JP7063617B2 - 複合金属酸化物粒子連結体の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、粉体抵抗を十分に低くすることができ、導電性塗膜などの電気化学的デバイスなどの素材として好適に用いることができる複合金属酸化物粒子連結体、その前駆体溶液の製造方法、および当該複合金属酸化物粒子連結体の製造方法を提供することを目的とする。
また、もう一つの本発明である複合金属酸化物粒子連結体の前駆体溶液の製造方法は、下記(A)、(B)および(C)に示す各工程を備え、前記(A)工程で得られた溶液Aの酸化還元電位EA、前記(B)工程で得られた溶液の酸化還元電位EB、および前記(C)工程における混合液Cの酸化還元電位ECが下記式(1)または下記式(2)の関係を維持することを特徴とする。
EA≦EC≦EB (1)
EB≦EC≦EA (2)
(A)アンチモンを含む溶液を調製する工程
(B)スズを含む溶液を調製する工程
(C)(A)工程で得られた溶液Aと、前記(B)工程で得られた溶液Bとを混合して混合液Cを調製する混合工程
(M)前記混合液CのpHを調整して前記前駆体溶液中に前駆体ゲルを生成させる工程
(N)前記前駆体ゲルを水で洗浄し、洗浄ゲルを得る工程(ただし、洗浄ゲルを5質量%の濃度になるように水に懸濁したときの懸濁液の伝導度は1~2mS/cmである。)
(O)前記洗浄ゲルを水に懸濁して100℃以上の温度で水熱合成する工程
(P)工程(O)により得られた連結体前駆体分散液を噴霧して乾燥する工程
(Q)工程(Q)により得られた粒子を250℃以上で焼結する工程
本発明は、アンチモンとスズを含む複合金属酸化物粒子連結体であって、前記複合金属酸化物粒子は多面体構造を有し、前記多面体構造が線状に連結してなることを特徴とする(以下、本発明の複合金属酸化物粒子連結体を単に「本連結体」ともいう。)。
分岐構造を多く持った連結体構造を例えば多層膜として形成した場合、本連結体は前記多層膜単位面積当たり広い表面積を有し、本連結体どうしの接点を多く持つことになり、本連結体により構成されたATO粒子を導電体として用いた場合に好適である。
なお、「最大長さ」とは、本連結体に分岐構造がない場合は、ある末端からもう一つの末端までの長さであるが、本連結体に分岐構造がある場合は、最大の長さを構成する連結構造の長さをいう。
本連結体を製造するには、まずその前駆体溶液を製造することが好ましい。以下に、前駆体溶液の製造方法を説明する。
EA≦EC≦EB (1)
EB≦EC≦EA (2)
(A)アンチモンを含む溶液を調製する工程
(B)スズを含む溶液を調製する工程
(C)(A)工程で得られた溶液Aと、前記(B)工程で得られた溶液Bとを混合して混合液Cを調製する混合工程
1) 酸またはアルカリ等を用いて予め各溶液の酸化還元電位を調整する
2) 一方の溶液に他方の溶液を添加するときの添加速度を調整する
3) 2)の処理の際に酸またはアルカリ等を同時に添加して調整する
前記(B)工程では、スズを含んだ溶液を調整し、所望により酸またはアルカリを所望の添加速度で加えて、所望の酸化還元電位に調整し、溶液Bとする。
1) 溶液Aと溶液Bを同時に全量一括混合して混合液Cを調製する態様
2) 溶液A全量を容器に満たし、溶液Bを徐々に(所定の添加速度で)添加し、混合液Cを調製する態様
3) 溶液B全量を容器に満たし、溶液Aを徐々に(所定の添加速度で)添加し、混合液Cを調製する態様
acac-:アセチルアセトナートイオン
azpy:4,4‘-アゾピリジン
biPy:4,4‘-ビピリジル
Bu:ブチル
BzIm:ベンゾイミダゾール
Cat2-:カテコールジアニオン
cMU:シス-メチルウロカネート
Cp:シクロペンタジエニル
cresol-:クレゾールイオン
dabco:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン
dppe:1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
Et:エチル
facam-:トリフルオロアセチルカンフルイオン
Fe:フェロセニル
Im:イミダゾール
Me:メチル
N4C(R):テトラアゾラート
Ph:フェニル
pip:ピペリジン
Pr:プロピル
Py:ピリジン
Pyan:1,2-ビス(4-ピリジル)エタン
Pyen:1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン
pyrl:ピロール
pyz:ピラジン
tdt2-:3,4-トルエンジチオレートジアニオンTHT:テトラヒドロチオフェン
tMU:トランス-メチルウロカネート
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMS:ジメチルスルフィド
DMSO:ジメチルスルホキシド
本連結体は、以下の方法で好ましく製造することができる。すなわち、上記した前駆体溶液(混合液C)を用い、下記(M)、(N)、(O)、(P)、および(Q)に示す各工程を実施することで本連結体を好ましく製造することができる。
(M)前記混合液CのpHを調整して前記前駆体溶液中に複合前駆体ゲルを生成させる工程
(N)前記複合前駆体ゲルを水で洗浄し、洗浄ゲルを得る工程(ただし、洗浄ゲルを5質量%の濃度になるように水に懸濁したときの懸濁液の伝導度は1~2mS/cmである。)
(O)前記洗浄ゲルを水に懸濁して100℃以上の温度で水熱合成する工程
(P)工程(O)により得られた連結体前駆体分散液を噴霧して乾燥する工程
(Q)工程(Q)により得られた粒子を250℃以上で焼結する工程
(a)異種金属原子または同種金属原子が酸素原子を介して結合する構造
(b)異種金属原子または同種金属原子が水和層を介して存在する構造
(c)異種金属原子または同種金属原子が水和層と配位子を介して存在する構造
上記したように前駆体溶液に対し、pHを調節することで溶液中にゲルを生成・分散させ、得られた複合前駆体ゲル(洗浄ゲル)溶液に対し、所定の水熱合成、噴霧乾燥および焼結によって、本連結体を容易に作ることが可能となる。
ここで、本連結体を構成する多面体構造の大きさ(一辺の長さ)は、複合前駆体ゲルを生成させる際のpHを上げることで水和物としてのゲルを大きくでき、結果的に上記した一辺の長さを長くすることができ、同時に連結体の長さを長くすることもできる。
前記した洗浄ゲルをオートクレーブ等で水熱合成を行って溶解、成長を行うと、スズ・アンチモンの間の水和物から縮重合という形で水和物が除去され、アモルファス粒子が凝集した構造をとる。このATO粒子は、スズとアンチモンが酸素を共有したコアシェル構造を取っているために、縮重合してアモルファス粒子となった場合、従来知られたATO粒子にくらべ、ATO粒子内に酸素欠損が多いアモルファス粒子となっている。
アンチモンとスズは二元平衡状態図により、230℃以上の温度で溶解して金属間化合物になることが知られており、溶解温度が高いほどスズにアンチモンは多く固溶して合金化することがわかっている。
そして、この凝集したATO粒子を乾燥した後、230℃以上の温度で焼結すると、前記した酸素欠損構造の箇所は、スズとアンチモンが一度溶解して二元平衡状態図に従いスズ金属結晶にアンチモンを固溶する形で合金化結晶構造をとるため結果的に、ATO粒子が直線的な連結構造をとるものと推定される。
本願で採用した各測定方法について以下に記す。
[1]溶液のpH
HORIBA社製pHメーター:D-74と、HORIBA社製pH電極:9625-10Dを用いて25℃で測定した。
[2]溶液の酸化還元電位
NISSIN社製ORPメーター:NOR-6800と、NISSIN社製ORP電極:CP-101Cを用いて25℃で測定した(単位:mV)。
[3]ATO粒子の一辺の平均長さおよび平均粒子径
TEM写真を撮影し、100個の一次粒子について一辺の長さおよび粒子径を測定し、その算術平均値を算出した(単位:μm)。
[4]ATO粒子(粉体)の粉体抵抗
水熱合成して作った凝集粒子ゾルを、シリコンウエーハ上に数μmの厚さでスピンコートし乾燥した後、窒素雰囲気中300℃で焼結させ、低抵抗 抵抗率計(ロレスタ-社製GX MCP-T700)にマイクロプローブ(ロレスタ-社製TFTプローブMCP-TFP RMJ217)を用いて四短針法により体積抵抗率を測定した後、膜厚から表面抵抗(粉体抵抗)を算出した。
〔ATO複合前駆体溶液およびATO複合前駆体ゲルの製造〕
スズ酸カリウム25gを75gのイオン交換水に溶解し、スズ酸カリウム水溶液を得た。このスズ酸カリウム水溶液のpHは12.82であり、酸化還元電位は、43mVであった。次に、このスズ酸カリウム水溶液に対し、2.5質量%の塩酸を2.9g/minの速度で添加してpHが9.1、酸化還元電位が253mVであるスズ前駆体溶液を得た。
次に、吐酒石0.95gを18.1gのイオン交換水に溶解して吐酒石水溶液を得た。吐酒石水溶液のpHは、3.3であり、酸化還元電位は390mVであった。吐酒石水溶液に1.5質量%アンモニア水溶液を2.9g/minの速度で添加してpHが7.0、酸化還元電位が320mVであるアンチモン前駆体水溶液を得た。
上記したATO複合前駆体溶液にさらに塩酸を加えてpHを8.2から下げていくと徐々に酸化還元電位が低下し、最終的にpHが8.1、酸化還元電位が160mVであるATO複合前駆体ゲル分散液が得られた。
上記したATO複合前駆体ゲル分散液を濾過により脱水し温水を掛けながら通水洗浄した。その結果、得られたATO複合前駆体洗浄ゲルを5質量%濃度になるように純水に懸濁したときに電導度が1.44mS/cmであるATO複合前駆体洗浄ゲルが得られた。
上記したATO複合前駆体洗浄ゲルを濃度5質量%となるように純水に懸濁したところpHは8.1であった。さらに、アンモニア水溶液(濃度1.0質量%)を用いてpHを8.4に調整し、オートクレーブに仕込んで200℃で16時間処理して、ATO粒子分散液を得た。
そして、このATO粉末の粉体抵抗を測定したところ1×103Ω/μmであり、後述する比較例1におけるATO粉末よりもはるかに低い値を示した。それ故、本発明のATO粉末は例えば導電性塗膜などの電気化学的デバイスなどの素材として好適に用いることができる。
〔ATO複合粒子の製造〕
従来公知の方法でATO粉末を製造した。具体的には以下の通りである。
スズ酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合液を調製した。
この調製した混合液を、純水1000gに硝酸アンモニウム1.0gとアンモニア水溶液(濃度15質量%)12gを溶解してなる水溶液に、12時間かけて撹拌しながら添加して加水分解を行った(液温度は60℃に保った)。
このとき硝酸溶液(濃度10質量%)を、前記水溶液のpHを9.0に保つよう同時に添加した。
上記したATO粒子分散液を80℃で乾燥した後、400℃で焼結してATO粉末(ATO複合粒子)を得た。このATO粉末を、電子顕微鏡を用いて観察したところ、一次粒子径が10nm~50nmであった(平均粒子径20nm)。一次粒子の形状は球状に近く、互いに直線的に連結した集合構造はとっていなかった。また、このATO粉末の粉体抵抗を測定したところ1×104Ω/μmであった。
Claims (6)
- アンチモンとスズを含む複合金属酸化物粒子連結体であって、前記複合金属酸化物粒子は多面体構造を有し、前記多面体構造が線状に連結してなる複合金属酸化物粒子連結体を製造する方法であって、
下記(A)、(B)および(C)に示す各工程を備え、
前記(A)工程で得られた溶液Aの酸化還元電位EA、前記(B)工程で得られた溶液の酸化還元電位EB、および前記(C)工程における混合液Cの酸化還元電位ECが下記式(1)または下記式(2)の関係を維持する、複合金属酸化物粒子連結体の前駆体溶液の製造方法で得られた前駆体溶液(混合液C)を用い、
下記(M)、(N)、(O)、(P)、および(Q)に示す各工程を備える
ことを特徴とする複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。
EA≦EC≦EB (1)
EB≦EC≦EA (2)
(A)アンチモンを含む溶液を調製する工程
(B)スズを含む溶液を調製する工程
(C)(A)工程で得られた溶液Aと、前記(B)工程で得られた溶液Bとを混合して混合液Cを調製する混合工程
(M)前記混合液CのpHを調整して前記前駆体溶液中に前駆体ゲルを生成させる工程
(N)前記前駆体ゲルを水で洗浄し、洗浄ゲルを得る工程(ただし、洗浄ゲルを5質量%の濃度になるように水に懸濁したときの懸濁液の伝導度は1~2mS/cmである。)
(O)前記洗浄ゲルを水に懸濁して100℃以上の温度で熟成する工程
(P)工程(O)により得られた連結体前駆体分散液を噴霧して乾燥する工程
(Q)工程(P)により得られた粒子を250℃以上で焼結する工程 - 前記複合金属酸化物粒子連結体が分岐構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。 - 前記複合金属酸化物粒子連結体の最大長さが10nm~100μmの範囲にある
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。 - 前記多面体構造が4面体構造~8面体構造からなる群から選択される少なくとも1つの構造である
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。 - 前記多面体構造が6面体構造である
ことを特徴とする請求項4に記載の複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。 - 前記多面体構造の一辺の長さが10nm~1000nmの範囲にある
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の複合金属酸化物粒子連結体の製造方法。
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