以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る走行制御装置は、モータを発電機として作動させ回生制御によりバッテリを充電して制動する回生制動装置を有する車両の走行制御装置であって、例えば、自動運転機能を備えた車両や、追従運転や車線維持運転などの運転者支援システムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
最初に、本実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成を示すブロック図である。図1に示す車両5は、自動運転機能を有する車両であって、エンジン42、モータ43及びバッテリ44を含むハイブリットシステム4を備えている。
ハイブリットシステム4は、エンジン42及びモータ43の2つの駆動源を、単独であるいは組み合わせて駆動させることにより車両5を走行させる機能を有している。例えば、ハイブリットシステム4は、エンジン42を停止したままの惰性による走行、いわゆる滑空走行が可能に構成されている。エンジン42は、例えば電子スロットル等のスロットルアクチュエータにより出力を制御可能に構成されている。モータ43は、接続されたバッテリ44から供給される電力、あるいは発電機(不図示)を介して供給される電力により駆動する機能を有している。このモータ43は、例えば、それぞれ電動モータ及び発電機として選択的に機能する第1モータジェネレータMG1(不図示)及び第2モータジェネレータMG2(不図示)を有している。
また、ハイブリットシステム4は、車輪の運動エネルギーあるいは発電機により、モータ43を回転させて運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生制御を行う機能を有している。すなわち、ハイブリットシステム4は、車輪の運動エネルギーをエネルギー変換することにより制動する、いわゆる回生ブレーキ(回生制動装置)を有している。そして、ハイブリットシステム4は、得られた電気エネルギーをバッテリ44に充電する機能を有している。バッテリ44は、モータ43の電源として機能するとともに、電気エネルギーを蓄積する電池として機能し、入出力特性を有している。例えば、最大入力密度以下の電流、電圧の場合に充電できるという入力特性を有している。また、ハイブリットシステム4は、後述するECU(Electronic Control Unit)2に接続され、ECU2から出力される信号に基づいて駆動制御、回生制御を行う機能を有している。
また、車両5は、GPS(Global Positioning System)受信機30、センサ31、操作部32、ナビゲーションシステム33、ECU2、操舵アクチュエータ40、油圧ブレーキ(非回生制動装置)41を備えている。ここで、GPSは、衛星を用いた計測システムのことであり、自車両の現在位置の把握に好適に用いられるものである。また、ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
GPS受信機30は、例えば、車両5の位置情報を受信する機能を有している。また、GPS受信機30は、受信した位置情報をECU2へ出力する機能を有している。
センサ31は、車両5の周囲の走行環境情報や、車両5の車両状態情報を取得する機能を有している。センサ31としては、例えば、車両5の走行レーンを認識するためのレーン認識センサや画像センサ、車両5の周辺の障害物や後続車両を検知し距離情報を取得する電磁波センサやミリ波センサ、ヨーレートを計測するヨーレートセンサ、バッテリ44の充電量(SOC:State Of Charge)を検出するセンサ、モータ43の回転数を検出するセンサ、エンジン42の回転数を検出するセンサ、ハンドル舵角及びタイヤ角を検知する舵角センサ、加速度を検出する加速度センサ、車輪速を計測する車輪速センサ等が用いられる。また、センサ31は、取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
操作部32は、運転者の要求する条件を入力する機能を有している。操作部32としては、例えば、目標地点、目標旅行時間、乗り心地レベル等を入力する操作パネル等が用いられる。また、操作部32は、入力した情報をECU2へ出力する機能を有している。
ナビゲーションシステム33は、所定地点(例えば目的地)までの経路案内等を行う機能を有している。また、ナビゲーションシステム33は、例えば地図データベースから現在走行中付近の道路情報を読み出し、その道路情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。さらに、ナビゲーションシステム33は、信号機点灯情報等の交通情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。
ECU2は、回生限界減速度演算部(回生限界減速度演算手段)9、目標速度パターン生成部(速度パターン生成手段)10、車両運動制御部(協調制御手段)12、加減速制御部20及び操舵制御部21を備えており、回生限界減速度演算部9、目標速度パターン生成部10、及び車両運動制御部12により走行制御部1が構成されている。
回生限界減速度演算部9は、車両5の減速度を算出する機能を有している。例えば、減速の速度域に応じて減速時の回生制動による限界減速度を演算する設定を変更して、各速度域の減速度を演算する機能を有している。例えば、減速度に対して、速度の速い高速域や中高速域(第1速度域)、平均的な速度である中速域、比較的速度の低い中低速域(第2速度域)、停止直前の低速域というように、複数の速度域を設定する機能を有している。例えば、第1速度以上の速度域を高速域や中高速域とし、第1速度未満かつ第2速度以上の速度域を中速域とし、第2速度未満かつ第3速度以上の速度域を中低速域、第3速度未満の速度域を低速域として設定する機能を有している。第1速度として、例えば50km/h、第2速度として、例えば30km/h、第3速度として、例えば13km/hが用いられる。
そして、回生限界減速度演算部9は、高速域、中高速域ではバッテリ44の特性に基づいて回生限界減速度を演算する機能を有している。例えば、高速域、中高速域では、最大入力密度によって規定される最大回生力を演算し、その最大回生力に基づいて回生限界減速度を演算する機能を有している。また、回生限界減速度演算部9は、中速域では、回生限界減速度を所定の減速度(定数)とする機能を有している。所定の減速度は、回生失陥時に大きな変化を与えないための安全対策として規定されており、例えば0.2Gが用いられる。また、回生限界減速度演算部9は、中低速域では、全体の制動力に対する回生ブレーキの制動力の割合に応じて回生限界減速度を変更する機能を有している。この中低速域では、回生力の制御性の問題、例えばモータ43の特性等により低速で回生力の制御が十分行えないという問題から、回生ブレーキの制動力を低下させて後述する油圧ブレーキ(非回生制動装置)の制動力に切り換える協調制御(すり替え制御)が行われる。このため、回生限界減速度演算部9は、中低速域では、回生ブレーキの制動力及び油圧ブレーキの制動力の割合に応じて回生限界減速度を小さく演算する機能を有している。さらに、回生限界減速度演算部9は、演算した回生限界減速度を目標速度パターン生成部10へ出力する機能を有している。
目標速度パターン生成部10は、車両5の目標速度パターンを生成する機能を有している。目標速度パターンは、例えば、時刻又は距離に依存した速度を示すものである。目標速度パターン生成部10は、例えば、現在地点から減速完了位置までの減速区間の目標速度パターンを生成する機能を有している。例えば、目標速度パターン生成部10は、操作部32が出力した目標地点やナビゲーションシステム33が出力した信号停止位置等と、地図情報とに基づいて、減速完了地点までの距離を取得する機能を有している。そして、目標速度パターン生成部10は、例えば、センサ31が入力した車両5の周囲の走行環境情報及びECU2のメモリに格納された車両情報に基づいて、減速区間の目標速度パターンを生成する機能を有している。例えば、目標速度パターン生成部10は、車両の走行において必ず満たさなければならない条件である拘束条件と、重視する項目を評価するための項を含む評価関数とを用いた最適化処理により、速度パターンを生成する機能を有している。重視する項目が燃費の場合、例えば、回生ブレーキの最大回生エネルギーを拘束条件に含み、エンジン42の熱効率を評価する項を評価関数に含むことによって、低燃費な速度パターンを生成する機能を有している。この機能により生成される低燃費な目標速度パターンは、転がり抵抗のみで停止できる減速区間の場合、エンジン42を停止した走行、いわゆる滑空走行となる。一方、制動が必要な減速区間の場合には、回生限界減速度演算部9が出力した回生限界減速度に基づいて、回生限界減速度内で回生ブレーキを作動させる速度パターンとなる。また、目標速度パターン生成部10は、生成した目標速度パターンを車両運動制御部12へ出力する機能を有している。
車両運動制御部12は、目標速度パターン及びセンサ31からの周囲の走行環境や自車両の走行状態に基づいて、操舵制御情報、加減速制御情報、回生制御情報を算出する機能を有している。また、車両運動制御部12は、中低速域では、減速に伴い回生ブレーキから油圧ブレーキへのすり替えを実行する協調制御機能を有している。さらに、車両運動制御部12は、算出した操舵制御情報を操舵制御部21へ、算出した加減速制御情報を加減速制御部20へ、それぞれ出力する機能を有している。
加減速制御部20は、車両運動制御部12が出力した加減速制御情報に基づいて、ハイブリットシステム4の回生ブレーキや、油圧ブレーキ41のブレーキアクチュエータを制御するための信号を生成し、生成した制御信号をハイブリットシステム4及び油圧ブレーキ41のブレーキアクチュエータへ出力する機能を有している。ここで、ブレーキアクチュエータとして、各車輪のブレーキ油圧の調整を行うバルブ等が用いられる。
操舵制御部21は、車両運動制御部12が出力した操舵制御情報に基づいて操舵アクチュエータ40を制御するための信号を生成し、生成した制御信号を操舵アクチュエータ40へ出力する機能を有している。なお、操舵アクチュエータ40は、車両の走行を制御する機械的な構成要素であり、例えば、操舵角制御モータ等が用いられる。
次に、第1実施形態に係る走行制御部1の動作について説明する。図2は、第1実施形態に係る走行制御部1の動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、図2に示す制御処理では、車両5は同一速度域を超えない減速をするものとする。
最初に、走行制御部1は中速域判定処理から開始する(S10)。S10の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、中速域で減速を行うか否かを判定する処理である。例えば、目標となる減速開始車速と減速終了車速を入力して、第2速度以上第1速度未満であるか否かを判定する。ここで、第2速度は例えば30km/h、第1速度は50km/hが用いられる。また、目標となる減速開始車速と減速終了車速は、例えばセンサ31、操作部32、ナビゲーションシステム33から取得、演算すればよい。また、事前に減速度を一定値として生成した速度パターンから取得してもよい。S10の処理において、第2速度以上第1速度未満の速度域であると判定した場合には、減速度設定処理へ移行する(S12)。
S12の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、回生限界減速度を演算して設定する処理である。S10の処理により、減速区間の速度を中速域であると判定したので、回生限界減速度を定数に設定する。この定数は、回生ブレーキから油圧ブレーキ41への切り換えにおいて大きな変化を与えないための安全対策として規定されており、例えば、0.2Gが用いられる。S12の処理が終了すると、目標速度パターン生成処理へ移行する(S24)。
一方、S10の処理において、第2速度以上第1速度未満の速度域でないと判定した場合には、低速域判定処理へ移行する(S14)。S14の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、低速域で減速を行うか否かを判定する処理である。例えば、目標となる減速開始車速と減速終了車速を入力して、第3速度未満であるか否かを判定する。ここで、第3速度は例えば13km/hが用いられる。S10の処理において、第3速度未満の速度域であると判定した場合には、減速度設定処理へ移行する(S16)。
S16の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、回生限界減速度を演算して設定する処理である。S10、S14の処理により、減速区間の速度を低速域であると判定したので、回生限界減速度を0に設定する。停止直前の走行においては、減速中であっても操作性重視のためにクリープ加速が発生するので、ギアをニュートラル状態とし、転がり抵抗のみで走行させた方が低燃費な走行となる。このため、減速域が低速域である場合には、回生制御を行わないように、回生限界減速度を0とする。S16の処理が終了すると、目標速度パターン生成処理へ移行する(S24)。
一方、S14の処理において、第3速度未満の速度域でないと判定した場合には、速域判定処理へ移行する(S18)。S18の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、中低速速域で減速を行うか否かを判定する処理である。例えば、目標となる減速開始車速と減速終了車速を入力して、第2速度未満かつ第3速度以上の速度域であるか否かを判定する。S18の処理において、第2速度未満かつ第3速度以上の速度域であると判定した場合には、減速度設定処理へ移行する(S20)。
S20の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、回生限界減速度を演算して設定する処理である。S10、S14、S18の処理により、減速区間の速度を中低速域であると判定したので、緩和させた回生限界減速度を設定する。中低速域においては、回生力の制御性の問題や回生ブレーキの実績の問題から、回生ブレーキから油圧ブレーキへのすり替えを行う。このすり替えは、低速になるに従って、回生ブレーキによる制動力よりも油圧ブレーキによる制動力が大きくなるように行われ、完全に停止する際には、油圧ブレーキのみが作動する。すなわち、回生ブレーキの最大回生減速度は低速になるに従い減少する。よって、回生限界減速度演算部9は、このすり替え動作に応じて最大回生減速度を低く演算する。S20の処理が終了すると、目標速度パターン生成処理へ移行する(S24)。
一方、S18の処理において、第2速度未満かつ第3速度以上の速度域でないと判定した場合には、減速度設定処理へ移行する(S22)。S22の処理は、回生限界減速度演算部9が実行し、回生限界減速度を演算して設定する処理である。S10、S14、S18の処理により、減速区間の速度を高速域であると判定したので、緩和させた回生限界減速度を設定する。高速域においては、バッテリ44の入力特性、すなわち、入力密度上限(例えば50kW)に回生力が制限される。回生制御による回生力(入力エネルギー、すなわち車両運動エネルギー)は速度の2乗に比例して増加するので、回生限界減速度演算部9は、減速度が速度の2乗に反比例して減少するように演算して回生限界減速度を設定する。このように設定することで、回生により得られる入力エネルギーを略一定としてバッテリ44の入力特性にあわせることができる。この際、中速域との整合性を取るために、中速域での減速度(例えば0.2G)から減少するようにする。S22の処理が終了すると、目標速度パターン生成処理へ移行する(S24)。
S24の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、設定した回生限界減速度を考慮して速度パターンを生成する処理である。目標速度パターン生成部10は、例えば、減速区間において、重視する項目を評価する項を含む評価関数を用いて最適化処理により速度パターンを生成する。以下では説明理解の容易性を考慮して、低燃費速度パターンを生成する例を説明する。目標速度パターン生成部10は、例えば、ECU2のメモリに格納された車両情報を入力して拘束条件を設定する。車両情報として、例えば、S12、S16、S20、S22の処理で設定した回生限界減速度を用いる。また、車両加速性能、車両減速性能、車重、許容最大加速度、許容最大減速度、許容最大ジャーク、最高速度、最大横加速度、最大ハンドル角速度、最小定常速度、最小定常加速度、最小定常ジャーク、加減速時の加減速変化回数、緊急ブレーキ性能、故障判定時間、速度制御誤差、位置制御誤差を用いる。これらの値は、諸元情報や、操作部32から入力された運転者の要望、学習等により設定される。
次に、例えば、旅行時間及びエンジン出力熱効率を評価する項を含む評価関数を用いた最適化処理により、低燃費な速度パターンを生成する。例えば、評価関数を収束演算することにより速度パターンを生成する。これにより、転がり抵抗のみで停止できる減速区間の場合、エンジン42を停止した走行、いわゆる滑空走行する速度パターンが生成され、一方、制動が必要な減速区間の場合には、回生限界減速度演算部9が出力した回生限界減速度に基づいて、回生限界減速度内で回生ブレーキを作動させる速度パターンとなる。S24の処理が終了すると、走行制御処理へ移行する(S26)。
S26の処理は、車両運動制御部12が実行し、車両制御する処理である。車両運動制御部12は、S26の処理で生成した速度パターンに基づいて、ハイブリットシステム4の回生ブレーキやエンジンを制御するための信号を生成して車両を自動制御する。S26の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
以上で図2に示す制御処理は終了する。図2に示す制御処理を実行することで、速度域ごとに回生限界減速度を変更して、燃費が最適な速度パターンを生成することができる。また、図2に示す制御処理では、車両5は同一速度域を超えない減速をするものとして説明したが、例えば高速域から停止するまでのように、同一減速区間の中で複数の速度域を含んでもよい。以下、図3、4を用いて説明する。図3は、回生限界減速度の車速依存性を示すグラフであり、縦軸を回生限界減速度とし、横軸を車速としている。図4は高速域から停止するまでの速度パターンであり、縦軸を速度、横軸を時間としている。
ところで、従来の走行制御装置であれば、例えば図3のJで示すように、回生限界減速度を0.2Gの一定値と想定している。この場合、低速域、中低速域、中高速域、高速域において、想定した回生限界減速度は実際の回生限界減速度よりも大きなる。回生限界減速度を一定とした場合、例えば図4のP1に示すように、速度が直線的に減少する速度パターンとなる。この速度パターンP1を実行すると、想定した回生による制動力を得ることができず、不足した制動力を補うように油圧ブレーキが作動してしまうので低燃費化が妨げられる。
これに対して、本実施形態に係る走行制御部1では、図3に示すように、低速域ではクリープの発生を考慮して回生限界減速度を0としている。また、中低速域では、H1に示すように、制動力のすり替えに応じて、低速になるほど比例的に減少させている。また、中速域では、H2に示すように安全面から規定されている回生限界減速度に合わせて0.2Gの一定値としている。さらに、中高速域、高速域では、H3に示すように、バッテリの入力限界密度に沿うように、速度の2乗に反比例させて高速になるほど回生限界減速度を減少させている。このように設定することで、例えば図4の速度パターンP2に示すように、バッテリ44の特性や制動力のすり替えによる回生限界減速度の変化を反映させた速度パターンを生成することができる。このため、低燃費化を図ることが可能となる。
上述したように、第1実施形態に係る走行制御部1によれば、第1速度以上の第1速度域ではバッテリ44の入力密度限界によって規定される回生力の制限に基づいて回生限界減速度を演算し、演算した回生限界減速度に基づいて速度パターンP2を生成することができる。このように、車速が高速度である場合、回生限界減速度を一定とせずにバッテリの特性を考慮して速度パターンP2を生成することができるので、実際の車両の動作に最適な速度パターンP2を生成することが可能となる。このため、例えば、回生したエネルギーの全てをバッテリ44に充電できなくなったり、油圧ブレーキ41を作動させたりすることを回避することが可能となる。このように、回生制動によりエネルギーを効率良く回生する速度パターンP2を生成することができるので、低燃費化を図ることが可能となる。
また、第1実施形態に係る走行制御部1によれば、車速が第1速度以上である高速度である場合、速度が大きくなるに従い回生限界減速度を小さく設定するので、バッテリ44の入力密度上限に沿って減速を行う速度パターンP2を生成することができる。よって、実際のバッテリ44の入力密度特性を考慮して燃費の観点から理想的な速度パターンを生成することができるので、低燃費化を図ることが可能となる。
さらに、第1実施形態に係る走行制御部1によれば、第2速度未満の低速時において、回生ブレーキから油圧ブレーキ41へのすり替えを行うとともに、回生制動力と非回生制動力からなる全体制動力において回生制動力が占める割合に応じて回生限界減速度を演算することができる。このように、低速時において回生限界減速度を一定とせずに、回生ブレーキから油圧ブレーキ41へのすり替えを考慮して速度パターンを生成することができるので、実際の車両の動作に最適な速度パターンP2を生成することが可能となる。よって、低燃費化を図ることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第1実施形態に係る走行制御部1とほぼ同様に構成されるものであって、走行制御部1と比べ、速度パターンを再生成する機能を有する点が相違する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図5は本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る走行制御部3を備えた車両の構成は、第1実施形態に係る走行制御部1を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部3は、第1実施形態に係る走行制御部1とほぼ同様に構成されており、目標速度パターン再生成部(速度パターン再生成手段)11を有する点が相違する。
目標速度パターン再生成部11は、例えば目標速度パターン生成部10により生成された速度パターンに基づいて、回生制動力以上の制動力が必要か否かを判定する機能を有している。例えば、速度パターン生成時に想定していなかった信号タイミングやその変化によって回生制動力以上の制動力が必要な場合がある。また、周囲の車両との協調により回生制動力以上の減速が必要な場合がある。そして、目標速度パターン再生成部11は、回生制動力以上の制動力が必要な場合には、目標速度パターンを再生成する機能を有している。例えば、目標速度パターン再生成部11は、バッテリ44の入力限界密度に沿った減速が極力長時間になるように減速を実施する速度パターンを再生成する機能を有している。さらに、目標速度パターン再生成部11は、生成した速度パターンを車両運動制御部12へ出力する機能を有している。
次に、第2実施形態に係る走行制御部3の動作について説明する。図6〜9は、第2実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。図6に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図6に示す制御処理が開始されると、走行制御部3は、速度パターン生成処理から開始する(S30)。S30の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、例えば図2のS24の処理と同様である。S30の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S32)。
S32の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、目標減速が可能か否かを判定する処理である。例えば、目標速度パターン再生成部11は、S30の処理で生成した速度パターンを参照し、フル回生(最大回生減速度)での減速だけで停止目標位置や減速完了地点までに必要な減速を完了できるか否かを判定する。S32の処理において、フル回生での減速のみで必要な制動力を得られると判定した場合には、走行制御処理へ移行する。
S34の処理は、車両運動制御部12が実行し、車両制御する処理である。この処理は、図2のS26の処理と同様である。S34の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
一方、S32の処理において、フル回生での減速のみで必要な制動力を得られないと判定した場合には、速度パターン再生成処理へ移行する(S36)。以下、S36の処理を図7〜9を用いて説明する。
図7に示すように、速度パターン再生成処理は、速度域判定処理から開始する(S40)。S40の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S30の処理で生成した速度パターンに低速域が存在するか否かを判定する処理である。例えば、13km/h以下の速度域を低速域と判定する。この停止直前の速度域では、図3に示すように回生制御によりエネルギーを回収することができない。このため、油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を削る速度域として、最も優先的に検討する。S40の処理において、低速域が存在すると判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S42)。
S42の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、低速域の最大減速度を設定する処理である。目標速度パターン再生成部11は、例えば、乗り心地許容範囲の最大の減速度を、回生限界減速度として設定する。乗り心地許容範囲の最大の減速度として、例えば、0.3Gが用いられる。また、運転者により設定された乗り心地許容範囲を用いても良い。S42の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S44)。
S44の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、低速域の最大減速度をS42の処理で設定した減速度に変更して、再度、速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法は、図2のS24の処理と同様である。S44の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S46)。
S46の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S44の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した場合に目標とした地点までに減速が完了しているか否かを判定する処理である。S46の処理において、目標の減速を達成できると判定した場合には、図7〜9に示す制御処理を終了する。
一方、S40の処理で低速域が存在しない場合、又は、S46の処理において、目標の減速を達成できないと判定した場合には、不足していた制動力を低速域の制動力で賄うことができなかったので、他の速度域を検討するために、速度域判定処理へ移行する(S48)。S48の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S30の処理で生成した速度パターン又は、S44の処理で再生成した速度パターンに中低速域が存在するか否かを判定する処理である。例えば、13〜30km/hの範囲の速度域を中低速域と判定する。この速度域では、図3に示すように油圧ブレーキ41と回生ブレーキが強調して作動する。このため、低速になるにつれて回生制御で回収できるエネルギーは低い。さらに、中速域、中高速域、高速域に比べて速度が低いので運動エネルギー自体が低い。このため、油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を削る速度域として、2番目に優先的に検討する。S48の処理において、中速域が存在すると判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S50)。
S50の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、中低速域の最大減速度を設定する処理である。この処理は、S42の処理と同様である。S50の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S52)。
S52の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、中低速域の最大減速度をS50の処理で設定した減速度に変更して、再度、速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法は、図2のS24の処理と同様である。S52の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S54)。
S54の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S52の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した場合に目標とした地点までに減速が完了しているか否かを判定する処理である。S54の処理において、目標の減速を達成できると判定した場合には、図7〜9に示す制御処理を終了する。
一方、S48の処理で中低速域が存在しない場合、又は、S54の処理において、目標の減速を達成できないと判定した場合には、不足していた制動力を低速域、中低速域の制動力で賄うことができなかったので、他の速度域を検討するために、速度域判定処理へ移行する(図8のS56)。S56の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S30の処理で生成した速度パターン又は、S44又はS52の処理で再生成した速度パターンに中速域が存在するか否かを判定する処理である。例えば、30〜50km/hの範囲の速度域を中速域と判定する。この速度域では、図3に示すように減速度は一定値であり、中高速域、高速域に比べて高い減速度となる。しかし、中高速域、高速域に比べて速度が低いため、運動エネルギー自体が中高速域、高速域に比べて小さくなるので、回収できるエネルギーは小さい。このため、油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を削る速度域として、3番目に優先的に検討する。S56の処理において、中速域が存在すると判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S58)。
S58の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、中速域の最大減速度を設定する処理である。この処理は、S42の処理と同様である。S58の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S60)。
S60の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、中速域の最大減速度をS58の処理で設定した減速度に変更して、再度、速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法は、図2のS24の処理と同様である。S60の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S62)。
S62の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S60の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した場合に目標とした地点までに減速が完了しているか否かを判定する処理である。S62の処理において、目標の減速を達成できると判定した場合には、図7〜9に示す制御処理を終了する。
一方、S56の処理で中速域が存在しない場合、又は、S62の処理において、目標の減速を達成できないと判定した場合には、不足していた制動力を低速域、中低速域、中速域の制動力で賄うことができなかったので、他の速度域を検討するために、速度域判定処理へ移行する(S64)。S64の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S30の処理で生成した速度パターン又は、S44、S52又はS60の処理で再生成した速度パターンに高速域が存在するか否かを判定する処理である。例えば、65km/h以上の速度域を高速域と判定する。この速度域では、運動エネルギーは二乗に比例して増加するが、図3に示すように減速度は速度に反比例的に減少する。このため、中高速域と高速域についてはバッテリ44の入力密度の観点からは優先順位に大きな違いがない。しかし、65km/h以上の高速になると、車両によってはエンジンを停止しない制御を行うことがあるため、結果的に高速域の方が燃費が低下する。よって、油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を削る速度域として、高速域を4番目に優先的に検討する。S64の処理において、高速域が存在すると判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S66)。
S66の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、高速域の最大減速度を設定する処理である。この処理は、S42の処理と同様である。S66の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S68)。
S68の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、高速域の最大減速度をS66の処理で設定した減速度に変更して、再度、速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法は、図2のS24の処理と同様である。S68の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S70)。
S70の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S68の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した場合に目標とした地点までに減速が完了しているか否かを判定する処理である。S70の処理において、目標の減速を達成できると判定した場合には、図7〜9に示す制御処理を終了する。
一方、S64の処理で高速域が存在しない場合、又は、S70の処理において、目標の減速を達成できないと判定した場合には、不足していた制動力を低速域、中低速域、中速域、高速域の制動力で賄うことができなかったので、他の速度域を検討するために、速度域判定処理へ移行する(図9のS72)。S72の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S30の処理で生成した速度パターン又は、S44、S52、S60又はS68の処理で再生成した速度パターンに中高速域が存在するか否かを判定する処理である。例えば、50〜65km/hの範囲の速度域を中高速域と判定する。この速度域は、最も回生による効率がよいため、油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を削る速度域として、最後に検討する。S72の処理において、中高速域が存在すると判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S74)。
S74の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、中高速域の最大減速度を設定する処理である。この処理は、S42の処理と同様である。S74の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S76)。
S76の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、中高速域の最大減速度をS74の処理で設定した減速度に変更して、再度、速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法は、図2のS24の処理と同様である。S76の処理が終了すると、目標減速判定処理へ移行する(S78)。
S78の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S76の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した場合に目標とした地点までに減速が完了しているか否かを判定する処理である。S78の処理において、目標の減速を達成できると判定した場合には、図7〜9に示す制御処理を終了する。
一方、S78の処理において、目標の減速を達成できないと判定した場合には、最大減速度変更処理へ移行する(S80)。S80の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、S42、S50、S58、S66、S74の処理で設定した回生限界減速度を大きく設定する処理である。目標速度パターン再生成部11は、例えば、乗り心地許容範囲をより大きく再設定する。例えば、0.3Gから0.4Gへ変更する。S80の処理が終了すると、速度域判定処理へ再度移行する(S40)。このように、走行制御部1は、目標地点において目標とする速度を達成できる速度パターンを生成するまで図7〜9に示す制御処理を繰り返す。
以上で図7〜9に示す制御処理を終了する。図7〜9に示す制御処理を実行することで、速度パターンが再生成され、再生成された速度パターンを用いて車両制御が行われる(図6のS34)。
ところで、従来の走行制御装置であれば、例えば回生限界減速度を0.2Gの一定値としているので、図10のP3で示すように、速度が直線的に減少する速度パターンとなる。そして、目標地点までの間に0.2Gを超える制動力が必要となった場合には、その時に油圧ブレーキを作動させている。このため、低燃費な速度パターンを生成することが困難である。
これに対して、第2実施形態に係る走行制御部3では、さらなる制動力が必要となった場合には、低速域、中低速域、中速域、高速域、中高速域の順に回生限界減速度を見直すことにより、図10のP4で示すように、バッテリ44の入力限界密度に沿った減速時間が極力減らないように減速を実施する速度パターンを再生成することができる。すなわち、どこかの速度域で油圧ブレーキ41を作動させて走行時間を短くする必要がある場合には、エネルギー回収効率(回生の効率)の悪い速度域から優先的に短くすることにより、バッテリ44の入力限界密度が大きい高速域や中高速域(例えば50km/h以上)の時間を消費することを回避することができる。
上述したように、第2実施形態に係る走行制御部3によれば、油圧ブレーキ41を作動させる必要がある場合には、回生力が小さい速度域から順に作動させるタイミングを検討して速度パターンを再生成することができる。これにより、大きな回生エネルギーが見込まれる速度域で油圧ブレーキ41を作動させて当該速度域の走行時間を短くしてしまうことを回避することができる。よって、速度超過が発生した場合であっても燃費が低下することを回避することが可能となる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第2実施形態に係る走行制御部3とほぼ同様に構成されるものであって、速度パターンを目標とした走行制御を低燃費に実施することができる機能を有する点が相違する。なお、第3実施形態においては、第1、2実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成は、第2実施形態に係る走行制御部3を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部は、第2実施形態に係る走行制御部3とほぼ同様に構成され、目標速度パターン再生成部11、車両運動制御部12が有する機能の一部が相違している。
目標速度パターン再生成部11は、速度パターンにより規定された各区間での目標速度に基づいた走行制御を行う際に、大きな速度制御超過が発生した場合には、速度パターンの再生成を実施する機能を有している。大きな速度制御超過を判定するための閾値として、例えば、3km/hが用いられる。なお、その他の機能については、第2実施形態と同様である。
車両運動制御部(フィードバック制御手段)12は、速度パターンにより規定された各区間での目標速度に基づいた走行制御を行う際に、エンジン42の動作状態情報、車速と目標速度との差を示す速度超過不足情報、及び回生減速度に基づいてフィードバック制御を行う機能を有している。また、速度パターンに基づいて減速度を事前に決定する機能を有している。なお、その他の機能については、第1、2実施形態と同様である。
次に、第3実施形態に係る走行制御部の動作について説明する。図11、12は、第3実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。また、図13は、第3実施形態に係る走行制御部の動作を説明するための速度パターンである。
図11に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。図11に示す制御処理が開始されると、走行制御部は、速度パターン生成処理から開始する(S90)。S90の処理は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、例えば図2のS24や図6のS36の処理と同様である。S90の処理が終了すると、回生限界判定処理へ移行する(S92)。
S92の処理は、車両運動制御部12が実行し、回生限界減速度を超える減速を行う走行区間であるか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、例えばS90の処理で生成した速度パターンに基づいて、走行する走行区間が回生限界減速度を超える減速を行うか否かを判定する。S92の処理において、回生限界減速度を超える減速を行わないと判定した場合には、通常フィードバック制御処理へ移行する(S94)。
S94の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度パターンに基づいてフィードバック制御を行う処理である。車両運動制御部12は、S90の処理で生成した速度パターンに基づいて、PID制御等の通常のフィードバック制御を行う。S94の処理が終了すると、フィードバック制御終了判定処理へ移行する(S96)。
S96の処理は、車両運動制御部12が実行し、目標となる速度パターンを全て実行したか否かを判定する処理である。目標となる速度パターン全てを実行していないと判定した場合には、回生限界判定処理へ再度移行する(S92)。これにより、速度パターンに基づいてS92、S94、S98〜S104までの処理が繰り返し実行されることとなる。一方、目標となる速度パターン全てを実行したと判定した場合には、図11に示す制御処理を終了する。このように、回生限界減速度内の減速の場合には、通常のフィードバック制御のみが動作することとなる。
一方、S92の処理において、回生限界減速度より大きい減速を伴う走行区間と判定した場合には、フィードフォワード処理へ移行する(S98)。S98の処理は、車両運動制御部12が実行し、目標速度パターンに基づいて減速度を算出して必要な減速力を算出するフィードフォワード制御を行う処理である。車両運動制御部12は、例えば、S90の処理で生成した速度パターンを微分してフィードフォワード用の減速度を算出する。そして、メモリに格納された車両情報に基づいて車両の重量を入力する。そして、算出した減速度と入力した車両重量を積算し、フィードフォワード用の減速力を算出する。S98の処理が終了すると、減速実行処理へ移行する(S100)。
S100の処理は、車両運動制御部12が実行し、S98の処理で生成したフィードフォワード用の減速力に基づいてハイブリットシステム4に減速指示を与える処理である。車両運動制御部12は、S98の処理で算出したフィードフォワード用の減速力と、後述するフィードバック項とを加算して、加減速制御部20を介してハイブリットシステム4へ減速指示を行う。S100の処理が終了すると、速度誤差算出処理へ移行する(S102)。
S102の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差を算出する処理である。車両運動制御部12は、センサ31から車速を入力し、入力した車速からS90の処理で生成した目標となる速度パターンを減算することにより、速度誤差を算出する。S102の処理が終了すると、フィードバック項補正処理へ移行する(S104)。
S104の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差の大きさに基づいてフィードバック項を補正する処理である。この処理について、図12を用いて説明する。図12は、フィードバック項補正処理を示すフローチャートである。まず、速度誤差の符号判定処理から開始する(S106)。S106の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差が負の値であるか否か、すなわち、目標速度に対して速度不足が発生しているか否かを判定する処理である。例えば、図13に示すように、目標速度P5に沿うようにフィードバック制御しているものとし、制御結果をU1、U2とする。目標速度よりも車速が小さい制御結果U1の場合は、減速度が目標減速度よりも大きく、速度不足が発生している状態である。また、目標速度よりも車速が大きい制御結果U2の場合は、減速度が目標減速度より小さく、速度超過が発生している状態である。S106の処理において、速度不足が発生していないと判定した場合には、誤差の大きさ判定処理へ移行する(S108)。
S108の処理は、車両運動制御部12が実行し、超過している速度誤差が大きいか否かを判定する処理である。例えば、車両運動制御部12は、S104の処理で生成した速度誤差が3km/hより大きいか否かを判定することで、速度誤差が大きいか否かを判定する。S108の処理において、速度誤差が大きくないと判定した場合には、フィードバック項の計算処理へ移行する(S112)。一方、S108の処理において、速度誤差が大きいと判定した場合には、速度パターン再生成処理へ移行する(S110)。
S110の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを再生成する処理である。例えば、目標速度パターン再生成部11は、センサ31で得られた車速を基準として、その時点の車速から速度パターンが始まるように速度パターンを再生成する。速度パターンの生成処理については、図2のS24の処理と同様である。S110の処理が終了すると、フィードバック項の計算処理へ移行する(S112)。
S112の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を演算する処理である。車両運動制御部12は、PID制御等の通常の速度制御において用いられる所定値をフィードバック項として設定する。S112の処理が終了すると、図12に示すフィードバック項補正処理を終了する。このように、図13に示す制御結果U2のような速度超過の制御結果U2の場合には、通常のフィードバック制御を行うとともに、速度超過の誤差が所定値より大きい場合には、速度パターンを再生成することにより、油圧ブレーキを最適に制御して目標速度に合わせることができる。
一方、S106の処理において、速度不足が発生していると判定した場合には、超過減速度算出処理へ移行する(S114)。S114の処理は、車両運動制御部12が実行し、超過している減速度を算出する処理である。車両運動制御部12は、S98の処理で算出した減速度から、例えば図3に示す回生限界減速度を減算し、超過した減速度を算出する。S114の処理が終了すると、フィードバック項の計算処理へ移行する(S116)。
S116の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を計算する処理である。車両運動制御部12は、超過減速度が強い減速度であるほどフィードバックのゲインを小さく補正する。例えば、Pゲインにおいて、初期PゲインをP0、超過減速度をaOVとすると、補正後のPゲインPは、以下の式1を用いて算出できる。
P=P0/(1+|aOV|) …(1)
車両運動制御部12は、PIDの各ゲインについて式1と同様な補正式を用いて補正する。そして、補正後の各ゲインを用いてフィードバック項を計算する。S116の処理が終了すると、フル回生判定処理へ移行する(S118)。
S118の処理は、車両運動制御部12が実行し、S98の処理で生成したフィードフォワード用の減速度とS116の処理で生成したフィードバック項との加算値が回生限界減速度(フル回生状態)を超えているか否かを判定する処理である。S118の処理において、フル回生状態以上でないと判定した場合には、図12に示すフィードバック項補正処理を終了する。一方、S118の処理において、フル回生状態以上と判定した場合には、フィードバック項の再計算処理へ移行する(S120)。
S120の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を再計算する処理である。車両運動制御部12は、回生限界減速度をaK、フィードフォワード用の減速度をaFとすると、例えば、以下の式2を用いてフィードバック項FBを算出する。
FB=aK−aF …(2)
S120の処理が終了すると、図12に示すフィードバック項補正処理を終了する。そして、図11のS104の処理に戻り、制御が終了するまで繰り返し実行される(S96)。
以上で図11、12に示す制御処理は終了する。図11、12に示す制御処理を実行することで、速度が不足している場合には、回生限界減速度を超過している減速度の大きさが大きいほどフィードバックゲインを小さく設定することができる。ところで、従来の走行制御装置であれば、どのような速度誤差に対しても同等のフィードバック制御を実行している。これに対して、本実施形態に係る走行制御装置は、例えば図13の制御結果U1のように、速度が不足している場合には、無理にエンジン等を駆動させて減速度を落として目標となる速度パターンに合わせ込むのではなく、フィードバックゲインを小さくして転がり抵抗等により自然に目標車速に一致させることができる。また、超過減速度が回生限界減速度を超えている場合には、フィードフォワードによる減速度が回生限界減速度となるようにフィードバック項を設定することができる。このため、回生限界減速度を超えた場合には、回生ができる状態となるように減速度を制御することが可能となる。
上述したように、第3実施形態に係る走行制御部によれば、生成した速度パターンを制御目標としてフィードバック制御を実行する際に、回生ブレーキでは制動できない場合には、フィードバックゲインを小さく設定することができるので、目標速度に合わせることよりも回生ブレーキで制動することを優先させたフィードバック制御を実行することが可能となる。よって、フィードバック制御の実行を含めて低燃費化を図ることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第3実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成されるものであって、速度超過状態が発生する場合に経路全体の燃費を考慮したフィードバック制御機能を有する点が相違する。なお、第4実施形態においては、第1〜3実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成は、第3実施形態に係る走行制御部を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部は、第3実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成され、目標速度パターン生成部10、目標速度パターン再生成部11、車両運動制御部12が有する機能の一部が相違している。
目標速度パターン生成部10は、速度パターンを生成するとともに、誤差補正用情報を演算する機能を有している。この誤差補正用情報は、速度超過が発生した場合に速度補正するための情報であり、例えばフィードバック項である。また、目標速度を超過した際に減速を実行する速度域の順番を示す優先順位情報を設定する機能を有している。すなわち、目標速度パターン生成部10は、余剰減速度の割り当て候補となる速度域を、優先順位をつけて管理する機能を有している。ここで、優先順位は数字が小さいほど優先させることを示すものとする。なお、その他の機能については、第3実施形態と同様である。
目標速度パターン再生成部11は、目標速度パターン生成部10と同様に、誤差補正用情報及び優先順位情報を設定する機能を有している。なお、その他の機能については、第3実施形態と同様である。
車両運動制御部12は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が生成した速度パターン及び優先順位情報に基づいて、速度制御を行う機能を有している。例えば、速度超過が発生した場合、優先順位の高い速度域から順に、回生ブレーキあるいは油圧ブレーキを作動させて減速させる機能を有している。すなわち、第3実施形態に係る車両運動制御部12は、速度超過が発生した時点でフィードバック制御を即時に調整する機能を有しているが、本実施形態に係る車両運動制御部12は、優先順位に基づいて燃費に最適な減速実行タイミングを制御する機能を有する点が相違する。なお、その他の機能については、第3実施形態と同様である。
次に、第4実施形態に係る走行制御部の動作について説明する。図14〜16は、第4実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。図14に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図14に示す制御処理が開始されると、走行制御部は、速度パターン生成処理から開始する(S130)。S130の処理は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、例えば図2のS24の処理や図6のS36と同様である。S130の処理が終了すると、優先順位設定処理へ移行する(S132)。
S132の処理は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が実行し、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した際に速度超過が発生した場合に備えて、減速を行う速度域の優先順位を決定する処理である。
S132の処理を図15、16を用いて詳細に説明する。図15に示すように、優先順位の設定として、低速区間判定処理から開始する(S150)。S150の処理は、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて、低速区間(低速域の走行区間)が存在するか否かを判定する処理である。S150の処理において、低速区間が存在しないと判定した場合には、中低速区間判定処理へ移行する(S158)。一方、S150の処理において、低速区間が存在すると判定した場合には、最大減速度判定処理へ移行する(S152)。
S152の処理は、低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいか否かを判定する処理である。例えば、乗り心地許容範囲の最大減速度として、0.3Gが用いられる。S152の処理において、低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S154)。
S154の処理は、低速区間を減速予定区間の対象から除外する処理である。例えば、優先順位として999を設定する。S154の処理が終了すると、中低速区間判定処理へ移行する(S158)。
一方、S152の処理において、低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きくないと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S156)。S156の処理は、低速区間の優先順位として「1」を設定する。S156の処理が終了すると、中低速区間判定処理へ移行する(S158)。
S158の処理は、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて、中低速区間(中低速域の走行区間)が存在するか否かを判定する処理である。S158の処理において、中低速区間が存在しないと判定した場合には、中速区間判定処理へ移行する(S166)。一方、S158の処理において、中低速区間が存在すると判定した場合には、最大減速度判定処理へ移行する(S160)。
S160の処理は、中低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいか否かを判定する処理である。この処理は、S152の処理と同様である。S160の処理において、中低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S162)。
S162の処理は、中低速区間を減速予定区間の対象から除外する処理である。例えば、優先順位として999を設定する。S162の処理が終了すると、中速区間判定処理へ移行する(S166)。
一方、S160の処理において、中低速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きくないと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S164)。S164の処理は、中低速区間の優先順位として「2」を設定する。S164の処理が終了すると、中速区間判定処理へ移行する(S166)。
S166の処理は、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて、中速区間(中速域の走行区間)が存在するか否かを判定する処理である。S166の処理において、中速区間が存在しないと判定した場合には、高速区間判定処理へ移行する(図16のS174)。一方、S166の処理において、中速区間が存在すると判定した場合には、最大減速度判定処理へ移行する(S168)。
S168の処理は、中速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいか否かを判定する処理である。この処理は、S152の処理と同様である。S168の処理において、中速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S170)。
S170の処理は、中速区間を減速予定区間の対象から除外する処理である。例えば、優先順位として999を設定する。S170の処理が終了すると、高速区間判定処理へ移行する(図16のS174)。
一方、S168の処理において、中速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きくないと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S172)。S172の処理は、中速区間の優先順位として「3」を設定する。S172の処理が終了すると、高速区間判定処理へ移行する(図16のS174)。
S174の処理は、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて、高速区間(高速域の走行区間)が存在するか否かを判定する処理である。S174の処理において、高速区間が存在しないと判定した場合には、中高速区間判定処理へ移行する(S182)。一方、S174の処理において、高速区間が存在すると判定した場合には、最大減速度判定処理へ移行する(S176)。
S176の処理は、高速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいか否かを判定する処理である。この処理は、S152の処理と同様である。S176の処理において、高速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S178)。
S178の処理は、高速区間を減速予定区間の対象から除外する処理である。例えば、優先順位として999を設定する。S178の処理が終了すると、中高速区間判定処理へ移行する(S182)。
一方、S176の処理において、中速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きくないと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S180)。S180の処理は、高速区間の優先順位として「4」を設定する。S180の処理が終了すると、中高速区間判定処理へ移行する(S182)。
S182の処理は、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて、中高速区間(中高速域の走行区間)が存在するか否かを判定する処理である。S174の処理において、中高速区間が存在しないと判定した場合には、図15、16に示す優先順位設定処理を終了する。一方、S182の処理において、中高速区間が存在すると判定した場合には、最大減速度判定処理へ移行する(S184)。
S184の処理は、中高速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいか否かを判定する処理である。この処理は、S152の処理と同様である。S184の処理において、中高速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きいと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S186)。
S186の処理は、中高速区間を減速予定区間の対象から除外する処理である。例えば、優先順位として999を設定する。S186の処理が終了すると、図15、16に示す優先順位設定処理を終了する。
一方、S184の処理において、中高速速区間の減速度が乗り心地許容範囲の最大減速度より大きくないと判定した場合には、優先順位設定処理へ移行する(S188)。S188の処理は、高速区間の優先順位として「5」を設定する。S188の処理が終了すると、図15、16に示す優先順位設定処理を終了する。
以上で図14のS132の処理が終了する。次に、図14に戻り、走行制御処理を実行する(S134)。S134の処理は、車両運動制御部12が実行し、S130の処理で生成した速度パターンに基づいて走行制御するとともに、目標速度との誤差を算出する処理である。この処理は、例えば図11のS98〜S102の処理と同様である。S134の処理が終了すると、速度誤差判定処理へ移行する(S136)。
S136の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度超過が発生しているか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、S134の処理で算出した速度誤差が0より大きいか否かを判定して速度超過が発生しているか否かを判定する。S136の処理において、速度超過が発生していると判定した場合には、優先区間選択処理へ移行する(S138)。
S138の処理は、車両運動制御部12が実行し、減速を再優先に行う区間を選択する処理である。車両運動制御部12は、その時点で走行中の区間と、未走行の区間の中から一番優先順位の高い区間(優先順位番号の小さい区間)を最優先の区間として選択する。S138の処理が終了すると、優先区間判定処理へ移行する(S140)。
S140の処理は、車両運動制御部12が実行し、S138の処理で選択した最優先区間が走行中の区間であるか否かを判定する処理である。S140の処理において、最優先区間が走行中の区間であると判定した場合には、フィードバック項の算出処理へ移行する(S142)。
S142の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を算出する処理である。この処理は、例えば図12のS116の処理と同様である。S142の処理が終了すると、制御終了判定処理へ移行する(S144)。
S144の処理は、車両運動制御部12が実行し、目標となる速度パターンを全て実行したか否かを判定する処理である。目標となる速度パターン全てを実行していないと判定した場合には、走行制御処理へ再度移行する(S134)。これにより、速度パターンに基づいてS134〜S142、S146、S148、S132までの処理が繰り返し実行されることとなる。一方、目標となる速度パターン全てを実行したと判定した場合には、図14に示す制御処理を終了する。
一方、S140の処理において、最優先区間が走行中の区間でないと判定した場合には、最大減速度設定処理へ移行する(S146)。S146の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、減速度を変更する処理である。目標速度パターン再生成部11は、S138の処理で選択した最優先区間の減速度を例えば最大減速度に設定する処理である。最大減速度として、乗り心地許容範囲内の最大の減速度(例えば、0.3G)が用いられる。S146の処理が終了すると、速度パターン再生成処理へ移行する(S148)。
S148の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、最優先区間の速度パターンを再生成する処理である。目標速度パターン再生成部11は、S146の処理で設定した減速度に基づいて、速度パターンの再生成を行う。S148の処理が終了すると、優先順位設定処理へ再度移行する(S132)。
以上で図14〜16に示す制御処理を終了する。図14〜16に示す制御処理を実行することで、優先順位の高い速度域を予め設定して、処理の高速化及び目的地までの走行制御の燃費向上を図ることができる。ところで、第3実施形態に係る走行制御装置であれば、その時点において燃費面から最適な走行制御を行うことができるが、旅行経路全体で燃費を最適化するとなると、制御誤差が発生する度に旅行経路全体の速度パターンを再生成する必要がある。これに対して、本実施形態に係る走行制御装置によれば、図13のU2に示すように走行中に速度超過が発生した場合には、走行中に余剰減速の再割り当てを燃費面から最適に行うことができる。また、最優先区間の速度パターンのみを再生成するので、速度パターンの生成処理と実行処理を逐次可能に実行することができる。
上述したように、第4実施形態に係る走行制御部によれば、速度超過が発生した場合には、どの速度域で減速を行うかをフィードバック制御を実行前に設定することができる。このように、予め優先順位を設定することにより処理負荷が軽減されるので、走行中に逐次可能な処理によってフィードバック制御を低燃費に実行することができる。
また、第4実施形態に係る走行制御部によれば、生成した速度パターンを制御目標としてフィードバック制御を実行中に、速度超過が発生した場合には優先順位に応じて回生制御しない速度域を決定することができるので、走行中に逐次可能な処理によってフィードバック制御を低燃費に実行することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第4実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成されるものであって、速度不足状態が発生する場合に経路全体の燃費を考慮したフィードバック制御機能を有する点が相違する。なお、第5実施形態においては、第1〜4実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成は、第4実施形態に係る走行制御部を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部は、第4実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成され、目標速度パターン生成部10、目標速度パターン再生成部11、車両運動制御部12が有する機能の一部が相違している。
目標速度パターン生成部10は、速度パターンを生成するとともに、誤差補正用情報を演算する機能を有している。この誤差補正用情報は、速度不足が発生した場合に速度補正するための情報であり、例えばフィードバック項である。なお、その他の機能については、第4実施形態と同様である。
目標速度パターン再生成部11は、目標速度パターン生成部10と同様に、誤差補正用情報及び優先順位情報を設定する機能を有している。なお、その他の機能については、第4実施形態と同様である。
車両運動制御部12は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が生成した速度パターンに基づいて、余剰減速エネルギーXpを生成する機能を有している。ここで、余剰減速エネルギーXpとは、例えば油圧ブレーキ41によって熱廃棄するエネルギー量である。また、制御目標速度と実速度との差異から速度誤差不足エネルギーYを算出する機能を有している。すなわち、速度誤差不足エネルギーYは、制御目標に一致するために必要な運動エネルギーである。さらに、余剰減速エネルギーXpから速度誤差不足エネルギーYを減算して余力エネルギーZを算出する機能を有している。余力エネルギーZは、熱廃棄するエネルギーのうち、速度不足解消に必要なエネルギー分を除いた余力となるエネルギーである。なお、その他の機能については、第3実施形態と同様である。
次に、第5実施形態に係る走行制御部の動作について説明する。図17、18は、第5実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。図17に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図17に示す制御処理が開始されると、走行制御部は、速度パターン生成処理から開始する(S190)。S190の処理は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、例えば図2のS24の処理や図6のS36と同様である。S190の処理が終了すると、優先順位設定処理へ移行する(S192)。
S192の処理は、目標速度パターン生成部10又は目標速度パターン再生成部11が実行し、S190の処理で生成した速度パターンに基づいて走行した際に速度超過が発生した場合に備えて、減速を行う速度域の優先順位を決定する処理である。この処理は、図15、16の処理と同様である。S192の処理が終了すると、余剰エネルギー算出処理へ移行する(S194)。
S194の処理は、車両運動制御部12が実行し、余剰減速エネルギーXpを算出する処理である。車両運動制御部12は、S190の処理で生成した速度パターンに基づいて、例えば各区間(速度域)の余剰減速エネルギーXp(p:整数)を算出する。ここで、ある区間の最初の速度をvS、当該区間の終了の速度をvE、回生限界減速度をaK、当該区間の減速度をaR、メモリに格納された車両の重量をmとすると、余剰減速エネルギーXpは以下の式3で表すことができる。
Xp=m・(vS 2−vE 2)・(1−aK)/aR …(3)
車両運動制御部12は、式3を用いて各区間の余剰エネルギーを算出する。ここで、減速度aR<回生限界減速度aKの場合には、余剰減速エネルギーXpは0とする。S194の処理が終了すると、走行制御処理へ移行する(S196)。
S196の処理は、車両運動制御部12が実行し、S190の処理で生成した速度パターンに基づいて走行制御するとともに、目標速度との誤差を算出する処理である。この処理は、例えば図11のS98〜S102の処理と同様である。S196の処理が終了すると、速度超過対応処理へ移行する(S198)。
S198の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度超過が発生している場合に、最優先の速度域を選択し、最優先の速度域を走行中の場合にはフィードバック項を補正し、最優先の速度域を走行中でない場合には、速度パターンを再生成する処理である。この処理は、例えば、図14のS136〜S142、S146、S148の処理と同様である。S198の処理が終了すると、速度不足対応処理へ移行する(S200)。
S200の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度不足が発生している場合に、低燃費な速度誤差補正を行う処理である。この処理について図18を用いて説明する。図18に示すように、速度誤差判定処理から開始する(S204)。S204の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度不足が発生しているか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、S196の処理で算出した速度誤差が0より小さいか否かを判定して速度不足が発生しているか否かを判定する。S204の処理において、速度不足が発生していると判定した場合には、速度誤差不足エネルギー算出処理へ移行する(S206)。
S206の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差不足エネルギーYを算出する処理である。車両運動制御部12は、走行中の速度域の速度誤差不足エネルギーYを算出する。ここで、メモリに格納された車両の重量をm、センサ31から入力した速度をvR、目標速度をvMとすると速度誤差不足エネルギーYは以下の式4で表すことができる。
Y=m・(vM 2−vR 2) …(4)
車両運動制御部12は、式4を用いて速度誤差不足エネルギーYを算出する。S206の処理が終了すると、余剰減速エネルギー算出処理へ移行する(S208)。
S208の処理は、車両運動制御部12が実行し、余剰減速エネルギーXpを算出する処理である。車両運動制御部12は、S206の処理で対象とした走行中の区間p(速度域)と同じ区間の余剰減速エネルギーXpを算出する。車両運動制御部12は、例えば、図17のS194の処理で生成した各区間の余剰減速エネルギーの中から走行中の区間の余剰減速エネルギーXpを選択する。S208の処理が終了すると、余力エネルギー算出処理へ移行する(S210)。
S210の処理は、車両運動制御部12が実行し、余力エネルギーZを算出する処理である。車両運動制御部12は、例えば以下の式5を用いて余力エネルギーZを算出する。
Z=Xp−Y …(5)
S210の処理が終了すると、余力エネルギー判定処理へ移行する(S212)。
S212の処理は、車両運動制御部12が実行し、余力エネルギーZが0より大きいか否かを判定する処理である。余力エネルギーZが0より大きくないと判定した場合には、ゲイン設定処理へ移行する(S214)。
S214の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック制御のゲインを設定する処理である。余力エネルギーZが負の場合には、速度不足を補うエネルギーよりも熱廃棄するエネルギーの方が小さいことを意味する。すなわち、熱廃棄するエネルギーを全て回生したとしても運動エネルギーが不足することとなる。よって、余力エネルギーZ相当のフィードバック項を新たに追加する必要がある。例えば、Pゲインにおいて、初期PゲインをP0とすると、補正後のPゲインPは、以下の式6を用いて算出できる。
P=P0/(|Z|/|Y|) …(1)
車両運動制御部12は、PIDの各ゲインについて式6と同様な補正式を用いて補正する。S214の処理が終了すると、フィードバック項生成処理へ移行する(S216)。
S216の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を生成する処理である。車両運動制御部12は、S214の処理で補正した各ゲインを用いて、フィードバック項を計算する。S216の処理が終了すると、図18に示す制御処理を終了する。
一方、S212の処理において、余力エネルギーZが0より大きいと判定した場合には、フィードバック項設定処理へ移行する(S218)。S218の処理は、車両運動制御部12が実行し、フィードバック項を設定する処理である。余力エネルギーZが正の場合には、速度不足を補うエネルギーよりも熱廃棄するエネルギーの方が大きいことを意味する。このため、速度不足状態をその場で速度増加等によって解決せずに、他の区間において余剰減速エネルギーXpの削減に割り当てるために、フィードバック項を0に設定する。S218の処理が終了すると、図18に示す制御処理を終了する。
以上でS200の処理を終了する。S200の処理が終了すると、制御完了判定処理へ移行する(図17のS202)。
S202の処理は、車両運動制御部12が実行し、目標となる速度パターンを全て実行したか否かを判定する処理である。目標となる速度パターン全てを実行していないと判定した場合には、走行制御処理へ再度移行する(S196)。これにより、速度パターンに基づいてS196〜S200までの処理が繰り返し実行されることとなる。一方、目標となる速度パターン全てを実行したと判定した場合には、図17に示す制御処理を終了する。
以上で図17、18に示す制御処理を終了する。図17、18に示す制御処理を実行することで、優先順位の高い速度域を予め設定して、処理の高速化及び目的地までの走行制御の燃費向上を図ることができる。ところで、第3実施形態に係る走行制御装置であれば、その時点において燃費面から最適な走行制御を行うことができるが、旅行経路全体で燃費を最適化するとなると、制御誤差が発生する度に旅行経路全体の速度パターンを再生成する必要がある。また、第4実施形態に係る走行制御装置であれば、旅行経路全体で燃費を最適化することができるが、目標速度に対して速度が不足した場合には対応できない。
これに対して、本実施形態に係る走行制御装置によれば、図13のU1に示すように走行中に速度不足が発生した場合には、即時に対応するのではなく、旅行経路全体において余剰減速エネルギーXpの分布を管理して速度不足状態の再割り当てを燃費面から最適に行うことができる。
上述したように、第5実施形態に係る走行制御部によれば、生成した速度パターンを制御目標としてフィードバック制御を実行中に、速度超過が発生した場合には優先順位に応じて回生制御しない速度域を決定することができるので、走行中に逐次可能な処理によってフィードバック制御を低燃費に実行することができる。
なお、上述した各実施形態は本発明に係る走行制御装置の一例を示すものである。本発明に係る走行制御装置は、各実施形態に係る走行制御装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る走行制御装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記各実施形態において、自動運転機能を備えた車両5について説明したが、運転支援システム機能を備えた車両5であってもよい。この場合、例えば、車両制御を支援するディスプレイ等を備えて構成とするとよい。
また、第2、3実施形態において、エンジン42の動作状態情報、車速と目標速度との差を示す速度超過不足情報、エンジン42の熱効率及びモータ43の変換効率に基づいてフィードバック制御を行う例を説明したが、これらの何れか一つのパラメータあるいはこれらのパラメータを組み合わせてフィードバック制御を行う場合でもよい。
また、第3〜5実施形態において、目標速度パターン生成部10が生成した速度パターンをフィードバック制御する例を説明したが、目標速度パターン再生成部11が再生成した速度パターンをフィードバック制御する場合でもよい。
さらに、第3、4実施形態を組み合わせてフィードバック制御する場合でもよい。
1、3…走行制御部(走行制御装置)、2…ECU、4…ハイブリットシステム(回生制動装置)、5…車両、9…回生限界減速度演算部(回生限界減速度演算手段)、10…目標速度パターン生成部(速度パターン生成手段)、11…目標速度パターン再生成部(速度パターン再生成手段)、12…車両運動制御部(協調制御手段、フィードバック制御手段)、41…油圧ブレーキ(非回生制動装置)、42…エンジン、43…モータ、44…バッテリ。