JP5363203B2 - 包装用プラスチックケース - Google Patents
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このようなケースは、同図(B)に示されるように、筒状にしたシートSを正面部Aと側面部Cの間の罫線1と、背面部Bと側面部Dの間の罫線3で折り曲げて、偏平な二つ折り状のまま多数積み重ねて保管や運搬に供され、同図(C)に示されるように、物品を包装する際に二つ折り状のシートSを開いて立体化し、箱形に組み立てられるが、組み立てを手作業で行う場合と自動製函機により行う場合の何れでも、シートSの保管状態によっては前記立体化する操作に支障が生じることがあった。
すなわち、二つ折り状のシートSを多数重ねて保管した場合に、下層のシートSはその上方のシートS群の重みを受けて、図9(A)に示されるように、正面部A及び側面部Cと背面部B及び側面部Dが平行にぴったりと密着して略完全な二つ折り状態となり、重なった各面部間に隙間が無く、或いは極めて狭くなって、上下に重なった各面部間を拡開するのに手間を要する。とりわけシートSの剛性が小さく、罫線1,3が硬い場合は開口させ難く、その場合に二つ折り状態のシートSの両側端に内向きの力を加えると、同図(B)に示されるように、中央寄りの罫線2,4でシート全体が「く」の字形に反って折れ曲がり、自動製函機による組み立てが困難になることがあった。
また、シートSを二つ折りにした状態で中央寄りに位置する罫線4に曲げ癖を予め付与しておき、保管場所からシートSを取り出した際に前記曲げ癖による弾圧付勢力によって、折れ重なった各面部間が密着することなく、上下の面部間に適宜な幅の間隙が形成されるように設けた構成のケースが知られている(例えば特許文献2参照)。
しかし、折り曲げ罫線の破断強度を異ならせるものは、シートSを二つ折りにした状態で反り方向の反発力が有効に作用するように、罫線を構成する溝の幅や深さ、形状を各罫線で変えるなどして破断強度を精密に調整する必要があり、また、折り癖によるものはシートSの形成工程で折り癖を付与する工程が必要となり、ともにケースの加工コストが高くならざるを得ない。
正面部と背面部と左右側面部と糊代面部との各面部が四本の折り曲げ罫線を挟んで連設された形状を有するプラスチックシートが、前記糊代面部を側面に接着して筒状に形成された状態で前記罫線のうちの二本の罫線で二つ折り状に折り曲げられ、この状態から物品を包装する際に、前記二つ折り状のシートを立体化して六面体に組み立てられる包装用プラスチックケースにおいて、
前記四本の折り曲げ罫線うち、正面部と一側の側面部間の折り曲げ罫線を当該罫線の上下端部を結んだ線分から左右何れかの側へ全体がずれて湾曲した形状に設けるとともに、背面部と他側の側面部間の折り曲げ罫線を前記罫線と平行な形状に設け、
且つ前面部と他側の側面部の間の折り曲げ罫線と、背面部と糊代面部の間の折り曲げ罫線をそれぞれの罫線の上下端部を結んだ線分に沿った直線形状に設け、
前記筒状に形成されたシートが前記線分からずれた両罫線に沿って二つ折り状に折り曲げられるように設けられた構成を有することを特徴とする。
また、本発明の包装用プラスチックケースは、前記線分から左右何れかの側へ全体がずれて湾曲した形状に設けられた折り曲げ罫線に代えて、この折り曲げ罫線を、当該罫線の上下端部を結んだ線分に対して上半部が線分の右側、下半部が線分の左側に湾曲した略S字形の曲線形状に設けた構成を有することを特徴とする。
なお、前記「罫線の上下端部を結んだ線分」とは、当該罫線の上端と下端を通る一本の直線を想定したときの、罫線の上下端部間の仮想的な線分をいう。本発明ではシートを二つ折りする際に折り曲げる罫線を、罫線の上下端部間で湾曲するように設けるなどして、前記線分上から外れた部分を有するように設けてある。
また、「ケースの正面、背面及び左右側面」とは、六面体のケースの上下蓋面を除く四側面の何れかの面を「正面」、これと対向する面を「背面」、その間の面を「左右側面」とするものであり、ケースを展示する際に正面側に向く面が必ずしも「ケースの正面」となるのではない。
従って、筒状に設けたシートを前記両罫線で折り曲げて二つ折り状にすると、両罫線の両側の面部が互いに捻れ、つまり罫線を挟んで正面部と一側の側面部が捻れ、同じく罫線を挟んで背面部と他側の側面部が捻れて、両罫線の両側の面部に罫線を軸として互いに拡開する方向へ応力がそれぞれ作用し、二つ折りにしたシートの上下の面部がぴったりと重ならず隙間が生じ、シートの中央部分では上下の面部間に大きな間隙が形成される。そして、ケースを組み立てる際に二つ折り状シートの両側端に内向きに力を加えれば、上下の面部間に間隙が確保されているため、重なったシートがスムーズに開き、容易に立体化して箱形のケースを組み立てることができる。
また、ケース組み立て前に二つ折りにしたシートを多数積み重ねて保管するなどして、積み重なったシート群の下層のシートが鉛直下向きの荷重により偏平になっていたとしても、保管場所からシートを取り出せば、前記罫線両側の面部が互いに捻れていることにより罫線の軸廻りに作用する応力によって偏平なシートは元の形状に復元し、上下の面部間に適宜な幅の隙間が形成されるため、シートの両側端に内向きの圧力を加えてもシートが「く」の字形に反って折れ曲がるようなことはなく、シートをスムーズに立体化させることが可能である。
線分の一側へ湾曲した部分を有する形状としては、線分の左右どちらか一方に、当該線分に対して罫線がなだらかな山形に張り出した形状や略V字形に屈曲した形状、或いは台形状に屈曲した形状などが挙げられる。また、線分の両側へ湾曲した部分を有する形状としては、罫線が線分を中心にして左右にS字形に湾曲して張り出した形状や、線分の左右に交互に連続して波形に張り出した形状などが挙げられる。二つ折りしたシートに荷重がかかっても罫線の両側の面部が捻れることによる応力が作用するように、罫線は曲線により構成することが好ましい。
なお、前記両罫線の間に位置する、正面部と他側の側面部間及び背面部と一側の側面部間の罫線は、それぞれ罫線の上下端部を結んだ線分に沿った直線形状に設けることができる。
シートの肉厚は、0.1〜0.8mmに設定することができる。0.1mmより薄いと面部の折れ曲がりや破損を来しやすくなり、0.8mmよりも厚いと折り曲げ加工に要する圧力は大となる。耐折性や剛性などを考慮すると、0.2〜0.6mmに設定することが好ましい。
また、罫線の上下端部を結んだ線分に対し、罫線をどれ程ずらして形成するか、或いはどれ程の湾曲度合いとするかも、シートの材質、剛性、厚みなどに応じて適宜に設定可能である。A−PET製の肉厚0.1〜0.8mmシートの場合、前記線分からのずれ幅の大きさ又は湾曲度合いを、罫線の長さ100mmに対して0.1〜2.0mmの範囲に設定することが好ましい。
本発明のケースは、シートを折り曲げて正面、背面、左右側面及び上下蓋面の各面部からなる六面体に組み立てられるケースであり、図1は第一実施形態のケースを展開したシートの構成を示している。
そして、同図に示されるように、正面部A、背面部B、左右側面部C,D及び糊代面部Gの各面部間に付設された罫線のうち、正面部Aと側面部Cの間の罫線1と背面部Bと側面部Dの間の罫線3を、直線的に設けずに、それぞれの罫線の上下端部を結ぶ線分Xからずれた部分を有する曲線形状に設け、一方、正面部Aと側面部Dの間の罫線2と背面部Bと糊代面部Gの間の罫線4は、上下蓋面E,Fと差込み面部Hとの間の罫線5,6,7と直交する直線形状に設けてある。
二つ折りにしたシートSは、罫線1と罫線3がともに湾曲した曲面形状に設けてあるので、罫線1の両側で正面部Aと側面部Cが互いに捻れ、罫線3の両側で背面部Bと側面部Dが互いに捻れて、それぞれの罫線1,3を軸として上下の面部を拡開する方向へ応力が作用して上下の面部間に隙間が生じ、シートSの中央部分では上下の面部の間に大きな間隙が確保されることとなり、ケースを組み立てる際に二つ折り状になったシートSの両側端に内向きに力を加えれば、シートSがスムーズに開いて立体化し、箱形のケースに組み立てることが可能である。
二つ折りにしたシートSを多数積み重ねて保管するなどして、積み重なったシートS群の重みにより下層のシートSが偏平になっていたとしても、保管場所からシートを取り出せば、シートSを二つ折りにした状態で罫線1,3の両側の面部が互いに捻れていることにより罫線1,3の軸廻りに作用する応力によって偏平なシートSは元の形状に復元して上下の面部間に適宜な幅の隙間が形成され、シートSをスムーズに立体化させることが可能である。
この場合の罫線1,3の連続する波形は、同図(B)に示されるように、線分Xに沿って一定の間隔でその左右両側に略同じ幅だけ張り出すように設定することが好ましい。例えばシートSの肉厚が0.1〜0.8mm程度であれば、左右に張り出す一つの波の長さRa、Rbを2.0mm以上、一周期の波の長さRcを4.0mm以上、波の頂部の円弧の半径Rgを2.0mm以上、線分Xからの左右の波のずれ幅Rd、Reを0.1〜1.0mm程度の範囲、左右の波の頂部間の間隔Rfを0.2〜2.0mm程度の範囲に設定することが好ましい。
(実施例1)
図1に示された第一実施形態のケースを作製してケースの性能を評価した。
厚さ0.3mmのA−PETを用い、ケース寸法(W・D・L)が30mm×30mm×100mmで、罫線1,3の線分Xに対する最大ずれ幅(図1中のw)を0.1mmに設定したシートSを10枚形成した。各々のシートSを筒状に加工して10個のサンプルケースを作製した。シートSは、上記加工寸法の抜き型を作製し、「ムラ取りプレス機」油圧20tプレスによって作製した。
各サンプルケースについて、罫線1,3で二つ折りにした状態で、その上面に3kgの重りを載せて5日間放置し、その後、重りを取り去ったときのシートSの上下の面部間の開口寸法(開口高さ)をスケールルーペにて測定した。併せて、後述する開口性官能評価、外観官能評価、総合評価を行った。なお、開口寸法は、下側に位置する面部と直交する方向に沿って、上下の面部間の隙間が最大となる点を測定した(図2中の正面部A内の垂線Max参照)。
また、ケース寸法が60mm×30mm×100mmのケースについても、前記と同様に作製し、同様な測定及び評価を行った。
その結果を表1に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが3.0mm、60mm×30mm×100mmのケースが5.0mmであった。
罫線1,3の線分Xに対する最大ずれ幅を0.2mmに設定した以外は、実施例1と同じ条件で10個のサンプルケースを作製し、実施例1と同様にケースの性能を評価した。
その結果を表2に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが3.4mm、60mm×30mm×100mmのケースが5.3mmであった。
罫線1,3の線分Xに対する最大ずれ幅を0.3mmに設定した以外は、実施例1と同じ条件で10個のサンプルケースを作製し、実施例1と同様にケースの性能を評価した。
その結果を表3に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが3.9mm、60mm×30mm×100mmのケースが6.6mmであった。
罫線1,3の線分Xに対する最大ずれ幅を0.5mmに設定した以外は、実施例1と同じ条件で10個のサンプルケースを作製し、実施例1と同様にケースの性能を評価した。
その結果を表4に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが4.1mm、60mm×30mm×100mmのケースが6.6mmであった。
図3に示された第二実施形態のケースを作製してケースの性能を評価した。
厚さ0.3mmのA−PETを用い、ケース寸法が30mm×30mm×100mmで、罫線1,3の線分Xに対する最大ずれ幅を0.3mmに設定したシートSを、実施例1と同様の油圧プレスによって10枚形成し、各々のシートSを筒状に加工して10個のサンプルケースを作製した。
また、ケース寸法が60mm×30mm×100mmのケースについても、前記と同様にして、10個のサンプルケースを作製した。
各サンプルケースについて、罫線1,3で二つ折り状にした状態で、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
その結果を表5に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが4.3mm、60mm×30mm×100mmのケースが6.7mmであった。
図4に示された第三実施形態のケースを作製してケースの性能を評価した。
作製したケースの寸法、シートSの成形条件、ケースの測定条件及び評価内容は実施例5と同様である。
その結果を表6に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが3.1mm、60mm×30mm×100mmのケースが4.7mmであった。
図5に示された第三実施形態のケースを作製してケースの性能を評価した。
作製したケースの寸法、シートSの成形条件、ケースの測定条件及び評価内容は実施例5と同様である。
その結果を表7に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが3.8mm、60mm×30mm×100mmのケースが5.2mmであった。
厚さ0.3mmのA−PET製のシートSを用い、図8に示されたケースを作製した。
作製したケースは、寸法が30mm×30mm×100mmと、60mm×30mm×100mmの二種類で、それぞれシートSを10枚形成し、各シートSを筒状に加工して10個のサンプルケースをそれぞれ作製した。
各サンプルケースについて、罫線1,3で二つ折りにした状態で、前記各実施例と同様に、上面に3kgの重りを載せて5日間放置し、その後、重りを取り去ったときのシートSの上下の面部間の開口寸法をスケールルーペにて測定した。
その結果を表8に示す。なお、測定された10個のサンプルケースの開口寸法の平均は、30mm×30mm×100mmのケースが2.8mm、60mm×30mm×100mmのケースが4.7mmであった。
(1)開口性官能評価
比較例1の同寸法のケースと比べて、開口寸法が広いものには○、同程度のものには△、狭いものには×をそれぞれ表記した。
(2)外観官能評価
二つ折りのシートSをケースに組み立てた状態で、両罫線1,3廻りでケースの歪みが確認できないものには○、歪みがやや目立つものには△、歪みが明らかに目立つものには×をそれぞれ表記した。
(3)総合評価
ケースに組み立てた状態で、ケースの外観から製品として出荷可能と判断できるものには○、出荷可能か判断が分かれると考えられるものには△、明らかに出荷困難と判断できるものには×をそれぞれ表記した。
従って、シートSをケースに組み立てる際に、二つ折りにしたシートSを確実且つ容易に開いて立体化することができ、本発明のケースは起函作業性を良好に改善し、自動製函機でのケースの組み立てにおける効率向上に寄与するものである。
Claims (2)
- 正面部(A)、背面部(B)、左右側面部(C,D)及び上下蓋面(E、F)の各面部を有する箱形のケースであって、
正面部(A)と背面部(B)と左右側面部(C,D)と糊代面部(G)との各面部が四本の折り曲げ罫線(1,2,3,4)を挟んで連設された形状を有するプラスチックシート(S)が、前記糊代面部(G)を側面に接着して筒状に形成された状態で前記罫線のうちの二本の罫線で二つ折り状に折り曲げられ、この状態から物品を包装する際に、前記二つ折り状のシートを立体化して六面体に組み立てられる包装用プラスチックケースにおいて、
前記四本の折り曲げ罫線(1,2,3,4)うち、正面部(A)と一側の側面部(C)間の折り曲げ罫線(1)を当該罫線の上下端部を結んだ線分(X)から左右何れかの側へ全体がずれて湾曲した形状に設けるとともに、背面部(B)と他側の側面部(D)間の折り曲げ罫線(3)を前記罫線(1)と平行な形状に設け、
且つ前面部(A)と他側の側面部(D)の間の折り曲げ罫線(2)と背面部(B)と糊代面部(G)の間の折り曲げ罫線(4)をそれぞれの罫線(2,4)の上下端部を結んだ線分に沿った直線形状に設け、
前記筒状に形成されたシート(S)が前記罫線(1)と罫線(3)に沿って二つ折り状に折り曲げられるように設けられた構成を有することを特徴とする包装用プラスチックケース。 - 請求項1に記載の包装用プラスチックケースにおいて、線分(X)から左右何れかの側へ全体がずれて湾曲した形状に設けられた折り曲げ罫線(1)に代えて、折り曲げ罫線(1)を、当該罫線の上下端部を結んだ線分(X)に対して上半部が線分(X)の右側、下半部が線分(X)の左側に湾曲した略S字形の曲線形状に設けた構成を有することを特徴とする包装用プラスチックケース。
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