JP5571875B2 - 高周波用電子部品材料 - Google Patents
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また、一般的に、エラストマー系材料において難燃性を向上させるためには、上記ハロゲン系難燃剤の他、金属水酸化物、膨張化黒鉛などを配合することが知られている。金属水酸化物は、例えば電子写真装置の転写ベルト等を構成するエラストマー系材料等に配合することが知られている(特許文献2参照)。
このような誘電性エラストマー組成物の難燃性向上のために、難燃剤として上記ハロゲン系難燃剤を用いる場合では、廃棄時にハロゲン系難燃剤からダイオキシンが発生することが懸念され、環境上好ましくない。特に、PBB、PBDEについては、2003年1月制定の欧州連合(EU)のRoHS指令(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限指令)により、これらを電機電子製品に使用することができない。
また、PBB、PBDE以外の臭素系難燃剤は使用禁止とされていないものの、上述したように三酸化アンチモンを併用しており、この三酸化アンチモンには不純物として鉛、水銀、六価クロム、カドミウム等を微量に含むので好ましくない。
また、アンテナ材料において膨張化黒鉛を配合する場合では、難燃性は向上するが、上記誘電特性が極端に悪化するので好ましくない。
また、上記誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、上記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする。
また、水酸化マグネシウム粉末の平均粒子径が 10μm 以下であるので、誘電性エラストマー組成物における水酸化マグネシウムの分散性が向上する。
本発明者らは、難燃剤として使用する水酸化マグネシウム粉末について、誘電正接が高くなるのは、その不純物濃度による影響が大きいことに着目し、Fe2O3 などの不純物の濃度が一定値以下の水酸化マグネシウム粉末を使用することで、アンテナ材料として十分な誘電特性と難燃性とを両立した誘電性エラストマー組成物を得た。本発明は以上のような知見に基づくものである。
また、不純物濃度としてCaOが 0.2 重量%以下であることが好ましい。CaOが 0.2 重量%をこえる場合には、誘電正接が高くなるので好ましくない。
また、不純物濃度としてSiO2 が 0.2 重量%以下であることが好ましい。SiO2 が 0.2 重量%をこえる場合には、誘電正接が高くなるので好ましくない。
また、上記水酸化マグネシウム粉末は、BET比表面積は 1〜20 m2/g 以下の範囲にあり、かつ平均粒子径が 0.1〜50μm の範囲であることが好ましい。特に、誘電性エラストマー組成物における水酸化マグネシウム粉末の分散性を向上させるため、平均粒子径は 10μm 以下であることが好ましい。
また、上記水酸化マグネシウム粉末は、分散性、加工性などを改良するため、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ系表面処理剤、高級脂肪酸またはその塩、高級アルコール、界面活性剤等により表面処理を施すことが好ましい。
また、水酸化マグネシウムについて、高級脂肪酸またはその塩で表面処理する場合は、高級脂肪酸またはその塩を溶かして噴霧し、ヘンシェルミキサー等により乾式法で表面処理する方法等を採用できる。高級脂肪酸およびその塩としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩等が用いられる。
臭素系難燃剤としては、PBDEおよびPBBを除く臭素系難燃剤であれば任意のものを使用できる。例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、TBA−ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、ビス(3,5-ジブロモ-4-ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン、トリアリルイソシアネート6臭化物、ヘキサブロモシクロドデカン、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化ポリスチレン等が挙げられる。
これらの中で、融点が 300℃以上、臭素化率が 80 %以上と高いことから、エチレンビスペンタブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテルが好ましい。エチレンビスペンタブロモベンゼンの市販品としては、鈴裕化学社製:FCP801が、デカブロモジフェニルエーテルの市販品としては、鈴裕化学社製:FCP83Dがそれぞれ挙げられる。
300 重量部未満であると、十分な難燃性(具体的には後述の実施例に記載する試験)を得ることができない。一方、600 重量部をこえると、誘電正接が温度によっては 0.006 をこえる等、高周波用電子部品材料として要求される誘電特性を満足できなくなる。
また、臭素系難燃剤を併用する場合では、エラストマー 100 重量部に対して 100〜600 重量部であることが好ましい。より好ましくは、150〜300 重量部である。水酸化マグネシウム粉末の配合割合が、100 重量部未満であると、難燃性確保のため臭素系難燃剤を 100 重量部をこえて配合する必要があり、成形性が悪化し、誘電正接が高くなるとともに、環境上好ましくない。水酸化マグネシウム粉末が 600 重量部をこえると成形性が悪化する、誘電正接が高くなる等の問題がある。
本発明では上記エラストマーの中でも、電気特性に優れることから、スチレン系およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる少なくとも1つのエラストマーを用いることが好ましい。特にエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムは誘電正接が極めて低いので、アンテナ用部材などの高周波用電子部品材料として好ましく用いることができる。
本発明に使用できる誘電性セラミックス粉末は、IIa、IVa、IIIb、IVb族の酸化物、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、またはIIa、IVa、IIIb、IVb族を含む複合酸化物から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。具体的には、TiO2、CaTiO3、MgTiO3、Al2 O3、BaTiO3、SrTiO3、Ca2 P2 O7、SiO2、Mg2 SiO4、Ca2 MgSi2O7 、あるいは比誘電率の温度依存性を改良するため、アルカリ土類金属と希土類酸化物を配合したBaO−TiO2−Nd2O3 系セラミックス等が挙げられる。また、特性改良のため、Al、Zr等の微量組成物を配合してもよい。
得られた誘電性エラストマー組成物を、射出成形や押し出し成形、加熱圧縮成形等により成形して誘電性エラストマー組成物の成形体を得ることができる。
張合わせ加工に用いる接着手段として、例えば京セラケミカル社製:TFA−880CC、TFA−890EA、信越化学工業社製:E56、ニッカン工業社製:SAFV、SAFD、SAFW等の接着フィルムを利用することができる。その他、接着剤を塗布して張合わせることも可能である。
また、インサート成形については所定の位置に電極を装着した成形用金型に誘電性エラストマー組成物を充填し成形することができる。
エチレンプロピレンゴム(JSR社製:EP35)と、水酸化マグネシウム(神島化学工業社製:N−6またはN−4 高級脂肪酸による表面処理有り)と、臭素系難燃剤(鈴裕化学社製:FCP801)と、誘電性セラミックス粉末(共立マテリアル社製:STNAS)と、カーボンブラック(東海カーボン社製:シーストS)と、プロセスオイル(出光興産社製:PW380)とをそれぞれ表1に示す配合割合で混合し、さらに加硫促進剤および加工助剤を加えて、加圧ニーダで混練り後、加熱圧縮成形にて、150 mm×150 mm×2.0 mm の成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ 170℃×20分である。
各実施例および比較例にて得られた誘電性エラストマー組成物の成形体について、容量法および空洞共振器法による比誘電率および誘電正接の測定、成形性の評価および難燃性試験を以下の方法により行なった。なお、実施例2は容量法のみ、実施例7は空洞共振器法のみによる測定をそれぞれ実施した。結果を表1に併記する。
水酸化マグネシウムに神島化学工業社製:N−6を用いて実施例1と同様に処理し、成形性の評価を以下の方法により行なった。結果を表1に併記する。
得られた成形体から 20 mm×20 mm×1.5 mm の成形体試験片を切り出し容量法により 400 MHz の周波数帯において、30℃を基準とする比誘電率および誘電正接を測定した。容量法に用いた測定装置はインピーダンスアナライザー:E4991A(アジレント・テクノロジー社製)、電極は16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
得られた成形体から、1.5 mm×1.5 mm×80 mm の短冊状試験片を加工し、空洞共振器法(1998年7月、Electronic Monthly誌、16〜19頁)を用いて、1、3、5 GHz の周波数帯で 25℃における比誘電率および誘電正接を測定した。
150 mm×150 mm×2.0 mm の成形体の四隅まで十分に流動し、端部まで充填できた場合、成形性に優れると評価して「○」を、四隅まで十分に流動せず、充填不足が生じた場合、成形性に劣ると評価して「×」を記録する。
得られた成形体をASTM D635に準拠するUL94HB燃焼試験、またはASTM D3801に準拠するUL94V燃焼試験に供し、成形体の難燃性について、それぞれの試験法で規定する難燃性等級を得た。難燃性が認められないものはHB以下であることを示す表記として「×」を記録する。
表面処理を施さなかった水酸化マグネシウムを用いた比較例5は、エチレンプロピレンゴムと水酸化マグネシウム粉末の親和性が悪く混練時の撹拌抵抗が大きいため、成形性に劣る結果となった。比較例6は水酸化マグネシウム粉末の充填量が多いため、混練時の抵抗が大きく、良好な成形体を得ることができなかった。比較例7はセラミック粉末の充填量が多いため、混練時の抵抗が大きく、良好な成形体を得ることができなかった。
Claims (6)
- 誘電性エラストマー組成物の成形体からなり、周波数 100 MHz 以上の電気信号を取り扱うための高周波用電子部品材料であって、
前記誘電性エラストマー組成物は、エラストマーに、三酸化二鉄の含有量が 0.02 重量%以下、酸化カルシウムの含有量が 0.2 重量%以下、および二酸化珪素の含有量が 0.2 重量%以下の水酸化マグネシウム粉末と、誘電性セラミックス粉末とを配合してなる誘電性エラストマー組成物であり、
前記水酸化マグネシウム粉末は、表面処理を施したものであり、
前記誘電性エラストマー組成物における前記水酸化マグネシウム粉末の配合割合は、前記誘電性エラストマー組成物が臭素系難燃剤を含有しない場合は、前記エラストマー 100 重量部に対して 300〜450 重量部であり、前記誘電性エラストマー組成物が臭素系難燃剤を含有する場合は、前記エラストマー 100 重量部に対して 150〜300 重量部であり、
前記誘電性エラストマー組成物における前記誘電性セラミックス粉末の配合割合は、前記エラストマー 100 重量部に対して 50〜1000 重量部であり、
(1)周波数 400 MHz および 温度 30℃、(2)周波数 5 GHz および 温度 25℃ の少なくともいずれかの測定条件において、前記誘電性エラストマー組成物の比誘電率が 3 以上、誘電正接が 0.006 以下であることを特徴とする高周波用電子部品材料。 - 前記水酸化マグネシウム粉末は、平均粒子径が 10μm 以下であることを特徴とする請求項1記載の高周波用電子部品材料。
- 前記誘電性エラストマー組成物は、ポリブロモジフェニルエーテルおよびポリブロモビフェニルを除く臭素系難燃剤を配合してなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波用電子部品材料。
- 前記エラストマーは、スチレン系およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる少なくとも1つのエラストマーであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の高周波用電子部品材料。
- 前記エラストマーは、エチレンプロピレンゴムであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の高周波用電子部品材料。
- 前記誘電性エラストマーの成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、前記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の高周波用電子部品材料。
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