JP5415154B2 - 粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子の製造法 - Google Patents

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本発明は、種々の溶剤や粉体に容易に一次微粒子の状態に分散し、種々の熱可塑樹脂や熱硬化樹脂に一次微粒子の状態で均一に分散することのできる、乾燥時粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子の製造法に関する。
シリコーンゴム微粒子の製造法としては、両末端ジビニルポリジメチルシリコーンとポリハイドロジェンメチルシリコーンからなる硬化性シリコーンゴム組成物を界面活性剤の存在下、水中に分散させ、触媒の存在下に硬化させて製造する方法が知られている(特許文献1及び2)。これらの方法によってシリコーンゴム微粒子は水分散体の状態では完全に一次微粒子に分散した、粒子間融着のない微粒子を得ることができるが、水中より取り出し、乾燥して粉体とする時、粒子間の融着を起こし、凝集物(二次粒子)になるという問題があった。得られた凝集物はアトマイザーやジェットミルなどにより、ある程度の解砕は可能であるが、柔らかい弾性ゴム粒子であるため完全に一次微粒子にまで解砕することはできない。
このシリコーンゴム微粒子はエポキシ樹脂などの応力緩和剤、樹脂成型物、フィルムなどの光拡散剤、化粧品の伸展性、感触改良剤など様々な用途に使用されているが、その機能を充分に発揮させるためには一次微粒子のままで容易に分散する粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子であることが必要である。シリコーンゴム微粒子中に融着によって生成した凝集物が存在すると、樹脂などに混練した場合、均一に分散されず、得られた製品は不均一な凝集物を含んだ外観および性能の不具合品となったり、感触や伸展性の改良のため、化粧品等に添加された場合、滑らかで感触のよい化粧品を得ることが出来ない。
従来凝集や融着がなく、流動性のよいシリコーンゴム微粒子として、無機系微粒子で被覆したもの(特許文献3、4)、ポリオルガノシロキサン樹脂で被覆したもの(特許文献5)などが提案されているが、シリコーンゴム成分のみよりなる乾燥時粒子間融着のない微粒子の製造については記載されていない。
特開昭63−77942号公報 特開昭63−309565号公報 特開平4−348143号公報 特開2006−1888592号公報 特開平7−196815号公報
本発明の課題は、柔らかく、凝集性があるため、粒子間の融着を起こしやすく、物理的な解砕、粉砕も困難なシリコーンゴム微粒子の表面を化学処理して、乾燥時融着や凝集物のないシリコーンゴム微粒子の製造法を提供することにある。
本発明においては、水溶剤中でシリコーンゴム微粒子の硬化反応後、硬化微粒子分散液、あるいはろ過などにより分離して取出した湿粉に、塩基性物質を添加し、常温あるいは加熱処理して、白金触媒によりシリルヒドロ基が加水分解され、副生したシラノール基の粒子内縮合反応を行うことにより、ろ過した湿粉の乾燥中、あるいは固液分離することなく直接スプレイドライなどによる乾燥中の粒子間のシラノール基の縮合反応による融着を防ぎ、粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子得ることに成功した。
本発明は弾性があり、滑らかな進展性を備えた体積平均粒子径が例えば1〜100μm程度のシリコーンゴム微粒子でありながら、乾燥時粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子を工業的有利に製造する方法である。
本発明で使用されるシリコーンゴム微粒子は両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリハイドロジェンジメチルシリコーンの両シロキサン原料を含む乳化液を、例えば白金触媒により硬化させたシリコーンゴム微粒子の水分散液にアルカリ性物質を添加し、塩基性とし、シリコーンゴム微粒子中に副生、残存するシラノール基を粒子内で充分に縮合反応させた後、分離、乾燥して製造する。この処理により、乾燥時粒子間融着による凝集物のほとんどないシリコーンゴム微粒子を簡単且つ工業的有利に製造することができる。
本発明で使用される両末端ジビニルポリジメチルシロキサンはシリコーンゴムを構成する組成の主成分である。この主成分である両末端ジビニルポリジメチルシロキサンは、分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合したC2〜3の低級アルケニル基、即ち末端ビニル含有基である。ビニル含有基としては、例えばビニル基、アリル基等がある。
ジビニルポリジメチルシロキサンの粘度は100〜5000センチポイズの分子量のものが使用できる。粘度の高いものほど柔らかいゴム微粒子が得られるが、粘度100〜600センチポイズのものが最適に使用でき、適当なゴム弾性を持った微粒子として取り扱い可能なゴム微粒子が得られる。粘度が5000センチポイズを超えると生成物は柔らかいゲル状物質となるめ、粒子としての形状の維持が困難となる。
本発明で使用されるポリメチルハイドロジェンシロキサンは白金系触媒によりCH=CH−Si基と付加反応する珪素原子に結合した水素原子、すなわちSiH基を含有する化合物であり、シリコーンゴムを形成する架橋剤である。分子中に少なくとも2個以上のSiH基を有するものが使用される。ポリメチルハイドロジェンシロキサンとしては、トリメチルシロキシ基両末端メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基両末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンなどが使用でき、粘度10〜100センチポイズのものが最適に使用できる。良好なゴム弾生物を得るためには、両末端ジビニルポリジメチルシロキサン中のビニル基に対するポリメチルハイドロジェンシロキサンの珪素原子結合水素原子の比が、通常1:0.5〜10、好ましくは1:1.0〜3.0となるような量比で二つの原料を仕込むのがよい。
ポリメチルハイドロジェンシロキサンの仕込み量が、その比に満たないとゴム微粒子は得難く、多すぎると弾力性などのゴム微粒子の物理的特性が低下する。
本発明で使用される界面活性剤は両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンを混合、溶解した後、水を注入し、ホモディスパー、ホモジナイザーやコロイドミルなどにより乳化する際、乳液中の液滴径を安定にするためと、硬化反応中の融着、凝集を防ぐために添加される。界面活性剤としては、硬化反応触媒に悪影響を及ぼさない、例えばポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのノニオン系活性剤の使用が好ましく、HLBが10〜14の界面活性剤が好適に用いられる。
界面活性剤の使用量は両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンの合計量に対し0.5〜10重量%、好ましくは1.0〜5重量%であり、目的の粒子径、硬化反応時の安定性などを考慮して決められる。
乳液の液滴の調節は、乳液の撹拌条件や界面活性剤の使用量により調整することができる。この液滴の大きさの調節により、目的の平均粒子径を有するシリコーンゴム微粒子を製造することができる。
本発明で使用される硬化触媒は白金系触媒が使用される。通常塩化白金酸が使われ、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液、白金と1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン等との錯体触媒が使用されるがそれらのトルエン溶液が最適である。
白金系触媒の使用量は、原料シリコーン成分量に対して、白金として通常5〜50ppm、好ましくは10〜20ppmである。
白金触媒の添加はシリコーン硬化成分を水中に分散した後、分散液を攪拌しながら滴下するのが好ましい。
本発明で硬化反応後、副生、残存する粒子内シラノール基間の縮合反応を促進させる触媒として塩基性物質が用いられる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、ジエチルアミンのようなアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような四級アンモニュウム塩あるいはそれらの水溶液、アンモニア水などが挙げられる。それらの中でも好ましいものはアンモニア水である。塩基性物質は、ゴム粒子分散液のpHが8〜12、好ましくは9〜11となる量添加する。塩基性物質を添加後、10分〜3時間、好ましくは20分〜2時間、好ましくは40〜85℃に加熱しながら撹拌することにより、残存シラノール基の粒子内縮合反応をほぼ完結させ、粒子間縮合反応による粒子間癒着のない微粒子を得ることができる。
得られたシリコーンゴム微粒子の分散液から微粒子を分離、洗浄し、乾燥することにより、機械的な解砕をすることなく、乾燥時粒子間融着による凝集物の少ない、シリコーンゴム微粒子を得ることが出来る。
上記シリコーンゴム微粒子分散液より、シリコーンゴム微粒子の分離は、遠心分離機、デカンター等、通常の固液分離機を用いて微粒子の湿粉として取り出すことができる。特にアルカリ性物質で処理しているため、この操作をスムースに行える。
洗浄は、分離操作に引き続いて、微粒子に対して2〜3倍の水量でリンスすることにより、付着した界面活性剤や触媒を取り除くことができる。
乾燥は、通常の乾燥機である常圧あるいは減圧棚段乾燥機、攪拌型減圧乾燥機で乾燥できる。
さらに微粒子の洗浄による界面活性剤等の除去が不要の場合、微粒子の分散液より微粒子を分離することなく、直接スプレイドライ乾燥機にかけ、シリコーンゴム微粒子の粉体として取り出すことができる。得られるシリコーンゴム微粒子の平均粒子径は1〜100μm程度の微粒子である。
本発明によれば、水性乳液中で、シリコーンゴム微粒子の硬化後、硬化微粒子分散液に、塩基性物質を添加し、常温あるいは加熱処理して、粒子内でシラノール基を縮合させ、遠心分離機により、ろ過、水洗して、取出した湿粉を乾燥することにより、従来凝集性があるために粒子間の融着を起こしやすく、物理的な解砕、粉砕が困難なシリコーンゴム微粒子を、乾燥時も粒子間融着のない一次微粒子のままの製品として製造することができる。
以下に実施例、比較例および試験例をあげて本発明を具体的に説明する。実施例中のシリコーンゴム微粒子の平均粒子径はベックマン−コールター社のコールターマルチサイザーIIIで測定した体積平均粒子径である。
セパラブルフラスコに両末端ジビニルポリジメチルシロキサン(分子量10000、粘度230mm/s、Si結合ビニル基含有量0.5wt)98部、ポリメチルハイドジェンシロキサン2部、(分子量2000、粘度25mm/s、Si結合水素含有量1.5wt%)を仕込み、10分間攪拌、混合した。ついでホモミキサーにより、8000rpmの回転攪拌下、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3.5部(HLB 13.8)とイオン交換水120部の溶解液を滴下し、20分間の乳化を行った後、イオン交換水550部を低速攪拌下、滴下して溶解した。この乳化液に0.45wt%(白金含有量)白金錯体触媒トルエン溶液1.8mLのポリオキシエチレンラウリルエーテルによる乳化液を滴下し、室温下に攪拌した後、70℃に昇温し、3時間の硬化反応を行った。得られた微粒子分散液を室温に冷却し、3%アンモニア水20mLを加え、70℃、1時間の攪拌処理を行った。冷却後、ヌッチェによるろ過、洗浄後、110℃で乾燥し、体積平均粒子径8μmのシリコーンゴム微粒子98gを得た。得られた粒子は乾燥後も粒子間の融着はほとんど認められなかった。
セパラブルフラスコに両末端ジビニルポリジメチルシロキサン(分子量19000、粘度600mm/s、Si結合ビニル基含有量0.35wt)98部、ポリメチルハイドジェンシロキサン(分子量2000、粘度25mm/s、Si結合水素含有量1.5wt%)2部を仕込み、攪拌、混合した。ついでホモミキサーにより、6000rpmの回転攪拌下、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB 13.8)3.5部とイオン交換水120部の溶解液を滴下し、20分間の乳化を行った後、イオン交換水550部を低速攪拌下、滴下して溶解した。この乳化液に0.45%(白金含有量)白金触媒トルエン溶液1.8mLのポリオキシエチレンラウリルエーテルによる乳化液を滴下し、室温攪拌後、70℃に昇温し、3時間の硬化反応を行った。得られた微粒子分散液を室温に冷却したのち、3%アンモニア水20mLを加え、70℃、1時間の攪拌処理を行った。冷却後ヌッチェによるろ過、洗浄後、110℃で乾燥し、体積平均粒子径12μmのシリコーンゴム微粒子98gを得た。得られた粒子は乾燥後も粒子間の融着は全く認められなかった。
[比較例1]
アンモニア水の添加を行わなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、シリコーンゴム微粒子を得たが、融着が強く、解砕によっても一次微粒子にほぐれた製品を得ることは出来なかった。
[比較例2]
アンモニア水の添加を行わなかった以外は実施例2と同様の操作を行い、シリコーンゴム微粒子を得たが、融着がかなり強く、解砕によっても一次微粒子にほぐれた製品を得ることは出来なかった。
[試験例1]
粒子間融着による凝集物量の評価を行うため、実施例1、2および比較例1、2で得られたシリコーンゴム微粒子、各5gを50mLエタノールに分散させ、200メッシュ篩いで篩過した。実施例1、2では、篩過残渣はいずれも5重量%未満であったが、比較例1では50重量%が、比較例2では80重量%が篩過残分となった。
本発明の粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子は、樹脂の応力緩和などの改質剤、樹脂、フィルムなどの光拡散剤、化粧品の伸展性、感触改良剤などさまざまな用途に好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. 両末端ジビニルポリジメチルシロキサンとポリメチルハイドロジェンシロキサンのシロキサン混合液を界面活性剤の存在下、水中で乳化させ、白金系錯体触媒を添加して硬化させた後、反応液スラリーあるいはろ過した湿粉にアンモニア水を添加して撹拌処理後乾燥する粒子間融着のないシリコーンゴム微粒子粉体の製造法。
  2. 両末端ジビニルポリジメチルシロキサン中のビニル基の数に対するポリメチルハイドロジェンシロキサンの珪素原子結合水素原子の数の比が、1:0.5〜10となる量比でシロキサン原料を仕込む請求項1記載の製造法。
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