JP5361563B2 - 旋盤 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の回転工具を備える旋盤に関するものである。
一般的な旋盤の刃物装置には、ワークを回転させた状態で、工具をワークに送ることでワークの外径を加工する機能と、ワークを固定させた状態で、工具を回転させながらワークに送ることでワークの任意の部分を切削する機能とを有する。また、旋盤には、長手方向に対して略垂直方向に配置された刃物台の上に、固定された外径工具と、モータによって回転駆動する回転工具と、を櫛状に備えるものが広く用いられている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、主軸に取り付けられたワークを挟んで両側に、複数の回転工具及び外径工具等を櫛状に備える櫛歯刃物装置が開示されている。
特許文献1及び特許文献2に開示された旋盤の回転工具装置について、図13及び図14を参照して説明する。
回転工具装置65は、複数の回転工具610,620,630、及びこれらを駆動するモータ56を備える。
複数の回転工具610,620,630の回転工具駆動軸611,621,631のモータ56側端部のそれぞれには、歯車617,627,637が一体的に固定されている。詳細には、歯車押え618,628,638及び固定ボルト619,629,639によって、歯車617,627,637は一体的に固定され、歯車617は歯車627に噛合し、歯車627は歯車637に噛合するようにギヤケース55内に配設されている。
これらの回転工具610,620,630を動作させるものとして、図14に示すように、モータ56及び中間回転軸640が備えられている。
モータ56の駆動軸540の端部には、歯車547がナット549によって固定されている。中間回転軸640は、軸受64a,64bを介して回転可能にギヤケース55に配設されている。中間回転軸640の端部には、歯車押え648及び固定ボルト649によって一体的に歯車647が固定されている。歯車647は歯車547と歯車617とに噛合する。
回転工具610,620,630は、このような構成によって、モータ56が動作すると、駆動軸540を介して歯車547が回転し、歯車547が回転すると、これに噛合する中間回転軸640の歯車647が回転し、歯車647が回転すると、これに噛合する回転工具駆動軸611の歯車617が回転する。更に、歯車617が回転すると、歯車627、歯車637が回転し、回転工具610,620,630が回転する。つまり、全ての歯車は回転し、全ての回転工具駆動軸611,621,631が回転することとなる。
切削作業において、作業者は、モータ56が動作し、回転工具610,620,630が回転している状態で、Y方向モータ(図示せず)を動作させ、回転工具装置65を図中のY方向に移動させる。所望の回転工具がワークWの水平面上に位置するときに、X方向モータ(図示せず)を動作させ、回転工具装置65を図中のX方向に移動させ、ワークWを切削する。
特開平8−39303号公報 特開2005−88142号公報
前記のような構造のため、モータの運転時において歯車間の接触や摩擦により回転トルクのロスが生じ、回転工具に伝わる動力が小さくなり、結果として、回転工具の回転スピードが遅くなってしまっていた。
また、回転工具の本数を増やすごとに、回転工具1本当たりの動力が小さくなるため、装置に搭載できる回転工具の本数、又は同時に使用可能な回転工具の本数に限度があった。このため加工時間が長くなり、生産性が悪かった。
更に、未作業状態の回転工具も、歯車列に接続されているのでモータの動作に応じて回転する。このため、複数の回転工具のそれぞれを回転可能に支持する軸受は、回転時間が長くなることによって、実加工での寿命が短かった。
更には、複数の歯車間の接触や摩擦によって騒音が発生していた。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、旋盤の生産性を向上させ、長寿命にするとともに、作業時の騒音の発生を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る旋盤は、
工具支持部に並列して櫛状に配置され、且つ、回転可能に支持された複数の回転工具と、
第1のモータと、
前記第1のモータの駆動軸の端部に係合する位置に、前記回転工具の任意の1つを前記工具支持部から割り出す割出部と、を備える旋盤であって、
前記第1のモータは、前記割出部によって割り出された前記回転工具の1つを回転駆動し、
前記割出部は、第2のモータを備え、該第2のモータを動作させることで、前記回転工具の端部と前記第1のモータの前記駆動軸の端部とを結ぶ直線上に、前記工具支持部をスライドさせ、前記回転工具の任意の1つを前記第1のモータの前記駆動軸の端部に係合させ、
前記旋盤は、前記第1のモータの前記工具支持部に対向する面に、前記工具支持部に向かう方向に摺動可能に設けられた摺動部材と、前記工具支持部の前記第1のモータに対向する面に、前記摺動部材の摺動位置に応じて嵌合又は離間する複数の嵌合部材と、を更に備え、
前記複数の嵌合部材の夫々は、前記第1のモータの前記駆動軸の端部と前記複数の回転工具の端部の夫々とが係合する位置で、前記摺動部材に対向するように配設され、
前記摺動部材と、前記嵌合部材とが嵌合することによって、前記第1のモータの前記駆動軸と前記回転工具の軸とが接続された状態で一体的に移動可能となり、
前記摺動部材と、前記嵌合部材とが離間することによって、前記第1のモータの前記駆動軸に相対的に前記回転工具がスライドする、ことを特徴とする
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る旋盤は、
工具支持部に並列して櫛状に配置され、且つ、回転可能に支持された複数の回転工具と、
第1のモータと、
前記第1のモータの駆動軸の端部に係合する位置に、前記回転工具の任意の1つを前記工具支持部から割り出す割出部と、を備える旋盤であって、
前記第1のモータは、前記割出部によって割り出された前記回転工具の1つを回転駆動し、
前記割出部は、第2のモータを備え、該第2のモータを動作させることで、前記回転工具の端部と前記第1のモータの前記駆動軸の端部とを結ぶ直線上に、前記工具支持部をスライドさせ、前記回転工具の任意の1つを前記第1のモータの前記駆動軸の端部に係合させ、
前記旋盤は、前記工具支持部の前記第1のモータに対向する面に、前記第1のモータに向かう方向に摺動可能に設けられた摺動部材と、前記第1のモータの前記工具支持部に対向する面に、前記摺動部材の摺動位置に応じて嵌合又は離間する複数の嵌合部材と、を更に備え、
前記複数の嵌合部材の夫々は、前記第1のモータの前記駆動軸の端部と前記複数の回転工具の端部の夫々とが係合する位置で、前記摺動部材に対向するように配設され、
前記摺動部材と、前記嵌合部材とが嵌合することによって、前記第1のモータの前記駆動軸と前記回転工具の軸とが接続された状態で一体的に移動可能となり、
前記摺動部材と、前記嵌合部材とが離間することによって、前記第1のモータの前記駆動軸に相対的に前記回転工具がスライドする、ことを特徴とする
また、前記嵌合部材に向かう方向に開放された開孔を備えるシリンダと、
前記シリンダ内に圧縮流体を送り込む流体圧縮装置と、
を更に備え、
前記摺動部材は、一部を前記シリンダ内に配設され、他部を前記シリンダ内の前記開孔から突出して配設され、前記流体圧縮装置から送り込まれる前記圧縮流体によって摺動可能であり、摺動位置に応じて前記嵌合部材に嵌合又は離間するようにしてもよい。
また、前記割出部は、前記工具支持部に対向する方向に溝を有し、
複数の前記回転工具は、前記溝によって前記第1のモータの前記駆動軸の端部を通る直線上にガイドされるようにしてもよい。
前記第1のモータは、ビルトインモータであることが好ましい。
本発明によれば、旋盤の生産性を向上させ、長寿命にするとともに、作業時の騒音の発生を抑制することができる。
第1の実施形態に係る旋盤の上面を示す(一部を断面で示す)模式図である。 旋盤の正面図である。 旋盤の側面を示す図2におけるL−L断面矢視図である。 第1の実施形態に係る回転工具装置の水平断面図である。 回転工具装置の鉛直断面図である。 (a)は、ガイドを示す図5のM−M断面矢視図である。(b)は、ガイドと回転工具との摺動部の水平断面図である。 第1の実施形態に係る回転工具装置の鉛直断面図である。 第2の実施形態に係る回転工具装置の水平断面図である。 (a)は、ピストンと凹部材との嵌合部を示す図8のN−N断面矢視図である。(b)は、図8のM−M断面矢視図である。 (a)は、ビルトインモータとY軸スライド台との離間状態を示す上面断面図であり、(b)は、ビルトインモータとY軸スライド台との連結状態を示す上面断面図である。 第2の実施形態に係る回転工具装置の鉛直断面図である。 Y方向に移動可能に構成された回転工具の加工状態を説明する模式的な正面図である。 従来の回転工具装置の構造を部分的に断面で示す正面図である。 従来の回転工具装置の構造を部分的に断面で示す上面図である。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る旋盤の全体構成を図1乃至図3を参照して説明する。旋盤は、ベッド10と、ワークWに切削回転運動を与える主軸21と、種々の工具を備える工具台80と、から主に構成される。
ベッド10には、図3に示すように、軸受13,14を備える支持部11,12が立設している。支持部11,12に備えられた軸受13,14に、ボールねじ15が回転可能に支持されている。ナット16はボールねじ15にZ方向に摺動可能に支持されている。このナット16の上面に移動台20が一体的に固定されている。更に、ボールねじ15を回転駆動するZ方向モータ17が、支持部11の側面に固定されている。移動台20のX軸方向における両端の下面に、スライダ19a,19bがZ方向に2個ずつ固定されている。更に、支持部11,12のX方向両端の上面にZ方向を長手方向として、レール18a,18bが担持されている。スライダ19a,19bは、レール18a,18bにZ方向に摺動可能に支持されている。
また、移動台20上に、主軸台モータ22が載置されている。主軸21は、Z方向に平行に向くように主軸台モータ22に組み込まれ、回転駆動される。
Z方向モータ17を動作させることにより、ボールねじ15が回転し、移動台20が、ナット16を介して、後述する工具台80に近接/離間する方向(図中Z方向)に移動する。即ち、Z方向モータ17、ボールねじ15、ナット16及び移動台20は、ワークWをZ方向に移動させる主軸移動手段を構成する。
更に、支持フレーム30が、ワークWに対向してベッド10上に立設されている。更に、工具台80が、X軸スライド台50を介してX軸方向に往復動可能に支持フレーム30に支持されている。
支持フレーム30のワークWに対向する中央部に、フランジ30aが固定されており、フランジ30aの内面に、ワークWを支持するガイドブッシュ30bが取付けられている。
主軸21の位置(図2で示されるガイドブッシュ30bの位置)よりも図2に示される−X側の支持フレーム30には、後述するX軸スライド台50をガイドするガイドレール40a,40bが、X軸方向に延出し、+Z方向に突出して、上下に1本ずつ形成されている。更に主軸21の位置よりも+X側にも同様に、ガイドレール40c,40dが、X軸方向に延出し、+Z方向に突出して、上下に1本ずつ形成されている。
支持フレーム30には、後述するX軸スライド台50をスライド動作させるためのボールねじ43、軸受41及びナット47を備える。ボールねじ43は、軸受41に回転可能に支持され、長手方向をX軸方向に平行に支持フレーム30に配設されている。ナット47はボールねじ43にX方向に摺動可能に支持されている。このナット47にX軸スライド台50が一体的に固定されている。また、ボールねじ43を回転駆動するX方向モータ45が支持フレーム30の−X側(主軸21の中心に対して左側)端部に固定されている。
X軸スライド台50は、略箱状に形成され、開放側を主軸側に向けて配設されている。更に、X軸スライド台50の中央部には、主軸21との干渉を防ぐための開孔506が形成されている。図2及び図3に示すように、支持フレーム30の上下のガイドレール40a,40b,40c,40dに対向する、X軸スライド台50の面(−Z側の面)には、X軸スライダ50a,50b,50c,50dが、上下に1個ずつ、ガイドブッシュ30bを跨って左右に一組、計4個固定されている。X軸スライダ50a,50b,50c,50dは、ガイドレール40a,40b,40c,40dにX方向に摺動可能に支持されている。図1に示すように、後述するY軸スライド台37に対向するX軸スライド台50の面(+Z側の面)には、Y軸スライド台37をガイドする、開放側をY軸スライド台37に向けた上面視コの字型のガイドレール58が形成されている。ガイドレール58は、Y軸方向に延出し、+Z方向に突出して、Y軸スライド台37の側縁372に対向して2箇所形成されている。
X方向モータ45を動作させると、ボールねじ43が回転し、ナット47を介して、X軸スライド台50が、ガイドブッシュ30bに支持されるワークWに近接/離間する方向(図中X方向)にガイドレール40a,40b,40c,40dに沿って移動する。即ち、X方向モータ45、ボールねじ43、ナット47及びX軸スライド台50は、後述する回転工具610,620,630及び外径工具66を備えるY軸スライド台(割出部)37をX方向に移動させる移動手段を構成する。
図2及び図3に示すように、X軸スライド台50の上部には、回転工具610,620,630及び外径工具66をY方向に摺動可能とする工具台80が固定されている。
工具台80は、筐体状のフレーム36と、フレーム36の上部に固定されたY方向モータ(第2のモータ)35と、ボールねじ33と、Y軸スライド台37とから主に構成される。
フレーム36の内部に、垂直方向で上下に軸受31a,31bが嵌装されている。ボールねじ33は、軸受31a,31bに回転可能に支持され、長手方向をY軸方向に平行にフレーム36に配設されている。ナット34はボールねじ33にY方向に摺動可能に支持されている。このナット34にY軸スライド台37が一体的に固定されている。また、フレーム36の上面に、ボールねじ33を回転駆動するY方向モータ35が固定されている。
Y軸スライド台37は、板状に形成され、図1に示すように、X軸スライド台50に対向する側が開放された上面視コの字型である。更に、Y軸スライド台37の中央部には、主軸21との干渉を防ぐための開孔376が形成されている。コの字型の突出部にあたる側縁372は、X軸スライド台50に形成されたガイドレール58に摺動可能に支持されている。
Y方向モータ35を動作させることにより、ボールねじ33が回転し、ナット34を介して、Y軸スライド台37がY方向に移動する。即ち、Y方向モータ35、ボールねじ33、ナット34及びY軸スライド台37は、後述する回転工具610,620,630及び外径工具66をY方向に移動させる移動手段を構成する。
次に、図4乃至図6を参照して回転工具610,620,630の構成を説明する。Y軸スライド台37の+Z側の面には、回転工具610,620,630を備える回転工具台(工具支持部)64、及びその回転工具台64の下方に外径工具66が固定されている。
回転工具台64には、回転工具駆動軸611,621,631が長手方向をX方向に向けて、Y方向に櫛状に列設されている。回転工具駆動軸611,621,631のそれぞれの両端は、軸受61a,61b、軸受62a,62b、軸受63a,63bを介して回転工具台64に回転可能に支持されている。回転工具駆動軸611,621,631の後述するビルトインモータ(第1のモータ)54に対向する端部612,622,632の夫々は、相互に平行な面が形成されるように外周がカットされ、この相互に平行な面が、所定の二面幅を有するように形成されている。回転工具駆動軸611,621,631の他方の端部に回転工具610,620,630が固定されている。回転工具610,620,630は、ドリル、タップ、フライス等の自身が回転することでワークWを加工する工具である。
また、X軸スライド台50の+Z側の面には、回転工具610,620,630を駆動するビルトインモータ54が延出部543を介して固定されている。
ビルトインモータ54は、ハウジング542と、ハウジング542内に固定された軸受544,545とを備え、軸受544,545に支持された駆動軸540が中央に貫装されている。回転工具駆動軸611,621,631に対向するビルトインモータ54の駆動軸540の端面は、図6(a)に示すように、すりわり状の嵌合溝546が形成されている。また、ビルトインモータ54は、ビルトインモータ54の駆動軸540の延長線上にワークWの加工位置が位置するように、X軸スライド台50に固定されている。
更に、ビルトインモータ54のハウジング542のY軸スライド台37に対向する面にガイド(割出部)59がボルト592によって固定されている。ガイド59は、水平断面において+X方向に開放する凹状の溝590が形成され、ビルトインモータ54の駆動軸540の端面を跨ぐようにY方向に延出して形成されている。ガイド59は、回転工具駆動軸611,621,631の端部612,622,632をビルトインモータ54の駆動軸540の嵌合溝546に導くものである。回転工具駆動軸611,621,631の端部612,622,632の1つが嵌合溝546に嵌合することで、回転工具駆動軸611,621,631の任意の1本がビルトインモータ54によって回転駆動されることとなる。
次に、回転工具装置61の動作について、図7を参照して説明する。図7において、二点鎖線で図示されているものは、Y軸スライド台37のY方向における移動範囲を示す輪郭線である。Y方向モータ35を動作させ、Y軸スライド台37をナット34を介して上下方向に動作させると、ワークWの水平面上に位置する工具が切り替わる。回転工具610,620,630及び外径工具66のうち、所望の工具をワークWの水平面上に位置させて、Y方向モータ35を停止させ、ワークWを加工する工具を確定する。
外径工具66によって、ワークWの外周面を加工するときは、主軸台モータ22を動作させ、主軸21を回転駆動した状態で、Y方向モータ35を動作させ、ワークWの水平面上に外径工具66が位置するようにY軸スライド台37を移動させる。次に、X方向モータ45を動作させ、X軸スライド台50をワークWに向けて移動させる。Y軸スライド台37を介してX軸スライド台50に固定された外径工具66が、ワークWに当接するように近づき、ワークWの外径を加工する。
次に、回転工具610,620,630を用いたワークWの加工について説明する。
まず、回転工具610,620,630を切り替える際は、ビルトインモータ54を動作させ、ビルトインモータ54の回転の位相を制御する。このようにして、駆動軸540の端部に設けられたすりわり状の嵌合溝546が、Y軸に平行になる状態(つまり図6(a)に示す状態)にする。このようにすることで、外周に所定の二面幅の面を有するように形成された回転工具610,620,630の端部612,622,632が、嵌合溝546に入り込み通過可能となる。
次に、Y方向モータ35を動作させ、Y軸スライド台37を移動させ、回転工具610,620,630を切り替える。ここで、図7は、回転工具610,620,630のうち回転工具620を選択した状態を示している。ワークWの水平面上に回転工具620が位置するときに、Y方向モータ35を停止する。このとき、ビルトインモータ54の駆動軸540は、ワークWの水平面上に位置するように配置されているため、回転工具620は、駆動軸540とも同軸上に位置することとなる。駆動軸540の端部に形成された嵌合溝546に回転工具620の端部622が嵌合し、ビルトインモータ54の回転動力が回転工具620に伝わる。次に、主軸台モータ22の回転の位相を制御し、主軸21が所望の回転角度で固定された状態で、X方向モータ45を動作させ、X軸スライド台50をワークWに向けて移動させる。X軸スライド台50が移動することにより、これに固定された工具台80と、工具台80に支持されたY軸スライド台37とを介して、回転工具620が、ワークWに当接させるように近づき、ワークWを直線的に加工する。
上記のように、本実施形態に係る旋盤は、複数の回転工具610,620,630のうち所望の1本のみを回転駆動することができるため、未作業状態の回転工具を回転駆動することがなく、歯車間の接触や摩擦による回転トルク及び回転速度のロスを防ぐことができる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る旋盤は、ワークWのY方向における任意の位置を、回転工具で加工可能とするものである。
図8及び図9に示すように、Y軸スライド台37のビルトインモータ54に対向する側の面に、凹部材(嵌合部材)941,942,943が、Y方向に列を成し、−X方向に突出して設けられている。凹部材941,942,943は、ビルトインモータ54に対向する側の面の中央に凹溝が形成されている。
また、ビルトインモータ54の延出部543のY軸スライド台37に対向する側の面に、略円筒状のシリンダ90が、+X方向に突出して設けられている。シリンダ90の端面には、中心に開孔を有する円板状のシリンダ蓋92が固定されている。ピストン(摺動部材)93は、円柱状の小径部932と小径部932の長手方向中央に形成された円板状の大径部930とからなる。ピストン93の大径部930は、シリンダ90とシリンダ蓋92との間に、摺動可能に位置し、シリンダ蓋92の開孔を介して小径部932の一方が、シリンダ90の外方に突出している。
図9(a)において、回転工具610,620,630及び駆動軸540は、+Z方向に位置するため、本来この断面上に見えないものであるが、他の部材との距離関係を明確にするため、これらをX−Y平面に投影して二点鎖線で示してある。回転工具610が、ビルトインモータ54の駆動軸540と同軸上に位置するときに、凹部材941は、ピストン93に対向するようにY軸スライド台37に固定されている。更に、回転工具610と回転工具620との中心間距離S1と、凹部材941と凹部材942との中心間距離S3が等しく、回転工具620と回転工具630との中心間距離S2と、凹部材942と凹部材943との中心間距離S4が等しくなるように、凹部材942,943は配設されている。
また、シリンダ90の内部は、ピストン93の大径部930によって、凹部材941側の第1室920と、ビルトインモータ54側の第2室922とに区切られている。図9(b)に示すように、第1室920及び第2室922は夫々、第1チューブ910及び第2チューブ912に接続され、バルブ98を介してコンプレッサ(流体圧縮装置)96に接続されている。
また、図8及び図9(b)に示すように、X軸スライド台50のガイドレール58のビルトインモータ54に対向する側面上に、長手方向がY方向に平行に延出してガイドレール72が固定されている。また、ビルトインモータ54の延出部543のガイドレール72に対向する面に、水平断面において+X方向に開放された凹状のガイド70bが、ボルト700によって固定されている。ピストン93と凹部材941,942,943のいずれか1つとが嵌合することによって、ビルトインモータ54とY軸スライド台37とが一体的にY方向に動作しているときであっても、ガイド70bがガイドレール72に支持されることによってX方向及びZ方向への負荷は吸収され、ビルトインモータ54は安定した姿勢に保たれる。
次に、ピストン93と凹部材941との嵌合動作について図10を参照して説明する。コンプレッサ96からバルブ98及び第1チューブ910を介し、第1室920に圧縮空気を送り込むと、ピストン93は、圧縮空気に押圧されることでビルトインモータ54側に移動し、図10(a)に示されるように凹部材941に嵌合していない状態となる。この状態のとき、ビルトインモータ54とY軸スライド37及びY軸スライド37に固定された回転工具台64とは相対的に動作可能となり、ビルトインモータ54の駆動軸540と回転工具610,620,630の1つとの接続が変更可能となる。つまりは、図7に示す動作と同一の動作をすることとなる。
また、図11に示すように、+Z方向に突出するように板状のステー500がX軸スライド台50(図2参照)に固定されている。ステー500には雌ねじがY方向に形成されており、ストッパボルト502が螺合している。更にY方向への突出量をナット504によって調整されており、ストッパボルト502が、ビルトインモータ54のハウジング542の下面に当接する。このように、ビルトインモータ54がストッパボルト502に当接する位置が、図9(a)に示すピストン93と凹部材941,942,943との離間/嵌合動作を切り替える位置を規定する。つまり、凹部材941,942,943とピストン93との離間/嵌合動作は、ビルトインモータ54が安定状態に保たれるハウジング542の下面がストッパボルト502に当接する位置で行われる。
一方、コンプレッサ96からバルブ98及び第2チューブ912を介し、第2室922に圧縮空気を送り込むと、ピストン93は、圧縮空気に押圧されることで凹部材941側に移動し、図10(b)に示されるように凹部材941に嵌合した状態となる。この状態のとき、ビルトインモータ54とY軸スライド台37及びY軸スライド台37に固定された回転工具台64は一体的に動作可能となり、ビルトインモータ54の駆動軸540に回転工具610が接続された状態に維持される。
ここで、図10では、理解を容易にするため、凹部材941について説明したが、他の凹部材942,943についても同様に動作させることで、回転工具620,630についても同様に接続状態を維持させた状態でY方向に移動させることができる。
次に、凹部材941にピストン93が嵌合した状態における回転工具装置61の動作について、図11及び図12を参照して説明する。図11において、二点鎖線で図示されているものは、Y軸スライド台37及びビルトインモータ54のY方向における移動範囲を示す輪郭線である。
Y方向モータ35を動作させ、Y軸スライド台37をナット34を介して上下方向に動作させると、ビルトインモータ54もY軸スライド台37に一体的に上下方向に動作する。図12において要部を拡大して示すように、回転工具610は、ビルトインモータ54の駆動軸540に接続された状態を維持されているので、ワークWに対してY方向の任意の位置で加工することができる。例えば、穴あけを施したり、D型に切削したり等、主軸21の中心線上とは異なる位置でワークWを加工することができる。
上記実施形態に係る旋盤は、主に、NC自動旋盤に用いられる。上記の動作は、NC装置によって数値制御され、使用者が入力した指示に応じて加工ブログラムが機能し、自動的に行われる。
上記実施形態に係る旋盤は、所望の回転工具のみを回転させるため、ビルトインモータの動力を有効に使える。このため、加工時間が短くなり生産性が良くなる。
また、回転工具を駆動するモータの必要電力は、回転工具の本数に依存しない。このため、より多くの回転工具を装置に備えさせることができる。
複数の回転工具を動作させるための歯車列を用いないため、静粛な運転が可能となり、更に、それぞれの回転工具を高速回転ができる。また、このため、加工時間が短くなり生産性が良くなる。
加工するために必要な回転工具だけを選択的に回転させ、他の回転工具の無用な回転を防ぐことができるため、他の回転工具を支持する軸受の寿命が長くなる。結果として回転工具全体の軸受の寿命が長くなる。
また、回転工具を駆動するモータをビルトインモータにすることにより、簡単な構造でコンパクトにすることができる。
また、回転工具には、図示したドリル、タップ及びフライスに限らずエンドミル等の種々の工具を取り付けるようにしてもよい。
また、コンプレッサからの圧縮空気によって、ピストンと凹部材との嵌合及び嵌合の解除、即ち、ビルトインモータと回転工具とを一体的に動かす状態と、回転工具を変更する状態とに切り替えることができるため、操作性が良い。
また、第2の実施形態において、凹部材の個数を3つとして説明したが、回転工具の本数に対応した個数だけ設けるようにすればよく、更に複数設けるようにしても良い。
たとえ、回転工具を更に複数設けるようにしたとしても、ビルトインモータによって駆動される回転工具は一本のみのため、動力のロスは無く、静音性を保って動作させることができる。
また、凹部材に形成された溝の形状は図に示されたものに限定されるものではなく、テーパー状や円弧状でもよい。また、凹部材に形成された溝とそれに対応する突起は、凹凸を逆にしてもよい。
また、上記実施形態においてX方向モータを主軸中心に対して左側に取り付けているが、これに限定せず、右側に取り付けるようにしてもよい。
支持フレーム30に取り付ける工具等を含む部品全体は、主軸中心に対して任意の角度の取り付けてもよい。例えば、回転工具を主軸中心に対して任意の角度に往復動するように取り付けてもよい。このようにすることで、ワークを任意の角度で加工可能となる。
X軸スライド台とY軸スライド台が、主軸中心の左右に複数設けられ、夫々が独立して動作する旋盤でもよい。
上記実施形態においては、Y軸スライド台に凹部材が設置され、ビルトインモータにシリンダ及びピストンがされているものとして説明したが、Y軸スライド台にシリンダ及びピストンが設置され、ビルトインモータに凹部材が設置されているようにしてもよい。
上記実施形態においては、回転工具を駆動する第1のモータをビルトインモータとしたが、これに限定されるものではない。
第2の実施形態においては、コンプレッサからの圧縮空気の圧力によって、ピストンを摺動させるとして説明したが、ポンプからの油の圧力によって、ピストンを摺動させるように構成してもよい。
10 :ベッド
21 :主軸
30 :支持フレーム
35 :Y方向モータ(第2のモータ)
37 :Y軸スライド台(割出部)
45 :X方向モータ
50 :X軸スライド台
54 :ビルトインモータ(第1のモータ)
540:駆動軸
59 :ガイド(割出部)
61 :回転工具装置
610,620,630:回転工具
611,621,631:回転工具駆動軸
64 :回転工具台(工具支持部)
80 :工具台
90 :シリンダ
910:第1チューブ
912:第2チューブ
920:第1室
922:第2室
93 :ピストン(摺動部材)
941,942,943:凹部材(嵌合部材)
96 :コンプレッサ(流体圧縮装置)
W :ワーク

Claims (5)

  1. 工具支持部に並列して櫛状に配置され、且つ、回転可能に支持された複数の回転工具と、
    第1のモータと、
    前記第1のモータの駆動軸の端部に係合する位置に、前記回転工具の任意の1つを前記工具支持部から割り出す割出部と、を備える旋盤であって、
    前記第1のモータは、前記割出部によって割り出された前記回転工具の1つを回転駆動し、
    前記割出部は、第2のモータを備え、該第2のモータを動作させることで、前記回転工具の端部と前記第1のモータの前記駆動軸の端部とを結ぶ直線上に、前記工具支持部をスライドさせ、前記回転工具の任意の1つを前記第1のモータの前記駆動軸の端部に係合させ、
    前記旋盤は、前記第1のモータの前記工具支持部に対向する面に、前記工具支持部に向かう方向に摺動可能に設けられた摺動部材と、前記工具支持部の前記第1のモータに対向する面に、前記摺動部材の摺動位置に応じて嵌合又は離間する複数の嵌合部材と、を更に備え、
    前記複数の嵌合部材の夫々は、前記第1のモータの前記駆動軸の端部と前記複数の回転工具の端部の夫々とが係合する位置で、前記摺動部材に対向するように配設され、
    前記摺動部材と、前記嵌合部材とが嵌合することによって、前記第1のモータの前記駆動軸と前記回転工具の軸とが接続された状態で一体的に移動可能となり、
    前記摺動部材と、前記嵌合部材とが離間することによって、前記第1のモータの前記駆動軸に相対的に前記回転工具がスライドする、
    ことを特徴とする旋盤。
  2. 工具支持部に並列して櫛状に配置され、且つ、回転可能に支持された複数の回転工具と、
    第1のモータと、
    前記第1のモータの駆動軸の端部に係合する位置に、前記回転工具の任意の1つを前記工具支持部から割り出す割出部と、を備える旋盤であって、
    前記第1のモータは、前記割出部によって割り出された前記回転工具の1つを回転駆動し、
    前記割出部は、第2のモータを備え、該第2のモータを動作させることで、前記回転工具の端部と前記第1のモータの前記駆動軸の端部とを結ぶ直線上に、前記工具支持部をスライドさせ、前記回転工具の任意の1つを前記第1のモータの前記駆動軸の端部に係合させ、
    前記旋盤は、前記工具支持部の前記第1のモータに対向する面に、前記第1のモータに向かう方向に摺動可能に設けられた摺動部材と、前記第1のモータの前記工具支持部に対向する面に、前記摺動部材の摺動位置に応じて嵌合又は離間する複数の嵌合部材と、を更に備え、
    前記複数の嵌合部材の夫々は、前記第1のモータの前記駆動軸の端部と前記複数の回転工具の端部の夫々とが係合する位置で、前記摺動部材に対向するように配設され、
    前記摺動部材と、前記嵌合部材とが嵌合することによって、前記第1のモータの前記駆動軸と前記回転工具の軸とが接続された状態で一体的に移動可能となり、
    前記摺動部材と、前記嵌合部材とが離間することによって、前記第1のモータの前記駆動軸に相対的に前記回転工具がスライドする、
    ことを特徴とする旋盤。
  3. 前記嵌合部材に向かう方向に開放された開孔を備えるシリンダと、
    前記シリンダ内に圧縮流体を送り込む流体圧縮装置と、を更に備え、
    前記摺動部材は、一部を前記シリンダ内に配設され、他部を前記シリンダ内の前記開孔から突出して配設され、前記流体圧縮装置から送り込まれる前記圧縮流体によって摺動可能であり、摺動位置に応じて前記嵌合部材に嵌合又は離間する、
    ことを特徴とする請求項又はに記載の旋盤。
  4. 前記割出部は、前記工具支持部に対向する方向に溝を有し、
    複数の前記回転工具は、前記溝によって前記第1のモータの前記駆動軸の端部を通る直線上にガイドされる、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の旋盤。
  5. 前記第1のモータは、ビルトインモータであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の旋盤。
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