタキシャルウェーハ表面には、自然酸化膜は存在しないが、大気中に保管する場合、時間経過とともに表面が酸化され、エピタキシャル成長後の仕上げ研磨量が安定しなくなる恐れがある。
そこで、エピタキシャル成長後48時間以上経過した場合には、仕上げ研磨前にフッ化水素を含有した洗浄液によって表面の自然酸化膜を除去しておくと、仕上げ研磨でのヘイズレベルの改善を確実に達成することができ、好適である。
本発明者は、{110}面を主表面としたシリコン単結晶基板にシリコン単結晶エピタキシャル層を気相成長させた際に発生する表面のヘイズの改善方法について鋭意研究を行った。
その結果、{110}面上に見られるヘイズは、シリコンエピタキシャル成長時にステップパンチングと呼ばれる原子ステップの束ね現象によって発生する、高さ1〜10nm、サブミクロン〜数十ミクロン程度の波長成分を有した凹凸によって生じることが分かった。これは、ステップフロー成長において{100}に比べて{110}の表面ステップでの原子の拡散距離が短いことに起因していると考えられる。
そしてこのためには、気相成長時のシリコン単結晶基板の基板温度を、従来の1100〜1160℃ではなく1170℃以上とすればよく、これによって表面の曇り(ヘイズ)および数ミクロン〜数十ミクロン程度の波長成分を有した表面の凹凸の発生を同時に改善できることが判った。また、基板温度を1190℃より高温として気相成長を行うと、スリップ欠陥が発生してしまうため、表面欠陥を少なくするという目的を達成できなくなることも判った。
そして上記知見を基にして、本発明を完成させた。
まず、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法において使用される気相成長装置の好適な一例として、枚様式の気相成長装置の構成について説明する。図1は、枚葉式の気相成長装置の概略の一例を示した図である。
また、反応容器12のうちの、気相成長用ガス導入管14が設けられた側と同じ側には、反応容器12内にパージガス(例えば、水素)をサセプタ13の下側の領域に導入するパージガス導入管15が設けられている。
まず、浮遊帯域溶融(Floating Zone:FZ)法あるいはチョクラルスキー(Czochralski:CZ)法等の公知の方法によって、主軸方位が<110>のシリコン単結晶インゴットを製造する。
そして、得られたシリコン単結晶インゴットを、頭部と尾部とを切断した後、インゴット周辺部を回転して削り、直径を正確に出すとともにインゴットを完全な円柱ブロックにする。
面取り終了後のシリコン単結晶基板に対して遊離砥粒を用いて両面ラップを行い、ラップウェーハとする。あるいは、固定砥粒を用いて両面を研削し、研削ウェーハとする。
次いで、ラップウェーハあるいは研削ウェーハをエッチング液に浸漬することにより、両面を化学エッチング処理する。化学エッチング処理は、シリコン単結晶基板の表面に生じたダメージ層を除去するために行われる。
この化学エッチング処理後に、表面あるいは表裏面をメカノケミカルポリッシングにより鏡面研磨を行い、さらに最終洗浄を施す。
具体的には、主表面が{110}面または{110}面からのオフアングル角度が0.5度未満のシリコン単結晶基板Wを、反応容器12内に投入し、その主表面が上を向くように、サセプタ13上面の座ぐり13a内に載置する。
これによって、ヘイズレベルが良好で表面粗さの小さなシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
これによって、更にヘイズレベルが良好で、表面粗さ(表面の凹凸)がより小さいシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
このような研磨装置21の研磨ヘッド25でシリコンエピタキシャルウェーハW’を保持し、研磨剤供給機構24から研磨布22上に研磨剤26を供給するとともに、定盤23と研磨ヘッド25をそれぞれ回転させてシリコンエピタキシャルウェーハW’の表面を研磨布22に摺接させることによって仕上げ研磨を行うことができる。
そして、このような研磨装置を用いて、シリコンエピタキシャルウェーハの表面を、研磨量0.01μm〜0.05μmの仕上げ研磨を行うことができる。
また、前述の研磨剤には、主にシリカを砥粒とした研磨剤が使用される。このため、シリカ砥粒の場合では、酸化シリコンの研磨速度はシリコンに比べて極めて遅くなり、シリコンエピタキシャルウェーハ表面に自然酸化膜が存在すると安定した仕上げ研磨が出来なくなる。
(実験例1−3)
エピタキシャル成長用のシリコン単結晶基板として、直径300mm、抵抗率0.005〜0.010Ω・cm、厚さ775μmのP++型で、主表面が{110}面からのオフアングル角度が1分の基板(実験例1)、主表面が{100}面からのオフアングル角度が1分の基板(実験例2)、主表面が{110}面からのオフアングル角度を最近接の<100>軸方向へ2°とした基板(実験例3)の3種類のシリコン単結晶基板を、各々複数枚準備した。
また、{110}ジャストに近い基板を用いた実験例1では、{100}基板を用いた実験例2よりも3〜4倍ほどヘイズレベルが高く、また、{110}より大きくオフアングルした基板を用いた実験例3の2〜2.5倍高い結果であった。また、この実験例1のシリコンエピタキシャルウェーハ表面を暗室内で集光ランプを用いて目視観察すると、中心には曇りは見られず、周囲に円環状にヘイズが発生していることが確認された。
しかし、成長温度1170℃以上の領域では、実験例1ではエピタキシャル層表面のヘイズレベルが急激に改善し、ほぼ実験例3に近いレベルまで改善が見られた。また、暗室内で集光ランプを用いて目視観察したところ、成長時基板温度1170℃以上では、実験例1においても、円環状のヘイズは消失していた。
しかしながら、{110}ジャストに近い基板を用いた実験例1の場合は、成長温度が1160℃以下の領域では、実験例2や実験例3のエピタキシャル層の表面粗さに対して約3倍粗く、基板中心部よりも外周部が粗い傾向を示した。
これに対し、成長温度1170℃以上の領域では、実験例1においても実験例2,3のエピタキシャル層の表面粗さと同等レベルまで改善され、上述のヘイズレベル評価結果と同様な傾向を示した。
この表面の凹凸は、シリコンエピタキシャル成長時の原子ステップの束ね現象によって発生するステップパンチングと呼ばれるものと考えられる。そして、1170℃以上の領域では、このステップパンチングが抑制されてヘイズレベルや表面粗さが改善されたと考えられる。
しかし、表1に示すように、高温の為にスリップ欠陥が発生してしまうことがわかり、成長温度としては1170〜1190℃とすべきであることが確認された。なお、表1はエピタキシャル成長温度とスリップ欠陥の関係を示したものである。
つぎに、エピタキシャル成長後に続けて水素雰囲気で加熱を行い、表面平坦化が図れるか否かの検討を行った。
エピタキシャル成長用の基板として、直径300mm、抵抗率0.005〜0.010Ω・cm、厚さ775μmのP++型で、主表面が{110}面からのオフアングル角度が1分の基板(実験例4)、主表面が{100}面からのオフアングル角度が1分の基板(実験例5)の2種類のシリコン単結晶基板を、各々複数枚準備した。
その後に、1080〜1190℃に温度を設定し、水素ガスを80slm供給して0〜180秒の熱処理を実施し、該エピタキシャル層表面のヘイズレベルを前記SP−2にて評価した。その結果を図6に示す。
これに対し、水素加熱温度1130℃(実験例4−2)の場合では、120秒の熱処理でほぼ実験例5(水素加熱温度1130℃で基板が{100})のエピタキシャル層表面ヘイズレベルと同等になった。
さらに、1190℃の水素加熱(実験例4−3)では、60秒の加熱時間で実験例5のエピタキシャル層表面ヘイズレベルと同等になった。
このように、気相成長工程直後に、連続して水素熱処理を行うことによってヘイズレベルをより改善でき、この熱処理温度を1130℃〜1190℃とすると改善幅を大きくすることができることが判った。
一般的にシリコンエピタキシャルウェーハでは、表面に原子ステップが存在するために、光の散乱が均一ではなく、ある特定方向に強く散乱する傾向があり、その影響によりポリッシュドシリコンウェーハよりもヘイズレベルが高いことが知られている。
そこで、主表面が{110}面からのオフアングル角度が1分の基板にエピタキシャル成長を行った後に、シリコンエピタキシャル層表面の仕上げ研磨を行い、さらにヘイズレベル改善を図ることができるかについて実験を実施した。
層厚均一性(%)=(最大層厚−最小層厚)/(最大層厚+最小層厚)×100
その結果、準備したシリコンエピタキシャルウェーハの層厚均一性は、いずれも0.36%であった。
これに対し、1190℃でエピタキシャル成長させた、本発明の範囲内である実験例6−2の場合、0.01μm以上の仕上げ研磨量でヘイズレベルを十分に改善できることが判った。
図8に示すように、仕上げ研磨量が0.05μmを超えると層厚均一性が大幅に悪化しており、仕上げ研磨量は0.05μm以下に抑えることが好適であることが判った。
図9に示すように、仕上げ研磨量が0.05μmを超えるとLPDが増加しており、PIDが発生していると考えられる。この結果からも、仕上げ研磨量を0.05μm以下に抑えることが好適である事が判った。
これに対し、本発明の範囲内である実験例6−2に示すように、研磨量0.01μm〜0.05μmの仕上げ研磨を行うことによって、{110}面からの傾斜角度が小さいシリコン単結晶基板上にエピタキシャル層の層厚均一性を悪化させず、PIDの発生を抑えて、さらに良好なヘイズレベルを有したシリコンエピタキシャル層を形成することができることが判った。
そして、{110}ジャストか、それに近い0.5度未満の角度でオフアングルされたシリコン単結晶基板を用いたものであるため、作製されるデバイスの高性能・高速化を達成することができる。
21…研磨装置、 22…研磨布、 23…定盤、 24…研磨剤供給機構、 25…研磨ヘッド、 26…研磨剤、
W…シリコン単結晶基板、 W’…シリコンエピタキシャルウェーハ。
Claims (3)
- シリコン単結晶基板の主表面上にシリコン単結晶エピタキシャル層を気相成長させるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記シリコン単結晶基板として、主表面が{110}面または{110}面からのオフアングル角度が0.5度未満のものを用い、
かつ前記気相成長工程では、前記シリコン単結晶基板温度を1170℃〜1190℃として気相成長し、
前記気相成長工程後、前記シリコン単結晶エピタキシャル層の表面に対して研磨量0.01μm〜0.05μmの仕上げ研磨を行うことを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。 - 前記気相成長工程では、前記シリコン単結晶エピタキシャル層を気相成長させた後、連続して水素雰囲気で1130℃〜1190℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
- 前記気相成長工程後、前記仕上げ研磨工程の前に、前記シリコン単結晶エピタキシャル層の表面を、フッ化水素を含有した洗浄液によって洗浄することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
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