JP5374238B2 - 粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子の製造法 - Google Patents

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本発明は、種々の溶剤や粉体に容易に一次微粒子の状態で分散し、種々の熱可塑樹脂や熱硬化樹脂に一次微粒子の状態で均一に分散させることのできる、乾燥時粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子の製造法に関する。
シリコーンゴム微粒子の製造法としては、両末端ジビニルポリジメチルシリコーンとポリハイドロジェンメチルシリコーンからなる組成物を界面活性剤の存在下、水中に分散させ、触媒の存在下に硬化させて製造する方法が知られている(特許文献1及び2)。これらの方法によってシリコーンゴム微粒子は水分散体の状態では一次微粒子に分散した、粒子間融着のない微粒子を得ることができるが、水中より取り出し、乾燥して粉体とする時、粒子間の融着を起こし、凝集物(二次粒子)になるという問題があった。得られた凝集物はアトマイザーやジェットミルなどにより、ある程度の解砕は可能であるが、粒子が柔らかい弾性ゴム粒子であるため完全に一次微粒子にまで解砕することはできない。
このシリコーンゴム微粒子はエポキシ樹脂などの応力緩和剤、樹脂成型物、フィルムなどの光拡散剤、化粧品の伸展性、感触改良剤など様々な用途に使用されているが、その機能を充分に発揮させるためには一次微粒子のままで容易に分散する粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子であることが必要である。シリコーンゴム微粒子中に融着によって生成した凝集物が存在すると、樹脂などに混練した場合、均一に分散されず、得られた製品は不均一な凝集物を含んだ外観および性能の不具合品となったり、感触や伸展性の改良のため、化粧品等に添加された場合、滑らかで感触のよい化粧品を得ることが出来ない。
従来凝集や融着がなく、流動性のよいシリコーンゴム微粒子として、無機系微粒子で被覆したもの(特許文献3、4)、ポリオルガノシロキサン樹脂で被覆したもの(特許文献5)などが提案されているが、シリコーンゴム成分のみよりなる粒子間融着のない微粒子の製造については記載されていない。
特開昭63−77942号公報 特開昭63−309565号公報 特開平4−348143号公報 特開2006−1888592号公報 特開平7−196815号公報
本発明の課題は、柔らかく、粒子間の融着を起こしやすく、物理的な解砕、粉砕も困難なシリコーンゴム微粒子の表面を化学処理して、融着や凝集物のないシリコーンゴム微粒子の製造法を提供することにある。
本発明においては、水溶剤中でシリコーンゴム微粒子を硬化させた後、硬化微粒子分散液、あるいはろ過などにより分離して取出した湿粉にシラン系封止剤を加え、塩基性物質で処理し、白金触媒によりシリルヒドロ基が加水分解されて副生したシラノール基を封止することにより、固液分離後乾燥中、あるいは固液分離することなく直接スプレイドライなどによる乾燥中に粒子間のシラノール基の縮合反応による融着を防ぎ、粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子得ることに成功した。
本発明は弾性があり、滑らかな進展性を備えたシリコーンゴム微粒子、例えば体積平均粒子径1〜100μmのシリコーンゴム微粒子でありながら、乾燥時も粒子間融着ないシリコーンゴム微粒子を工業的有利に製造する方法である。
本発明は、先ず両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリハイドロジェンジメチルシリコーンを、白金系触媒により硬化させて得られるシリコーンゴム微粒子の水分散液にシラン系封止剤を添加し、塩基性物質を加えて塩基性とした後、分離、乾燥して製造する粒子間融着による凝集物のないシリコーンゴム微粒子の製造である。
本発明で使用する両末端ジビニルポリジメチルシロキサンはシリコーンゴム微粒子を構成する組成の主成分である。両末端ジビニルジメチルシロキサンは分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合したビニル基を有する化合物である。ビニル基は、例えばビニル基、アリル基等の低級(C2〜3)アルケニル基があげられる。
ポリビニルジメチルシロキサンの粘度は100〜5000センチポイズに相当する分子量のものが使用でき、粘度の高いものほど柔らかいゴム粒子が得られる。本発明においては、100〜600センチポイズのものが最適に使用でき、その場合ゴム弾性を持った微粒子として取り扱い可能なゴム微粒子が得られる。粘度が5000センチポイズを超えるものは柔らかいゲル状質となるめ、粒子としての形状の維持が困難となる。粘度が100センチポイズに満たない場合は、得られるゴム状粒子の弾性が低下し、物理的特性上の不都合が起こる。
本発明で使用されるポリメチルハイドロジェンシロキサンは白金系触媒によりCH=CH−Si基と付加反応する珪素原子に結合した水素原子、すなわちSiH基を含有する化合物であり、シリコーンゴムを形成する架橋剤である。従って分子中に少なくとも2個以上のSiH基を有するものが使用される。ポリメチルハイドロジェンシロキサンとしてはトリメチルシロキシ基両末端メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基両末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンなどが使用でき、その粘度10〜100センチポイズのものが最適に使用できる。良好なゴム弾生物を得るためには、両末端ジビニルポリジメチルシロキサン中のビニル基に対するポリメチルハイドロジェンシロキサン中のハイドロジェンシロキシ基、即ちSiH基の比が通常1:0.5〜10、好ましくは1:1.0〜3.0となるように反応原料を仕込む。それよりハイドロジェンシロキシ基が少ない比率で反応させるとゴム微粒子は得難く、多いと微粒子の物理的特性が低下する。
本発明で使用される界面活性剤は両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンを混合、溶解後、水を注入し、ホモディスパー、ホモジナイザーやコロイドミルなどにより乳化する際、目的の液滴径を安定に得るためと、硬化反応中の融着、凝集を防ぐために添加される。界面活性剤の種類としては、硬化反応触媒に悪影響を及ぼさない、例えばポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのノニオン系活性剤の使用が好ましく、HLBが10〜14の界面活性剤が好適に用いられる。
界面活性剤の使用量は両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンの合計量に対し通常0.5〜10wt%、好ましくは1.0〜5wt%であり、目的の粒子径、硬化反応時の安定性などを考慮して決められる。
本発明における乳液の液滴の大きさの調節は、乳液の撹拌条件や界面活性剤の使用量により調整することができる。この液滴の大きさの調節により、目的の平均粒子径を有するシリコーンゴム微粒子を製造することができる。本発明のシリコーンゴム微粒子の平均粒子径は、1〜100μm程度のものである。
本発明で使用される硬化触媒としては白金系触媒が使用される。通常塩化白金酸が使われ、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液、白金と1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン等との錯体触媒が使用されるがそれらのトルエン溶液が最適である。
白金系触媒の使用量は、シリコーン成分量に対して白金として5〜50ppm、好ましくは10〜20ppmである。
白金系触媒の添加はシリコーン成分を水中に分散した後、分散液を攪拌しながら滴下するのが好ましい。
本発明で粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子を得るために添加される、副生、残存シラノール基と反応させるシラン系封止剤はシリコーンゴム微粒子の硬化反応後に加える。シラン系封止剤を添加する前に、できるだけ該硬化反応を進行させておくことが好ましい。
シラン系封止剤としては、例えばトリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシランなどのトリアルキルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンなどの単官能性のシラン系封止防止剤があげられる。
シラン系封止防止剤を添加した後、塩基性物質を添加し、反応液のpHを8〜12、好ましくは9〜11に調節することにより、残存シラノール基の加水分解縮合反応を完結させる。塩基性物質としては、加水分解縮合反応の触媒として作用する例えば水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、ジエチルアミンのようなアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような四級アンモニュウム塩、アンモニア水溶液などが挙げられる。それらの中で好ましいものはアンモニア水である。
得られたシリコーンゴム微粒子の分散液から微粒子を分離、洗浄し、乾燥することにより、物理的な解砕をすることなく、粒子間融着による凝集物のない、シリコーンゴム微粒子を得ることが出来る。
シリコーンゴム微粒子分散液より、シリコーンゴム微粒子の分離は、遠心分離機、デカンターなどの通常の固液分離機を用いて微粒子を湿粉として取り出すことが出来る。特にシラン系封止剤で処理しているため、この操作をよりスムーズに行うことが出来る。
洗浄は、分離操作に引き続いて、微粒子に対して2〜3倍の水量でリンスすることにより、付着した界面活性剤や触媒を取り除くことができる。
乾燥は、通常の乾燥機である常圧あるいは減圧棚段乾燥機、攪拌型減圧乾燥機で乾燥できる。
さらに微粒子の洗浄による界面活性剤等の除去が不要の場合、微粒子の分散液より微粒子を分離することなく、直接スプレイドライ乾燥機にかけ、シリコーンゴム微粒子の粉体として取り出すことができる。
本発明によれば、水性乳液中で、シリコーンゴム微粒子の硬化後、硬化微粒子分散液に、シラン系封止剤を加え、常温あるいは加熱し、塩基性物質で処理して、シラノール基を封止した後、遠心分離機により、ろ過、水洗して取出した湿粉を加熱、乾燥することにより、凝集性があるために粒子間の融着を起こしやすく、物理的な解砕、粉砕が困難なシリコーンゴム微粒子を凝集物のない製品として製造することができる。
以下に実施例、比較例および試験例をあげて本発明を具体的に説明する。
実施例中のシリコーンゴム微粒子の平均粒子径はベックマン−コールター社のコールターマルチサイザーIIIで測定した体積平均粒子径である。
セパラブルフラスコに両末端ジビニルポリジメチルシロキサン(分子量10000、粘度230mm/s、Si結合ビニル基含有量0.5wt)98部、ポリメチルハイドジェンシロキサン2部(分子量2000、粘度25mm/s、Si結合水素含有量1.5wt%)を仕込み、10分間攪拌、混合した。ついでホモミキサーにより、8000rpmの回転攪拌下、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3.5部(HLB 13.8)とイオン交換水120部の溶解液を滴下し、20分間の乳化を行った後、イオン交換水550部を低速攪拌下、滴下して溶解した。この乳化液に0.45wt%(白金含有量)白金錯体触媒トルエン溶液1.8mLのポリオキシエチレンラウリルエーテルによる乳化液を滴下し、室温下で攪拌した後、70℃に昇温し、3時間の硬化反応を行った。得られた微粒子分散液を室温に冷却し、トリメチルメトキシシラン2部を滴下した後、3%アンモニア水20mLを加え、30分間の攪拌を行った。ヌッチェによるろ過、洗浄後、110℃で乾燥し、体積平均粒子径8μmのシリコーンゴム微粒子98gを得た。得られた粒子は粒子間の融着は全く認められなかった。
セパラブルフラスコに両末端ジビニルポリジメチルシロキサン(分子量19000、粘度600mm/s、Si結合ビニル基含有量0.35wt)98部、ポリメチルハイドジェンシロキサン(分子量2000、粘度25mm/s、Si結合水素含有量1.5wt%)2部を仕込み、攪拌、混合した。ついでホモミキサーにより、6000rpmの回転攪拌下、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB 13.8)3.5部とイオン交換水120部の溶解液を滴下し、20分間の乳化を行った後、イオン交換水550部を低速攪拌下、滴下して溶解した。この乳化液に0.45%(白金含有量)白金触媒トルエン溶液1.8mLのポリオキシエチレンラウリルエーテルによる乳化液を滴下し、室温攪拌後、70℃に昇温し、3時間の硬化反応を行った。得られた微粒子分散液を室温に冷却し、ヘキサメチルシラザン2.5部を滴下した後、3%アンモニア水20mLを加え、30分間の攪拌を行った。ヌッチェによるろ過、洗浄後、110℃で乾燥し、体積平均粒子径12μmのシリコーンゴム微粒子98gを得た。得られた粒子は粒子間の融着は全く認められなかった。
[比較例1]
トリメチルメトキシシラン、アンモニア水の添加を行わなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、シリコーンゴム微粒子を得たが、融着が強く、解砕によっても一次微粒子にほぐれた製品を得ることは出来なかった。
[比較例2]
ヘキサメチルシラザン、アンモニア水の添加を行わなかった以外は実施例2と同様の操作を行い、シリコーンゴム微粒子を得たが、融着がかなり強く、解砕によっても一次微粒子にほぐれた製品を得ることは出来なかった。
〔試験例1〕
粒子間融着による凝集物量の評価を行うため、実施例1、2および比較例1、2で得られたシリコーンゴム微粒子、各5gを50mLエタノールに分散させ、200メッシュ篩いで篩過した。実施例1、2ではいずれも篩過残が0.2重量%以下であったが、比較例1では50重量%が、比較例2では80重量%が篩過残分となった。
本発明の粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子は、樹脂の応力緩和などの改質剤、樹脂、フィルムなどの光拡散剤、化粧品の伸展性、感触改良剤などさまざまな用途に好適に使用することができる。

Claims (1)

  1. 両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンを、両末端ジビニルポリジメチルシロキサン中のビニル基の数に対するポリメチルハイドロジェンシロキサン中のハイドロジェンシロキシ基の数の比が1:0.5〜10となる量比で仕込んだ混合液を界面活性剤の存在下、水中で乳化させ、白金系錯体触媒を添加して硬化させて体積平均粒子径1〜100μmの微粒子を形成させた後、反応液スラリーあるいはろ過した湿粉にシラン系封止剤と塩基性物質を添加する粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子の製造法。
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