JP5371807B2 - 非接触型シールリングおよびこれを用いた軸封装置 - Google Patents

非接触型シールリングおよびこれを用いた軸封装置 Download PDF

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Description

本発明は、加圧水型原子力発電システムの内部に配置される、非接触型シールリングおよびこれを用いた一次冷却材ポンプ等の軸封装置に関するものである。
従来、加圧水型原子力発電システムの内部に配置される一次冷却材ポンプ等の軸封装置には、セラミックスからなる非接触型シールリングが用いられている。
図3は、特許文献1で提案された軸封装置である一次冷却材ポンプを示す一部切欠斜視図である。また、図4は、一次冷却材ポンプに用いられている非接触型シールリングの構成を示す部分断面図である。
図3に示す軸封装置である一次冷却材ポンプ100の構成は、モータ101と、回転軸102と
、インペラ103とを含み、回転軸102には非接触型シールリング104が用いられている。こ
の一次冷却材ポンプ100は、モータ101が駆動されると回転軸102を介して動力が伝達され
、インペラ103が回転して冷却水が供給されるものである。この冷却水には、ホウ素の高
い中性子吸収能力を利用してホウ酸を溶かしたものが用いられており、このホウ酸は、濃度を変化させることによって、加圧水型原子力発電システムの起動や停止、出力の増減などに用いられている。
そして、非接触型シールリング104は、図4に示すように、シールランナ105およびシールリング106を含み構成される。シールランナ105およびシールリング106は、スチール製
の環状部材からなり、その一方の端部にフェースプレート107,108が設置されてシール面が形成されている。シールランナ105は、回転軸102に嵌め込まれて固定設置されている。一方、シールリング106は、シールランナ105のシール面に対向するように、回転軸102に
嵌め込まれて回転軸102に対して軸方向にスライド可能に設置されている。そして、シー
ルリング106のシール面には傾斜面が形成されており、シール面間の隙間が流路に沿って
徐々に狭まるように構成されている。なお、この隙間がシール水の流路となり、この隙間を調整することによって、流量が一定に維持されるようになっている。
そして、特許文献1においては、フェースプレート107,108がセラミックスからなり、かつ、シール水が流通してフェースプレート107,108の表面に電荷が蓄積することにより、電荷同士の反発力によって生ずるフェースプレート107,108の変形を抑制する変形抑制構造を有する非接触型シールリング104が提案されており、フェースプレート107,108を
構成するセラミックスとしては、具体的に窒化珪素,ジルコニア,炭化ホウ素もしくは炭化珪素のうち少なくとも1つを含むセラミックスからなることが記載されている。
特開2006−70989号公報
しかしながら、特許文献1で提案された非接触型シールリング104は、シール水が流通
してフェースプレート107,108の表面に電荷が蓄積することにより、電荷同士の反発力によって生ずるフェースプレート107,108の変形をある程度抑制することができるものの、加圧水型原子力発電システムに用いられる一次冷却材ポンプ100には、更なる安全性が求
められていることから、フェースプレート107,108を構成するセラミックスの剛性を高めて、変形をさらに抑制しなければならなかった。
また、インペラ103の回転に伴って回転するフェースプレート107を構成するセラミックスの焼結助剤として酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを用いており、粒界相に酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムが多くまれているときには、高流速のホウ酸を含むシール水により、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムが流出しやすく、その結果、粒界の密度が低下して、フェースプレート107の剛性が低下するという問題があった。
このように、セラミックスの焼結助剤の成分および構成比率によっては剛性を高めることができないため、セラミックスの剛性を高めることのできる焼結助剤の成分および構成比率を見出さなければならないという課題があった。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、変形が少なく、流量を一定に維持することのできる信頼性の高い非接触型シールリングおよび軸封装置を提供することを目的とするものである。
本発明の非接触型シールリングは、固定環と回転環とからなり、流体が供給される隙間を介してそれぞれの端面が対向して配置されてなる非接触型シールリングであって、前記回転環は、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、該セラミックスは、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、前記酸化アルミニウム,前記酸化マグネシウムおよび前記酸化カルシウムの合計100質量%に対して、前
記酸化アルミニウムおよび前記酸化マグネシウムの含有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、前記窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)であることを特徴とするものである。
また、本発明の非接触型シールリングは、上記構成において、前記酸化マグネシウムの一部が前記酸化アルミニウムと化合していることを特徴とするものである。
また、本発明の非接触型シールリングは、上記いずれかの構成において、固定環は、前記セラミックスからなることを特徴とするものである。
また、本発明の非接触型シールリングは、上記いずれかの構成において、各端面の気孔の面積占有率が3%以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の軸封装置は、上記いずれかの構成の非接触型シールリングを用いたことを特徴とするものである。
本発明の非接触型シールリングによれば、固定環と回転環とからなり、流体が供給される隙間を介してそれぞれの端面が対向して配置されてなる非接触型シールリングであって、前記回転環は、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、該セラミックスは、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、前記酸化アルミニウム,前記酸化マグネシウムおよび前記酸化カルシウムの合計100質量%に対し
て、前記酸化アルミニウムおよび前記酸化マグネシウムの含有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、前記窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)であることから、結晶粒子が異常に粒成長することが少なく、結晶粒径のばらつきが小さくなることと併
せて、セラミックスのかさ密度が高くなり、剛性が高くなるので、回転環の変形を抑制することができる。
また、本発明の非接触型シールリングによれば、前記酸化マグネシウムの一部が前記酸化アルミニウムと化合しているときには、軸封装置である一次冷却材ポンプに用いられる流体がホウ酸を含む水であっても、水と反応しやすい酸化マグネシウムの一部は、水と反応しにくい酸化アルミニウムの一部と化合しているので、流出する酸化マグネシウムの量が抑制されるため、水と反応して水酸化マグネシウムとなる量も減少し、流体のホウ酸の濃度を変動させるおそれが少なくなる。
また、本発明の非接触型シールリングによれば、前記固定環は、前記セラミックスからなるときには、上述した作用と同様の作用により、固定環を変形しにくくすることができる。また、固定環と回転環とを全く同じ組成とすれば、同じ工程で作製することが可能となり、製造コストを抑えることができる。
また、本発明の非接触型シールリングによれば、前記各端面の気孔の面積占有率が3%以下であるときには、機械的特性の低下や流量の維持に影響を及ぼすおそれのある破壊源が減少するため、機械的特性や流量を長期期間にわたって維持することができる。
また、本発明の軸封装置によれば、本発明の非接触型シールリングを用いたことから、信頼性に優れ、さらに安全性を高めることができる。
本発明の非接触型シールリングを用いた軸封装置の実施の形態の一例を示す一部切欠斜視図である。 本発明の非接触型シールリングの実施の形態の一例を示す部分断面図である。 従来の軸封装置を示す一部切欠斜視図である。 従来の非接触型シールリングの構成を示す部分断面図である。
以下、本発明の非接触型シールリングおよびこれを用いた軸封装置の実施の形態の例について説明する。
図1は、本発明の非接触型シールリングを用いた軸封装置の実施の形態の一例を示す一部切欠斜視図であり、図2は、本発明の非接触型シールリングの実施の形態の一例を示す部分断面図である。
図1に示す軸封装置である一次冷却材ポンプ8の構成は、モータ9と、回転軸6と、インペラ10とを含み、回転軸6には非接触型シールリング1が用いられている。この一次冷却材ポンプ8は、モータ9が駆動されると回転軸6を介して動力が伝達され、インペラ10が回転して冷却水が供給されるものである。
そして、本発明における非接触型シールリング1は、図2に示す固定環2と回転環3とを指し、流体Fが供給される隙間Sを介してそれぞれの端面2a,3aが対向して配置されてなるものである。
固定環2は、回転軸6に対して軸方向にスライド可能に設置されて、枠体4に固定された固定環保持部材5に取り付けられてなり、例えば、外径が300mm以上400mm以下であり、内径が200mm以上240mm以下であり、厚みが50mm以上70mm以下の環状体である
。一方、回転環3は、回転軸6に固定された回転環保持部材7に取り付けられてなり、回転軸6の回転とともに回転するように設置されている。この回転環3は、例えば、外径が300mm以上400mm以下であり、内径が200mm以上240mm以下であり、厚みが50mm以上70mm以下の環状体である。また、隙間Sは流体Fの流路であり、固定環2の端面2aには傾斜が形成され、隙間Sは流路に沿って徐々に狭まるように構成されており、この隙間Sの間隔は、例えば10μm以上20μm以下である。
そして、高流速の流体Fが隙間Sに供給されると、傾斜が形成された端面2aに当たり、揚力が発生して固定環保持部材5に取り付けられた固定環2は回転軸6の軸方向に押し上げられる。しかしながら、隙間Sが大きくなると、揚力は小さくなる一方、固定環2の背面からの背圧力が大きくなって、回転環3側へ押し下げられて隙間Sは小さくなる。そして、このような揚力および背圧力のバランスによって隙間Sの間隔は調整され、流体Fが隙間Sを通過する流量(リーク量)が一定に維持されるようになっている。
そして、本発明の非接触型シールリング1において、回転環3は、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、該セラミックスは、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に対して、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの含
有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)であることが重要である。
このように、窒化珪素の含有量と平均結晶粒径とを調整し、さらには、焼結助剤の成分および構成比率を調整することによって、結晶粒子が異常に粒成長することが少なく、結晶粒径のばらつきが小さくなることと併せて、セラミックスのかさ密度が高くなり、剛性が高くなるので、回転環3の変形を抑制することができる。
ここで、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスで回転環3を形成したのは、窒化珪素の含有量が81.8質量%未満では、回転環3に要求される特性の一つである剛性が不足するからである。また、窒化珪素の含有量が81.8質量%未満であって、例えば蒸気圧の高いアルカリ金属酸化物が多く含まれているような場合には、流体Fの温度が高いと、流体Fのホウ酸の濃度を変動させるおそれが高くなるからである。そのため、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスで回転環3を形成することにより、蒸気圧の高いアルカリ金属酸化物の含まれる量は少なくなるので、流体Fの温度が高くても、流体Fのホウ素の濃度を変動させるおそれは著しく少なくなり、アルカリ金属酸化物の溶出に伴って発生する気孔自体が減少するため、環状体3の剛性を高めることができる。なお、窒化珪素の含有量に上限を設けていないが、焼結助剤の含有量が少なすぎると焼結させることが困難となるため、少なくとも焼結助剤は3%以上含有することとする。
そして、焼結助剤である酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの含有量を調整することにより、回転環3の剛性を高められることを突き止めたのである。
つまり、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの含有量がそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであることにより、窒化珪素を主成分とするセラミックスのかさ密度を上げることができる。これに対し、酸化アルミニウムの含有量が12質量%未満では、回転環3を形成するセラミックスのかさ密度を上げることが困難となる。また、酸化アルミニウムの含有量が22質量%を超えると、窒化珪素を主成分とするセラミックス中の酸化カルシウム(CaO)と酸化アルミニウム(Al)とが1:6の比率で結合することで生成されるβ型アルミナの一種であるアスペクト比の高い柱状のヒボナイト(CaAl1219)が多く析出し、回転環
3の剛性を高めることが困難となる。また、このヒボナイト(CaAl1219)の含有量は、多くなるとセラミックスの強度が低下するため、セラミックス100質量%に対し
て0.04質量%以下であることが好適である。
ここで、ヒボナイト(CaAl1219)の含有量の測定方法は、以下のようにして求めることができる。まず、回転環3の表面または断面から200μm×200μmの観察領域を10カ所選び、エネルギー分散型X線分光分析法を用いて各観察領域におけるヒボナイト(CaAl1219)結晶を特定する。次に、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて各観察領域に占めるヒボナイト(CaAl1219)結晶のそれぞれの面積比率を求め、これら面積比率の平均値を算出して平均面積比率を得る。この平均面積比率を平均体積比率とみなし、得られた平均体積比率にヒボナイト(CaAl1219)の理論密度(3.784g/cm)を積算することで、ヒボナイト(CaAl1219)結
晶の含有量(質量%)とすればよい。
また、酸化マグネシウムの含有量が20質量%未満および33質量%を超えると、回転環3を形成するセラミックスのかさ密度を上げることが困難となり、回転環3の剛性を高めることが困難となる。
また、酸化アルミニウムの含有量が12質量%未満であったり、酸化マグネシウムの含有量が20質量%未満であったりすると、残部となる酸化カルシウムの含有量が多過ぎることとなり、高流速のホウ酸を含むシール水により、酸化カルシウムが流出しやすくなり、その結果、粒界の密度が低下して、剛性が低下する。また、残部となる酸化カルシウムの含有量が少な過ぎれば、酸化アルミニウムの含有量が22質量%を超える、もしくは酸化マグネシウムの含有量が33質量%を超えることとなるため、上述した不具合が生じることとなる。
なお、回転環3を形成するセラミックスの主成分である窒化珪素および添加成分である酸化アルミニウム,酸化マグネシウムならびに酸化カルシウムの各含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により求めることができる。具体的には、前処理として回転環3の一部を超硬乳鉢にて粉砕した試料にホウ酸および炭酸ナトリウムを加えて融解する。そして、放冷した後に塩酸溶液にて溶解し、溶解液をフラスコに移して水で標線まで薄めて定容とし、検量線用溶液とともにICP発光分光分析装置で測定することにより、Si,Al,MgおよびCaの各含有量を求めることができる。この値を基にSiについては窒化物に、Al,MgおよびCaについてはそれぞれ酸化物に換算することにより、窒化珪素(Si),酸化アルミニウム(Al),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)の含有量を求めることができる。また、窒化珪素の含有量は、Al,MgおよびCaの各含有量を測定して、それぞれ酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムに換算し、100質量%から酸化アルミニ
ウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの各含有量を引いた値を窒化珪素の含有量としてもよい。
そして、構成比率については、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの含有量の総和を分母とし、分子である各含有量を分母で除して100を乗じることに
より、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に対
する各焼結助剤の構成比率を求めることができる。
また、窒化珪素の平均結晶粒径の測定は、JIS R 1670−2006に準拠し、走査型電子顕微鏡を用い、倍率を例えば2000〜4000倍として、回転環3の破断面を撮影した写真から求めることができる。
また、本発明の非接触型シールリング1では、酸化マグネシウムの一部が酸化アルミニウムと化合しているときには、流体Fがホウ酸を含む水であっても、水と反応しやすい酸化マグネシウムの一部は、水と反応しにくい酸化アルミニウムの一部と化合しているので、流出する酸化マグネシウムの量が抑制されるため、水と反応して水酸化マグネシウムとなる量も減少し、流体Fのホウ酸の濃度を変動させるおそれが少なくなる。酸化マグネシウムの一部が酸化アルミニウムと化合して、例えばアルミン酸マグネシウムを形成している場合、このアルミン酸マグネシウムの同定については、X線回折法を用いて行なえばよい。
また、本発明の非接触型シールリング1では、固定環2は、上記セラミックスからなることが好適である。固定環2が上記セラミックスからなるときには、上述した作用と同様の作用により、結晶粒子が異常に粒成長することが少なく、結晶粒径のばらつきが小さくなることと併せて、セラミックスのかさ密度が高くなり、剛性が高くなるので、固定環2の変形を抑制することができる。また、固定環2および回転環3を全く同じ組成とすれば、同じ工程で作製することが可能となり、製造コストを抑えることができる。
また、本発明の非接触型シールリング1では、各端面2a,3aの気孔の面積占有率が3%以下であることが好適である。各端面2a,3aの気孔の面積占有率が3%以下であるときには、端面2a,3aにおいて、機械的特性の低下や流量の維持に影響を及ぼすおそれのある破壊源が減少するため、機械的特性や流量を長期間にわたって維持することができる。
なお、各端面2a,3aの気孔の面積占有率は、光学顕微鏡を用いて、倍率を200倍に
してCCDカメラで予め鏡面に加工された各端面2a,3aの画像を取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mmにおける気孔の面積
を求めて測定総面積における割合を各端面2a,3aの気孔の面積占有率とすればよい。
また、本発明の非接触型シールリングにおいて、窒化珪素は、組成式がSi6−ZAl8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンであることが好適である。組成式がSi6−ZAl8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンとは、
β−Si内にAl,O,N成分が固溶した結晶から構成されるものであり、固溶量zの値が上記範囲内であるβ−サイアロンであるときには、流体Fの温度が高くても、異常に成長した結晶粒子が存在しにくいため、強度がほとんど低下せず、また、β−Siの結晶対称性がほとんど損なわれていないため、熱伝導率が低下することが少なく、流体Fの流量の維持を長期間にわたって行なうことができる。特に、固溶量zは0.35以上0.70以下であることがより好適である。
ここで、固溶量zは、次のようにして算出することができる。まず、粒度番号が200の
メッシュの篩いを通過するまで試料を粉砕し、得られた粉末に粉末X線回折法における回折角の角度補正用サンプルである高純度α−窒化珪素粉末(宇部興産製E−10グレード、アルミニウム含有量は20質量ppm以下)を60質量%添加して乳鉢にて均一になるように混合し、粉末X線回折法により解析範囲2θを33〜37°とし、走査ステップ幅を0.002°
として、Cu−Kα線(λ=1.54056Å)にてプロファイル強度を測定する。なお、角度
の補正は、角度補正用サンプルより得られるピークの最大値を用いて補正する。
そして、2θ=34.565°付近に現れるα(102)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと34.565°との差(Δ2θ)、および2θ=35.333°付近に現れるα(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと35.333°との差(Δ2θ)をそれぞれ求め、その差の平均(Δ2θ+Δ2θ)/2を補正Δ2θとする。
次に、2θ=36.055°付近に現れるβ(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θを補正Δ2θによって補正した角度を試料のβ(210)のピーク位置(2
θβ)とする。そして、ピーク位置(2θβ),λ=1.54056Å,(hkl)=(210),c=c軸方向の格子定数を以下の数式に代入して格子定数a(Å)を算出する。
sinθβ=λ(h+hk+k)/(3a)+λ/(4c
この数式で、算出した格子定数a(Å)と、K.H.Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig.13に記載された格子定数a(Å)−固溶量zのグラフとから、固溶量zを求めることができる。
また、セラミックスの耐食性や強度に影響を与える粒界相を構成するのは、上述した酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムからなる焼結助剤と、窒化珪素の一部が酸化して粒界相に含まれる酸化珪素である。この粒界相のセラミックスに対する体積比率は、4体積%以上20体積%以下であることが好適である。
なお、この体積比率は次のようにして求めることができる。まず、ICP発光分光分析法により、Al,MgおよびCaの各含有量を求め、それぞれ酸化アルミニウム(Al),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)に換算する。
次に、酸素分析法により酸素分析装置(LECO社製,TC−136型)を用いてセラミ
ックス中のすべての酸素量を測定し、酸化アルミニウム(Al),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)に換算したときに必要となった酸素量の合計を差し引き、残りの酸素から酸化珪素(SiO)の含有量を求める。
そして、セラミックス中の残部をSiとみなし、各比率(質量%)をそれぞれの理論密度(Al:3.98g/cm,MgO:3.65g/cm,CaO:3.35g/cm,SiO:2.65g/cm,Si:3.18g/cm)で除して、粒界相の体積比率を算出する。
また、セラミックスは、鉄の珪化物を含んでいることが好適である。鉄の珪化物は、熱膨張係数が大きく、明らかではないが結晶粒子や粒界相に対して残留応力を発生させていると考えられ、セラミックスの破壊靱性を高くすることができるとともに、高温における破壊の形態である粒界滑りが発生する際に、β−サイアロン粒子の滑りを妨げる楔のような働きをしており、高温における強度および耐熱衝撃性を高くすることができる。さらに、鉄の珪化物は、焼成における液相成分の一つとして作用し、焼結性を向上させることができる。
このように鉄の珪化物は、セラミックスの破壊靱性,高温における強度,耐熱衝撃性に影響を与えるため、鉄の珪化物をFe換算でセラミックスに対して0.02質量%以上3質量%以下含むことが好適である。なお、鉄の珪化物は粉末X線回折法やX線マイクロアナライザー(EPMA)で測定することによってその形態を確認することができる。また、ICP発光分光分析法により定量することができる。
また、鉄の珪化物は、結晶粒子内または粒界相中に粒径が2μm以上50μm以下、望ましくは粒径が2μm以上30μm以下の粒子として点在して、組成式がFeSi,FeSi,FeSiおよびFeSiの少なくともいずれかで表される珪化鉄として存在することが好ましく、特にFeSi(JCPDS#35−0822)であることが好ましい。
また、各端面2a,3aは、その表面粗さを示す指標である算術平均高さ(Ra)および最大高さ(Rz)が、それぞれ2μm以下,7μm以下であることが好適である。算術
平均高さ(Ra)および最大高さ(Rz)をこの範囲にすることによって、流体Fが隙間Sを通過する流量(リーク量)はさらに変動しにくくなり、より高いレベルで一定に維持されるようになる。
各端面2a,3aの算術平均高さ(Ra)および最大高さ(Rz)については、JIS
B 0601−2001(ISO 4287−1997)に準拠して触針式の表面粗さ計を用い、例えば測定長さ,カットオフ値,触針先端半径,触針の走査速度をそれぞれ45mm,0.8mm,
2μm,0.5mm/秒として求めることができる。
そして、本発明の軸封装置8は、変形が少なく、流量を一定に維持することのできる信頼性の高い本発明の非接触型シールリング1を用いたことから、信頼性に優れ、さらに安全性の高い軸封装置8となる。
次に、本発明の非接触型シールリングの製造方法を説明する。
まず、β化率が40%以下であって、組成式がSi6−ZAl8−Zで表される、固溶量zが0.5以下である窒化珪素の粉末と、焼結助剤として酸化アルミニウム,酸化
マグネシウムおよび酸化カルシウムの各粉末とを、バレルミル,回転ミル,振動ミル,ビーズミルまたはアトライター等を用いて湿式混合し、粉砕してスラリーを作製する。なお、組成式がSi6−ZAl8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンで
ある窒化珪素の結晶を得るには、固溶量zが0.05以上0.5以下である窒化珪素の粉末を用
いればよい。
ここで、焼結助剤である酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの各粉末の合計は、窒化珪素質粉末とこれら焼結助剤の粉末の合計との総和を100質量%と
したときに、3質量%以上19.2質量%以下になるようにすればよく、また各焼結助剤の含有量は、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に
対して、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの含有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムとすればよい。また、窒化珪素の粉末とこれら焼結助剤の粉末の合計に対して、酸化第2鉄の粉末をFe換算で0.02質量%以上3質量%以下添加してもよい。なお、添加した酸化第2鉄の粉末は、後述する焼成で主相である窒化珪素と反応して、酸素を脱離し、鉄の珪化物を生成する。
ところで、窒化珪素には、その結晶構造の違いにより、α型およびβ型という2種類の窒化珪素が存在する。α型は低温で、β型は高温で安定であり、1400℃以上でα型からβ型への相転移が不可逆的に起こる。ここで、β化率とは、X線回折法で得られたα(102
)回折線とα(210)回折線との各ピーク強度の和をIα、β(101)回折線とβ(210)
回折線との各ピーク強度の和をIβとしたときに、次の式によって算出される値である。β化率={Iβ/(Iα+Iβ)}×100 (%)
窒化珪素の粉末のβ化率は、窒化珪素を主成分とするセラミックスの強度および破壊靱性値に影響する。β化率が40%以下の窒化珪素の粉末を用いるのは、強度および破壊靱性値をともに高くすることができるからである。β化率が40%を超える窒化珪素の粉末は、焼成工程で粒成長の核となって、粗大で、しかもアスペクト比の小さい結晶となりやすく、強度および破壊靱性値とも低下するおそれがある。そのため、特に、β化率が10%以下の窒化珪素の粉末を用いるのが好ましく、これにより、固溶量zを0.1以上にすることが
できる。
また、固溶量zは、窒化珪素を主成分とするセラミックスの熱伝導率に影響し、固溶量zが0.5以下の粉末を用いるのは、焼結後にアスペクト比が5以上の針状結晶組織が得ら
れ、回転環3を形成するセラミックスの強度および熱伝導率をともに高くすることができ
るからである。
窒化珪素の粉末および焼結助剤の各粉末の粉砕で用いるボールは、窒化珪素質,ジルコニア質,アルミナ質等の各種焼結体からなるボールを用いることができるが、不純物が混入しにくい材質、あるいは同じ材料組成の窒化珪素質焼結体からなるボールが好適である。
なお、窒化珪素の粉末および焼結助剤の各粉末の粉砕は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累積体積が90%となる粒径(D90)が3μm以下となるまで粉
砕することが、焼結性の向上および窒化珪素の結晶組織の針状化の点から好ましく、粉砕によって得られる粒度分布は、ボール等の外径,ボール等の量,スラリーの粘度,粉砕時間等で調整することができる。
そして、スラリーの粘度を下げるには分散剤を添加することが好ましく、短時間で粉砕するには、予め累積体積50%となる粒径(D50)が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。また、パラフィンワックスやポリビニルアルコール(PVA),ポリエチレングリコール(PEG)等の有機バインダを粉末100質量%に対して1質量%以上10質量%以
下でスラリーに混合することが、成形性のために好ましい。
次に、粒度番号が200のメッシュより細かいメッシュの篩いにスラリーを通した後に乾
燥させて顆粒を得る。乾燥は、噴霧乾燥機で乾燥させてもよく、他の方法であっても何ら問題ない。
次に、得られた顆粒を、冷間等方圧加圧法(CIP)を用いて相対密度が45%以上60%以下の環状の成形体とする。成形圧力は50〜300MPaの範囲であれば、成形体の密度の
向上や顆粒の潰れ性の観点より好適である。また、得られた成形体は、窒素雰囲気中または真空雰囲気中などで脱脂した方がよい。脱脂温度は添加した有機バインダの種類によって異なるが、900℃以下がよく、特に500℃以上800℃以下とすることが好適である。
次に、一般的な窒化珪素質成形体の焼成に用いる黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に成形体を配置し、焼成する。焼成炉内には成形体の含有成分の揮発を抑制するために酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等の成分を含んだ共材を配置してもよい。また、温度については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し
、その後、窒素ガスを導入して、窒素分圧を50〜300kPaに維持する。このとき成形体
の開気孔率は40〜55%程度であるため、成形体中には窒素ガスが十分充填される。そして、さらに昇温して、1000〜1400℃付近で焼結助剤が固相反応を経て、液相成分を形成し、約1400℃以上の温度域でβ−サイアロンを析出して緻密化が始まり、微細な結晶組織を得るには、焼成温度を1700℃以上1800℃未満にすればよい。
β−サイアロンは、β−SiのSi4+位置にAl3+,N3−,O2−が置換固溶したものであり、Si−AlN−Al−SiO系の多くの状態図(例えば、K.H.Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig.11)にあるように、β−サイアロン相の安定領域はSi−Al−SiO系に対してN3−が価数の安定には不足しており、外部からN3−の供給が必要となるが、成形体中に充填された窒素ガスがN3−となるので、窒素分圧を低く抑えることによってβ−サイアロンの固溶量zを低くすることができる。つまり、開気孔率が40〜55%から5%に達するまでの段階はできるだけ窒素分圧を低く設定する必要があり、50〜300kPaとすることが重要である。
このとき、窒素分圧が300kPaを超えると、β−Siに対しAl3+,N3−
,O2−の置換固溶が進み、固溶量zが1を超えやすくなり、熱伝導率が低下するおそれ
がある。また、窒素分圧が50kPaより小さくなると、β−サイアロンの平衡窒素分圧より小さくなり、β−サイアロンの分解反応が進行して、珪素が溶融するため、正常な窒化珪素を主成分とするセラミックスにならないおそれがある。また、温度が1800℃を超えるとAl3+,N3−,O2−の置換固溶が進行し、固溶量zが1を超えやすくなり、熱伝導率が低下するおそれがある。ただし、焼結が進行し、開気孔率が5%未満となった場合は、窒化珪素を主成分とするセラミックス中への窒素ガスの供給量が少なくなるため、300kPaを超える窒素分圧であっても構わないし、1800℃以上の温度で焼成しても構わな
い。
なお、酸化マグネシウムの一部を酸化アルミニウムと化合させるには、例えば、300k
Paの窒素中にて1700℃以上1750℃以下,10時間で再度焼成すればよい。
また、より緻密化を促進するには、開気孔率が5%以下となった段階で200MPa以下
のガス圧焼結処理または熱間等方加圧(HIP)処理を施しても構わない。この場合、開気孔率1%以下で、相対密度が97%以上、さらには99%以上まで焼結を促進させた後に、ガス圧焼結処理または熱間等方加圧(HIP)処理を施すことが好適である。
また、成形体の配置方法として、成形体を窒化珪素または炭化珪素を主成分とする粉末中に埋設する方法を用いれば、電気炉において大気中で焼成することができる。このような方法を用いると、成形体を窒化珪素または炭化珪素を主成分とする粉末中に埋設したことにより大気中の酸素ガスは遮断され、実質的に焼成雰囲気は窒素雰囲気となる。
そして、最終的に相対密度96%以上まで緻密化を進行させることで、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に対して、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの含有量はそれぞれ12
質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)である、本発明の非接触型シールリング1を構成する回転環3を得ることができる。
固定環2がこのようなセラミックスからなるときには、上述した方法と同じ方法を用いて作製すればよい。このように、回転環3と固定環2とが全く同じ組成であれば、同じ工程で作製することが可能となり、製造コストを抑えることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず、平均粒径が表1および表2に示す窒化珪素の粉末と、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの各粉末とを用意した。そして、表1および表2に示す含有量のセラミックスとなるように秤量した混合粉末を溶媒である水とともに振動ミルに投入して、振動ミルを用いて72時間粉砕混合し、スラリーを作製した。なお、窒化珪素の粉末は、いずれの試料も組成式Si6−ZAl8−Zにおける固溶量zが0.01である窒化珪素の粉末を用いた。
次に、粉砕混合した粉末に対してポリビニルアルコール(PVA)を5質量%添加し、粒度番号が400のメッシュの篩いにスラリーを通して異物を除去し、乾燥して顆粒を得た
。そして、この顆粒を冷間等方圧加圧法(CIP)により成形体とし、切削工程にて環状に加工した。次に、600℃の窒素雰囲気中でポリビニルアルコール(PVA)を脱脂した
後、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に配置し、窒素分圧を110kPaに維持した状
態で、1750℃,15時間で焼成し、回転環である試料No.1〜57を得た。
そして、試料No.1〜40,42〜48,50〜56については、300kPaの窒素中にて1750
℃,5時間で再度焼成して、相対密度が97%以上の窒化珪素質焼結体からなる回転環を得た。また、試料No.41,49,57については、300kPaの窒素中にて1750℃,10時間で
再度焼成した。
そして、剛性を確認するため、回転環から試験片を切り出し、試験片に静的な荷重を加え、それによって弾性変形を測定し、得られた応力とひずみの関係から求められる等温弾性係数である静的弾性率をJIS R 1602−1995に準拠して測定した。
また、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍で撮影した回転環の破断面の画像からJIS R 1670−2006に準拠して、100μm×100μmの範囲における窒化珪素の平均結晶粒径を測定した。
また、回転環の端面の気孔の面積占有率は、以下のようにして求めた。まず、回転環から端面を含むように試験片を切り出し、算術平均高さRaが0.1μm以下となるように端
面を研磨した後、光学顕微鏡を用いて、倍率を200倍にしてCCDカメラで端面の画像を
取り込み、画像解析装置((株)ニレコ製LUZEX−FS)により画像内の1視野の測定面積を2.25×10−2mm,測定視野数を20,つまり測定総面積が4.5×10−1mm
における気孔の面積を求めて測定総面積における割合を端面の気孔の面積占有率とした。
これらの測定値を表1および表2に示す。
また、X線回折法によりアルミン酸マグネシウム(MgAl)の有無を調べ、アルミン酸マグネシウム(MgAl)結晶が検出された試料には「有」、アルミン酸マグネシウム(MgAl)結晶が検出されなかった試料には「無」と表1および表2に示した。
Figure 0005371807
Figure 0005371807
表1および表2に示す結果から分かる通り、窒化珪素の含有量が81.8質量%未満である試料No.1〜5は、静的弾性率が307GPa以下とであった。また、窒化珪素の平均結
晶粒径が12μmを超える試料No.6〜10,19,21,22は、静的弾性率が306GPa以下
であった。また、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100
質量%に対する酸化アルミニウムの含有量が12質量%未満であるか、または22質量%を超える試料No.16,18〜22,24,25は、静的弾性率が310GPa以下であった。なお、酸
化アルミニウムの含有量の最も多い試料No.19と、窒化珪素粉末の平均粒径および焼結助剤の構成の近い試料No.13とについて、各試料の表面から200μm×200μmの観察領域を10カ所選び、エネルギー分散型X線分光分析法を用いて各観察領域におけるヒボナイト(CaAl1219)結晶を確認したところ、試料No.19の方がヒボナイト(CaAl1219)結晶が多く検出され、剛性に影響を与えていることがわかった。
また、酸化マグネシウムの含有量が20質量%未満であるか、または33質量%を超える試料No.16,17,18,21,22,23,25についても、静的弾性率が310GPa以下であった
これに対し、本発明の範囲である試料No.11〜15,26〜54は、回転環3は、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、該セラミックスは、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に対して、酸化アルミニウムおよび酸化マグネ
シウムの含有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)であることから、静的弾性率が315GPa以上となり、剛性を高めら
れることが分かった。
また、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの各含有量が同じである試料No.38〜40,46〜48,54〜56を比べると、端面のセラミックスに存在する気孔の面積占有率が3%を超える試料No.40に対する試料No.38,39、同様に試料No.48に対する試料No.46,47および試料No.56に対する試料No.54,55は、端面のセラミックスに存在する気孔の面積占有率が3%以下であることによって静的弾性率を高められることが分かった。
また、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの各含有量が同じである試料No.40,41,48,49,56,57を比べると、試料No.41,49,57は、水と反応しやすい酸化マグネシウムの一部は、水と反応しにくい酸化アルミニウムの一部と化合しているので、流体がホウ酸を含む水であっても、流出する酸化マグネシウムの量が抑制されるため、水と反応して水酸化マグネシウムとなる量も減少し、流体のホウ酸の濃度を変動させるおそれが試料No.40,48,56より少ないといえる。
また、本発明の構成のセラミックスを用いて回転環3を作製し、軸封装置である一次冷却材ポンプ8に取り付けて、稼働を行なったところ、回転環2の変形が少なく、長期間にわたって流量を一定に維持することができて、高い信頼性を得られることが分かった。さらに、固定環2についても、同様のセラミックスを用いて作製して、確認を行なったところ、同様の結果を得ることができることが確認できた。
1:非接触型シールリング
2:回転軸
3:固定環
4:枠体
5:固定環保持部材
6:回転軸
7:回転環保持部材
8:一次冷却材ポンプ
9:モータ
10:インペラ
F:流体
S:隙間

Claims (5)

  1. 固定環と回転環とからなり、流体が供給される隙間を介してそれぞれの端面が対向して配置されてなる非接触型シールリングであって、前記回転環は、窒化珪素の含有量が81.8質量%以上のセラミックスからなり、該セラミックスは、酸化アルミニウム,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含み、前記酸化アルミニウム,前記酸化マグネシウムおよび前記酸化カルシウムの合計100質量%に対して、前記酸化アルミニウムおよび前記酸化マグネシウムの含有量はそれぞれ12質量%以上22質量%以下,20質量%以上33質量%以下であって、残部が酸化カルシウムであるとともに、前記窒化珪素の平均結晶粒径が12μm以下(但し、0μmを除く。)であることを特徴とする非接触型シールリング。
  2. 前記酸化マグネシウムの一部が前記酸化アルミニウムと化合していることを特徴とする請求項1に記載の非接触型シールリング。
  3. 前記固定環は、前記セラミックスからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非接触型シールリング。
  4. 前記各端面の気孔の面積占有率が3%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非接触型シールリング。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非接触型シールリングを用いたことを特徴とする軸封装置。
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