JP2007009339A - 海島型複合繊維の製造方法、該製造方法により得られる海島型複合繊維、および該海島型複合繊維より得られる微細繊維 - Google Patents

海島型複合繊維の製造方法、該製造方法により得られる海島型複合繊維、および該海島型複合繊維より得られる微細繊維 Download PDF

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みゆき 沼田
Mitsue Kamiyama
三枝 神山
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豊 大越
Hiroaki Ishii
宏明 石井
Kenji Fujii
健司 藤井
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Abstract

【課題】島数が多くかつ十分な強度を持ち、海島断面における海成分を溶解除去した際に、ナノオーダーで繊維径の均一性が高い微細繊維を高速かつ安価に得ること。
【解決手段】溶融紡糸された島数が極めて多い海島型複合繊維未延伸糸条を第1引き取りローラーとこれより周速の早い第2引き取りローラーに供給し、第1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間にある該糸条に赤外線光束を照射して加熱し、流動延伸させるか、あるいは、該流動延伸後の延伸糸条にさらに延伸もしくは熱処理を施す海島型複合繊維の製造方法において、流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に、複数の糸条を融着させ、流動延伸を行う繊維径の均一性に優れた海島型複合繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、島数が極めて多くかつ十分な強度を持ち、かつ、極細な海島型複合繊維を高速かつ安価に製造する方法に関するものであり、海島断面における海成分を溶解除去した際に、ナノオーダーで繊維径の均一性が高い微細繊維に関するものである。
溶融紡糸に引き続いて延伸することによって合成繊維を製造する工程において、微細な繊維径を得るための技術として、海島型複合紡糸、紡糸時のノズル径を小さくする、押出し後の総延伸倍率を増すなどの方法がある。このうち、ノズル径を小さくすると、押出圧力が大きくなり、結果として押出し状態が不安定になるため、均一な繊維が得られなくなる。これを防ぐため、原料高分子の分子量を小さくするか、紡糸温度を上げることにより、溶融粘度を下げることが行われるが、これらは結果として得られた繊維の分子量を小さくし、繊維の強度を落とすため、好ましくない。
従来、海島繊維の製法や装置は極めて多数ある。あるものは、島数を増加させることができるが、海成分に対する島成分の占める割合、すなわち島比率を増加することができない。
すなわち、島比率を増加しようとすると、海島関係が逆転してしまい、島成分を目的としているポリマーが連続状態になってしまい海成分となってしまう欠点のあるタイプや、島数を増加させることはできても1吐出孔当たりの口金が巨大な面積を占めるものになってしまったりした。また、島の位置や数をコントロールできず、不均質なものとなってしまうなど、種々問題があった。
例えば、特許文献1(特公昭58−12367号公報)は、海島型複合繊維の紡糸方法において、上流で海島複合流を作り、それを第1次ロート状部で集合させ該集合した流れを下流において他の海島流れをさらに下流側の第2次ロート状部で集合させ、吐出孔から紡出することを特徴とする超多島型複合繊維の紡糸方法が紹介されている。この方式により、島の数は増加するが、口金吐出孔が複雑かつ高コストで製造工程でのハンドリングが困難であるうえに、作製できる繊維の単糸繊度の下限は0.00852デニールであり、細さの面で限界があった。
一方、特許文献2(特公昭60−28922号公報)には、スタティックミキサーで混合した複合ポリマーを島成分として用いて、海島断面を形成し、微細なポリマー短繊維の集合体からなる繊維の製造方法が提案されている。この製造方法は、ブレンドによる島相形成により、その均質性は不十分であるとともに、微細フィブリルからなる集合体繊維であるため、強度に問題があった。
一方で、総延伸倍率を大きくするためには、延伸工程でいかに大きな延伸倍率を達成するかが必要である。ポリエステル類(後述)の繊維における通常の延伸は、ポリマー分子を、適宜、延伸張力によって引きそろえながら繊維を細化するプロセスであり、必然的に総延伸倍率が増加するのに伴って分子配向が増加し、ある程度の配向度を超えると配向結晶化して延伸性がほとんどなくなるため、総延伸倍率は高々十数倍に制限される。
これを解決するため、強力な赤外線光束もしくは炭酸ガスレーザー光を照射することによって、超高倍率の流動延伸が可能になり、結果として極細繊維を作成できることが、特許文献3(特開2002−115117号公報)、および特許文献4(特開2003−166115号公報)に提案されている。これらの方法は、極細化に応用できるプロセスであるといえるが、複数ポリマー成分からなる断面繊維を均一に、しかも超高倍率に延伸するために、どのようなポリマー性質が好ましいのか、またこのために適したレーザー延伸条件に関する技術の開示はない。
さらに、ナノオーダー(数十〜数百nm)の繊維径をもつ不織布を作成する方法として、特許文献5(特許第3525382号公報)に希薄なポリマー溶液や溶融状態のポリマーを用いて、高電圧によりチャージ流体として噴射し、微細な繊維構造体を作成するエレクトロスピニング法が検討されている。しかしながら、この方法は、繊維構造を発現させる伸長応力を付与できないプロセスであるため、得られた繊維の機械的・熱的特性は、高分子バルク状態と同じ程度であり、実用性に乏しい。また、繊維径の均一性に関しては、噴射斑などによる塊状物もあり好ましくない。さらに、設備面の安全性や環境負荷の観点からも好ましくない。
特公昭58−12367号公報 特公昭60−28922号公報 特開2002−115117号公報 特開2003−166115号公報 特許第3525382号公報
本発明は、島数が極めて多くかつ十分な強度を持ち、かつ、極細な海島型複合繊維を高速かつ安価に製造する方法に関するものであり、海島断面における海成分を溶解除去した際に、ナノオーダーで繊維径の均一性が高い微細繊維に関するものである。
本発明は、溶融紡糸された島数が極めて多い海島型複合繊維未延伸糸条を第1引き取りローラーとこれより周速の早い第2引き取りローラーに供給し、第1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間にある該糸条を、流動延伸させるか、あるいは、該流動延伸後の延伸糸条にさらに延伸もしくは熱処理を施す海島型複合繊維の製造方法において、溶融紡糸後、流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に、複数の糸条を融着させ、流動延伸を行うことを特徴とする海島型複合繊維の製造方法に関する。
ここで、本発明では、流動延伸させるため、炭酸ガスレーザー光束を照射して加熱することが好ましい。
また、本発明の製造方法では、上記流動延伸を複数回繰り返すこともできる。
さらに、本発明では、溶融紡糸後、流動延伸に先立って、下記温度T1〜T2の非接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、流動延伸を行うことが好ましい。
1.海成分ポリマーに融点がある場合
T1(℃)=海成分ポリマー融点+50
T2(℃)=海成分ポリマー融点+200
2.海成分ポリマーに融点がない場合
T1(℃)=260
T2(℃)=410
さらに、本発明では、溶融紡糸後、流動延伸に先立って、下記温度T3〜T4の接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、流動延伸を行うことも好ましい。
1.海成分ポリマーに融点がある場合
T3(℃)=海成分ポリマー融点
T4(℃)=海成分ポリマー融点+150
2.海成分ポリマーに融点がない場合
T3(℃)=210
T4(℃)=360
ここで、得られる海島型複合繊維の島成分は、通常、直径5〜500nmである。
また、得られる海島型複合繊維の島成分の島径のばらつきを示すCV%は、通常、0〜20%である。
さらに、得られる海島型複合繊維は、強度×〔1+伸度(%)/100〕で表される破断時に作用する真応力が0.5N/texを超え、1.2N/tex以下であることが好ましい。
さらに、海成分としてナイロンを用い、海成分を溶解するための溶媒としてギ酸を用いることが好ましい。
次に、本発明は、上記海島型複合繊維の製造方法によって得られた海島型複合繊維に関する。
次に、本発明は、上記海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られる島成分の直径が5〜1,000nmのファイバー群であって、そのばらつきを示すCV%が0〜35%である微細繊維である。
本発明により、ナノオーダーで繊維径の均一性が高い微細繊維を高速かつ安価に製造することが可能である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、溶融紡糸後、島成分の数(島数)が極めて多い超多島海島型複合繊維未延伸糸条に流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に複数の糸条を融着させ、赤外線光束を照射して流動延伸し、その後、海成分を除去することにより、ナノオーダーで繊維径の均一性が高い微細繊維を得ることを最大の特徴とするものである。
まず、本発明に用いられる海島型複合繊維糸条の製造方法を説明する。
本発明に用いられる海島型複合繊維糸条は、溶融紡糸時における海成分ポリマーの溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が20%未満と少なくなっても、島成分同士の一部分の接合や、島成分の大部分の接合により、海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
海成分ポリマーと島成分ポリマーとの好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分同士が接合しやすくなり、一方2.0倍を超える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。海成分ポリマーと島成分ポリマーとの好ましい溶融粘度比(海/島)を上記範囲内にするには、適切な海成分ポリマーと島成分ポリマーの選択が必要となる。
なお、ここでいう溶融粘度は、フロテスターにより測定された値であり、海成分ポリマーの溶融粘度は、通常、80〜900Pa・S、好ましくは100〜600Pa・S、島成分ポリマーの溶融粘度は、通常、30〜500Pa・S、好ましくは50〜300Pa・Sである。
本発明に用いられる海島型複合繊維未延伸糸条は、島数が極めて多く、その島数は多い方が微細繊維の生産性が高く、また、複数の糸条を融着させることによりさらに生産性を高くすることができる。しかも、得られる微細繊維の細さも顕著となり、微細繊維特有の柔らかさ、滑らかさ、光沢感などを表現することができる。よって、上記海島型複合繊維未延伸糸条は、1フィラメントあたりの島数は100島以上、好ましくは500島以上であることが重要である。ここで、島数が100島未満の場合には、海成分を溶解除去しても微細繊度の単糸からなるハイマルチフィラメント糸を得ることができず、本発明の目的を達成することができない。なお、島数があまりに多くなりすぎると紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、加工精度自体も低下しやすくなるので1,100島以下とするのが好ましい。
海成分と島成分との重量比は、特に限定されるものではないが、海成分の重量比率が80重量%〜5重量%(島成分としては、20重量%〜95重量%)が好ましい。さらに好ましくは、60重量%〜15重量%(島成分としては、40重量%〜85重量%)である。海成分比率が80重量%を超えると、海成分の厚みが厚くなり、一方5重量%未満では、ポリマー量が少なすぎて、多数の島間に均一に分配することが困難である。
なお、抽出溶剤に対する、海成分の島成分に対する溶解速度の比率は、30倍以上であることが好ましい。30倍未満の場合は、抽出溶剤に対する溶解速度差が小さいために、繊維断面中央の海成分を溶解している間に、繊維表面の島成分の減量も進行してしまい、海成分を完全に溶解除去するためには、島成分の何割かも減量されてしまうことになり、島成分の太さ斑や溶剤浸食による強度劣化が発生して、毛羽やピリング、品位に問題がある。
海成分ポリマーは、島成分との溶剤溶解速度差が30倍以上であれば、いかなる繊維形成性ポリマーであってもよく、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどいずれのポリマーでもよい。
例えば、アルカリ水溶液減量性ポリマーの場合は、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物および5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが最適である。また、ナイロン6は、ギ酸溶解性があり、ポリスチレン・、ポリエチレンはトルエンなど有機溶剤に非常によく溶ける。
一方、島成分ポリマーに関しても、海成分との溶解速度差が十分あれば、いかなる繊維形成性ポリマーであってもよく、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどいずれのポリマーでもよい。衣料製品などでは、ポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、ポリアミドの場合は、ナイロン6がよい。一方、極細繊維織物など、産業資材・医療素材・フィルターなどの浄化デバイスへの適応に関しては、水や酸、アルカリに強いポリスチレンやポリエチレンなどが、耐久性があり好ましい。
なお、海成分にナイロン6などのポリアミド、島成分にポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、海成分の溶解にはギ酸を用いる系が好ましい。
本発明の海島型複合繊維未延伸糸条の製造に関しては、島成分を形成するために、中空ピン群および微細孔群を用いる方法などがある。紡糸口金としては、中空ピンおよび微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流を合流し、圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。
本発明の口金例を図1〜2に示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
図1は、中空ピンを海成分樹脂貯め部分に吐出してそれを合流圧縮する方式であり、図2は、中空ピンの代わりに微細孔方式で島を形成する方法である。
未延伸糸条の紡糸は、上記に例示した口金を用いて、紡糸速度500〜6,000m/minで得られるものを用いることが可能である。海島型複合繊維未延伸糸条の単糸繊度は、特に限定されるものではないが、10〜3,000dtex(直径30〜500μm)程度が好ましい。さらに好ましくは、40〜400dtex(直径60〜200μm)である。繊度が小さすぎると、レーザー加熱による流動状態開始期において切れやすく工程の安定化が難しい、一方、大きすぎると目的の微細繊度繊維が得られないことと、均一な加熱が難しくなる。
本発明では、以上の海島型複合繊維未延伸糸条を第1引き取りローラーとこれより周速の早い第2引き取りローラーに供給し、第1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間で、該糸条に赤外線光束を照射して加熱し、流動延伸するか、あるいは該流動延伸後の延伸糸条にさらに延伸もしくは熱処理を施すが、上記流動延伸の際、流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に、複数の糸条を融着させて流動延伸を行うことにより、より高倍率の流動延伸が可能になり、繊維径のばらつきが小さい微細繊維を得ることができる。
溶融紡糸後、流動延伸に先立って融着させる方法として、温度T1〜T2の非接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、その後、流動延伸を行う方法が好ましい。海成分ポリマーに融点がある場合には、T1(℃)は海成分ポリマー融点+50、T2(℃)は、海成分ポリマー融点+200である。海成分ポリマーに融点がない場合には、T1(℃)は260、T2(℃)は410である。非接触式ヒーター温度が海成分ポリマー融点+50℃未満もしくは260℃未満の場合には、糸条は融着されない。一方、非接触式ヒーター温度が海成分ポリマー融点+200℃を超えるか、もしくは410℃を超える場合には、糸条は膠着するもしくは溶断するため糸が巻き取れない。
また、溶融紡糸後、流動延伸に先立って融着させる方法として、温度T3〜T4の接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、その後、流動延伸を行う方法が好ましい。海成分ポリマーに融点がある場合には、T3(℃)は海成分ポリマー融点、T4(℃)は海成分ポリマー融点+150である。海成分ポリマーに融点がない場合には、T3(℃)は210、T2(℃)は360である。ここで、接触式ヒーター温度が海成分ポリマー融点未満もしくは210℃未満の場合には、糸条は融着されない。一方、接触式ヒーター温度が海成分ポリマー融点+150℃を超えるか、もしくは360℃を超える場合には、糸条は膠着するもしくは溶断するため糸が巻き取れない。
流動延伸時に融着させる方法としては、複数の糸条を束ねた状態で流動延伸する方法がある。特に、レーザー照射部において、複数の糸条が密着している場合にのみ、複数の糸条が流動延伸時に融着される。レーザー照射部において複数の糸条が密着していない場合には、複数の糸条は融着されない。例えば、レーザー照射部付近で繊維1フィラメントに対し、それぞれガイドを設けて流動延伸させた場合には、複数の糸条は融着されない。一方、レーザー照射部付近で複数の糸条をまとめてガイドに通した場合には、複数の糸条は融着される。なお、流動延伸時に融着させる方法は上記に限るものではなく、その他の方法でもよい。
本発明の海島型複合繊維未延伸糸条を融着させる装置は特に限定されるものではない。一例として、図3に溶融紡糸後、流動延伸に先立って融着させる装置を示す。なお、融着させる装置は下記装置に限るものではない。
また、束ねた糸条の収束性を良くするため、あらかじめ仮撚りを加えると好適である。束ねる糸条の本数に特に制限はなく、レーザーによって均一に加熱できれば良い。具体的には、束ねた糸条の総繊度(tex単位)に糸条に対するレーザー光の吸収係数(m単位)の2乗を乗じ、さらに糸条の密度(Mg/m単位)で割った値が1×1011(tex・m/Mg)を超えない範囲なら均一加熱が可能である。
上記の均一加熱が可能な範囲の算出根拠について、以下に説明する。
吸収係数11.5mm−1のPET(ポリエチレンテレフタレート繊維)に関して直径300マイクロメートル程度までは、均一加熱が可能であり、500マイクロメートル程度までは充分有効である。均一加熱可能な直径と吸収係数はほぼ反比例するため、両者の積(500マイクロメートルに対して約5.8)は一定である。一方、繊度は単位長さ(texの場合1,000m)あたりの質量であるから、単位長さあたりの体積(πr×1,000m)に密度を掛ければ求まる。従って、繊度(直径の2乗と密度に比例)に吸収係数の2乗を掛け、密度で割った値は一定値になるはずである。PETについて上記の単位の数値を代入すると、求める値は2.6×1010(tex・m/Mg)になる。記入した値はこれより幾分大きめにした。(糸直径換算で1mm程度に相当する。)ちなみに単位の(tex・m/Mg)はg/1,000m・m/Mg=10に等しく、直径と吸収係数の積と同じく無次元量である。両者の違いは、2乗していることと定数項の違い。すなわちS=πD/4よりπ×(5.8)4/10=8.4π×10=2.6×1010である。
本発明の延伸工程において、糸条供給速度(上記第1引き取りローラーへの供給速度)は、好ましくは毎秒0.001m〜100m、さらに好ましくは0.01〜50mであり、また、延伸倍率は好ましくは10〜10,000倍、さらに好ましくは15〜1,000倍である。ここで、延伸倍率は、第2引き取りローラー周速度/第1引取りローラー周速度により定義される。糸条供給速度が0.001m/秒未満では、加わる延伸応力が小さすぎて延伸状態が不安定になり、一方、100m/秒を超えると、空気抵抗による延伸応力増加が大きくなるために流動延伸倍率が制約を受けるようになる。また、延伸倍率が10倍未満では、流動延伸工程を加える効果が小さく、一方、10,000倍を超えると、糸条の巻き取り速度が増すため、空気抵抗による延伸応力増加が大きくなり、結果として糸切れを生じるようになる。
本発明では、上記第1ローラーと第2ローラーの間にある走行糸条に赤外線光束を照射して、流動延伸する。赤外線光束の光源として、好ましくは合成繊維である海島型複合繊維未延伸糸条が赤外線を吸収し軟化に資する赤外線波長0.7〜100μmを発するもの、具体的には高温の発熱体を利用した連続スペクトル光源、アーク放電を利用したキセノンランプを含むアーク光源、レーザー発振を利用したコヒーレント光源を用いることができる。レーザーは、光線の平行性が高いために集光や平行光束の形成が容易であること、および大きな出力が得られることから本発明において適している。レーザーには、気体、固体、半導体、色素、エキシマー、自由電子を放出源としたものが使用可能であるが、気体の炭酸ガスを放出源とする発振波長9〜12μmのもの、Nd3+を微量加えたイットリウムアルミニウムガーネット(3Y・5Al)を放出源とする発振波長0.9〜1.2μmのものが特に優れている。このうち、炭酸ガスレーザーは、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維材料が強い吸収を示す波長帯であるため、これらの材料からなる合成繊維の延伸において特に有効であるため好ましい。発振方式は、連続発振が好ましいが、糸条がレーザー照射領域を通過するのに要する時間に比較して十分に高周波数であればパルス発振でも差し支えない。
ここで、赤外線光束の照射条件としては、好ましくは赤外線強度10〜10W/m、照射時間0.0001〜10秒、さらに好ましくは赤外線強度10〜10W/m、照射時間0.001〜0.1秒である。
なお、上記流動延伸は、複数回繰り返すことができる。これにより、島繊維の分離性を確保しつつ、より細い繊維を得ることができる。
また、本発明は、いわゆる直紡−直延、すなわち、紡糸口金より溶融紡糸した未延伸糸条を冷却して固化し、一旦巻き取ることなく第1ローラーに供給すると、生産効率よく、本発明の海島型複合繊維が得られるので好ましい。
さらに、本発明では、以上の流動延伸後に、延伸糸条をさらに再延伸するか、熱処理を施すこともできる。
この場合の再延伸条件は、延伸倍率1.5〜7倍、延伸温度60〜220℃である。
また、熱処理条件は、熱処理温度160〜240℃、伸長率−10〜+20%である。
以上のようにして得られる本発明の海島型複合繊維は、島成分の直径が、好ましくは5〜500nm(10−6〜3×10−3dtex)、さらに好ましくは100〜300nm(10−4〜10−3dtex)である。5nm未満では、独立した繊維形状を保持するのが難しく、一方、500nmを超えると、海成分を溶解除去後に得られる微細繊維の利用価値が乏しくなる。
上記島成分の直径は、紡糸時の島数、海島分率、吐出速度および直径、巻き取り速度、延伸・熱処理時の総延伸倍率、抽出時の処理時間、処理温度により調整することができる。
本発明の海島型複合繊維の島成分の島径(島成分の繊維断面における長径と短径の平均値)のばらつきを表すCV%値は0〜20%が好ましい。より好ましくは0〜15%である。このCV%値が低いことは、ばらつきが少ないことを意味するものである。このCV%値を20%以下にするには、適切な海・島成分ポリマーの選択が重要となる。たとえば、海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶融粘度比(海/島)が1.1未満の場合には、島成分の90%以上が互いに接合して個々には存在せず、接合した島の周囲を海成分が取り囲むような断面を形成するので、CV%は高くなる。従って、海成分ポリマーと島成分ポリマーの溶融粘度比(海/島)は1.1〜2.0の範囲内が好ましく、この範囲内であれば、CV%値は20%以下となる。
また、本発明の海島型複合繊維は、強度×〔1+伸度(%)/100〕で表される破断時に作用する真応力が、好ましくは0.5N/texを超え、1.2N/tex以下、さらに好ましくは0.55550〜1.15N/texである。0.5N/tex以下では、通常の布帛用途に使用する際に強度もしくは伸度が不足するために加工性が制限され、また使用可能な用途も制限されるため、好ましくない。一方、1.2N/texを超えると、溶融紡糸時の安定性が低下するため、均一な繊維を作成することが困難になり、好ましくない。
本発明の流動延伸を用いることによって、必要充分な強伸度を保ったまま、微細な島成分を含む海島型複合繊維を作成することが可能になった。
本発明の海島型複合繊維における真応力は、紡糸時の島数、海島分率、吐出速度および直径、巻き取り速度、総流動延伸倍率、延伸応力,レーザー照射条件によって制御できる延伸時の糸条温度プロフィール、延伸熱処理時の総延伸倍率、抽出時の処理時間、処理温度により、調整することができる。
かくして得られる海島型複合繊維は、海成分の抽出溶剤を用いて、常法に従い、海成分を該抽出溶剤で溶解除去することにより、直径5〜1,000nm(10−6〜10dtex)、好ましくは20〜500nm(4×10−4〜2×10−3dtex)の微細繊維が得られる。
本発明の海島型複合繊維から海成分を溶解除去して得られる、直径5〜1,000nmのファイバーの繊維径のばらつきを表すCV%値は0〜35%が好ましい。より好ましくは0〜25%、さらに好ましくは0〜15%である。このCV%値が低いことはばらつきが少ないことを意味するものである。ばらつきが少ないファイバーを用いることにより、ナノレベルで繊維径のコントロールが可能となるので、用途に合わせた商品設計が可能となる。例えば、フィルター用途では、繊維径により吸着できる物質をマップ化できれば、用途に合わせて繊維径の設計をすればよく、非常に効率的に商品設計を行うことができる。
上記CV%値を35%以下にするには、適切な海島ポリマーの選択が重要となる。特に、抽出溶剤に対する海成分の島成分に対する溶解速度の比率が30倍以上であることが好ましい。30倍未満の場合には、抽出溶剤に対する溶解速度差が小さいために、繊維断面中央の海成分を溶解している間に、繊維表面の島成分の減量も進行してしまうことになり、CV%は高くなる。
本発明の微細繊維を得るには、例えば、島成分にポリエチレンテレフタレート、海成分にナイロン6を具体例にとると、抽出溶剤としては、ナイロン6の溶剤であるフェノール、m−クレゾールなどのフェノール類、濃ギ酸などが挙げられる。
また、島成分にポリエチレンテレフタレート、海成分にポリスチレンを用いた具体例では、抽出溶剤としては、トルエン、メチルエチルエーテルなどが挙げられる。また、海成分の易アルカリ減量ポリエステルを用いた場合は、1〜10%アルカリ水溶液を用いる。
そのほか、抽出条件としては、抽出温度が室温〜沸点もしくは引火点以下(どちらか低い方)、抽出時間は温度により任意である。
例えば、濃ギ酸を用いた場合の処理温度としては、好ましくは20〜80℃であり、処理時間としては、好ましくは20℃で2〜100時間、60℃で30〜40時間である。
以下に、本発明の海島型複合繊維の製造方法について、図面を用いてさらに具体的に説明する。
図4は、本発明の微細繊維用の海島型複合繊維を製造するために好適な延伸工程の一形態を示す。第1引き取りローラー2から一定の供給速度vで未延伸糸条1を供給し、レーザーを含む赤外線照射手段4を用いて赤外線光束を糸条1に照射することにより糸条1を加熱して軟化させ、供給速度vよりも早い速度Vで第2引き取りローラー3に糸条1を巻き取ることで延伸する。
図4の場合、未延伸糸条11は、第1引き取りローラー12以前であらかじめ糸条の融着処理がされていてもよく、あるいは、赤外線照射手段14において、融着処理と流動延伸が同時に行われてもよい。
また、図5は、本発明の延伸工程における赤外線照射手段の一例を示す。同図では、赤外線線源16から照射された赤外線をレンズ17により焦点18に集光しているが、集光手段には反射鏡または光ファイバーなどの導波路を用いてもよい。糸条自体の直径および糸条のぶれ範囲19を考慮し、糸条11の位置は焦点18から離してある。また、糸条11の位置は焦点18の後方だが、前方であってもかまわない。遮光板20は糸条に吸収されなかった赤外線を吸収するために設けてあり、空冷もしくは水冷されている。遮光板の材料としては、煉瓦などの耐熱素材、もしくは表面を粗面化し、耐熱塗料を塗布した金属などが適している。
図5の場合も、未延伸糸条11は、第1引き取りローラー12以前であらかじめ糸条の融着処理がされていてもよく、あるいは、赤外線照射手段により、融着処理と流動延伸が同時に行われてもよい。
本発明の流動延伸工程は、紡糸口金より溶融紡糸した糸条を一旦冷却して固化する工程に引き続いていてもよい。図6は、本発明の海島型複合繊維の製造工程の他の形態を示す。
海島型複合繊維の原材料である溶融高分子を溶融紡糸ノズル15から押出し、一旦、ガラス転移温度以下まで冷却して固化させた糸条11の引き取り速度を、回転するゴデッドローラー(第1引き取りローラー)12で決定し、速度vで引き取り送り出し、赤外線照射手段14で糸条11を軟化させ、供給速度vよりも速い速度Vで第2引き取りローラー13に糸条1を巻き取り延伸することもできる。図6では、赤外線照射手段14において、糸条11の融着と流動延伸が同時に行われる。
本発明において、糸条の好ましくは走行方向0.1〜100mmの区間にわたり赤外線光束を照射して糸条11を急速に加熱し、糸条温度を好ましくは20〜300K上昇させて軟化させ、延伸する。繊維温度の上昇が20K未満では延伸点位置が安定しにくく、一方300Kを超えると熱分解が進行するため好ましくない。また、本発明においては、延伸時の糸条温度は島成分高分子の融点を超えないことが好適である。赤外線照射により瞬間的かつ均一に加熱された糸条を高倍率に延伸することにより、海島型複合繊維を高速に生産することができる。
本発明においては、流動延伸後の糸条を一旦巻き取って、あるいは引続きネック延伸工程に用い、また熱処理を施して、配向結晶化の高い繊維構造を有する海島型複合繊維を作成することもできる。延伸温度は、糸温度が海および島成分ポリマーのいずれか高い方のガラス転移温度になるように設定することが好ましく、予熱には、ローラーおよびスリットヒーターを用いることができる。また、延伸速度は、数十mから数百mの範囲を任意に設定できる。さらに、熱処理温度は、100℃〜200℃の範囲で、ローラー、スリットヒーターを用いることができる。摩擦の影響により、延伸時に破断が発生する際には、非接触式のスリットヒーターを用いるほうが好ましい。
以下に本発明の実施例を示す。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、各評価項目は下記の方法で測定した。
<島径>
透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30,000倍で海島型複合繊維もしくは、海成分溶解除去後の繊維の断面写真を観察し、繊維断面における島成分の長径と短径の平均値を算出した。
<繊度のばらつき CV%>
海成分溶解除去前後の繊維を30,000倍でTEM観察を行い、島部について、標準偏差、平均径を算出し、下記式を用いてCV%を算出した。島径は繊維断面における長径と短径の平均値とし、σは繊維径分布の標準偏差、rは平均繊維径を示す。
CV%=(標準偏差 σ/平均島径 r)×100
<海島型複合繊維の強伸度>
室温で初期試料長=40mm、初期ひずみ速度100%/分として荷重−伸長曲線を求た。伸度は破断時の伸長値から求めた。
<海成分ポリマーの融点>
リガクTAS−200を用いて窒素下で示差走査熱量測定を行い、発熱・吸熱チャートより融点を観察した。
延伸実験に用いた未延伸繊維の紡糸にはいずれも図1の装置を使用した。島数が繊維横断面あたり900で、固有粘度IV(オルソクロロフェノール溶媒中、35℃で測定)=0.64で酸化チタンが0.3重量%入っているポリエチレンテレフタレートと、固有粘度IV(オルソクロロフェノール溶媒中、35℃で測定)=1.7のナイロン6ポリマーをそれぞれ島・海に用いて、島:海重量比率が50:50、紡糸速度1,000m/minで未延伸糸条を得た。海成分ポリマーとして用いたナイロン6ポリマーの融点は223℃であった。この繊維を実施例1および2、比較例1、比較例2に用いた。
また、繊維横断面あたり島数400で、固有粘度IV(オルソクロロフェノール溶媒中、35℃で測定)=0.60のポリエチレンテレフタレートと5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%、分子量6,000のポリエチレングルコールを3%共重合したポリエチレンテレフタレートをそれぞれ島・海成分に用いて、島:海重量比率が40:60で紡糸速度1,000m/minで未延伸糸条を得た。海成分ポリマーの融点は検出されなかった。この繊維を実施例3、比較例3に用いた。
また、繊維横断面あたり島数1,080で、固有粘度IV(オルソクロロフェノール溶媒中、35℃で測定)=0.64で酸化チタンが0.3重量%入っているポリエチレンテレフタレートと5−ナトリウムスルホイソフタル酸を4mol%、分子量6,000のポリエチレングルコールを3%共重合したポリエチレンテレフタレートをそれぞれ島・海成分に用いて、島:海重量比率が40:60で紡糸速度1,000n/minで未延伸糸条を得た。海成分ポリマーとして用いたポリマーの融点は240℃であった。この未延伸糸条を比較例4、5に用いた。
レーザー延伸はいずれも,図4の工程にて行い,第1ローラーから表に示した速度で未延伸糸条を送り出し、赤外線を照射して加熱、延伸後、第2ローラーに巻き取った。いずれも、赤外線照射は、赤外線レーザー(鬼塚硝子社製、PIN30S)を用い、走行中の糸条に直接照射した。糸条に照射される位置におけるこのレーザーのレーザービーム直径は5mmである。ここで、レーザービーム直径とは、強度が光軸の1/eになる位置の直径を意味する。レーザービームはいずれも糸条の走行方向に対して垂直な方向から照射した。照射後のレーザービームをミラーで反射することにより、糸条の走行方向と垂直な面内でほぼ均等に分布した9方向から合計9回多方向照射した。この照射方法をとることにより、前者の照射方法で延伸した場合と比べて、高倍率まで安定した流動延伸が可能になった。走行する糸条の糸温度を赤外温度計にて測定することより、後者の照射方式では前者の照射方式と比較して、単位時間当たり(1方向に比べて約3倍のエネルギー密度)でレーザーを照射できることを確認してある。また、照射後のレーザービームは、水冷した金属板に当てて吸収した。
また、実施例1、比較例2では、溶融紡糸後、流動延伸に先立って複数の糸条を融着させなかった。レーザー照射部における複数の糸条の密着状態は、実施例1ではかなり密着した状態であった。一方、比較例2では複数の糸条が密着していなかった。
実施例1
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸6本を、上記の方法で特にレーザー照射部において複数の糸条を密着させた状態で172倍まで流動延伸させながら融着させ、その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより,表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は42nmであった。また、島径のばらつきを示すCV%は4%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で20℃のギ酸に24時間浸漬することによりナイロン成分を溶解除去した結果、直径42nm、CV%は5%の微細繊維が得られた。
実施例2
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸6本を、温度400℃の非接触式ヒーターに通し、かつ延伸倍率1.17倍で延伸しながら巻き取ることにより、熱で融着させた。機械の一例を図3に示す。得られた融着フィラメント糸は、単糸繊度15dtex(38μm)であった。この融着糸を上記の方法で172倍まで流動延伸し、その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより、表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は39nmであった。また、島径のばらつきを示すCV%は3%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で20℃のギ酸に24時間浸漬することによりナイロン成分を溶解除去した結果、直径40nm、CV%は3%の微細繊維が得られた。
比較例1
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸6本を、温度500℃の接触式ヒーターに通したところ、糸条は溶断し、巻き取りできなかった。
比較例2
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸6本を、上記の方法で特にレーザー照射部において複数の糸条を密着させない状態で流動延伸させたところ、複数の糸条は融着せず、62倍までしか流動延伸できなかった。その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより、表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は73nmであった。また、島径のばらつきを示すCV%は5%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で20℃のギ酸に24時間浸漬することによりナイロン成分を溶解除去した結果、直径69nm、CV%は4%の微細繊維が得られた。
実施例3
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸を、温度300℃の接触式ヒーターに通し、巻き取った。この糸条を上記の方法で100倍まで流動延伸し、その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより,表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は77nmであった。また、島径のばらつきを示すCV%は3%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で、4%NaOH水溶液で95℃にて60%減量した。海成分を溶解除去した結果、平均直径75nmの微細繊維が得られ、該微細繊維のCV%は34%であった。
比較例3
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸6本を、温度450℃の非接触式ヒーターに通したところ、糸条は溶断し、巻き取りできなかった。
比較例4
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸を、温度200℃の非接触式ヒーターに通し巻き取ったところ、融着糸は作成できなかった。この糸条を上記の方法で100倍まで流動延伸し、その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより、表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は65nmであった。また、島径のばらつきを示すCV%は12%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で、4%NaOH水溶液で95℃にて60%減量した。海成分を溶解除去した結果、平均直径45nmの微細繊維が得られたが、CV%は55%と高かった。
比較例5
上記海島型複合紡糸によって得られた未延伸糸条の短糸を、温度170℃の接触式ヒーターに通し、巻き取ったところ、融着糸は作成できなかった。この糸条を上記の方法で125倍まで流動延伸し、その後70℃の水中でさらに3倍に延伸、さらに定長160℃で1時間熱処理することにより,表1に記載の繊維が得られた。得られた繊維中に含まれるPET島部の直径は50nmである。また、島径のばらつきを示すCV%は10%であった。さらに、この海島型複合繊維を定長で、4%NaOH水溶液で95℃にて60%減量した。海成分を溶解除去した結果、平均直径40nmの微細繊維が得られたが、CV%は50%と高かった。






Figure 2007009339
一般に、合成繊維を延伸して分子を配向させると、繊維強度は増加するが伸度が減少する。この際、破断時の真応力、すなわち強度×(1+伸度/100%)で与えられる量は分子配向・結晶化によってもあまり変化しないため、超高倍率延伸した繊維をさらに延伸・熱処理して得られる繊維の強伸度を支配するパラメータとして好適である。実施例に示された繊維では、この値がいずれも500N/texを超える。この値は汎用繊維として充分使用に耐えるものであり、微細でありながら充分な強伸度を持ち、さらに、CV%が低く均一性の高い繊維が作成できた。
従って、超海島溶融紡糸により繊維化し、溶融紡糸後、流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に、複数の糸条を融着させ、強力な赤外線光束を照射して流動延伸(超高倍率延伸)することにより、強伸度の低下を極力抑えつつ、繊維径の均一性が高い超極細繊維が作成できることが示された。
本発明により得られる海島型複合繊維から得られる微細繊維は、ナノオーダーで繊維径の均一性が高いため、フィルター・防塵用マスクなど幅広い用途に有用である。例えば、フィルター用途では、繊維径に対して吸着できる物質をマップ化できれば、用途に合わせて繊維径の設計をすればよく、非常に効率的に商品設計を行うことができる。本発明の微細繊維を少なくとも一部に有する繊維製品は糸、組み紐状糸、短繊維からなる紡績状糸、織物、編物、フェルト、不織布、人工皮革などの中間製品とすることができる。これらをジャケット、スカート、パンツ、下着などの衣料、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車両内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途や研磨布、フィルター、有害物質除去製品、電池用セパレーターなどの環境・産業資材用途や、縫合糸、スキャフォールド、人工血管、血液フィルターなどの医療用途に使うことができる。
本発明の海島型複合繊維を得るための一例を示す紡糸口金構成断面図である。 本発明の海島型複合繊維を得るための他の一例を示す紡糸口金構成断面図である。 本発明の溶融紡糸後、流動延伸に先立って融着させる装置の概略図である。 本発明の海島型複合繊維の製造工程の一形態を示す概略図である。 本発明の海島型複合繊維の製造工程の異なる形態を示す概略図である。 本発明の海島型複合繊維の製造工程のさらに異なる形態を示す概略図である。
符号の説明
1 :分配前島成分ポリマー溜め部分
2 :島成分分配用パイプ
2’ :島成分分配用導入孔
3 :海成分導入孔
4 :分配前海成分ポリマー溜め部分
5 :個別海/島=鞘/芯構造形成部
6 :海島全体合流絞り部
11:糸条
12:第1引取りローラー
13:第2引取りローラー
14:赤外線照射手段
15:溶融紡糸ノズル
16:赤外線源
17:レンズ
18:焦点
19:糸条のぶれ範囲
20:遮光板

Claims (11)

  1. 溶融紡糸された島数が極めて多い海島型複合繊維未延伸糸条を第1引き取りローラーとこれより周速の早い第2引き取りローラーに供給し、第1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間にある該糸条に赤外線光束を照射して加熱し、流動延伸させるか、あるいは、該流動延伸後の延伸糸条にさらに延伸もしくは熱処理を施す海島型複合繊維の製造方法において、溶融紡糸後、流動延伸に先立って、あるいは、流動延伸時に、複数の糸条を融着させ、流動延伸を行うことを特徴とする海島型複合繊維の製造方法。
  2. 流動延伸時の繊維加熱方法として、炭酸ガスレーザー光の照射を用いる請求項1に記載の海島型複合繊維の製造方法。
  3. 流動延伸を複数回繰り返す請求項1または2に記載の海島型複合繊維の製造方法。
  4. 溶融紡糸後、流動延伸に先立って、下記温度T1〜T2の非接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、流動延伸を行う請求項1〜3いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法。
    1.海成分ポリマーに融点がある場合
    T1(℃)=海成分ポリマー融点+50
    T2(℃)=海成分ポリマー融点+200
    2.海成分ポリマーに融点がない場合
    T1(℃)=260
    T2(℃)=410
  5. 溶融紡糸後、流動延伸に先立って、下記温度T3〜T4の接触式ヒーターを用いて複数の糸条を融着させ、流動延伸を行う請求項1〜3いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法。
    1.海成分ポリマーに融点がある場合
    T3(℃)=海成分ポリマー融点
    T4(℃)=海成分ポリマー融点+150
    2.海成分ポリマーに融点がない場合
    T3(℃)=210
    T4(℃)=360
  6. 得られる海島型複合繊維の島成分が直径5〜500nmである請求項1〜5いずれかに記載の海島型複合の製造方法。
  7. 得られる海島型複合繊維の、島径のばらつきを示すCV%が0〜20%である請求項1〜6いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法。
  8. 得られる海島型複合繊維の、強度×〔1+伸度(%)/100〕で表される破断時に作用する真応力が0.5N/texを超え、1.2N/tex以下である請求項1〜7いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法。
  9. 海成分がナイロンでありギ酸に可溶である請求項1〜8いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜9いずれかに記載の海島型複合繊維の製造方法によって得られた海島型複合繊維。
  11. 請求項10に記載の海島型複合繊維から海成分を溶解除去して得られる直径5〜1,000nmのファイバー群であって、そのばらつきを示すCV%が0〜35%である微細繊維。

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