以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
図1は、本発明を適用した一実施形態における電動圧縮機の外形を示す正面図である。図2は、図1中A−A線断面図であり、図3は、電動圧縮機の内部構造を示す断面図である。
図1に示す電動圧縮機100は、例えば、自動車のエンジンルーム内に配置されている。電動圧縮機100は、凝縮器、減圧器、および蒸発器とともに、車両空調装置用の冷凍サイクル装置を構成している。電動圧縮機100はハウジング1を備えている。
ハウジング1は、伝熱性の高いアルミニウム材もしくはアルミニウム合金材等の金属からなるもので、略円筒状に形成されている。ハウジング1には、冷媒吸入口1aおよび冷媒吐出口1bが設けられている。
冷媒吸入口1aは、ハウジング1において軸線方向一方側に配置されている。冷媒吸入口1aには、蒸発器の冷媒出口からの冷媒が流入する。冷媒吐出口1bはハウジング1において軸線方向他方側に配置されている。冷媒吐出口1bは、凝縮器の冷媒入口に向けて冷媒を吐出する。
ハウジング1の上側には脚部2が設けられている。ハウジング1の下側には脚部3、4が設けられている。脚部2、3、4には、それぞれ、ボルト5を貫通させる貫通孔が設けられている。各ボルト5は、脚部2、3、4の貫通孔に貫通した状態で、ハウジング1をエンジンの側壁に固定する。
電動圧縮機100は、図2および図3に示すように、モータ部10(モータに相当)、インバータ回路20(駆動回路部に相当)、圧縮機構30、およびインバータカバー40(カバー部材に相当)、プレート50(プレート部材に相当)等から構成されている。
モータ部10は、三相同期モータであって、回転軸12、ロータ13、ステータコア14、およびステータコイル15から構成されている。
回転軸12は、ハウジング1内に配置されている。回転軸12はその軸線方向がハウジング1の軸線方向に一致している。回転軸12は、軸受け12a、12bにより回転自在に支持されている。回転軸12は、ロータ13から受ける回転駆動力を圧縮機構30に伝える。軸受け12a、12bは、ハウジング1により支持されている。
ロータ13は、例えば永久磁石が埋め込まれたもので、筒状に形成されているものであって、回転軸12に対して固定されている。ロータ13は、ステータコア14から発生される回転磁界に基づいて、回転軸12とともに回転する。
ステータコア14は、ハウジング1内においてロータ13(回転軸12)に対して径方向外周側に配置されている。ステータコア14は、その軸線方向が回転軸12の軸線方向に一致する筒状に形成されている。ステータコア14は、ロータ13との間に隙間を形成している。隙間は、回転軸12の軸線方向に並行に冷媒を流す冷媒流路17を構成している。
ステータコア14は、磁性体からなるもので、ハウジング1の内周面から支持されている。ステータコイル15は、ステータコア14に対して回巻されている。ステータコイル15は後述するように回転磁界を発生する。
圧縮機構30は、モータ部10に対して軸線方向他方側に配置されている。圧縮機構30は、例えば、固定スクロールと可動スクロールとから構成されるスクロール型コンプレッサであって、モータ部10の回転軸12からの回転駆動力によって可動スクロールを旋回させて冷媒を吸入、圧縮、吐出する。
ハウジング1には、図2および図3図示上方側の部位に、例えば矩形状の開口部9が設けられており、この開口部9を閉塞するように、例えば伝熱性の高いアルミニウム材もしくはアルミニウム合金材等の金属からなる平板状のプレート50が配設されている。インバータ回路20は、プレート50の表面(表側の面、図示上方側の面)50aを取付面としてプレート50に装着されている。
ハウジング1とプレート50との間には熱絶縁ガスケット51(低熱伝導性部材に相当)が介設されている。熱絶縁ガスケット51は、ハウジング1およびプレート50のいずれよりも熱伝導率が低い材料(例えばゴム材)からなり、ハウジング1とプレート50との間の熱伝達を抑制するようになっている(実質的にハウジング1とプレート50との間を熱的に絶縁するようになっている)。
熱絶縁ガスケット51は、開口部9を全周に亘って取り囲むように環状に配設され、ハウジング1の外周面における開口部9の開口縁部と、プレート50の裏面50b(表面50aとは反対側の面)における外周縁部との間に介装されている。
図示は省略しているが、ハウジング1とプレート50とは螺子止め等の締結手段により締結されて係止されており、熱絶縁ガスケット51はハウジング1およびプレート50の両者に押し付けられて(例えばゴム製である場合は、ハウジング1とプレート50との間で若干圧縮されて)、ハウジング1とプレート50との間を気密シールするシール部材としても機能している。
なお、ハウジング1とプレート50とは、螺子止め等の締結手段により締結された係止部位において若干接触しているが、係止部位以外では直接接触しておらず、熱絶縁ガスケット51を挟んで離間している。インバータ回路20の装着部位については後で詳述する。
インバータ回路20は、半導体素子等からなり、モータ部10を駆動する三相電圧を発生する駆動回路を構成している。インバータカバー40は、インバータ回路20を覆うように形成されている。インバータカバー40は、ハウジング1に例えばネジ(図示省略)により締結されている。
ステータコア14の外周壁には、図2に示すように、凹部14a、14b、14c、14dが設けられている。凹部14aは、回転軸12の径方向中心側に凹んで、かつステータコア14に対して軸線方向に並行に延びるように形成されている。同様に、凹部14b、14c、14dは、回転軸12の径方向中心側に凹んで、かつステータコア14に対して軸線方向に並行に延びるように形成されている。
凹部14a、14b、14c、14dは、回転軸12を中心とする円周方向に同一間隔でずれるように配置されている。凹部14aは、インバータ回路20側に配置されている。凹部14aは、ハウジング1の開口部9を挟んで対峙するプレート50の裏面50bとの間に第1の冷媒流路60(冷媒流通路に相当)を構成する。凹部14b、14c、14dは、それぞれ、ハウジング1の内周面との間に第2の冷媒流路61、62、63を構成する。
ここで、凹部14aにおいてインバータ回路20側には(凹部14aの内面には)、断熱膜80が設けられている。図2には模式的に所定の厚みを有する断熱膜80が示されているが、実際には、断熱膜80としては、薄膜状に形成されているものが用いられる。
断熱膜80は、凹部14aの底部140および側部141a、141bを覆うように形成されている。すなわち、断熱膜80は、軸線方向から視て略断面コ字状に形成されている。断熱膜80は、冷媒とステータコア14との間の熱伝達を妨げる。
図2から明らかなように、ハウジング1の開口部9の内面(開口側の面)にも、断熱膜81が設けられている。断熱膜81は、断熱膜80と同様に、薄膜状に形成されているものが用いられる。なお、断熱膜81は、開口部9の内面ばかりでなく、ハウジング1の第1の冷媒流路60を構成する面にも設けることができる。
断熱膜80および断熱膜81は、冷媒や潤滑油(圧縮機油)に対する耐性が強く、かつ高温度高圧に耐え得る材料が用いられ、例えば、ビスマス(金属系)、セラミックス(無機高分子)、ポリイミド(有機高分子)などを用いることができる。断熱膜80および断熱膜81としては、特に、耐熱性に優れたポリイミドを用いることが好ましい。断熱膜80と断熱膜81とは、図2で図示したように別体であってもよいし、一体としてもかまわない。また、断熱膜81は、熱絶縁ガスケット51と一体であってもかまわない。熱絶縁ガスケット51、絶縁膜80、81を一体としてもかまわない。
断熱膜80および断熱膜81は、本実施形態において冷媒流通路を取り囲む壁面のうちプレート50の裏面50bを除く壁面に形成された断熱層に相当する。
次に、図4および図5に基づいて、モータを駆動する駆動回路部の構成について説明する。図4は、駆動回路部であるインバータ回路20の配設部位の概略構成を示す断面図であり、図5は、インバータ回路20の一部を拡大した断面図である。
図4に示すように、インバータ回路20は、プレート50の表面50aおよびプレート50の表面50aに並ぶように延びるハウジング1の取付面1cに取り付けられてインバータカバー40で覆われている。換言すれば、インバータ回路20は、プレート50の表面50aおよびハウジング1の取付面1cを底面部とし、インバータカバー40が側面部および天井面部となるケーシング内に収容されている。インバータカバー40とハウジング1との間にはシール部材41が配設されており、インバータ回路20の収容空間と外部空間とを遮断している。
図4で図示したように、シール部材41は、前述の熱絶縁ガスケット51とは別体であったが、シール部材41と熱絶縁ガスケット51とは一体であってもかまわない。なお、図2および図3では、シール部材41の図示を省略している。
インバータ回路20は、第1基板21と第2基板22とを有し、第1基板21と第2基板22とはワイヤ23等の電気的接続手段で接続されている。第1基板21は、本発明の回路基板に相当し、パワー素子214等を内蔵している素子内蔵回路基板である。
一方、第2基板22は、絶縁基材内に素子を内蔵していない非素子内蔵回路基板であり、例えばガラスエポキシ基板等の所謂汎用プリント基板からなり、絶縁基材の表面を含む絶縁基材の外部に回路素子の本体部が配設されるように各種素子等が実装されている。第2基板22には、外部との接続端子を有するコネクタ221や電源フィルタ等の大型部品が実装されている。
第1基板21はプレート50の表面50aに取り付けられ、第2基板22はハウジング1の取付面1cに取り付けられ、プレート50の表面50aおよびハウジング1の取付面1cが延びる方向に並設されている。すなわち、第1基板21と第2基板22とは、プレート50の表面50aおよびハウジング1の外面の延面方向において並設されている。
本実施形態では、図4図示上下方向から見たときに、第1基板21は、その全域がハウジング1の開口部9の開口領域内に位置するように配設されている。
第1基板21とプレート50の表面50aとの間、および、第2基板22とハウジング1の取付面1cとの間には、それぞれ、全域に亘って絶縁放熱シート24(電気的に絶縁する絶縁シート部材に相当)が介設されている。絶縁放熱シート24は、例えば樹脂材(例えばシリコーン樹脂)、ゴム材(例えばシリコーンゴム)、無機材(例えばマイカ)等のいずれかからなる。
図5に示すように、第1基板21は、熱可塑性樹脂からなる絶縁基材211と、絶縁基材211の内部に配置されたパワー素子214と、絶縁基材211の内部や表面に配置された他の回路素子215(例えば、抵抗等の受動素子)等の電子部品と、絶縁基材211の内部や表面に形成され、パワー素子214や他の回路部品215と電気的に接続する配線部としての導体パターン212および層間接続ビア213とを備えている。
換言すれば、第1基板21は、熱可塑性樹脂からなる絶縁基材211の表面および内部に導体パターン212が多層に配置され、異なる層の導体パターン212の一部が層間接続部である層間接続ビア213(例えば、導電性ペーストなどを採用することができる)によって電気的に層間接続されるとともに、絶縁基材211中に導体パターン212及び層間接続部213と電気的に接続されたパワー素子214等の電子部品が配置された多層基板である。
また、第1基板21は、絶縁基材211内に埋め込まれた伝熱部材である例えば銅製で薄板状の放熱用チップ216を備えている。放熱用チップ216は、絶縁基材211内においてパワー素子214よりもプレート50の表面50a側(図5図示下方側)となる部位に埋設されている。放熱用チップ216は、図示下面が絶縁基材211から露出しており、放熱用チップ216の下面と絶縁基材211の下面とは同一平面内にある。
第1基板21の絶縁基材211は、例えば、熱可塑性の樹脂フィルム(基材フィルム)を複数枚積層して、相互に接着(溶着)して構成されている。なお、樹脂フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドの混合材、或いは液晶ポリマーなどを採用することができる。
第1基板21は、表面に配線部の一部として例えば金属箔からなる導体パターン212が形成されると共に、この導体パターン212を底部とするビアホール内に導電体(例えば、導電性ペースト)が埋め込まれた配線部の一部としての層間接続ビア213を有する熱可塑性の樹脂フィルム(基材フィルム)や、パワー素子214等の内蔵電子部品や放熱用チップ216等の内蔵部品の体格に応じた貫通孔を有する熱可塑性の樹脂フィルム(基材フィルム)などを複数層積層して、相互に接着(溶着)して構成されている。
なお、導体パターン212は、比較的大電流が流れる所謂パワー系(例えばモータ電流系統)では非パワー系(例えば信号伝達系統)よりも導体厚さを厚くすることが好ましい。パワー系の導体パターン212を非パワー系の導体パターン212と同一層に配置する場合には、パワー系の導体パターン212として例えば銅製の金属プレート部材を用いることができ、パワー系の導体パターン212を非パワー系の導体パターン212と異なる層に配置する場合には、パワー系の導体パターン212を非パワー系の導体パターン212よりも厚い金属箔もしくは金属プレート部材により形成することができる。
この第1基板21は、以下のようにして製造することができる。上述のような複数枚の熱可塑性の樹脂フィルムを、内部にパワー素子214等を配置しつつ積層する。そして、この積層体を加熱しながら、積層方向における両側から加圧する。例えば、250〜350℃の雰囲気温度下で1〜10MPaの圧力で10〜20分間加圧する。このようにして、一括で熱圧着接合して第1基板21を製造することができる。
なお、第1基板21の絶縁基材211として、熱可塑性の樹脂フィルムを複数枚用いる例を説明したが、絶縁基材211は、少なくとも熱可塑性樹脂を含むものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂を含む基材フィルムと、熱硬化性樹脂を含む基材フィルムとを相互に(例えば、交互に、あるいは、熱硬化性樹脂を含む基材フィルムが連続して積層されないように)積層してなるものを採用するようにしてもよい。この例では、熱可塑性樹脂を含む基材フィルムが接着剤層として機能する。
また、熱可塑性樹脂は、絶縁基材211に内蔵するパワー素子214等の内蔵素子の周囲に配設することが好ましい。内蔵素子に接する部分の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を配置することが好ましく、内蔵素子を取り囲む全域(全面)に亘って熱可塑性樹脂を配置することがさらに好ましい。内蔵素子に接する部分に熱可塑性樹脂を配置すると、積層した複数枚の樹脂フィルムを加熱プレスして絶縁基材211を形成する際に、絶縁基材211中にパワー素子214等の内蔵素子を封止する(内蔵素子の外面の電気接続部を除く全域を絶縁基材に密着させる)ことが容易である。
図5から明らかなように、第1基板21には、図示左方側端部近傍に、絶縁基材211を厚さ方向(図示上下方向)に貫通する貫通孔211aが形成されている。
放熱用チップ216は、絶縁基材211の厚さ方向(図示上下方向)におけるパワー素子214の投影領域の一部もしくは全域を含むように配設され、図示左方側に大きく延設されている。そして、放熱用チップ216は、絶縁基材211の貫通孔211aが形成された部分を含む領域にまで延設されている。放熱用チップ216には、絶縁基材211の貫通孔211aに対応して、同軸上に貫通孔216aが形成されている。
プレート50の表面50aには、図5では図示を省略したモータ部10のステータコイル15から延びプレート50を貫通する貫通端子16が突出しており、貫通端子16の表面50aより図示上方に突出した部分は、絶縁基材211の貫通孔211a内に配設されている。貫通端子16は、プレート50を貫通する部分において、プレート50との間が例えばガラス材により気密に封止された所謂ハーメチック端子である。
貫通端子16は、半田付け等の電気的接合手段により、第1基板21の放熱用チップ216に電気的に接続している。放熱用チップ216は、導体パターン212と接すること等により、パワー素子214と電気的に接続されており、放熱用チップ216の貫通端子16との接続部分(放熱用チップ216の貫通孔216a部分)が、第1基板21からモータ部10へ供給電力を出力する出力部となっている。
なお、貫通端子16は、放熱用チップ216のみと電気的に接続されていてもよいが、放熱用チップ216と同一電位にある導体パターン212等とも接続されていてもかまわない。
上述した構成の電動圧縮機100の作動について簡単に説明する。まず、インバータ回路20が電源投入されて、モータ部10のステータコイル15に対して三相の駆動電流を流す。これに伴って、ステータコア14から回転磁界が発生するため、ロータ13に対して回転力が発生する。すると、ロータ13が回転軸12とともに回転する。したがって、圧縮機構30は、回転軸12からの回転駆動力によって旋回して冷媒を吸入する。
このとき、蒸発器側からの吸入冷媒は、ハウジング1の冷媒吸入口1a側内に流入する。すると、この吸入冷媒は、冷媒流路17、60、61、62、63を通過して圧縮機構30側に流れる。吸入冷媒は、圧縮機構30で圧縮され、冷媒吐出口1bから凝縮器側に吐出される。
一方、インバータ回路20は、その作動に伴って熱を発生する。この熱が主にプレート50を介して冷媒流路60内の冷媒に伝わる。パワー素子214を内蔵して比較的発熱量が大きい第1基板21が発する熱は、プレート50を介して冷媒流路60内の冷媒に伝わる。一方、第2基板22が発する熱は、ハウジング1のうち外面に取付面1cが形成された部位を介して冷媒流路60内の冷媒に伝わる。
このとき、ステータコイル15は、三相の駆動電流の通電に伴って熱を発生するものの、断熱膜80により冷媒流路60内の冷媒とステータコア14との間の熱伝達を妨げる。また、ハウジング1は、ステータコア14や圧縮機構30からの熱を受けて昇温するものの、断熱膜81により冷媒流路60内の冷媒とハウジング1との間の熱伝達を妨げる。したがって、冷媒流路60内の冷媒によりインバータ回路20を冷却することになる。
また、ステータコイル15から発生した熱は、ステータコア14を通して冷媒流路17、61〜63内の冷媒に伝わる。これにより、ステータコア14、およびステータコイル15を冷媒流路17、61〜63内の冷媒により冷却することができる。
上述の構成によれば、ハウジング1に開口部9を設け、この開口部9を閉塞するとともに裏面50bが冷媒流路60に臨むようにプレート50を配設し、ハウジング1およびプレート50のいずれよりも熱伝導率が低い材料からなる熱絶縁ガスケット51をハウジング1とプレート50との間に介装して、プレート50の表面50aにインバータ回路20の第1基板21を装着している。
これによると、モータ部10を駆動するインバータ回路20のパワー素子214を内蔵する第1基板21は、ハウジング1から熱が伝わり難いプレート50の表面50aに取り付けられており、プレート50の裏面50b側の冷媒流路60を流通する吸入冷媒で冷却される。したがって、ハウジング1がモータ部10や圧縮機構30からの熱を受けて温度が高くなっていたとしても、プレート50の温度を吸入冷媒の温度に近似させることができ、第1基板20を確実に冷却することができる。このようにして、インバータ回路20を冷却する性能を向上することができる。
また、モータ部10と一体となったハウジング1は、比較的熱容量が大きいため、電動圧縮機100が高温環境下で起動した際の初期には、内部に吸入冷媒の流入があっても温度が下がり難い。したがって、本発明を適用していない場合には、パワー素子214の起動温度の制約要件となる場合があった。ところが、本実施形態によれば、プレート50は比較的熱容量が小さく、ハウジング1から熱が伝わり難いので、ハウジング1の内部に吸入冷媒の流入があれば速やかにプレート50の温度を下げることができる。
また、インバータ回路20の第1基板21よりも発熱し難い第2基板22は、ハウジング1の外面に装着されて、ハウジング1を介して冷媒流路60を流通する吸入冷媒で冷却される。これによると、プレート50を第1基板21に対応した大きさとして、ハウジング1に設ける開口部9の開口面積を比較的小さくすることができる。
また、第1の冷媒流路60を取り囲む壁面のうちプレート50の裏面50bおよびハウジング1の取付面1c形成部位の内面を除く壁面の少なくとも一部に、断熱膜80、81が形成されている。これによると、冷媒流路60を流通する吸入冷媒がハウジング1やステータコア14から受熱して昇温することを抑制することができる。
なお、断熱膜80、81は、軸線方向におけるステータコア14の配設範囲において、第1の冷媒流路60を取り囲む壁面に設けていたが、冷媒吸入口1aから連続するように断熱膜等の断熱層を設け、冷媒流入口1aから流入した吸入冷媒がプレート50の裏面50bに到達するまで熱的に隔絶されるような流通路を形成することが、冷却性能向上のためには好ましい。
また、モータ部10から延びプレート50を貫通する貫通端子16は、プレート50の裏面50bより内方の部分は、第1の冷媒流路60内に位置し、吸入冷媒で冷却されるようになっている。貫通端子16は、一般的に熱膨張特性を優先して導体材料(例えば、鉄50%ニッケル50%の合金)が選定され、導電時には比較的発熱し易い。本実施形態によれば、冷媒流路60を流通する吸入冷媒で導電時に発熱し易い貫通端子16も冷却することができる。
さらに、貫通端子16は、放熱用チップ216等の比較的熱伝導性が良好な導体材料を介してパワー素子214に接続している。したがって、吸入冷媒で冷却された貫通端子16を介して、貫通端子16が接続するパワー素子216を冷却することができる。
また、駆動回路部であるインバータ回路20は、モータ部10へ供給する供給電力を制御するパワー素子214を絶縁基材211中に内蔵した第1基板21を備えており、第1基板21は、プレート50の表面50aに取り付けられ、ハウジング1内を流通する吸入冷媒で冷却されるようになっている。したがって、パワー素子214の本体部を回路基板とは異なる層に配設してプレート50に押し付け冷却する必要がない。このようにして、パワー素子214の冷却性を確保しつつインバータ回路20の体格を小型化することができる。
また、パワー素子の本体部を回路基板とは異なる層に配設してプレート50に押し付けパワー素子を冷却する場合には、回路基板の熱をプレート50に伝え難いが、本実施形態の構成によれば、第1基板21からプレート50に放熱することが可能であり、放熱性を向上することができる。
また、パワー素子の本体部を回路基板とは異なる層に配設してプレート50に押し付けパワー素子を冷却する場合には、貫通端子と回路基板との電気的接続部にインナーコネクタを用いる必要がある。
これは、以下のような理由による。貫通端子のハーメチックシール部にガラス材を用いると、貫通端子の構成材料として、線膨張係数がガラス材の線膨張係数と近似した材料(例えば、鉄50%ニッケル50%の合金)を用いる必要がある。また、回路基板は空間絶縁を確保するためにプレート等との空間距離を確保して例えばアルミニウム材からなる固定部材を介してプレート50に固定される。しかし、この固定部材は貫通端子よりも線膨張係数が大きく、貫通端子と回路基板との電気的接続部は上記空間距離のためにハーメチックシール部から大きく離れている。これにより、温度変化の大きい環境下で貫通端子と回路基板との電気的接続部において大きな応力が発生することを抑制するためにフローティング構造を有するコネクタを用いる必要がある。
ところが、本実施形態の構成によれば、図4に示すように、第1基板21を絶縁放熱シート24を介してプレート50の表面50aに当接できるので、貫通端子16のハーメチックシール部と第1基板21との空間距離を低減することができる。これにより、温度変化の大きい環境下で貫通端子16と第1基板21との電気的接続部において大きな応力が発生することを抑制できるので、インナーコネクタを廃止することができる。
また、パワー素子214等を絶縁基材211中に内蔵して、例えばパワー素子214の上方(基板の厚さ方向)に他の回路素子を配置する所謂3次元配置が可能となるので、インバータ回路20の配線長さを短くすることが可能である。これに伴い、配線インダクタンスを低減でき、パワー素子214のスイッチング動作時に発生するサージ電圧を低減してノイズの発生を抑制することができるとともに、損失を低減することができる。
また、第1基板21は、パワー素子214よりもプレート50の表面50a側となる部位において絶縁基材211中に放熱用チップ216を有している。したがって、パワー素子214が発する熱を放熱用チップ216を介してプレート50に伝達し易く、パワー素子214の冷却性を向上することができる。
また、放熱用チップ216はパワー素子214と電気的に接続されており、放熱用チップ216と貫通端子16とが直接接続している。したがって、比較的大電流であるモータ部10への供給電流の導通経路をコンパクトにすることができ(幅広の導体パターン等を用いる必要がなく)、第1基板21の体格を一層小型化することができる。なお、本実施形態では、放熱用チップ216に接する導体パターン212は、パワー系であっても非パワー系と同一厚さの金属箔を用いることができる。
また、第1基板21の下面に露出した放熱用チップ216をパワー系の導通経路としているが、第1基板21とプレート50の表面50aとの間には絶縁放熱シート24が介装されているので、放熱用チップ216とプレート50との間の短絡を防止することができる。
また、インバータ回路20は、素子内蔵回路基板である第1基板21と非素子内蔵回路基板である第1基板22とを電気的に接続して構成している。したがって、インバータ回路20を構成する基板の一部を比較的安価な非素子内蔵回路基板として、インバータ回路20を比較的安価に構成することができる。
また、第1基板21と第2基板22とは、プレート50の表面50aおよびハウジング1の取付面1cが延びる方向に、両面に沿って並設されている。したがって、インバータ回路20の基板を第1基板21と第2基板22とで構成しても、インバータ回路20のハウジング1の外面からの高さを抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記実施形態では、第1基板21は、プレート50の表面50aに取り付けられ、第2基板22は、ハウジング1の外面の取付面1cに取り付けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、第1基板21および第2基板22をいずれもハウジング1から熱が伝わり難いプレート50の表面50aに取り付けるものであってもよい。
また、上記実施形態では、モータ部10から延びる貫通端子16は、第1基板21の貫通孔211a内に配設されて、出力部である放熱用チップ216の貫通孔216aに接続していたが、これに限定するものではない。
例えば、第1基板21に貫通孔を設けずに絶縁基材211の端面に沿うように貫通端子16を配設して、放熱用チップ216の出力部に接続したものであってもよい。これによれば、第1基板21のサイズを小さくすることができる。このとき、第1基板21の端部に貫通端子16の外周形状に合わせて横断面が半円状の凹部を形成し、円弧面状の端面を形成することが好ましい。
また、放熱用チップ216の出力部は、貫通孔であってもよいし、第1基板21の端面に対応させて円弧面状の端面としてもよい。
また、第1基板21からモータ部10へ供給電力を出力する出力部は、放熱用チップ216に設けず、導体パターン212等の配線部に設けてもかまわない。
また、上記実施形態では、放熱用チップ216は、パワー素子214と電気的に接続していたが、これに限定するものではない。導体パターン212に貫通端子16を接続して、導体パターン212と放熱用チップ216との間に絶縁放熱シート24を介在させてもよい。
また、上記実施形態では、第1基板21および第2基板22は、プレート50の表面50aおよびハウジング1の取付面1cの延面方向において並設されていたが、これに限定されるものではない。第1基板21をプレート50の表面50aに取り付け、第2基板22を第1基板21の反プレート側に積層配置して、第1基板21と第2基板22とを電気的に接続してもよい。
また、上記実施形態では、駆動回路部であるインバータ回路20を、第1基板21および第2基板22の2枚の基板で構成していたが、これに限定されるものではない。インバータ回路20は、3枚以上の基板で構成してもよいし、例えば、図7に示すように、インバータ回路20を、パワー素子214を内蔵した1枚の回路基板21Aで構成してもよい。
また、プレート50の表面50aに取り付けられる回路基板はパワー素子214を絶縁基材211中に内蔵した素子内蔵基板に限定されず、例えば、パワー素子の本体部を回路基板とは異なる層に配設してプレート50の表面50aに押し付けパワー素子を冷却するものであってもかまわない。
また、上記実施形態では、駆動回路部であるインバータ回路20は、モータ部10の軸線方向(モータ部10と圧縮機構30とが並んだ方向)にほぼ平行なハウジング1の側面部側のプレート50の表面50aに取り付けられていたが(所謂キャメルバックタイプの電動圧縮機であったが)、これに限定されるものではなく、ハウジング1の外面のうち内部を吸入冷媒が流通する部位に設けられたプレート50の表面50aに取り付けられるものであればよい。例えば、モータ部10の軸線方向における反圧縮機構側の面(図1図示右方側の面)に設けられたプレート50の表面50aに取り付けられるものであってもよい(所謂インラインタイプの電動圧縮機であってもよい)。
インラインタイプの電動圧縮機に本発明を適用すれば、冷媒吸入口1aからプレート50の裏面50bまでの冷媒流通距離を短くすることができ、吸入冷媒の温度上昇の抑制が容易であり、極めて有効である。