以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、本実施形態に係る走行車両を備える車両の一例を示す概略図である。図1において、走行車両(以下単に車両という。)100は、図1の矢印X方向に前進するものとする。車両100が前進する方向は、車両100の運転者が座る運転席からステアリングホイール7へ向かう方向である。左右の区別は、車両100の前進する方向(図1の矢印X方向)を基準とする。すなわち、「左」とは、車両100の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両100の前進する方向に向かって右側をいう。また、車両100の前後は、車両100が前進する方向を前とし、車両100が後進する方向、すなわち車両100が前進する方向とは反対の方向を後とする。また、「下」とは、重力の作用方向側をいい、「上」とは、重力の作用方向とは反対側をいう。
まず、車両100の全体構成を説明する。車両100は、車体102と、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRの4個の車輪(タイヤホイール組立体)と、4個の車輪に対応して配置されたインホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRと、サスペンション機構4FL、4FR、4RL、4RRと、キャンバー角調整機構5FL、5FR、5RL、5RRと、制動装置6FL、6FR、6RL、6RRと、を有する。また、車両100は、ステアリングホイール7と、ステアリングギアボックス8と、アクセルペダル9Aと、ブレーキペダル9Bと、制御ユニット10と、を有する。また、車両100は、各種センサとして、圧力センサ30、30FL、30FR、30RL、30RR、車輪回転速度センサ31FL、31FR、31RL、31RRと、車速センサ32と、加速度センサ33と、操舵角センサ36と、を有する。車両100は、上記構成に加え、各部に電力を供給するバッテリや、通常車両が備える各種機構を備えている。車体102は、車両100を構成する各部を支持している。
車両100は、インホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRを動力発生手段としている。本実施形態において、車両100は、インホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRが対応する左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRを回転させることで、車両を走行させる。
車両100は、左側前輪2FLに対応してインホイールモータユニット3FLと、サスペンション機構4FLと、キャンバー角調整機構5FLと、制動装置6FLと、が配置されている。車両100は、右側前輪2FRに対応してサスペンション機構4FRと、キャンバー角調整機構5FRと、制動装置6FRと、が配置されている。車両100は、左側後輪2RLに対応して、サスペンション機構4RLと、キャンバー角調整機構5RLと、制動装置6RLと、が配置されている。車両100は、右側後輪2RRに対応して、サスペンション機構4RRと、キャンバー角調整機構5RRと、制動装置6RRと、が配置されている。
インホイールモータユニット3FLは、左側前輪2FLに連結され、左側前輪2FLを回転させる。サスペンション機構4FLは、一部が車体102に固定されており、インホイールモータユニット3FLを車体102に対して上下方向に移動可能な状態で支持している。キャンバー角調整機構5FLは、サスペンション機構4FLの一部を移動させることで、車体102に対する左側前輪2FLのキャンバー角を調整する機構である。右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRに対応する各部の構成も同様である。左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRと、インホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRと、サスペンション機構4FL、4FR、4RL、4RRと、キャンバー角調整機構5FL、5FR、5RL、5RRと、制動装置6FL、6FR、6RL、6RRと、の具体的な構成については後述する。
車両100の左側前輪2FL及び右側前輪2FRは、車両100の駆動輪であるとともに、操舵輪としても機能する。また、左側後輪2RL及び右側後輪2RRは車両100の駆動輪である。このように車両100は、4WD(4 Wheel Drive:4輪駆動)形式であり、前輪操舵である。なお、車両100の駆動、操舵の関係はこれに限定されない。車両100は、前輪のみにインホイールモータユニットを配置した前輪駆動としてもよいし、後輪のみにインホイールモータユニットを配置した後輪駆動としてもよい。また、車両100は、操舵輪を後輪としてもよいし、四輪としてもよい。また、車両100は、各駆動輪の駆動力を変更することにより、車両100の旋回性能を制御したり、車両100の走行安定性を向上させたりできる駆動システムを備えていてもよい。
車両100は、運転者によるステアリングホイール7の操作を、ステアリングギアボックス8を介して左側前輪2FL及び右側前輪2FRに伝達される。このようにして、左側前輪2FL及び右側前輪2FRが操舵される。左側前輪2FL及び右側前輪2FR及び左側後輪2RL及び右側後輪2RRには、それぞれ制動装置6FL、6FR、6RL、6RRが設けられる。それぞれの制動装置6FL、6FR、6RL、6RRは、ブレーキ配管によってブレーキアクチュエータ6Aと接続されている。ブレーキアクチュエータ6Aは、車両100の運転者がブレーキペダル9Bを踏み込むことにより発生する入力を、ブレーキ配管内のブレーキ油を介してそれぞれの制動装置6FL、6FR、6RL、6RRへ伝達する。そして、制動装置6FL、6FR、6RL、6RRは、伝達された入力によって左側前輪2FL及び右側前輪2FR及び左側後輪2RL及び右側後輪2RRに制動力を発生させる。
車両100は、走行条件を取得するための各種センサ類として、上述したように、圧力センサ30FL、30FR、30RL、30RR、車輪回転速度センサ31FL、31FR、31RL、31RR、車速センサ32、加速度センサ33、ブレーキセンサ34、アクセル開度センサ35及び操舵角センサ36を有する。圧力センサ30FL、30FR、30RL、30RRは、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRそれぞれが有する空気入りタイヤの空気圧を検出する。車輪回転速度センサ31FL、31FR、31RL、31RRは、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL、右側後輪2RRの回転速度を検出する。車速センサ32は、車両100が走行する速度(車速)を検出する。加速度センサ33は、車両100の加速度(前後方向の加速度、横方向、すなわち前後方向と直交する方向の加速度)を検出する。加速度センサ33により、車両100が加速状態であるか減速状態であるか、車両が旋回中であるか否か等が検出される。ブレーキセンサ34は、ブレーキペダル9Bへの操作量を検出する。アクセル開度センサ35は、アクセルペダル9Aへの操作量を検出する。操舵角センサ36は、ステアリングホイール7への操作量から、操舵輪、すなわち左側前輪2FL及び右側前輪2FRの操舵角を検出する。
次に、制御ユニット10は、車両100の各部を制御する演算処理部であり、キャンバー角制御装置20と、ステア角制御装置24と、モータ制御装置25と、ブレーキ制御装置26と、を有する。制御ユニット10は、車両100の走行条件を取得するための各種センサ類及び制御する対象の各機構に接続される。
キャンバー角制御装置20は、車両100の速度、加速度、ステア角、操舵角、その他の車両100の走行条件に基づいて、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRのキャンバー角を変更する。キャンバー角制御装置20は、例えば、処理部21と、記憶部22と、入出力部23とを有する。
処理部21は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部22は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を組み合わせたものである。処理部21は、記憶部22に記憶されている、本実施形態に係る走行制御を実現するためのコンピュータプログラム及びデータに従って、本実施形態に係る走行制御を実行する。記憶部22は、本実施形態に係る走行制御を実現するためのコンピュータプログラム及びデータ等を記憶する。入出力部23は、車両100の走行条件を取得するための各種センサ類及びキャンバー角調整装置5FL、5FR、5RL、5RRと接続される。前記走行条件は、入出力部23を介して処理部21及び記憶部22が取得する。処理部21は、入出力部23を介して制御信号をキャンバー角調整装置5FL、5FR、5RL、5RRへ送信する。キャンバー角調整装置5FL、5FR、5RL、5RRは、キャンバー角制御装置20から出力された制御信号に基づいて対応する車輪のキャンバー角を変更する。
ステア角制御装置24は、操舵角センサ36で検出した操舵角、キャンバー角、車両100の速度、加速度、その他車両100の走行条件に基づいて、左側前輪2FL及び右側前輪2FR、つまり操舵輪のステア角を変更する。ステア角制御装置24は、キャンバー角制御装置20と同様に処理部と、記憶部と、入出力部とを有する。ステア角制御装置24は、各種条件に基づいてステア角を算出し、算出したステア角に基づいてステアリングギアボックス8を制御し、左側前輪2FL及び右側前輪2FRのステア角を変更する。
モータ制御装置25は、アクセル開度センサ35で検出したアクセル開度、車両100の速度、加速度、各車両のキャンバー角、その他車両100の走行条件に基づいて、インホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRを制御する。モータ制御装置25は、キャンバー角制御装置20と同様に処理部と、記憶部と、入出力部とを有する。モータ制御装置25は、各種条件に基づいて、インホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRの回転数、トルク等の駆動条件を算出し、算出した駆動条件に基づいてインホイールモータユニット3FL、3FR、3RL、3RRを制御し、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRの4輪の駆動条件を変更する。これにより、車両100は、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRの回転を制御することができ、加速、減速が可能となる。
ブレーキ制御装置26は、ブレーキセンサ34で検出したブレーキ操作量、車両100の速度、加速度、各車両のキャンバー角、その他車両100の走行条件に基づいて、ブレーキアクチュエータ6Aを制御する。ブレーキ制御装置26は、キャンバー角制御装置20と同様に処理部と、記憶部と、入出力部とを有する。ブレーキ制御装置26は、各種条件に基づいて、ブレーキアクチュエータ6Aの制動装置6FL、6FR、6RL、6RRに供給する油圧の条件を算出し、算出した駆動条件に基づいてブレーキアクチュエータ6Aを制御し、制動装置6FL、6FR、6RL、6RRから左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRの4輪に付与する制動力を変更する。これにより、車両100は、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRに付与する制動力を制御することができ、減速が可能となる。
次に、図2から図4を用いて、車輪、インホイールモータユニット、サスペンション機構及びキャンバー角調整機構について説明する。なお、左側前輪2FL、右側前輪2FR、左側後輪2RL及び右側後輪2RRは、操舵輪であるか否かの違いはあるが、基本的に同様の構成である。以下、車輪の位置に関係がない構成については、各部を車輪2、インホイールモータユニット60、サスペンション機構4、キャンバー角調整機構5及び制動装置6として説明する。図2は、本実施形態に係る走行車両が備える車輪及びインホイールモータユニットを示す説明図である。図3は、本実施形態に係る走行車両が備えるキャンバー角調整機構を示す説明図である。
車両100は、図2及び図3に示す車輪2、インホイールモータユニット60、サスペンション機構4、キャンバー角調整機構5及び制動装置6を1つのユニットとして、車体102の4箇所に配置されている。また、本件では、車両走行時にて、車両のインホイールモータユニット60のローター60R、ホイール2Fおよび空気入りタイヤ2Tと共に回転する系を回転系と呼び、車両のインホイールモータユニット60のステーター60Sおよび車体側の系を静止系と呼ぶ。
車輪2は、ホイール2Fと空気入りタイヤ2Tとを有するタイヤホイール組立体である。車輪2は、空気入りタイヤ2Tとホイール2Fとの間で閉じられた空間が気室となり、所定の空気圧の空気が充填されている。ホイール2Fは、空気入りタイヤ2Tと対面する面がリムとなる。ホイール2Fには、圧力センサ30が配置されている。
インホイールモータユニット60は、ホイール2Fと空気入りタイヤ2Tを回転する駆動源である。インホイールモータユニット60は、空気入りタイヤ2Tのハブユニットとしての機能も備える。
インホイールモータユニット60は、ローター60Rがステーター60Sの外側に配置される、アウターローター型の電動機である。インホイールモータユニット60は、サスペンション機構4に取り付けられる、いわゆるインホイールモータ方式で用いられる。ローター60Rは、環状の構造体であるローターケース61と、ローターケース61の内周部に取り付けられる永久磁石62とを含む。永久磁石62は、S極とN極とがローターケース61の周方向に向かって交互に配置される。ローターケース61の中心部にはシャフト65が取り付けられている。
ステーター60Sは、ローター60Rが有する永久磁石62の内側に配置される。ステーター60Sは、複数のコイル63がステーター本体64の外周部に設けられている。ステーター本体64は、中心部に軸受66を有する。上述したシャフト65は、軸受66を介してステーター本体64に支持される。このような構造により、ローター60Rは、回転軸を中心として、ステーター本体64の周りを回転できるようになっている。本実施形態においては、ローター60Rのシャフト65に、ホイール2Fが取り付けられる。
ここで、制動装置6は、回転子と固定子とを有する。制動装置6の回転子(ブレーキロータ)は、シャフト65のホイール2Fと連結されている側とは反対側に連結されている。制動装置6の固定子(ブレーキキャリパ)は、静止系(例えば、ステーター60S)に固定されている。制動装置6は、回転子と固定子とを接触させることで、ローター60Rの回転を抑制させる方向の力を付与し、制動力を発生させる。また、ブレーキアクチュエータ6Aは、制動装置6の回転子と固定子とを接触させる際の力を制御することで、制動力の大きさを制御することができる。
サスペンション機構4は、静止系であり、インホイールモータユニット60のステーター60Sと車体102とに連結されている。本実施形態のサスペンション機構4は、いわゆるダブルウィッシュボーン式サスペンションであり、図3に示すようにロアアーム70と、アッパーアーム72と、連結シャフト76と、を有する。また、サスペンション機構4は、ロアアーム70と車体102とに接続されたショックアブソーバも有する。
ロアアーム70は、一方の端部がジョイント74でステーター60Sのステーター本体64の鉛直方向下側の部分と連結され、他方の端部がジョイント78で連結シャフト76に連結されている。ジョイント74は、ロアアーム70とステーター本体64とを図3の紙面前後方向、つまり車両100の前後方向を軸として回転可能な状態で連結している。ジョイント78は、ロアアーム70と連結シャフト76とを図3の紙面前後方向、つまり車両100の前後方向を軸として回転可能な状態で連結している。ロアアーム70は、鉛直方向上側の面にショックアブソーバが連結されている。ショックアブソーバは、鉛直方向上側の端部が車体102に連結されている。ショックアブソーバは、車輪2と車体102との間で伝達する鉛直方向の力を減衰させる。
アッパーアーム72は、一方の端部がジョイント75でステーター60Sのステーター本体64の鉛直方向上側の部分と連結され、他方の端部がジョイント77で連結シャフト76に連結されている。アッパーアーム72は、ロアアーム70と対面して、ロアアーム70よりも鉛直方向上側に配置されている。ジョイント75は、アッパーアーム72とステーター本体64とを図3の紙面前後方向、つまり車両100の前後方向を軸として回転可能な状態で連結している。ジョイント77は、アッパーアーム72と連結シャフト76とを図3の紙面前後方向、つまり車両100の前後方向を軸として回転可能な状態で連結している。
連結シャフト76は、ジョイント78を介してロアアーム70と連結され、ジョイント77を介してアッパーアーム72と連結されている。連結シャフト76は、ジョイント77とジョイント78とを距離が一定の位置に支持している。連結シャフト76は、固定端79が車体102に図3の紙面前後方向、つまり車両100の前後方向を軸として回転可能な状態で連結されている。つまり、連結シャフト76は、固定端79を支点として、矢印方向に回動可能な状態で支持されている。
キャンバー角調整機構5は、車体102の所定位置に固定されている固定部80と、固定部80に対して移動可能な稼動部82と、を有する。稼動部82は、連結シャフト76に連結されている。キャンバー角調整機構5は、稼動部82を移動させることで、連結シャフト76を矢印方向に移動させることができる。また、キャンバー角調整機構5は、連結シャフト76を矢印方向に移動させることで、連結シャフト76に連結しているロアアーム70とアッパーアーム72とを移動させ、ロアアーム70とアッパーアーム72とに連結されているインホイールモータユニット60及び車輪を矢印方向に回動させることができる。このように、キャンバー角調整機構5は、インホイールモータユニット60及び車輪を矢印方向に回動させることで、車体102に対するインホイールモータユニット60及び車輪の角度であるキャンバー角θを変更することができる。ここで、本実施形態では、車体102の上下方向に平行な位置におけるキャンバー角θが0となり、図3に示すように、車輪の上側が車体102の中心側に傾斜する向きがネガティブ方向、反対側(車輪の上側が車体102の中心から離れる方向)に傾斜する向きがポジティブ方向となる。
車両100は、以上のような構成である。車両100は、キャンバー角調整機構5により、車輪(タイヤホイール組立体)のキャンバー角を調整することで、車両の旋回性能を向上させることができる。また車両100は、車輪の駆動源にインホイールモータユニット60を用いることで、キャンバー角を調整するキャンバー角調整機構5の機構を簡単にすることができる。具体的には、車両100は、駆動源となるインホイールモータを車輪に装着し、インホイールモータと一体でキャンバー角を調整することができるため、駆動源から動力を伝達する駆動軸(ドライブシャフト)の継ぎ手を設ける必要がなくなる。これにより、キャンバー角を調整するキャンバー角調整機構5の機構を簡単にすることができる。また、車両100は、インホイールモータユニット60を駆動源とすることで、車体102内のエンジン等を設けるスペースが必要なくなる。また、電源となるキャパシタ等のバッテリは、エンジン等の駆動源に比べると配置の自由度が高いため、配置位置を種々の位置とできる。これにより、車両100は、キャンバー角調整機構5やサスペンション機構4の配置空間を大きくすることができる。このため、車両100は、キャンバー角を調整しやすくすることができる。
ここで、キャンバー角調整機構5は、キャンバー角の調整範囲を基準方向を基準としてポジティブ方向に5°以上、かつ、ネガティブ方向に5°以上とすることが好ましい。つまり、キャンバー角調整機構5は、キャンバー角を基準方向に対してプラス方向、マイナス方向のそれぞれに5°以上(つまり全体で10°以上)変更できる機構とすることが好ましい。さらに、キャンバー角調整機構5は、キャンバー角の調整範囲を基準方向を基準としてポジティブ方向に10°以上、かつ、ネガティブ方向に10°以上とすることが好ましい。つまり、キャンバー角調整機構5は、キャンバー角を基準方向に対してプラス方向、マイナス方向のそれぞれに10°以上(つまり全体で20°以上)変更できる機構とすることがさらに好ましい。キャンバー角調整機構5は、キャンバー角の調整範囲を基準方向に対して5°以上、好ましくは10°以上とすることで、コーナリング性能をより向上させることができる。
図4は、コーナリングパワーとスリップ角とキャンバー角との関係を説明するための説明図である。図4は、横軸をInclination angle(キャンバー角に対応する角度)[deg]とし、縦軸をCornering force(コーナリング力)[N]とする。図4では、Slip angle(ステア角に対応する角度)[deg]を0°、−5°、−10°とした場合について、Inclination angleとCornering forceとの関係を計測した。図4に示すように、キャンバー角を変化させることで生じるコーナリング力の変化は、ステア角を変化させることで生じるコーナリング力の変化よりも小さい。具体的には、キャンバースティフネスは、100N/deg程度で、かつスリップ角が付与された状態で、数10N/deg程度で徐々に減少する。これに対して、コーナリングスティフネスは、1000N/deg以上となる。以上より、キャンバー角調整機構5は、キャンバー角の調整範囲を基準方向に対して5°以上、つまり10°の幅で調整可能とすること、好ましくは、基準方向に対して10°以上、つまり20°の幅で調整可能とすることにより、コーナリング力を一定の幅で調整すること(例えば、図4の太線120で囲われた範囲)が可能となり、コーナリング性能を向上させることができる。
本実施形態の車両100は、キャンバー角調整機構5を個別に制御することで、4つの車輪のキャンバー角を別々に調整することができる。なお、車両100は、4つの車輪のキャンバー角を連動させるようにキャンバー角調整機構5を個別に制御することもできる。
キャンバー角制御装置20は、前記キャンバー角調整機構5で旋回外輪(旋回方向外側となる車輪)のキャンバー角を可変とすることが好ましい。車両100は、旋回外輪のキャンバー角を調整することで、コーナリング性能を向上させ、かつ、旋回外輪での異常摩耗の発生を抑制することができる。
キャンバー角制御装置20は、前記キャンバー角調整機構5で旋回外輪(旋回方向外側となる車輪)のみのキャンバー角を可変とすることが好ましい。車両100は、旋回外輪のみキャンバー角を調整することでも、コーナリング性能を向上させ、かつ、旋回外輪での異常摩耗の発生を抑制することができる。
キャンバー角制御装置20は、旋回外輪側となる車輪のキャンバー角を、旋回内輪側となる車輪のキャンバー角よりも大きい角度とすることも好ましい。車両100は、旋回外輪を旋回内輪よりも大きいキャンバー角とすることでも、コーナリング性能を向上させ、かつ、旋回外輪での異常摩耗の発生を抑制することができる。
次に、図5を用いて、キャンバー角調整機構の他の例を説明する。図5は、キャンバー角調整機構の他の例を示す説明図である。なお、図5に示す車両150のキャンバー角調整機構160の以外の構成は、車両100と同様である。以下、車両150に特有の点を説明する。キャンバー角調整機構160は、右側後輪2RR及びサスペンション機構4RRと、左側後輪2RL及びサスペンション機構4RLとに対応して設けられ、右側後輪2RRと左側後輪2RLのキャンバー角を連動して調整する機構である。キャンバー角調整機構160は、駆動部161とリンク機構162とを有する。駆動部161は、キャンバー角制御装置20の制御に基づいて、リンク機構162を矢印方向に移動させる機構である。リンク機構162は、一方の端部がサスペンション機構4RRと連結し、他方の端部がサスペンション機構4RLと連結している。つまり、リンク機構162は、左右の車輪の支持するサスペンション機構と連結している。
キャンバー角調整機構160は、駆動部161でリンク機構162を例えば図5中左側に移動させるとリンク機構162aの位置となる。キャンバー角調整機構160は、駆動部161でリンク機構162aの位置まで移動させると、リンク機構162aに連結している右後輪2RR及びサスペンション機構4RRと、左後輪2RL及びサスペンション機構4RLと、が同じ方向(右側)に移動し、右後輪2RRのキャンバー角がポジティブ方向に回動し、左後輪2RLのキャンバー角がネガティブ方向に回動する。車両150は、右後輪2RRのキャンバー角をポジティブ方向に回動させ、左後輪2RLのキャンバー角をネガティブ方向に回動させることで、同じ方向のコーナリング力Fyを発生させる。
車両150は、キャンバー角調整機構160としてリンク機構162を設け、左右の車輪のキャンバー角を同位相(つまり同じ動き)で変動させることで、コーナリング力をより向上させることができる。またキャンバー角調整機構の駆動部の数を減らすことができる。また、本実施形態のように駆動源にインホイールモータユニットを用いることで、リンク機構162を車体の内部に設ける空間を確保しやすくすることができる。なお、車両150は、リンク機構162で同位相つまり同じ動きで移動させることが好ましいが、その振幅、つまりキャンバー角の調整範囲は、異なる範囲としてもよい。例えば、一方の車輪のキャンバー角の調整範囲を、他方の車輪のキャンバー角の2倍としてもよい。
次に、図6を用いて、キャンバー角調整機構の他の例を説明する。図6は、キャンバー角調整機構の他の例を示す説明図である。なお、図6に示す車両150aのキャンバー角調整機構以外の構成は、車両100と同様である。以下、車両150aに特有の点を説明する。車両150aは、キャンバー角を調整する機構として、キャンバー角調整機構5FL、5RL、5FR、5RRと、4つの駆動部166と、2つのリンク機構168と、を有する。車両150aは、キャンバー角調整機構5FLと、キャンバー角調整機構5RLとに対応して、2つの駆動部166と、1つのリンク機構168が配置され、キャンバー角調整機構5FRと、キャンバー角調整機構5RRとに対応して2つの駆動部166と、1つのリンク機構168が配置されている。キャンバー角調整機構5FLと、キャンバー角調整機構5RLとは、リンク機構168で連結されている。リンク機構168は、2つの駆動部166で対応する車輪のキャンバー角を調整する方向に移動される。リンク機構168は、2つの駆動部166で移動されることで、リンク機構168が回転することを抑制しつつ移動させることができる。キャンバー角調整機構5FRと、キャンバー角調整機構5RRも、同様にリンク機構168で連結されている。リンク機構168は、2つの駆動部166で対応する車輪のキャンバー角を調整する方向に移動される。リンク機構168は、2つの駆動部166で移動されることで、リンク機構168が回転することを抑制しつつ移動させることができる。
車両150aは、以上のように、キャンバー角調整機構として、前後の車輪(本実施形態では、前後の車輪のサスペンション機構)に連結して、当該前後の車輪のキャンバー角を連動して変動させるリンク機構を有し、前後の車輪のキャンバー角を同位相で変動させる。このように、前後の車輪のキャンバー角を連動して変動させることで、前輪のみ、後輪のみのキャンバー角を変動させた場合よりもコーナリング性能をさらに向上させることができる。なお、上記実施形態では、機械的な構成のリンク機構を設けたが、制御によりキャンバー角を同位相で移動させることもできる。
図7及び図8は、それぞれ空気入りタイヤの一例の子午断面を示す説明図である。以下、図7及び図8を用いて、空気入りタイヤの好適な例を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤのタイヤ断面幅SWの中心を通る平面である。タイヤ断面幅SWとは、空気入りタイヤの総幅から、タイヤ幅方向の外側の表面に形成された模様の高さを差し引いた幅である。タイヤ断面高さSHとは、空気入りタイヤの外径からリム径を引いた差分の1/2の高さである。
空気入りタイヤ170、180は、タイヤ幅方向におけるトレッド部172、182の最大の曲率半径Ra、Rbが、タイヤ呼び幅の1.0倍以上2.5倍以下であることが好ましい。ここで、トレッド部172、182の最大の曲率半径Ra、Rbは、正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した状態の値である。ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。また、タイヤ呼び幅とは、タイヤ断面幅SWである。
空気入りタイヤ170、180は、タイヤ幅方向におけるトレッド部172、182の最大の曲率半径Ra、Rbを、タイヤ呼び幅の1.0倍以上2.5倍以下とすることで、インホイールモータユニットの動力を好適に伝達することができ走行性能を向上させることができる。また、空気入りタイヤ170は、空気入りタイヤ180よりもタイヤ呼び幅に対する曲率半径が小さい例である。空気入りタイヤ170、180は、タイヤ幅方向におけるトレッド部172、182の最大の曲率半径Ra、Rbを、タイヤ呼び幅の1.1倍以上2.3倍以下とするとより好ましく、1.2倍以上2.1倍以下とすることがさらに好ましく、1.3倍以上2.0倍以下とすることがさらに好ましい。空気入りタイヤは、タイヤ幅方向におけるトレッド部の最大の曲率半径とタイヤ呼び幅との関係が上記範囲を満足することで、走行性能をより向上させることができる。
空気入りタイヤは、空気圧を300kPaとし、6kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅が、空気圧を300kPaとし、3kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅の110%以上となることが好ましい。ここで、フットプリントの最大接地幅は、正規リムにリム組みし、空気圧を上述したように300kPaとし、さらに荷重を上記荷重とした状態の値である。ここで、空気入りタイヤは、空気圧を300kPaとし、6kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅が、空気圧を300kPaとし、3kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅を113%以上とすることがより好ましく、116%以上とすることがさらに好ましく、120%以上とすることがさらに好ましい。空気入りタイヤは、空気圧を300kPaとし、6kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅と、空気圧を300kPaとし、3kN荷重とした状態のフットプリントの最大接地幅との関係を上記関係とすることで、接地形状の荷重に対する依存性を高くすることができる。これにより、直進時は小さい接地形状で転がり抵抗係数RRCを低くすることができる。また、旋回時及び制動時は、荷重が増え、接地形状が大きくなるため、旋回性能、制動性能を向上させることができる。これにより、空気入りタイヤは、直進時の転がり抵抗係数の低減と、旋回時及び制動時の旋回性能、制動性能の向上を両立させることができる。
また、空気入りタイヤは、偏平率を50%以下とすることが好ましく、45%以下とすることがより好ましい。ここで、偏平率は、タイヤ断面高さSHをタイヤ断面幅SWで割った値に100をかけた値、つまり(SH/SW)×100[%]である。なお、偏平率は、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した状態のタイヤ断面高さSHとタイヤ断面幅SWに基づいて算出される値である。車両は、空気入りタイヤの偏平率を50%以下、好ましくは45%以下とすることで、キャンバー角を制御し、変動させた場合の、旋回性能の向上の効果と、転がり抵抗係数RRCの低減の効果とをより大きくすることができる。
また、車両は、車両重量が2000kg以下であることが好ましい。空気入りタイヤは、標準空気圧が300kPa以上であることが好ましい。車両は、車両重量と空気圧が上記関係とすることで、上記効果をより好適に得ることができる。なお、車両重量は、1800kg以下とすることが好ましく、1700kg以下とすることがさらに好ましい。
図9は、サスペンション機構の他の例を示す説明図である。以下、図9を用いて、サスペンション機構の他の例について説明する。上記実施形態は、サスペンション機構をダブルウィッシュボーン式のサスペンションとした場合として説明したが、これに限定されない。サスペンション機構としては、種々の機構を用いることができる。図9に示す車両200は、車輪2と、サスペンション機構210と、キャンバー角調整機構212と、を有する。なお、上記構成以外にも上述の車両100と同様の各種機構を備えている。
サスペンション機構210は、ストラット式サスペンションであり、連結部222と、ショックアブソーバ224と、ロアアーム226と、を有する。連結部222は、インホイールモータユニットのステーターと連結している部材である。ショックアブソーバ224は、鉛直方向上側の端部が車体と連結し、鉛直方向下側の端部が連結部222と連結している。ロアアーム226は、一方の端部がジョイント227を介して連結部222と連結し、他方の端部がジョイント228を介してキャンバー角調整機構212と連結している。
キャンバー角調整機構212は、一部が車体に固定されており、ジョイント228を移動させることで、ロアアーム226を移動させ連結部222を移動させる。ここで、ショックアブソーバ224は、鉛直方向上側の端部が車体と連結しているため、ロアアーム226よりも移動量が小さくなる。これにより、キャンバー角調整機構212は、車輪2のキャンバー角を変動させることができる。例えば、キャンバー角調整機構212は、ジョイント228をジョイント228aまで移動させると、車輪2が車輪2aまで回動する。このように、車両200は、サスペンション機構210を、ストラット式サスペンションとした場合も上記実施形態と同様にキャンバー角を調整することができ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
ここで、車両は、車輪の空気入りタイヤの空気圧を調整する空気圧調整機構を備えていてもよい。以下、図10を用いて、説明する。ここで、図10は、他の例の走行車両が備える空気圧調整機構と空気圧制御装置の概略構成を示す説明図である。図10は、空気圧調整装置301と空気圧制御装置350とを有する走行車両300を示している。
空気圧調整装置301は、図10に示すように、空気入りタイヤ310の気室310aの空気圧を調整する装置であり、加減圧部320と、圧力センサ30と、ホイール340と、継ぎ手313と、を備える。ここでは、空気圧調整装置301が車両300に装着された空気入りタイヤ310の空気圧を調整する場合について、説明する。ホイール340は、車両のホイールである。つまり、ホイール340は、車両300の一部であり、かつ、空気圧調整装置301の一部となる。ホイール340には、インホイールモータユニット60が連結されている。なお、インホイールモータユニット60のシャフト65の一部も、空気圧調整装置301の一部となる。
空気圧調整装置301を備える車両は、空気入りタイヤ310がホイール340に装着されている。またホイール340は、インホイールモータユニット60によって支持されている。インホイールモータユニット60の基本的な構成は、上述したインホイールモータユニット60と同様である。ここで、本実施形態のインホイールモータユニット60には、継ぎ手313が連結されている。継ぎ手313は、インホイールモータユニット60と同じ回転軸上に配置されている。継ぎ手313は、インホイールモータユニット60のホイール340と接触している面とは反対側の面と接触している。また継ぎ手313は、ロータリージョイント、ロータリーシール等の軸継ぎ手であり、インホイールモータユニット60が回転している場合でも、インホイールモータユニット60に形成される後述する空気通路311aと連結した状態を維持できる空気通路が形成されている。支持機構は、静止系となる。支持機構は、サスペンション等であり、空気入りタイヤ310及びインホイールモータユニット60等と車体との間で走行時等に伝達される振動を低減する。
ここで、インホイールモータユニット60のシャフト65は、回転軸を含む領域に配置されており、継ぎ手313と連結されている。シャフト65は、回転軸を含む領域に空気通路311aが形成されている。空気通路311aは、シャフト65の内部に形成された空間である。空気通路311aは、回転軸を中心として同心円上の形状である。空気通路311aは、ホイール340側のとは反対側の面が継ぎ手313によって塞がれている。また、空気通路311aは、継ぎ手313に形成された空気通路を介して、空気配管324と接続されている。また、シャフト65は、空気通路311aと空気通路344とを連結する空気通路311bが形成されている。空気通路311bは、一方の端部が空気通路311aと接続し、他方の端部が空気通路344と接続する配管である。本実施形態の空気通路311bは、空気通路344の本数に対応する本数を設けてもよい。シャフト65に形成された空気通路311a、311bは、空気通路344と空気配管324とを連結している。
加減圧部320は、空気入りタイヤ310に充填される空気を加圧および減圧する装置である。この加減圧部320は、加圧ポンプ321と、弁装置322と、エアタンク323と、空気配管324と、を有する。加減圧部320は、静止系に設置されている。
加圧ポンプ321は、外気を導入して圧縮空気を生成するポンプであり、空気配管324に接続されている。弁装置322は、空気配管324に設置されている。弁装置322は、空気配管324を開閉する弁である。エアタンク323は、空気配管324の加圧ポンプ321と弁装置322との間に配置されている。エアタンク323は、圧縮空気を蓄えるタンクである。エアタンク323は、加圧ポンプ321から空気が供給されることで貯留している空気の量が増加され、内部の圧力が上昇される。エアタンク323は、弁装置322が開放されると、空気配管324から空気通路311aに空気を供給したり、空気通路311aの内部の空気を回収したりする。空気配管324は、継ぎ手313の空気通路とインホイールモータユニット60の空気通路311aとホイール340の空気通路344を介して空気入りタイヤ310の気室310aと接続されている。ホイール340の空気通路344については後述する。
加減圧部320は、空気配管324の一部を車両の回転系に設置し、加圧ポンプ321と、弁装置322と、空気配管324の一部と、を静止系に設置してもよい。なお、この場合、継ぎ手313は、インホイールモータユニット60のシャフト65に従動して回転する。なお、継ぎ手313は、シャフト65に対して減速した角速度で回転するようにしてもよい。空気配管324の回転系の部分と静止系の部分との境界は、上述した継ぎ手313とインホイールモータユニット60のようにロータリージョイントを介してしてもよいし、エアーユニバーサルジョイントを介して接続してもよい。これにより、空気配管324は、回転系の回転時もつながった状態を維持することができる。
なお、加減圧部320は、本実施形態に限定されず、全ての機構を回転系に配置してもよいし、弁装置322を回転系に配置してもよい。なお、空気圧調整装置301及び車両は、加減圧部320の空気配管324の一部を回転系に配置する場合、継ぎ手313が回転する機構となる。また、空気圧調整装置301及び車両は、加減圧部320の空気配管324の一部を回転系に配置する場合、継ぎ手313を設けない構成としてもよい。また、空気配管324は、継ぎ手313に形成した空気通路をそれぞれの空気配管の一部としてもよい。ここで、対応する車輪が駆動輪の場合、車両は、継ぎ手313を、ドライブシャフトとし、インホイールモータユニット60と一体で回転させる構成とする場合もある。この場合継ぎ手313は、別の継ぎ手と連結され、当該連結部がロータリージョイント等で接続され、空気配管がつながった状態とされる。
圧力センサ30は、空気入りタイヤ310の気室310aの空気圧を検出するセンサであり、ホイール340に設置されてホイール340と共に回転する。なお、圧力センサ30は、気室310aの空気圧を検出できればよく、配置位置はこれに限定されない。圧力センサ30は、気室310aと繋がっている配管、例えば、空気通路344、311a、311b、空気配管324等に設けてもよい。つまり、空気圧調整装置301は、気室310aの圧力(気室310aの圧力を算出できる圧力)を検出できればよく、圧力センサ30を静止系に配置してもよい。
ホイール340は、空気入りタイヤ310を装着して車両に設置される車両用ホイールであり、車両のインホイールモータユニット60にボルト締結されて固定される。図11及び図12は、それぞれ図10に記載したホイール340を示す説明図である。図13は、図10に記載したホイール340を示す説明図である。図11は、ホイール340のアウター側の平面図であり、図12は、ホイール340のインナー側の平面図である。
ホイール340は、リム部341と、ハブ取付部342と、連結部343とを備える(図11参照)。このホイール340は、例えば、鋳造アルミニウム、鍛造アルミニウム、樹脂、樹脂とアルミとの複合体などから成る。特に、樹脂を用いる場合には、補強短繊維を含有した樹脂から成ることが好ましく、樹脂は熱硬化性樹脂から成ることがより好ましい。
リム部341は、環状構造を有し、左右の縁部にフランジ341aを有する(図13参照)。空気入りタイヤ310は、このフランジ341aに嵌合してホイール340に装着される(図10参照)。また、空気入りタイヤ310のインフレート状態では、リム部341の外周面と空気入りタイヤ310の内周面との間に、気室310aが形成される。
ハブ取付部342は、環状構造を有し、ホイール340の回転軸を構成する(図12参照)。ホイール340は、このハブ取付部342のインナー側の端面を取付面として、車両のインホイールモータユニット60に取り付けられる(図10参照)。また、ハブ取付部342は、複数のボルト孔342aを有し、これらのボルト孔342aに挿入されたボルトを介して車両のインホイールモータユニット60に取り付けられる。
連結部343は、リム部341とハブ取付部342とを連結する部分であり、例えば、複数のスポーク343a(図11及び図12参照)あるいは単一のディスク(図示省略)から構成される。連結部343が複数のスポーク343aから成る場合には、4本以上のスポーク343aが配置されることが好ましい。例えば、図11及び図12の構成では、ホイール340がスポークホイールであり、連結部343が放射状に延びる5本のスポーク343aを有している。
また、このホイール340は、連結部343を貫通してリム部341の外周面とハブ取付部342の取付面とにそれぞれ開口する空気通路344を有する(図12参照)。
この空気通路344は、空気圧調整装置301の加減圧部320と空気入りタイヤ310の気室310aとを接続する空気通路の一部を構成する(図10参照)。空気通路344は、加減圧部320から気室310aへの空気の導入路(空気入りタイヤ310の空気圧の増圧時)となり、かつ、気室310aから外部への空気の排出路(空気入りタイヤ310の空気圧の減圧時)となる。
なお、本実施形態のように、連結部343が複数のスポーク343aから成る構成(図11参照)では、スポーク343aの内部に空気通路344を形成することが好ましい。複数のスポーク343aの内部に空気通路344を設けることで、必要な流路断面積を適正に確保できる。また、空気圧調整装置301は、連結部343がディスクである場合、ディスクの内部に空気通路344を形成すればよい。
図11及び図12に示す構成では、ホイール340の連結部343が5本のスポーク343aから成り、これらのスポーク343aが相互に独立した空気通路344をそれぞれ有している(図12参照)。具体的には、各スポーク343aが中空構造を有することにより、その内部に空気通路344をそれぞれ有している。また、各空気通路344は、リム部341の外周面のうちリム部341のアウター側のフランジ341aの付け根にそれぞれ開口している(図12参照)。このとき、各空気通路344が、その開口の向きをリム部341のアウター側からインナー側に向けつつ開口部の縁部をリム部341の外周面に沿わせて配置されている。これにより、各空気通路344から気室310a内に導入される空気がリム部341の外周面に沿って流れるように、各空気通路344が構成されている。
また、ハブ取付部342の取付面には、各スポーク343aの空気通路344がそれぞれ開口している(図12参照)。また、ハブ取付部342を車両のインホイールモータユニット60にボルト締めするためのボルト孔342aが形成されている。また、空気通路344の開口部の数と、ボルト孔342aの数とが同数となっている。また、これらの空気通路344の開口部とボルト孔342aとが、ハブ取付部342の回転軸周りに交互かつ等間隔で配置されている。
図10に戻り、空気圧調整装置301についての説明を続ける。空気圧制御装置350は、空気入りタイヤ310の目標空気圧にかかる信号(例えば、車両用ECU(Electronic Control Unit)あるいは車両に搭載された専用の空気圧制御装置からの信号)と、圧力センサ30からの信号とに基づいて、加減圧部320の加圧ポンプ321および弁装置322を駆動制御するユニットである。この空気圧制御装置350は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などから成る。また、空気圧制御装置350は、車両の静止系に設置され、加圧ポンプ321、弁装置322および回転系にある圧力センサ30に対してそれぞれ電気的に接続される。これにより、空気圧制御装置350と、加圧ポンプ321、弁装置322および圧力センサ30との間の信号伝達経路が確保され、また、車体にあるバッテリ(図示省略)から加圧ポンプ321、弁装置322および圧力センサ30への電力供給経路が確保される。なお、空気圧制御装置350は、上述した制御ユニットの一部として設けてもよい。
空気圧制御装置350は、加圧ポンプ321、弁装置322と各種配線や接続端子を介して接続される。また、空気圧制御装置350は、回転系にある圧力センサ30と、ターミナル、複数組の静止端子および回転端子等を介してそれぞれ電気的に接続する。具体的には、ターミナルおよび各静止端子が、車両の静止系に設置される。また、各静止端子が、環状の導体から成り、ターミナル上に配列されて支持される。また、圧力センサ30の回転端子が、車両の回転系に設置される。また、各静止端子と各回転端子とが、スリップリング構造を介して相互に摺動可能に接続する。これにより、車両走行時にて、静止系にある空気圧制御装置350と、回転系にある圧力センサ30との電気的接続が確保される。なお、空気圧制御装置350は、加圧ポンプ321、弁装置322を回転系に配置する場合、圧力センサ30と同様に、ターミナル、複数組の静止端子および回転端子等を介してそれぞれ電気的に接続する。
この空気圧調整装置301では、車両走行中にて、車両用ECU(Electronic Control Unit)あるいは車両に搭載された専用の空気圧制御装置(図示省略)が、空気入りタイヤ310の目標空気圧にかかる信号を空気圧制御装置350に入力する。この目標空気圧は、車両の走行条件(例えば、車速、走行路、路面状況など)に応じて適宜設定される。そして、空気圧制御装置350が、この目標空気圧にかかる信号と、圧力センサ30からの信号とに基づいて、加減圧部320の加圧ポンプ321、弁装置322を駆動制御する。これにより、空気入りタイヤ310の空気圧が調整されて、車両の走行性能や燃費が向上する。
空気圧調整装置301は、例えば、空気入りタイヤ310の空気圧を増加させる場合には、空気圧制御装置350が、加圧ポンプ321を駆動する。すると、加圧ポンプ321が圧縮空気を生成し、エアタンク323に圧縮空気が蓄えられる。なお、空気圧調整装置301は、事前に加圧ポンプ321を駆動させ、エアタンク323に圧縮空気が蓄えられた状態としてもよい。空気圧調整装置301は、エアタンク323に圧縮空気を蓄えた状態で空気圧制御装置350により弁装置322を開放する。空気圧調整装置301は、弁装置322を開放すると、エアタンク323の圧縮空気が空気配管324、インホイールモータユニット60の空気通路311aおよびホイール340の空気通路344を介して空気入りタイヤ310の気室310aに供給される。そして、気室310aの実空気圧が目標空気圧になると、空気圧制御装置350が、弁装置322を閉止する。また、空気圧調整装置301は、加圧ポンプ321を停止させる。
空気圧調整装置301は、空気入りタイヤ310の空気圧を減少させる場合、空気圧制御装置350が弁装置322を開放し、また、加圧ポンプ321を停止させる。すると、気室310aの空気がホイール340の空気通路344、インホイールモータユニット60の空気通路311a、エアタンク323及び空気配管324を介して排出される。そして、気室310aの実空気圧が目標空気圧になると、空気圧制御装置350が、弁装置322を閉止する。空気圧調整装置301は、このように加減圧部320で空気入りタイヤ310の気室310aへの空気の供給、空気入りタイヤ310の気室310aの空気の排出を制御することで、空気入りタイヤ310の空気圧の増減を調整することができる。
なお、空気圧調整装置301は、上記した加減圧部320、圧力センサ30、ホイール340、インホイールモータユニット60及び継ぎ手313を一組とする複数組のユニットを有しても良い。例えば、空気圧調整装置301が四輪自動車に適用される場合に、加減圧部320、圧力センサ30、ホイール340、インホイールモータユニット60及び継ぎ手313から成るユニットが各車輪にそれぞれ設置される。また、車体に設置された1つの空気圧制御装置350が、各圧力センサ30からの信号に基づいて、各加減圧部320をそれぞれ駆動制御する。これにより、各車輪に装着された空気入りタイヤ310の空気圧を同時かつ相互に独立して制御できる。なお、空気圧調整装置301は、車両が四輪車の場合、空気圧制御装置350、加圧ポンプ321、エアタンク323を共通の1つとし、その他の機構、弁装置322、空気配管324等をそれぞれのホイール340及び空気入りタイヤ310の組み合わせで設けてもよい。なお、空気配管324の一部、つまり、加圧ポンプ321、エアタンク323と繋がっている部分の配管を共通としてもよい。
空気圧調整装置301は、以上のような構成であり、ホイール340の空気通路344、インホイールモータユニット60の空気通路311a、311b等を介して加減圧部320から空気入りタイヤ310の気室310aに空気を供給したり、気室310aの空気を排出したりすることで、空気入りタイヤ310の空気圧を高い応答性で調整することができる。また、空気圧調整装置301は、空気入りタイヤ310の空気圧の増加に加え、減少も可能とすることで、空気入りタイヤ310の空気圧を走行状態に応じた空気圧とすることができる。
空気圧調整装置301のホイール340は、リム部341とハブ取付部342とを連結部343を介して連結して成る(図11参照)。また、ホイール340は、リム部341に空気入りタイヤ310を装着し、また、ハブ取付部342にて車両のインホイールモータユニット60に取り付けられる(図10参照)。また、ホイール340は、連結部343を貫通してリム部341の外周面とハブ取付部342の取付面とにそれぞれ開口する空気通路344を備える。
かかる構成では、空気入りタイヤ310の空気圧を増加させる場合には、ホイール340の空気通路344が、外部(空気圧調整装置301の加減圧部320)から気室310aへの空気の導入路となり、空気入りタイヤ310の空気圧を減少させる場合には、気室310aから外部への空気の排出路となる(図10参照)。これにより、双方向に流通可能な空気通路344が連結部343の内部に形成されるので、ホイールの外部に空気通路用の配管が配置される構成と比較して、ホイール340の構成を簡素化できる利点がある。
また、このホイール340は、相互に独立した複数の空気通路344を備える(図12参照)。これにより、いずれかの空気通路344が不通となった場合にも、他の空気通路344を介して空気を流通させ得るので、フェールセーフ機能を実現できる利点がある。
空気圧調整装置301は、ホイール340及び空気入りタイヤ310がインホイールモータユニット60に装着された構成であっても、インホイールモータユニット60のシャフト65の内部に空気流路311a、311bを設けることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
空気圧調整装置301は、インホイールモータユニット60を、ローター60Rが外周側に配置されたアウターロータータイプとすることで、回転軸中心側にインホイールモータユニット60の駆動機構(ローターやステーターや減速機構)が配置されない領域を設けることができる。これにより、回転軸中心側に空気流路311a、311bを好適に配置することができる。また、空気圧調整装置301は、アウターロータータイプとすることで、シャフト65の内部に大きな体積の空気流路311aを設けることができ、気室310aへの供給、気室310aから空気の排出を高い応答性で行うことができる。
また、空気圧調整装置301は、ホイール340の連結部343が、スポーク343aを有すると共に、このスポーク343aの内部に空気通路344を有する。これにより、ホイール340の外観を損なうことなく、空気通路344を形成できる利点がある。
また、空気圧調整装置301は、ホイール340の連結部343が、ディスクを有すると共に、ディスクの内部に空気通路344を有する。これにより、ホイール340の外観を損なうことなく、空気通路344を形成できる利点がある。
また、ホイール340では、ハブ取付部342が、複数のボルト孔342aを有すると共にボルト孔342aに挿入されたボルトを介して車両のインホイールモータユニット60に取り付けられる(図10参照)。また、連結部343が、複数の空気通路344を有する。また、ハブ取付部342の取付面にて、ボルト孔342aと空気通路344の開口部とがハブ取付部342の回転軸周りに交互に配置される。かかる構成では、ボルト孔342aと空気通路344の開口部とがハブ取付部342の回転軸周りに交互に配置されるので、ハブ取付部342の剛性が適正に確保され、また、ハブ取付部342のボルト締め作業が容易となる利点がある。
空気圧調整装置301は、空気入りタイヤ310に供給する空気を大気以外の空気としてもよい。この場合、空気入りタイヤ310に供給する空気、つまり空気入りタイヤ310に充填する空気として、熱伝導率の高いヘリウム、ヘリウムと酸素の混合気体であるヘリオックス、ヘリウムと酸素と窒素との混合気体であるトライミックスを用いてもよい。熱伝導率が高い気体を用いることで、冷却機構としての性能を高くすることができる。
図13は、図10に記載したホイール340を示す説明図である。同図は、図12に記載したホイール340の空気通路344におけるリム部341側の開口部のY視断面図(実線部)およびZ視断面図(破線部)を示している。
上記のように、図12の構成では、空気通路344が、リム部341の外周面に複数の開口部を有している。このとき、各空気通路344の開口部が相互に異なる断面形状を有することが好ましい。これにより、空気通路344の設置に起因する気柱共鳴音の周波数が分散されて、騒音レベルが低減される。
例えば、図13の構成では、各空気通路344の開口部が、相互に異なる開口断面積および管長を有し、また、その開口方向を相互に異ならせて配置されている。このとき、ホイール340のアウター側の壁面形状に変更はなく、リム部341の内部形状および連結部343のインナー側の壁面形状を変更することにより、各空気通路344の開口部が相互に異なる断面形状を有している。一方で、各空気通路344の流路断面積の最小値が一定に設定されることにより、各空気通路344の流量が同一に設定されている。
このように、空気通路344が、リム部341の外周面に複数の開口部を有し、これらの開口部が、相互に異なる断面形状を有することにより、空気通路344の設置に起因する気柱共鳴音の周波数が分散されて、騒音レベルが低減される利点がある。
また、空気通路344の流路断面積Sは、100[mm2]≦S≦3000[mm2]の範囲内にあることが好ましい。具体的には、加減圧部320の弁装置322の開弁時における流路断面積、インホイールモータユニット60内に形成された空気通路311aと311bの流路断面積および空気通路344の流路断面積Sが、いずれも100[mm2]以上3000[mm2]以下の範囲内にあることが好ましい。また、これらの流路断面積が120[mm2]以上2500[mm2]以下の範囲内にあることがより好ましく、150[mm2]以上2000[mm2]以下の範囲内にあることがさらに好ましい。これにより、各空気通路の流路断面積が適正化される。すなわち、100[mm2]≦Sとすることにより、空気入りタイヤ310への空気の供給量および排出量が適正に確保されるので、空気入りタイヤ310の空気圧制御を迅速に行い得る利点がある。また、S≦3000[mm2]とすることにより、ホイール340の大型化を防止できる利点がある。
また、上記の構成では、ハブ取付部342の取付面の径方向幅Aが、35[mm]≦A≦100[mm]の範囲内にあることが好ましい(図12参照)。また、径方向幅Aが、37[mm]≦A≦90[mm]の範囲内にあることがより好ましく、40[mm]≦A≦80[mm]の範囲内にあることがさらに好ましい。これにより、ハブ取付部342の取付面の径方向幅Aが適正化される利点がある。
また、ハブ取付部342の取付面におけるボルト孔342aのピッチ円直径Bが、100[mm]≦B≦280[mm]の範囲内にあることが好ましい(図12参照)。また、ピッチ円直径Bが、110[mm]≦B≦260[mm]の範囲内にあることがより好ましく、ピッチ円直径Bが、115[mm]≦B≦240[mm]の範囲内にあることがさらに好ましい。
また、ハブ取付部342の取付面の直径Cが、140[mm]≦C≦300[mm]の範囲内にあることが好ましい(図12参照)。また、直径Cが、145[mm]≦C≦280[mm]の範囲内にあることがより好ましく、直径Cが、150[mm]≦C≦260[mm]の範囲内にあることがさらに好ましい。
これらの寸法A〜Cは、一般に、ハブ取付部342と車両のインホイールモータユニット60との関係で規定される。これらの寸法A〜Cが上記の範囲内にあることにより、ハブ取付部342の取付面における空気通路344の開口部およびボルト孔342aの配置領域が適正に確保される。また、ハブ取付部342と車両のインホイールモータユニット60との関係を適正化できる。
車両300は、空気圧調整装置301と空気圧制御装置350とを設けることで、キャンバー角に加え、空気入りタイヤ310の空気圧を調整することができる。これにより、走行性能をより向上させることができる。また、空気圧制御装置350は、車両の状態、例えば加速時、減速時、旋回時、巡航時、停止時等に応じて空気圧を変更することが好ましい。なお、車両300は、空気圧調整装置350を用いる場合、インホイールモータユニット60からホイール340を取り外しても空気入りタイヤ310から空気が抜けないように、ホイール340の空気通路344のハブ取付部342側の開口部とインホイールモータユニット60との接続面に空気接続弁を設けることが好ましい。空気接続弁は、インホイールモータユニット60と接続しているときは、空気が流通可能となり、インホイールモータユニット60と接続していないときは空気が流通できない状態となる弁である。これにより、空気入りタイヤ310から空気が抜けることを抑制することができる。
次に、図14から図17を用いて、走行車両で実行される走行制御について説明する。図14から図17は、それぞれ本実施形態に係る走行車両の制御ユニットによる走行制御の一例を示すフローチャートである。なお、図14から図17の走行制御は、制御ユニット10が少なくともキャンバー角制御装置を含む各制御装置で制御を実行することで実現することができる。
まず、図14を用いて走行制御の一例を説明する。制御ユニット10は、ステップS12として操舵操作を検出し、ステップS14として旋回方向を検出する。なお、操舵操作の検出、旋回方向の検出方法は、種々の方法を用いることができる。制御ユニット10は、ステップS14で旋回方向を検出したら、ステップS16として、キャンバー角制御装置20を用いて、旋回方向外側のキャンバー角、つまり旋回外輪のキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS16で旋回方向外側のキャンバー角を検出したら、ステップS18として、キャンバー角制御装置20を用いて、旋回方向内側のキャンバー角、つまり旋回内輪のキャンバー角を算出する。なお、キャンバー角制御装置20は、上述したように各種走行条件に基づいてキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS18で旋回方向内側のキャンバー角を検出したら、ステップS20として、キャンバー角の算出結果に基づいて、キャンバー角調整機構を制御して車輪のキャンバー角を調整し、本処理を終了する。
車両のキャンバー角制御装置は、上記処理を繰り返し実行することで旋回動作時にキャンバー角を適切な角度に調整することができる。これにより、コーナリング力を適切に発生させることができ、旋回性能をより向上させることができ、空気入りタイヤの異常磨耗の発生を抑制することができる。
なお、図14では、旋回外輪と旋回内輪のキャンバー角をそれぞれ算出したがこれに限定されない。車両は、左右輪がリンク機構で連結されている場合、一方の車輪のキャンバー角のみを算出、または、両方の車輪のキャンバー角を一度に算出すればよい。また、車輪は、制御する対象の車輪のキャンバー角を算出すればよく、旋回外輪のキャンバー角のみを調整する場合、旋回内側のキャンバー角は算出しなくてよい。
次に、図15を用いて走行制御の一例を説明する。制御ユニット10は、ステップS30として、走行速度、例えば車速を検出する。制御ユニット10は、ステップS30で車速を検出したら、ステップS32として、キャンバー角制御装置20を用いて、キャンバー角を算出する。なお、キャンバー角制御装置20は、上述したように各種走行条件に基づいてキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS32でキャンバー角を検出したら、ステップS34として、キャンバー角の算出結果に基づいて、キャンバー角調整機構を制御して車輪のキャンバー角を調整し、本処理を終了する。
車両のキャンバー角制御装置20は、走行速度に基づいて、車輪のキャンバー角を調整することで、走行性能をより向上させることができる。また、キャンバー角制御装置20は、図14に示す操舵操作、つまり車両の旋回も加味して、キャンバー角を調整してもよい。例えば、キャンバー角制御装置20は、車速が10km/h以下の場合、操舵操作を検出しても、キャンバー角を変動させないようにしてもよい。これにより、キャンバー角の調整の効果が小さい場合、制御を実行しないようにすることができる。また、上記実施形態のキャンバー角制御装置20は、走行速度を用いたが、走行速度に換えて、加速度を用いてもよい。
次に、図16を用いて走行制御の一例を説明する。制御ユニット10は、ステップS40として旋回加速度を検出し、ステップS42として旋回加速度が0.2G以下であるかを判定する。制御ユニット10は、ステップS42で旋回加速度が0.2G以下である(Yes)と判定した場合、ステップS44として、キャンバー角制御装置20を用いて、キャンバー角を算出する。なお、キャンバー角制御装置20は、上述したように各種走行条件に基づいてキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS44でキャンバー角を検出したら、ステップS46として、キャンバー角の算出結果に基づいて、キャンバー角調整機構を制御して車輪のキャンバー角を調整し、本処理を終了する。
制御ユニット10は、ステップS42で旋回加速度が0.2G以下ではない(No)つまり旋回加速度が0.2Gより大きいと判定した場合、ステップS48として、ステア角制御装置24を用いて、ステア角を算出し、ステップS50として、キャンバー角制御装置20を用いて、算出したステア角に対応したキャンバー角を算出する。なお、キャンバー角制御装置20は、ステア角を加味して操舵操作で入力された旋回を実行することができるキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS50でキャンバー角を検出したら、ステップS52として、ステア角及びキャンバー角を調整し、本処理を終了する。具体的には、ステア角の算出結果に基づいて、ステアリングギアボックス8を制御して車輪のステア角を調整する。また、キャンバー角の算出結果に基づいて、キャンバー角調整機構を制御して車輪のキャンバー角を調整する。
ステア角調整装置は、旋回加速度が0.2G以下の場合、車輪のステア角を変動させず、旋回加速度が0.2Gを超えた場合、車輪のステア角を変動させる。また、キャンバー角制御装置は、旋回加速度が0.2G以下の場合、操舵角に対応させてキャンバー角を変動させ、旋回加速度が0.2Gを超えた場合、ステア角の変動を加味して、キャンバー角を変動させる。このように、小舵角領域おける旋回動作をキャンバー角で調整することで、小舵角領域における微調整がしやすくなり、旋回性能をより高くすることができる。
また、制御ユニット10は、旋回加速度に換えて、操舵角を基準として同様の制御を行うようにしてもよい。具体的には、ステア角調整装置は、操舵角が閾値以下の場合、車輪のステア角を変動させず、操舵角が閾値を超えた場合、車輪のステア角を変動させる。また、キャンバー角制御装置は、操舵角が閾値以下の場合、操舵角に対応させてキャンバー角を変動させ、操舵角が閾値を超えた場合、ステア角の変動を加味して、キャンバー角を変動させる。このように、操舵角を用いることでも、同様の効果を得ることができる。
制御ユニット10は、モータ制御装置25により、キャンバー角制御装置で制御したキャンバー角に基づいて、左右輪のインホイールモータユニットのトルクを制御することが好ましい。これにより、インホイールモータのトルクでヨーコントロールを行うことができる。また、さらにキャンバー角を制御することで、車両の挙動を安定させつつ、タイヤの異常磨耗を抑制することができる。なお、トルクには、駆動トルクも回生ブレーキも含む。
次に、図17を用いて走行制御の一例を説明する。制御ユニット10は、ステップS60として制動操作を検出し、ステップS62として制動力が0.2G以下であるかを判定する。ここで、制動力とは、制動動作で空気入りタイヤに生じる制動方向の加速度である。制御ユニット10は、ステップS62で制動力が0.2G以下である(Yes)と判定した場合、ステップS63として、モータ制御装置25を用いて、モータの回生を算出する。なお、モータ制御装置25は、制動操作で検出したブレーキペダルの操作量や、走行速度、加速度等の各種走行条件に基づいて各インホイールモータユニットで発生させる回生の大きさを算出する。制御ユニット10は、ステップS63で発生させる回生の大きさを検出したら、ステップS64として、算出した回生の算出結果に基づいて、インホイールモータユニットを制御して回生を発生させ、ステップS72に進む。
制御ユニット10は、ステップS62で制動力が0.2G以下ではない(No)つまり制動力が0.2Gより大きいと判定した場合、ステップS66として、ブレーキ制御装置26を用いて、ブレーキアクチュエータの制動力を算出する。ブレーキアクチュエータの制動力とは、ブレーキアクチュエータを駆動させることにより、各制動装置で車輪に対して発生させる制動力である。制御ユニット10は、ステップS66でブレーキアクチュエータの制動力を算出したら、ステップS68として、モータ制御装置25を用いて、算出したブレーキの制動力に対応したモータの回生を算出する。なお、モータ制御装置25は、制動操作で検出したブレーキペダルの操作量や、ブレーキアクチュエータの制動力、走行速度、加速度等の各種走行条件に基づいて各インホイールモータユニットで発生させる回生の大きさを算出する。制御ユニット10は、ステップS68で発生させる回生の大きさを検出したら、ステップS70として、算出した制動力の算出結果及び回生の算出結果に基づいて、インホイールモータユニット及びブレーキアクチュエータを制御し、回生、制動力を発生させ、ステップS72に進む。
制御ユニット10は、ステップS64またはステップS70の処理を実行した場合、ステップS72として、キャンバー角制御装置20を用いて、算出した制動力に対応したキャンバー角を算出する。なお、キャンバー角制御装置20は、上述したように各種走行条件に基づいてキャンバー角を算出する。制御ユニット10は、ステップS72でキャンバー角を検出したら、ステップS74として、キャンバー角の算出結果に基づいて、キャンバー角調整機構を制御して車輪のキャンバー角を調整し、本処理を終了する。
ブレーキ制御装置26は、車輪にかかる制動力が0.2G以下の場合、ブレーキアクチュエータで制動力を付与せず、制動力が0.2Gより大きい場合、ブレーキアクチュエータで制動力を付与する。モータ制御装置25は、車輪にかかる制動力が0.2G以下の場合、インホイールモータユニットを回生させ、制動力が0.2Gより大きい場合、ブレーキアクチュエータで発生した制動力を加味して回生させる。これにより、車両は、ブレーキ(ABS)の制御よりも応答速度が速いインホイールモータにおける回生ブレーキを、ヨーコントロールの制御初期段階で用いることができ、回生ブレーキを有効に活用することができ、車両の制動動作をより高精度に実行することができる。また、キャンバー角を調整することで走行性能をさらに向上させることができる。