JP5374433B2 - オルガノポリシロキサン化合物の製造方法 - Google Patents

オルガノポリシロキサン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オルガノポリシロキサン化合物の製造方法に関する。
オルガノポリシロキサン化合物(以下、「シリコーン化合物」と称することがある)は、低い表面張力、優れた潤滑性や離型性、高い熱的安定性、一般にきわめて低いガラス転移点、優れた気体透過性等の多くの特徴を有していることから、様々な形態のシリコーン化合物が潤滑剤、熱媒体、電気絶縁体、塗料レベリング剤、離型剤、化粧品添加剤、繊維処理剤、衝撃緩衝材、シーリング材、型取り材、つや出し剤、整泡剤、消泡剤として極めて広範囲に利用されている。
パーソナルケアの分野においても例外でなく、シリコーン化合物は、スキンケア剤、ファンデーション、シャンプー、コンディショナー等の化粧料に感触向上剤等として多用されている。あるいは、ヘアセット剤の主基剤として使用されている。パーソナルケアの分野では、配合の容易さの面で、エタノール可溶性が求められることが多い。例えば、特許文献1には、エタノール等の各種溶媒に可溶あるいは分散可能なシリコーン化合物が開示されている。
シリコーンエラストマーの製造については、例えば特許文献2に記載されているように、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)のオリゴマーを重合する工程及びそのオリゴマーをシリコーン化合物にグラフトさせる工程の2段階からなるものが知られている。ここで、これらの工程は、均一系で反応することが必要になるため、溶媒中で行われることが一般的であり、使用できる溶媒は、酢酸エチルやクロロホルム等の非プロトン性の溶媒に限定される。
このような方法で得られたシリコーン化合物を、パーソナルケアの分野で使用する場合には、反応終了後に脱溶媒工程を設ける必要がある。特に、パーソナルケアの分野では溶剤臭が好まれないので、極力残存する溶媒を除去しなければならず、そのためには減圧下高温で脱溶媒する必要がある。
特開平2−276824号公報 特開平4−85335号公報
したがって、特許文献1に記載されているシリコーン化合物は各種溶媒に対する溶解性に優れるという従来品にはない性質を有しているが、製造する際に品質が安定しないことがあり、特に、脱溶媒処理等の高温処理後には、色相が悪化したり、有機溶媒への溶解性が低下することがある。
また、化粧品用途に用いられる基剤には、色相が良いことが必要である場合が多い。更には、エタノールへ均一に溶解することが望まれる場合が多い。
本発明の課題は、色相が良く、エタノールに均一に溶解するオルガノポリシロキサン化合物を安定に提供することにある。
すなわち、本発明は、以下のオルガノポリシロキサン化合物の製造方法を提供する。
オルガノポリシロキサンのセグメントの末端及び/又は側鎖に、下記一般式(1)で表される繰返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントが結合してなるオルガノポリシロキサン化合物の製造方法であって、
(a)下記一般式(I)で表される環状イミノエーテル化合物を開環重合して、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液を調製する工程、
(b)前記工程(a)で得られた末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合し反応させる工程、
(c)前記工程(b)で得られた反応物から、連続式乾燥機を用いて重合溶媒を除去する工程、
(d)前記工程(c)において、連続式乾燥機から最初に排出される反応物であって、該乾燥機の有効容量の0.3倍量以上の反応物を、取り除く工程
を含む、オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
Figure 0005374433
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表し、nは2又は3を表す。)
Figure 0005374433
(前記一般式(I)中、R1及びnは、前記一般式(1)におけるR1及びnと同義である。)
本発明の方法によれば、色相が良く、エタノールに均一に溶解するオルガノポリシロキサン化合物を安定に提供することができる。
<オルガノポリシロキサン化合物>
本発明の製造方法によって得られるオルガノポリシロキサン化合物は、オルガノポリシロキサンのセグメントの末端及び/又は側鎖に、下記一般式(1)で表される繰返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントが結合してなる。
Figure 0005374433
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表し、nは2又は3を表す。)
このようなオルガノポリシロキサン化合物は、特に限定されないが、好ましい具体例としては、下記一般式(2)で表される変性オルガノポリシロキサンセグメントに、前記一般式(1)で表される繰返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるものである。
Figure 0005374433
(式中、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を表すか又は下式(i)〜(vi)のいずれかで表される2価の連結基を表し、R5は、下式(i)〜(vi)のいずれかで表される2価の連結基を表す。pは、2〜4000の整数を表し、qは、2〜250の整数を表す。)
Figure 0005374433
(式(i)〜(vi)中、*は、前記一般式(2)におけるケイ素原子に結合する部位を表し、**は、前記一般式(1)で表される繰返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントに結合する部位を表す。X-は4級アンモニウム塩の対イオンを表す。)
前記一般式(1)中、R1で表される炭素数1〜22のアルキル基としては、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及び各種のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基、更にはシクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。なお、各種のアルキル基とは、そのアルキル基の炭素数が同一である異性体すべてを含むアルキル基を指す。
1で表されるアラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、炭素数7〜14のアラルキル基がより好ましく、炭素数7〜10のアラルキル基が更に好ましい。具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等が挙げられる。なお、芳香環上には、低級アルキル基が導入されていてもよい。
1で表されるアリール基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、炭素数6〜9のアリール基が更に好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1としては、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
前記一般式(2)中、R2〜R4で表される炭素数1〜22のアルキル基としては、上述したR1で表される炭素数1〜22のアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
2としては、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。また、R3及びR4が炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を表す場合も炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
前記一般式(2)中、R3〜R5で表される、上記式(i)〜(vi)のいずれかで表される2価の連結基は、窒素原子を含むアルキレン基であり、変性オルガノポリシロキサンセグメントとポリ(N−アシルアルキルイミン)セグメントとの連結基として機能する。上記式(i)〜(vi)の中でも上記式(i)又は(ii)で表される基が好ましい。
上記式(i)〜(vi)中、X-は4級アンモニウム塩の対イオンを表し、具体例としては、エチル硫酸イオン、メチル硫酸イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、1/2硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられる。
前記一般式(2)中、pは、2〜4000の整数を表し、qは、2〜150の整数を表す。pは、135〜1600の整数が好ましく、400〜1350の整数がより好ましく、qは、3〜50の整数が好ましく、5〜20の整数がより好ましい。
本明細書中、オルガノポリシロキサンセグメントの連結率とは、変性オルガノポリシロキサンセグメントが有する全アミノ基に対してポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントが連結している割合をいう。オルガノポリシロキサンセグメントの連結率は、オルガノポリシロキサン化合物の中和滴定によって未反応のアミノ基の含有量を測定することで求めることができる。オルガノポリシロキサンセグメントの連結率は、オルガノポリシロキサン化合物の熱安定性の観点から、好ましくは65〜95%、より好ましくは70〜90%、更に好ましくは75〜88%である。
オルガノポリシロキサン化合物におけるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N−アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度とから算出する方法又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法により測定することが可能であるが、本発明においてはGPC測定法により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量をいい、好ましくは150〜50,000、より好ましくは500〜10,000である。
オルガノポリシロキサン化合物において主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)は、好ましくは300〜300,000であるが、エタノールへの溶解性の観点から、より好ましくは10,000〜120,000、更に好ましくは30,000〜100,000である。MWsiは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と略同一である。なお、変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、活性水素をあらかじめ無水酢酸でアセチル化した後、GPCにより測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明に係るオルガノポリシロキサン化合物の重量平均分子量(MWt)は、好ましくは500〜500,000、より好ましくは30,000〜150,000、更に好ましくは50,000〜120,000である。本明細書において、MWt(=MWox+MWsi)は、MWsiの値と核磁気共鳴(1H−NMR)分析により求めたオルガノポリシロキサンセグメントの質量比(MWsi/(MWox+MWsi))の値とから算出することができる。なお、本明細書において、オルガノポリシロキサンセグメントの質量比(MWsi/(MWox+MWsi))は、本発明に係るオルガノポリシロキサン化合物を重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H−NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
本発明に係るオルガノポリシロキサン化合物の具体例については、特開平2−276824号公報(前記特許文献1)や特開2009−24114号公報等の記載を参照することができる。
<オルガノポリシロキサン化合物の製造方法>
本発明に係るオルガノポリシロキサン化合物は、分子鎖の末端及び/又は側鎖にアミノ基を有する変性オルガノポリシロキサンと、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)とを反応させて製造される。
本発明の方法は、下記工程(a)〜(d)を含む。
(a)下記一般式(I)で表される環状イミノエーテル化合物を重合溶媒中で開環重合して、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液を調製する工程。
Figure 0005374433
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表し、nは2又は3を表す。)
(b)前記工程(a)で得られた末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と分子鎖の末端及び/又は側鎖にアミノ基を有する変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合し反応させる工程。
(c)前記工程(b)で得られた反応物から、連続式乾燥機を用いて重合溶媒を除去する工程。
(d)前記工程(c)において、連続式乾燥機から最初に排出される反応物であって、該乾燥機の有効容量の0.3倍量以上の反応物を、取り除く工程。
[工程(a)]
工程(a)では、前記一般式(I)で表される環状イミノエーテル化合物を重合溶媒中で開環重合(リビング重合)して、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液を調製する。
前記一般式(I)におけるR1及びnは前記一般式(1)におけるR1及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
(環状イミノエーテル化合物の開環重合)
環状イミノエーテル化合物の開環重合に用いる重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を使用することができ、中でも酢酸エステル類が好適に使用される。
環状イミノエーテル化合物を重合溶媒に混合して得られる環状イミノエーテル化合物溶液中の水分濃度は、得られる重合体の分子量を制御する観点から、好ましく100mg/kg以下、より好ましくは90mg/kg以下、更に好ましくは60mg/kg以下である。一方、操作の効率性の観点から、好ましくは3mg/kg以上、より好ましくは5mg/kg以上、更に好ましくは10mg/kg以上である。
環状イミノエーテル化合物溶液中の水分量が多い場合には、脱水乾燥処理をすることが好ましい。脱水乾燥処理は、減圧条件下、又は脱水剤を用いて行うことが好ましい。設備負荷を軽減する観点から、脱水剤を用いて脱水することがより好ましい。脱水剤としては、モレキュラーシーブ、アルミナ、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、達成可能な水分濃度及び経済性の観点から、モレキュラーシーブが好ましい。
脱水時間を短縮する観点から、脱水温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下で行う。操作の効率性の観点から、脱水温度を5℃以上とすることが好ましい。
脱水剤は、環状イミノエーテル化合物溶液中に直接添加し撹拌後、脱水剤を除去してもよいが、操作性の観点から、脱水剤を充填したカラムに、上記環状イミノエーテル化合物溶液を通過させて脱水乾燥処理することが好ましい。また、環状イミノエーテル化合物溶液中の環状イミノエーテル化合物の濃度は、脱水時間を短縮する観点から、好ましくは33〜66質量%、より好ましくは50〜60質量%である。
環状イミノエーテル化合物の開環重合には、開始剤を用いることができる。開始剤としては、求電子反応性の強い化合物、例えば、ベンゼンスルホン酸アルキルエステル、p−トルエンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロ酢酸アルキルエステル、硫酸ジアルキルエステル等の強酸のアルキルエステルを使用することができ、中でも硫酸ジアルキルは、後述の工程(c)で用いる変性オルガノポリシロキサンの分子鎖末端及び/又は側鎖に導入されたアミノ基、好ましくは一級アミノ基をアンモニウムイオン(対イオンはアルキル硫酸イオン)となし、前記(iv)で表される連結基を形成し、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)と、変性オルガノポリシロキサンとを連結させるのに寄与することから、特に好適に使用される。開始剤の使用量は、通常、環状イミノエーテル化合物2〜100モルに対して、開始剤1モルである。
重合温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは70〜110℃、より更に好ましくは75〜100℃である。重合温度は、得られる重合体の分子量を制御する観点から、開始剤を添加した後に上記範囲にすることが好ましい。
重合時間は、重合温度等の反応条件により一様ではないが、通常1〜60時間であり、好ましくは2〜50時間であり、より好ましくは3〜30時間であり、更に好ましくは5〜15時間である。
前記一般式(I)で表される環状イミノエーテル化合物として、例えば、2−置換−2−オキサゾリンを用いれば、上記一般式(1)においてn=2のポリ(N−アシルエチレンイミン)が得られ、2−置換−ジヒドロ−2−オキサジンを用いれば、上記一般式(1)においてn=3のポリ(N−アシルプロピレンイミン)が得られる。
開環重合によって得られる末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)の数平均分子量は、好ましくは150〜50000、より好ましくは500〜10000である。得られるオルガノポリシロキサン化合物のエタノールへの溶解性を向上させる観点から150以上が好ましく、製造の容易さの観点から50000以下が好ましい。
一つの好ましい実施態様において、得られる重合体の分子量を制御する観点から、次の工程(b)の前に、前記末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液を冷却することが好ましい。末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液は、好ましくは70℃以下、より好ましくは10〜65℃、更に好ましくは20℃〜60℃まで冷却されることが好ましい。
[工程(b)]
工程(b)では、前記工程(a)で得られた末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と分子鎖の末端及び/又は側鎖にアミノ基を有する変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合し反応させる。
前記変性オルガノポリシロキサンは、特に限定されないが、好ましい具体例としては、下記一般式(II)で表される変性オルガノポリシロキサンである。
Figure 0005374433
(式中、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を表すか又は下式(vii)〜(xi)のいずれかで表される置換基を表し、R5は、下式(vii)〜(xi)のいずれかで表される置換基を表す。pは、2〜4000の整数を表し、qは、2〜150の整数を表す。)
Figure 0005374433
前記一般式(II)において、R2〜R4で表される炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基は、前記一般式(2)におけるR2〜R4で表される炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、p及びqは、前記一般式(2)におけるp及びqと同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式(vii)〜(xi)のいずれかで表される置換基のうち、上記式(vii)又は(viii)で表される基が好ましい。
前記変性オルガノポリシロキサンは任意の方法で製造することができる。また、市販品を使用することもできる。具体例としては、信越シリコーン(株)製KF−8015、KF−864、KF−8003、東レ・ダウコーニング(株)製BY16−898等が挙げられる(いずれも商品名)。
前記変性オルガノポリシロキサンは、有機溶媒に溶解して変性オルガノポリシロキサン溶液として用いられ、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒を使用することができ、中でも酢酸エステル類が好適に使用される。溶媒の分離や製造コストの観点から、前記工程(a)に用いられる重合溶媒と同じ溶媒を使用することが好ましい。
有機溶媒中の変性オルガノポリシロキサンの濃度は、脱水乾燥処理の効率化の観点から、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%に制御することが好ましい。
末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)は、末端に下記一般式(3)で表わされる反応性基を有しており、この活性点は、活性水素と反応し失活することがある。
Figure 0005374433
(式中、R1及びnは、前記一般式(1)におけるR1及びnと同義である。)
そのため、変性オルガノポリシロキサン溶液中の水分濃度は、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)の活性を維持する観点から、好ましく100mg/kg以下、より好ましくは90mg/kg以下、更に好ましくは60mg/kg以下である。一方、操作の効率性の観点から、好ましくは3mg/kg以上、より好ましくは5mg/kg以上、更に好ましくは10mg/kg以上である。
前記変性オルガノポリシロキサン溶液中の水分量が多い場合、脱水乾燥処理をすることが好ましく、前記工程(a)における環状イミノエーテル化合物溶液を脱水する方法と同様の方法で脱水することができる。具体的には、脱水乾燥処理は、設備負荷を軽減する観点から、脱水剤を用いて脱水することが好ましい。脱水剤としては、達成可能な水分濃度及び経済性の観点から、モレキュラーシーブが好ましい。脱水温度は、脱水時間を短縮する観点から40℃以下が好ましく、操作の効率性の観点から5℃以上が好ましい。脱水剤は変性オルガノポリシロキサン溶液中に直接添加し撹拌後、脱水剤を除去してもよいが、操作性の観点から、脱水剤を充填したカラムに、変性オルガノポリシロキサン溶液を通過させて脱水乾燥処理することが好ましい。
(連結反応)
末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と変性オルガノポリシロキサン溶液との反応温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは70〜110℃、より更に好ましくは75〜100℃である。反応温度は、得られる生成物の分子量を制御する観点から、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)と変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合した後に上記範囲にすることが好ましい。
反応時間は重合温度等の反応条件により一様ではないが、通常1〜60時間であり、好ましくは3〜30時間であり、より好ましくは5〜15時間である。
末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合し反応させた後の反応混合液中の水分濃度は、得られる重合体の分子量を制御する観点から、好ましくは150mg/kg以下、より好ましくは120mg/kg以下、更に好ましくは100mg/kg以下、より更に好ましくは80mg/kg以下に制御される。
[工程(c)]
工程(c)では、前記工程(b)で得られた反応物から、連続式乾燥機を用いて重合溶媒を除去する。
本明細書中、連続式乾燥機とは、原料供給口から乾燥物排出口に向かって、反応物を機械力により攪拌/移動させることによって、連続的に乾燥させることができる乾燥機を意味する。攪拌力を伴う乾燥であるので、反応物から重合溶媒を均一に除去させることができる。
連続式乾燥機の具体例として、特開平10−279690号公報に記載の二軸スクリューが挙げられる。当該二軸スクリューは、槽底より二軸のスクリュー上端までの空間を有効容積として有し、この有効容積の上部には、原料供給口から乾燥物排出口にかけて一様な空間が蒸発室として存在し、蒸発室の天井部には、減圧ラインにつながる脱気孔が設けられる。
目的物であるオルガノポリシロキサン化合物をパーソナルケアの分野で使用する場合には、溶剤臭が好まれないため極力残存する溶媒を除去することが望ましい。反応物からの溶媒の除去は、好ましくは120〜170℃、より好ましくは140〜160℃の条件下で行うことができる。また、溶媒を効率よく除去する観点から、減圧下で行うことが好ましい。
残存溶媒濃度は、残存溶媒臭を取り除く観点からは3000mg/kg以下であることが好ましく、さらに好ましくは2000mg/kg以下、特に好ましくは1000mg/kg以下である。
色相の悪化を防ぐために、乾燥は不活性気体雰囲気下で行うことが好ましい。
[工程(d)]
工程(d)では、前記工程(c)において、連続式乾燥機から最初に排出される反応物であって、該乾燥機の有効容量の0.3倍量以上の反応物を取り除く。
本明細書において、乾燥機の有効容量とは、乾燥機の内容積の中で供給原料、乾燥中の原料及び、乾燥物が通過する空間を合わせた容積を意味する。つまり、有効容量とは、実際に乾燥が行われる空間であり、気化した溶媒を排出する空間等は含まない。
取り除く量は、乾燥機の有効容量に対して0.3倍量以上であり、良好な色相の目的物を得る観点から、0.33倍量以上が好ましく、0.35倍量以上がより好ましい。一方、生産性の観点から、1.0倍量以下が好ましい。
前記連続式乾燥機を用いて溶媒を除去して得られる目的物は、色相が低下する場合がある。色相低下の原因を種々検討したところ、原料の切り替え時や、点検後の立ち上げ時に乾燥機に滞留した原料が、色相低下の原因であることが判明した。前記連続式乾燥機は、ピストンフロー式が多いので、原料が供給されないと、前の乾燥物が乾燥機に滞留してしまう。よって、原料の切り替え時や、点検後の立ち上げ時には、原料が乾燥機に滞留したままで、温度が安定するまで長時間高温状態に置かれることになる。そのため、滞留した原料は劣化を引き起こし、特に色相が悪くなったり、溶媒に不溶化することがあった。本発明は、特定量の反応物を取り除くことで、色相に優れた目的物が得られる。
(分子量の測定)
以下の実施例及び比較例において、オルガノポリシロキサンセグメントの質量比とは核磁気共鳴法(1H−NMR)から求めた値であり、また最終生成物の重量平均分子量は、計算値である。ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)の分子量は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求めた数平均分子量である。
測定条件
カラム:K−804L + K−804L(いずれも商品名、昭和電工(株)社製)
溶離液:1mmol/L ファーミンDM20(商品名、花王(株)製)/クロロホルム
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率計
サンプル:5mg/mL,100μL
標準ポリスチレン換算
(水分濃度の測定)
溶液中の水分濃度は、下記装置を用いて測定した。
装置:カールフィーシャー水分測定装置(商品名:CA−06、三菱化成(株)製)
陰極側試薬:アクアミクロンCK(商品名、三菱化成(株)製)
陽極側試薬:アクアミクロンAU(商品名、三菱化学(株)製):アクアミクロンCM(商品名、三菱化成(株)製)=20:80(容量%)
(色相の測定)
溶液中の色相は、下記装置を用いてJIS K 0071−2に準じて測定した。
装置:Lovibond COMPARATOR 300(商品名、株式会社離合社製)
サンプル:40%エタノール溶液
合成例1
2−エチル−2−オキサゾリン184.7kg(1.87kmol)と酢酸エチル444.6kgとを混合し、混合液をモレキュラーシーブ(商品名:ゼオラムA−4、東ソー(株)製)67kgで15時間脱水を行い、水分濃度を60mg/kgにした。
側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:KF−8003、信越シリコーン(株)製、重量平均分子量5万、アミン当量2000)535.5kg(含有アミノ基:0.27kmol)と酢酸エチル1041.5kgとを混合し、混合液をモレキュラーシーブ62kgで15時間脱水を行い、水分濃度を81mg/kgにした。
上記の脱水2−エチル−2−オキサゾリンの酢酸エチル溶液に硫酸ジエチル34.3kg(0.22kmol)を加え、窒素雰囲気下8時間、80℃で加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成した。GPCにより測定した数平均分子量は1300であった。
この溶液を30℃まで冷却後、上記の脱水したシリコーン溶液を一括して加え、12時間、80℃で加熱還流し、その後冷却し、N−プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体の酢酸エチル溶液2201kgを得た。一部を室温下で減圧濃縮しN−プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体として得た。オルガノポリシロキサンセグメントの質量比は0.69、重量平均分子量は7.2万であった。
実施例1
2軸スクリュー型連続乾燥機(株式会社栗本鐵工所製SCP−250、有効容量95L)を用いて、合成例1で得たN−プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体酢酸エチル溶液1170L(1100kg)を窒素下で脱溶媒を行った(条件 加熱温度160℃、圧力2.6kPa、回転数10rpm、原料の供給量100L/時)。原料供給から、50分後に乾燥機より製品の排出が開始した。排出開始から33L(有効容量の0.35倍、33kg)までのサンプルを廃棄し、残りのサンプルをエタノールに溶解し40質量%溶液とし、外観と、ガードナー比色計により色相を測定した。
比較例1
2軸スクリュー型連続乾燥機(SCP−250)を用いて、合成例1で得たN−プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体酢酸エチル溶液1100kgを実施例1と同じ条件で脱溶媒を行った。原料排出開始から終了までのサンプル全てをエタノールに溶解し40質量%溶液とし、外観と、ガードナー比色計により色相を測定した。
参考例1
比較例1で、排出開始から0.5時間後の製品を一部取りエタノールに溶解し40質量%溶液とし、外観と、ガードナー比色計により色相を測定した。
Figure 0005374433
表1の結果から明らかなように、排出された直後のサンプルを廃棄した場合、エタノールへの溶解性と色相に優れるオルガノポリシロキサンが得られた。一方、廃棄をせずに全てのサンプルを混ぜた場合、エタノールへの溶解性が低下し色相も悪化した。また、廃棄されたサンプルのみをエタノールに溶解すると、明らかにエタノールには不溶で色相も低下していた。
色相が良く、エタノールに均一に溶解するオルガノポリシロキサンを安定に提供することができる。

Claims (1)

  1. オルガノポリシロキサンのセグメントの末端及び/又は側鎖に、下記一般式(1)で表される繰返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントが結合してなるオルガノポリシロキサン化合物の製造方法であって、
    (a)下記一般式(I)で表される環状イミノエーテル化合物を開環重合して、末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液を調製する工程、
    (b)前記工程(a)で得られた末端反応性ポリ(N−アシルアルキレンイミン)溶液と変性オルガノポリシロキサン溶液とを混合し反応させる工程、
    (c)前記工程(b)で得られた反応物から、連続式乾燥機を用いて重合溶媒を除去する工程、
    (d)前記工程(c)において、連続式乾燥機から最初に排出される反応物であって、該乾燥機の有効容量の0.3倍量以上の反応物を、取り除く工程
    を含む、オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
    Figure 0005374433
    (前記一般式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表し、nは2又は3を表す。)
    Figure 0005374433
    (前記一般式(I)中、R1及びnは、前記一般式(1)におけるR1及びnと同義である。)
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