JP5374852B2 - 結晶性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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第1の発明の結晶性熱可塑性樹脂組成物には、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子及び結晶性熱可塑性樹脂を溶融混練してなり、金属酸化物微粒子に結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化されたグラフト体が含まれている。係るグラフト体は、結晶性熱可塑性樹脂と金属酸化物微粒子とが結合力の高い共有結合で結ばれている。このため、結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化していない金属酸化物微粒子を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物と比較して、金属酸化物微粒子の分散性を高めることができ、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度を速くし、しかも結晶化度を高めることができる。従って、結晶性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の機械的物性及び耐熱性を向上させることができるものと考えられる。金属酸化物微粒子表面の有機過酸化物基が、表面に水酸基を有する酸化ケイ素微粒子等を用いて形成される場合、酸化ケイ素微粒子等の水酸基を利用し、有機過酸化物基を金属酸化物微粒子表面に容易に導入することができる。
本実施形態の結晶性熱可塑性樹脂組成物は、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子及び結晶性熱可塑性樹脂を溶融混練してなり、金属酸化物微粒子に結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化されたグラフト体と、結晶性熱可塑性樹脂とを含有するものである。即ち、結晶性熱可塑性樹脂組成物は、上記グラフト体と結晶性熱可塑性樹脂とを含む混合物である。
・ 本実施形態の結晶性熱可塑性樹脂組成物は、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子及び結晶性熱可塑性樹脂を溶融混練することにより簡単に得られる。この結晶性熱可塑性樹脂組成物には、金属酸化物微粒子に結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化されたグラフト体が含まれ、該グラフト体は結晶性熱可塑性樹脂と金属酸化物微粒子とが結合力の高い共有結合で結合されている。従って、結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化されていない金属酸化物微粒子を含有する結晶性熱可塑性樹脂組成物と比較して、金属酸化物微粒子の分散性を高めることができ、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度を速くし、しかも結晶化度を高めることができる。その結果、結晶性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の機械的物性及び耐熱性を向上させることができるものと考えられる。
(1)数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(GPC、(株)島津製作所製)を用い、溶出液をクロロホルム、カラム温度を40℃として、標準ポリスチレン換算により求めた。
(2)結晶性熱可塑性樹脂組成物中の結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化した金属酸化物微粒子中の結晶性熱可塑性樹脂の定性と定量
結晶性熱可塑性樹脂組成物1gを100mlのクロロホルムに溶解し、得られた溶液を遠心分離機〔(株)久保田製作所製、7780〕で20分間高速遠心分離(20,000rpm)した。生成した沈殿物をさらに100mlのクロロホルムで洗浄し、20分間高速遠心分離した。この洗浄、遠心分離操作をさらに2回繰り返して得られた沈殿物を、室温で2時間真空乾燥することにより、結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化した金属酸化物微粒子を取り出した。
(3)結晶性熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物微粒子の分散性
結晶性熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物微粒子の9μm2あたりの粒子数及び数平均分散粒径の測定
得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物から、ウルトラミクロトーム〔(株)ライカ製、ウルトラカットUCT〕を用いて、厚さ50〜100μmの超薄切片を作製した。得られた超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)〔(株)日本電子製、JEM−1200EX〕を用いて金属酸化物微粒子の分散状態を観察、撮影した。得られたTEM写真を複数用いて、視野内で確認可能な独立した粒子の数を100μm2以上の範囲でカウントし、9μm2あたりの面積でカウント可能な粒子数を算出した。加えた粒子の種類や量が同じである場合には、粒子が凝集して存在していると単位面積あたりの粒子数は少なくなっているため、この方法により粒子の分散性を評価することが可能となる。またTEM写真において、100個以上の分散金属酸化物微粒子が存在する任意の領域を選択し、粒径を目盛り付き定規を用いて測定し、数平均分散粒径を算出した。
(4)結晶性熱可塑性樹脂組成物の過冷却度
走査型示差熱量計(DSC、エスアイアイナノテクノロジー製)を用い、結晶性熱可塑性樹脂組成物10mgをアルミニウム製の密封セルに入れ、10℃/分で室温から220℃まで昇温し、220℃で10分間保持した後、10℃/分で220℃から室温まで降温させた。この降温過程における結晶化発熱曲線の発熱ピーク温度を結晶化ピーク温度(℃)とし、平衡融点である215℃との差(℃)を計算した。
(5)結晶性熱可塑性樹脂組成物の結晶化度
走査型示差熱量計(DSC、エスアイアイナノテクノロジー製)を用い、結晶性熱可塑性樹脂組成物10mgをアルミニウム製の密封セルに入れ、10℃/分で室温から220℃まで昇温し、220℃で10分間保持した後、10℃/分で220℃から室温まで降温させた。この降温過程における結晶化発熱曲線の面積を結晶化熱量(J/g)とし、結晶化度100%の結晶性熱可塑性樹脂の融解熱量で除した割合(%)を計算した。
金属酸化物微粒子A:日本触媒(株)製のアモルファスシリカ、商品名「シーホスターKE−W10(水分散液)」、数平均粒径130nm、表面に水酸基を有している。
金属酸化物微粒子C:日産化学工業(株)製のオルガノルシリカゾル、商品名「メタノールシリカゾル(メタノール分散液)」、数平均粒径15nm、表面に水酸基を有している。
アミノ変性シランカップリング剤:関東化学(株)製の試薬、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)
有機変性金属酸化物:日本アエロジル(株)製コロイダルシリカ、商品名「アエロジルR805」、数平均粒径12nm、有機物(オクチル基)変性量5.5%
一分子中にエチレン性不飽和基と有機過酸化物基を有する化合物a:日油(株)製のt−ブチルペルオキシ−2−メタクリロイルオキシエチルモノカーボネート、商品名「ペロマーMEC(MEC)」
一分子中にエチレン性不飽和基と有機過酸化物基を有する化合物b:日油(株)製のt−ブチルペルオキシ−アリルモノカーボネート、商品名「ペロマーAC(AC)」
結晶性熱可塑性樹脂(PLLA):三井化学(株)製のポリL−乳酸樹脂、商品名「レイシアH100」、質量平均分子量(Mw)150,000、分散度(Mw/Mn)2.2、平衡融点:115℃、結晶化度100%の融解熱量:93J/g
(参考例1、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaの製造)
金属酸化物微粒子Aの水分散液を遠心分離し、沈殿物をN−メチルピロリドンで洗浄、遠心分離操作を3回行うことで、固形分20質量%のN−メチルピロリドン分散液を得た。
(参考例2、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Abの製造)
参考例1において、MEC2.4g(アミノ基に対して3倍モル)をMEC0.4g(アミノ基に対して0.5倍モル)に変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Abを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(参考例3、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Acの製造)
参考例1において、MEC2.4g(アミノ基に対して3倍モル)をMEC8g(アミノ基に対して10倍モル)に変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Acを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(参考例4、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Bの製造)
参考例1において、金属酸化物微粒子Aを金属酸化物微粒子Bに変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Bを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(参考例5、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Cの製造)
参考例1において、金属酸化物微粒子Aを金属酸化物微粒子Cに変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Cを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(参考例6、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Dの製造)
参考例1において、金属酸化物微粒子Aを金属酸化物微粒子Dに変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Dを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(参考例7、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Adの製造)
参考例1において、MEC2.4g(アミノ基に対して3倍モル)をAC1.7g(アミノ基に対して3倍モル)に変更した以外は同様の方法で、表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Adを得た。この表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子の有機過酸化物基導入量を化学滴定により求め、その結果を表1に示した。
(実施例1)
結晶性熱可塑性樹脂(PLLA)100質量部と参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aa5質量部をドライブレンドし、180℃に設定された溶融混練機〔ラボプラストミルμ、小型セグメントミキサ:KF6型、ディスク:高剪断型、(株)東洋精機製作所製〕にて210rpmで5分間溶融混練し、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物から結晶性熱可塑性樹脂(PLLA)がグラフト化した金属酸化物微粒子中の結晶性熱可塑性樹脂の定性、定量及び結晶性熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物微粒子の分散性を測定し、それらの結果を表2に示した。
(実施例2)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例2で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Abに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(実施例3)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例3で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Acに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(実施例4)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例4で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Bに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(実施例5)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例5で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Cに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(実施例6)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例7で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Adに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(比較例1)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aa5質量部を、0質量部に変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
(比較例2)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、有機過酸化物基を有していない金属酸化物微粒子Aに変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aa5質量部を0.5質量部に変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表3に示した。
(実施例8)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aa5質量部を20質量部に変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表3に示した。
(実施例9)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、参考例6で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Dに変更した以外は同様の方法で、結晶性熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた結晶性熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表3に示した。
(比較例3)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、有機変性金属酸化物微粒子に変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表3に示した。
(比較例4)
実施例1において、参考例1で得られた表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子Aaを、有機過酸化物基を有していない金属酸化物微粒子Dに変更した以外は同様の方法で、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表3に示した。
・ 結晶性熱可塑性樹脂として、前記過冷却度が0〜120℃及び結晶化度が20〜100%の少なくとも一方が前記各実施例とは異なる結晶性熱可塑性樹脂を少なくとも1種用いることができる。
・ 有機過酸化物として、分解開始温度の異なるものを複数種類組合せて使用し、溶融混練する温度を調整することもできる。
・ 前記金属酸化物微粒子表面の有機過酸化物基は、酸化ケイ素微粒子の水酸基にアミノ変性シランカップリング剤を反応させて酸化ケイ素微粒子表面にアミノ基を導入し、該アミノ基にエチレン性不飽和基と有機過酸化物基を有する化合物を反応させて得られるものであることを特徴とする各請求項に記載の結晶性熱可塑性樹脂組成物。このように構成した場合、前記発明の効果に加えて、有機過酸化物基の導入効率を向上させることができる。
Claims (4)
- 表面に有機過酸化物基を有する金属酸化物微粒子及び結晶性熱可塑性樹脂を溶融混練してなり、金属酸化物微粒子に結晶性熱可塑性樹脂がグラフト化されたグラフト体と、結晶性熱可塑性樹脂とを含有し、
前記金属酸化物微粒子表面の有機過酸化物基は、表面に水酸基を有する、酸化ケイ素、タルク、クレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セリサリト、及び活性白土から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を用いて形成されるものであり、
前記結晶性熱可塑性樹脂は、ポリL−乳酸樹脂及びポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂組成物。 - JIS K 7121で規定される結晶化ピーク温度から求められる過冷却度が0〜120℃であり、かつJIS K 7122で規定される結晶化熱量から求められる結晶化度が20〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記結晶性熱可塑性樹脂が、JIS K 7122で規定される結晶化熱量の測定において、2℃/分の冷却速度で冷却した際に、結晶化発熱が観察されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結晶性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記金属酸化物微粒子表面の有機過酸化物基が、ペルオキシモノカーボネート基であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の結晶性熱可塑性樹脂組成物。
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