JP2006241248A - 高分子複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 高分子マトリックス(A)中に、下記一般式(1)で示される化学構造を最表面に有する反応性カーボンナノチューブ(b1)と、活性水素基を有する高分子(b2)を反応させることにより得られた高分子被覆カーボンナノチューブ(B)を含有することを特徴とする高分子複合体である。
【化1】
(但し、式中C1,C2,C3は、それぞれカーボンナノチューブを構成する炭素原子であり、nは、0〜5の整数である。)
【選択図】 なし
Description
本発明はまた、前記高分子被覆カーボンナノチューブ(B)が、高分子複合体全体の0.05〜60質量%の割合で含有されていることを特徴とする上記高分子複合体を示すものである。
このような表面化学特性を有する反応性カーボンナノチューブ(b1)は、一般的な合成方法に従ってカーボンナノチューブを形成し、これを精製する以前の欠陥を有する状態において酸化処理を施すことによって、比較的容易に調製することができる。
この反応により、反応式(2)に示すように、高分子の有していた水酸基、チオール基、アミノ基およびカルボキシル基などの活性水素基により、エステル、チオエステル、アミド、酸無水物などの結合を介し、カーボンナノチューブと被覆高分子が強固に結合させられる。この結合力は、カーボンナノチューブ表面に存在する酸無水物と被覆高分子の活性水素量に依存する。上記酸無水物導入条件下における被覆高分子の活性水素量は、高分子の単位繰返し構造当たり0.1以上、より好ましくは、0.2〜5であることが好ましい。
アルキルないしヒドロキシアルキル置換セルロース誘導体としては、特にそのアルキル化度が40%以上のものが好ましい。
導電性樹脂及び導電性樹脂成型体として,例えば包装材、ガスケット、容器、抵抗体、導電性繊維、電線、接着剤、インク、塗料等に好適に用いられる。なお、これらと同様の用途においては、高分子複合体の熱伝導性を利用して用いる場合もある。
摺動性を高めるために樹脂に混合してロール、ブレーキ部品、タイヤ、ベアリング、潤滑油、歯車、パンタグラフ等に利用する。また、軽量で強靭な特性を活かして電線、家電・車輌・飛行機等のボディ、機械のハウジングに利用できる。
本発明に係る高分子複合体においては、上述したように高分子被覆カーボンナノチューブが均一かつ微細に分散されその透明性等の光学特性にも優れたものであるから、例えば、レンズ、プリズム、フィルター、透明導電膜、記録媒体基板等として用いることができる。
1.熱重量天秤
マックサイエンス社製 TG−DTA 2000Sを用いてアルゴン雰囲気下、5℃/分の昇温で得られた重量減少曲線から求めた。
2.重量平均分子量
サンプルを0.02容量%の溶液に調製し、TOSOH製カラム TSK−GELGMHHR−H(S)HとRI検出器を備えた(株)センシュー科学製 GPC装置 SSC−7100を用い、流速 1ml/分、温度 140℃にて測定した。得られたクロマトグラムを標準ポリスチレン換算し、重量平均分子量を求めた。
3.電気抵抗
三菱化学社製 MCP−T600を用い、4端子法により測定した。
4.弾性率
ボーリンインスツルメンツ社製 Geminiを用い、厚さ1mmの試料を10Hzの加振下、5℃/分の昇温で得られる貯蔵弾性率から求めた。
5.光線透過率
日立製作所製紫外可視分光光度計 UV−330を用い、厚み1μmのフィルム試料の分光測定結果から求めた。
6.赤外線スペクトル
Continuum赤外顕微鏡を備えたサーモニコレーNexus670(サーモエレクトロン社製)を用い、反射モードにて測定した。
7.ラマン分光分析
ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
8.熱伝導性
試験片所定の形状に切り出し、レーザーフラッシュ法にて熱伝導率(W/m/K)を測定した。
9.電磁波吸収性
電磁波無響暗箱中でアドバンテスト法にて100MHz〜10GHzの周波数範囲における減衰率(dB)を測定した。
原料供給と排気が循環する環状加熱反応炉に、トルエン、水素、フェロセン、チオフェン(モル分率 2.67:97.2:0.054:0.031)からなる混合物を供給し、1200℃に加熱しながら循環させた。トルエンがほとんど消費されたところで生成したカーボンナノチューブをアルゴン気流下に取り出し、室温(25℃±10℃)に冷却した。ここで得られたカーボンナノチューブのID/IGは、2.1であった。次いで、このナノチューブを、アルゴン置換し、酸素濃度が1000ppmとなったところでアルゴン気流下に900℃に30分間加熱処理し、室温に冷却することで、嵩比重が0.008の酸無水物含有カーボンナノチューブを得た。この物質の反射赤外スペクトルを図1に示す。
参考例1で得られた酸無水物含有カーボンナノチューブ800gとエチルセルロースの2質量%メタノール溶液1.2kgを混合し、転動式造粒機にて凝集粒子を形成した。湿潤状態にある凝集粒子より室温、減圧下でメタノールを除去し、その後120℃にて窒素雰囲気下で1時間加熱処理し、目的の高分子複合体を得た。この凝集粒子は、平均粒径500μm、嵩比重0.1を有しており、繊維間の結合力が高められていた。この凝集粒子の反射赤外スペクトルを図2に示す。アルゴン気流下におけるTG/DTA分析で室温〜400℃の間で、この凝集粒子は、2.8%の重量減少を示したことから、ほぼ定量的にエチルセルロースがカーボンナノチューブに結合していた。
表1に示す高分子と製造条件を用いた以外は、参考例2におけると同様にして、高分子被覆カーボンナノチューブを製造した。いずれの凝集粒子も平均粒径、嵩比重が高められており、繊維間の結合力が強められていた。
参考例2で得られた高分子被覆カーボンナノチューブ5gとポリカーボネート95gを直径10mm×長さ20cmの二軸スクリュー型押出機を用い、280℃にて混練し、高分子複合体を得た。得られた複合体を薄膜切片にし光学顕微鏡にて観察したところ、それぞれの繊維が明瞭であり、良好な分散状態を示していた。この高分子複合体の体積電気抵抗は114Ω・cm、100μm肉厚のシートの光線透過率は86%であり、カーボンナノチューブの良好な分散状態を反映していた。図3にこの透過顕微鏡写真(倍率250倍)を示す。
参考例3で得られた高分子被覆カーボンナノチューブ1gとポリプロピレン99gを直径10mm×長さ20cmの二軸スクリュー型押出機を用い、230℃にて混練し、高分子複合体を得た。得られた複合体の弾性率は30℃にて1.41GPaであり、純粋なポリプロピレンの弾性率(1.01GPa)と比較し、機械的強度が向上していた。
参考例5で得られた高分子被覆カーボンナノチューブ3gと66−ナイロン97gを直径10mm×長さ20cmの二軸スクリュー型押出機を用い、340℃にて混練し、高分子複合体を得た。得られた複合体の熱伝導性は30℃にて9.8W/m/Kであり、純粋な66−ナイロンの熱伝導性(0.23)と比較し、熱伝導性が向上していた。
参考例4で得られた高分子被覆カーボンナノチューブ10g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂75g、およびジシアンジアミド15gを自公転式混合機で室温〜40℃にて混練し、ガラス板に200μmの厚さで塗布し、170℃にて30分間加熱することで、硬化エポキシ樹脂の複合体皮膜を得た。この複合体の反射顕微鏡写真(倍率250倍)を図4に示す。図4に示す顕微鏡写真で観察したところ、カーボンナノチューブが比較的高含有率で含まれているにもかかわらず、各繊維がそれぞれ識別できる良好な分散性が示されていた。この複合体皮膜は、5.3GHzの電磁波を44dB減衰させ、純粋な当該エポキシ樹脂硬化皮膜の有する電磁波減衰率(0.23dB)と比較して、良好な電磁波吸収体となることがわかった。
参考例1において熱処理を施すことなく得られた熱処理前のカーボンナノチューブ1gを用いて、実施例4と同様にして硬化エポキシ樹脂の複合体皮膜を製造した。この複合体の透過顕微鏡写真(倍率250倍)を図5に示す。図5に示す顕微鏡写真で観察したところ、カーボンナノチューブはこの複合体中で大きな凝集体を形成しており、ほとんど分散していなかった。この複合体は体積電気抵抗1.1×105Ω・cm、5.3GHzの電磁波減衰率1.4dBを示し、添加されたカーボンナノチューブの分散性が低いゆえに高分子相のみの物性に依存した特性を示した。
参考例1において熱処理を施すことなく熱処理前のカーボンナノチューブに、結合剤としてポリエチレングリコール(PEG)(数平均分子量20000)を用い、参考例2と同様の方法で凝集粒子を製造した。この凝集粒子の嵩比重は0.15であり比較的軽く、わずかな応力で粒子が崩壊する結合力の弱いものであった。この凝集粒子3gをポリウレタン(1,4−ジヒドロキシブタンとキシレンジイソシアネートの等モル重付加体)97gとメチルエチルケトン490gの溶液にボールミルを用い分散させ、得られた懸濁液をガラス板に塗布した。溶媒を80℃にて蒸発除去した後、膜厚6μmの複合体薄膜を得た。この複合体薄膜の面積抵抗は8.6×109Ω/cm2であり、分散状態の低さを反映するものであった。
比較例2において調製した凝集粒子を、実施例1と同様の装置を用いて230℃にてポリプロピレンに混練させ、カーボンナノチューブ5%含有量の高分子複合体を得た。図6にこの高分子複合体の薄膜切片の透過顕微鏡写真(倍率250倍)を示す。図6に示したように、この高分子複合体においては、カーボンナノチューブは凝集体を維持しており、分散の低いものであった。またこの高分子複合体の体積電気抵抗は4.4×106Ω・cmであり、実施例1に記載の本発明に係る高分子複合体を用いた場合と比較して極めて低かった。また弾性率は0.86GPaであり、純粋なポリプロピレンの弾性率(1.01GPa)と比較し、劣化していた。これらの結果は、結合剤であるPEGがポリプロピレンと相溶性が低く、さらにカーボンナノチューブと強固に結合していないことを反映していた。
Claims (7)
- 高分子マトリックス(A)中に、
下記一般式(1)で示される化学構造を最表面に有する反応性カーボンナノチューブ(b1)と、活性水素基を有する高分子(b2)とを反応させることにより得られた高分子被覆カーボンナノチューブ(B)
を含有することを特徴とする高分子複合体。
- 前記高分子被覆カーボンナノチューブ(B)が、高分子複合体全体の0.05〜60質量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子複合体。
- 前記活性水素基を有する高分子(b2)が、水酸基、アミノ基、チオール基およびカルボキシル基からなる群から選択されてなる少なくともいずれか1種の活性水素基を有する高分子である請求項1または2に記載の高分子複合体。
- 前記活性水素基を有する高分子(b2)が、セルロース誘導体である請求項1〜3のいずれか1つに記載の高分子複合体。
- 導電性材料として用いられるものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の高分子複合体。
- 高力学強度材料として用いられるものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の高分子複合体。
- 光学材料として用いられるものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の高分子複合体。
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