JP5366172B2 - ポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法、およびポリテトラフルオロエチレン繊維 - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法、およびポリテトラフルオロエチレン繊維 Download PDF

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Description

本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維の製造方法と、PTFE繊維とに関する。
PTFEは、耐熱性、耐光性、耐薬品性、電気絶縁性、摺動性などの各種の特性に優れており、機械、化学、電気分野を中心に幅広い分野で用いられている。PTFEを含む物品(PTFE物品)の1つにPTFE繊維があり、PTFE繊維は、PTFEが有する上記各種の特性に基づき、様々な分野への応用が期待される。
繊維の製造方法としては、溶融紡糸法および湿式紡糸法が一般的である。しかし、PTFEの溶融粘度は380℃において1010〜1011Pa・s(1011〜1012P)程度と極めて高く、溶融紡糸法によりPTFE繊維を製造することはできない。また、PTFEは、特殊な溶媒を除き、ほとんどの溶媒に溶解しないため、適切な溶媒に溶解させて得たPTFE溶液を貧溶媒の浴中に押し出して凝固させる、単純な湿式紡糸法を採用することも困難である。
従来、PTFE繊維の製造方法としては、エマルジョン紡糸法およびスリットヤーン法が知られている。
エマルジョン紡糸法にはエマルジョン直接紡糸法とマトリックス紡糸法とがあるが、直接紡糸法では塩酸浴あるいは塩化水素雰囲気中にPTFEの水性エマルジョンを押し出す必要があることから、より生産性に優れるマトリックス紡糸法(例えば、特許文献1に開示)が主に用いられている。マトリックス紡糸法では、PTFE粒子の分散液に、ビスコースあるいはセルロースなどのマトリックス材を加えて紡糸原液とし、当該原液を凝固浴中に押し出して湿式紡糸させる。その後、紡糸により形成した繊維をPTFEの融点以上の温度で熱処理(焼成)することで、繊維中のマトリックス材を燃焼、飛散させるとともに、マトリックス材中に分散していたPTFE粒子を溶融かつ互いに融着させて、PTFE繊維を形成できる。しかし、この方法により製造したPTFE繊維には、通常、マトリックス材の焼成物(炭化物)が残留しており、この残留によってPTFEが本来有する物理的、化学的特性が影響を受けることがある。例えば、マトリックス紡糸法により形成されたPTFE繊維の色調は茶色〜濃褐色であり、その用途は制限される。また、本来、マトリックス材およびその焼成物はPTFE繊維に不要な成分であり、マトリックス材を用いないPTFE繊維の製造方法が望まれる。
スリットヤーン法(例えば、特許文献2、3に開示)では、(1)PTFEのファインパウダーに成形助剤を加えて形成したPTFEペーストを押出成形してシート状の成形体とし、(2)形成した成形体から成形助剤を除去した後に、当該成形体を延伸して多孔質のPTFE膜とし、(3)得られた多孔質膜を機械的に加工して短冊状あるいはテープ状とし、(4)加工後の多孔質膜をさらに再延伸することでPTFE繊維を形成できる。一度、シート状あるいはフィルム状に押出成形するのは、上記ペーストの粘度の高さから、直接、繊維状に成形することが困難なためである。しかし、この方法では、機械的な加工の方法にもよるが、均一な繊維径を有する繊維の製造が困難であったり、長繊維(フィラメント)の製造が困難であったりする。また、原料であるファインパウダーから連続的に繊維を製造することが難しく、生産性に優れる製造方法であるとはいえない。
その他のPTFE繊維の製造方法として、例えば、特許文献4には、PTFE微粒子の水性懸濁液を5〜10kgf/cm2程度にまで加圧し、内径200〜400μmのキャピラリ状のダイスから噴出させることでPTFE微粒子を繊維化して、さらに乾燥、焼成する方法が開示されている。しかし、この方法では、強度、弾性率などの機械的特性に優れるPTFE繊維を製造できないと考えられ、また、おそらく懸濁液に印加する圧力を確保することを目的として、懸濁液を噴出させるキャピラリの径が200〜400μmの範囲に限定されているため、製造できるPTFE繊維の径が20μm以下と、その自由度が低い。
なお、特許文献5には、PTFE粒子の分散液に、PTFE粒子が互いに接近または接触する力を加えることにより、水と界面活性剤とを内包するPTFE粒子の凝集物を得る方法が開示されており、この凝集物を乾燥および/または焼成することにより、例えば、紐状のPTFE成形体が得られることが示されている。
特開平10−273818号公報 米国特許第6133165号明細書 米国特許第7108912号明細書 特開2003−20515号公報 国際公開第WO2006/120967号パンフレット
このように、従来のPTFE繊維の製造方法では、マトリックス材など、PTFE繊維として本来不要な成分が必要であったり、製造できる繊維が短繊維(ステープル)に限られたり、生産性の向上に限界があったり、あるいは、得られる繊維の機械的特性、ならびに径の自由度が低かったりする。そこで本発明は、これら従来の製造方法とは異なり、マトリックス材を用いることなくPTFE繊維、特にPTFEの長繊維、を製造できるとともに、これら従来の製造方法よりも生産性に優れ、得られる繊維の機械的特性、ならびに径の自由度を向上できるPTFE繊維の製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、上記従来のPTFE繊維とは全く異なる構成を有する、従来にないPTFE繊維を提供することを別の目的とする。
本発明のPTFE繊維の製造方法は、紐状のPTFE含有固形物(第1の固形物)を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工することにより、前記第1の固形物を細径化する方法である。
本発明のPTFE繊維は、紐状のPTFE含有固形物を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工し、細径化して得た繊維であって、繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からなり、前記融着体の平均径が0.1〜5μmの範囲であり、引張試験により求めた引張弾性率が10GPa以上の繊維である。
本発明によれば、エマルジョン紡糸法において必要であったマトリックス材を用いることなくPTFE繊維を得ることができ、例えば、PTFE本来の特性および色調を有するPTFE繊維を製造できる。例えば、色調に関しては、白色の繊維の製造が可能であり、場合によっては実施例に後述するように、より透明なPTFE繊維の製造も可能となる。
本発明によれば、スリットヤーン法において必要であった、原料であるPTFE粒子の押出成形工程、および押出成形によって得られたシート状の成形体を機械的に加工する工程を実施することなくPTFE繊維を製造できるため、PTFE繊維を従来よりも生産性よく製造でき、PTFEの短繊維に限られず、長繊維の製造も可能となる。また、引き抜き加工に用いる部材の形状を選択することで、例えば、略円形あるいは略楕円形の断面形状を有するPTFE繊維を製造でき、得られるPTFE繊維の形状の自由度を向上できる。本発明によれば、特許文献4に開示の方法よりも、得られるPTFE繊維の機械的特性、ならびに径の自由度を向上できる。
本発明の製造方法の一例を、図1を用いて説明する。図1に示す方法では、紐状のPTFE含有固形物(第1の固形物)1を、PTFEの融点(以下、単に「融点」ともいう)以上の温度(約327℃以上)において、ダイ(第1のダイ)2を通して引き抜き加工することにより、固形物1を細径化している。
この方法では、PTFE短繊維だけではなく、PTFE長繊維の製造も可能である。また、マトリックス材を用いていないため、白色の繊維を製造でき、場合によっては、より透明な(半透明な)PTFE繊維の製造も可能である。また、この方法では、融点以上の温度における引き抜き加工によって、固形物1の機械的特性を向上できる、即ち、機械的特性を向上させたPTFE繊維を製造できる。
本発明の製造方法により、このような繊維の製造が可能である理由は、得られた繊維の構造を検証中であることもあって未だ明確ではないが、融点以上の温度における引き抜き加工により、固形物1に含まれるPTFEが溶融するとともに、当該固形物を縮径化する力が加えられることで、繊維軸方向に伸長するPTFEの融着体が形成されることが理由の一つであると考えられる。例えば、後述の方法1、2によりPTFE粒子の分散液から固形物1を形成した場合、当該固形物は、場合によってはPTFE粒子をその中心部分に含む。このようなPTFE粒子を含む固形物を上記引き抜き加工すると、PTFE粒子同士が融着するとともに当該固形物が細径化することで、繊維軸方向に伸長したPTFE粒子の融着体が形成されると考えられる。
このような融着体は、従来のPTFE繊維の製造方法では形成されない。例えば、スリットヤーン法では、押出成形したPTFEシートを延伸、機械加工した後、さらに再延伸することにより繊維としているため、当該繊維は無数の微細なフィブリルを含み、フィブリル間には微細な空隙が存在する。これに対して、上記融着体は、後述の実施例にも示すように、典型的には上記フィブリルよりも径が大きい。また、繊維内に存在する空隙に関しても、スリットヤーン法により形成した繊維に比べて、そのサイズが大きく、かつ、その数も大幅に少ないと考えられる。これらの理由から、本発明の製造方法では、機械的特性に優れるPTFE繊維が得られる他、空隙による光の乱反射が低減されることにより、半透明のPTFE繊維の製造が可能となると考えられる。
また、本発明の製造方法では、固形物1を細径化する程度、ならびに、固形物1の細径化の形状を、固形物1を細径化する部材、例えば第1のダイ2、の形状を選択することによって制御できるため、得られる繊維の径および断面形状の自由度を高くできる。
また、本発明の製造方法では、引き抜き加工する固形物1を後述の方法により得ることで、当該方法における出発物質であるPTFE粒子の分散液から連続的にPTFE繊維を製造することも可能であり、従来よりも生産性に優れるPTFE繊維の製造方法とすることができる。
引き抜き加工の温度(引き抜き温度)は、PTFEの融点以上である限り特に限定されないが、例えば、330℃以上であればよく、340℃以上、350℃以上、360℃以上、380℃以上の順に、より好ましい。より機械的特性に優れるPTFE繊維を製造できる。
引き抜き温度の上限は特に限定されず、PTFEの分解温度未満であればよく、例えば、490℃以下であればよい。
引き抜き温度は、例えば、第1のダイ2など、第1の固形物を細径化する部材の温度、および/または、第1の固形物の温度であればよく、当該温度は、例えば、加工雰囲気の温度および/または上記部材の温度の調整により制御できる。
後述する方法(方法1、2)により第1の固形物を形成した場合、第1の固形物は界面活性剤を含む。このとき、引き抜き温度を、第1の固形物が含む界面活性剤の分解温度以上とすることにより、第1の固形物を細径化しながら、当該固形物に含まれる界面活性剤の量を低減させることも可能である。
PTFEの融点以上の温度において第1の固形物を引き抜き加工する方法は特に限定されない。例えば、図1に示すようなダイを用いることなく、第1の固形物を、スリットまたはオリフィスのような当該固形物の径よりも小さい空隙を通して引き抜くことにより、引き抜き加工を行ってもよい。ただし、図1に示すように、ダイを通して第1の固形物を引き抜く方法が、安定したPTFE繊維の製造を実現できる観点から好ましい。
図1に示す第1のダイ2は、引き抜き加工の際に固形物1にせん断応力を加えるとともに、紐状の固形物1を縮径化する形状を有する。具体的には、ダイ2は、その内部の空間(固形物1が通る空間)として、固形物1が引き抜かれる方向に垂直な断面の形状が円形であり、当該断面の面積が、固形物1の流入口11から吐出口12に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有する。より具体的には、ダイ2の内部の空間の形状は、流入口1側を底面とする円錐台であり、この円錐台の上面に吐出口12が形成されている。
第1のダイ2の形状は、固形物1を引き抜き加工できる限り特に限定されないが、ダイ2が、その内部の空間(固形物1が通る空間)として、固形物1が引き抜かれる方向に垂直な断面の面積がダイ2における一方の開口部(流入口11)から他方の開口部(吐出口12)に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有することが好ましい。この場合、固形物1の細径化をよりスムーズに行うことができる。特に、図1に示すダイ2のように、その内部の空間全体として、上記部分を有することが好ましい。
また、第1のダイ2が、固形物1が通る空間として、固形物1が引き抜かれる方向に垂直な断面の形状が、円形または楕円形であることが好ましく、円形であることがより好ましい。この場合、固形物1の細径化をよりスムーズに行うことができ、また、略円形または略楕円形の断面形状を有するPTFE繊維を製造できる。
上記断面の形状が円形であり、かつ、上記断面の面積が連続的かつ一律に小さくなっている部分を第1のダイ2が有する場合、ダイ2における当該部分は円錐台となる。このとき、円錐台の中心軸に対して母線が成す角度(いわゆる「ダイス角α」)は特に限定されない。
上記引き抜き加工による第1の固形物の細径化の程度は特に限定されないが、例えば、固形物1を、その平均径が1mm以下となるように細径化してもよく、750μm以下、500μm以下、400μm以下、さらには200μm以下となるように細径化してもよい。細径化の程度を大きくするために、例えば、第1のダイ2における吐出口12の径を小さくしてもよい。また、引き抜き温度を高くすることによっても、第1の固形物の細径化の程度を大きくすることができる。
本発明の製造方法では、第1の固形物を、融点以上の温度において2回以上引き抜き加工することで、段階的に細径化してもよい。第1の固形物を、1回の上記引き抜き加工のみにより、所望の径を有する繊維にしようとすると、引き抜き加工時における固形物の細径化の程度が過度に大きくなって、安定した引き抜き加工が困難になることがある。2回以上の上記引き抜き加工により、各々の引き抜き加工時における第1の固形物の細径化の程度を調整でき、より安定して第1の固形物の引き抜き加工を行うことができる。
2回以上の上記引き抜き加工を行うためには、例えば、第1の固形物を、2以上の第1のダイを通せばよく、各ダイにおける細径化の程度、各ダイにおける引き抜き温度、ならびに、第1の固形物を通す第1のダイの数などは、第1の固形物の変形性、ダイを通す前の第1の固形物の径、あるいは、得たい繊維の径などに応じて適宜調整すればよい。
第1の固形物を2以上の第1のダイを通して引き抜き加工する場合、ダイとダイとの間に、ローラーなどにより構成される固形物の送り出し機構を設け、当該機構により、直前のダイから固形物を引き抜きながら、次のダイへと固形物を送りだしてもよい。この場合、より安定したPTFE繊維の製造が可能となる。
本発明の製造方法では、第1の固形物を、融点以上の温度において連続的に引き抜き加工してもよく(例えば図1に示す例では、固形物1を、融点以上の温度において連続的に第1のダイ2を通してもよく)、この場合、PTFEの長繊維(フィラメント)を製造できる。また、PTFEの短繊維(ステープル)を製造することもでき、例えば、上記のようにして形成した長繊維を、カッターなどを用いて切断することで、PTFE短繊維を効率よく製造できる。また、この方法では、繊維径の揃った短繊維を効率よく製造できる。
本発明の製造方法では、融点以上の温度において第1の固形物を引き抜き加工した後、当該引き抜き加工後の固形物(繊維)は、自然放冷など、任意の方法により冷却すればよいが、例えば、当該固形物(繊維)を徐冷させることで、固形物(繊維)の結晶構造、例えば結晶化度、を変化させてもよい。
第1の固形物の構成は、PTFEを含有する限り特に限定されないが、例えば、水および界面活性剤を内包するPTFE含有固形物(第2の固形物)から、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物であってもよい。水および界面活性剤を内包する第2の固形物は、例えば、後述する方法1または方法2により形成できる。
また、第1の固形物は、水および界面活性剤を内包する第2の固形物を、ダイ(第2のダイ)を通して引き抜き加工することにより細径化した後に、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物であってもよい。
第1の固形物は、スリットヤーン法において形成される短冊状あるいはテープ状のPTFE膜であってもよい。なお、短冊状あるいはテープ状のPTFE膜を引き抜き加工するためには、事実上、その幅に対する制限があると考えられる(厚さに対して幅を過度に大きくすることができない)ため、引き抜き加工が可能な短冊状あるいはテープ状のPTFE膜は、本発明の製造方法にいう「紐状のPTFE含有固形物」であるといえる。
図2に、第1の固形物1として、水および界面活性剤を内包する第2の固形物3を第2のダイ4を通して引き抜き加工した後に、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物を用いた、本発明の製造方法の一例を示す。
図2に示す方法では、最初に、水および界面活性剤を内包する紐状のPTFE含有固形物(第2の固形物)3を、ダイ(第2のダイ)4を通して引き抜き加工することにより、固形物3を細径化している。
図2に示すダイ4は、引き抜き加工の際に固形物3にせん断応力を加えるとともに、紐状の固形物3を縮径化する形状を有する。具体的には、ダイ4は、その内部の空間(固形物3が通る空間)として、固形物3が引き抜かれる方向に垂直な断面が円形であり、当該断面の面積が、固形物3の流入口13から吐出口14に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有する。より具体的には、ダイ4の内部の空間の形状は、流入口13側を底面とする円錐台であり、この円錐台の上面に吐出口14が形成されている。
この引き抜き加工は、上述した融点以上の温度における引き抜き加工とは異なり、より低い温度域、例えば100℃以下、において行われる。このような温度域において、固形物3の引き抜き加工が可能であるのは、固形物3が、内包する水および界面活性剤により変形性を有するためである。
なお、固形物3を後述する方法1、2により形成した場合などには、当該固形物3は、PTFE粒子が結着した構造を有するとともに、この構造により高い自己形状保持性を有する。このとき、PTFE粒子が結着した構造が固形物3の全体に形成されている必要はなく、その一部のみに形成されていてもよい。場合によっては、紐状の固形物3におけるその外周面近傍の部分(スキン層)に上記構造が形成されており、その中心部分には、PTFE粒子が水および界面活性剤とともに含まれる。
固形物3は、水中において、第2のダイ4を通して引き抜き加工してもよい。
上述したように、固形物3は、水および界面活性剤を内包することにより変形性を有するが、水中ではこの変形性を向上できる。このため、固形物3を水中で引き抜き加工することで、例えば、ダイ4における固形物3の細径化の程度を大きくしたり、固形物3の引き抜き速度を大きくしたりできる。即ち、PTFE繊維の生産性を向上できる。
水中で引き抜き加工する場合、固形物3を、50℃以上の温水中においてダイ4を通してもよい。即ち、50℃以上の温水中において固形物3を引き抜き加工してもよく、このとき、固形物3の変形性をより向上でき、PTFE繊維の生産性をさらに向上できる。温水の温度は、70℃以上が好ましい。温水の温度の上限は特に限定されないが、大気圧雰囲気下で引き抜き加工をする場合、通常、水の沸点の100℃である。
なお、固形物3を水中で引き抜き加工しない場合、例えば、空気中で引き抜き加工する場合においても、水中で引き抜き加工する場合と同様に、固形物3の温度および/またはダイ4の温度が50℃以上の状態で引き抜き加工してもよい。固形物3の変形性を向上でき、PTFE繊維の生産性を向上できる。ただし、この方法では、水中で引き抜き加工する場合に比べて、固形物3に含まれる水の量が低減しやすい、即ち、固形物3の変形性が低下しやすい、ことに留意する必要がある。
第2のダイ4の形状は固形物3を細径化できる限り特に限定されないが、ダイ4が、その内部の空間(固形物3が通る空間)として、固形物3が引き抜かれる方向に垂直な断面の面積がダイ4における一方の開口部(流入口13)から他方の開口部(吐出口14)に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有することが好ましい。この場合、固形物3の細径化をよりスムーズに行うことができる。特に、図2に示すダイ4のように、その内部の空間全体として、上記部分を有することが好ましい。
また、上記断面の形状は、円形または楕円形であることが好ましく、円形であることがより好ましい。この場合、固形物3の細径化をよりスムーズに行うことができる。なお、上記断面の形状が円形であり、上記断面の面積が連続的かつ一律に小さくなっている場合、第2のダイ4における上記部分は円錐台となる。
ダイ4における固形物3の細径化の程度、即ち、ダイ4を通る前後における固形物3の断面減少率({1−(d2/d1)2}×100(%))は特に限定されない。固形物3の変形性、ダイ4を通る前の固形物3の径d1、あるいは、得たい繊維の径などによっても異なるが、例えば、上記断面減少率は70%以下であり、好ましくは10〜50%程度である。この減少率が過度に大きい場合、固形物3の細径化が困難になることがある。当該減少率は、例えば、ダイ4の流入口13の径と吐出口14の径とを調節することにより制御できる。
上述したように、ダイ4が、固形物3が通る空間として、固形物3が引き抜かれる方向に垂直な断面が円形であり、当該断面の面積がダイ4における一方の開口部から他方の開口部に向かうに従って連続的かつ一律に小さくなっている部分を有する場合、当該部分は円錐台となるが、この円錐台の中心軸に対して母線が成す角度(いわゆる「ダイス角α」)は特に限定されず、通常、2〜20°程度であり、固形物3へ加えるせん断応力の大きさと固形物3の細径化の程度のバランスを図るためには、1〜10°程度が好ましい。この好ましいダイス角αの範囲では、固形物3の引き抜き抵抗をより低減できる。
第2の固形物の第2のダイを通した引き抜き加工は、2以上の第2のダイを用いて、段階的に行ってもよい。
紐状の第2の固形物を、1つのダイのみにより所望の径に細径化しようとすると、当該ダイにおける固形物の細径化の程度が過度に大きくなって、安定した引き抜き加工が困難になることがある。第2の固形物を2以上の第2のダイを通して引き抜き加工することで、各々のダイにおける固形物の細径化の程度を調整でき、より安定して第2の固形物の引き抜き加工を行うことができる。
2以上の第2のダイを通して第2の固形物を引き抜き加工する場合、各ダイにおける細径化の程度、および、固形物を通すダイの数などは、固形物の変形性、ダイを通る前の固形物の径、あるいは、得たい繊維の径などに応じて適宜調整すればよい。
第2の固形物を2以上の第2のダイを通して引き抜き加工する場合、ダイとダイとの間に、ローラーなどにより構成される固形物の送り出し機構を設け、当該機構により、直前のダイから固形物を引き抜きながら、次のダイへ固形物を送り出してもよい。この場合、より安定したPTFE繊維の製造が可能となる。
図2に示す方法では、次に、ダイ4を通して引き抜き加工された固形物3に含まれる水の量を乾燥機構5により低減させている。
固形物3に含まれる水の量を低減させる方法は特に限定されない。例えば、ヒーターなどの加熱装置、あるいは、固形物3を風乾させるための送風装置などを備えた乾燥機構により、細径化した固形物3に含まれる水の量を低減させてもよい。また例えば、自然乾燥により、細径化した固形物3に含まれる水の量を低減させてもよい。ヒーターなどの加熱装置を用いる場合、当該装置による固形物3の加熱温度を、界面活性剤の分解温度にまで上昇させることで、固形物3に含まれる界面活性剤の量の低減も可能である。また、細径化した固形物3を、界面活性剤を溶解する溶媒に浸漬させて、当該溶媒中に界面活性剤を拡散させることにより、固形物3に含まれる界面活性剤の量を低減させてもよい。
固形物3に含まれる水の量を低減させる上記方法は、第2のダイを通して引き抜き加工することなく第2の固形物に含まれる水の量を低減させる場合にも適用できる。
図2に示す方法では、次に、含まれる水の量を低減させた固形物3、即ち第1の固形物1、を、PTFEの融点以上の温度において第1のダイ2を通して引き抜き加工し、PTFE繊維としている。
換言すれば、図2に示す方法では、水および界面活性剤を内包する第2の固形物3を、第2のダイ4を通して引き抜き加工することにより細径化し、細径化した当該固形物に含まれる水の量を低減させた後、さらに、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工することにより、PTFE繊維を形成している。
第2のダイ4による固形物3の引き抜き加工、および、第1のダイ2による固形物1の引き抜き加工は、個別に行っても連続的に行ってもよい。双方の引き抜き加工を連続的に行うことにより、PTFE長繊維の製造が効率的となる。
水および界面活性剤を内包するPTFE含有固形物(第2の固形物)は、例えば、PTFE粒子と、界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に、当該粒子が互いに接近または接触する力を加えることにより形成できる(方法1)。なお、方法1は、特許文献5に開示されている方法である。
また例えば、第2の固形物が内包する界面活性剤が非イオン性界面活性剤である場合、第2の固形物は、PTFE粒子と、非イオン性界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に機械的な力を加えて当該粒子同士を衝突させ、衝突の際に生じる熱により分散液の温度を上昇させるとともに、分散液の温度にして(T−30)℃以上の温度域においてPTFE粒子同士を結着させて形成できる。ここで、T(℃)は、非イオン性界面活性剤の曇点である(方法2)。
第2の固形物は、上記例示するその形成方法から明らかであるように、PTFE粒子が結着して形成された凝集物であるともいえる。
方法1、2により形成された第2の固形物は、自己形状保持性および変形性を有し、基本的に、乾燥または焼成されるまでは任意の形状に変形可能である。この固形物は、破壊することなく変形可能な範囲が大きいという点にも特徴を有する。
方法1、2により形成された第2の固形物は、水中で分散しない程度にPTFE粒子が結着してなり、水により希釈されることがない。このため、第2の固形物は、水中において第2のダイを通して引き抜き加工することができる。
方法1、2により形成された第2の固形物は、含まれる水の量の減少による再粒子化が起きない程度にPTFE粒子が結着してなり、例えば、形成した固形物を乾燥させたとしても粒子には戻らない。このため、第2の固形物は、含まれる水の量を減少させた後、第1のダイを通して引き抜き加工できる。
方法1、2により、このような固形物が得られる理由は明確ではないが、おそらく、分散液中の界面活性剤の作用により、PTFE粒子同士が互いに結着してなるPTFE相と水相とが混在する構造が形成されるためではないかと考えられる。
特に、方法2では、機械的な力の分散液への印加によりPTFE粒子同士の衝突が起きるとともに、分散液の温度が特定の温度域に入ることで分散液に含まれる界面活性剤の特性が変化して、PTFE相がある程度連続して形成される機構が考えられる。また、このようなPTFE相の形成には、PTFEが、他のフッ化熱可塑性樹脂とは異なり、その融点以下の温度域においても互いに結着可能であることも寄与していると考えられる。
方法2の出発物質であるPTFE粒子の分散液は非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は、通常、曇点T(℃)を有する。曇点において非イオン性界面活性剤の特性は大きく変化し、例えば、曇点以上の温度域において、その界面活性剤としての機能が失われる。また、曇点において非イオン性界面活性剤を含む水性溶液の特性も大きく変化し、例えば、曇点においてPTFE相と水相とに分離する、などの変化を示す。
方法2では、分散液の温度にして(T−30)℃以上の温度域においてPTFE粒子同士を結着させるが、分散液の温度にして、(T−10)℃以上の温度域、(T−5)℃以上の温度域、あるいは、(T−3)℃以上の温度域、においてPTFE粒子同士を結着させてもよい。上記の順に、得られた第2の固形物の機械的特性(例えば、引張強度)を向上でき、当該固形物から形成したPTFE繊維の機械的特性を向上できる。
方法2では、分散液の温度にして、T℃以上の温度域においてPTFE粒子同士を結着させてもよい。
方法2では、PTFE粒子同士を衝突させ、衝突の際に生じる熱により分散液の温度を上昇させるとともに、分散液の温度を特定の温度域にすることで上記固形物を得ているが、分散液の温度を上記特定の温度域とするために、粒子の衝突以外の熱源、例えば、加熱装置などの何らかの熱源を利用してもよい。
方法1、2において、分散液に機械的な力を加える方法は特に限定されず、例えば、以下に示す方法を用いればよい。
A.分散液をチャンバーに供給し、当該チャンバー内において上記力を加える方法。
B.分散液をターゲットに噴射することにより、上記力を加える方法。
C.分散液を、分散液の流路に配置された、分散液の流れを妨げるバリアに接触させることで、上記力を加える方法。
方法Aでは、分散液の供給に伴ってチャンバー内に生じる圧力により、PTFE粒子同士をより確実に衝突させることができる他、粒子同士の衝突により生じた熱エネルギーを、分散液の温度を上昇させるためにより効率よく利用できる。また、方法Aでは、後述するように、チャンバー内で形成された固形物を排出する管体(第1の管体)を接続でき、紐状の第2の固形物の形成がより容易となる。
方法Aでは、チャンバーに供給した分散液を、チャンバー内で噴射したり(方法A1)、チャンバー内に設けられた狭窄部を通過させたり(方法A2)すればよい。
方法A1では、分散液を、例えば、チャンバーの内壁またはチャンバー内の物体に向けて噴射すればよい。分散液を当該内壁または物体に衝突させることにより、粒子が有する運動エネルギーを熱エネルギーに転換させて、分散液の温度を上昇できる。
方法A1では、チャンバーの構造や形状、分散液の噴射条件などによっては、分散液とチャンバー内で形成された固形物とを衝突させることも可能である。この場合、PTFE粒子が互いに結着してなるPTFE相をより確実に形成できるとともに、分散液の温度をより確実に上昇できる。
分散液の噴射は、噴射口を有するノズルから行えばよく、ノズルの構造や形状、例えば、噴射口の形状は、自由に設定できる。方法Bにおいても同様に、噴射口を有するノズルから分散液を噴射すればよい。なお、方法Bにおけるターゲットは自由に設定できるが、噴射した分散液の飛散を抑制し、噴射する分散液の量に対して得られる固形物の量の割合を多くするためには、ターゲットが配置される空間の密閉度が高い方が好ましい。
分散液を噴射する圧力は、分散液におけるPTFE粒子の含有率、界面活性剤の含有率、チャンバーの形状や内容積などにより自由に設定すればよいが、当該圧力が過小である場合、第2の固形物を得ることが困難となることがある。
方法A2では、分散液を通過させる狭窄部の形状は特に限定されず、例えば、スリット状であればよい。
分散液を2以上の供給路を経由させてチャンバーに供給し、当該2以上の供給路から供給される分散液をチャンバー内で互いに衝突させてもよい(方法A3)。
分散液をチャンバー内で互いに衝突させるためには、例えば、分散液を、上記2以上の供給路における各々の末端に配置されたノズルから噴射すればよい。このとき、少なくとも2つのノズルを、各々の噴射方向が交わるようにチャンバー内に配置することにより、より効率よく、分散液を互いに衝突させることができる。
方法Cでは、分散液を、例えば、上記バリアを有する管体(第2の管体)に供給して上記力を加えればよい。分散液が、その流路(第2の管体)に配置されたバリアを通過する際に、分散液の流れが乱されたり、部分的に分散液が滞留したりして、分散液中に圧力の不均衡が発生し、PTFE粒子同士が互いに衝突する力が分散液に加えられるとともに分散液の温度を上昇できる。
バリアは、例えば、第2の管体の内部に流路を狭めるように配置された板状部材であってよい。また、バリアは、第2の管体を屈曲させ、またはその内径を部分的に細くすることによっても形成できる。即ち、バリアは、第2の管体の屈曲部または狭窄部であってもよく、この場合、方法Cは、分散液を屈曲部または狭窄部を有する第2の管体に供給し、当該屈曲部または狭窄部において上記力を加える方法である、ともいえる。
分散液を上記第2の管体に供給する場合、分散液をノズルから噴射して供給してもよく、この場合、PTFE粒子同士が衝突する力を分散液に効率よく加えることができる。噴射に用いるノズルは方法A1と同様であればよく、当該ノズルから分散液を噴射する圧力は、分散液におけるPTFE粒子の含有率、界面活性剤の含有率、第2の管体の形状などにより自由に設定すればよい。
方法Cでは、第2の管体の構造や形状、分散液の供給条件などによっては、分散液と、第2の管体内で形成された固形物とを衝突させることも可能である。
第2の管体の形状、内径、長さ、ならびに、屈曲部および狭窄部の形状などは特に限定されない。
第2の管体を用いる場合、紐状の第2の固形物の形成がより容易となる。
方法A1〜A3、方法Bおよび方法Cは、PTFE粒子の分散液に上記力を加える方法の一例であり、方法1、2は、上記各例に示す方法を用いる場合に限定されない。
形状や内容積を含め、分散液に上記力を加えるためのチャンバーの構成は特に限定されないが、市販の装置(例えば、スギノマシン製アルティマイザー)を応用してもよい。アルティマイザーは、本来、顔料、フィラー、触媒などの各種材料の粉砕、微粒化を行う微粒化分散装置であり、水および界面活性剤を内包するPTFE含有固形物を得るための応用は、本発明者が見出したものである。
チャンバーの一例を図3に示す。図3に示すチャンバー21は、その内部空間22の形状が、底面付近の周縁部が切り取られた略円錐状であり、当該周縁部に、分散液を噴射する一対のノズル23a、23bが、その噴射口が内部空間22に面するように配置されている。ノズル23a、23bは、各々の噴射方向24a、24bが互いに交わる位置関係にある。ノズル23a、23bには、チャンバー21の構造体25の内部に形成された供給路26a、26bを経由して、供給口27から分散液を供給できる。略円錐状である内部空間22の頂点付近には、チャンバー21内(内部空間22内)で形成された固形物を排出する排出口28が形成されている。排出口28の形状は特に限定されず、例えば、円形状であればよく、この場合、チャンバー21から、断面が円形である紐状の第2の固形物を排出できる。
図3に示すチャンバー21では、加圧した分散液を供給口27および供給路26a、26bを介してノズル23a、23bに供給することにより、分散液を内部空間22内に噴射し、互いに衝突させることができる(方法A3を実現できる)。また、同様の構造を有するチャンバー21を用い、配置するノズルを1つにしたり、あるいは、ノズル23a、23bの噴射方向24a、24bを制御することにより、分散液を内部空間22内に噴射し、チャンバー21の内壁(内部空間22の壁面)に衝突させることができる(方法A1を実現できる)。
チャンバー21は密閉可能な構造であることが好ましく、チャンバー21を必要に応じて密閉することにより、より効率的に分散液に力を加えることができる。チャンバー21には、必要に応じて、内部空間22内の圧力を調整するための圧力調整口が設けられていてもよく、圧力調整口には、例えば、圧力調整弁が配置されていればよい。以降の図4〜図6に示すチャンバー21においても同様である。
加圧した分散液をノズル23a、23bに供給する方法は特に限定されず、例えば、高圧ポンプによって加圧した分散液を供給口27から供給すればよい。図4に示すようなチャンバー21を用い、分散液とポンプにより加圧した水(加圧水)とを、ノズル23a、23bの直前に設けられた混合弁29へ、互いに異なる供給路を経由して供給し、混合弁29で両者を混合した後に、ノズル23a、23bに供給してもよい。図4に示すチャンバー21では、加圧水は供給口27および供給路26a、26bを介して、分散液は供給口37a、37b、および、供給路36a、36bを介して、それぞれ混合弁29に供給される。
チャンバーの別の一例を図5に示す。図5に示すチャンバー21では、その内部空間22の一方の端部に、自在に回転可能な球体30が配置されており、他方の端部に、分散液を噴射するノズル23が、その噴射口が内部空間22に面するように配置されている。ノズル23と球体30とは、ノズル23の噴射方向24が球体30と交わる位置関係にある。ノズル23には、チャンバー21の構造体25の内部に形成された供給路26を経由して、供給口27から分散液を供給できる。内部空間22におけるノズル23と球体30との間の壁面には、チャンバー21内(内部空間22内)で形成された固形物を排出する排出口28が形成されている。
図5に示すチャンバー21では、加圧した分散液を供給口27および供給路26を介してノズル23に供給することにより、分散液を内部空間22内に噴射して、チャンバー21内に配置された部材である(チャンバー21内の物体である)球体30に衝突させることができる(方法A1を実現できる)。このとき、ノズル23の噴射方向24が球体30の中心から外れるようにノズル23および球体30を配置することにより、分散液の噴射によって球体30を回転させることができ、分散液の衝突によるチャンバー21内部の摩耗を抑制できる。
球体30には、分散液の衝突によって変形しない材料を用いることが好ましく、例えば、セラミック、金属(高い硬度を有する合金類が好ましい)、ダイヤモンドなどからなる球体30とすればよい。
チャンバーの別の一例を図6に示す。図6に示すチャンバー21では、円筒状の外周体31の内部に、一対の中子32a、32bが収容されている。中子32a、32bは、各々、円柱体の一方の端面に円錐台が接合された形状を有しており、各々の中子における円錐台の上面33a、33bが、一定の間隔dを置いて互いに対向するように配置されている。外周体31および中子32a、32bの中心軸は、ほぼ同一である。外周体31の一端には、分散液を供給する供給口27が形成されており、供給口27に近い中子32aの外径は、外周体31の内径よりも小さく、供給口27から遠い中子32bの外径は、外周体31の内径と同一である。また、中子32bには、その上面33bにおける中央部から中子32bの内部を通り、チャンバー21の外部へ通じる排出路34が形成されている。中子32aは、支持部材(図示せず)を介して、外周体31により支持されている。
中子32a、bの位置を調整し、間隔dの値を適切に制御することにより、上面33a、33b間の空隙35をスリット状の狭窄部とすることができ、加圧した分散液を供給口27からチャンバー21に供給することにより、分散液を、チャンバー内に配置された狭窄部(空隙35)を通過させることができる(方法A2を実現できる)。分散液は空隙35を通過した後に排出路34に流入し、チャンバー21の排出口28から、第2の固形物として排出される。
供給する分散液の圧力(供給圧)は、チャンバーの形状や内容積、間隔dの大きさ、供給する分散液の量などにより自由に設定すればよいが、供給圧が過小である場合、第2の固形物を得ることが困難となることがある。
図3〜図6に示す各チャンバー21において、排出口28に管体(第1の管体)を接続し、当該接続された管体から、管体の内壁全体と接触させながら第2の固形物を排出することが好ましい。排出口28から排出された第2の固形物が第1の管体を通過する際に、PTFE粒子同士を結着させる力をさらに加えることができ、より自己形状保持性に優れ、強度などの機械的特性が向上した固形物を得ることができる。また、第1の管体の接続により、紐状の第2の固形物の形成がより容易となる他、PTFE粒子同士が結着したスキン層を外周面近傍に有する紐状の第2の固形物を形成できる。なお、管体の内壁全体と接触させながら第2の固形物を排出するためには、排出口28の形状や径、管体の形状や内径、長さなどを選択すればよい。
接続する第1の管体の形状、内径、長さなどは特に限定されず、チャンバー21の形状や内容積、チャンバー21に供給する分散液の量などに応じて、自由に設定できる。基本的に、管体が長いほど、得られる固形物の自己形状保持性や機械的特性が向上する傾向を示すため、管体の最小内径よりも、管体の長さが大きいことが好ましい。一例として、分散液の処理速度が0.1〜0.5L/min程度の場合、チャンバー21に接続する管体の内径は1mm〜10mm程度の範囲、管体の長さは1mm〜5000mm程度の範囲であってもよい。なお、図6に示すチャンバー21では、排出路34の形状によっては、排出路34が上記管体の役割を担うこともできる。
より効率よく固形物に力を加えるためには、第1の管体の最小内径が、排出口28の径以下であることが好ましい。また、排出口28から離れるに従い、内径が次第に変化する(即ち、内面がテーパー状の)管体であってもよく、この場合、内径が、排出口28から離れるに従い次第に小さくなることが好ましい。
方法1、2では、得られる第2の固形物の形状の自由度を高くでき、例えば、1mmを超え5cm以下程度の平均径を有する紐状の固形物を形成できる。
方法1または2により、紐状の固形物を形成する場合、その平均径は、例えば、排出口28の径、排出口28に接続される上記第1の管体の(最小)内径、あるいは、第2の管体の(最小)内径などを選択することにより、調整できる。
方法1、2では、分散液に連続的に上記力を加えることにより、連続的に第2の固形物を得ることができる。即ち、第2の固形物を、バッチ生産法ではなく、連続生産法により形成できる。このためには、例えば、分散液を、図3〜図6に示すチャンバー21に連続的に供給し、チャンバー21から固形物を連続的に排出すればよい。また例えば、分散液を方法Cで用いる第2の管体に連続的に供給し、第2の管体から第2の固形物を連続的に排出すればよい。
本発明の製造方法では、このように連続的に形成した第2の固形物から、当該固形物に含まれる水の量を連続的に低減させた後、融点以上の温度において連続的に引き抜き加工することにより、出発物質であるPTFE分散液からPTFE繊維を連続的に製造できる。第2の固形物に含まれる水の量を低減させる前に、第2の固形物を第2のダイを通して連続的に引き抜き加工した場合においても、同様に、出発物質であるPTFE分散液からPTFE繊維を連続的に製造できる。
なお、方法1、2では、チャンバーまたは管体を、供給口および排出口以外には物質が出入りする開口がない構造とすれば、チャンバーまたは管体に供給される分散液の質量と、チャンバーまたは管体から排出される第2の固形物との質量とを、実質的に同一とすることができる。このような連続製造の初期段階では、おそらくは分散液に十分な力が加わらないために、チャンバーなどから液体が排出されることがある。しかし、初期段階を脱し、分散液に十分な力が加わる安定した状態が一度達成されれば、その後、分散液はその全量が第2の固形物へと変化する。これ以降、排出された第2の固形物からの蒸発により失われる微量の水などを除けば、供給される分散液と形成された第2の固形物とは同じ質量となる。このように、方法1、2では、固形分を含む液相の原料(分散液)の実質的に全てを固相一相の固形物(第2の固形物)へと変化させることができる。このため、方法1、2により第2の固形物を形成することで、効率に優れるPTFE繊維の製造方法とすることができる。
分散液におけるPTFE粒子の含有率は特に限定されないが、自己形状保持性と変形性とのバランスに優れる第2の固形物を形成するためには、例えば、その下限が40質量%以上であればよく、40質量%を超えることが好ましく、45質量%を超えることがより好ましく、50質量%以上、55質量%以上の順にさらに好ましい。また、分散液におけるPTFE粒子の含有率の上限は、分散液としての安定性および上記と同様の理由から、例えば、70質量%以下であればよく、65質量%以下がより好ましい。
分散液に力を加える方法、条件などにもよるが、基本的に、分散液におけるPTFE粒子の含有率が大きくなるに従い、形成される第2の固形物の自己形状保持性が向上し、PTFE粒子の含有率が小さくなるに従い、形成される第2の固形物の変形性が向上する傾向を示す。
PTFE粒子の平均粒径は、通常、0.1μm〜40μmの範囲であり、0.2μm〜1μmの範囲が好ましい。
分散液における界面活性剤の含有率は特に限定されないが、自己形状保持性と変形性とのバランスに優れる第2の固形物を得るためには、0.01質量%〜15質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲、1質量%〜9質量%の範囲、1.5質量%〜9質量%の範囲、および、2質量%〜7質量%の範囲の順に、より好ましい。界面活性剤の含有率が好ましい範囲にあれば、PTFE相と水相との分離を抑制しながら第2の固形物を得ることが容易になる。
方法1では、界面活性剤の種類は特に限定されない。また、方法2では、界面活性剤の種類は非イオン性である限り特に限定されず、例えば、方法1、2ともに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステルなどを用いればよい。
方法1、2のそれぞれにおいて、100℃からPTFEの融点程度の温度範囲において分解する界面活性剤を用いることが好ましい。この場合、融点以上の引き抜き加工を行う際に、形成するPTFE繊維に残留する界面活性剤の量を低減できる。
分散液として、市販されているPTFEディスパージョンを用いてもよい。市販のPTFEディスパージョンとしては、例えば、旭硝子社製(元:旭硝子フロロポリマーズ社製)AD938、AD911、AD912、AD1、AD639、AD936などのADシリーズ、ダイキン工業社製D1、D2、D3などのDシリーズを用いればよい。これら市販のPTFEディスパージョンは、通常、非イオン性界面活性剤を含んでいる。
分散液は、PTFE粒子、水および界面活性剤以外の物質を含んでいてもよい。
本発明のPTFE繊維は、紐状のPTFE含有固形物(第1の固形物)をPTFEの融点以上の温度において引き抜き加工することにより、細径化して得た繊維である。
本発明のPTFE繊維は、例えば、上述した本発明の製造方法により得ることができる。
本発明のPTFE繊維は、典型的には、繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からなる。例えば、後述の実施例において示す本発明の繊維は、繊維軸方向に伸長する、互いにほぼ平行して配列した2以上の上記融着体を有し、融着体同士は、その側面において互いに融着している。この融着体の平均径は、およそ0.1〜5μm程度と、従来のPTFE繊維において観察されるフィブリル(一般に、0.02〜0.1μm程度の平均径を有する)よりも大きい。
本発明のPTFE繊維では、融点以上の温度における引き抜き加工により、PTFE分子鎖の高い配向が実現されると考えられ、例えば、広角X線回折(WAXD)測定により求めた、繊維軸方向の結晶配向度は0.92以上であり、場合によっては、0.93を超え、さらには0.99以上、0.995以上とすることができる。
本発明のPTFE繊維では、上記融着体により高い機械的特性が実現されると考えられ、例えば、引張試験により求めた引張弾性率が10GPa以上であり、場合によっては、20GPa以上、さらには30GPa以上、40GPa以上とすることができる。
上記とは別の側面から見た本発明のPTFE繊維は、マトリクス材およびその焼成物を含まないためにPTFEからなり、WAXD測定により求めた、繊維軸方向の配向度が0.92以上であるPTFE繊維である。
また別の側面から見た本発明のPTFE繊維は、繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からなる繊維である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、PTFE含有固形物(第2の固形物)の形成方法の例を、形成例として示す。
(形成例1)
形成例1では、分散液に、市販のPTFEディスパージョンである旭硝子社製AD938(PTFE粒子の含有率60質量%、PTFE粒子の平均粒径0.3μm、界面活性剤の含有率3質量%)を用い、図3に示すチャンバー21を用いて紐状の第2の固形物を形成した。AD938に含まれる界面活性剤の種類は、非イオン性界面活性剤であり、その曇点は約60℃である。
チャンバー21の内部空間2の容積(チャンバー21の内容積)は200cm3とし、チャンバー内に、円形の噴射口(0.25mmφ)を有する一対のノズル23a、23bを配置した。ノズルの先端における噴射口が形成された部分には、ダイヤモンドを用い、各々のノズルの噴射方向24a、24bが交わるようにノズル23a、23bを配置した。排出口28(円形、径10mm)には、断面の形状が円形である内径1.6mm、長さ1000mmの管体(第1の管体)を接続した。
このようなチャンバー21に上記分散液(液温25℃)を供給し、ノズル23a、23bから分散液を噴射させた。分散液の供給量を約0.5L/分、分散液の噴射圧を200MPaとした。チャンバー21、および、分散液に対する加熱は特に行わなかった。
噴射開始から十数秒後、管体の先端から、紐状(円柱状)のPTFE含有固形物(直径2mm)が排出され、排出された固形物は、水と界面活性剤とを内包し、支持体による支持なしに自らの形状を保持可能であった。
管体の先端から排出された固形物の温度を測定したところ、噴射開始から40秒程度経過した後に約70℃で安定した。チャンバー21内における固形物が形成された分散液の温度はこの温度以上であると考えられ、即ち、この実験では、分散液の温度にして70℃以上の温度域においてPTFE粒子同士の結着が行われたと考えられる。
同様の実験を、ノズルの噴射口の径を0.05mmφ〜0.5mmφの範囲、分散液の噴射圧を30MPa〜300MPaの範囲、分散液の供給量を0.3L/分〜10L/分の範囲で、それぞれ変化させて行ったところ、上記と同様に、紐状の第2の固形物を形成できた。
(形成例2)
形成例2では、分散液に旭硝子社製AD938を用い、図7に示す管体(第2の管体)41を用いて紐状の第2の固形物を形成した。管体41は、分散液の流れを妨げるバリアとして、L字状の屈曲部43と内径が変化した狭窄部49とを有する。狭窄部49よりも上流側の管体41の内径は10mm、狭窄部49よりも下流側の管体41の内径は2mmとした。狭窄部49の位置は、管体41の一方の端部(出口側の端部)42から200mmとし、屈曲部43の位置は、管体41の他方の端部(入口側の端部)44から170mmとした。
このような管体41と、分散液の供給路46の末端に配置されたノズル45(円形の噴射口(0.15mmφ)を有する)とを、ノズル45が管体41の中心軸上に位置し、管体41の他方の端部44とノズル45との距離が5mmとなるように互いに配置した後(図7参照)、ノズル45から分散液を管体41の内部に噴射させた。ノズル45への分散液の供給量を約0.5L/min、分散液の液温を25℃とし、分散液の噴射圧を200MPaとした。管体41および分散液に対する加熱は特に行わなかった。
噴射開始から数秒後、管体41の端部42から、紐状のPTFE含有固形物(直径2mm)が排出され、排出された固形物は、水と界面活性剤とを内包し、支持体による支持なしに自らの形状を保持可能であった。
管体の端部から排出された固形物の温度を測定したところ、噴射開始から40秒程度経過した後に約70℃で安定した。
同様の実験を、分散液の噴射圧を200MPa〜240MPaの範囲で変化させて行ったところ、上記と同様に、紐状の第2の固形物を形成できた。
同様の実験を、分散液におけるPTFE粒子の含有率を変化させて行ったところ、当該含有率を54質量%および48質量%とした場合においても、上記と同様に、紐状の第2の固形物を形成できた。
同様の実験を、図8に示す管体(第2の管体)51、および、図9に示す管体(第2の管体)61を用いて行った場合においても、上記と同様に、紐状の第2の固形物を形成できた。
なお、管体51は、分散液の流れを妨げるバリアとして、その一方の端部42の近傍にT字状の屈曲部47を有する。管体51の内径は10mm、長さ(一方の端部42から他方の端部44までの長さ)は200mmとし、屈曲部47の位置は管体51の一方の端部42から30mmとした。
管体51を用いた場合、端部42からは紐状のPTFE含有固形物が排出されたが、端部42とともに「T字」の開放端部を構成する端部48からは、紐状のPTFE含有固形物は排出されなかった。上記実験を複数回行ったところ、それぞれの場合において、端部42または端部48のいずれか一方の端部のみから紐状のPTFE含有固形物が排出された。
管体61は、分散液の流れを妨げるバリアとして、その長さ方向の中央部に、内径が変化した狭窄部49を有する。管体61の長さは400mmとし、一方の端部42から長さ200mmの範囲の内径を2mm、他方の端部から長さ200nmの範囲の内径を10mmとした。即ち、管体61では、狭窄部49において、その内径が10mmから2mmへと変化することになる。
(実施例1)
最初に、形成例1と同様にして紐状の第2の固形物を形成した。ただし、チャンバー21の内容積を30cm3とし、その排出口28には、断面の形状が円形である内径1.6mm、長さ200mmの第1の管体を接続して、直径2mmの紐状(円柱状)の第2の固形物を形成した。
次に、このように形成した紐状の固形物を、90℃の温水中において、吐出口の径が異なる5つの第2のダイにより引き抜き加工したところ、1つめのダイにより直径1.67mmへ、2つめのダイにより直径1.4mmへ、3つめのダイにより直径1.2mmへ、4つめのダイにより直径1.0mmへ、5つめのダイにより直径750μmへ、と当該固形物を段階的に細径化できた。なお、5つの上記ダイは吐出口の径が大きい順に並べ、紐状の固形物は、この順に上記ダイを通して引き抜き加工した。
上記各ダイには、ポリプロピレンからなるピペットチップ(Quality Scientific Plastics社製、111−Q 1000μL用)を用い、第2の固形物は、各々のチップの先端に設けられた開口部から引き抜いた。各々のチップにおける開口部近傍の内部空間の形状、即ち、固形物が接触する空間の形状、は、ほぼ円錐状であり、その円錐の中心軸と円錐面の母線との成す角度であるダイス角αは約7°であった。各ダイの吐出口の径と、当該吐出口から引き抜かれた固形物の径とは、ほぼ同じであった。開口部は、上記ピペットの先端を切断することにより形成し、その径は、切断する位置を変化させることにより調整した。第2の固形物の引き抜き速度は、17.3m/分とした。
引き抜き加工前の固形物の断面(伸長方向に垂直な断面)における表面(外周面)近傍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図10に、当該断面における中心付近のSEM像を図11に示す。図10に示すように、この固形物の外周面近傍の部分では、PTFE粒子が互いに結着した構造を有するスキン層が形成されていた。一方、図11に示すように、その中心付近では、PTFE粒子が比較的元の形状(分散液中における形状)を保っていた。各々のSEM像は、固形物を乾燥後、凍結破断させた状態で撮影したが、固形物が水を含んでいる状態では、図11に示す粒子間には水および界面活性剤が安定して含まれていると考えられ、このような構造が、第2の固形物の変形性の発現に寄与していると考えられる。
温水中における引き抜き加工後の固形物の断面をSEMにより観察したところ、その中心付近に、PTFE粒子が多数確認できた。
次に、引き抜き加工により細径化した後の固形物を自然乾燥させた後(即ち、固形物に含まれる水の量を低減させることにより第1の固形物とした後)、得られた第1の固形物を、図12に示す断面形状を有する金属製の第1のダイ2を用いて、引き抜き温度350℃で引き抜き加工したところ、当該固形物の直径を210μmへとさらに細径化でき、一本の繊維の全体にわたってほぼ均一な直径(繊維径)を有する、半透明の繊維を得ることができた。また、その断面形状は、表面に僅かな凹凸が見られたものの、ほぼ円形であった。
なお、図12に示すダイ2におけるその内部の面(第1の固形物が接触する面)の一部は、固形物の伸長方向を中心軸とし、固形物が引き抜かれる方向を頂点とする円錐の円錐面であり、当該円錐の中心軸と円錐面の母線とが成す角度であるダイス角αは約30°であった。また、引き抜き加工は、ダイ2の温度を350℃とし、引き抜き速度を0.8m/分として行った。ダイ2における繊維の吐出口12の径は500μmとした。
第1のダイ2による引き抜き加工(引き抜き温度350℃)により得られた繊維の断面(伸長方向に平行な断面)のSEM像を図13に示す。図13における(a)および(b)は、互いに倍率が異なるが、同じ断面に対するSEM像である。
図13に示すように、融点以上の温度における引き抜き加工により、繊維軸方向に伸長する複数のPTFE融着体を有するPTFE繊維を形成できた。図13に示す例におけるPTFE融着体の平均径を画像処理により求めたところ、当該平均径は、およそ0.5〜3μmの範囲にあった。なお、この引き抜き加工前における固形物の中心部分にはPTFE粒子が多数存在していたことから、この融着体は、融点以上の引き抜き加工により、PTFE粒子同士が融着して形成されたと考えられる。
これとは別に、引き抜き温度を380℃とした以外は上記と同様に、第1の固形物を引き抜き加工したところ、当該固形物の直径を120μmへとさらに細径化でき、一本の繊維の全体にわたってほぼ均一な直径(繊維径)を有し、引き抜き温度が350℃の場合よりも透明感が増した半透明の繊維を得ることができた。また、その断面形状は、350℃の場合と同様に、ほぼ円形であった。
この引き抜き加工(引き抜き温度380℃)により得られた繊維の断面(伸長方向に平行な断面)のSEM像を図14に示す。図14における(a)および(b)は、互いに倍率が異なるが、同じ断面に対するSEM像である。
図14に示すように、380℃における引き抜き加工により、引き抜き温度が350℃の場合と同様に、繊維軸方向に伸長する複数のPTFE融着体を有するPTFE繊維を形成できた。また、当該繊維において、隣り合う融着体同士は、引き抜き温度が350℃の場合よりも、より密着して融着しており、融着体間に存在する空隙も、引き抜き温度が350℃の場合に比べて、その数が少なく、また一つ一つの空隙の大きさが小さかった。このような空隙の状態の変化により、引き抜き温度が350℃の場合に比べて、より透明な繊維が得られたと考えられる。また、このような空隙の状態の変化は、より高い温度における引き抜き加工によって、PTFEの融着がさらに促進されたことが理由ではないかと考えられる。
次に、上記のようにして得た繊維の比重を、空気中およびPTFEへの濡れ性が良好であるブタノール中における当該繊維の重量から、温度25℃にて求めたところ、約2.22であった。これとは別に、比較のため、マトリックス紡糸法により製造された市販のPTFE繊維である、商品名トヨフロン(東レ社製)、および、スリットヤーン法により製造されたPTFE繊維である、ゴア社製のバグフィルター(PRISTYNE6230)から採取した繊維の比重を、上記と同様に測定したところ、トヨフロンについて約1.90、バグフィルターから採取した繊維について約2.06であった。この結果から、融点以上の引き抜き加工により得た本発明の繊維は、従来のPTFE繊維に比べて「密」な構造を有しているのではないかと思われる。
なお、PTFE繊維の比重を、ブタノールの代わりに水を用いて評価しようとしたが、PTFEへの水の濡れ性の低さから、繊維の表面に多数の気泡が付着したため、水を用いた比重の測定は困難であった。
(実施例2)
最初に、実施例1と同様にして、紐状の第2の固形物(直径2mm)を形成し、当該固形物を90℃の温水中で引き抜き加工した後に自然乾燥させて、紐状の第1の固形物(直径750μm)を得た。
次に、得られた第1の固形物を、250℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃および380℃の各引き抜き温度において、図12に示す断面形状を有する金属製の第1のダイ2を用いて引き抜き加工し、PTFE繊維を得た。引き抜き温度250℃および320℃における引き抜き加工は、比較のために行ったものである。全ての引き抜き温度において、得られた繊維は、一本の繊維の全体にわたってほぼ均一な直径を有しており、その断面形状は、表面に僅かな凹凸が見られたものの、ほぼ円形であった。
上記のように形成した各繊維について、その繊維径、色調、引張強度、弾性率、破断伸び、結晶化度、および繊維軸方向の結晶配向度を評価した。各評価項目の評価方法を以下に示す。
[繊維径]
繊維径は、マイクロメーターにより評価した。
[色調]
繊維の色調は、目視により評価した。
[引張強度、弾性率、破断伸び]
評価対象物である繊維に対して引張試験を実施して、当該繊維のS−S曲線(ストレス−ストレイン曲線)を測定することにより評価した。引張試験は、引張試験機(米倉製作所社製、CATY500BH)を用い、引張速度を50mm/分、チャック間距離を20mm、測定雰囲気を22℃として行った。当該試験において、繊維を引っ張る方向は、その伸長方向とした。
[結晶配向度]
評価対象物である繊維に対して広角X線回折(WAXD)測定を実施し、得られたX線回折像(WAXDプロファイル)から、当該繊維の繊維軸方向の結晶配向度を求めた。WAXD測定は、広角X線回折装置(リガク社製)を用い、CuKα線(波長:0.1542nm)を上記繊維に照射して、その回折像を平板フィルムに撮影して行った。X線の照射方向は、上記繊維の繊維軸に対して垂直な方向とし、X線の照射時間は1.5時間とした。WAXD測定は、PTFEが六方晶系となって、1つの結晶面から配向度を求めることができる温度(19℃)以上の22℃で行った。得られたWAXDプロファイルからの結晶配向度の評価は、繊維便覧第3版(社団法人繊維学会編、丸善株式会社発行、発行日平成16年12月15日)の第81〜83ページの記載に従った。なお、配向度は(100)面の配向性から求めた。
[結晶化度]
評価対象物である繊維に対して示差走査熱量(DSC)測定を実施し、得られたDSC曲線から、当該繊維の結晶化度を求めた。DSC測定は、示差走査熱量計(ブルカー・エイエックス社製DSC3100SA)により行い、測定の標準試料にはアルミナを用い、測定条件は、昇温速度を10℃/分、窒素流量を50mL/分とした。各繊維の結晶化度(Xc)は、測定によって得られたDSC曲線から繊維の融解エンタルピー(ΔHf)を求め、式Xc=(ΔHf/ΔHf 100%)×100(%)により求めた。ここで、ΔHf 100%は、PTFEの完全結晶の融解エンタルピーである。ここでは、「Starkweather HW Jr., Zoller P, Jones GA, Vega AJら、Journal of Polymer Science、Polymer Physics Edition、1982年、Vol.20、pp751」の記載に基づき、ΔHf 100%=92.9J/gとした。
評価結果を以下の表1ならびに図15〜17に示す。
表1に示すように、引き抜き温度が高くなると、得られた繊維の繊維径は小さくなる傾向を示し、特に、引き抜き温度が340℃以上では、引き抜き温度が330℃以下の場合に比べて、得られた繊維の繊維径が大幅に小さくなった。また、繊維の色調は、引き抜き温度が340℃以上において、白色から次第に半透明となる傾向を示した。
また、表1、図15〜17に示すように、引き抜き温度がPTFEの融点以上となると、得られた繊維の引張強度、弾性率および結晶配向度が増大し、破断伸びおよび結晶化度が低下する傾向を示した。
より具体的には、繊維の引張強度および弾性率は、引き抜き温度が330℃以上、特に340℃以上になると、大きく増大した。結晶化度は、それよりも低い温度域である引き抜き温度が320℃の時点で、引き抜き温度が250℃のときに比べて減少を始めた。一方、繊維の破断伸びは、引張強度などに比べると、引き抜き温度がPTFEの融点以上であるか否かに影響を受けず、250℃以上の引き抜き温度の温度域において、当該温度の上昇に伴い全体的に低下する傾向を示した。結晶配向度は、引き抜き温度が370℃以上になると、顕著に増加した。
図18に、引き抜き温度に対する、引張強度、ならびに、引き抜き加工時の第1の固形物の伸長倍率を、図19に、引き抜き温度に対する、弾性率、ならびに、引き抜き加工時の第1の固形物の伸長倍率を、それぞれ示す。第1の固形物の伸長倍率は、引き抜き加工前の時点における固形物の直径(750μm)と、引き抜き加工によって得られた繊維の繊維径とから求めた。
図18、19に示すように、PTFEの融点未満の温度における引き抜き加工では、得られた繊維の伸長倍率ならびに引張強度および弾性率はほとんど変化しなかったが、330℃以上、特に340℃以上の引き抜き温度において、伸長倍率、引張強度および弾性率ともに、大きく上昇する傾向を示した。
これとは別に、マトリックス紡糸法およびスリットヤーン法により製造されたPTFE繊維である上記トヨフロンおよびバグフィルターより採取した繊維の結晶配向度を、上記と同様に測定したところ、それぞれ、0.93および0.87であった。また、これらの繊維の引張強度、弾性率および破断伸びを別途評価したところ、トヨフロンについて、それぞれ、220MPa、2.5GPa、および21.5%であり、バグフィルターより採取した繊維について、それぞれ、1080MPa、8.8GPa、および24.8%であった。
上記それぞれの引き抜き温度において引き抜き加工して得た繊維、および、上記従来の製造方法による繊維のWAXDプロファイルを、図20〜29に示す。
なお、表1に示すように、引き抜き温度370℃で得た繊維と、引き抜き温度380℃で得た繊維とでは、結晶配向度こそ0.99と同一であるが、図27、28に示すように、両者のWAXDプロファイルは異なる。このため、両者には、結晶配向度の数値に表れないような構造の違いがあるのではないかと推定される。
上記評価とは別に、評価対象物である上記各繊維に対して小角X線散乱(SAXS)測定を行ったところ、引き抜き温度を融点未満としたときと、当該温度を融点以上としたときとの間で異なるプロファイル(散乱像)が得られた。また、引き抜き温度を融点以上としたときのプロファイルと、上記従来の製造方法によるPTFE繊維に対する測定で得られたプロファイルとは異なっていた。詳細の解析は今後の検討が待たれるが、SAXS測定では、WAXD測定よりも大きな構造、例えば、繊維中に存在する空隙の程度、などを評価できると考えられ、融点以上の温度における引き抜き加工によって得た本発明の繊維の構造を、より明確に特定できる可能性がある。
図30に、引き抜き温度の変化に対する、第1の固形物を引き抜くために必要な張力(引き抜き張力)の変化を示す。引き抜き速度は、全て同一である。
図30に示すように、引き抜き温度が上昇するに伴い、引き抜き張力が増加する傾向を示した。詳細の解析は今後の検討が待たれるが、引き抜き温度を上昇させることで、第1の固形物(および得られたPTFE繊維)をその長軸方向(繊維軸方向)に引き伸ばすことができる可能性がある。
(実施例3)
最初に、実施例1と同様にして紐状の第2の固形物(直径2mm)を形成した。ただし、旭硝子社製AD938に、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル:花王社製エマルゲン1108)を濃度1重量%となるように加えた分散液を用い、チャンバー21への分散液の噴射圧を150MPaとした。
次に、実施例1と同様に、得られた紐状の固形物を、吐出口の径が異なる5つの第2のダイ(実施例1と同様のピペットチップからなる)により90℃の温水中において引き抜き加工した。ただし、それぞれのダイの吐出口の径は、1.6mm、1.4mm、1.3mm、1.1mm、1.0mmおよび0.9mmとし、引き抜き速度は4.7m/分とした。
次に、温水中における引き抜き加工後の固形物を自然乾燥させて、紐状の第1の固形物(直径700μm)とし、得られた第1の固形物を、330℃、350℃、380℃および400℃の各引き抜き温度において、図31に示す断面形状を有する金属製の第1のダイ2を用いて引き抜き加工し、PTFE繊維を得た。得られた繊維は、一本の繊維の全体にわたってほぼ均一な直径を有しており、その断面形状は、表面に僅かな凹凸が見られたものの、ほぼ円形であった。
なお、図31に示すダイ2におけるその内部の面の一部は、図12に示すダイ2と同様に、固形物の伸長方向を中心軸とし、固形物が引き抜かれる方向を頂点とする円錐の円錐面である。また、このダイ2において、上記円錐の中心軸と円錐面の母線とが成す角度であるダイス角αは約8°である。ダイ2における繊維の吐出口12の径は250μmとした。
ダイ2を用いた第1の固形物の引き抜き加工は、引き抜き速度を0.8m/分から、引き抜き加工可能な最大速度にまで変化させて行った。
上記のように形成した各繊維について、その繊維径、力学的性質(引張強度および引張弾性率)、繊維軸方向の結晶配向度、複屈折、熱的性質、および動的粘弾性を評価した。各評価項目の評価方法を以下に示す。
[繊維径、結晶配向度]
実施例2と同様に評価した。
[引張強度、引張弾性率]
引張試験機としてオリエンテック社製STA-1150を用い、引張速度を100mm/分、チャック間距離を50mmとした以外は、実施例1と同様に評価した。
[複屈折]
各繊維の複屈折Δnは、偏光顕微鏡(ニコン社製OPTIPHOTO2-POL)により評価した。具体的には、波長λ=589nmの単色光を用いて、上記繊維をクロスニコル下で観察し、そのレターデーションRをベレック式コンペンセータにより求めて、式Δn=R/d(dは繊維径)からΔnを算出した。
[熱的性質、結晶化度]
各繊維の熱的性質は、示差走査熱量計(DSC)(ブルカー・エイエックス社製DSC3100SA)により評価した。なお、標準試料にはアルミナを用い、昇温速度を10℃/分、窒素流量を50mL/分とした。
また、DSCによる評価結果から、実施例2と同様に、繊維の結晶化度を求めた。
[動的粘弾性]
各繊維の動的粘弾性は、動的粘弾性測定装置(レオロジー社製MR-300)により評価した。なお、駆動周波数を10Hz、昇温速度を5℃/分とし、−150〜400℃の温度範囲で測定した。
評価結果を、図32〜39に示す。
[引き抜き速度と、繊維径および伸長倍率との関係]
実施例3で実施した330℃以上の各引き抜き温度において、第1の固形物の安定した引き抜き加工が、即ち、安定したPTFE繊維の形成が、可能であった。図32に示すように、引き抜き温度を高くするほど、引き抜き速度を大きくすることができた。また、引き抜き速度の増加に伴い、得られる繊維の径が小さくなるとともに、引き抜き加工時の伸長倍率が増大した。伸長倍率は、実施例2と同様に、引き抜き加工前の時点における第1の固形物の直径(700μm)と、引き抜き加工によって得られた繊維の繊維径とから求めた。
得られた繊維の色調は、引き抜き温度を330℃とした場合、引き抜き速度が0.8m/分のときに透明であったが、この引き抜き温度では、引き抜き速度の増加に伴い、半透明から白色へと変化した。その他の引き抜き温度の場合、引き抜き速度によらず、得られた繊維は透明であった。
[引き抜き速度および伸長倍率と、引張強度および弾性率との関係]
図33に示すように、引き抜き速度が大きくなるほど、また、引き抜き温度が高くなるほど、得られた繊維の引張強度および弾性率が増大した。引き抜き温度を400℃としたときには、得られた繊維の弾性率は最大で約48GPa、引張強度は最大で約620MPaとなった。
また、伸長倍率が大きくなるほど、得られた繊維の引張強度および弾性率が増大したが、伸長倍率と弾性率との関係は、引き抜き温度に依存することなく、全ての引き抜き温度において、ほぼ同様であった。これに対して、伸長倍率と引張強度との関係は、引き抜き温度に対する依存性を示し、同じ伸長倍率では、引き抜き温度が高くなるに従って、得られた繊維の引張強度が大きくなった。
[引き抜き速度および伸長倍率と、結晶配向度との関係]
図34に示すように、引き抜き温度が高くなるに従って、得られた繊維の結晶配向度が増大する傾向を示し、380℃以上の引き抜き温度において0.995以上となった。また、380℃以上の引き抜き温度では、引き抜き速度が大きくなるに従って、得られた繊維の結晶配向度が増大する傾向を示した。伸長倍率と結晶配向度との関係は、引き抜き速度と結晶配向度との関係と、ほぼ同様であった。
なお、上記のように形成した各繊維のWAXDプロファイルを、図40、41に示す。
[引き抜き速度および伸長倍率と、複屈折Δnとの関係]
複屈折Δnは、PTFE繊維における結晶相および非晶相の光学的異方性を、各々の相の体積分率に応じて平均化した値であるともいえ、形態複屈折による影響を受けるという問題があるが、Δnによって、非晶相の配向状態を観察できると考えられる。
図35に示すように、引き抜き温度が高くなるに従って、得られた繊維の複屈折が増大する傾向を示した。図34に示す結晶配向度の結果と併せて考えると、引き抜き温度が高くなることにより、結晶相だけではなく、非晶相の配向度が増すのではないかと考えられる。なお、引き抜き速度と複屈折率との関係は、伸長倍率と複屈折率との関係と、ほぼ同様であった。
[熱的性質]
図36に示すように、引き抜き加工により、融解ピーク温度(DSC曲線における350℃近傍の吸熱ピークの温度。引き抜き加工前において345℃)が低温にシフトすることがわかった。また、引き抜き温度が380℃以上の場合に、DSC曲線において、370℃〜380℃の温度領域にもう一つ新たな吸熱ピーク(高温側ピーク)が測定された。高温側ピークの出現は、引き抜き温度を高くした場合に、互いに形態学的に異なる2種類の結晶が形成され、得られた繊維の結晶状態が準安定的となっていることを示唆している。
このことは、図37に示す、引き抜き速度および伸長倍率に対する結晶化度の変化、具体的には、引き抜き速度および伸長倍率が増大するに伴って結晶化度が大きくなる傾向、によっても示唆されている。
なお、図36において、単位「m/min」によって示される数値は、「引き抜き速度(m/分)」を示し、吸熱ピーク温度に併記された、括弧内の数値は、得られた繊維の結晶化度(%)を示す。
[動的粘弾性]
動的粘弾性測定では、温度上昇に伴う力学的緩和現象に基づき、得られた繊維における分子の凝集状態が予想できる。PTFEでは、その対数減衰率の値に対して、αピーク、βピークおよびγピークが存在することが知られており、貯蔵弾性率のプロファイルにおいて、当該ピークに対応する階段状の部分を、それぞれα分散、β分散およびγ分散という。α分散およびγ分散は、高分子中の無定型部分の運動に基づくと考えられ、高分子の結晶化度の増加に伴って減少する傾向を示す。β分散は、高分子中の結晶部分の分子運動に基づくと考えられ、高分子の結晶化度の増加に伴って増大する傾向を示す。
図38に、各引き抜き温度および速度において引き抜き加工して得た繊維の貯蔵弾性率(E’)を示し、図39に、図38に示した貯蔵弾性率プロファイルにおけるγ分散に対応する領域の損失正接(tanδ)を示す。
図38、39に示すように、得られた繊維の貯蔵弾性率(E’)の値は、引き抜き温度が高くなるに従って大きくなり、上述した弾性率と同様の傾向を示した。また、γ分散は、引き抜き速度の増加に伴って減少し、熱的性質の評価から求めた結晶化度の変化と同様の傾向を示した。
図42、43に、実施例3において得られた繊維の表面をSEMにより評価した例を示す。また、図44、45に、実施例3において得られた繊維の断面をSEMにより評価した例を示す。
図42、43に示すように、繊維軸方向に伸長する微細な凹凸が見られるものの、ほぼ滑らかな表面を有するPTFE繊維を形成できた。また、図44、45に示すように、繊維軸方向に伸長する複数のPTFE融着体を有するPTFE繊維を形成できた。
本発明によれば、PTFE繊維を、エマルジョン紡糸法のようにマトリックス材を用いることなく製造できるとともに、スリットヤーン法を含む従来の製造方法よりも、生産性よく製造できる。
本発明のPTFE繊維の製造方法の一例を説明するための模式図である。 本発明のPTFE繊維の製造方法の別の一例を説明するための模式図である。 本発明のPTFE繊維の製造方法に用いることができるPTFE含有固形物を形成できるチャンバーの一例を示す模式図である。 本発明のPTFE繊維の製造方法に用いることができるPTFE含有固形物を形成できるチャンバーの別の一例を示す模式図である。 本発明のPTFE繊維の製造方法に用いることができるPTFE含有固形物を形成できるチャンバーのまた別の一例を示す模式図である。 本発明のPTFE繊維の製造方法に用いることができるPTFE含有固形物を形成できるチャンバーのさらにまた別の一例を示す模式図である。 形成例においてPTFE含有固形物(第2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当該第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法を説明するための模式図である。 形成例においてPTFE含有固形物(第2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当該第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法を説明するための模式図である。 形成例においてPTFE含有固形物(第2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当該第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法を説明するための模式図である。 実施例1で作製したPTFE含有固形物(第2の固形物)の断面における表面近傍のSEM像を示す図である。 実施例1で作製したPTFE含有固形物(第2の固形物)の断面における中心付近のSEM像を示す図である。 実施例1、2に用いた第1のダイを模式的に示す断面図である。 実施例1において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度350℃)により形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図である。 実施例1において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度380℃)により形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図である。 実施例2で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の引張強度および結晶化度の変化を示す図である。 実施例2で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の弾性率および結晶化度の変化を示す図である。 実施例2で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の破断伸びおよび結晶化度の変化を示す図である。 実施例2で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の引張強度の変化と、当該加工時の伸長倍率の変化とを示す図である。 実施例2で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の弾性率の変化と、当該加工時の伸長倍率の変化とを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度250℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度320℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度330℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度340℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度350℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度360℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度370℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において、第1のダイによる引き抜き加工(引き抜き温度380℃)により形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 マトリックス紡糸法により製造されたPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 スリットヤーン法により製造されたPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例2において測定した、引き抜き温度と引き抜き張力との関係を示す図である。 実施例3に用いた第1のダイを模式的に示す断面図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の径および伸長倍率と、引き抜き速度との関係を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の弾性率および引張強度と、引き抜き速度および伸長倍率との関係を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の結晶配向度と、引き抜き速度および伸長倍率との関係を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の複屈折と、引き抜き速度および伸長倍率との関係を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度および速度を変化させた場合における、得られた繊維のDSC曲線を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度を変化させた場合における、得られた繊維の結晶化度と、引き抜き速度および伸長倍率との関係を示す図である。 実施例3で評価した、引き抜き温度および速度を変化させた場合における、得られた繊維の貯蔵弾性率(E’)のプロファイルを示す図である。 図38に示す貯蔵弾性率プロファイルにおけるγ分散に対応する領域の損失正接(tanδ)を示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の表面のSEM像を示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の表面のSEM像を示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図である。 実施例3において、第1のダイによる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図である。
符号の説明
1 PTFE含有固形物(第1の固形物)
2 (第2の)ダイ
3 PTFE含有固形物(第2の固形物)
4 (第1の)ダイ
5 乾燥機構
11 流入口
12 吐出口
13 流入口
14 吐出口
21 チャンバー
22 内部空間
23、23a、23b ノズル
24、24a、24b 噴射方向
25 構造体
26、26a、26b 供給路
27 供給口
28 排出口
29 混合弁
30 球体
31 外周体
32a、32b 中子
33a、33b 上面
34 排出路
35 空隙
41 管体(第2の管体)
42 端部
43 屈曲部
44 端部
45 ノズル
46 供給路
47 屈曲部
48 端部
49 狭窄部
51 管体(第2の管体)
61 管体(第2の管体)

Claims (13)

  1. 紐状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)含有固形物(第1の固形物)を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工することにより、前記第1の固形物を細径化するポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  2. 前記第1の固形物を、330℃以上で引き抜き加工する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  3. 前記第1の固形物を、第1のダイを通して前記引き抜き加工する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  4. 前記第1のダイは、前記第1の固形物が通る空間として、当該固形物が引き抜かれる方向に垂直な断面の面積が、前記第1のダイにおける一方の開口部から他方の開口部に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有する請求項3に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  5. 前記第1のダイは、前記第1の固形物が通る空間として、当該固形物が引き抜かれる方向に垂直な断面の形状が、円形または楕円形である部分を有する請求項3に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  6. 前記第1の固形物は、水および界面活性剤を内包するPTFE含有固形物(第2の固形物)から、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  7. 前記第1の固形物は、水および界面活性剤を内包する紐状のPTFE含有固形物(第2の固形物)を、第2のダイを通して引き抜き加工することにより細径化した後に、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  8. 前記第2の固形物を、水中において前記第2のダイを通して引き抜き加工する請求項7に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  9. 前記第2の固形物が、PTFE粒子と、界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に、前記粒子が互いに接近または接触する力を加えることにより得た固形物である請求項6または7に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  10. 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤であり、
    前記第2の固形物が、PTFE粒子と、前記非イオン性界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に機械的な力を加えて前記粒子同士を衝突させ、衝突の際に生じる熱により前記分散液の温度を上昇させるとともに、前記分散液の温度にして(T−30)℃以上の温度域において前記粒子同士を結着させて得た固形物である請求項6または7に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
    ただし、T(℃)は、前記非イオン性界面活性剤の曇点である。
  11. 前記第1の固形物は、当該固形物の中心部分にPTFE粒子を含み、
    前記融点以上の引き抜き加工により、前記粒子同士を融着させるとともに前記第1の固形物を細径化して、繊維軸方向に伸長した前記粒子の融着体を含む繊維とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
  12. 紐状のPTFE含有固形物を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工し、細径化して得たポリテトラフルオロエチレン繊維であって、
    繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からなり、
    前記融着体の平均径が0.1〜5μmの範囲であり、
    引張試験により求めた引張弾性率が10GPa以上である、ポリテトラフルオロエチレン繊維。
  13. 広角X線回折測定により求めた繊維軸方向の結晶配向度が0.92以上である請求項12に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維。
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