本発明は、(i)錫含有化合物を水性溶剤に溶解して、錫含有溶液を調製し(工程(i));(ii)前記錫含有溶液を、沈殿剤溶液中に滴下して、沈殿を得(工程(ii));および(iii)前記沈殿を前記沈殿剤溶液と同等以下のpHの洗浄液で洗浄した後、分離する(工程(iii))、ことを有する、導電性酸化物担体の製造方法を提供する。
従来、アノード、カソードにおける上記した反応1や2の円滑化および活発化には、電極触媒層における触媒とイオノマーの界面の増大や界面形成の均一化がある。また、上記に加えて、アノード触媒層では、反応ガス(水素)の拡散透過性やプロトンの導電性が、カソード触媒層では、反応ガス(酸素)の拡散透過性と利用効率の向上、生成水の拡散や除去などが不可欠である。さらに、アノードおよびカソードの各電極触媒層において、これらの技術課題を個別に解決するだけでは、性能(活性)や耐久性の向上を十分に図ることができない。
例えば、固体高分子形燃料電池の性能向上には、カソード触媒層の活性化過電圧の低減(酸素還元活性の向上)が有効であるため、反応ガス(酸素)の拡散透過性と利用効率の向上、生成水の拡散や除去などが課題である。水素の拡散透過性に比べ、酸素の拡散透過性は、ガス拡散電極(GDL)や電極触媒層などの多孔構造体の微細孔構造の影響を強く受けると考えられ、従来は多孔体構造の微細孔構造の改善が行われてきた。多孔体構造の微細孔構造の改善は、反応ガス(酸素)の拡散透過性、生成水の拡散や除去に対しては有効である一方、酸素利用効率の飛躍的な改善効果が得られていないのが実情であった。したがって、カソード触媒層では、反応ガス(酸素)の拡散透過性と利用効率の向上が重要な課題と推測される。カソード触媒層内の酸素拡散透過性と酸素利用効率を向上するには、電極触媒層内に含有される電解質(イオノマー)内を拡散・溶解する酸素を高い状態(濃度)に保持することが必要である。
また、イオノマー内の酸素拡散性・溶解性は、電解質の分子骨格中(側鎖)のスルホン酸基量を増やし(EW値を下げる)酸素溶解性を向上することが最も有効であるが、イオノマーの改善にも限界がある。このため、カソード電極触媒層内のイオノマーを高含水状態に維持・調整し、プロトン生成反応を促進し、生成したプロトンの導電性を高める新規な解決手段が求められている。
さらに、固体高分子形燃料電池の性能および耐久性の向上には、カソード触媒層の抵抗過電圧や拡散過電圧の低減が有効であるため、カーボン担体の腐食耐性と導電率の向上、水の電気化学的な分解に伴う酸素発生の抑制などが課題である。従来は、カーボン担体の高結晶化による改善が行われてきたが、カーボン担体の腐食(酸化反応)そのものを抑制することはできないため、飛躍的な改善効果が得られていないのが実情であった。また、カーボン担体の高結晶化は、Pt粒子の分散性を低下させ性能低下の一因となっているのも実情であった。
一方、導電性酸化物担体は、カソード触媒層の抵抗過電圧が大きい(カーボン担体に比べ導電性が低い)ため、上記反応2の円滑な進行が妨げられ、性能低下の一因となり、十分な改善効果が得られていないのが実情であった。
これに対して、本発明は、逆沈殿法(逆均一沈殿法)により、錫含有溶液を沈殿剤溶液中に滴下して沈殿を形成した後、当該沈殿を沈殿剤溶液と同等以下のpHの洗浄液で洗浄・分離することを特徴とする。この方法により、2価の錫化合物(Sn(II);SnOやSn(OH)2)と4価の錫化合物(Sn(IV);SnO2やSn(OH)4)との比率(Sn(II)/Sn(IV))を制御したSnO2−X(0<x<1)を製造することが可能である。このようなSnO2−X(0<x<1)は、カーボン(C)を含まず、また腐食耐性に優れる。このため、燃料電池の電極触媒の担体として使用されても、起動停止時のカソード電極電位上昇(貴電位環境)に起因するカーボン酸化反応(担体腐食)を抑制・防止することができる。したがって、カーボン腐食に起因する拡散過電圧の増大を大幅に低減できる(カーボン腐食に起因する電極触媒層内の細孔閉塞が抑制できるため、ガス拡散性の悪化を大幅に抑制できる)。このため、起動停止時にカソード電極電位の上昇抑制のために配置していた制御デバイスやポンプ類などを廃止でき、燃料電池制御システムのコストを大幅に低減することができる。
また、一般に、従来の導電性酸化物担体は、カーボン担体に比べ導電性が低い(比抵抗が大きい)。したがって、従来の導電性酸化物担体を用いた電極触媒層では抵抗過電圧が著しく増大する。
これに対して、本発明に係る導電性酸化物担体は、導電性に優れる(比抵抗が小さい)ため、電極触媒層に用いても抵抗過電圧の増大を抑制できる。したがって、従来の導電性酸化物担体に比べ、抵抗過電圧に起因する性能低下を大幅に抑制できる。その上、本発明の方法では、SnOやSnO2、特にSnOの結晶子径の成長を抑制することができるため、本発明に係る導電性酸化物担体は、BET比表面積を増大することができる。ゆえに、本発明に係る導電性酸化物担体は、白金等の貴金属を高分散させて担持することが可能である。
したがって、本発明の方法によって製造される導電性酸化物担体(SnO2−X;0<x<1)は、貴電位環境下でも腐食を誘発しない、導電性に優れかつ大きなBET比表面積を有する導電性酸化物担体である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(A)工程(i)
本工程では、錫含有化合物を水性溶剤に溶解して、錫含有溶液を調製する。
ここで、錫含有化合物としては、錫(Sn)を含むものであれば特に制限されず、錫の、塩化物等のハロゲン化物(例えば、塩化第一錫、塩化第二錫)、ナトリウム塩(例えば、スズ酸ナトリウム)、錫酸塩(例えば、酢酸スズ、シュウ酸スズ)、硫化物(例えば、硫酸スズ)など、いずれの形態でも使用できる。また、錫含有化合物は、そのままの形態で使用されてもよいが、水和物などの形態で使用されてもよい。これらのうち、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3)、ならびにこれらの水和物(例えば、SnCl4・4H2O、SnCl2・2H2O、Na2SnO3・3H2Oなど)が好ましい。より好ましくは、塩化第一錫(SnCl2)、およびこれらの水和物(SnCl2・2H2Oなど)が使用される。なお、上記錫含有化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、本明細書では、錫含有化合物は、特記しない限り、水和物などの形態をも包含する。
また、水性溶剤としては、錫含有化合物を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、水、塩酸(HCl)、硫酸、リン酸、メタノール、エタノール、酢酸、酒石酸、シュウ酸、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。これらのうち、水、塩酸が好ましい。この際、上記水性溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。特に錫含有化合物として塩化第二錫(水和物の形態を含む;以下、特記しない限り同様)を使用する場合には、水、塩酸、特に水を使用することが好ましい。また、特に錫含有化合物として塩化第一錫(水和物の形態を含む;以下、特記しない限り同様)を使用する場合には、水、塩酸、特に塩酸を使用することが好ましい。塩化第一錫は、水への溶解度が低く(例えば、SnCl2・2H2Oの水への溶解度:27.0g/100ml(15℃))、また、その水溶液は、下記式に示されるように、徐々に加水分解を起こし白色沈殿を生じる。しかし、塩酸存在下であると、SnCl2水溶液の安定性を保つことができ、望ましい。
水性溶剤の使用量は、錫含有化合物を溶解でき、かつ錫含有化合物の安定性を維持できる量であれば特に制限されない。特に、錫含有化合物が塩化第一錫を含みかつ水性溶剤が塩酸である場合には、塩化水素/錫(HCl/Sn)のモル比が0.2〜0.5となるような比で、錫含有化合物と塩酸を混合することが好ましい。このような範囲であれば、錫含有溶液の安定性を維持することができる。また、下記工程(ii)で錫含有溶液を沈殿剤溶液に滴下する際に、錫含有溶液の液滴部分のpHの局所的な変化を介して、4価の錫化合物及び2価の錫化合物の組成や結晶子径などを適切に調節できる。
また、錫含有化合物を水性溶剤に溶解する条件は、錫含有化合物を溶解できる条件であれば特に制限されない。例えば、所定量の錫含有化合物を水性溶剤に混合した後、適宜攪拌することができる。また、混合・攪拌条件もまた、特に制限されず、錫含有化合物と、水性溶剤とを、10〜60℃の温度で、10〜120分間、混合・攪拌して、錫含有溶液を調製することが好ましい。
なお、本工程(i)において、錫含有化合物に加えて、アンチモン含有化合物をさらに使用してもよい。この場合には、Sb−SnO2−X(0<x<1)またはSb−SnO2が導電性酸化物担体として製造される。ここで、上記式:Sb−SnO2−X(0<x<1)またはSb−SnO2で表わされる導電性酸化物担体において、アンチモン(Sb)は、五酸化アンチモン(Sb2O5)の形態、または五酸化アンチモン(Sb2O5)と三酸化アンチモン(Sb2O3)との混合物の形態で存在する。一方、錫(Sn)は、酸化錫(II)(SnO)と酸化錫(IV)(SnO2)との混合物である、SnO2−X(0<x<1)の形態で存在する、または酸化錫(IV)(SnO2)の形態で存在する。なお、酸化錫(IV)は導電性が低いものの、アンチモンの存在により導電性が付与されるため、得られる導電性酸化物担体は、優れた導電性を発揮しうる。
当該形態では、錫含有化合物に加えて、アンチモン含有化合物を、水性溶剤に溶解して、錫−アンチモン含有溶液を調製する。ここで、錫−アンチモン含有溶液の調製は、特に制限されない。例えば、錫含有化合物及びアンチモン含有化合物を、水性溶剤に溶解することによって、錫−アンチモン含有溶液を調製できる。または、錫含有化合物を水性溶剤に溶解して、錫含有溶液を調製し、別途、アンチモン含有化合物を水性溶剤に溶解して、アンチモン含有溶液を調製し、これらを合わせることによっても、錫−アンチモン含有溶液を調製できる。この場合には、下記工程(ii)において、前記錫−アンチモン含有溶液を、沈殿剤溶液中に滴下することにより、沈殿が得られる。
または、錫含有化合物を水性溶剤に溶解して、錫含有溶液を調製し、別途、アンチモン含有化合物を水性溶剤に溶解して、アンチモン含有溶液を調製することができる。この場合には、下記工程(ii)において、前記錫含有溶液およびアンチモン含有溶液を、それぞれ、沈殿剤溶液中に滴下することにより、沈殿を得ることができる。
または、錫含有化合物を水性溶剤に溶解して、錫含有溶液を調製し、別途、アンチモン含有化合物を水性溶剤に溶解して、アンチモン含有溶液を調製する。次に、この錫含有溶液に、必要であれば、錫含有溶液を適宜攪拌しながら、アンチモン含有溶液を滴下して、錫−アンチモン含有溶液を調製できる。この場合には、下記工程(ii)において、前記錫−アンチモン含有溶液を、沈殿剤溶液中に滴下することにより、沈殿が得られる。なお、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)等の錫含有化合物を使用する場合には、錫含有化合物自体が沈殿剤溶液としても作用する。このため、錫含有溶液にアンチモン含有溶液を滴下することにより、沈殿の一部が生じる。また、この場合には、下記工程(ii)における錫−アンチモン含有溶液及び沈殿剤溶液の添加順序を逆にしても、即ち、錫−アンチモン含有溶液に沈殿剤溶液を滴下しても、沈殿を得ることができる。
上記操作において、錫−アンチモン含有溶液やアンチモン含有溶液は、容易に加水分解を起こすため、空気の水分と接触しないようにすることが好ましい。錫−アンチモン含有溶液と空気とが接触するのを防止するための方法は、特に制限されないが、この溶液にケロシン等の親油性の溶液を加えて、錫−アンチモン含有溶液の表面に油層(ケロシン層)を形成する方法などが好ましく使用される。
このように錫化合物に加えてアンチモン含有化合物を使用することによって、Sb−SnO2−X(0<x<1)またはSb−SnO2が導電性酸化物担体として製造される。アンチモン(Sb)は導電性を付与することができるため、導電性酸化物担体は導電性をさらに向上することができる。
上記実施の形態において、アンチモン含有化合物は、アンチモン(Sb)を含むものであれば特に制限されず、アンチモンの、塩化物、フッ化物等のハロゲン化物など、いずれの形態でも使用できる。また、アンチモン含有化合物は、そのままの形態で使用されてもよいが、水和物などの形態で使用されてもよい。これらのうち、三塩化アンチモン(SbCl3)、五塩化アンチモン(SbCl5)、五フッ化アンチモン(SbF5)などが挙げられる。これらのうち、五塩化アンチモン、三塩化アンチモンが好ましく使用され、五塩化アンチモンがより好ましい。三酸化アンチモンに比して五酸化アンチモンの方が導電性に優れる。このため、アンチモン含有化合物として五塩化アンチモンを使用することにより、得られる導電性酸化物担体中の五酸化アンチモン量を多くすることができる。なお、アンチモン含有化合物として五塩化アンチモンのみを使用した場合であっても、得られる導電性酸化物担体は、アンチモンを、五酸化アンチモンの形態に加えて、五酸化アンチモンと三酸化アンチモンとの混合物の形態で含みうる。同様にして、アンチモン含有化合物として五塩化アンチモンのみを使用した場合にも、得られる導電性酸化物担体は、アンチモンを、五酸化アンチモンと三酸化アンチモンとの混合物の形態で含む。
上記アンチモン含有化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、本明細書では、アンチモン含有化合物は、特記しない限り、水和物などの形態をも包含する。
アンチモン含有化合物をさらに使用する場合の、アンチモン含有化合物の使用量は、上記したような効果を達成できる量であれば特に制限されない。具体的には、アンチモン含有化合物の使用量は、錫に対するアンチモンのモル比(Sb/Sn)が、0.01〜0.3、より好ましくは0.05〜0.2となるような量であることが好ましい。このような範囲であれば、アンチモン含有化合物においてアンチモン(Sb)がSb5+の酸化数になり易く、ゆえに得られるアンチモン由来の導電性酸化物担体中に占める五酸化アンチモンの量を増加でき、得られる導電性酸化物担体の導電性を向上できる。
また、アンチモン含有化合物を溶解するために使用される水性溶剤としては、アンチモン含有化合物を溶解できるものであれば特に制限されず、具体例としては上記錫化合物について記載したのと同様である。好ましくは、水、塩酸がより好ましい。この際、上記水性溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、水性溶剤の使用量は、アンチモン含有化合物を溶解できる量であれば特に制限されず、アンチモン含有化合物を良好に溶解でき、また、アンチモン含有溶液の安定性を維持することもできる量であることが好ましい。
(b)工程(ii)
本工程では、本工程(i)で調製された錫含有溶液を、沈殿剤溶液中に滴下して、沈殿を得る。上記工程(i)で調製された錫含有溶液は、上記好ましい形態によるように塩酸などを水性溶剤として用いる場合には、pHが1以下と、低い。本工程では、錫含有溶液を、pHのより高い沈殿剤溶液中に滴下することにより、沈殿を形成する。
ここで、沈殿剤溶液は、錫含有溶液から沈殿として4価の錫化合物(Sn(IV);例えば、SnO2やSn(OH)4)や2価の錫化合物(Sn(II);例えば、SnOやSn(OH)2)を形成できるものであれば、特に制限されない。上記沈殿の形成は、特に制限されないが、一般的にはpHを調整することにより行なわれる。このため、沈殿剤はpH調整沈殿剤としても機能しうる。このような沈殿剤の具体例としては、アンモニア(NH3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)および亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。これらのうち、アンモニア(NH3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、アンモニア(NH3)及び炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)がより好ましい。上記沈殿剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、当該沈殿剤を溶解する溶媒としては、上記沈殿剤を溶解できるものであれば特に制限されない。水が好ましく使用される。
沈殿剤の溶媒中の濃度は、特に制限されず、上記した沈殿の形成のしやすさや操作のしやすさなどを考慮して適宜選択できる。好ましくは、沈殿剤溶液のpHが、7.5〜12となるように、沈殿剤を溶媒に溶解することが好ましい。このような範囲であれば、錫含有溶液から効率よく沈殿が形成できる。
また、本工程(ii)において、錫含有溶液中の錫含有化合物と、沈殿剤溶液中の沈殿剤との、混合比率は特に制限されない。好ましくは、錫含有溶液から沈殿として4価の錫化合物(Sn(IV);例えば、SnO2やSn(OH)4)や2価の錫化合物(Sn(II);例えば、SnOやSn(OH)2)を形成できる比率である。具体的には、錫含有溶液は、沈殿剤/錫のモル比が2.5〜10の量、より好ましくは2.5〜5の量、沈殿剤溶液中に滴下される。
本工程(ii)では、沈殿剤/錫のモル比が2.5〜10、5〜10、特に5付近である場合、あるいは沈殿剤溶液のpHが9〜12、11〜12、特に11付近である場合には、4価の錫化合物(Sn(IV);例えば、SnO2やSn(OH)4)が主に沈殿として形成される。この場合には、下記工程(iii)で沈殿剤溶液と同等以下のpHの洗浄液で洗浄することにより、上記4価の錫化合物の一部が2価の錫化合物となる。また、沈殿剤/錫のモル比が1.5〜5、3〜5、特に3付近である場合、あるいは沈殿剤溶液のpHが7.5〜9、8〜9、特に8付近である場合には、4価の錫化合物と2価の錫化合物との混合物が沈殿として形成される。この場合には、下記工程(iii)では、この混合物の形態で洗浄液で洗浄される。なお、沈殿剤/錫のモル比が大きい程、結晶子サイズの小さいSnOとSnO2が生成し易くなり、BET比表面積の増大が図れるが、その後の洗浄処理(工程(iii))によるSnO/SnO2比の増大が図り難くなる可能性がある。一方で、沈殿剤/錫のモル比が小さい程、結晶子サイズの大きいSnOとSnO2が生成し易くなり、BET比表面積の増大が図り難くなるが、その後の洗浄処理(工程(iii))によるSnO/SnO2比の増大が図り易くなる可能性がある。さらに、沈殿剤/錫のモル比はSnO/SnO2比の増大に影響すると推測される。沈殿剤/錫のモル比が大きい程、SnO2が生成し易くなり、その後の洗浄処理(工程(iii))によるSnO/SnO2比の増大が図り難くなる可能性がある。一方で、沈殿剤/錫のモル比が小さい程、SnOが生成し易くなり、その後のpH処理によるSnO/SnO2比の増大が図り易くなる可能性がある。このようなことを考慮すると、沈殿剤/錫のモル比は、2.5〜10、より好ましくは2.5〜5であることが好ましい。このような範囲であれば、SnO/SnO2比(比抵抗)及び結晶子サイズ(BET比表面積)双方のバランスがとれた導電性酸化物担体が製造できる。
本工程(ii)では、錫含有溶液を沈殿剤溶液中に滴下して、沈殿を形成するが、この際の錫含有溶液の滴下速度は、特に制限されない。具体的には、錫含有溶液を、10〜100cm3/時間、より好ましくは25〜50cm3/時間の速度で、沈殿剤溶液中に滴下することが好ましい。このような速度で錫含有溶液を沈殿剤溶液中に滴下することにより、形成した4価の錫化合物及び2価の錫化合物、特に2価の錫化合物の結晶子径(結晶子サイズ)の成長を抑制することができる。より具体的には、当該方法によって、最終産物としての導電性酸化物担体の結晶子径は、およそ、5〜100nm、より好ましくは5〜50nmに調整されうる。このため、得られる導電性酸化物担体のBETを増大することができる。なお、当該工程において、沈殿剤溶液を錫含有溶液中に滴下する場合には、これらの錫化合物の成長が早くなりすぎて、得られる導電性酸化物担体のBETを十分大きくすることができない。
なお、本工程(ii)のメカニズムは不明であるが、下記のように推測される。すなわち、例えば、塩化第一錫(SnCl2)を用いた場合、Sn2+中間体(例えば、Sn6O4(OH)4→4SnO・2Sn(OH)4)を経由してSn4+(SnO2)を生成する。この中間体の生成具合が沈殿剤/錫のモル比や錫含有溶液の滴下速度によって異なり、SnO/SnO2比の増大に影響すると推測される。しかし、本発明は、上記推測によって限定されない。
また、錫含有溶液を沈殿剤溶液中に滴下する際、錫含有溶液の液滴と沈殿剤とが接触する部分では、錫含有溶液の滴下速度によって、局部的に沈殿剤/錫のモル比が変化し、その後のSnO/SnO2比や洗浄処理(工程(iii))によるSnO/SnO2比の増大に影響すると推測される。定性的な点からみると、液滴が大きいと、その後の洗浄処理(工程(iii))によってSnO/SnO2比が増大し易くなると、推測される。しかし、本発明は、上記推測によって限定されない。
錫含有溶液を沈殿剤溶液中に滴下する他の条件は、沈殿を形成できる条件であれば特に制限されない。例えば、錫含有溶液を、10〜60℃、より好ましくは10〜35℃の温度で、上記した滴下速度で、沈殿剤溶液中に滴下して、沈殿を得ることが好ましい。この際、錫含有溶液と沈殿剤溶液とが均一に混合できるように、沈殿剤溶液を攪拌しながら、錫含有溶液をすることが好ましい。また、上記滴下終了後は、混合液を、さらに10〜60℃、より好ましくは10〜35℃の温度で、1〜12時間、より好ましくは1〜6時間、攪拌・混合してもよい。または、上記滴下終了後もしくは上記攪拌・混合後に、混合液を、10〜60℃、より好ましくは10〜35℃の温度で、6〜96時間、より好ましくは12〜24時間、静置(熟成)してもよい。このような操作によって、SnO/SnO2比が増大できる。
上記操作によって形成した沈殿は、混合液から、濾過、吸引濾過、遠心分離など、公知の方法によって分離でき、分離方法は特に制限されない。
なお、上記工程(i)において、錫−アンチモン含有溶液を調製した場合の、本工程(ii)の諸条件は、上記と同様であるため、ここでは、説明を省略する。また、上記工程(i)において、アンチモン含有溶液を調製した場合の、本工程(ii)におけるアンチモン含有溶液の滴下速度やpHなどの諸条件は、上記と同様であるため、ここでは、説明を省略する。しかし、錫含有溶液およびアンチモン含有溶液は、同一の条件であってもあるいは異なる条件であってもよい。この際、得られる導電性酸化物担体のアンチモンの酸化数を調整することを目的として、Sb酸化数調整剤を追加してもよい。このようなSb酸化数調整剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒドラジンが好ましく使用される。ヒドラジンは、還元剤として作用することにより、導電性酸化物担体中の5価のSb(Sb5+)の割合を増加することができる。
(c)工程(iii)
本工程では、本工程(ii)で調製された沈殿を、沈殿剤溶液と同等以下のpHの洗浄液(以下、単に「洗浄液」とも称する)で洗浄した後、分離する。ここで、上述したが、上記工程(ii)において、沈殿剤/錫のモル比が2.5〜10、5〜10、特に5付近である場合、あるいは沈殿剤溶液のpHが9〜12、11〜12、特に11付近である場合には、4価の錫化合物(Sn(IV);例えば、SnO2やSn(OH)4)が主に沈殿として形成される。この場合には、本工程(iii)で沈殿を洗浄液で洗浄することにより、4価の錫化合物の一部が2価の錫化合物となり、SnO2−X(0<x<1)が形成される。このため、洗浄剤溶液のpHは、沈殿剤溶液のpHより低いことが好ましい。このようなpHの洗浄剤溶液を使用することによって、沈殿中の4価の錫化合物の2価の錫化合物への変換を誘導する。その結果、SnO2−X(0<x<1)が導電性酸化物担体として製造しうる。
また、上記工程(ii)において、沈殿剤/錫のモル比が1.5〜5(特に2.5〜5)である場合、あるいは沈殿剤溶液のpHが7.5〜9である場合には、4価の錫化合物と2価の錫化合物との混合物が沈殿として形成される。この場合には、下記工程(iii)では、沈殿はこの混合物の形態のまま洗浄液で洗浄され、SnO2−X(0<x<1)が形成される。また、上述したように、沈殿として4価及び2価の錫化合物の混合物が形成されているので、洗浄剤溶液のpHは沈殿剤溶液のpHと同じであってもよく、このような場合には、工程(ii)で形成された4価及び2価の錫化合物の混合物の形態が維持される傾向にある。また、沈殿剤溶液のpHより低いpHの洗浄剤溶液を使用する場合には、沈殿中の4価の錫化合物の一部が2価の錫化合物に変換する。いずれの場合においても、SnO2−X(0<x<1)が導電性酸化物担体として製造しうる。
本工程(iii)によると、処理条件によって、任意に2価の錫化合物と4価の錫化合物との比率(Sn(II)/Sn(IV))を調整できる。このため、本工程(iii)により、得られる導電性酸化物担体(SnO2−X;0<x<1)の比抵抗低減(導電性向上)が図れる。
ここで、洗浄液は、洗浄剤を適当な水性溶剤に溶解することによって得られる。洗浄剤は、溶液の形態で、沈殿剤溶液よりも低いpHを呈するものであれば特に制限されない。具体的には、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)および亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)などが挙げられる。なお、上記洗浄剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、洗浄液を調製するために使用される水性溶剤は、上記洗浄剤を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、水が好ましく使用される。この際、上記水性溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
洗浄剤の水性溶剤中の濃度は、工程(ii)で使用される沈殿剤溶液中よりもpHが低くなれば特に制限されない。好ましくは、洗浄液のpHが、3.5〜8.5となるような濃度に、洗浄剤を水性溶剤に溶解することが好ましい。ここで、洗浄液の濃度やpHと、2価の錫化合物と4価の錫化合物との比率(Sn(II)/Sn(IV))との間に相関性がある。このような範囲であれば、適切なSn(II)/Sn(IV)比を有するSnO2−X(0<x<1)が沈殿として錫含有溶液から効率よく形成できる。
沈殿の洗浄液による洗浄条件は、適切なSn(II)/Sn(IV)比を有するSnO2−X(0<x<1)が沈殿として得られる条件であれば特に制限されない。例えば、沈殿を洗浄液中に加えて、10〜60℃、より好ましくは20〜40℃の温度で、10分〜4時間、より好ましくは30分〜2時間、混合・攪拌(懸濁)することが好ましい。この際、沈殿と洗浄液との混合比は、特に制限されないが、沈殿100g当たり、好ましくは50〜500cm3、より好ましくは100〜300cm3の洗浄液の割合となるように、沈殿を洗浄液に加える。なお、上記洗浄工程は、1回を単独で行なってもよいが、上記操作を繰り返し行なうことが好ましい。これは、洗浄時間及び洗浄回数と、2価の錫化合物と4価の錫化合物との比率(Sn(II)/Sn(IV))との間に相関性があるからである。具体的には、上記洗浄操作を、1〜20回、より好ましくは1〜10回繰り返す。このような繰り返し操作により、2価の錫化合物と4価の錫化合物との比率(Sn(II)/Sn(IV))を適切に調節でき、また、これらの結晶子径をも適切に調節できる。上記に加えて、上記繰り返し操作によって、最終の混合液中に残存する塩素やナトリウム等の錫含有化合物(場合によっては、アンチモン含有化合物)由来の不純物を十分除去できる。なお、洗浄操作を繰り返し行なう場合の、各洗浄条件は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。また、各洗浄操作間に、静置操作を行なってもよく、このような場合には、洗浄操作後の混合液を、10〜60℃、より好ましくは20〜40℃の温度で、1〜7日間、より好ましくは1〜3日間、静置することが好ましい。
上記洗浄操作後、混合液を、濾過、吸引濾過、遠心分離など、公知の方法によって、沈殿を分離でき、その分離方法は特に制限されない。なお、上述したように、錫含有化合物および使用する場合にはアンチモン含有化合物が塩化物の形態である場合には、最終の混合液中に塩素がなるべく残っていないことが好ましい。これは、塩素が触媒(Ptなど)の被毒物質であるためである。このような塩素の存在の確認方法は、特に制限されず、公知の方法によって行なわれる。例えば、混合液を遠心分離して、上清と沈殿に分離し、この上清に、1%−硝酸銀水溶液を数滴加え、白濁しないことを確認する方法などが好ましく使用される。この際、上清が白濁する場合は、白濁が認められなくなるまで、上記洗浄操作を繰り返すことが好ましい。同様にして、錫含有化合物および使用する場合にはアンチモン含有化合物がスズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)等のナトリウム原子を含む場合においても、最終の混合液中にナトリウムがなるべく残っていないことが好ましい。これは、ナトリウムが触媒(Ptなど)の被毒物質であるためである。このようなナトリウムの存在の確認方法は、特に制限されず、公知の方法によって行なわれる。
本発明では、上記工程(i)〜(iii)によって、比抵抗が低くかつBET比表面積の大きい導電性酸化物担体が得られる。しかし、上記工程に加えて、上記工程(iii)で得られた沈殿を乾燥、焼成してもよい。このような乾燥・焼成工程によって、導電性酸化物の酸化物相の安定化が図れる。この際、乾燥・焼成条件は特に制限されないが、上記工程(iii)で得られた沈殿を40〜150℃で乾燥した後、200〜600℃で焼成することが好ましい。すなわち、本発明の方法は、(iv)前記工程(iii)後、洗浄・分離された沈殿を40〜150℃で乾燥した後、200〜600℃で焼成すること(工程(iv))をさらに有していてもよい。このような焼成条件によると、SnO及びSnO2が適切な比率となるSnO2−X(0<x<1)を安定して製造することが可能である。具体的には、乾燥・焼成後の導電性酸化物担体は、X線回折を行なった際の、SnO(101)/SnO2(110)のピーク強度比が、好ましくは0.05〜0.7、より好ましくは0.1〜0.5である。なお、上記乾燥温度及び焼成温度範囲から外れると、SnO及びSnO2の比率が適切な範囲に調節できない可能性がある。特に、400℃を超える温度で焼成すると、Sn(II)酸化物(SnO)相(101)がSn(IV)酸化物(SnO2)相(110)に変化して、Sn(IV)酸化物(SnO2)相(110)が減少する可能性がある。
上記工程(iv)において、乾燥条件は、工程(iii)で得られた沈殿を40〜150℃の温度で乾燥する条件であればよい。乾燥温度は、好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは4〜48時間、より好ましくは12〜24時間である。また、乾燥工程数も、1回であってもあるいは2回以上繰り返し行なってもよい。後者の場合、各乾燥条件は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
また、焼成条件は、乾燥後の沈殿を200〜700℃の温度で焼成する条件であればよい。好ましい焼成温度は、200〜600℃、200〜400℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは2〜6時間である。また、焼成工程数も、1回であってもあるいは2回以上繰り返し行なってもよい。後者の場合、各焼成条件は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
さらに、上記乾燥操作と焼成操作との間に、沈殿を粉砕する操作を行なってもよい。このような粉砕操作によって、粒子全体が均一な熱履歴となりうる。この際、粉砕は、公知の方法で行なわれ、その方法は特に制限されない。例えば、乳鉢、ボールミル、ロールミル、サンドグラインダーなどを用いて、沈殿を粉砕することができ、その条件も特に制限されない。例えば、沈殿を、上記方法によって、5〜120分間、粉砕することが好ましい。
上記したような本発明の方法によって得られる導電性酸化物担体は、適切なSn(II)/Sn(IV)比を有するため、比抵抗が低減でき、高い導電性を発揮できる。また、特に導電性酸化物担体がアンチモンを含む(即ち、Sb−SnO2−X(0<x<1)またはSb−SnO2である)場合には、アンチモン由来の高い導電性により、Sn(II)/Sn(IV)比にあまり左右されずに、比抵抗が低減でき、高い導電性を発揮できる。具体的には、本発明の方法によって製造される導電性酸化物担体は、1×102〜3×107cm・Ω、より好ましくは1×102〜3×104cm・Ωの比抵抗を示す。また、上記工程(i)〜(iii)によって得られる導電性酸化物担体は、適切な結晶子径を有するため、BET比表面積が増大し、下記に詳述する貴金属の高分散担持が可能になる。具体的には、本発明の方法によって製造される導電性酸化物担体は、50〜170m2/g、より好ましくは60〜160m2/g、特に好ましくは70〜140m2/gのBET比表面積を有する。これは、従来の錫系の導電性酸化物担体では、BET比表面積が10数〜約50m2/g以下であったのに比して有意に増大することができる。また、このようなBET比表面積の大きな導電性酸化物担体上に、液相還元法を用いてPt等の貴金属粒子を高分散状態で担持できる。したがって、このようにして得られた電極触媒は、発電性能を大幅に向上できる。
したがって、本発明に係る導電性酸化物担体は、貴金属を担持して、電極触媒を製造するのに好適に使用しうる。貴金属の担持方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。一般的に、導電性担体上にPtなどの貴金属粒子を高分散状態で担持する液相還元法では、該導電性担体上に担持される貴金属粒子の大きさ(貴金属粒子径)や分散性は導電性の影響を大きく受けると推測される。導電性酸化物担体の導電性の大小は、貴金属担持(液相還元反応)の成否、貴金属粒子の大小(貴金属粒子径の大小)や分散性の良し悪しに大きな影響を及ぼすと推測される。本発明の導電性酸化物担体は、導電性に優れる(比抵抗が小さい)ため、液相還元法を用い担体上にPt粒子を高分散状態で担持できると推測される。したがって、発電性能を大幅に向上できる。
また、導電性酸化物担体への貴金属の従来の担持法としては、含浸法(導電性酸化物とPt塩溶液とを混合し蒸発乾固)、Ptコロイド法(導電性酸化物とPt(メタル)コロイド溶液とを混合し蒸発乾固)、Pt酸化物コロイド法(導電性酸化物とPt酸化物コロイドの混合溶液を調製し、沈殿を濾取して乾燥後水素還元)などが用いられていた。これらの方法では、貴金属粒子の分散状態は、担体の表面構造(凹凸構造)に大きく影響されるため、担体表面に貴金属粒子を高分散することが難しい(担体と貴金属粒子とは物理的な接触であるため再凝集が起こり易い)と推測される。さらに、溶液(溶媒)や不純物の除去過程(例えば、蒸発乾固、濾過・洗浄)で、貴金属粒子の凝集が起こり易いと推測される。
また、液相還元法では、担体の導電性部位上で貴金属原料(錯体)と還元剤(例えば、EtOH)とが反応し、貴金属粒子が生成すると推測される。このため、貴金属粒子の分散状態は、担体の導電性部位の導電性や分散状態に大きく影響されるが、担体表面に貴金属粒子を高分散することが容易である(担体とPt粒子との相互作用が強く再凝集が起こり難い)と推測される。さらに、溶液(溶媒)や不純物の除去過程(例えば、蒸発乾固、濾過・洗浄)でも、貴金属粒子の凝集が起こり難いと推測される。
これに対し、本発明に係る導電性酸化物担体の導電性部位(SnO)は、貴金属が未担持の状態(貴金属に被覆されていない状態)では、強酸性下で徐々にSnOからSnO2に酸化される。例えば、液相還元法で使用するジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液などの貴金属前駆体溶液はpH=1以下の強酸性であるため、Pt原料溶液のpHを予め、pH=3〜9に調整することが望ましい。これによって、Pt未担持の状態(Ptに被覆されていない状態)でのSnOからSnO2への酸化反応を抑制でき、したがって、Ptを担持した後も導電性の低下を抑制できると推測される。
したがって、貴金属前駆体水溶液のpHを3〜9に調整し、この貴金属前駆体水溶液に本発明に係る導電性酸化物担体および第1の還元剤を加え、加熱還流して、貴金属前駆体担持担体を含む溶液を得る方法が好ましい。すなわち、本発明は、(a)貴金属前駆体水溶液のpHを3〜9に調整し;(b)前記(a)で調製された貴金属前駆体水溶液に、本発明の方法で得られた導電性酸化物担体および第1の還元剤を加え、加熱還流して、貴金属前駆体担持担体を含む溶液を得る、ことを有する、電極触媒の製造方法を提供する。以下、上記電極触媒の製造方法の好ましい実施の形態について説明する。なお、本発明は、下記説明に限定されるものではない。
(I)工程(a)
本工程では、貴金属前駆体水溶液のpHを3〜9に調整する。一般的に2価の酸化錫(SnO)は、4価の酸化錫(SnO2)に比して不安定であり、強酸性条件下では、4価の酸化錫(SnO2)に変換されやすくなる。また、2価の酸化錫(SnO)は、強酸性条件下では耐食性に劣る場合がある。このため、貴金属前駆体水溶液は弱酸性から弱塩基性であることが好ましい。これにより、本発明に係る導電性酸化物担体は、Sn(II)/Sn(IV)やSnO2−X(0<x<1)を適切な範囲に維持することができる。より好ましくは、貴金属前駆体水溶液のpHを、4〜8に調整する。
上記方法によると、電極触媒は、本発明に係る導電性酸化物担体に貴金属が担持されてなる。ここで、貴金属としては、特に制限されないが、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びイリジウム等の貴金属が好ましく挙げられる。これらのうち、白金、パラジウム、ロジウムがより好ましく使用され、白金、パラジウムが特に好ましく使用され、白金が最も好ましく使用される。これらの貴金属は、燃料電池用の電極触媒として使用される場合には、触媒活性に優れるからである。この際、貴金属は、一種を単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。このため、上記貴金属源である貴金属前駆体としては、いずれの貴金属化合物であってもよいが、例えば、硝酸ロジウム、硝酸パラジウム、硝酸イリジウム、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金、ヘキサアンミン白金、テトラアンミン白金(II)水酸塩、塩化白金、塩化イリジウム、塩化パラジウムなどが水溶性であるため、好ましい。これらのうち、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸、塩化白金、テトラアンミン白金(II)水酸塩がより好ましく、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸が特に好ましい。この際、上記貴金属前駆体は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
上記したような貴金属前駆体を水に溶解したのみでは、そのpHが3〜9にならない場合がある。このような場合には、上記水溶液に、適当な酸あるいは塩基を添加して、そのpHが上記範囲になるように調節すればよい。この際、適当な酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが使用できる。また、適当な塩基としては、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが使用できる。上記した酸や塩基は、そのままの形態で使用されてもよいが、水溶液の形態で使用されてもよい。
(II)工程(b)
本工程では、上記(a)で調製された貴金属前駆体水溶液に、本発明の方法で得られた導電性酸化物担体および第1の還元剤を加え、加熱還流して、貴金属前駆体担持担体を含む溶液を得る。
ここで、第1の還元剤としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらのうち、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒドが好ましい。また、上記第1の還元剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
第1の還元剤の添加量は、特に制限されず、貴金属前駆体を十分還元できる量であればよい。第1の還元剤の添加量は、貴金属前駆体(貴金属換算のモル数)に対して、10〜300倍のモル比、より好ましくは50〜100倍のモル比となるような量であることが好ましい。このような範囲であれば、導電性酸化物担体上で、貴金属前駆体を十分還元・担持できる。
また、工程(b)によると、貴金属前駆体水溶液、導電性酸化物担体および第1の還元剤の混合液を加熱還流するが、その際の加熱還流条件も、貴金属前駆体を十分還元して、導電性酸化物担体上に貴金属前駆体を十分担持できる条件であれば特に制限されない。具体的には、上記混合液を、75〜85℃の温度で、2〜8時間、より好ましくは4〜6時間、加熱還流する。このような条件であれば、貴金属前駆体を十分還元して、導電性酸化物担体上に貴金属前駆体を十分担持できる。なお、上記加熱還流操作は、1回を単独で行なってもあるいは2回以上に分けて行なってもよい。後者の場合の各加熱還流条件は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
本発明では、上記工程(a)及び(b)によって、導電性酸化物担体上に貴金属前駆体を十分担持できるが、さらに還元反応を行なってもよい。即ち、本発明の電極触媒の製造方法は、(c)上記工程(b)で得られた貴金属前駆体担持担体を含む溶液に、第2の還元剤を加え、加熱還流する(工程(c))ことをさらに有することが好ましい。これにより、導電性酸化物担体上にサイズの小さい貴金属粒子を所望の担持率で、しかも高分散状態で担持することがより可能になる。
ここで、第2の還元剤としては、特に制限されないが、蟻酸、酢酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどが好ましく挙げられる。また、上記第2の還元剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
第2の還元剤の添加量は、特に制限されず、貴金属前駆体を十分還元できる量であればよい。第2の還元剤の添加量は、貴金属前駆体(貴金属換算のモル数)に対して、1〜200倍のモル比、より好ましくは5〜100倍のモル比となるような量であることが好ましい。このような範囲であれば、導電性酸化物担体上で、貴金属前駆体を十分還元・担持できる。
また、工程(c)によると、工程(b)での還元反応(第1の還元反応)に加えて、さらに還元反応(第2の還元反応)を第2の還元剤の存在下での加熱還流により行なうものである。その際の還元(加熱還流)条件も、貴金属前駆体を十分還元して、導電性酸化物担体上に貴金属前駆体を十分担持できる条件であれば特に制限されない。具体的には、上記混合液を、50〜75℃の温度で、2〜8時間、加熱還流する。このような条件であれば、貴金属前駆体を十分還元して、導電性酸化物担体上に貴金属前駆体を十分担持できる。なお、上記加熱還流操作は、1回を単独で行なってもあるいは2回以上に分けて行なってもよい。後者の場合の各加熱還流条件は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
なお、第1の還元剤及び第2の還元剤の組合せは、特に制限されず、第1及び第2の還元剤は、同じであってもあるいは異なるものであってもよく、また、第1の還元反応及び第2の還元反応の条件は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。しかし、第2の還元反応の方が第1の還元反応に比して還元効果が高いことが好ましい。例えば、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液などのPt前駆体水溶液のpHを3〜9に調整すると、液相還元反応の進行が阻害されるため、1種類の還元剤を用いた場合では、Pt錯体の還元が不十分となりPt担持率が低下したり、液相側でPt錯体の還元反応が起こり担体上にPtが担持できない(メタルが浮遊)、などが起こり易いと推測される。また、1段階で還元した場合には、還元剤の種類(還元力の強弱)に関係なく、貴金属粒子の凝集が起こり易く、8nm以上となり、貴金属粒子が高分散して担体上に分散できないおそれがある。このため、2種類の還元剤を使用して還元反応を2段階で行なうことで、導電性酸化物担体上に液相還元法で貴金属粒子の高分散担持が可能となる。このような場合には、第1の還元反応では、エタノール(EtOH)等の比較的還元作用の弱い第1の還元剤で緩やかに反応させ、貴金属粒子の核となる中間体(貴金属錯体が部分的に還元された状態)を形成し、次いで、蟻酸(HCOOH)等の比較的還元作用の強い第2の還元剤で急速に反応させることにより、貴金属粒子の成長を抑制していると推測される。この方法を用いることで、導電性酸化物担体上に3〜5nmの貴金属(特にPt)粒子を所望の担持率で、しかも高分散状態で担持できる。しかし、本発明は、上記推測によって限定されない。
上記工程(a)〜(c)の液相還元によって導電性酸化物担体に白金等の貴金属を高分散させて担持することが可能である。特に、貴金属前駆体水溶液(例えば、ジニトロジアンミンPt水溶液や塩化白金酸水溶液)のpHを3〜9に調整し、さらに第1及び第2の還元剤を用いて2段階で還元(還元速度を調整)することが好ましい。このような方法によって、Sn導電性酸化物担体(SnO2−X;0<x<1)上に3〜5nmの貴金属粒子を担持することができる。
また、本発明の電極触媒の製造方法は、上記工程(c)で得られた溶液から、沈殿を分離し純水で洗浄した後、空気中あるいは不活性ガス中で70〜100℃で乾燥する(工程(d))ことをさらに有することが好ましい。本工程(d)によると、沈殿を分離し純水で洗浄することによって、工程(b)および(c)の液相還元後に残存している第1及び第2の還元剤がある程度除去できる。次に、この純水で洗浄した後、沈殿を分離して、この沈殿を空気中あるいは不活性ガス中で70〜100℃で乾燥することによって、これらの還元剤をより完全に除去することが可能である。
上記工程(d)において、沈殿の分離方法は、特に制限されず、濾過、吸引濾過、遠心分離など、公知の方法が使用できる。また、このようにして分離された沈殿を純水で洗浄し、その後沈殿を空気中あるいは不活性ガス中で、好ましくは不活性ガス中で、70〜100℃の温度で乾燥する。このような温度範囲であれば、貴金属粒子のシンタリングを抑制・防止できるため、このような方法で製造された電極触媒は、初期から高い活性を発現することができる。また、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等、特に制限されない。
また、本発明の電極触媒の製造方法は、(e)上記工程(d)で得られた乾燥物を、1〜10体積%水素(H2)ガスを含む窒素(N2)ガスの流通下で、90〜200℃の温度で1〜12時間、還元処理する(工程(e))ことをさらに有することが好ましい。このような還元処理をさらに行なうことによって、貴金属表面に吸着した不純物を除去して、貴金属粒子をさらに活性化することができる。このため、工程(e)を行なうことによって、電極触媒は、初期からより高い活性を発現することができる。より好ましくは、上記工程(e)は、上記工程(d)で得られた乾燥物を、1〜10体積%水素(H2)ガスを含む窒素(N2)ガスの流通下で、90〜200℃の温度で30分〜4時間、還元処理する。
本発明の方法によって製造される電極触媒は、燃料電池などの電解質膜−電極接合体(MEA)のカソード及びアノード触媒層中の電極触媒として好適に使用される。ここで、本発明に係る電極触媒を用いたMEAや燃料電池の製造方法は、特に制限されず、本発明に係る電極触媒を用いる以外は、従来と同様の方法が使用できる。例えば、触媒インクを電解質膜上に塗布・乾燥させた後ホットプレスして、電極触媒層を電解質膜と接合し、得られた接合体をガス拡散層で挟持して、MEAとする方法;触媒インクを、前記ガス拡散層上に塗布・乾燥させて電極触媒層を形成し、これを電解質膜とホットプレスにより接合する方法、などであってもよく各種公知技術を適宜用いて行えばよい。
本発明の燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。
特に、前記高分子電解質形燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例及び比較例において、特記しない限りは、各操作は室温(20〜35℃)で行なった。また、特記しない限り、「%」は質量%を表わす。
実施例1
1−1.錫含有溶液の調製
36%−HCl 2cm3(比重=約1.18g/cm3)とH2O 98cm3との混合溶液に、塩化第一錫(SnCl2・2H2O)22.57gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約0.8であり、塩酸/錫(HCl/Sn)のモル比が約0.24であった。
1−2.沈殿剤溶液の調製
H2O 373cm3に、28%−NH4OH 27cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約11.5であった。
1−3.沈殿の形成
上記1−2で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記1−1で調製された錫含有溶液を滴下した。この時の錫含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約4であった。
錫含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を24時間静置(熟成)した。次に、このようにして得られた混合液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。
1−4.沈殿の洗浄・分離
NH4HCO3 79.5gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約7.8であった。
1−3で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液(pH=約7.8)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合溶液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、同様の操作を、もう1回繰り返した。
このようにして得られた沈殿を、洗浄液300cm3に投入し、約1時間、攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、3日間静置した。
所定期間静置後、溶液を吸引濾過し、沈殿を濾取した。この沈殿を、洗浄原液100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液(pH=約7.8)に投入し、約1時間、攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、この操作を4回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。
1−5.沈殿の乾燥・焼成
上記1−4で得られた固形物(沈殿)を、50℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、300℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(1)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(1)について、X線回折を行なったところ、ピーク強度比がSnO(101)/SnO2(110)=0.15である、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(1)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例2
2−1.錫含有溶液の調製
36%−HCl 2cm3(比重=約1.18g/cm3)とH2O 98cm3との混合溶液に、塩化第一錫(SnCl2・2H2O)22.57gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約0.8であり、塩酸/錫(HCl/Sn)のモル比が約0.24であった。
2−2.沈殿剤溶液の調製
H2O 373cm3に、28%−NH4OH 17cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約11.5であった。
2−3.沈殿の形成
上記2−2で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記2−1で調製された錫含有溶液を滴下した。この時の錫含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約2.5であった。
錫含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を24時間静置(熟成)した。次に、このようにして得られた混合液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。
2−4.沈殿の洗浄・分離
NH4NO3 80.0gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約5.4であった。
2−3で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液(pH=約5.5)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合溶液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、同様の操作を、もう1回繰り返した。
このようにして得られた沈殿を、洗浄液300cm3に投入し、約1時間、攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、3日間静置した。
所定期間静置後、溶液を吸引濾過し、沈殿を濾取した。この沈殿を、洗浄原液100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液(pH=約5.5)に投入し、約1時間、攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、この操作を4回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。
2−5.沈殿の乾燥・焼成
上記2−4で得られた固形物(沈殿)を、60℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、300℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(2)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(2)について、X線回折を行なったところ、ピーク強度比がSnO(101)/SnO2(110)=0.28である、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(2)のBET比表面積を測定したところ、80m2/gであった。
実施例3
3−1.錫含有溶液の調製
36%−HCl 2cm3(比重=約1.18g/cm3)とH2O 98cm3との混合溶液に、塩化第一錫(SnCl2・2H2O)22.57gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約0.8であり、塩酸/錫(HCl/Sn)のモル比が約0.24であった。
3−2.沈殿剤溶液の調製
H2O 373cm3に、28%−NH4OH 34cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約11.5であった。
3−3.沈殿の形成
上記3−2で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記3−1で調製された錫含有溶液を滴下した。この時の錫含有溶液の滴下速度は、25cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
錫含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を24時間静置(熟成)した。次に、このようにして得られた混合液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。
3−4.沈殿の洗浄・分離
NaHSO3 10.0gをH2O 300cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄液1を調製した。この際調製された洗浄液1のpHは、約4.4であった。
3−3で得た沈殿を、ここで調製した洗浄液1 300cm3に加え、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、3日間静置した。静置終了後、混合溶液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。
別途、NH4NO3 40.0gをH2O 500cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液2を調製した。この際調製された洗浄原液2のpHは、約5.1であった。
上記で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液2 100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液2(pH=約5.2)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、この操作を4回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。
3−5.沈殿の乾燥・焼成
上記3−4で得られた固形物(沈殿)を、60℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、300℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(3)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(3)について、X線回折を行なったところ、ピーク強度比がSnO(101)/SnO2(110)=0.11である、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(3)のBET比表面積を測定したところ、140m2/gであった。
実施例4
実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例2 2−4〜2−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(4)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(4)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(4)のBET比表面積を測定したところ、80m2/gであった。なお、下記表1において、ピーク強度比[SnO(101)/SnO2(110)]は、「XRD強度比 ISnO/ISnO2(−)」として表わされる。
実施例5
実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例3 3−4〜3−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(5)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(5)について、X線回折を行なったところ、下記に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(5)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例6
実施例2 2−1〜2−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例1 1−4〜1−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(6)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(6)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(6)のBET比表面積を測定したところ、85m2/gであった。
実施例7
実施例2 2−1〜2−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例3 3−4〜3−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(7)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(7)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(7)のBET比表面積を測定したところ、80m2/gであった。
実施例8
実施例3 3−1〜3−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例1 1−4〜1−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(8)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(8)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(8)のBET比表面積を測定したところ、98m2/gであった。
実施例9
実施例3 3−1〜3−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例2 2−4〜2−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(9)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(9)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(9)のBET比表面積を測定したところ、95m2/gであった。
実施例10
H2O 500cm3に、NH4HCO3 39.8gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約7.8であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(10)を得た。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
このようにして得られた導電性酸化物担体(10)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(10)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例11
H2O 500cm3に、NH4HCO3 39.8gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約7.8であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を行い、沈殿を濾取した。
このようにして得られた沈殿を代わりに用いる以外は、実施例2 2−4〜2−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(11)を得た。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
このようにして得られた導電性酸化物担体(11)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(11)のBET比表面積を測定したところ、80m2/gであった。
実施例12
H2O 500cm3に、NH4HCO3 39.8gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約7.8であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を行い、沈殿を濾取した。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
このようにして得られた沈殿を代わりに用いる以外は、実施例3 3−4〜3−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(12)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(12)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(12)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例13
H2O 300cm3に28%−NH4OH 20cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えた溶液に、1M−NH4NO3溶液150mlを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約10.1であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(13)を得た。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約4.5であった。
このようにして得られた導電性酸化物担体(13)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(13)のBET比表面積を測定したところ、90m2/gであった。
実施例14
H2O 300cm3に28%−NH4OH 20cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えた溶液に、1M−NH4NO3溶液150mlを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約10.1であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を行い、沈殿を濾取した。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約4.5であった。
このようにして得られた沈殿を代わりに用いる以外は、実施例2 2−4〜2−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(14)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(14)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(14)のBET比表面積を測定したところ、105m2/gであった。
実施例15
H2O 300cm3に28%−NH4OH 20cm3(比重=約0.9g/cm3)を加えた溶液に、1M−NH4NO3溶液150mlを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約10.1であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用いる以外は、実施例1 1−1〜1−3と同様の操作を行い、沈殿を濾取した。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約4.5であった。
このようにして得られた沈殿を代わりに用いる以外は、実施例3 3−4〜3−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(15)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(15)について、X線回折を行なったところ、下記表1に示されるように、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(15)のBET比表面積を測定したところ、95m2/gであった。
実施例16
本実施例では、実施例1で得られた導電性酸化物担体(1)を用い、以下の手順で、Ptを担持して、電極触媒を調製した。
ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(Pt含有量=8.46wt%)5.2g(Ptとして0.44g)に、H2O 300cm3を加えて混合・攪拌して、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液を得た。このようにして得られたジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液のpHは、約1〜2であった。次に、このジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液に、pHが8〜9になるように、5%−アンモニア水を加え、Pt前駆体溶液を得た。
このPt前駆体溶液に、実施例1で得られた導電性酸化物担体(1)1.5gを加えた後、エタノール40cm3を加えて混合攪拌した。約30分間攪拌した後、10℃/分の昇温速度で80℃〜85℃に加温し、さらに、80℃〜85℃で4時間、還流した。所定時間還流した後、溶液の温度を65℃〜70℃に降温し、蟻酸0.5cm3を加え、65℃〜70℃で1時間還流した。さらに、蟻酸0.5cm3を加え、65℃〜70℃で1時間還流した。所定時間還流した後、加温を停止し、攪拌しながら、溶液を40℃まで降温した。
この溶液を吸引濾過し、固形分(固形物)を濾取した後、固形物を水洗(純水500cm3)した。得られた固形物を、空気雰囲気下、80℃で12時間乾燥した。さらに、乾燥した固形物を、5体積%−H2/N2 balanceガス流通下、100℃で2時間焼成して、電極触媒(1)を得た。この際、電極触媒(1)は、ほぼ仕込み量全量のPtが導電性酸化物担体(1)に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(1)について、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定した。なお、COパルス吸着法は、試料に対して、金属表面上に選択的に化学吸着するガス(CO)を飽和に達するまで繰り返し導入し、未飽和と飽和の検出ピーク差から吸着量を測定し、これから金属分散度や金属粒子径を算出する方法である。その結果を下記表2に示す。表2及び上記結果から、電極触媒(1)では、粒子径の小さい白金粒子が導電性酸化物担体(1)上に高分散していることが推察される。
この際、X線回折で測定された担持された白金の平均粒子径は、3個のサンプルについてX線回析で測定した白金粒子径の平均として表わし、下記表2において、「Pt粒径 *XRD(nm)」と、記載する。
また、COパルス吸着法で測定された担持された白金の平均粒子径は、3個のサンプルについて、下記COパルス吸着法で測定した白金粒子径の平均として表わし、下記表2において、「Pt粒径 *COパルス吸着法(nm)」と、記載する。すなわち、電極触媒(1)を金属分散度測定装置(日本ベル株式会社製、商品名:BEL−METAL−1)に入れる。次に、10%−H2/Heバランスのガスを100cm3/minで流通させながら、100℃で2時間、処理する。その後、Heガスを100cm3/minで流通させながら降温し、50℃に保持する。次いで、10%−CO/Heバランスのガスを0.1cm3導入し、CO吸着量とCO未吸着量とをガスクロマトグラフィで検出する。CO吸着量が飽和に達するまで、この操作を繰り返し行った。こうして、CO吸着量からPtの平均粒子径及びPt分散度を求める。
実施例17〜30
導電性酸化物担体(1)の代わりに、実施例2〜15で得られた導電性酸化物担体(2)〜(15)を使用する以外は、実施例16と同様にして、電極触媒(2)〜(15)を、それぞれ、調製した。この際、電極触媒(2)〜(15)は、ほぼ仕込み量全量のPtが各導電性酸化物担体に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(2)〜(15)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表2に示す。表2及び上記結果から、電極触媒(2)〜(15)では、粒子径の小さい白金粒子が各導電性酸化物担体上に高分散していることが推察される。
比較例1
実施例16において、エタノールの代わりに蟻酸を用いた以外は、実施例16と同様にして、比較電極触媒(1)を調製した。
このようにして得られた比較電極触媒(1)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表2に示す。表2から、比較電極触媒(1)は、電極触媒(1)〜(15)に比して、担持している白金粒子の粒子径が大きく導電性酸化物担体への分散性が劣ることが示される。
比較例2
実施例16において、蟻酸の代わりにエタノールを用いた以外は、実施例16と同様にして、比較電極触媒(2)を調製した。このようにして得られた比較電極触媒(2)は、Pt仕込み量20wt%相当に対し、実際に担持されたPt量は、12wt%であった。
このようにして得られた比較電極触媒(2)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表2に示す。表2から、比較電極触媒(2)は、電極触媒(1)〜(15)と同等の粒子径の白金粒子が導電性酸化物担体に担持されているものの、上記したようにPtの担持量が少ない。このため、比較電極触媒(2)は、電極触媒(1)〜(15)に比して、性能に劣ると、推察される。
また、上記表1および下記表2から、XRDピーク強度比[SnO(101)/SnO2(101)]の増減によって、各導電性酸化物担体に担持されるPtの平均粒径があまり変動しないことが示される。この結果から、Ptの分散度は、SnOとSnO2のXRDピーク強度比[SnO(101)/SnO2(101)]との関連性はほとんどないと、考察される。
実施例31
ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(Pt含有量=8.46wt%)5.2g(Ptとして0.44g)に、H2O 300cm3を加えて混合・攪拌して、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液を得た。このようにして得られたジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液のpHは、約1〜2であった。次に、このジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液に、pHが3〜5になるように、5%−水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加え、Pt前駆体溶液を得た。
このPt前駆体溶液に、実施例1で得られた導電性酸化物担体(1)1.5gを加えた後、エタノール40cm3を加えて混合攪拌した。約30分間攪拌した後、10℃/分の昇温速度で80℃〜85℃に加温し、さらに、80℃〜85℃で4時間、還流した。所定時間還流した後、加温を停止し、攪拌しながら、溶液を40℃まで降温した。
この溶液を吸引濾過し、固形分(固形物)を濾取した後、固形物を水洗(純水500cm3)した。得られた固形物を、空気雰囲気下、80℃で12時間乾燥した。さらに、乾燥した固形物を、5体積%−H2/N2 balanceガス流通下、100℃で2時間焼成して、電極触媒(16)を得た。この際、電極触媒(16)は、ほぼ仕込み量全量のPtが導電性酸化物担体(1)に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(16)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表3に示す。表3及び上記結果から、電極触媒(16)では、粒子径の小さい白金粒子が導電性酸化物担体(1)上に高分散していることが考察される。
実施例32〜45
導電性酸化物担体(1)の代わりに、実施例2〜15で得られた導電性酸化物担体(2)〜(15)を使用する以外は、実施例31と同様にして、電極触媒(17)〜(30)を、それぞれ、調製した。この際、電極触媒(17)〜(30)は、ほぼ仕込み量全量のPtが各導電性酸化物担体に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(17)〜(30)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表3に示す。表3及び上記結果から、電極触媒(17)〜(30)では、粒子径の小さい白金粒子が各導電性酸化物担体上に高分散していることが推察される。
比較例3
実施例31において、エタノールの代わりに蟻酸を用いた以外は、実施例31と同様にして、比較電極触媒(3)を調製した。
このようにして得られた比較電極触媒(3)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表3に示す。表3から、比較電極触媒(3)は、電極触媒(16)〜(30)に比して、担持している白金粒子の粒子径が大きく導電性酸化物担体への分散性が劣ることが示される。
実施例46
46−1.錫含有溶液の調製
H2O 50cm3に、塩化第二錫(SnCl4・5H2O)35.06gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約0.8であった。
46−2.アンチモン含有溶液の調製
窒素ガスを流通させたドライボックス内で、五塩化アンチモン(SbCl5)溶液(Sb含有量33%)25gを、36%−HCl 75g(比重=約1.18g/cm3)に加えて混合・攪拌し、Sb 8wt.%を含むアンチモン含有溶液を調製した。
46−3.錫−アンチモン含有溶液の調製
上記46−2で調製されたアンチモン含有溶液15.24gを、上記46−1で調製された錫含有溶液に加えて混合攪拌して混合攪拌して、錫−アンチモン含有溶液(Sb/Sn=0.1(モル比))を調製した。次いで、この錫−アンチモン含有溶液を滴下ロートに充填した。さらに、錫−アンチモン含有溶液と空気とが接触するのを防止するため、滴下ロートにケロシン20mlを加え、錫−アンチモン含有溶液の表面に油層(ケロシン層)を形成した。
46−4.沈殿剤溶液の調製
H2O 500cm3に、NH4HCO3 53.4gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約8.2であった。
46−5.沈殿の形成
上記46−4で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記46−3で調製された錫−アンチモン含有溶液を滴下した。この時の錫−アンチモン含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH4HCO3/Sn)は、約5であった。
錫−アンチモン含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を72時間静置(熟成)した。所定時間熟成した後、混合液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。
46−6.沈殿の洗浄・分離
NH4HCO3 80.0gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約8.0であった。
46−5で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 50cm3とH2O 200cm3とを混合した洗浄液(pH=約8.1)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合溶液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。さらに、同様の操作を、5回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。上記遠心分離によって得られた上清に、1%−硝酸銀水溶液を数滴加え、白濁しないことを確認した。白濁する場合は、白濁が認められなくなるまで、上記洗浄操作を繰り返した。
46−7.沈殿の乾燥・焼成
上記46−6で得られた固形物(沈殿)を、60℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、500℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(16)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(16)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(16)のBET比表面積を測定したところ、70m2/gであった。
実施例47
47−1.錫含有溶液の調製
36%−HCl 2cm3(比重=約1.18g/cm3)とH2O 48cm3との混合溶液に、塩化第一錫(SnCl2・2H2O)22.57gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約1.0であり、塩酸/錫(HCl/Sn)のモル比が約0.2であった。
47−2.アンチモン含有溶液の調製
窒素ガスを流通させたドライボックス内で、五塩化アンチモン(SbCl5)溶液(Sb含有量33%)25gを、36%−HCl 75g(比重=約1.18g/cm3)に加えて混合・攪拌し、Sb 8wt.%を含むアンチモン含有溶液を調製した。
47−3.錫−アンチモン含有溶液の調製
上記47−2で調製されたアンチモン含有溶液15.24gを、上記47−1で調製された錫含有溶液に加えて混合攪拌して混合攪拌して、錫−アンチモン含有溶液(Sb/Sn=0.1(モル比))を調製した。次いで、この錫−アンチモン含有溶液を滴下ロートに充填した。さらに、錫−アンチモン含有溶液と空気とが接触するのを防止するため、滴下ロートにケロシン20mlを加え、錫−アンチモン含有溶液の表面に油層(ケロシン層)を形成した。
47−4.沈殿剤溶液の調製
H2O 454cm3に、28%−NH4OH 45.7cm3を加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約11.5であった。
47−5.沈殿の形成
上記47−4で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記47−3で調製された錫−アンチモン含有溶液を滴下した。この時の錫−アンチモン含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
錫−アンチモン含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を72時間静置(熟成)した。次に、このようにして得られた混合液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。
47−6.沈殿の洗浄・分離
NH4NO3 80.0gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約5.4であった。
47−5で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 50cm3とH2O 200cm3とを混合した洗浄液(pH=約5.5)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合溶液を吸引濾過して、沈殿を濾取した。さらに、同様の操作を、5回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。上記遠心分離によって得られた上清に、1%−硝酸銀水溶液を数滴加え、白濁しないことを確認した。白濁する場合は、白濁が認められなくなるまで、上記洗浄操作を繰り返した。
47−7.沈殿の乾燥・焼成
上記47−6で得られた固形物(沈殿)を、60℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、500℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(17)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(17)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(17)のBET比表面積を測定したところ、65m2/gであった。
実施例48
48−1.錫含有溶液の調製
H2O 100cm3に、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)26.67gを加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。
48−2.アンチモン含有溶液の調製
窒素ガスを流通させたドライボックス内で、五塩化アンチモン(SbCl5)溶液(Sb含有量33%)25gを、36%−HCl 75g(比重=約1.18g/cm3)に加えて混合・攪拌し、Sb 8wt.%を含む溶液を調製した。
このSb 8wt.%を含む溶液15.24gに、36%−HCl 25gとH2O 25cm3との混合溶液を加えて攪拌し、アンチモン含有溶液を調製した。このアンチモン含有溶液を滴下ロートに充填しさらに、アンチモン含有溶液と空気とが接触するのを防止するため、滴下ロートにケロシン20mlを加え、アンチモン含有溶液の表面に油層(ケロシン層)を形成した。
48−3.沈殿剤溶液の調製
H2O 500cm3に、NH4HCO3 53.4gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液(1)を調製した。この際調製された沈殿剤溶液(1)のpHは、約8.2であった。
別途、H2O 461cm3に、36%−HCl(比重=約1.18g/cm3)53.4gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液(2)を調製した。この際調製された沈殿剤溶液(2)のpHは、約0.5であった。
48−4.沈殿の形成
上記48−1で調製された錫含有溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記48−2で調製されたアンチモン含有溶液を滴下した。この時のアンチモン含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、塩酸/錫のモル比(HCl/Sn)は、約3であった。
アンチモン含有溶液の滴下終了後、上記48−3で調製された沈殿剤溶液(1)または沈殿剤溶液(2)を、pHが1.5〜3.0の範囲になるように加えた。この混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を72時間静置(熟成)した。所定時間熟成した後、混合液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。
48−5.沈殿の洗浄・分離
NH4HCO3 79.5gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約8.2であった。
48−4で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 50cm3とH2O 200cm3とを混合した洗浄液(pH=約8.2)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合溶液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。さらに、同様の操作を、6回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。
48−6.沈殿の乾燥・焼成
上記48−5で得られた固形物(沈殿)を、60℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、500℃で2時間焼成して、導電性酸化物担体(18)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(18)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(18)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例49
窒素ガスを流通させたドライボックス内で、三塩化アンチモン(SbCl3)溶液22.8g(Sb含有量 53%)を、36%−HCl 88g(比重=約1.18g/cm3)に加えて混合・攪拌し、Sb 12wt.%を含むアンチモン含有溶液を調製した。
このようにして調製されたアンチモン含有溶液を代わりに使用する以外は、実施例46と同様にして、導電性酸化物担体(19)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(19)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(19)のBET比表面積を測定したところ、70m2/gであった。
実施例50
H2O 500cm3に、NH4HCO3 53.4gとヒドラジン3gとを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約8.2であった。
このようにして調製された沈殿剤溶液を代わりに使用する以外は、実施例46と同様にして、導電性酸化物担体(20)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(20)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(20)のBET比表面積を測定したところ、68m2/gであった。
実施例51
五塩化アンチモン(SbCl5)溶液(Sb含有量33%)の量を12.5gとする以外は、実施例46と同様にして、導電性酸化物担体(21)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(21)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.05であった。
また、導電性酸化物担体(21)のBET比表面積を測定したところ、78m2/gであった。
実施例52
沈殿剤として、NH4HCO3 53.4gの代わりに、10%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド 550cm3を用いた以外は、実施例46と同様にして、導電性酸化物担体(22)を得た。このようにして得られた導電性酸化物担体(22)(Sb−SnO2)の、アンチモンに対する錫のモル比(Sb/Sn)は、0.1であった。
また、導電性酸化物担体(22)のBET比表面積を測定したところ、80m2/gであった。下記表4に、導電性酸化物担体(16)〜(22)のBET比表面積を要約する。
実施例53
本実施例では、実施例46で得られた導電性酸化物担体(16)を用い、以下の手順で、Ptを担持して、電極触媒を調製した。
ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(Pt含有量=8.46wt%)5.2g(Ptとして0.44g)に、H2O 300cm3を加えて混合・攪拌して、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液を得た。このようにして得られたジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液のpHは、約1〜2であった。次に、このジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液に、pHが8〜9になるように、5%−アンモニア水を加え、Pt前駆体溶液を得た。
このPt前駆体溶液に、実施例46で得られた導電性酸化物担体(16)1.5gを加えた後、エタノール40cm3を加えて混合攪拌した。約30分間攪拌した後、10℃/分の昇温速度で80℃〜85℃に加温し、さらに、80℃〜85℃で4時間、還流した。所定時間還流した後、溶液の温度を65℃〜70℃に降温し、蟻酸0.5cm3を加え、65℃〜70℃で1時間還流した。さらに、蟻酸0.5cm3を加え、65℃〜70℃で1時間還流した。所定時間還流した後、加温を停止し、攪拌しながら、溶液を40℃まで降温した。
この溶液を吸引濾過し、固形分(固形物)を濾取した後、固形物を水洗(純水500cm3)した。得られた固形物を、空気雰囲気下、80℃で12時間乾燥した。さらに、乾燥した固形物を、5体積%−H2/N2 balanceガス流通下、100℃で2時間焼成して、電極触媒(31)を得た。この際、電極触媒(31)は、ほぼ仕込み量全量のPtが導電性酸化物担体(16)に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(31)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表5に示す。表5及び上記結果から、電極触媒(31)では、粒子径の小さい白金粒子が導電性酸化物担体(16)上に高分散していることが推察される。
実施例54〜59
導電性酸化物担体(16)の代わりに、実施例47〜52で得られた導電性酸化物担体(17)〜(22)を使用する以外は、実施例53と同様にして、電極触媒(32)〜(37)を、それぞれ、調製した。この際、電極触媒(32)〜(37)は、ほぼ仕込み量全量のPtが各導電性酸化物担体に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(32)〜(37)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表5に示す。表3及び上記結果から、電極触媒(32)〜(37)では、粒子径の小さい白金粒子が各導電性酸化物担体上に高分散していることが推察される。
実施例60
ジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(Pt含有量=8.46wt%)5.2g(Ptとして0.44g)に、H2O 300cm3を加えて混合・攪拌して、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液を得た。このようにして得られたジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液のpHは、約1〜2であった。次に、このジニトロジアンミン白金(II)硝酸水溶液に、pHが3〜5になるように、5%−水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加え、Pt前駆体溶液を得た。
このPt前駆体溶液に、実施例46で得られた導電性酸化物担体(16)1.5gを加えた後、エタノール40cm3を加えて混合攪拌した。約30分間攪拌した後、10℃/分の昇温速度で80℃〜85℃に加温し、さらに、80℃〜85℃で4時間、還流した。所定時間還流した後、加温を停止し、攪拌しながら、溶液を40℃まで降温した。
この溶液を吸引濾過し、固形分(固形物)を濾取した後、固形物を水洗(純水500cm3)した。得られた固形物を、空気雰囲気下、80℃で12時間乾燥した。さらに、乾燥した固形物を、5体積%−H2/N2 balanceガス流通下、100℃で2時間焼成して、電極触媒(38)を得た。この際、電極触媒(38)は、ほぼ仕込み量全量のPtが導電性酸化物担体(16)に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(38)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表6に示す。表3及び上記結果から、電極触媒(38)では、粒子径の小さい白金粒子が導電性酸化物担体(16)上に高分散していることが推察される。
実施例61〜66
導電性酸化物担体(16)の代わりに、実施例47〜52で得られた導電性酸化物担体(17)〜(22)を使用する以外は、実施例60と同様にして、電極触媒(39)〜(44)を、それぞれ、調製した。この際、電極触媒(39)〜(44)は、ほぼ仕込み量全量のPtが各導電性酸化物担体に担持されていた。
このようにして得られた電極触媒(39)〜(44)について、実施例16と同様にして、X線回折およびCOパルス吸着法により、担持された白金の平均粒子径を測定し、その結果を下記表6に示す。表3及び上記結果から、電極触媒(39)〜(44)では、粒子径の小さい白金粒子が各導電性酸化物担体上に高分散していることが推察される。
実施例67
実施例3 3−1〜3−3において、錫含有溶液の滴下速度を10cm3/時間とする以外は、実施例3 3−1〜3−3と同様の操作を繰り返して、沈殿を濾取した。
次に、この沈殿を代わりに用いる以外は、実施例1 1−4〜1−5と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(23)を得た。
このようにして得られた導電性酸化物担体(23)について、X線回折を行なったところ、ピーク強度比がSnO(101)/SnO2(110)=0.08である、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(23)のBET比表面積を測定したところ、98m2/gであった。
実施例16において、導電性酸化物担体(1)の代わりに、上記で得られた導電性酸化物担体(23)を使用する以外は、実施例16と同様にして、電極触媒(45)を調製した。
実施例68
H2O 500cm3に、NH4HCO3 39.8gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約7.8であった。
上記で得られた沈殿剤溶液を代わりに用い、錫含有溶液の滴下速度を100cm3/時間とする以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性酸化物担体(24)を得た。なお、この際の沈殿剤/錫のモル比(NH3/Sn)は、約5であった。
このようにして得られた導電性酸化物担体(24)について、X線回折を行なったところ、ピーク強度比がSnO(101)/SnO2(110)=0.40である、SnO相(101)とSnO2相(110)に帰属されるX線回折を持つ導電性酸化物担体であることが分かった。また、導電性酸化物担体(24)のBET比表面積を測定したところ、75m2/gであった。
実施例16において、導電性酸化物担体(1)の代わりに、上記で得られた導電性酸化物担体(24)を使用する以外は、実施例16と同様にして、電極触媒(46)を調製した。
実施例5A
1.錫含有溶液の調製
塩化第二錫(SnCl4・5H2O)35.06gに純水100cm3を加えて混合・攪拌して、錫含有溶液を調製した。この際調製された錫含有溶液は、pHが約0.5であった。
2.沈殿剤溶液の調製
H2O 500cm3に、NH4HCO3 39.53gを加えて、混合・攪拌し、沈殿剤溶液を調製した。この際調製された沈殿剤溶液のpHは、約7.8であった。
3.沈殿の形成
上記2.で調製された沈殿剤溶液を激しく攪拌しながら、これに、上記1.で調製された錫含有溶液を滴下した。この時の錫含有溶液の滴下速度は、50cm3/時間とした。また、沈殿剤/錫のモル比(NH 4 HCO 3 /Sn)は、約5であった。
錫含有溶液の滴下終了後、混合液をさらに1時間攪拌・混合した。所定時間攪拌・混合した後、混合液を24時間静置(熟成)した。次に、このようにして得られた混合液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。
4.沈殿の洗浄・分離
NH4HCO3 79.5gをH2O 1000cm3に加えて、混合・攪拌し、洗浄原液を調製した。この際調製された洗浄原液のpHは、約7.8であった。
3.で得た沈殿を、ここで調製した洗浄原液 100cm3とH2O 400cm3とを混合した洗浄液(pH=約7.8)に投入し、約1時間攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合液を遠心分離(6000rpmで10分間)して、沈殿を得た。さらに、同様の操作を、もう5回繰り返した。
このようにして得られた沈殿を、純水300cm3に投入し、約1時間、攪拌(懸濁)した。攪拌終了後、混合液を遠心分離(10,000rpmで10分間)して、沈殿を得た。さらに、この操作を1回繰り返して、固形物(沈殿)を得た。
5.沈殿の乾燥・焼成
上記4.で得られた固形物(沈殿)を、80℃で12時間、乾燥した後、さらに125℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。次に、得られた乾燥物を、乳鉢で約10分間粉砕した後、空気雰囲気下、400℃で2時間焼成して、酸化物担体を得た。
このようにして得られた酸化物担体について、X線回折を行なったところ、SnO2相(110)に帰属されるX線回折ピークのみが観察された。このため、この酸化物担体は、SnO2であると、考えられる。また、酸化物担体のBET比表面積を測定したところ、105m2/gであった。
実施例16において、導電性酸化物担体(1)の代わりに、上記5.で得られた酸化物担体を使用する以外は、実施例16と同様にして、電極触媒(5A)を調製した。
実施例69
実施例67で作製された電極触媒(45)、実施例28で作製された電極触媒(13)、実施例22で作製された電極触媒(7)、および実施例68で作製された電極触媒(46)、ならびに実施例5Aで作製された電極触媒(5A)を、それぞれ、用いて、下記方法に従って、3電極式セル(ガラスセル)で、電気化学的な触媒表面積(ECA(m2/g−Pt))を算出した。
すなわち、上記電極触媒試料20mg(Pt量が20wt%の場合)に、それぞれ、5.5%−Nafion(登録商標)溶液 313μl(導電性担体とNafion(登録商標)の重量比が1:1になるように)と、純水 422μlを加え、超音波を掛けながら混合分散して、分散液を調製する。次に、この分散液 50μlを金板(電極)に塗布し、80℃で1時間乾燥して、電極を作製した。この電極について、0.5M−H2SO4溶液を電解液として用い、参照極に水素標準電極、対極に白金線をセットした。N2流通下(100ml/minで窒素をバブリングさせながら)、100mV/sの電位掃引速度で、0mV〜1200mVの電位範囲で変化させ、電極をクリーニングした。次いで、50mV/sの電位掃引速度で、0mV〜1200mVの電位範囲で変化させ、CV(Cyclic Voltammogram)を測定した。求めたCV(水素吸着波)から求めた電気量を用いてECA(m2/g−Pt)を算出した。結果をに示す。なお、図1において、黒丸(●)は、実施例5Aで作製された電極触媒(5A)のECAを示す。
図1から、XRDピーク強度比[SnO(101)/SnO2(101)]が増加するにつれて、ECAが増加する傾向が見られる。ここで、ジニトロジアンミン白金(II)[Pt(NO2)2(NH3)2]の還元は導電性の高い表面で起こりやすいため、SnO2(実施例5A)に比べて導電性の高いSnO上に、より多くPtが担持されていると、考えられる。また、酸素還元反応は導電性の高い表面上でより起こりやすいため、結果として酸素還元反応が起こりやすい表面上により多くのPtが担持されたため、SnO含有量が多いほどECAが上昇したと、考えられる。