以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態(以下、「実施形態」と記す)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
実施形態に係る車両の概略構成について、図1〜図6を用いて説明する。図1は、車両の概略構成を示す模式図である。図2は、噛合い式クラッチの構成図である。図3は、第一係合部材の構成図である。図4は、第二係合部材の構成図である。図5は、第三係合部材の構成図である。図6は、動力伝達機構のギヤの配置を示す図である。
図1に示すように、車両1は、駆動輪94を回転駆動して推進するために、原動機として、内燃機関10と、発電可能な電動機である第一モータジェネレータ(以下、「MG1」と称する),第二モータジェネレータ(以下、「MG2」と称する)とを備えた、いわゆる「ハイブリッド車両」である。MG1,MG2は、後述する係合機構50、動力伝達機構80と共に、駆動装置20(いわゆるハイブリッド・トランスアクスル)を構成している。駆動装置20は、内燃機関10と結合されて動力出力装置(パワープラント)を構成し、車両1に搭載されている。
車両1には、内燃機関10及びMG1,MG2を協調して制御する制御手段として、車両用の電子制御装置(以下、「HVECU」と記す)30が設けられている。HVECU30には、各種制御装置に入力信号や、出力信号の入出力を行う入出力ポート(I/O)(図示せず)や、各種マップなどが記憶されているROM(図示せず)が設けられている。HVECU30により制御されて、車両1は、内燃機関10とMG1,MG2を原動機として併用又は選択使用することが可能に構成されている。
内燃機関10は、燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して出力する熱機関であり、ピストン往復動機関である。内燃機関10は、図示しない燃料噴射装置、スロットル弁装置、及び各種センサ等を有しており、これら装置は、後述する内燃機関制御装置(以下、「エンジンECU」と記す)31により制御される。内燃機関10の出力軸(以下、「出力軸」と記す)11には、後述する係合機構50が結合されている。内燃機関10は、出力軸11から駆動輪94に向けて機械的動力を出力する。内燃機関10が出力軸11から出力する機械的動力は、後述するエンジンECU31により制御可能となっている。内燃機関10には、出力軸11の回転角位置(以下、「クランク角」と記す)を検出する図示しないクランク角センサが設けられており、クランク角に係る信号をエンジンECU31に送出している。
エンジンECU31は、HVECU30から出力された要求出力に基づいて内燃機関10の運転制御を行うものである。具体的には、エンジンECU31は、この要求出力に基づいて、噴射信号、点火信号、開度信号などを内燃機関10に出力し、これらの出力信号によりこの内燃機関10に供給される燃料の燃料供給量や噴射タイミングなどの燃料噴射制御、図示しない点火プラグの点火制御、内燃機関10の図示しない吸気系統に設けられたスロットル弁の開度制御などが行われる。なお、エンジンECU31に入力された内燃機関10の運転状態に基づく情報、例えばクランク角センサ により検出された機関回転数などは、HVECU30に出力される。
駆動装置20には、原動機としてMG1,MG2が設けられている。MG1及びMG2は、供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えた、いわゆるモータジェネレータである。MG1は、主に発電機として用いられ、一方、MG2は、主に電動機として用いられる。
MG1およびMG2は、同期モータであり、それぞれ回転軸61,64と、ロータ62,65と、ステータ63,66とにより構成されている。回転軸61,64には、永久磁石であるロータ62,65が複数個それぞれ固定されている。ステータ63,66は、それぞれロータ62,65と対向する位置に配置され、図示しないハウジングに固定されている。MG1,MG2には、それぞれロータ62,65の回転角位置を検出するレゾルバ(図示せず)が設けられており、ロータ62,65の回転角位置に係る信号を、後述するモータ制御装置(以下、「モータECU」と記す)32に送出している。
また、駆動装置20には、MG1,MG2に電力を供給する電力供給装置として、インバータ21が設けられている。インバータ21は、ステータ63,66に接続されている。インバータ21は、バッテリ22から供給される直流電力を交流電力に変換して、それぞれ対応するMG1,MG2に供給することが可能に構成されている。また、MG1,MG2からの交流電力を直流電力に変換して後述するバッテリ22に回収可能に構成されている。インバータ21の電力供給及び電力回収は、後述するモータECU32により制御される。
また、駆動装置20には、MG1,MG2を制御するためのモータECU32が設けられている。モータECU32は、HVECU30から要求トルク、及び要求回転速度に係る信号を受け、インバータ21を制御することで、MG1,MG2のそれぞれについて、ロータ62,65の回転速度(以下、「モータ回転速度」と記す)と、ロータ62,65から出力する機械的動力とを調整することが可能となっている。
また、駆動装置20には、内燃機関10及びMG1,MG2が出力した機械的動力を駆動輪94に伝達する手段として、内燃機関10とMG1と動力伝達機構80との係合状態を変更する係合機構50と、内燃機関10およびMG2から出力される機械的動力を駆動輪94に伝達する動力伝達機構80とが設けられている。
内燃機関10と、MG1と、動力伝達機構80との機械的な連結関係を切り替える、すなわち係合状態を変更する係合機構50の具体的な構成について説明する。係合機構50は、複数の係合部材51,52,53とスリーブ54とからなる噛合い式クラッチにより構成される。
係合機構50は、図2に示すように、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1を互いに連結、解放するものである。係合機構50は、内燃機関10とMG1とを連結し、内燃機関10と動力伝達機構80との連結を解放する第一係合状態と、内燃機関10と動力伝達機構80とを連結し、内燃機関10とMG1との連結を解放する第二係合状態とのいずれかの状態を形成するものである。係合機構50は、第一係合部材51と、第二係合部材52と、第三係合部材53と、スリーブ54とにより構成されている。
第一係合部材51は、出力軸11に固定されるものであり、内燃機関10に連結されるものである。第一係合部材51は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、出力軸11の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、出力軸11に固定される。第一係合部材51は、MG1の回転軸61に固定される第三係合部材53と第二係合部材52との間に位置する。第一係合部材51には、図3に示すように、外周面に第一係合部材係合部51aが形成されている。第一係合部材係合部51aは、第一係合部材51の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第一係合部材係合部51aは、第一係合部材51に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。なお、隣り合う第一係合部材係合部51aの間には、スリーブ54の第1スリーブ側係合部54aが入り込む第一係合部材凹部51bが形成されている。
第二係合部材52は、後述する動力伝達機構80の入力軸(以下、「入力軸」と記す)81に固定されるものであり、動力伝達機構に連結されるものである。第二係合部材52は、実施形態では、後述するダンパ12を介して、入力軸81に固定されていることとなるが、以下の説明では、ダンパ12を省略した形で説明する。第二係合部材52は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、入力軸81の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、入力軸81に固定される。第二係合部材52は、第一係合部材51を挟んで第三係合部材53と対向する位置に位置する。第二係合部材52には、図4に示すように、外周面に第二係合部材係合部52aが形成されている。第二係合部材係合部52aは、第二係合部材52の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第二係合部材係合部52aは、第二係合部材52に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。なお、隣り合う第二係合部材係合部52aの間には、スリーブ54の第2スリーブ側係合部54bが噛合う第二係合部材凹部52bが形成されている。
第三係合部材53は、MG1のロータ62に連結された回転軸61に固定されるものであり、MG1に連結されるものである。第三係合部材53は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、回転軸61の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、回転軸61に固定される。第三係合部材53は、第一係合部材51を挟んで第二係合部材52と対向する位置に位置する。第三係合部材53には、図5に示すように、外周面に第三係合部材係合部53aが形成されている。第三係合部材係合部53aは、第三係合部材53の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第三係合部材係合部53aは、第三係合部材53に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。なお、隣り合う第三係合部材係合部53aの間には、スリーブ54の第1スリーブ側係合部54aが入り込む第三係合部材凹部53bが形成されている。
ここで、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部は、同一形状に形成されている。また、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部は、各軸の径方向における位置が同一となるように、第一係合部材51、第二係合部材52、第三係合部材53にそれぞれ形成されている。
スリーブ54は、軸方向に移動自在に支持されている。スリーブ54は、例えば動力伝達機構80が収納されているケース(図示せず)に軸方向に移動自在に支持されており、後述する第一係合状態に対応する位置と第2係合状態に対応する位置との間を軸方向に移動可能な構成となっている。スリーブ54は、円筒形状であり、第一係合部材51と第二係合部材52と第三係合部材53と同軸上で、かつ各軸の径方向において第一係合部材51、第二係合部材52、第三係合部材53に対向できるように配置されている。スリーブ54には、内周面にスリーブ側係合部が形成されている。スリーブ側係合部は、第1スリーブ側係合部54aと、第2スリーブ側係合部54bとにより構成されている。第1スリーブ側係合部54aは、スリーブ54の内周面のうち軸方向における他方の端部(図2の左側端部)に形成されている。第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54の内周面のうち軸方向における一方の端部(図2の右側端部)に形成されている。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54の内周面から径方向内側に突出して形成されている。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。なお、隣り合う第1スリーブ側係合部54aの間には、第一係合部材51の第一係合部材係合部51aおよび第三係合部材53の第三係合部材係合部53aが入り込む第1スリーブ側凹部54cが形成されている。また、隣り合う第2スリーブ側係合部54bの間には、第一係合部材51の第一係合部材係合部51aおよび第二係合部材52の第二係合部材係合部52aが入り込む第2スリーブ側凹部54dが形成されている。
ここで、第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、同一形状に形成されている。また、第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、各軸の径方向における位置が同一で、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部に噛み合うことができるように、スリーブ54にそれぞれ形成されている。また、スリーブ54の第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部に噛み合うことができる。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材係合部51aと噛み合う際に、第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材係合部52aと噛み合うように、第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材係合部53aと噛み合う際に、第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材係合部51aと噛み合うように、スリーブ54に形成されている。
なお、スリーブ54は、HVECU30によって、運転者の駆動要求や、車両1の状態に応じて、係合機構50を第一係合状態または第二係合状態にするアクチュエータ70を制御することで、軸方向に第一係合状態に対応する位置あるいは第二係合状態に対応する位置に移動するものである。なお、スリーブ54の軸方向への移動は、運転者の駆動要求や、車両1の状態に応じて、アクチュエータ70の制御によって行ってもよいし、図示しない操作レバー等を用いて、直接制御してもよい。また、係合機構50は、噛合い式クラッチを用いているが、内燃機関10と、動力伝達機構80と、MG1との連結または解放ができる二つの機能を備えたものであればよい。
動力伝達機構80は、内燃機関10あるいはMG2の少なくとも一方が出力した機械的動力をデファレンシャルの回転軸(以下、「ドライブシャフト」と記す)90に伝達するものである。動力伝達機構80は、入力軸81と、エンジンカウンタギヤ82と、カウンタ軸83と、ドライブピニオン84と、MGカウンタギヤ85と、カウンタドリブンギヤ86と、デフリングギヤ87と、デファレンシャルギヤ88とにより構成されている。
入力軸81は、係合機構50を介して、内燃機関10の機械的動力を動力伝達機構80に伝達されるものである。入力軸81の一端側には、ダンパ12を介して係合機構50が連結され、他端側には、エンジンカウンタギヤ82が形成されている。つまり、係合機構50と動力伝達機構80とは、ダンパ12を介して連結されている。ここで、内燃機関10、MG1、ダンパ12は、内燃機関10の出力軸11方向に、内燃機関10、MG1、ダンパ12の順に配置されている。係合機構50は、内燃機関10と、MG1のロータ62と、ダンパ12とで囲まれた領域で、MG1と内燃機関10の出力軸11方向で重複するように配置されている。従って、内燃機関10の始動時において、MG1と内燃機関10とをダンパ12を介することなく連結することができ、内燃機関10の機械的動力を動力伝達機構80に伝達する際には、ダンパ12を介して内燃機関10と動力伝達機構80とを連結することができる係合機構50を省スペースで構成することができる。
ここで、ダンパ12は、第二係合部材52と連結し、かつ内燃機関10の機械的動力が伝達される前記動力伝達機構80の入力軸81に設けられており、内燃機関10の出力する出力トルクの変動を抑制する抑制機構である。ダンパ12をMG1の外部に設ける場合、ダンパ12の径を大きくとることができる。また、ダンパ12をMG1の内部に設ける場合、より小型化を図ることができる。
エンジンカウンタギヤ82は、入力軸81に形成されており、ドライブピニオン84は、このエンジンカウンタギヤ82に噛合い、カウンタ軸83の一端側に形成されている。このカウンタ軸83の他端側には、カウンタドリブンギヤ86が形成されており、MGカウンタギヤ85は、このカウンタドリブンギヤ86に噛合い、MG2のロータ65に連結された回転軸64に形成されている。また、デフリングギヤ87は、ドライブピニオン84に噛合い、デファレンシャルギヤ88に形成されている。内燃機関10あるいは、MG2の少なくとも一方から出力される機械的動力は、動力伝達機構80、デファレンシャルギヤ88を介してドライブシャフト90に伝達され、さらにこのドライブシャフト90のそれぞれに装着された駆動輪94に伝達される。なお、駆動輪94の近傍には、駆動輪94の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)が設けられており、検出した駆動輪94の回転速度に係る信号をHVECU30に送出している。
また、図1に示すように、車両1は、横置きのFF車であり、出力軸11の延長線上に、MG1の回転軸61、係合機構50、ダンパ12を介して入力軸81が配置され、その後方に、カウンタ軸83が配置され、さらにその後方にドライブシャフト90が配置されている。MG2の回転軸64は、図6に示すように、入力軸81とドライブシャフト90(デファレンシャルギヤ88の回転軸)とを結ぶ線(同図一点鎖線)より下方に配置されている。
また、動力伝達機構80が収納されているケース(図示せず)の底部には、オイルの貯留部89が設けられている。オイルの貯留部89は、デファレンシャルギヤ88によりかきあげられMG2に供給されるオイルを貯留するものである。入力軸81は、動力伝達機構80内の鉛直方向において上側(同図上側)に配置され、カウンタ軸83は、入力軸81の鉛直方向において下側(同図下側)に配置される。さらに、ドライブシャフト90は、デフリングギヤ87の歯面がオイルの貯留部89に浸るようにカウンタ軸83の鉛直方向において下側に配置され、貯留部89に貯留されているオイルをかき上げることができる。後述するEVモードでは、内燃機関10が停止しており、内燃機関10の機械的動力により作動するオイルポンプ(図示せず)は作動せず、車両1がMG2により駆動されている。従って、EVモードでは、MG2が高温になりやすく、ギヤのかき上げを利用して、オイルをMG2にかき上げる際に、MG2が下方に設けられているため、かき上げ力が小さくてもMG2にオイルを確実に供給することができる。これにより、MG2を効率よく冷却することができる。
また、車両1には、MG1,MG2に供給する電力を貯蔵し、充放電が可能なバッテリ(蓄電池)22と、バッテリ22の電圧を昇圧してインバータ21の供給電圧に変換可能な昇圧コンバータ(図示せず)が設けられている。バッテリ22は、MG1,MG2に設けられたインバータ21に、昇圧コンバータを介して電気的に接続されている。バッテリ22は、インバータ21を介して、それぞれMG1,MG2との間で充放電を行う。
また、車両1には、バッテリ22を監視するバッテリ監視用の電子制御装置(以下、「バッテリECU」と記す)33が設けられている。バッテリECU33は、バッテリ22の温度や電圧、充放電電流値等を監視している。これら情報からバッテリECU33は、バッテリ22の蓄電状態(state-of-charge:SOC)、及び充放電電力を算出している。バッテリECU33は、バッテリ22の蓄電状態、及びバッテリ22の充放電電力に係る信号等を、HVECU30に送出している。
また、車両1には、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ100が設けられており、検出したアクセルペダルの操作量(以下、「アクセル操作量」と記す)に係る信号を、HVECU30に送出している。
HVECU30は、クランク角センサからのクランク角及び入力軸81の回転速度に係る信号と、車輪速センサからの駆動輪94の回転速度に係る信号と、MG1,MG2にそれぞれ設けられたレゾルバからのモータ回転速度に係る信号とを検出している。また、HVECU30は、アクセルペダルポジションセンサ100からのアクセル操作量に係る信号を検出している。また、HVECU30は、バッテリECU33からのバッテリ22の蓄電状態に係る信号と、加速度センサ(図示せず)からの車両1の前後、上下及び左右方向の加速度に係る信号を検出している。
これら信号に基づいて、HVECU30は、内燃機関10に要求する要求出力、MG1に要求する要求トルク、MG2に要求する要求トルクを算出する。そして、エンジンECU31に要求出力、モータECU32に要求トルクを出力する。さらに、HVECU30は、運転者の駆動要求や、車両1の状態(例えば、アクセル操作量、車速、SOCなど)に応じて、係合機構50を第一係合状態または第二係合状態にするアクチュエータ70を制御する。
このように構成された車両1は、車両走行中において、内燃機関10及びMG2を原動機として併用又は選択使用し、これら原動機からの機械的動力を、動力伝達機構80によりドライブシャフト90に伝達することで、車両1を駆動することが可能となっている。また、車両1は、車両減速時においては、駆動輪94から動力伝達機構80に伝達された機械的動力を、MG2で電力に変換して、バッテリ22に回収する、いわゆる回生制動を行うことが可能となっている。
次に、本発明にかかる係合機構50の動作について説明する。図7〜図9は、係合機構50の状態説明図である。図7は、EVモードにおける車両の動力伝達経路図である。図8は、シリーズハイブリッドモードにおける車両の動力伝達経路図である。図9は、パラレルハイブリッドモードにおける車両の動力伝達経路図である。以下に、係合機構50の動作によってなる第一係合状態と第二係合状態とを説明する。
第一係合状態では、図7、図8に示すように、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向右側に移動させ、各第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材53と対向し、各第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材51と対向する第一係合状態に対応する位置に移動する。スリーブ54が第一係合状態に対応する位置に移動すると、各第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材53の第三係合部材凹部53bにそれぞれ入り込むとともに、第三係合部材係合部53aがスリーブ54の第1スリーブ側凹部54cにそれぞれ入り込む。これにより、各第1スリーブ側係合部54aと第三係合部材係合部53aとが噛み合い、スリーブ54と第三係合部材53とが連結される。さらに、各第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材51の第一係合部材凹部51bからそれぞれ解放されるとともに、内燃機構側係合部51aがスリーブ54の第1スリーブ側凹部54cからそれぞれ解放される。これにより、各第1スリーブ側係合部54aと第一係合部材係合部51aとが解放され、スリーブ54と第一係合部材51とが解放される。
スリーブ54が第一係合状態に対応する位置に移動すると、各第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材51の第一係合部材凹部51bにそれぞれ入り込むとともに、第一係合部材係合部51aがスリーブ54の第2スリーブ側凹部54cにそれぞれ入り込む。これにより、各第2スリーブ側係合部54bと第一係合部材係合部51aとが噛み合い、スリーブ54と第一係合部材51とが連結される。さらに、各第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材52の第二係合部材凹部52bからそれぞれ解放されるとともに、第二係合部材係合部52aがスリーブ54の第2スリーブ側凹部54dからそれぞれ解放される。これにより、各第2スリーブ側係合部54bと第二係合部材係合部52aとが解放され、スリーブ54と第二係合部材52とが解放される。従って、係合機構50は、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向右側に移動させると、第三係合部材53、第一係合部材51およびスリーブ54を介して、出力軸11と入力軸81とが解放する第一係合状態となる。
第二係合状態では、図9に示すように、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向左側に移動させ、各第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材51と対向し、各第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材52と対向する第二係合状態に対応する位置に移動する。スリーブ54が第二係合状態に対応する位置に位置すると、各第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材51の第一係合部材凹部51bにそれぞれ入り込むとともに、第一係合部材係合部51aがスリーブ54の第1スリーブ側凹部54cにそれぞれ入り込む。これにより、各第1スリーブ側係合部54aと第一係合部材係合部51aとが噛み合い、スリーブ54と第一係合部材51とが連結される。さらに、各第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材53の第三係合部材凹部53bからそれぞれ解放されるとともに、第三係合部材係合部53aがスリーブ54の第1スリーブ側凹部54cからそれぞれ解放される。これにより、各第1スリーブ側係合部54aと第三係合部材係合部53aとが解放され、スリーブ54と第三係合部材53とが解放される。
また、スリーブ54が第二係合状態に対応する位置に位置すると、各第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材52の第二係合部材凹部52bにそれぞれ入り込むとともに、第二係合部材係合部52aがスリーブ54の第2スリーブ側凹部54dにそれぞれ入り込む。これにより、各第2スリーブ側係合部54bと第二係合部材係合部52aとが噛み合い、スリーブ54と第二係合部材52とが連結される。さらに、各第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材51の第一係合部材凹部51bからそれぞれ解放されるとともに、第一係合部材係合部51aがスリーブ54の第2スリーブ側凹部54dからそれぞれ解放される。これにより、各第2スリーブ側係合部54bと第一係合部材係合部51aとが解放され、スリーブ54と第一係合部材51とが解放される。従って、係合機構50は、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向左側に移動させると、第一係合部材51、第二係合部材52およびスリーブ54を介して、出力軸11と入力軸81とが直接連結する第二係合状態となる。
係合機構50は、第一係合状態あるいは第二係合状態のうち、どちらか一方の係合状態を選択することによって、内燃機関10と動力伝達機構80との連結、解放、内燃機関10とMG1との連結、解放を切り替えることができる。従来、二つのクラッチに対してそれぞれアクチュエータを設け、内燃機関10と動力伝達機構80との連結、解放、内燃機関10とMG1との連結、解放を行っていた。しかしながら、本実施形態の係合機構50では、HVECU30が1つのアクチュエータ70を制御することにより、1つのスリーブ54を軸方向に移動させ、スリーブ54を第一係合状態に対応する位置あるいは第二係合状態に対応する位置に移動させることで、第一係合状態あるいは第二係合状態となり、内燃機関10と動力伝達機構80、あるいは内燃機関10とMG1のいずれか一方が係合状態のとき、他方を解放状態とすることができる。これにより、係合機構50は、内燃機関10と、MG1と、動力伝達機構80との係合状態の変更、すなわち2つのクラッチの機能を1つのアクチュエータ70のみで実現することができる。
また、各係合部材51,52,53およびスリーブ54は、同軸上に配置されており、スリーブ54の軸方向における移動により、係合機構50が第一係合状態および第二係合状態を形成することができるので、係合機構50が第一係合状態および第二係合状態を形成するために、係合機構50を構成する部材が径方向への移動することはない。従って、係合機構50は、実施形態では、MG1のロータ62の内側に設けられている。MG1のロータ62の内径側に設けることによって、係合機構50がMG1のロータ62の外部に設けられる場合と比較して、軸方向の長さを短くすることができる。
HVECU30は、運転者の駆動要求や、車両1の状態に応じて、EVモード、シリーズハイブリッドモード、パラレルハイブリッドモードを選択する。車両1はEVモードで走行し、例えば、バッテリ22のSOCが少なくなってくると、シリーズハイブリッドモードに走行モードを切り替える。また、例えば、車両1の走行負荷が高負荷になると、パラレルハイブリッドモードに走行モードを切り替える。このとき、EVモード、またはシリーズハイブリッドモードからパラレルハイブリッドモードに走行モードを切り替えるとき、出力軸11と入力軸81との回転数を同期させ、走行モードを切り替える。また、パラレルハイブリッドモードから、EVモード、またはシリーズハイブリッドモードに走行モードを切り替えるとき、出力軸11と入力軸81との回転数を同期させ、走行モードを切り替える。
EVモードは、HVECU30が、インバータ21を制御し、バッテリ22からの電力によってMG2のみで駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、EVモードでは、係合機構50を第一係合状態とする。なお、内燃機関10および、MG1は回転していない。EVモードにおける駆動力の伝達経路を図7に矢印Aで示す。
シリーズハイブリッドモードは、HVECU30がインバータ21とエンジンECU31を介して内燃機関10を制御し、MG1をセルモータとして機能させて内燃機関10を起動する。そして、インバータ21を制御し、内燃機関10が出力する機械的動力により、MG1を回転させ、MG1による発電を行い、MG1が発電した電力でMG2を駆動させ、MG2で駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、シリーズハイブリッドモードでは、係合機構50を第一係合状態とする。ここで、ダンパ12は、第二係合部材52と連結し、かつ内燃機関10の機械的動力が伝達される前記動力伝達機構80の入力軸81に設けられている。つまり、係合機構50と、動力伝達機構80との間に設けられており、内燃機関10とMG1との間に設けられていない。従って、MG1による内燃機関10の始動時において、MG1が発生する機械的動力をダンパ12などの低捩れ剛性要素を介さずに内燃機関10に伝達できる。これにより、内燃機関10の始動時の共振による過大トルクの発生を抑制することができる。シリーズハイブリッドモードにおける駆動力の伝達経路を図8に矢印Bで示す。
パラレルハイブリッドモードは、HVECU30が、インバータ21とエンジンECU31を介して内燃機関10を制御し、MG2に内燃機関10の駆動のアシストをさせ、内燃機関10及びMG2で駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、パラレルハイブリッドモードでは、係合機構50を第二係合状態とする。なお、MG1は回転していない。ここで、ダンパ12は、係合機構50と、動力伝達機構80との間に設けられている。従って、内燃機関10が発生する機械的動力は、ダンパ12を介して動力伝達機構80に伝達される。これにより、内燃機関10と動力伝達機構80との間に発生する伝達トルクの変動を抑制することができる。パラレルハイブリッドモードにおける駆動力の伝達経路を図9に矢印Cで示す。
以上のように、本実施形態にかかる車両1では、係合機構50の第一係合部材51、第二係合部材52およびスリーブ54により、内燃機関10と動力伝達機構80とを連結するとともに、内燃機関10とMG1との連結を解放することで、車両1をパラレルハイブリッドモードにすることができる。また、係合機構50の第一係合部材51、第三係合部材53およびスリーブ54により、内燃機関10とMG1とを連結するとともに、内燃機関10と動力伝達機構80とを連結を解放することで、車両1をEVモード及びシリーズハイブリッドモードにすることができる。つまり、係合機構50が第一係合状態あるいは第二係合状態のうち、どちらか一方の係合状態を選択することによって、車両1のモードを切り替えることができる。従って、2つの係合状態を一つの係合機構50で選択することができるため、本来、2つのクラッチと、各クラッチを動かすアクチュエータを必要とするところを、係合機構50が2つのクラッチとしての機能を1つのアクチュエータ70で実現することができるので、アクチュエータの数を減らすことができるので、部品点数を削減することができ、コストの増加を抑制することができる。
また、本実施形態にかかる車両1では、第一係合部材51と、第二係合部材52と、第三係合部材53とがスリーブ54とともに同軸上に配置されている。よって、第一係合状態、第二係合状態を各係合部材51,52,53に対するスリーブ54の軸方向への移動で行うことができる。つまり、内燃機関とMG1との連結もしくは解放と、内燃機関と動力伝達機構との連結もしくは解放とを一つの係合部材で行うことで、従来の2つのクラッチを用いた場合と比較して、軸方向における長さを短くすることができ、小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、少なくとも係合機構50の一部をMG1のロータ62の内径側に設けるので、軸方向の長さを短くすることができ、よりいっそう小型化を図ることができる。また、内燃機関10の動力を伝達する際には、係合機構50と動力伝達機構80とは、ダンパ12を介して連結させ、内燃機関10を始動する際には、MG1と内燃機関10とは、ダンパ12を介することなく連結させることができるので、内燃機関10の動力伝達時における伝達トルク変動の抑制と、内燃機関10始動時における共振による過大トルク発生の抑制を両立させることができる。また、係合機構50は、内燃機関10と、MG1のロータ62と、ダンパ12とで囲まれた領域で、MG1と内燃機関10の出力軸11方向で重複するように配置されるので、省スペースで構成することができる。