JP5362231B2 - 透明導電膜の製造方法 - Google Patents
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透明導電膜、6ページより(シーエムシー出版)
図1〜3は、本発明に係る透明導電膜の断面説明図である。この透明導電膜は厚さ0.05〜1mmの透明基板1上に、酸化亜鉛を主成分とする透明導電酸化物層2が設けられる。カーボン膜3は透明導電酸化物層2の片面(図1または2)または両面(図3)に被覆される。
気相堆積法で透明導電酸化物層2を形成する場合、透明基板の温度は、生産性の観点から20℃〜120℃が好ましく、さらに好ましくは20℃〜80℃程度が好ましい。製膜時の基板温度を低く設定することで、製膜前の基板の温度上昇を待つ時間を短縮することができ、連続運転による大量生産が可能となる。特にフィルム基板上にロールトゥロール方式で製膜する場合、基板が常時動き続けるので基板の温度上昇が困難であることからも、基板温度は低めに設定することが好ましい。
透明導電酸化物層2の形成には必要に応じてプラズマ放電を利用することができる。電力の供給方式はDC方式や高周波方式など任意の方式を利用できる。電力密度については特に制限はないが、生産性や結晶性の観点から0.1W/cm2〜5W/cm2が好ましい。低すぎる場合には製膜されない可能性がある。高すぎる場合には透明基板へのダメージや装置へのダメージが懸念される。透明導電酸化物層の形成に使用するキャリアガスは一般的な気相堆積法に使用されるガスを使用することができる。例えばアルゴンや水素、酸素や窒素ガスを使用することができる。
透明導電酸化物層2の膜厚は、使用されるアイテムによって異なるが、100〜5000Åが好ましい。さらに、膜の強度や透明性の観点から200〜2000Åが特に好ましい。膜厚が薄い場合は、表面抵抗が高くなりすぎることと膜の強度が弱いために好ましくない。逆に膜厚が厚い場合は、光線透過率が低くなりやすいことや、フィルムなどのフレキシブル基板では応力による膜はがれの原因となりやすいために好ましくない。
J.Krc et al.,Progress in Photovoltaics 11(2003)15. カーボン膜3の屈折率は400nm〜800nmの可視光領域において1.35〜1.85の間で制御可能であることが本発明の最も重要な技術となる。特に1.40〜1.80の範囲で制御可能であることが重要となる。屈折率は単波長または分光エリプソメーターによって容易に且つ精度良く測定可能である。上記のように二酸化炭素と水素の混合比を調整すること、また電源方式をDC方式とRF方式と選択することで、幅広い屈折率の制御が可能であることを見出した。屈折率が1.35より小さいカーボン膜では、一般的にカーボン膜が有機化合物または高分子化合物となり導電性を示さないので、透明導電膜としては使用できない。また、1.85より大きな屈折率では、通常屈折率が1.90以上である透明導電酸化物と同等以上の屈折率になるために、反射防止効果が期待できない。透明導電膜の表面抵抗は、JISK7194に記載されている四探針圧接測定で測定した。表面抵抗の値は、使用するアイテムに必要とされる特性により異なるが、5〜2000Ω/□が好ましい。 これ以上大きい表面抵抗では、透明導電酸化物層の膜厚が薄過ぎ、透明導電膜の表面抵抗が安定にならず、特に高温高湿環境下に放置すると表面抵抗が容易に上昇する。逆にこれ以上小さい表面抵抗では、透明導電酸化物層の膜厚が大きくなり、その応力により透明導電酸化物層が割れやすくなることや、また透過率の低下やコスト面での課題が発生する。550nmの波長での光線透過率は、JISK7105に記載されている積分球式光線透過率測定装置を用いて測定した。 具体的な測定装置について説明する。屈折率は分光エリプソメーターVASE(ジェイ.エー.ウーラム社製)の測定結果をフィッティングすることで得た。表面抵抗測定は低抵抗率計ロレスタGP(MCP−T610)(三菱化学社製)を使用した。光線透過率測定は分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を使用した。
無アルカリガラス(商品名OA−10、膜厚700μm、日本電気硝子社製)に、酸化亜鉛をスパッタ製膜した。製膜条件は、基板温度を30℃、キャリアガスとしてアルゴンを20sccm使用し、8Paの圧力で電力密度2.5W/cm2のDCパワーをかけ、5分間製膜することで、500Åの酸化亜鉛透明導電酸化物層を作製した。さらにその上にカーボン膜をスパッタ製膜した。製膜条件は、基板温度を30℃、カーボンターゲットを用い、キャリアガスとして、二酸化炭素2.0sccmと水素8.0sccmを使用し、8Paの圧力で電力密度0.15W/cm2のRFパワーをかけ、60分間製膜することで、500Åのカーボン膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.45であった。
(実施例2)
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素1.0sccm、水素9.0sccmにした以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.57であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は350Ω/□であり、550nmの波長での光線透過率は92%であった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素4.0sccm、水素6.0sccmとした以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.75であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は450Ω/□であり、550nmでの光線透過率は90%だった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素5.0sccm、水素5.0sccmとした以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.85であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は450Ω/□であり、550nmでの光線透過率は89%だった。
透明基板をシクロオレフィンポリマー(商品名アートン、膜厚100μm、JSR社製)に変更した以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.45であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は350Ω/□であり、550nmの波長での光線透過率は90%であった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素0.5sccm、水素9.5sccmにした以外は実施例5と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.80であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は350Ω/□であり、550nmの波長での光線透過率は88%であった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素1.0sccm、水素9.0sccmとした以外は実施例5と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.57であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は350Ω/□であり、550nmの波長での光線透過率は88%であった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素4.0sccm、水素6.0sccmとした以外は実施例5と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.75であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は450Ω/□であり、550nmでの光線透過率は86%だった。
実施例1のカーボン膜を基板上にも製膜した以外は実施例3と同様に透明導電膜を作製した。この透明導電酸化物層の両面のカーボン膜の屈折率はともに1.45であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は350Ω/□であり、550nmの波長での光線透過率は96%であった。
カーボン膜のスパッタ条件のうち、ガスの流量を二酸化炭素5.5sccm、水素4.5sccmとした以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製した。このカーボン膜の屈折率は1.88であった。このようにして作製した透明導電膜の表面抵抗は380Ω/□であり、550nmでの光線透過率は89%だった。
透明導電酸化物層をインジウム・錫複合酸化物(ITO)(10%酸化錫ドープ)とした以外は実施例1と同様に透明導電膜を作製したところ、水素プラズマによりインジウムが還元されて、透明導電膜が黒化した。
2 透明導電酸化物層
3 カーボン膜
Claims (4)
- 透明基板上に酸化亜鉛を主成分とする透明導電酸化物層の表面に屈折率が1.35〜1.85の範囲の値を有するカーボン膜を有する透明導電膜の製造方法において、
該カーボン膜がカーボンをターゲットとし、高周波電源を用いたマグネトロンスパッタ法により形成され、且つキャリアガスとして、水素中に二酸化炭素を0体積%より多く、50体積%以下添加することを特徴とする透明導電膜の製造方法。 - 透明導電酸化物層の両面に前記カーボン膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
- 上記キャリアガスとして、水素中に二酸化炭素を5体積%以上、50体積%以下添加する請求項1又は2に記載の透明導電膜の製造方法。
- 上記マグネトロンスパッタ法において、電源方式をRF方式とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜の製造方法。
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