JP5367190B1 - 水酸化リチウムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硫酸リチウム等の鉱酸リチウムを、バイポーラ膜を用いた電気透析に供して水酸化リチウムを製造する方法において、二枚のバイポーラ膜の間にカチオン交換膜が位置するように配置され、該カチオン交換膜を介して隣接するように形成された塩室とアルカリ室とを、陽極と陰極の間に少なくとも一対有する2室型電気透析装置を使用し、前記塩室に鉱酸リチウムと共に、該鉱酸リチウム当たり、0.05〜0.2当量のクエン酸やシュウ酸などの有機酸を供給しながら通電して電気透析を行い、該塩室のリチウムイオンをアルカリ室に移行させて水酸化リチウムを生成させることを特徴とする水酸化リチウムの製造方法。
【選択図】 図1
Description
バイポーラ膜のこの特殊機能を利用して、カチオン交換膜及び/またはアニオン交換膜とともに電気透析装置に組み込み、電気透析を行うことにより、各種の塩から酸とアルカリとが生成することから、種々の酸及び/またはアルカリの製造に利用されている。
水酸化リチウムの製造法としては、炭酸リチウムと水酸化カルシウムを反応させる方法が古くから知られている。この反応は、下記式で表される。
Li2CO3+Ca(OH)2 → 2LiOH+CaCO3
上記方法は、バッチ式で実施され、連続的に実施することができず、生産性が極めて低い。また、目的とする水酸化リチウムの生産量に相当する量の水酸化カルシウムが必要となり、さらには同量の炭酸カルシウムが副生する。この為、副生炭酸カルシウムの処理コストがかかり、しかも、カルシウムイオン等が不純物として混入し高純度の水酸化リチウムを得ることも困難である。
電気透析原料としては、炭酸リチウムそのもの、或いは、炭酸リチウムを一旦硫酸リチウムや塩化リチウムに変換して電気透析原料とする方法が採用されている。
炭酸リチウムを原料として電気透析した場合は、電気透析装置内での炭酸ガスの発生と言う問題が生じる。装置内に生じる炭酸ガスは、原料塩水の装置内での循環を阻害し、しかも、セル電圧を増大させ、連続的且つ効率的な電気透析運転が困難になる。この炭酸ガスの発生を抑制した電気透析方法が提案されている(特許文献1)。
また、炭酸ガスの発生を完全に防止するために、炭酸リチウムを一旦有機酸リチウムとし、該有機酸リチウムを原料として電気透析する方法も提案されている。当該方法は、炭酸ガス発生による通電障害などの問題を解消でき安定した電気透析ができるものの、原料塩水の電気電導度が大きくできないので電気透析のエネルギー効率が悪く、高いセル効率での生産が難しいと言う問題がある(特許文献2)。
3室型電気透析装置は、新たなアニオン交換膜の使用、装置構造の複雑化、大きいセル電圧等の点で工業生産的には不利であり、2室構造の電透析装置の採用が課題となっている。しかし、2室型電気透析装置で強酸リチウム塩の電気透析を行った場合、原料塩水を循環して透析を繰り返すと塩水のpHが急激に低下する現象が生じる。pHが急激に低下すると、水素イオンがカチオン交換膜を透過してアルカリ室への拡散量が増加し、電流効率の悪化と言う前出の問題が顕在化してくる。
二枚のバイポーラ膜の間にカチオン交換膜が位置するように配置され、各バイポーラ膜は、陰イオン交換膜側が陽極側に、陽イオン交換膜側が陰極側に面するように配置され、該カチオン交換膜を介して隣接するように形成された塩室とアルカリ室とを、陽極と陰極の間に少なくとも一対有する2室型電気透析装置を使用し、
前記塩室に鉱酸リチウムと共に、該鉱酸リチウム当たり、0.05〜0.2当量の有機酸を供給しながら通電して電気透析を行い、該塩室のリチウムイオンをアルカリ室に移行させて水酸化リチウムを生成させる水酸化リチウムの製造方法であって、鉱酸リチウムが、硫酸リチウム、塩酸リチウムまたは硝酸リチウムであり、有機酸が、シュウ酸またはクエン酸であることを特徴とする前記製造方法が提供される。
上記水酸化リチウムの製造方法において、
1)鉱酸リチウムが、硫酸リチウムであること、
2)有機酸が、シュウ酸であること、
3)電気透析により前記塩室において生成した鉱酸および有機酸を、各々鉱酸リチウムの製造原料ならびに供給する前記有機酸として再利用すること
が好適である。
特に、原料塩水に有機酸を添加して電気透析をするため、塩室内の急激なpH変化を抑えることができ。pH低下による水素イオンのアルカリ室の移動による電流効率(生産性)の低下を防止できる。更に、2室型電気透析装置を使用するので、装置の構造から低いセル電圧で電気透析を実施することができ、極めて生産効率が高く工業的利点が大きい。
更にまた、電気透析により生成した鉱酸および有機酸は、これを回収して鉱酸リチウムの製造用原料、本発明の製造方法に使用する有機酸として再利用することができ、省資源の観点からも効果的である。
当該プロセス図において、原料タンク1、原料塩水タンク3、電気透析装置5及び水酸化リチウム液タンク7が設けられている。以下、図1に準じて、本発明の水酸化リチウムの製造方法を説明する。
フィルター9は、原粗製炭酸リチウムに含まれる異種金属成分から生じた析出物や各種の異物を除去しうるものであれば特に制限なく使用できるが、一般的には、析出物の態様に応じて、限外濾過、精密濾過、フィルタープレス、カートリッジフィルター、振動式膜分離などから適宜選択される。尚、図1の例では、原料タンク1と塩水タンク3との間にフィルター9が設けられているが、循環配管11の循環ライン内にフィルターを設けることも可能である。
当該有機酸は、塩室に供給する鉱酸リチウムに対して、0.05〜0.2当量の量で共存させることが必要である。0.05当量未満では、塩室のpHの急激な低下に対する抑制効果が低く、0.2当量を超えると、低いセル電圧での電気透析が困難となり電流効率、生産効率が低下する。
供給された有機酸は、塩室内では、その一部が有機酸リチウム塩として存在して当該塩と有機酸とが緩衝溶液を構成して、水素イオン濃度に対する緩衝作用を発現し、電気透析で生成する水素イオンによる塩室内の急激なpHの低下を効果的に防止しているものと考えられる。
上記のように交互に配置されたバイポーラ膜BPとカチオン交換膜Cとによって、陽極(+)側に塩室25、陰極(−)側にアルカリ室27が、互いに隣接するように形成されている。この場合、2枚のバイポーラ膜の間にカチオン交換膜が位置するように配置することにより、該カチオン交換膜を介して塩室とアルカリ室とを形成する態様は、図1に示されている1対の組み合わせによる態様に限定されない。例えば、3枚以上のバイポーラ膜のそれぞれの間にカチオン交換膜が位置するように設けて複数対の塩室とアルカリ室を形成する態様も可能であり、対の数は水酸化リチウムの生産量やセル電圧に応じて適宜増設される。
陽極液;
ニッケルまたは鉄−水酸化ナトリウム水溶液
鉛−硫酸水溶液
白金−硫酸または硫酸ナトリウム水溶液
黒鉛−食塩水溶液
ニッケル−水酸化リチウム水溶液
陰極液;
ニッケル、鉄またはステンレススチール−水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウムまた
は食塩水溶液もしくは水酸化リチウム水溶液
本発明において、最も好ましくは、両極にニッケル電極、電極液に水酸化リチウム水溶液を用いるのがよく、これにより、電極液からの不純物の混入が最大限に抑えられ、より高純度の水酸化リチウムを得ることができる。
このようなバイポーラ膜BPとしては、特に制限されず公知の膜を使用することができ、その製造方法としては、次のようなものが知られている。
カチオン交換膜とアニオン交換膜とをポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物で張り合わせ硬化接着する方法(特公昭32−3962号公報参照)。
カチオン交換膜とアニオン交換膜とをイオン交換性接着剤で接着させる方法(特公昭34−3961号公報)。
カチオン交換膜とアニオン交換膜とを微粉のイオン交換樹脂、アニオンまたはカチオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物を塗布し圧着させる方法(特公昭35−14531号公報参照)。
カチオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物とからなる糊状物質を塗布し、これに放射線照射することによって製造する方法(特公昭38−16633号公報参照)。
アニオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射架橋させる方法(特公昭51−4113号公報参照)。
イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(特開昭53−37190号公報参照)。
ポリエチレンフィルムにスチレン、ジビニルベンゼンを含浸重合したシート状物をステンレス製の枠にはさみつけ、一方の側をスルホン化させた後、シートを取り外して残りの部分にクロルメチル化、次いでアミノ化処理する方法(米国特許3562139号参照)。
アニオン交換膜とカチオン交換膜との界面を無機化合物で処理し、両膜を接合する方法(特開昭59−47235号公報参照)など。
即ち、塩室25に供給された鉱酸リチウムを含む原料塩水循環液は、カチオン(Li+)とアニオンである酸イオン(X−)とに解離し、この酸イオンがバイポーラ膜BPから供給された水素イオン(H+)と反応して鉱酸(HX)が生成する。また有機酸は少なくともその一部が塩室内で有機酸リチウムを形成し、当該有機酸リチウムの一部がカチオン(Li+)とアニオン(COO−)とに解離して、このアニオン(COO−)がバイポーラ膜BPから供給された水素イオン(H+)と反応して有機酸(COOH)が再生する。一方、カチオン(Li+)は、カチオン交換膜Cを透過して隣接するアルカリ室27に移行し、このアルカリ室27でバイポーラ膜BPから供給された水酸化物イオン(OH−)と結合して水酸化リチウム(LiOH)を生成する。
セル電圧を上記範囲よりも大きく設定すると、電気透析の急激な進行によりpH低下を招き、酸イオンのアルカリ室への移動による生産効率の低下等の不都合が生じる。また、セル電圧を上記範囲よりも小さく設定すると、電気透析の進行が著しく遅延し、水酸化リチウムの生産速度が著しく低下してしまうこととなる。
水酸化リチウムの高濃度水溶液の回収に伴い、適宜、水酸化リチウム液タンク7に水(イオン交換水)を補充し、常時、一定の液量を確保しておくことが安定して電気透析装置を連続運転するために好適である。さらに、リチウムイオンがアルカリ室27に移動していく結果、鉱酸リチウム塩を含む原料塩水循環液には遊離酸濃度が増加し、pHが低下するので、適度な段階で原料塩水循環液を原料タンク1に戻し、炭酸リチウム原料を溶解するために循環使用することは好ましい態様である。
アルカリ室27には、水酸化リチウム液タンク7に通じている循環配管13が接続されており、水酸化リチウム水溶液がアルカリ室27に循環供給されるようになっている。なお、水酸化リチウム水溶液は、二酸化炭素を吸収し易い性質があり、純度の高い水酸化リチウムを得る上で、水酸化リチウム液タンク7は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスで気相部を置換して使用することが好ましい。
上記の点は、原料塩水が循環され順次電気透析される場合も同じであるが、消費される鉱酸リチウム及び有機酸は、適宜、原料タンク1から供給され塩水タンク3で混合される。
バイポーラ膜電気透析装置として、1対の陰陽極間に、バイポーラ膜(株式会社アストム社製、商品名:ネオセプタBP−1E)とカチオン交換膜(株式会社アストム社製、商品名:ネオセプタCMB)とが順番にそれぞれ4枚、3枚、(バイポーラ膜、カチオン交換膜の有効膜面積はいずれも0.55dm2/枚)配置され、アルカリ室、塩室が形成されたフィルタープレス型バイポーラ膜2室型電気透析装置アシライザーEX−3B型(株式会社アストム社製)を用いた。
一方、水酸化リチウム液タンクには、0.1mol/Lの水酸化リチウム水溶液300mLをいれ、電気透析装置のアルカリ室に循環させた。
電極液は、0.5mol/Lの水酸化リチウム水溶液を用いた。電気透析装置の運転条件は、定電流運転(電流密度10A/dm2)とし、運転中の液温度は約30℃に設定した。
なお、使用した粗製炭酸リチウム中にCaが40ppm、含まれていたのに対して、40分電気透析後に得られた水酸化リチウム水溶液(1.0mol/L)に含まれるCaは0.05ppmであった。
原料塩水として、下記表2に記載の組成原料を用いて電気透析を40分間行った以外は、実施例1と同様に行い、表3の結果を得た。
3:塩水タンク
5:電気透析槽
7:水酸化リチウム液タンク
9:フィルター
11、13:循環配管
12:塩水回収配管
21:陽極室
23:陰極室
25:塩室
27:アルカリ室
BP:バイポーラ膜
C:カチオン交換膜
Claims (4)
- 鉱酸リチウムを、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを有するバイポーラ膜を用いた電気透析に供して水酸化リチウムを製造する方法において、
二枚のバイポーラ膜の間にカチオン交換膜が位置するように配置され、各バイポーラ膜は、陰イオン交換膜側が陽極側に、陽イオン交換膜側が陰極側に面するように配置され、該カチオン交換膜を介して隣接するように形成された塩室とアルカリ室とを、陽極と陰極の間に少なくとも一対有する2室型電気透析装置を使用し、
前記塩室に鉱酸リチウムと共に、該鉱酸リチウム当たり、0.05〜0.2当量の有機酸を供給しながら通電して電気透析を行い、該塩室のリチウムイオンをアルカリ室に移行させて水酸化リチウムを生成させる水酸化リチウムの製造方法であって、
鉱酸リチウムが、硫酸リチウム、塩酸リチウムまたは硝酸リチウムであり、
有機酸が、シュウ酸またはクエン酸である
ことを特徴とする前記製造方法。 - 鉱酸リチウムが、硫酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の水酸化リチウムの製造方法。
- 有機酸が、シュウ酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の水酸化リチウムの製造方法。
- 電気透析により前記塩室において生成した鉱酸および有機酸を、各々鉱酸リチウムの製造原料ならびに供給する前記有機酸として再利用することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の水酸化リチウムの製造方法。
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