JP5371227B2 - 誘電性エラストマー組成物および高周波用電子部品材料 - Google Patents
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また、誘電正接が 0.007 以下であるエラストマーに、誘電性セラミックスおよびカーボンブラックを少なくとも配合してなる高誘電性エラストマー組成物であって、上記エラストマー 100 重量部に対して、上記誘電性セラミックスを 600〜1400 重量部および上記カーボンブラックを 5〜40 重量部配合した高誘電性エラストマー組成物が知られている(特許文献2参照)。
また、一般的に、エラストマー系材料において難燃性を向上させるためには、上記ハロゲン系難燃剤の他、金属水酸化物、膨張化黒鉛などを配合することが知られている。金属水酸化物は、例えば電子写真装置の転写ベルト等を構成するエラストマー系材料等に配合することが知られている(特許文献3参照)
このような誘電性エラストマー組成物の難燃性向上のために、難燃剤として上記ハロゲン系難燃剤を用いる場合では、廃棄時にハロゲン系難燃剤からダイオキシンが発生することが懸念され、環境上好ましくない。特に、PBB、PBDEについては、2003年1月制定の欧州連合(EU)のRoHS指令(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限指令)により、これらを電機電子製品に使用することができない。
また、PBB、PBDE以外の臭素系難燃剤は使用禁止とされていないものの、上述したように三酸化アンチモンを併用しており、この三酸化アンチモンには不純物として鉛、水銀、六価クロム、カドミウム等を微量に含むので好ましくない。
また、上記金属水酸化物が、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムであることを特徴とする。
上記誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、上記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする。
また、上記誘電性エラストマー組成物に配合するプロセスオイルに対し、カーボンブラックがプロセスオイルの保油体となり、混練時に生じるプロセスオイルのブリードが低減し、有効に作用するプロセスオイルを確保できるので、カーボンブラック未配合の場合よりも上記誘電性エラストマー組成物の混練性を向上させることができる。
平均粒子径 50〜200 nm を有するカーボンブラックの市販品としては、例えば東海カーボン社製:シーストFM、シーストS、シーストSP、シーストTA等が挙げられる。
天然ゴム系エラストマーとしては、天然ゴム、塩化ゴム、塩酸ゴム、環化ゴム、マレイン酸化ゴム、水素化ゴム、天然ゴムの二重結合にメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフトさせてなるグラフト変性ゴム、窒素気流中でモノマー存在下に天然ゴムを粗錬してなるブロックポリマー等を挙げることができる。これらは、天然ゴムを原料とするものの他、合成 cis-1,4-ポリイソプレンを原料としたエラストマーを挙げることができる。
これらの中で電気特性から、スチレン系およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる少なくとも1つのエラストマーを用いることが好ましい。特にエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムは誘電正接が極めて低いので、アンテナなどの高周波用電子部品材料として好ましく用いることができる。
本発明に使用できるエラストマーとしては、25℃において、比重が 0.8〜1.1 であるエラストマーが好ましい。比重が 0.8 未満であると、低分子量のため強度が弱く、成形体の空孔が多くなるので好ましくない。また、比重が 1.1 をこえると製品重量が重くなるので好ましくない。
本発明に使用できる誘電性セラミックス粉末は、IIa、IVa、III b、IVb族の酸化物、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、またはIIa、IVa、III b、IVb族を含む複合酸化物から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。具体的には、TiO2、CaTiO3、MgTiO3、Al2 O3、BaTiO3、SrTiO3、Ca2 P2 O7、SiO2、Mg2 SiO4、Ca2 MgSi2O7 、あるいは比誘電率の温度依存性を改良するため、アルカリ土類金属と希土類酸化物を配合したBaO−TiO2−Nd2O3系セラミックス等が挙げられる。また、特性改良のため、Al、Zr等の微量組成物を配合してもよい。
本発明に使用できる金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。これらの金属水酸化物は、高熱下で吸熱脱水反応を起こすことにより、吸熱し、水分子を放出することで、温度を低下させ難燃性を付与できる。なお、上記金属水酸化物は、分散性、加工性などを改良するため、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ系表面処理剤、高級脂肪酸またはその塩、高級アルコール、界面活性剤等により表面処理が施されていてもよい。
100 重量部未満であると、十分な難燃性を得ることができない。一方、600 重量部をこえると、誘電正接が温度によっては 0.02 以上となる等、アンテナ等の高周波用電子部品材料として要求される誘電特性を満足できなくなる。また、上記範囲で金属水酸化物を配合することで、比誘電率の温度変化を小さくできる。
臭素系難燃剤としては、PBDEおよびPBBを除く臭素系難燃剤であれば任意のものを使用できる。例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、ビス(3,5-ジブロモ-4-ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン、トリアリルイソシアネート6臭化物、ヘキサブロモシクロドデカン、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化ポリスチレン等が挙げられる。
これらの中で、融点が 300℃以上、臭素化率が 80 %以上と高いことから、エチレンビスペンタブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテルが好ましい。エチレンビスペンタブロモベンゼンの市販品としては、鈴裕化学社製:FCP801が、デカブロモジフェニルエーテルの市販品としては、鈴裕化学社製:FCP83Dがそれぞれ挙げられる。
得られた誘電性エラストマー組成物を、射出成形や押し出し成形、加熱圧縮成形等により成形して誘電性エラストマー組成物の成形体を得ることができる。
張合わせ加工に用いる接着手段として、例えば京セラケミカル社製:TFA−880CC、TFA−890EA、信越化学工業社製:E56、ニッカン工業社製:SAFV、SAFD、SAFW等の接着フィルムを利用することができる。その他、接着剤を塗布して張合わせることも可能である。
また、インサート成形については所定の位置に電極を装着した成形用金型に誘電性エラストマー組成物を充填し成形することができる。
エチレンプロピレンゴム(JSR社製:EP35)と、誘電性セラミックス粉末(共立マテリアル社製:HF−120またはSTNAS)と、カーボンブラック(東海カーボン社製:シーストシリーズ5種類)と、水酸化マグネシウム(堺化学工業社製:MGZ−1)と、臭素系難燃剤(鈴裕化学社製:FCP801)と、プロセスオイル(出光興産社製:PW380)と、酸化亜鉛(井上石灰工業社製:META−Z L40)と、ステアリン酸(花王社製:ルナックS−30)とをそれぞれ表1に示す配合割合で混合し、さらに老化防止剤(精工科学社製:ノンフレックスRD)、加硫促進剤(住友化学社製:ソクシノールM)および過酸化物架橋剤(精工科学社製:ハイクロスM)を加えて、加圧ニーダで混練り後、加熱圧縮成形にて、80 mm×80 mm×1.5 mm の成形体を得た。加硫条件は、それぞれ 170℃×20分である。なお、表中の粒子径は、平均粒子径である。
各実施例、参考例および比較例にて得られた誘電性エラストマー組成物の成形体について、比誘電率および誘電正接の測定を以下の方法により行なった。結果を表1に併記する。
得られた成形体を容量法により 400 MHz の周波数帯において、30℃を基準とする比誘電率および誘電正接を測定した。容量法に用いた測定装置はインピーダンスアナライザー:E4991A(アジレント・テクノロジー社製)、電極は16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
難燃剤を配合して得られた成形体についてはまたはASTM D3801に準拠するUL94V燃焼試験に供し、成形体の難燃性について試験法で規定する難燃性等級を得た。
また、カーボンブラックを 25 重量部配合した参考例2、参考例4〜参考例6を比較すると、カーボンブラックの粒子径が 95 nm および 122 nm の場合の誘電正接がいずれも 0.004 以下であり、特にカーボンブラックの粒子径が 90〜130 nm 程度であると優れた誘電特性を示すことがわかる。
Claims (7)
- エラストマーに金属水酸化物とカーボンブラックとを配合してなり、誘電性セラミックスを含まない誘電性エラストマー組成物であって、
前記カーボンブラックは、平均粒子径が 50〜200 nm であり、前記エラストマー 100 重量部に対して、5〜40 重量部配合してなり、
周波数 400 MHz および温度 30℃において、前記誘電性エラストマー組成物の比誘電率が 3 以上、誘電正接が 0.01 以下であることを特徴とする誘電性エラストマー組成物。 - 前記誘電性エラストマー組成物は、ポリブロモジフェニルエーテルおよびポリブロモビフェニルを除く臭素系難燃剤を配合してなることを特徴とする請求項1記載の誘電性エラストマー組成物。
- 前記金属水酸化物は、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電性エラストマー組成物。
- 前記エラストマーは、スチレン系およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる少なくとも1つのエラストマーであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の誘電性エラストマー組成物。
- 前記エラストマーは、エチレンプロピレンゴムであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の誘電性エラストマー組成物。
- 周波数 100 MHz 以上の電気信号を取り扱うための高周波用電子部品材料であって、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の誘電性エラストマー組成物の成形体を用いてなることを特徴とする高周波用電子部品材料。 - 前記誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、前記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする請求項6記載の高周波用電子部品材料。
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