以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る走行制御装置は、エンジン及びモータを駆動源とする車両の走行制御装置であって、例えば、自動運転機能を備えた車両や、追従運転や車線維持運転などの運転者支援システムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
最初に、本実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成を示すブロック図である。図1に示す車両5は、自動運転機能を有する車両であって、エンジン42、モータ43及びバッテリ44を含むハイブリットシステム4を備えている。
ハイブリットシステム4は、エンジン42及びモータ43の2つの駆動源を、単独であるいは組み合わせて駆動させることにより車両5を走行させる機能を有している。例えば、ハイブリットシステム4は、エンジン42を停止したままの惰性による走行、いわゆる滑空走行が可能に構成されている。エンジン42は、例えば電子スロットル等のスロットルアクチュエータにより出力を制御可能に構成されている。モータ43は、接続されたバッテリ44から供給される電力、あるいは発電機(不図示)を介して供給される電力により駆動する機能を有している。このモータ43は、例えば、それぞれ電動モータ及び発電機として選択的に機能する第1モータジェネレータMG1(不図示)及び第2モータジェネレータMG2(不図示)を有している。
また、ハイブリットシステム4は、回生ブレーキあるいは発電機により、モータ43を回転させて運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生制御を行う機能を有している。そして、ハイブリットシステム4は、得られた電気エネルギーをバッテリ44に充電する機能を有している。また、ハイブリットシステム4は、後述するECU(Electronic Control Unit)2に接続され、ECU2から出力される信号に基づいて駆動制御、回生制御を行う機能を有している。
また、車両5は、GPS(Global Positioning System)受信機30、センサ31、操作部32、ナビゲーションシステム33、ECU2、操舵アクチュエータ40、ブレーキアクチュエータ41を備えている。ここで、GPSは、衛星を用いた計測システムのことであり、自車両の現在位置の把握に好適に用いられるものである。また、ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
GPS受信機30は、例えば、車両5の位置情報を受信する機能を有している。また、GPS受信機30は、受信した位置情報をECU2へ出力する機能を有している。
センサ31は、車両5の周囲の走行環境情報や、車両5の車両状態情報を取得する機能を有している。センサ31としては、例えば、車両5の走行レーンを認識するためのレーン認識センサや画像センサ、車両5の周辺の障害物や後続車両を検知し距離情報を取得する電磁波センサやミリ波センサ、ヨーレートを計測するヨーレートセンサ、バッテリ44のSOCを検出するセンサ、モータ43の回転数を検出するセンサ、エンジン42の回転数を検出するセンサ、ハンドル舵角及びタイヤ角を検知する舵角センサ、加速度を検出する加速度センサ、車輪速を計測する車輪速センサ等が用いられる。また、センサ31は、取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
操作部32は、運転者の要求する条件を入力する機能を有している。操作部32としては、例えば、目標地点、目標旅行時間、乗り心地レベル等を入力する操作パネル等が用いられる。また、操作部32は、入力した情報をECU2へ出力する機能を有している。
ナビゲーションシステム33は、所定地点(例えば目的地)までの経路案内等を行う機能を有している。また、ナビゲーションシステム33は、例えば地図データベースから現在走行中付近の道路情報を読み出し、その道路情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。さらに、ナビゲーションシステム33は、信号機点灯情報等の交通情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。
ECU2は、目標速度パターン生成部(速度パターン生成手段)10、目標速度パターン再生成部(加速度パターン生成手段、速度パターン再生成手段)11、車両運動制御部12、加減速制御部20及び操舵制御部21を備えており、目標速度パターン生成部10、目標速度パターン再生成部11及び車両運動制御部12により走行制御部1が構成されている。
目標速度パターン生成部10は、車両5の目標速度パターンを生成する機能を有している。目標速度パターンは、例えば、時刻又は距離に依存した速度を示すものである。目標速度パターン生成部10は、所定地点までの行程を複数の区間に分割して各区間での目標速度パターン(初期速度パターン)を生成する機能を有している。例えば、目標速度パターン生成部10は、操作部32が出力した目的地と、ナビゲーションシステム33が出力した地図情報等に基づいて、目的地までの行程を複数の区間に分割する機能を有している。そして、目標速度パターン生成部10は、例えば、センサ31が入力した車両5の周囲の走行環境情報及びECU2のメモリに格納された車両情報に基づいて、分割した区間ごとに初期速度パターンを生成する機能を有している。例えば、目標速度パターン生成部10は、車両の走行において必ず満たさなければならない条件である拘束条件と、重視する項目を評価するための項を含む評価関数とを用いた最適化処理により、速度パターンを生成する機能を有している。重視する項目が燃費の場合、例えばエンジン42の熱効率を評価する項を評価関数に含むことによって、低燃費な初期速度パターンを生成することができる。この低燃費な初期速度パターンは、エンジン42の熱効率の評価により、例えば20km/h程度の低速な速度パターンや、加速する区間と減速する区間を繰り返す波状の速度パターンとなる。なお、加速区間においてはエンジン42の熱効率が最も良い条件で生成され、減速区間においてはエンジン42を停止した走行、いわゆる滑空走行となる。また、目標速度パターン生成部10は、生成した初期速度パターンを目標速度パターン再生成部11へ出力する機能を有している。
目標速度パターン再生成部11は、目標速度パターン生成部10が生成した初期速度パターンに基づいて、加速度パターンを生成するとともに、速度パターンを再生成する機能を有している。加速度パターンは、例えば、時刻又は距離に依存した加速度を示すものである。例えば、速度パターンに基づいて加速する加速区間において、加速する際の速度が第1閾値(第1速度)以下の速度域である場合には、エンジン42の熱効率を優先した加速度パターンを生成する機能を有している。この第1閾値は、低速域であるか否かを判断するための閾値であり、例えば30km/sが用いられる。エンジン42の熱効率は、例えば予め取得されたトルクの回転数依存性を示すマップを参照して算出する。また、目標速度パターン再生成部11は、速度パターンに基づいて加速する加速区間において、加速する際の速度が第1閾値より大きく第2閾値(第2速度)以下の速度域である場合には、モータ43の変換効率のロス最小を優先として加速度パターンを生成する機能を有している。第2閾値は、中速域であるか否かを判断するための閾値であり、第1閾値よりも大きな値が用いられる。第2閾値として、例えば60km/sが用いられる。また、モータ43の変換効率は、電気エネルギーを力学エネルギー、あるいは力学エネルギーを電気エネルギーに変換する効率のことである。すなわち、変換効率のロス最小とは、上述したエネルギー変換の際に生じる損失を最小とすることである。さらに、速度パターンに基づいて加速する加速区間において、加速する際の速度が第2閾値よりも大きい速度域である場合には、モータ43の回転の最小化を優先した加速度パターンを生成する機能を有している。そして、生成した加速度パターンに基づいて速度パターンを再生成する機能を有している。また、目標速度パターン再生成部11は、再生成した速度パターンを車両運動制御部12へ出力する機能を有している。
車両運動制御部12は、目標速度パターン及びセンサ31からの周囲の走行環境や自車両の走行状態に基づいて、操舵制御情報や加減速制御情報を算出する機能を有している。また、車両運動制御部12は、算出した操舵制御情報を操舵制御部21へ、算出した加減速制御情報を加減速制御部20へ出力する機能を有している。さらに、回生ブレーキを作動させる命令信号をハイブリットシステム4に出力する機能を有している。
加減速制御部20は、車両運動制御部12が出力した加減速制御情報に基づいて、ハイブリットシステム4や、ブレーキアクチュエータ41を制御するための信号を生成し、生成した制御信号をハイブリットシステム4及びブレーキアクチュエータ41へ出力する機能を有している。ここで、ブレーキアクチュエータ41は、例えば油圧式ブレーキの場合には、各車輪のブレーキ油圧の調整を行うバルブ等が用いられる。
操舵制御部21は、車両運動制御部12が出力した操舵制御情報に基づいて操舵アクチュエータ40を制御するための信号を生成し、生成した制御信号を操舵アクチュエータ40へ出力する機能を有している。なお、操舵アクチュエータ40は、車両の走行を制御する機械的な構成要素であり、例えば、操舵角制御モータ等が用いられる。
次に、第1実施形態に係る走行制御部1の動作について説明する。図2は、第1実施形態に係る走行制御部1の動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図2に示すように、走行制御部1は初期速度パターン生成処理から開始する(S10)。S10の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、初期速度パターンを生成する処理である。目標速度パターン生成部10は、例えば、操作部32により取得した目的地と、ナビゲーションシステム33が出力した地図情報等に基づいて、目的地までの行程を複数の区間に分割する。そして、例えば、重視する項目を評価する項を含む評価関数を用いて最適化処理により初期速度パターンを生成する。以下では説明理解の容易性を考慮して、低燃費速度パターンを生成する例を説明する。目標速度パターン生成部10は、例えば、ECU2のメモリに格納された車両情報を入力して拘束条件を設定する。車両情報として、例えば、車両加速性能、車両減速性能、車重、許容最大加速度、許容最大減速度、許容最大ジャーク、最高速度、最大横加速度、最大ハンドル角速度、最小定常速度、最小定常加速度、最小定常ジャーク、加減速時の加減速変化回数、緊急ブレーキ性能、故障判定時間、速度制御誤差、位置制御誤差が用いられる。これらの値は、諸元情報や、操作部32から入力された運転者の要望、学習等により設定される。
次に、旅行時間とエンジン出力熱効率を評価する項を含む評価関数とを用いた最適化処理により、低燃費な初期速度パターンを生成する。例えば、評価関数を収束演算することにより初期速度パターンを生成する。生成された初期速度パターンの一例を図3(a)に示す。図3に示すグラフは、横軸が時間、縦軸が速度で示された速度パターンである。図3(a)に示す速度パターンは、車両5が発進して停止するまで、例えば青点灯による発進時刻t0から赤点灯による停止時刻t6までの短い時間の速度パターンである。このような速度パターンを繋げることによって目的地までの速度パターンが完成する。図3(a)では、時刻t0から時刻t1までの加速区間T1、時刻t1から時刻t3までの波状走行区間T2、時刻t3から時刻t5までの波状走行区間T3、時刻t5から時刻t6まで減速区間T4の4つの区間に分割して低燃費な速度パターンを生成している。波状走行区間T2、T3内には減速区間T2a、T3aと加速区間T2b、T3bが含まれており、波状走行区間が連続することにより、減速区間と加速区間が交互に繰り返されている。減速区間T2a、T3a、T4での走行は、いわゆる滑空走行であり、エンジン42は停止している。目標速度パターン生成部10が初期速度パターンを生成すると、S10の処理は終了し、低速加速時の速度パターン再生成処理へ移行する(S12)。
S12の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、低速域の加速区間においてエンジン42を作動させて、エンジン42の最も熱効率の良いエンジン回転数を使用した加速を行うように加速度パターンを生成して速度パターンを変更する処理である。目標速度パターン再生成部11は、速度パターンの加速区間において、第1閾値以下の低速域の加速領域を選択する。第1閾値として、例えば30km/hが用いられる。そして、選択した加速領域において、エンジン42の熱効率が最も良いエンジン回転数を設定する。図4は、エンジントルクのエンジン回転数依存性を示す一例である。ここで、エンジン42の熱効率が高いエンジン回転数は、使用した燃料に対して力学エネルギーとして取り出せる比率が最も高い領域である。図4に示すように、最大回転数を約5000rpmとすると、その半分程度の約2500rpm周辺が熱効率の良いエンジン回転数である。そして、低速域においては、エンジン42及びモータ43を組み合わせて駆動させる場合、加速要求を十分実現するために、エンジン42の駆動力よりもモータ43の駆動力が優先される。このため、エンジン42の出力する馬力に関わらず、エンジン42により発生したエネルギーのうち直接的に加速エネルギーとなる成分(エンジン直達成分)が少ない。このため、低速域ではエンジン42は駆動力への寄与が少ないので駆動力よりも燃費を優先させることができる。よって、最もエンジン42の熱効率の良いエンジン回転数で低速域の加速区間を走行させる速度パターンを再生成する。S12の処理が終了すると、区間速度判定処理へ移行する(S14)。
S14の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、低速域の区間よりも高速な加速区間が存在するか否かを判定する処理である。目標速度パターン再生成部11は、例えば第1閾値よりも大きい速度の加速区間が存在するか否かを判定する。S14の処理において、第1閾値よりも大きい速度の加速区間が存在すると判定した場合には、中速加速時の速度パターン再生成処理へ移行する(S16)。
S16の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、中速域の加速区間においてエンジン42を作動させて、モータ43のエネルギー変換における損失を最小化することを優先した加速度パターンを生成して速度パターンを変更する処理である。目標速度パターン再生成部11は、速度パターンの加速区間において、第1閾値より大きく第2閾値以下の中速域の加速領域を選択する。第2閾値として、例えば60km/hが用いられる。そして、選択した加速領域において、エンジン出力に対するエンジン直達成分の割合(エンジン直達率)が徐々に高くなるように、駆動力を決定する。エンジン直達率TEは、例えば、速度をv、第1閾値をK1、第2閾値をK2とすると、以下の式1で表すことができる。
TE=(v−K1)/(K2−K1) …(1)
目標速度パターン再生成部11は、上記エンジン直達率TE、速度v、及び図4に示すエンジン熱効率特性を用いて、一般的なHV制御技術によって駆動力を決定する。なお、中速域においては、エンジン42の出力を大きくするほど、モータ43による変換を経由する成分(全てのエンジン42の出力から直達成分を除いた成分)の比率が高くなるため、エンジン42の出力を上げると、全体のエネルギー効率に対してモータ43が寄与する部分が大きくなる。そして、モータ43による変換を経由する成分は、例えば20%程度損失されるため、直達成分に比べてエネルギー効率が良くない。このため、モータ43の変換効率を考慮すると、モータ43をなるべくCVTとして機能させない方がエネルギー効率が上昇する可能性がある。よって、中速域においては、モータ43の変換効率を考慮してハイブリットシステム4全体のエネルギー効率が向上するように制御する。これにより、速度が上昇するに従い馬力が徐々に低下するエンジン出力で加速する速度パターンとなる。S16の処理が終了すると、区間速度判定処理へ移行する(S18)。
S18の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、中速域の区間よりも高速な加速区間が存在するか否かを判定する処理である。目標速度パターン再生成部11は、例えば第2閾値よりも速度の大きい加速区間が存在するか否かを判定する。S18の処理において、第2閾値よりも速度の大きい加速区間が存在すると判定した場合には、高速加速時の速度パターン再生成処理へ移行する(S20)。
S20の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、高速域の加速区間においてエンジン42を作動させて、車両の駆動力がエンジン直達成分のみの状態となるように、加速度パターンを生成して速度パターンを変更する処理である。目標速度パターン再生成部11は、速度パターンの加速区間において、第2の閾値より大きい高速域の加速領域を選択する。そして、選択した加速領域において、モータジェネレータMG1、MG2によるエネルギー変換が全く行われないように、一般的なHV制御技術によって駆動力を決定する。例えば、HV制御技術において、一般的な共線図を用い、第1モータジェネレータMG1の回転数が0回転、第2モータジェネレータMG2の回転数が車速に基づく回転数とし、第2モータジェネレータMG2の負荷を道路勾配、転がり抵抗、及び空気抵抗としてモータ回転数を計算する。すなわち、モータ43の最小のモータ回転数を計算する。そして、モータ回転数から駆動力を算出する。ここで、高速域において、道路勾配が無く、速度一定の定常走行という状況になると、エンジン42により発生した出力が強すぎるために駆動力とすることなく強制的に回生をする、いわゆるエネルギー循環が発生する場合がある。エネルギー循環が発生すると、エンジン42による過剰な力学エネルギーがモータ43により電気エネルギーに変換されてバッテリ44へ充電される。すなわち、エネルギー循環が発生すると、エンジン42により発生させた力学エネルギーは、モータ43によるエネルギー変換によりその一部が損失する。また、バッテリ44を充電する場合、バッテリ44へのエネルギーの出し入れの際に、その一部が損失する。このため、燃費が低下するおそれがある。このため、エネルギー循環の発生を回避すべく、加速度要求を行うように制御する。このエネルギー循環を考慮したHV制御技術により、高速域の加速域では、速度が上昇するに従い馬力が上がるため、加速度がほぼ一定となる。よって、高速域の加速域では加速度をほぼ一定として速度パターンを再生成する。S20の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
一方、S14の処理において、第1閾値よりも大きい速度の加速区間が存在しないと判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。また、S18の処理において、第2閾値よりも速度の大きい加速区間が存在しないと判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。
以上で図2に示す制御処理を終了する。図2に示す制御処理をすることで、加速区間の加速が変更されて新たな速度パターンが再生成される。ここで、図2に示す制御処理を実行することにより得られるエンジン出力の詳細を説明する。図5は、従来のエンジン出力及び図2に示す制御処理を実行して得られたエンジン出力を示す概要図であり、縦軸をエンジン出力馬力、横軸を時間としたものである。また、図5は、第1閾値を30km/h、第2閾値を60km/hとして図2に示す制御処理を実行して得られたものである。
従来の走行制御装置では、エンジン42の熱効率が最適化となるようにエンジン出力を制御しているため、図5の一点鎖線Uで示すように、速度域に関わらずエンジン42のエンジン出力が同一となる。
これに対して、本実施形態に係る走行制御装置では、モータ43の変換効率を考慮して速度域に応じて加速を変更する。図5に示すように、30km/h以下の低速域では、エンジン42の熱効率を優先するのでエンジン最適熱効率のエンジン出力となる。また、30km/hより大きく60km/h以下の中速域では、モータジェネレータMG1、MG2の変換によるロスを最小化することを優先するので、60km/hでモータ43の変換効率が最も良くなるように、馬力を除々に下げるエンジン出力となる。そして、60km/hより大きい高速域では、モータ43の回転を最小化することを優先するので、ほぼ加速度一定で加速するエンジン出力となる。このようなエンジン出力パターンGを生成することで、低燃費を実現できる。
上述したように、第1実施形態に係る走行制御装置1によれば、エンジン42又はモータ43、あるいはこれらを組み合わせた駆動力により加速走行する場合に、加速する際の速度が第1速度以下の場合には、エンジン42の熱効率を優先させ、加速する際の速度が第1速度より大きく第2速度以下の場合には、モータ43の変換効率のロスを最小にすることを優先させて加速度パターンを生成する。例えば、第1速度以下の低速走行の際には、エンジン42の出力が車両の駆動に効率的に伝達されないので、モータ43の出力を駆動力として主に使用する。このため、エンジン42の熱効率が最適となる加速を決定することにより、システム全体としてエネルギーを効率化することができる。また、エンジン42の出力が車両の駆動に効率的に伝達される中速走行の際には、モータ43のエネルギー変換における損失が最小になるようにモータ43駆動による加速を決定することができる。さらに、加速する際の速度が第2速度より大きい場合には、モータ43の回転数を最小化することを優先した加速度パターンを生成する。これにより、モータ43のエネルギー変換ロスを最小化して低燃費で走行することができる。このように、CVTの変換によるロスを考慮し、システム全体として低燃費化を図ることができる。
また、第1実施形態に係る走行制御装置1によれば、加速する際の速度が第2速度より大きい高速域において、エンジン42により発生した出力が強すぎるために駆動力とすることなく強制的に回生をする、いわゆるエネルギー循環の発生を回避することができる。これにより、燃費低下を回避することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第1実施形態に係る走行制御部1とほぼ同様に構成されるものであって、走行制御部1と比べ、目標とした速度パターンを低燃費に実行制御することができる機能を有する点が相違する。具体的には、加速時のフィードバック制御を、その時点の車両情報を考慮して最適に実行する機能を有している。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成は、第1実施形態に係る走行制御部1を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部は、第1実施形態に係る走行制御部1とほぼ同様に構成され、車両運動制御部12が有する機能の一部が相違する。
車両運動制御部12は、目標速度パターンにより規定された各区間での目標速度に基づいた走行制御を行う際に、エンジン42の動作状態情報、車速と目標速度との差を示す速度超過不足情報、エンジン42の熱効率及びモータ43の変換効率に基づいてフィードバック制御を行う機能を有している。その他の機能については、第1実施形態と同様である。
次に、第2実施形態に係る走行制御部の動作について説明する。図6、7は、第2実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。図6、7に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図6に示す制御処理が開始されると、走行制御部は、速度パターン生成処理から開始する(S30)。S30の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、図2のS10の処理と同様である。S30の処理が終了すると、速度誤差確認処理へ移行する(S32)。
S32の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差を算出する処理である。車両運動制御部12は、センサ31が取得した車速から、S30の処理で生成した速度パターンの目標車速を減算して速度誤差とする。S32の処理が終了すると、誤差判定処理へ移行する(S34)。
S34の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度誤差の大きさを判定する処理である。車両運動制御部12は、S32の処理で算出した速度誤差の絶対値が所定値以上か否かを判定する。所定値として、例えば0.3km/hが用いられる。S34の処理において、速度誤差が大きくないと判定した場合には、車速を変更する必要がないので、図6、7の処理を終了する。一方、S34の処理において、速度誤差が大きいと判定した場合には、目標加速度算出処理へ移行する(S36)。
S36の処理は、車両運動制御部12が実行し、目標加速度を算出する処理である。車両運動制御部12は、S30の処理で生成した速度パターンの微分から目標加速度を求める。S36の処理が終了すると、暫定指示加速度算出処理へ移行する(S38)。
S38の処理は、車両運動制御部12が実行し、暫定指示加速度を算出する処理である。車両運動制御部12は、一般的な速度フィードバック制御に基づいて暫定指示加速度を決定する。例えば、目標加速度をam、速度誤差をVh、比例ゲイン(Pゲイン)をPとすると、暫定指示加速度azは以下の式2で表すことができる。
az=am+Vh・P …(2)
このように、車両運動制御部12は、得られた目標加速度amをフィードフォワード項として速度誤差に対して比例ゲイン(Pゲイン)のフィードバック項を加える制御を行う。比例ゲインPは、基本ゲインとして所定値P0が設定される。そして、車両運動制御部12は、所定の条件を満たす場合には、後述するS62の処理において比例ゲインPを変更する。S38の処理において、暫定指示加速度aZを決定すると、理想加速度算出処理へ移行する(S40)。
S40の処理は、車両運動制御部12が実行し、理想加速度を算出する処理である。例えば、図2に示す制御処理以外の処理により速度パターンが修正されている場合には、目標加速度amを変更する必要がある場合がある。よって、車両運動制御部12は、センサ31から得られた車両状態、車両速度等に基づいて図2に示す制御処理と同様の処理を行い、燃費に関して現時点での理想的な加速度arを算出する。S40の処理が終了すると、加速度差判定処理へ移行する(S42)。
S42の処理は、車両運動制御部12が実行し、S40の処理で算出した理想加速度arと、S36の処理で算出した目標加速度amとが相違することにより、暫定指示加速度azに許容できない差が生じているか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、以下の式3を満たす場合には、暫定指示加速度azが許容範囲であると判定する。
|az−ar| < |am−ar| …(3)
S42の処理において、理想加速度arと、S36の処理で算出した目標加速度amとが相違しても差が大きくない(許容範囲内)と判定した場合には、暫定指示加速度出力処理へ移行する(S46)。
S46の処理は、車両運動制御部12が実行し、S38の処理で算出した暫定指示加速度azを実現するようにHVシステムへ出力する処理である。このように、許容範囲で燃費効率が最適な加速が可能な場合、あるいは旅行時間の制約によりやむを得ず燃費非効率となった場合には、誤差に対してそのままフィードバック制御を実施する。S46の処理が終了すると、図6、7に示す制御処理を終了する。
一方、S42の処理において、理想加速度arと、S36の処理で算出した目標加速度amとが相違したことにより、差が大きい(許容範囲外)と判定した場合には、暫定指示加速度検討処理へ移行する(S44)。
S44の処理は、車両運動制御部12が実行し、暫定指示加速度azを検討する処理である。以下、図7を用いて説明する。図7に示すように、暫定指示加速度検討処理は、速度超過判定処理から開始される(S50)。S50の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度超過状態であるか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、例えばS32の処理で算出した速度誤差が正であり、所定値以上であるか否かを判定する。所定値として、例えば0.3km/hが用いられる。S50の処理において、速度超過状態であると判定した場合には、速度超過量判定処理へ移行する(S52)。
S52の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度超過量を判定する処理である。車両運動制御部12は、速度超過量が所定値未満の小さな超過量であるか否かを判定する。所定値として、例えば2km/hが用いられる。S52の処理において、小さな速度超過量であると判定した場合には、加速処理へ移行する(S54)。
S54の処理は、車両運動制御部12が実行し、加速を行う処理である。車両運動制御部12は、エンジン42を停止させない範囲で加速を継続する。エンジン42を停止させない範囲は、例えば、エンジン熱効率が悪化しない最低回転数であって、例えば1500回転である。これにより、速度超過に対しては、なるべくエンジン42を停止させない範囲で加速を継続することができる。S54の処理が終了すると、図6、7に示す制御処理を終了する。
一方、S52の処理において、小さな速度超過量でないと判定した場合には、滑空走行処理へ移行する(S56)。S56の処理は、車両運動制御部12が実行し、滑空走行を行う処理である。車両運動制御部12は、エンジン42を停止するとともにハイブリットシステム4に回生停止信号を出力する。これにより車両5は転がり抵抗や空気抵抗のみで減速されて目標値に除々に近づくこととなる。S56の処理が終了すると、図6、7に示す制御処理を終了する。
一方、S50の処理において、速度超過状態でないと判定した場合には、速度不足判定処理へ移行する(S58)。S58の処理は、車両運動制御部12が実行し、速度不足状態であるか否かを判定する処理である。車両運動制御部12は、例えばS32の処理で算出した速度誤差が負であり、所定値以下であるか否かを判定する。所定値として、例えば−0.3km/hが用いられる。S58の処理において、速度不足状態であると判定した場合には、熱効率算出処理へ移行する(S60)。
S60の処理は、車両運動制御部12が実行し、エンジン熱効率を算出する処理である。車両運動制御部12は、例えば、直前の制御周期における指示加速度(初回の場合は暫定指示加速度)で走行した場合の熱効率Hpをエンジン熱効率特性に基づいて算出する。S60の処理が終了すると、比例ゲイン補正処理へ移行する(S62)。
S62の処理は、車両運動制御部12が実行し、比例ゲインPを補正する処理である。車両運動制御部12は、S40の処理で生成した理想加速度arで走行する場合の熱効率をHrとすると、比例ゲインPを以下の式4で補正する。
P=P0・(Hp/Hr) …(4)
式4を用いて、エンジン熱効率が非効率な走行における速度不足に対して、効率悪化に応じて比例ゲインを減少させる。加速時に速度が足りない場合には、旅行時間が悪化するが、速度が超過している場合に比べて安全性が低下するおそれが小さく、又、減速時の速度不足と比べても目標停止地点の手前で停止してしまうという不具合も発生しない。このため、加速時に速度が足りない場合には、式4を用いて比例ゲインを減少させて、無理に制御目標に合わせるよりもエンジン熱効率を優先させたフィードバック制御とする。S62の処理が終了すると、指示加速度算出処理へ移行する(S64)。
S64の処理は、車両運動制御部12が実行し、指示加速度を算出する処理である。この処理は、S38の処理と同様であり、S62の処理で補正した比例ゲインPを用いて指示加速度を算出する。S64の処理が終了すると、速度制御処理へ移行する(S66)。
S66の処理は、車両運動制御部12が実行し、S66の処理で算出した指示加速度を実現するようにHVシステムへ出力する処理である。S66の処理が終了すると、図6、7に示す制御処理を終了する。
以上で図6、7に示す制御処理を終了する。図6、7に示す制御処理を行うことで、エンジン42の熱効率及びモータ43の変換効率を考慮しながらフィードバック制御を行うことができる。
上述したように、第2実施形態に係る走行制御装置によれば、速度を上げて速度パターンで規定される目標速度に合わせ込むフィードバック制御を実行する際に、エンジン熱効率を考慮して実行することができるので、フィードバック制御の実行を含めて低燃費化を図ることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る走行制御装置(走行制御部)は、第2実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成されるものであって、FB制御誤差を学習して速度パターン全体で低燃費な走行を実現する速度パターンを再生成する機能を有する点が相違する。なお、第3実施形態においては、第1、2実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行制御部を備えた車両の構成は、第2実施形態に係る走行制御部を備えた車両と同様である。また、本実施形態に係る走行制御部は、第2実施形態に係る走行制御部とほぼ同様に構成され、目標速度パターン再生成部11が有する機能の一部が相違する。
目標速度パターン再生成部11は、目標速度パターン生成部10が生成した初期速度パターンを学習用の速度パターンとし、車両運動制御部12が実行するフィードバック制御の結果に基づいて学習用の速度パターンを変更する機能を有している。その他の機能については、第1実施形態と同様である。
次に、第3実施形態に係る走行制御部の動作について説明する。図8は、第3実施形態に係る走行制御部の動作を示すフローチャートである。図8に示す制御処理は、例えばイグニッションオン又は車両5に備わる開始ボタンがオンされてから、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図8に示す制御処理が開始されると、走行制御部は、速度パターン生成処理から開始する(S70)。S70の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、速度パターンを生成する処理である。この処理は、図2のS10の処理と同様である。S70の処理が終了すると、フィードバック制御実行処理へ移行する(S72)。
S72の処理は、車両運動制御部12が実行し、S70の処理で生成した速度パターンに基づいて走行し、フィードバック制御を行う処理である。この処理は、図6、7に示すフィードバック制御処理と同様である。S72の処理が終了すると、学習処理へ移行する(S74)。
S74の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、速度誤差の標準偏差を学習する処理である。目標速度パターン再生成部11は、S72の処理で実行したフィードバック制御処理における速度誤差を算出する。例えば、センサ31から得られた車速とS70の処理で生成した速度パターンから得られる目標車速との差を算出することで、速度誤差を算出する。そして、一般的な統計学に基づいて、速度ごとに速度誤差の標準偏差を算出する。例えば10km/hごとに速度誤差の標準偏差を算出する。これにより、速度に応じた速度誤差を学習することができる。S74の処理が終了すると、速度パターン生成処理へ移行する(S76)。
S76の処理は、目標速度パターン生成部10が実行し、学習用の速度パターンを生成する処理である。この処理は、S70の処理と同様である。S76の処理が終了すると、目標車速変更処理へ移行する(S78)。
S78の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、目標車速を変更する処理である。目標速度パターン再生成部11は、S74の処理で学習した速度誤差の標準偏差に基づいてS76で生成した学習用の速度パターンの目標車速を変更する。例えば、図2に示すフィードバック制御処理を実行中に速度を超過した場合には、燃費が悪化するエンジン回転数(例えば1500回転以下)までエンジン回転数が低下する可能性がある(図4参照)。このため、目標速度パターン再生成部11は、このようなフィードバック制御による燃費悪化の可能性を考慮し、走行区間(車両の発進から停止)内の加速区間において、加速区間序盤では目標速度を低く設定し、加速区間終了時点で速度が同じになるように速度パターンを再生成する。例えば、学習した標準偏差をσ、所定区間の距離をL0、所定区間の終了までの距離をL1、前回の目標車速Vm−1とすると、今回の目標車速Vmを、以下の式5を用いて変更する。
Vm=Vm−1−σ・(L1/L0) …(5)
式5を用いることにより、例えば、図3(a)に示す加速区間T2bの速度パターンが図3(b)に示す速度パターン(実線)に変更される。図3(b)に示す速度パターンは、図3(a)に示す加速区間T2bの速度パターンの拡大図であり、点線Dが学習前の速度パターン、実線Eが学習後の速度パターンである。このように、当該加速区間の速度パターンの傾きが大きくなるように変更されるため、加速追加をしながら目標速度に合わせる状態に意図的にすることができる。このため、加速要求がなされることから、エンジン回転数が低下することを回避できる。また、加速区間終了時点(時刻t3)で目標速度が本来の目標速度V2と同一となるように変更することで、低燃費と制御目標とを両立させることができる。さらに、目標速度を低く変更すると本来の制御目標から大きく剥離する可能性があるが、誤差範囲を学習し目標速度の設定に反映することにより制御目標から大きく剥離することを回避できる。S78の処理において、目標車速Vmを変更して速度パターンを生成すると、全区間完了判定処理へ移行する(S80)。
S80の処理は、目標速度パターン再生成部11が実行し、全区間において目標車速Vmの変更処理が終了したか判定する処理である。S80の処理において、全区間の目標車速Vmの変更処理が終了していないと判定した場合には、目標車速を変更する処理へ再度移行する(S78)。一方、S80の処理において、全区間の目標車速Vmの変更処理が終了したと判定した場合には、図8に示す制御処理を終了する。
以上で図8に示す制御処理を終了する。図8に示す制御処理を実行することで、速度パターン全体について目標速度の調整を行うため、速度パターン全体において最適な低燃費が実現できるフィードバック制御が可能となる。
上述したように、第3実施形態に係る走行制御装置によれば、速度パターン全体を考慮してフィードバック制御が可能となるので、速度パターン全体を実行する際にも低燃費化を実現することができる。
なお、上述した各実施形態は本発明に係る走行制御装置の一例を示すものである。本発明に係る走行制御装置は、各実施形態に係る走行制御装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る走行制御装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記各実施形態において、自動運転機能を備えた車両5について説明したが、運転支援システム機能を備えた車両5であってもよい。この場合、例えば、車両制御を支援するディスプレイ等を備えて構成とするとよい。
また、第2、3実施形態において、エンジン42の動作状態情報、車速と目標速度との差を示す速度超過不足情報、エンジン42の熱効率及びモータ43の変換効率に基づいてフィードバック制御を行う例を説明したが、これらの何れか一つのパラメータあるいはこれらのパラメータを組み合わせてフィードバック制御を行う場合でもよい。
また、第2、3実施形態において、目標速度パターン生成部10が生成した速度パターンをフィードバック制御する例を説明したが、目標速度パターン再生成部11が再生成した速度パターンをフィードバック制御する場合でもよい。
1…走行制御部(走行制御装置)、2…ECU、5…車両、10…目標速度パターン生成部(速度パターン生成手段)、11…目標速度パターン再生成部(加速度パターン生成手段、速度パターン再生成手段)、12…車両運動制御部(車両運動制御手段)、42…エンジン、43…モータ、44…バッテリ。