[第1参考例]
以下、本発明の第1参考例に係る舵取装置について図を参照して説明する。図1は、本第1参考例に係る舵取装置10の構成概要を示す説明図である。図2は、図1の伝達比可変装置30および伝達機構40を示す側面図である。図3(A)は、伝達機構40の一部断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す3B−3B線相当の切断面による断面図である。
図1に示すように、舵取装置10は、主に、ステアリングホイール12、第1ステアリングシャフト14、第2ステアリングシャフト16、ステアリングセンサ18、ピニオンギヤ20、ラック軸22、ロッド24、伝達比可変装置30、伝達機構40と、伝達比可変装置30および伝達機構40を制御するECU50等から構成されている。
ステアリングホイール12は、第1ステアリングシャフト14に固定され、第1ステアリングシャフト14は伝達機構40を介して伝達比可変装置30の入力側に接続されており、第2ステアリングシャフト16は伝達比可変装置30の出力側に接続されている。
ステアリングセンサ18は、光センサと回転体スリットにより、回転位置を検出したり、磁気センサと磁石とにより回転位置を検出して、舵角信号を生成してECU50へ出力する。また、トルクセンサ(図略)は、第1ステアリングシャフト14から第2ステアリングシャフト16の途中に設けられるトーションバーとこのトーションバーを挟むようにトーションバーの両端に取り付けられた2つのレゾルバとを備えている。このトルクセンサは、トーションバーの一端側を入力、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を当該2つのレゾルバにより検出することで、ステアリングホイール12による操舵角や操舵トルクを検出する。そして、トルクセンサは、これら操舵角や操舵トルクに対応した検出信号を生成してECU50へ出力する。
第2ステアリングシャフト16の先端のピニオンギヤ20は、ラック軸22に噛合しており、第2ステアリングシャフト16の回転運動がラック軸22の直線運動に変換されるようにラックアンドピニオン機構が構成されている。このラック軸22の両端にはロッド24が連結され、さらにこのロッド24の端部には図略のナックル等を介して操舵輪FR、FLが連結されている。これにより、第2ステアリングシャフト16が回転すると、ラック軸22、ロッド24等を介して操舵輪FR,FLの転舵角を変化させることができるので、第2ステアリングシャフト16の回転量および回転方向に従った操舵輪FR,FLの操舵を可能にしている。
図2に示すように、伝達比可変装置30は、入力軸31と、ハウジング32と、このハウジング32内に収納されるモータ33および減速機構34と、出力軸35と、スパイラルケーブルユニット36とを備えている。入力軸31は、一端が伝達機構40のハウジング41のフランジ部41bに同軸的にセレーション結合され、他端がハウジング32に一体回転可能に結合されている。モータ33は、ハウジング32の内周面に固定されており、ECU50により駆動制御されてモータ軸33aを回転させる。減速機構34はモータ軸33aの回転角を減速して出力軸35に伝達している。出力軸35は、ハウジング32に回転可能に軸支され、第2ステアリングシャフト16に結合されている。スパイラルケーブルユニット36は、フレキシブルフラットケーブル36aを介する図略のバッテリからの電力をモータ33や後述するソレノイド46等に供給可能に構成されている。
このように、伝達比可変装置30は、伝達機構40を介して入力軸31に入力されたステアリング操作に伴う第1ステアリングシャフト14の回転に対して、ECU50によりモータ33におけるモータ軸33aの回転を制御することで、所定の伝達比にて出力軸35を回転させる。
次に、伝達機構40の構成について図3(A),(B)を用いて詳細に説明する。
伝達機構40は、第1ステアリングシャフト14、伝達比可変装置30およびラックアンドピニオン機構等の操舵系の途中に設けられている。伝達機構40は、図3(A)に示すように、主にハウジング41、入力軸42、弾性部材43、円筒部材44、可動部材45、ソレノイド46およびばね47を備えている。
ハウジング41は、入力軸42の大径部42aと、弾性部材43、円筒部材44、可動部材45、ソレノイド46およびばね47とを収容している。入力軸42の小径部42bは、ハウジング41の開口部41aから同軸的に突出している。ハウジング41の反開口部側にはフランジ部41bが設けられており、ハウジング41は、フランジ部41bにて伝達比可変装置30の入力軸31に同軸的にセレーション結合されている(図2参照)。
入力軸42の大径部42aは、その内周がソレノイド46およびばね47を収容可能に中空状に形成されている。この大径部42aの内周面には軸方向に延設される凹状溝42cが周方向等間隔に2つ形成されている。また、入力軸42の小径部42bは、第1ステアリングシャフト14に連結可能に形成されている。
弾性部材43は、例えば、加硫ゴムなどによって円筒状に形成されており、入力軸42および円筒部材44と同軸的に配置されている。当該弾性部材43は、その内周面および外周面が入力軸42の外周面および円筒部材44の内周面の双方に加硫接着されることで、入力軸42と円筒部材44との間で回転を弾性的に伝達する役割を果たす。
図3(B)に示すように、入力軸42、弾性部材43および円筒部材44の軸方向一端側48aには、周方向等間隔に4つの連結穴48がそれぞれ形成されている。各連結穴48は、断面円弧状に形成される入力軸42の連結部42dおよび円筒部材44の連結部44aと弾性部材43の切り欠き部43aによりそれぞれ構成されている。ここで、入力軸42および円筒部材44は、特許請求の範囲に記載の「第1回転部材」および「第2回転部材」の一例に相当し、連結部42dおよび連結部44aは、特許請求の範囲に記載の「第1連結部」および「第2連結部」の一例に相当する。なお、連結穴48は、弾性部材43(切り欠き部43a)を除いて、入力軸42の連結部42dおよび円筒部材44の連結部44aのみで構成されてもよい。
円筒部材44は、その外周面がハウジング41の内周面に固定されることにより、伝達比可変装置30の入力軸31にハウジング41を介して同軸的に連結するように構成されている。
可動部材45は、ハウジング41の内径より僅かに小さい円板部45aと、この円板部45aの中央から同軸的に突出する円柱部45bと、連結穴48にそれぞれ係合可能な4つのボール45cと、各ボール45cを円柱部45bの外方であって円板部45aの側面に保持する保持器45dとを備えている。
円柱部45bの外周面には軸方向に延設される凸状突起45eが周方向等間隔に2つ形成されており、両凸状突起45eは、入力軸42の対応する凹状溝42cに対して軸方向にのみ移動可能にガイドされている。
また、各ボール45cは、円板部45a側の半球面が保持器45dによりそれぞれ保持されることで、弾性部材43が弾性変形していない場合、例えば、操舵系が中立位置にある場合において、対応する連結穴48に対して係合可能に周方向等間隔に配置されている。また、各ボール45cは、後述するように対応する連結穴48に係合する場合に衝突音等の作動音を低減するように保持器45dに弾性的に保持されている。ここで、各ボール45cは、特許請求の範囲に記載の「連結部材」の一例に相当する。
ソレノイド46は、入力軸42の大径部42aの中空部内に収容されており、そのロッド46aの先端は、可動部材45の円柱部45bに同軸的に固定されている。当該ソレノイド46は、ECU50により駆動制御される励磁状態では、可動部材45を、ばね47の付勢力に抗して各ボール45cが軸方向一端側48aに近接する方向(以下、連結方向ともいう)に移動させるように、構成されている。ここで、ソレノイド46およびばね47は、特許請求の範囲に記載の「可動手段」の一例に相当し、ECU50は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」の一例に相当する。
ばね47は、コイル状に形成されており、可動部材45を、各ボール45cが軸方向一端側48aから離間する方向(以下、反連結方向ともいう)に付勢するように、軸方向に圧縮された状態でソレノイド46の外周側に配置されている。
次に、上述のように構成される伝達機構40の作用について、図4(A),(B)を用いて説明する。図4(A)は、各ボール45cと対応する連結穴48とが離間する非連結状態を示す断面図であり、図4(B)は、各ボール45cと対応する連結穴48とが連結する連結状態を示す断面図である。
ソレノイド46が励磁されない場合には、図4(A)に示すように、ばね47により可動部材45が反連結方向に付勢されているため、各ボール45cと連結穴48とが離間して非連結状態となる。
このような非連結状態では、弾性部材43を介して入力軸42と円筒部材44との間で回転が伝達されるので、ラックアンドピニオン機構などの操舵輪側で発生する振動がステアリングホイール12へ伝達されることを防止することができる。
一方、弾性部材43が弾性変形していない場合において、ステアリングの剛性感を確保する要求に応じてソレノイド46が励磁されると、図4(B)に示すように、可動部材45がばね47の付勢力に抗して連結方向に移動し、各ボール45cと対応する連結穴48の連結部42dおよび連結部44aとがそれぞれ係合して連結状態となる。
このとき、可動部材45の両凸状突起45eは、入力軸42の対応する凹状溝42cに沿って連結方向に移動するので、各ボール45cが回転方向にずれることなく対応する連結穴48に確実に連結することとなる。
なお、弾性部材43が弾性変形するように入力軸42の連結部42dと円筒部材44の連結部44aとが回転方向にずれている場合には、各ボール45cが連結方向に移動して対応する連結部44aに接触することで当該連結部44aがボール45cにガイドされて、連結部44aと連結部42dとの回転方向のずれがなくなり連結状態となる。
このような連結状態では、弾性部材43を介すことなく入力軸42と円筒部材44とが一体に回転するので、ステアリングの剛性感が確保されて操舵フィーリングを向上させることができる。
以上説明したように、本第1参考例に係る舵取装置10では、操舵系の途中に設けられる伝達機構40は、ステアリングホイール12に連結する第1ステアリングシャフト14に同軸的に連結される入力軸42と、操舵輪FR,FLに連結する伝達比可変装置30の入力軸31にハウジング41を介して同軸的に連結される円筒部材44と、入力軸42および円筒部材44に固着されて両部材42,44間で回転を弾性的に伝達する弾性部材43とを備えている。また、伝達機構40は、弾性部材43が弾性変形していない場合において入力軸42の各連結部42dと円筒部材44の各連結部44aとの双方に同時に連結可能な可動部材45の各ボール45cと、各ボール45cと各連結部42dおよび各連結部44aとの連結状態および非連結状態を切り替えるために可動部材45を軸方向に可動させるソレノイド46およびばね47とを備えている。そして、ECU50は、ソレノイド46による可動部材45の可動を制御する。
これにより、伝達機構40において各ボール45cと入力軸42の各連結部42dおよび円筒部材44の各連結部44aとが連結されない非連結状態では、弾性部材43を介して入力軸42と円筒部材44との間で回転が伝達されるので、ラックアンドピニオン機構などの操舵輪側で発生する振動がステアリングホイール12へ伝達されることを防止することができる。また、伝達機構40において各ボール45cと入力軸42の各連結部42dおよび円筒部材44の各連結部44aとが連結される連結状態では、弾性部材43を介すことなく入力軸42と円筒部材44が各ボール45cを介して一体に回転するので、ステアリングの剛性感が確保されて操舵フィーリングを向上させることができる。
したがって、ECU50によるソレノイド46の制御により、ステアリングホイール12への振動伝達の抑制を優先する場合やステアリングの剛性感を優先する場合など、運転状況に応じて各ボール45cと入力軸42の各連結部42dおよび円筒部材44の各連結部44aとの連結状態および非連結状態を切り替えることができるので、ステアリングホイール12への振動伝達を防止するとともに操舵フィーリングを向上させることができる。
特に、ソレノイド46を励磁または非励磁にすることより入力軸42および円筒部材44の間の回転を制御するので、構成が簡素化されて伝達機構の小型化や低コスト化を図ることができる。
また、本第1参考例に係る舵取装置10では、各ボール45cは入力軸42の各連結部42dおよび円筒部材44の各連結部44aに接触する接触部位が球状であり、各連結部42dおよび各連結部44aは軸方向に移動する各ボール45cの接触部位に係合可能に断面円弧状にそれぞれ形成される。
これにより、各ボール45cと各連結部42dおよび各連結部44aとが接触する部位をそれぞれ高精度に形成することができるので、各ボール45cと各連結部42dおよび各連結部44aとが連結する場合でも、操舵系の中心位置のずれを防止することができる。
さらに、本第1参考例に係る舵取装置10では、入力軸42の大径部42aの内周面には2つの凹状溝42cが軸方向に延設され、可動部材45の円柱部45bの外周面には弾性部材43が弾性変形していない場合に両凹状溝42cに対して軸方向にのみ移動可能にガイドされる2つの凸状突起45eが形成されている。
これにより、ソレノイド46およびばね47によって可動部材45を可動させるとき、この可動部材45は入力軸42の両凹状溝42cに沿って軸方向に移動するので、各ボール45cを回転方向にずらすことなく各連結部42dおよび各連結部44aに確実に連結させることができる。
[第2参考例]
次に、本発明の第2参考例について図5および図6を参照して説明する。図5は、本第2参考例に係る舵取装置10aの構成概要を示す説明図である。図6は、本第2参考例に係るECU50によるソレノイド46の駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
本第2参考例に係る舵取装置10aは、車両の車速Vを検出する車速センサ60を新たに採用するとともに、ソレノイド46の駆動制御処理を図6に示すフローチャートに基づいて実施する点が、上記第1参考例に係る舵取装置と異なる。したがって、第1参考例の舵取装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
以下、本第2参考例に係るECU50によるソレノイド46の駆動制御処理について、図6を用いて説明する。
まず、図6のステップS101において、車速センサ60により検出される車速Vを取得すると、ステップS103において、車速Vが速度閾値Vo以上であるか否かについて判定される。ここで、速度閾値Voは、高速走行中であり、ステアリングホイール12への振動伝達が比較的少ないため、ステアリングの剛性感が重視される車速に相当する値に設定されている。
ステップS101により取得される車速Vが速度閾値Vo以上である場合には(S103でYes)、ステップS105において励磁処理がなされる。この処理では、ソレノイド46が駆動制御されて励磁状態となり、図4(B)に示すように、可動部材45がばね47の付勢力に抗して連結方向に移動し、各ボール45cと対応する連結穴48の連結部42dおよび連結部44aとがそれぞれ係合して連結状態となる。これにより、ステアリングの剛性感が確保されて操舵フィーリングを向上させることができる。
一方、ステップS101により取得される車速Vが速度閾値Vo未満である場合には(S103でNo)、ステップS105における励磁処理は実施されない。このため、図4(A)に示すように、ばね47により可動部材45が反連結方向に付勢されて各ボール45cと連結穴48とが離間する非連結状態が維持される。これにより、ラックアンドピニオン機構などの操舵輪側で発生する振動がステアリングホイール12へ伝達されることを防止することができる。
以上説明したように、本第2参考例に係る舵取装置10aでは、車両の車速Vを検出する車速センサ60が設けられており、ECU50は、車速センサ60により検出される車速Vが速度閾値Vo以上であるか否かの判定結果に応じてソレノイド46を励磁状態または非励磁状態に駆動制御して可動部材45を軸方向に可動させる。
これにより、車速Vが速度閾値Vo以上ではソレノイド46により可動部材45を連結方向に可動させて連結状態にすることでステアリングの剛性感が確保され、車速Vが速度閾値Vo未満ではばね47により可動部材45を反連結方向に可動させて非連結状態にすることでステアリングホイール12への振動伝達が抑制される。このように、車速Vに応じて各ボール45cと対応する連結穴48の連結部42dおよび連結部44aとを連結状態および非連結状態のいずれかに切り替えることにより、特別な操作をすることなく、ステアリングホイール12への振動伝達を防止するとともに操舵フィーリングを向上させることができる。
なお、車速Vに応じてソレノイド46を励磁状態または非励磁状態に駆動制御することに限らず、操舵トルクや操舵速度等の運転状況に応じて、ソレノイド46を励磁状態または非励磁状態に駆動制御してもよい。
図7は、第1実施形態に係る伝達機構を示す一部断面図である。
上記第1参考例および第2参考例にて述べた伝達機構40に代えて、図7に示す伝達機構40aを採用してもよい。この伝達機構40aは、可動部材45に代えて可動部材49を採用するとともに、4つの連結穴48を廃止した点が伝達機構40と異なる。
可動部材49は、上述した円板部45aおよび円柱部45bと、連結板49aとを備えており、連結板49aは、円柱部45bの外方であって円板部45aの側面に固定されている。
上述のように構成される伝達機構40aは、ソレノイド46の励磁により可動部材49がばね47の付勢力に抗して連結方向に移動すると、連結板49aの側面と入力軸42および円筒部材44の軸方向一端側48aとが面接触して連結状態となる。このように入力軸42と円筒部材44とを連結することにより、ステアリングの剛性感を確保して操舵フィーリングを向上させてもよい。
このように伝達機構40aを構成することにより、各ボール45cや保持器45d、各連結穴48を設ける必要がないので、当該伝達機構40aの製造コストを低減することができる。また、連結板49aの接触面の摩擦係数を調整することにより、入力軸42と円筒部材44との連結力を調整することができる。なお、連結板49aは、特許請求の範囲に記載の「連結部材」の一例に相当し、入力軸42および円筒部材44の軸方向一端側48aは、特許請求の範囲に記載の「第1連結部」および「第2連結部」の一例に相当する。
また、各ボール45cを連結穴48に係合することで入力軸42と円筒部材44とを連結して連結状態を維持することに限らず、可動部材の一部位を、入力軸42に形成される第1連結部と円筒部材44に形成される第2連結部との双方に同時に連結することで、入力軸42と円筒部材44とを連結して連結状態を維持してもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図8〜図10を参照して説明する。図8は、本第2実施形態に係る伝達機構70の構成概要を示す一部断面図であり、図8(A)は励磁前状態を示し、図8(B)は、励磁後状態を示す。図9は、本第2実施形態に係るECU50による摩擦力制御処理の流れを示すフローチャートである。図10は、摩擦力制御処理に用いられる車速−励磁電流マップの一例を示す説明図である。
本第2実施形態に係る舵取装置10aは、伝達機構40に代えて伝達機構70を新たに採用するとともに、ECU50では図6に示すフローチャートに基づく駆動制御処理に代えて図9に示すフローチャートに基づく摩擦力制御処理を実施する点が、上記第2参考例に係る舵取装置と異なる。したがって、第2参考例の舵取装置と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、伝達機構70は、主にハウジング71、入力軸72、第1円筒部材73、弾性部材74、第2円筒部材75、ソレノイド76、可動子77およびコイルばね78等とを備えている。
ハウジング71は、その外形形状が上記ハウジング41の外形形状に等しく形成されており、その内壁部71a中央には可動子77の軸方向一端側が摺動可能に係合する開口部71bが形成されている。このハウジング71は、上記ハウジング41のフランジ部41bと同様に、伝達比可変装置30の入力軸31に同軸的にセレーション結合されている。
入力軸72は、上述した小径部42bと、この小径部42bに同軸的かつ一体的に連結する円柱状の第1大径部72aおよび第2大径部72bとを備えている。入力軸72は、第2大径部72bの外周面にてハウジング71の内周面に対して接触するか僅かな隙間が設けられるように当該ハウジング71内に同軸的に配置されている。また、第2大径部72bの軸方向一端側の端面には、円板状のゴムシート等により形成される滑りシート72cが固定されており、この滑りシート72cは、後述するように可動子77にて押圧されるときこの押圧力を分散して第2大径部72bに均等に伝達するために設けられている。なお、滑りシート72cは、特許請求の範囲に記載の「弾性連結部材」の一例に相当する。
第1円筒部材73は、その内周面にて第1大径部72aの外周面に嵌合することで当該第1大径部72aに対して同軸的に固定されている。また、第2円筒部材75は、その外周面にてハウジング71の内周面に嵌合するとともにその軸方向他端側の端面にてハウジング71の段部71cに当接することで当該ハウジング71に対して同軸的に固定されている。
そして、加硫ゴムなどによって円筒状に形成される弾性部材74が第1円筒部材73の外周面と第2円筒部材75の内周面の双方に加硫接着されることで、入力軸72とハウジング71との間で回転が弾性的に伝達されることとなる。また、第1円筒部材73、弾性部材74および第2円筒部材75は、それぞれの軸方向一端側が入力軸72における第2大径部72bの軸方向他端側の端面である環状面72dに対して接触するか僅かな隙間が設けられるように配置されている。なお、第1円筒部材73および第2円筒部材75は、特許請求の範囲に記載の「第1回転部材」および「第2回転部材」の一例に相当し、第1円筒部材73の軸方向一端側および第2円筒部材75の軸方向一端側は、特許請求の範囲に記載の「第1連結部」および「第2連結部」の一例に相当する。また、第2大径部72bは、特許請求の範囲に記載の「連結部材」および「支持部材」の一例に相当する。
可動子77は、その一部がソレノイド76の内方に配置されるとともに、軸方向他端側に設けられるフランジ部77aの端面にて入力軸72の滑りシート72cに対向し、その軸方向一端側がハウジング71の開口部71bに摺動可能に係合するように形成されている。この可動子77は、図8(A)に示すように、ソレノイド76に励磁電流が供給されない非励磁状態ではコイルばね78により付勢されて、フランジ部77aの端面にて所定の間隔Xを介して滑りシート72cに対向するように位置する。ここで、本第2実施形態では、間隔Xは0(ゼロ)に設定されており、非励磁状態ではフランジ部77aの端面が滑りシート72cに接触するように可動子77および入力軸72等が組み付けられている。これにより、間隔Xを0(ゼロ)よりも大きな値に設定してフランジ部77aの端面と滑りシート72cとの間に所定の隙間を設けるように各部材を組み付ける場合と比較して、各部材を組み付けるための作業が容易になり、組付作業性を向上させることができる。なお、図3では、間隔Xを明示するためにフランジ部77aの端面と滑りシート72cとの間に所定の隙間を設けて示している。
また、可動子77は、図8(B)に示すように、ソレノイド76に励磁電流が供給される励磁状態では、ソレノイド76に発生する磁気吸引力に応じて入力軸72方向(以下、連結方向という)に移動するとともに、フランジ部77aの端面にて磁気吸引力に応じた押圧力により滑りシート72cを押圧する。このとき、フランジ部77aによる滑りシート72cの押圧により、入力軸72の環状面72dが、第1円筒部材73、弾性部材74および第2円筒部材75の軸方向一端側に押圧されることとなる。なお、ソレノイド76は、特許請求の範囲に記載の「可動手段」の一例に相当する。
コイルばね78は、可動子77の外縁部を軸方向に付勢するための部材であって、フランジ部77aの軸方向一端側の外縁部とハウジング71の内壁部71aの外縁部との間に配置されて、非励磁状態ではフランジ部77aの外縁部を連結方向に付勢し、励磁状態では当該外縁部を反連結方向に付勢するように構成されている。このコイルばね78は、後述するようにフランジ部77aが滑りシート72cを押圧する場合であってその押圧力が小さい場合に当該押圧力を安定して滑りシート72cに伝達するために設けられている。なお、コイルばね78は、特許請求の範囲に記載の「付勢部材」の一例に相当する。
次に、本第2実施形態に係るECU50による摩擦力制御処理について、図9を用いて説明する。
まず、図9のステップS201において、車速センサ60により検出される車速Vを取得すると、ステップS203において、励磁電流設定処理がなされる。この処理では、図10の車速−励磁電流マップに基づいて、車速Vに応じた励磁電流Iが設定される。
具体的には、図10に示すように、車速Vが比較的低速に設定されるV1以下であれば励磁電流Iは0(ゼロ)に設定され、車速VがV1より大きくかつ比較的高速に設定されるV2以下であれば、車速Vの増加に応じて励磁電流Iが単調増加するように設定され、車速VがV2より大きくなると励磁電流Iがステアリングの剛性感を好適に維持するための電流値Isに等しくなるように設定される。
上述のように励磁電流Iが設定されると、ステップS205において励磁処理がなされる。ステップS203にて設定された励磁電流Iが0(ゼロ)でなければ設定された励磁電流Iがソレノイド76に供給されることにより、この励磁電流Iに応じた磁気吸引力がソレノイド76に発生する。この磁気吸引力およびコイルばね78の付勢力に応じて可動子77が連結方向に移動して滑りシート72cを押圧すると、当該滑りシート72cを介することで入力軸72における第2大径部72bの軸方向一端側の端面全体に均等な押圧力が作用し、環状面72dが第1円筒部材73、弾性部材74および第2円筒部材75の軸方向一端側に対して同時に面接触して連結するように押圧される。
このとき、環状面72dと、第1円筒部材73、弾性部材74および第2円筒部材75との間には上記押圧力に応じた摩擦力が作用するので、この摩擦力が大きくなるほど第1円筒部材73と第2円筒部材75との連結が強化されて弾性部材74を介することによる第1円筒部材73と第2円筒部材75との回転のずれが小さくなる。すなわち、励磁電流Iが大きくなるほど入力軸72とハウジング71との回転のずれが小さくなるため、車速Vが比較的高速であることから励磁電流Iが大きく設定される場合には、当該伝達機構70をステアリングホイール12への振動伝達の抑制よりもステアリングの剛性感が重視された設定にすることができる。
また、車速Vが比較的低速であることから励磁電流Iが小さく設定される場合には、磁気吸引力が小さくなることから上記押圧力に応じた摩擦力が小さくなるため、弾性部材74を介することによる第1円筒部材73と第2円筒部材75との回転のずれが比較的大きくなるので、当該伝達機構70をステアリングの剛性感よりもステアリングホイール12への振動伝達の抑制が重視された設定にすることができる。
以上説明したように、本第2実施形態に係る舵取装置10aでは、入力軸72の第2大径部72bは、ソレノイド76の磁気吸引力による可動子77の連結方向への可動により、第1円筒部材73および第2円筒部材75の軸方向一端側に対して双方に同時に面接触可能に形成されている。そして、ECU50は、車速センサ60により検出される車速Vに応じて第2大径部72bと第1円筒部材73および第2円筒部材75とが接触する接触面(環状面72d)に発生する摩擦力を調整するようにソレノイド76を励磁して可動子77および入力軸72を連結方向に可動させる。
これにより、例えば、車速Vが増加するほど上記接触面に発生する摩擦力を増加させるように可動子77および入力軸72を連結方向に可動させることにより、その車速Vに応じたステアリングホイール12への振動伝達の抑制とステアリングの剛性感の確保との双方を実現することができる。
また、本第2実施形態に係る舵取装置10aでは、ソレノイド76が発生する磁気吸引力により移動する可動子77により、入力軸72の滑りシート72cを介して第2大径部72bを連結方向に可動させるため、上記押圧力が滑りシート72cにより均等に分散されるので、当該押圧力を第2大径部72bに均等に伝達することができる。
さらに、本第2実施形態に係る舵取装置10aでは、入力軸72の第2大径部72bの外縁部を軸方向に付勢するコイルばね78が設けられているので、上記摩擦力が小さい場合であっても当該摩擦力を安定して上記接触面(環状面72d)に発生させることができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)ボール45cおよび連結穴48はそれぞれ4つでなく、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。また、各ボール45cと対応する連結穴48が連結可能であれば、各ボール45cおよび各連結穴48は、周方向等間隔に配置されなくてもよい。
(2)弾性部材43の弾性力がそれぞれ異なる複数の伝達機構40を操舵系の途中に設けるとともに、ECU50は、運転状況に応じて、各伝達機構40における連結状態および非連結状態のいずれかを切り替えるために対応するソレノイド46を励磁して可動部材45を軸方向に可動させてもよい。
これにより、運転状況に応じて非連結状態にする伝達機構を選択することで、ステアリングの剛性感を多段階に調整することができる。具体的には、ステアリングの剛性感を比較的優先する場合には弾性力の低い弾性部材43を有する伝達機構40を複数連結状態にし、ステアリングホイール12への振動伝達の抑制を比較的優先する場合には弾性力の高い弾性部材43を有する伝達機構40を複数連結状態にすることで、ステアリングの剛性感の多段階調整が可能となる。
(3)ソレノイド46は、励磁状態で可動部材45をばね47の付勢力に抗して連結方向に移動させることに限らず、励磁状態で可動部材45をばね47の付勢力に抗して反連結方向に移動させてもよい。このとき、ばね47は、可動部材45を連結方向に付勢するように、伸張された状態でソレノイド46の外周側に配置される。
(4)可動部材45は、入力軸42に対して、凸状突起45eおよび凹状溝42cにより軸方向にのみ移動可能にガイドされることに限らず、例えば、入力軸42の内周面にて軸方向に延設して形成される凸状突起等のガイド部にガイド可能な凹状溝等の被ガイド部を設けることで、入力軸42に対して、軸方向にのみ移動可能にガイドされてもよい。
(5)上述した伝達機構40は、例えば、操舵系の1つである図略のインタミシャフトに搭載してもよいし、伝達比可変装置30の操舵輪側に配置してもよい。また、伝達機構40は、アシストモータから出力されるアシスト力を減速機を介してピニオン軸に伝達し得る、いわゆるコラム式の電動式動力舵取装置や、ラックアンドピニオンにアシストモータおよび減速機を内蔵しこのアシストモータから出力されるアシスト力を減速機を介してラック機構に伝達し得る、いわゆるラック式の舵取装置の操舵系の途中に設けられてもよい。このようにしても、ステアリングホイール12への振動伝達を防止するとともに操舵フィーリングを向上させることができる。
(6)操舵トルク、操舵角および操舵角の変化による操舵角速度の少なくともいずれか1つが所定の閾値を超える場合に、伝達機構40における連結状態と非連結状態とを切り替える制御をしてもよい。
(7)励磁状態において、ソレノイド76は、可動子77を反連結方向に付勢するコイルばね78の付勢力に抗じて当該可動子77を連結方向に移動させることに限らず、励磁状態時に可動子77を連結方向に付勢するコイルばね等の付勢力に抗じて当該可動子77を反連結方向に移動させることで、伝達機構70の連結状態と非連結状態とを切り替えてもよい。
(8)非励磁状態ではフランジ部77aの端面が滑りシート72cに接触することなく上記間隔Xが0(ゼロ)よりも大きな値になるように、可動子77および入力軸72等が組み付けられてもよい。