JP5726021B2 - 球状体およびこれを用いた転がり支持装置 - Google Patents

球状体およびこれを用いた転がり支持装置 Download PDF

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Description

本発明は、摺動特性、特に転がり特性に優れた球状体およびこれを用いたボールねじ、リニアガイドや、風力発電機、建設機械または鉄鋼圧延機等で利用される転がり軸受等の転がり支持装置に関するものである。
転がり軸受等の転がり支持装置に用いられる球状体として、軸受が高速で回転した場合でも球状体に発生する遠心力が小さく、特に球状体と外輪軌道面との接触面圧の増加が少なく、軸受が壊れにくいことから、金属に比べて比重の小さいセラミック焼結体からなる球状体が用いられている。
例えば、特許文献1では、転がり軸受に組み込まれて使用される球状体(転動体)において、表面から球状体の直径の0.5%以上の深さまでの部分である表層部と、該表層部の
内側の内部と、で構成されており、前記表層部を構成する材料の密度よりも前記内部を構成する材料の密度の方が小さく、球状体全体としての密度は前記表層部を構成する材料の密度の90%以下であり、前記表層部を構成する材料のみで球状体を構成した場合の圧砕強度の70%以上の圧砕強度を有する転がり軸受用の球状体が提案されている。
特開2003−322154号公報
しかしながら、特許文献1で提案された転がり軸受用の球状体は、球状体の表面の開気孔の分布に偏りがあると、磨耗量の違いが生じて安定した回転特性を得ることができないという問題があった。
また、特に、風力発電機に用いられる転がり軸受に用いられる直径が40mmを超えるような大きい球状体は、小さい球状体よりも、開気孔の分布の偏りが回転特性に与える影響が大きい。
本発明は、摺動特性および回転特性に優れているとともに、回転時にかかる負荷に耐えることができる球状体およびこれを用いた転がり支持装置を提供することを目的とするものである。
本発明の球状体は、開気孔を有するセラミックスからなり、外形が球状であって、前記開気孔の面積占有率が0%を超えて0.5%以下である第1の領域と、前記開気孔の面積占有率が前記第1の領域における開気孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域とを有し、第1の領域が最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域が前記第1の領域を挟んで存在していることを特徴とするものである。
また、本発明の転がり支持装置は、上記いずれかの構成の本発明の球状体を用いたことを特徴とするものである。
本発明の球状体によれば、開気孔を有するセラミックスからなり、外形が球状であって、前記開気孔の面積占有率が0%を超えて0.5%以下である第1の領域と、前記開気孔の面積占有率が前記第1の領域における開気孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域とを有し、前記第1の領域が最大外周を含んで帯状に存在し、前記第2の領域が前記第1の領域を挟んで存在していることから、第2の領域よりも開気孔の面積占有率の低い第1の領域が摺動面となるので、摺動特性および回転特性に優れるとともに、回転時に掛かる負荷に耐えることができるため、長期間にわたって使用することができる。
また、本発明の転がり支持装置によれば、本発明の球状体を用いたことから、良好な摺動特性および回転特性を維持することができるので、長期間にわたって使用することができる信頼性の高い転がり支持装置とすることができる。
本実施形態の球状体の一例を示す概略図である。 本実施形態の球状体における、(a)は第1の領域、(b)は第2の領域の顕微鏡写真である。 本実施形態の転がり支持装置の一例である本実施形態の球状体を用いた転がり軸受を示す断面図である。
以下、本実施形態の球状体およびこれを用いた転がり支持装置の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態の球状体の一例を示す概略図である。この球状体10は、開気孔を有するセラミックスからなり、外形が球状であって、開気孔の面積占有率が0.5%以下であ
る第1の領域1と、開気孔の面積占有率が第1の領域1における開気孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域2とを有し、第1の領域1が最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域2が第1の領域1を挟んで存在していることを特徴とする。
これにより、球状体10が摺動して回転するときに第1の領域1および第2の領域2に掛かる抵抗の違いによって、球状体10の回転方向が定まり、第2の領域2よりも開気孔の面積占有率の低い第1の領域1が摺動面となるので、摺動特性および回転特性に優れるとともに、回転時に掛かる負荷に耐えることができるため、長期間にわたって使用することができる球状体10となる。
なお、本実施形態の球状体10の一例を示す概略図である図1は、球状体10の表面における第1の領域1および第2の領域2の位置関係を明確にすべく実線で示したものである。そして、本実施形態の球状体10における表面とは、算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以下程度にまで研磨されたものである。
図2は、本実施形態の球状体10における、(a)は第1の領域、(b)は第2の領域の顕微鏡写真である。このように、球状体10は、表面である第1の領域1および第2の領域2に、それぞれ開気孔1a,2aを有しており、この顕微鏡写真から明らかなように、第1の領域1における開気孔1aの面積占有率が、第2の領域2における開気孔2aの面積占有率よりも低いものである。そして、第1の領域1における開気孔1aの面積占有率は0.5%以下であり、第2の領域2における開気孔2aの面積占有率は、第1の領域1にお
ける開気孔1aの面積占有率よりも高く、その差が3%以下である。
本実施形態の球状体10の表面の第1の領域1および第2の領域2における開気孔1a,2aのそれぞれの面積占有率については、例えば、以下のようにして求めればよい。まず
、球状体10に内接する正12面体(空間を12枚の正5角形で囲んだ多面体)の各頂点を含む20カ所を視野とする。ここで、各視野は、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍として、面積
が1.125mm(例えば、横方向の長さが1.238mm、縦方向の長さが0.909mm)となる
ように範囲を設定する。そして、CCDカメラで各視野の画像を取り込み、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて、粒子解析という手法で解析する。ここで、この手法の設定条件である粒子の明度、2値化の方法および小図形除去面積をそれぞれ暗、手動、5μmとし、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の0.88倍に設定する。そして、上記視野における開気孔の面積を求め、1視野の面積で除することにより、各視野における開気孔の面積占有率を求めることができる。
そして、20箇所の視野における開気孔の面積占有率の平均値を求め、各箇所の視野における開気孔の面積占有率がこの平均値よりも低いか高いかにより、その視野が第1の領域1に在るか、第2の領域2に在るかを判定することができる。
また、本実施形態においては、20箇所の視野における開気孔の面積占有率の値の低い方から1〜3番目の値の平均値を第1の領域1における開気孔1aの面積占有率とし、高い方から1〜3番目の値の平均値を第2の領域2における開気孔2aの面積占有率とする。
なお、20箇所の視野がいずれの領域に在るかが判明しても、第1の領域1が球状体10の最大外周を含んで帯状に存在するか否か、もしくは第2の領域2が第1の領域1を挟んで存在しているか否かが判明しないときには、20箇所の視野の判定結果を基に、視野を追加して同様の測定および判定を続けて確認すればよい。
また、本実施形態の球状体10は、第1の領域1における開気孔1aの凹凸度が3以下であることが好適である。開気孔1aの凹凸度が、3以下であるときには、摺動面に存在する開気孔1aの輪郭から脱粒しにくく、長期間にわたって摺動特性および回転特性を維持することができるので信頼性を高めることができる。特に、開気孔1aの凹凸度は1.3以
下であることが好適である。
ここで、開気孔1aの凹凸度とは、開気孔1aを平面視した輪郭の凹凸の度合いを示すものであり、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)では、以下の式(1)で定義される値であり、この値が大きいほど、開気孔1aの輪郭の凹凸は多くなり、この値が小さいほど、開気孔1aの輪郭の凹凸は少なくなる。
開気孔1aの凹凸度=開気孔1aの周囲長2/開気孔1aの包絡周囲長・・・(1)
開気孔1aの凹凸度は、第1の領域1における視野にある開気孔1aを対象とし、上述した手法および設定条件により解析して求めればよい。
また、本実施形態において、セラミックスは閉気孔を有しており、単位面積当たりにおける直径が10μm以下の閉気孔の個数が球心に向かって多くなっていることが好適である。これにより、機械的特性は維持しつつ、軽量化を図ることができることから、転がり支持装置に用いた場合に、この転がり支持装置を駆動させる駆動手段に掛かる負荷が少なくなり、電力を節約することができる。
単位面積当たりにおける直径が10μm以下の閉気孔の個数の算出に当たっては、まず、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍とし、上述した球心を通る断面における、球心を含む領
域、球心と表面との中間領域および表面を含む領域をそれぞれ視野とし、これらの各領域から横方向の長さが1.238mm、縦方向の長さが0.909mmである範囲を指定する。そして、CCDカメラで各範囲の画像を取り込み、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用い、上述した手法および設定条件により解析すれば
よい。
図3は、本実施形態の転がり支持装置の一例である本実施形態の球状体を用いた転がり軸受を示す断面図である。
図3に示す例の転がり軸受20は、対向して配置される軌道面11a,12aを設けた第1部材(外輪)11および第2部材(内輪)12と、第1部材11および第2部材12の軌道面11a,12a間にそれぞれ配設された球状体10と、それぞれの球状体10を保持する保持器13とを備え、第2部材12に取り付けられた不図示の軸の回転時に、第1部材11の軌道面11aおよび第2部材12の軌道面12aに沿って球状体10が摺動して回転するように構成されている。なお、球状体10が良好に摺動して回転するように、摺動面となる球状体10の表面および軌道面11a,12aが平滑であるとともに、この摺動面には潤滑液が供給される。
そして、本実施形態の球状体10において、第1の領域1および第2の領域2に存在する開気孔1a,2aは、供給される潤滑液を保持する機能を有し、球状体10の摺動特性を長期間維持する作用をなす。また、第1の領域1における開気孔1aの面積占有率が第2の領域2における開気孔2aの面積占有率よりも低いことから、球状体10が摺動して回転するときに第1の領域1および第2の領域2にかかる抵抗の違いにより、第1の領域1を挟んで存在する第2の領域2が保持器13に、球状体10の最大外周を含んで帯状に存在する第1の領域1が第1部材11の軌道面11aおよび第2部材12の軌道面12aにそれぞれ対向することとなる。
このように、保持器13に対向する第2の領域2が軸となって、第1の領域1が第1部材11の軌道面11aおよび第2部材12の軌道面12aとの摺動面となることにより、球状体10の回転方向が定まり、開気孔の少ない第1の領域1が摺動面となるので、回転時にかかる負荷に耐えることができるとともに、摺動特性および回転特性に優れた球状体とすることができるため、球状体10の寿命を延ばすことができる。なお、上記効果を得るには、第2の領域2における開気孔の面積占有率と、第1の領域1における開気孔の面積占有率との差が1%以上3%以下であることが好ましい。
ここで、寿命を延ばすことができる理由についてはあきらかではないが、球状体10の回転方向が定まっておらず、あらゆる方向に球状体10が摺動して回転するときよりも、回転方向が定まった方が安定した回転特性を得ることができるためと考えられる。
また、球状体10の最大外周を含んで帯状に存在する第1の領域1の幅は、対向する第1部材11の軌道面11aおよび第2部材12の軌道面12aの幅よりも大きいことが好ましい。
そして、本実施形態の球状体10は、摺動特性が求められる部位に用いられるものであり、特に、風力発電機の転がり軸受に用いられるような、例えば、直径が40mm以上60mm以下の大きな球状体10に用いることが好適である。
また、本実施形態の球状体10は、種々の転がり軸受に組み込んで用いることができる。例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受等のスラスト形の転がり軸受に用いることができる。
そして、本実施形態の球状体10は、主成分が窒化珪素である窒化珪素質セラミックスからなることが望ましい。そして、窒化珪素の組成式がSi6−ZAl8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンであることが好ましい。組成式がSi6−ZAl
8−Z(z=0.1〜1)で表されるβ−サイアロンとは、β−Si内にA
l、O、N成分が固溶した結晶から構成されるものであり、固溶量zの値が上記範囲内で
あるβ−サイアロンであるときには、異常に成長した結晶粒子が存在しにくいため、強度がほとんど低下せず、また、β−Siの結晶対称性がほとんど損なわれていないため、熱伝導率が低下しにくく、摩擦熱の発生に伴う局部的な温度上昇を抑制することができる。特に、固溶量zは0.35以上0.70以下であることがより好適である。
ここで、固溶量zは、次のようにして算出することができる。まず、球状体10を成す窒化珪素質セラミックスを粉砕し、ASTM E11−61に記載されている粒度番号が200の
メッシュを通過した粉末に、粉末X線回折法における回折角の角度補正用サンプルである高純度α−窒化珪素粉末(宇部興産製E−10グレード、アルミニウム含有量は20質量ppm以下)を60質量%添加して乳鉢にて均一になるように混合する。そして、この混合粉末を用いて、粉末X線回折法により解析範囲2θを33〜37°とし、走査ステップ幅を0.002
°として、Cu−Kα線(λ=1.54056Å)にてプロファイル強度を測定する。なお、角
度の補正は、角度補正用サンプルより得られるピークの最大値を用いて補正する。
次に、2θ=34.565°付近に現れるα(102)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと34.565°との差(Δ2θ)、および2θ=35.333°付近に現れるα(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θと35.333°との差(Δ2θ)をそれぞれ求め、その差の平均(Δ2θ+Δ2θ)/2を補正Δ2θとする。
次に、2θ=36.055°付近に現れるβ(210)の0.002°毎に得られるピーク強度の上位10点の平均2θを補正Δ2θによって補正した角度を試料のβ(210)のピーク位置(2
θβ)とする。そして、ピーク位置(2θβ)、λ=1.54056Å、(hkl)=(210)を以下の数式に代入して格子定数a(Å)を算出する。
sinθβ=λ(h+hk+k)/(3a)+λ/(4c
この数式で、算出した格子定数a(Å)と、K.H.Jack,J.Mater.Sci.,11(1976)1135−1158,Fig. 13に記載された格子定数a(Å)−固溶量zのグラフとから、固溶量zを
求めることができる。
次に、本実施形態の球状体10の製造方法の一例について説明する。まず、β化率が40%以下であって、組成式がSi6−ZAl8−Z(z=0.1〜1)で表される、固
溶量zが0.5以下である平均粒径が1μm以下の窒化珪素の粉末と、焼結助剤として酸化
カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび希土類元素の酸化物等の各粉末とを、バレルミル、回転ミル、振動ミル、ビーズミルまたはアトライター等を用いて湿式にて混合および粉砕してスラリーとする。
ここで、窒化珪素の粉末のβ化率を40%以下としたのは、主成分として用いる窒化珪素の粉末のβ化率が、窒化珪素質セラミックスの強度および破壊靭性に影響するからであり、β化率が40%を超える窒化珪素の粉末は、焼成工程で粒成長の核となって、粗大でしかもアスペクト比の小さい結晶となりやすく、強度および破壊靱性ともに低下するおそれがあるからである。特に、窒化珪素の粉末のβ化率が10%以下であることが好ましい。
なお、窒化珪素の粉末のβ化率とは、X線回折法で得られたα(102)回折線とα(210)回折線との各ピーク強度の和をIαとし、β(101)回折線とβ(210)回折線との各ピーク強度の和をIβとしたときに、次の式によって算出される値である。
β化率={Iβ/(Iα+Iβ)}×100(%)
また、固溶量zが0.5以下の窒化珪素の粉末を用いるのは、主成分として用いる窒化珪
素の粉末の固溶量zが、窒化珪素質セラミックスの熱伝導率に影響するからである。固溶量zが0.5以下であることにより、焼結後にセラミックスの熱伝導率を高くすることがで
きる。
また、焼結助剤の1種である希土類元素の酸化物を構成する希土類元素(RE)としては、イットリウム(Y)およびランタノイド系元素(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)であることが好適である。
また、本実施形態の球状体10を成す窒化珪素質セラミックスは、鉄の珪化物を含んでいることが好適である。鉄の珪化物は、熱膨張係数が大きく、理由は明らかではないが柱状結晶および粒界相に対して残留応力を発生させると考えられ、セラミックスの破壊靱性を高くすることができるとともに、高温における破壊の形態である粒界滑りが発生する際に、β−サイアロン粒子の滑りを妨げる楔のような働きをしており、高温における強度および耐熱衝撃性を高くすることができる。さらに、鉄の珪化物は、焼成における液相成分の一つとして作用し、焼結性を向上させることができる。
このように鉄の珪化物は、セラミックスの破壊靱性,高温における強度および耐熱衝撃性を向上させることができるので、鉄の珪化物をFe換算で窒化珪素質セラミックスに対して0.02質量%以上3質量%以下含むことが好適である。なお、鉄の珪化物は粉末X線回折法やX線マイクロアナライザー(EPMA)にて測定することによってその形態を確認することができる。また、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により定量することができる。
また、鉄の珪化物は、柱状結晶内または粒界相中に粒径が2μm以上50μm以下、望ましくは粒径が2μm以上30μm以下の粒子として点在して、組成式がFeSi、FeSi、FeSiおよびFeSiの少なくともいずれかで表される珪化鉄として存在することが好ましく、特にFeSi(JCPDS#35−0822)であることが好ましい。
そして、上述したように、鉄の珪化物を窒化珪素質セラミックスに存在させるには、窒化珪素の粉末と焼結助剤の粉末との総和100質量%に対して、酸化第2鉄の粉末をFe換
算で0.02質量%以上3質量%以下添加すればよい。添加された酸化第2鉄の粉末は、後述する焼成で主成分である窒化珪素と反応して、酸素を脱離し、鉄の珪化物を生成する。
次に、焼結助剤として、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび希土類元素の酸化物を用いたとき、これらの焼結助剤の合計の含有量は、例えば、窒化珪素の粉末とこれらの焼結助剤の粉末の合計との総和100質量%に対して、3質量%以上18.2質量%以下とし、
各焼結助剤の含有量は、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび希土類元素の酸化物の合計100質量%に対して、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムの含有量はそれぞれ0.3質量%以上1.5質量%以下、14.2質量%以上48.8質量%以下であって、残部を希土類元素
の酸化物とすればよい。
また、他の例としては、焼結助剤に酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを用いてもよい。これらの焼結助剤の合計の含有量は、例えば、窒化珪素の粉末とこれら焼結助剤の粉末の合計との総和100質量%に対して、3質量%以上18.2質量%以
下とする。そして、各焼結助剤の含有量は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの合計100質量%に対して、例えば、酸化アルミニウムの含有量は12質量
%以上22質量%以下、酸化マグネシウムの含有量は20質量%以上33質量%以下、残部を酸化カルシウムとする。
ここで、本実施形態の球状体10を構成する成分については、蛍光X線分析法またはICP発光分光分析法により含有量を求めればよい。具体的なICP発光分光分析法による含有量の求め方は、まず、前処理として球状体10を成す窒化珪素質セラミックスの一部を超硬乳鉢にて粉砕した粉末にホウ酸および炭酸ナトリウムを加えて融解する。そして、放冷
した後に塩酸溶液にて溶解し、溶解液をフラスコに移して水で標線まで薄めて定容とし、検量線用溶液とともにICP発光分光分析装置で測定することにより、球状体10を成す窒化珪素質セラミックスを構成する成分の金属元素の各含有量を求めることができる。
この値を基にSiについては窒化物に、Si以外の成分、例えば、Al、Ca、MgおよびRE(希土類元素)については、それぞれ酸化物に換算することにより、窒化珪素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)および希土類元素の酸化物(RE)の含有量を求めることができる。また、窒化珪素の含有量は、得られたAl、Ca、MgおよびREの各含有量から、それぞれ酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび希土類元素の酸化物に換算し、100質量%から酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムお
よび希土類元素の酸化物の各含有量を引いた値を窒化珪素の含有量としてもよい。
また、窒化珪素の粉末および焼結助剤の粉末等を湿式で行なう混合および粉砕で用いるボールとしては、窒化珪素質、ジルコニア質およびアルミナ質等の各種焼結体からなるボールを用いることができるが、不純物が混入しにくい材質、あるいは同じ材料組成の窒化珪素質焼結体からなるボールが好適である。
なお、窒化珪素の粉末および焼結助剤の粉末等を湿式で行なう粉砕は、焼結性の向上および結晶組織の柱状化の点から、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%としたときの累
積体積が90%となる粒径(D90)が3μm以下となるまで行なうことが好ましい。なお、得ようとする粒度分布とするには、ボールの外径、ボールの量、スラリーの粘度、粉砕時間等を調整すればよい。
また、以上の粉砕を短時間で行なうには、予め累積体積50%となる粒径(D50)が1μm以下の粉末を用いることが好ましい。また、パラフィンワックスやポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)等の有機バインダを窒化珪素の粉末と焼結助剤の粉末との総和100質量%に対して1質量%以上10質量%以下でスラリーに混
合することが、成形性のために好ましい。さらに、分散性を高めるために分散剤を添加することが好ましい。
次に、粒径(D90)が3μm以下となるまで粉砕したスラリーをASTM E11−61に記載されている粒度番号が200のメッシュまたはこのメッシュより細かいメッシュの篩
いに通した後に、噴霧乾燥装置を用いて造粒した顆粒を得る。ここで得られた顆粒を第1の原料とする。
次に、第2の原料の作製方法について説明する。まず、上述した作製方法により作製された第1の原料を準備する。また、焼成工程で焼失または熱分解する気孔形成剤である樹脂ビーズを準備する。ここで、準備する樹脂ビーズの大きさとしては、例えば、12.5μm以上25.5μm以下であり、樹脂ビーズの添加量としては、窒化珪素の粉末と焼結助剤の粉末の合計との総和100質量%に対して、1質量%以上5質量%以下である。また、具体的
な樹脂ビーズとしては、シリコーンからなる樹脂ビーズ、あるいはポリスチレンおよびアクリル−スチレン共重合体の少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズのいずれかである。そして、準備した第1の原料と樹脂ビーズとを均一に混合することにより、第2の原料(第1の原料+樹脂ビーズ)を得る。
そして、得られた第1の原料および第2の原料を用いて成形する。例えば、成形型に第2の原料、第1の原料、第2の原料を順次投入して、一軸加圧法により加圧する。そして、この加圧された原料を厚みが、例えば、0.3mm以上0.7mm以下のシート状ゴムに内包し、冷間等方圧加圧法(CIP)により相対密度が45%以上60%以下の成形体とする。こ
こで、一軸加圧法および冷間等方圧加圧法で用いる成形圧力は、それぞれ10〜30MPa,50〜137MPaの範囲であれば、成形体の密度の向上や顆粒の潰れ性の観点より好適であ
る。また、シート状ゴムは、厚みが0.3mm以上であることで、成形圧力に耐えることが
でき、厚みが0.7mm以下であることで、成形圧力を原料に均一に伝えることができる。
また、開気孔の凹凸度が3以下である球状体10を得るには、冷間等方圧加圧法で用いる成形圧力を98MPa以上137MPa以下にすればよい。
また、セラミクッスは閉気孔を有しており、単位面積当たりにおける直径が10μm以下の閉気孔の個数が球心に向かって多くなっている球状体10を得るには、冷間等方圧加圧法で用いる成形圧力を50MPa以上117MPa以下にすればよい。なお、冷間等方圧加圧法
は、湿式冷間当方圧加圧法が好適である。得られた成形体は、窒素雰囲気中または真空雰囲気中などで脱脂した方がよい。脱脂温度は添加した有機バインダや樹脂ビーズの種類によって異なるが、900℃以下がよく、特に500℃以上800℃以下とすることが好適である。
そして、得られた成形体に必要に応じて切削加工を施す。
次に、黒鉛抵抗発熱体を加熱手段とする焼成炉内に成形体を配置して焼成する。温度については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガスを導
入して、窒素分圧を10〜2000kPaに維持する。そして、1000〜1400℃付近で、上記含有成分が固相反応を経て、液相成分を形成し、約1400℃以上の温度域で、β−サイアロンを析出する。そして、微細な結晶組織を得るには、さらに昇温を続け、焼成温度を1700℃以上1800℃未満として、10〜15時間保持すればよい。
さらに、球状体10の緻密化が要求される場合には、熱間静水圧加圧法(HIP)を用い、窒素雰囲気中、焼成温度および圧力をそれぞれ1500℃以上1600℃未満,150MPa以上250MPaとして、1.5〜2.5時間保持すればよい。特に、風力装置用発電装置用転がり軸受に用いられるような大きい、例えば、直径が40mm以上60mm以下の球状体10を得るには、上述した熱間成水圧加圧法を用いて、緻密化することが効果的である。
また、成形体の配置方法として、成形体を窒化珪素または炭化珪素を主成分とする粉末中に埋設する方法を用いれば、電気炉において大気中で焼成することができる。このような方法を用いると、成形体をそれら粉末中に埋設したことにより大気中の酸素ガスは遮断され、実質的に焼成雰囲気は窒素雰囲気となる。
そして、得られた焼結体を、例えば、直径不同が0.1μm、真球度が0.1μm、算術平均粗さ(Ra)が0.003μmとなるようにバレル研磨、ボール研磨等の仕上げ加工を順次施
すことにより、本実施形態の球状体10を得る。なお、直径不同、真球度および算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 1501−2009に準拠して測定すればよい。
ここで、上述した方法において、窒化珪素の粉末を用いたが、窒化珪素の粉末を、珪素の粉末および窒化珪素の粉末が混合された粉末(以下、混合粉末という。)に置き換え、反応焼結を利用した方法であってもよい。ここで、混合粉末は、質量比で窒化珪素の粉末の1倍以上10倍以下、特に4倍以上5.8倍以下となる割合で珪素の粉末を混合することが
好適である。なお、この混合粉末を原料とするときには、珪素を窒化して窒化珪素とするための窒化が必要であり、窒素雰囲気中、温度および保持時間を、それぞれ1100℃以上1200℃以下、6時間以上8時間以下として、窒化すればよい。
また、本実施形態の球状体10の表面形態とするために、樹脂ビーズを用いる例を示したが、以下の方法によっても、本実施形態の球状体10の表面形態とすることができる。第1の原料、第2の原料、または上述した混合粉末原料のいずれかを用いて、前述した方法で
成形までを行ない、炭素からなり、球状の成形体の球冠を転写した形状の凹部を有する焼成用棚板を用いて、球状の成形体の上と下の球冠を挟むように配置して、焼成炉内に入れて焼成する。なお、このとき焼成用棚板に接する部分である球冠が第2の領域となり、焼成用棚板に接していない部分が第1の領域となる。
このように、炭素からなる焼成用棚板を用いることにより、本実施形態の球状体10の表面形態とすることができるのは、理由は明らかではないが、酸化物もしくは金属として成形体に含まれるアルミニウムと焼成用棚板を構成する炭素とが反応して、蒸気圧の高い炭化アルミニウムとなって表面から放出されることによると考えられる。
そして、上述した製造方法によって得られた本実施形態の球状体10は、開気孔を有するセラミックスからなり、外形が球状であって、開気孔1aの面積占有率が0.5%以下であ
る第1の領域1と、開気孔2aの面積占有率が第1の領域1における開気孔1aの面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域2とを有し、第1の領域1が最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域2が第1の領域1を挟んで存在していることにより、球状体10が摺動して回転するときに第1の領域1および第2の領域2に掛かる抵抗の違いによって、球状体10の回転方向が定まり、第2の領域2よりも開気孔1aの面積占有率の低い第1の領域1が摺動面となるので、摺動特性および回転特性に優れるとともに、回転時に掛かる負荷に耐えることができるため、長期間にわたって使用することができる球状体10となる。
また、本実施形態の球状体10を用いた転がり軸受等の転がり支持装置20は、良好な摺動特性を維持することができるので、長期間にわたって使用することができる信頼性の高いものとなる。
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明する。
まず、β化率が10%であって、平均粒径(D50)が0.6μmの窒化珪素の粉末と、酸
化カルシウム、酸化アルミニウムおよび酸化イットリウムの各粉末を用意した。そして、酸化カルシウムを0.05質量%、酸化アルミニウムを6.3質量%および酸化イットリウムを8.65質量%の含有量の窒化珪素質セラミックスとなるように秤量した粉末を溶媒である水
とともに振動ミルに投入して、振動ミルを用いて72時間粉砕混合し、スラリーを作製した。なお、窒化珪素の粉末は、いずれの試料も組成式Si6−ZAl8−Zにおける固溶量zが0.01である窒化珪素の粉末を用いた。
次に、粉砕混合した粉末に対してポリビニルアルコールを5質量%添加し、メッシュの篩いにスラリーを通して異物を除去し、乾燥して第1の原料となる顆粒を得た。そして、この第1の原料の一部を用いて、表1に示した分量の懸濁重合された非架橋性のポリスチレン樹脂ビーズを加えて均一に混合して第2の原料を得た。次に、得られた第1,第2の原料を用いて、表1に示した投入量で第2の原料、第1の原料、第2の原料の順に成形型に充填し、一軸加圧法を用いて加圧した。そして、この加圧された原料を厚みが0.5mm
のシート状ゴムに内包し、冷間等方圧加圧法を用いて加圧することにより、相対密度が52.5%の球状の成形体を得た。ここで、一軸加圧法および冷間等方圧加圧法で用いる成形圧力は、それぞれ20MPa、75MPaとした。
次に、600℃の窒素雰囲気中でポリビニルアルコールを脱脂した後、黒鉛抵抗発熱体を
加熱手段とする焼成炉内に脱脂した成形体を配置し、窒素分圧を110kPaに維持した状
態で、表1に示す焼成温度および保持時間で焼成を行ない、球状の焼結体を得た。なお、試料No.1については第1の原料のみで作製した。そして、得られた焼結体にバレル研
磨、ボール研磨を順次施して、直径不同が0.1μm以下、真球度が0.1μm以下、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.003μm以下で、直径が47.63mmの球状体からなる試料No.1〜13を作製した。
そして、各試料の球状体の第1の領域における開気孔の面積占有率および第2の領域における開気孔の面積占有率については、以下のようにして求めた。
まず、球状体に内接する正12面体の各頂点を含む20カ所を視野とした。ここで、各視野は、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍として、面積が1.125mm(横方向の長さが1.238
mm、縦方向の長さが0.909mm)となるように範囲を設定した。そして、CCDカメラ
で各視野の画像を取り込み、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて、粒子解析という手法で解析した。ここで、この手法の設定条件である粒子の明度、2値化の方法および小図形除去面積をそれぞれ暗、手動,5μmとし、画像の明暗を示す指標であるしきい値を、画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の0.88倍に設定した。そして、上記視野における開気孔の面積を求め、1視野の面積で除することにより、各視野における開気孔の面積占有率を求めた。
そして、20箇所の視野における開気孔の面積占有率の値の低い方から1〜3番目の値の平均値を第1の領域における開気孔の面積占有率とし、高い方から1〜3番目の値の平均値を第2の領域おける開気孔の面積占有率とした。
また、20箇所の視野の判定結果を基に、視野を追加して同様の測定および判定を続けて確認したところ、試料No.2〜13については、第1の領域が球状体の最大外周を含んで帯状に存在しているとともに、第2の領域が第1の領域を挟んで存在していることを確認した。
次に、高炭素クロム軸受鋼材(JIS G 4805−2008に記載されている種類の記号がSUJ2である。)からなる第1部材11および第2部材12の軌道面11a,12a間に同一試料番号からなる球状体を9個配設した転がり軸受20を作製し、疲労試験を行なった。ここで、疲労試験の条件は、以下の通りとした。
最大接触面圧:2.5GPa
軸受回転数:1000rpm
潤滑液:タービン油VG68
温度:室温
そして、振動検出装置により回転中の転がり軸受20の振動を監視し、球状体に破損が発生して転がり軸受20の振動が所定値を超えた時点で疲労試験を中止するとともに、運転開始から中止するまで試料No.1を配設した転がり軸受20の寿命を基準値1として、試料No.2〜13を配設した転がり軸受20の寿命の相対値を寿命比として、評価した。ここで、疲労試験を中止するまでの時間が転がり軸受20の寿命である。球状体の作製時の条件を表1に、また、面積占有率や寿命比等を表2に示す。
表2に示すように、球状体の表面に、開気孔の面積占有率の異なる領域を有していない試料No.1と、第1の領域における開気孔の面積占有率と第2の領域における面積占有率との差が3%以上である試料No.2と、第1の領域における開気孔の面積占有率が0.5%を超える試料No.13と比較して、試料No.〜12は、開気孔の面積占有率が0.5%以下である第1の領域と、開気孔の面積占有率が第1の領域における開気孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域とを有し、第1の領域が最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域が第1の領域を挟んで存在していることから、球状体が摺動して回転するときに第1の領域および第2の領域に掛かる抵抗の違いによって、球状体の回転方向が定まり、第2の領域よりも開気孔の面積占有率の低い第1の領域が
摺動面となるので、摺動特性および回転特性に優れるとともに、回転時に掛かる負荷に耐えることができるため、長期間にわたって使用することができる球状体となることがわかった。
次に、開気孔の凹凸度の違いによる寿命の比較を行なった。まず、平均粒径(D50)が30μmの珪素の粉末と、β化率が10%であって、平均粒径(D50)が0.6μmの窒化
珪素の粉末とを混合した粉末と、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび酸化イットリウムの各粉末とを用意した。そして、実施例1に示した方法と同じ方法で、スラリーを作製した。なお、珪素の粉末は、質量比で窒化珪素の粉末の5.3倍とし、窒化珪素の粉末は
、組成式Si6−ZAl8−Zにおける固溶量zが0.01である窒化珪素の粉末を用いた。
そして、顆粒を得るまでの方法は、実施例1に示した方法と同じ方法で行ない、得られた顆粒を成形型に充填し、一軸加圧法により加圧した。そして、この加圧された原料を厚みが0.5mmのシート状ゴムに内包し、冷間等方圧加圧法を用いて加圧することにより、
球状の成形体を得た。ここで、一軸加圧法における成形圧力は20MPaであり、冷間等方圧加圧法における成形圧力は表3に示す通りとした。
次に、600℃の窒素雰囲気中でポリビニルアルコールを脱脂した後、窒素雰囲気中、温
度および保持時間を、それぞれ1150℃、7時間として、窒化した。そして、炭素からなり、球状の成形体の球冠を転写した形状の凹部を有する焼成用棚板を用いて、球状の窒化体の上と下の球冠を挟むように配置して、黒鉛抵抗発熱体を加熱手段とする焼成炉に入れ、窒素分圧を110kPaに維持した状態で、焼成温度および保持時間をそれぞれ1780℃、10
時間として焼成した後、さらに熱間静水圧加圧法により、窒素雰囲気中、焼成温度および圧力をそれぞれ1550℃、200MPaとして、2時間保持することにより、球状の焼結体を
得た。
そして、得られた焼結体にバレル研磨、ボール研磨を順次施して、直径不同が0.1μm
以下、真球度が0.1μm以下、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.003μm以下で、直径が57.15mmの球状体からなる試料No.14〜17を作製した。
そして、実施例1に示した方法と同じ方法を用いて、試料No.14〜17の第1の領域が球状体の最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域が第1の領域を挟んで存在していることを確認した。また、第1の領域および第2の領域におけるそれぞれの開気孔の面積占有率を測定した結果、試料No.14〜17は、第1の領域における開気孔の面積占有率が0.5%以下であり、第2の領域における開気孔の面積占有率が、第1の領域における開気孔
の面積占有率よりも高く、その差が3%以下であることを確認した。
そして、開気孔の凹凸度は、球状体に内接する正12面体(空間を12枚の正5角形で囲んだ多面体)の各頂点を中心とする20カ所を視野とし、この視野にある開気孔を対象として、実施例1で示した手法および設定条件により解析して求めた。
次に、実施例1に示した疲労試験と同じ疲労試験を行ない、試料No.14を配設した転
がり軸受20の寿命を基準値1として、試料No.15〜17を配設した転がり軸受20の寿命の相対値を寿命比として、評価した。開気孔の凹凸度および寿命比を表3に示す。
表3に示すように、試料No.15〜17は、開気孔の凹凸度が3以下であることから、開気孔の輪郭から脱粒しにくく、長期間にわたって摺動特性および回転特性を維持することができるので高い信頼性を維持できることがわかった。
次に、閉気孔の分布状態の違いによる質量の比較を行なった。まず、実施例2で示した方法と同じ方法を用いて、顆粒を得た。そして、成形型に顆粒を充填し、一軸加圧法により加圧した。そして、この加圧された原料を厚みが0.5mmのシート状ゴムに内包し、冷
間等方圧加圧法を用いて加圧することにより、球状の成形体を得た。ここで、一軸加圧法における成形圧力は20MPaであり、冷間等方圧加圧法における成形圧力は表4に示す通りとした。
次に、実施例2で示した方法と同じ方法で脱脂、窒化、焼成および熱間静水圧加圧法による緻密化を行なうことにより、球状の焼結体を得た。そして、得られた焼結体にバレル研磨、ボール研磨を順次施して、直径不同が0.1μm以下、真球度が0.1μm以下、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.003μm以下で、直径が57.15mmの球状体からなる試料No.18,19を作製した。
そして、実施例1に示した方法と同じ方法を用いて、試料No.18,19の第1の領域が球状体の最大外周を含んで帯状に存在し、第2の領域が第1の領域を挟んで存在していることを確認した。また、第1の領域および第2の領域におけるそれぞれの開気孔の面積占有率を測定した結果、試料No.18,19は、第1の領域における開気孔の面積占有率が0.5%以下であり、第2の領域における開気孔の面積占有率が、第1の領域1における開気
孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下であることを確認した。
また、試料No.18,19の各質量を、質量計を用いて測定し、その値を表4に示した。
そして、直径が10μm以下の閉気孔の単位面積当たりの個数の算出に当たっては、まず、光学顕微鏡を用い、倍率を100倍とし、球心を通る断面における、球心を含む領域、球
心と表面との中間領域および表面を含む領域をそれぞれ視野とし、これらの各領域から横方向の長さが1.238mm、縦方向の長さが0.909mmである範囲を指定した。そして、CCDカメラで各範囲の画像を取り込み、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用い、実施例1に示した手法および設定条件により解析し、
閉気孔の1mm当たりの個数を表4に示した。
表4に示すように、試料No.19は、閉気孔を有しており、単位面積当たりにおける直径が10μm以下の閉気孔の個数が球心に向かって多くなっていることから、機械的特性は維持しつつ、内部が軽くなっており軽量化を図ることができていることから、転がり支持装置に用いた場合に、この転がり支持装置を駆動させる駆動手段に掛かる負荷が少なくなり、電力を節約することができる。
このように、本実施形態の球状体は、球状体が摺動して回転するときに第1の領域および第2の領域に掛かる抵抗の違いによって、球状体の回転方向が定まり、第2の領域よりも開気孔の面積占有率の低い第1の領域が摺動面となり、摺動特性および回転特性に優れるとともに、回転時に掛かる負荷に耐えることができるため、これを用いた転がり軸受等の転がり支持装置は、長期間にわたって使用することができる信頼性の高い装置となることがわかった。
1:第1の領域
2:第2の領域
1a:第1の領域の開気孔
2a:第2の領域の開気孔
10:球状体
20:転がり軸受

Claims (4)

  1. 開気孔を有するセラミックスからなり、外形が球状であって、前記開気孔の面積占有率が0%を超えて0.5%以下である第1の領域と、前記開気孔の面積占有率が前記第1の領域における開気孔の面積占有率よりも高く、その差が3%以下である第2の領域とを有し、前記第1の領域が最大外周を含んで帯状に存在し、前記第2の領域が前記第1の領域を挟んで存在していることを特徴とする球状体。
  2. 前記第1の領域における開気孔において、周囲長2を包絡周囲長で除することで算出される凹凸度が3以下であることを特徴とする請求項1に記載の球状体。
  3. 前記セラミクッスは閉気孔を有しており、単位面積当たりにおける直径が10μm以下の前記閉気孔の個数が球心に向かって多くなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の球状体。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の球状体を用いたことを特徴とする転がり支持装置。
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