JP5358223B2 - 2サイクルエンジンの作動方法および2サイクルエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、請求項1の上位概念に記載の種類の2サイクルエンジンの作動方法に関し、さらには、請求項6の上位概念に記載の種類の2サイクルエンジンに関するものである。
特許文献1からは、吸気通路が混合気通路と空気通路とに分割された2サイクルエンジンが知られている。燃料が混合気通路から空気通路へ吸い込まれるのを回避するため、エアフィルタの浄化室は完全に2つのチャンバーに分離されている。
しかしながら、スロットルバルブ領域の非密封性のために燃料が混合気通路から空気通路内へ溢流することが明らかになった。これは、2サイクルエンジンの排ガス値が悪化するので望ましいものではない。
独国特許出願公開第10341230A1号明細書
本発明の課題は、優れた排ガス値を簡単に達成できる、2サイクルエンジンの作動方法を提供することである。さらに、優れた排ガス値を有する2サイクルエンジンを提供することをも課題とする。
この課題は、方法に関しては、請求項1の構成を備えた2サイクルエンジンの作動方法により解決される。また、2サイクルエンジンに関しては、請求項6の構成を備えた2サイクルエンジンにより解決される。
スロットルバルブがほぼ仕切り壁の方向に指向しているような作動状態で、実質的に、混合気通路の内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも低い時点または等しい時点でのみ、燃料を吸気通路に供給することにより、燃料が圧力差のために空気供給通路内へ吸い込まれるのを回避することができる。スロットルバルブ領域を密封するという面倒な構成は必要ない。必要とする切換え時間または制御時間が短いため、空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い時点でわずかな量の燃料を供給してよい。しかしながら、大部分の燃料量は、合目的には60%の燃料は、特に少なくとも80%の燃料は、有利には燃料の全量は、混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも高くないときに供給される。
空気供給通路を介して供給される、燃料をほとんど含んでいない空気は、掃気用予備蓄積空気として利用し、2サイクルエンジンの掃気通路内に予備蓄積させる。予備蓄積された掃気用予備蓄積空気は、ピストンの下降行程時に一部が排気通路を通じて排ガスと一緒に排出させることができる。燃料の供給時点を制御するために掃気用予備蓄積空気内にはごく少量の燃料しか含まれておらず、或いは、全く含まれていないので、優れた排ガス値が得られる。吸気通路内の圧力と空気供給通路内の圧力はそれぞれの通路の制御時間が異なっているために位相がずれており、この場合混合気通路内の圧力は,通常のように空気供給通路内の圧力よりも低い値に達する。特にピストンの上昇行程時には、混合気通路内の圧力は、2サイクルエンジンの構造に依存する時間帯にわたって、空気供給通路内の圧力よりも下にある。この時間帯に燃料を供給すると、燃料は混合気通路内へ吸い込まれる。空気供給通路内の圧力がより高いために、混合気通路から空気供給通路への著しい流動は生じない。仕切り壁またはスロットルバルブ領域で非密封性がある場合、通常どおり、空気供給通路から混合気通路への逆方向の流動が形成される。これにより空気供給通路内への燃料の溢流を簡単に防止することができる。
有利には、燃料を、吸気通路内に発生する負圧によって吸気通路に吸い込ませるのがよい。これにより、弁は、混合気通路内の圧力が空気通路内の圧力よりも高い時点でも、この時点で混合気通路内の圧力が燃料系統内の圧力よりも高ければ、開いている。吸気通路内の圧力がより高いため、燃料が吸気通路内へ吸い込まれることはない。これにより、無電流状態で開いている弁の場合には、エネルギーを節約することができる。弁は、吸気通路内の圧力が燃料系統内の圧力よりも低く、且つこれと同時に空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い場合にだけ、能動的に閉じればよい。
燃料がエアフィルタの浄化室を介して空気供給通路内へ達するのを防止するため、本発明によれば、混合気通路内の圧力がエアフィルタの浄化室内の圧力よりも高くない時点でのみ、少なくともスロットルバルブが仕切り壁の方向へ指向している作動状態で燃料を吸気通路に供給する。混合気通路内にはエアフィルタの浄化室に比べて負圧があることによって、エアフィルタの浄化室内への燃料の吹き戻しが回避される。燃料は燃料供給装置から混合気通路を介して2サイクルエンジンに吸い込まれ、通常は2サイクルエンジンのクランクケース内へ吸い込まれる。エアフィルタの浄化室を分割して密封する面倒は必要はない。同時に、混合気通路からエアフィルタの浄化室へ溢流する燃料によるエアフィルタの汚染も十分に回避することができる。
スロットルバルブがほぼ仕切り壁の方向に指向している作動状態は、有利には全負荷作動である。全負荷作動時には、スロットルバルブの位置のために、吸気通路は混合気通路と空気供給通路とに十分分割される。これにより、全負荷作動時に(通常2サイクルエンジンは全負荷で作動している)少ない排ガス値を達成できる。アイドリングまたは部分負荷のような他の作動状態では、2サイクルエンジンの良好な回転作動を達成するため、わずかな量の燃料を空気供給通路を介して供給するのが有利である。しかしながら、どの作動状態においても、実質的に、混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも高くなく、且つエアフィルタの浄化室内の圧力よりも高くない場合にだけ、燃料を混合気通路に供給するようにしてもよい。これにより2サイクルエンジンの排ガス値をさらに改善させることができる。
本発明によれば、燃料の一部のみを弁を介して供給し、他の、有利にはこれよりも少量の燃料を、弁の切換え位置に関係なく供給する。これは、たとえば、固定絞りを備えた燃料通路を介して行なうことができる。固定絞りは、弁の切換え状態に関係なく、どのような作動状態でも最少量の燃料を確保する。小さな排ガス値を達成するため、本発明によれば、吸気通路に供給される燃料の全量を弁を介して供給する。これにより、空気供給通路内への燃料の侵入を十分に回避できる。この場合、特に、作動中に吸気通路内に発生する負圧により燃料が吸気通路内へ吸い込まれる。これにより、弁は、吸気通路内の圧力が燃料系統内の圧力よりも低く、且つ空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い場合にだけ能動的に閉じればよい。
燃料供給装置を有している2サイクルエンジンであって、、燃料供給装置内に吸気通路の一部分が形成され、吸気通路が燃料供給装置の上流側でエアフィルタの浄化室と連通し、吸気通路が、燃料供給装置の下流側で仕切り壁により、燃料をほとんど含んでいない空気を供給するための空気供給通路と、燃料空気混合気を供給するための混合気通路とに分割され、吸気通路の前記一部分に、少なくとも1つの作動状態で仕切り壁の方向へ指向するスロットルバルブが回動可能に支持されている構成の2サイクルエンジンにおいては、燃料を供給するための弁が設けられている。2サイクルエンジンは、混合気通路の内の圧力と空気供給通路内の圧力との差圧を検出するための手段を有している。
圧力差を検知することで、1回のエンジンサイクルのどの時点で混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも低いか、或いは、どの時点でこれらの圧力が互いに対応しているかを検出することができる。もし混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも高ければ、燃料は供給されない。混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも低いか、或いは、これに対応している限りは、燃料を混合気通路に供給することができる。混合気通路内の圧力がより低いため、或いは、両通路の圧力が等しいため、燃料は混合気通路内へ吸い込まれるが、圧力差があるために通路分離部の非密封部または吸気通路の非分離領域を通じて空気供給通路内には達しない。
有利には、混合気通路の内の圧力とエアフィルタの浄化室内の圧力との差圧を検出するための手段が設けられているのがよい。これにより、燃料を、1回のエンジンサイクルのうち、混合気通路内の圧力がエアフィルタの浄化室内の圧力よりも低いか、これに等しい時点でのみ供給することができる。これにより、エアフィルタの浄化室内の負圧のために混合気が該浄化室へ吸い込まれるのを回避することができる。
有利には、混合気通路と空気供給通路との圧力差を検出するため、混合気通路内の圧力を検出するための手段と、空気供給通路内の圧力を検出するための手段とが設けられ、これら手段が制御部と接続されているのがよい。この場合、制御部において、検出された両圧力値の差圧を求めることができる。その際絶対圧を測定してよいが、有利には周囲に対する相対圧を圧力検出に関連付けるのがよい。エアフィルタの浄化室と混合気通路との圧力差を検出するため、有利には、エアフィルタの浄化室内の圧力を検出するための手段が設けられ、該手段が制御部と接続されているのがよい。
本発明によれば、燃料供給装置は、吸気通路に開口する少なくとも1つの燃料通路を有し、該燃料通路は該燃料通路を流れる燃料の流量を制御する前記弁によって制御されている。有利には、吸気通路に開口しているすべての燃料通路が該燃料通路を流れる燃料の流量を制御する前記弁によって制御されているのがよい。これにより、混合気通路内に空気供給通路および/またはエアフィルタの浄化室に対し過圧が支配する時点では燃料を吸気通路内へ供給しないようにすることができる。しかしながら、圧力状態に関係なく、少量の燃料を、前記弁によって制御されない別個の燃料通路を介して供給するのも有利である。この別個の燃料通路を介して非常時走行特性を確保することができる。前記弁が電磁弁であれば、構成が簡潔になる。電磁弁は、弁に対する制御時間が非常に短い。2サイクルエンジン、特に手で操縦される作業機の2サイクルエンジンは、ほぼ10000回転/分とほぼ14000回転/分との間の回転数で作動させることができる。これよりも高い回転数でもよい。前記弁は1回のエンジンサイクルのうち一部の範囲にわたってのみ開けばよいので、電磁弁によって実現可能な前記弁に対する切換え時間が非常に短くなる。
前記弁は無電流状態で開いているのが有利である。これにより、吸気通路内の負圧のために燃料が吸い込まれる場合、吸気通路内の圧力が燃料系統内の圧力よりも低く、且つ空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い場合にだけ、前記弁を操作すればよく、すなわち閉じればよい。これによりエネルギー消費量が少なくなる。切換え時間が非常に短いため、空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い場合に前記弁はまだ開いているか、或いは、すでに開いていてよい。これにより、空気供給通路内の圧力が混合気通路内の圧力よりも低い場合にも少量の燃料を供給することができる。このような構成は、前記弁のより正確な制御時間を極端な高コストでしか実現できない場合に、採用される。しかしながら、供給された燃料量のうち大部分の燃料量は、合目的には60%の燃料は、有利には少なくとも80%の燃料は、特に90%以上の燃料は、混合気通路内の圧力が空気供給通路内の圧力よりも高くないときに供給される。
有利には、スロットルバルブの上流側にチョークバルブが吸気通路内に配置されているのが有利である。通常の作動時には仕切り壁の方向に指向しているチョークバルブは、吸気通路を混合気通路と空気供給通路とにさらに分割(切離し)させ、その結果空気供給通路への燃料の直接的な溢流はチョークバルブによっても防止される。これら通路をさらに分割するため、本発明によれば、スロットルバルブとチョークバルブとの間に仕切り壁部分が配置されている。これにより、混合気通路と空気供給通路との十分な切離しが達成される。仕切り壁とスロットルバルブまたはチョークバルブとの間の領域の非密封性だけで、混合気通路から空気供給通路への燃料の溢流が行なわれることがある。これは、本発明によれば、圧力状態に依存して燃料絞りを位相制御することによって回避できる。
有利には、エアフィルタの浄化室が、空気供給通路にも混合気通路にも連通しているチャンバーを有しているのがよい。エアフィルタの浄化室での混合気通路と空気供給通路の切離しは必要ない。
燃料供給装置が、作動中に吸気通路内に発生する負圧により燃料が供給される気化器であれば、簡潔な構成が得られる。気化器は、必要な負圧を発生させるため、有利には、吸気通路の、混合気通路の上流側にある周領域に、ベンチューリ部を有している。ベンチュリー部は空気供給通路の領域にも延在していてよい。しかし、ベンチュリー部を空気供給通路の領域に延在しないようにしてもよい。
本発明によれば、2サイクルエンジンは少なくとも1つの掃気通路を有し、作動中に燃料をほとんど含んでいない空気が空気供給通路から該掃気通路に予め蓄積される。したがって、2サイクルエンジンは掃気用空気予備蓄積形式で作動する。
2サイクルエンジンの概略断面図である。 2サイクルエンジン作動時の混合気通路内および空気供給通路内の圧力の変化を示すグラフである。 図1の2サイクルエンジンの気化器の概略構成図である。
図1に概略を図示した2サイクルエンジン1は単気筒2サイクルエンジンであり、パワーソー、研削切断機、刈払い機等の手で操縦される作業機の工具を駆動するために用いるのが有利である。2サイクルエンジン1はシリンダ2を有し、シリンダ2内には燃焼室3が形成されている。燃焼室3はピストン5によって画成されている。ピストン5はシリンダ2内に往復動可能に支持され、連接棒6を介して、クランクケース4内に回転可能に支持されているクランク軸7を駆動する。クランクケース4は、ピストン5の下死点UTの範囲で、全部で4つの掃気通路13,15を介して燃焼室と連通する。掃気通路13,15はそれぞれ図1に図示した断面に関し左右対称に配置されている。この場合、2つの掃気通路15は燃焼室3から出ている排気通路17側に配置され、2つの掃気通路13は排気通路17とは逆の側に配置されている。掃気通路13は掃気窓14によって燃焼室3に開口し、掃気通路15は掃気窓16によって燃焼室3に開口している。
燃料供給のため、2サイクルエンジン1は、気化器18内に形成されている燃料供給装置を有している。気化器18内では吸気通路49の一部分が案内されている。吸気通路49内には、スロットルバルブ24がスロットル軸25により回動可能に支持されている。スロットルバルブ24の上流側には、チョークバルブ29がチョーク軸30により回動可能に吸気通路49内に支持されている。気化器18の上流側では、吸気通路49がエアフィルタ27の浄化室31に開口している。浄化室31はフィルタ材28によって周囲から切離されている。気化器18内にはベンチューリ部23が形成されており、ベンチューリ部23の領域では主燃料口20が吸気通路49に開口している。主燃料口20の下流側には副燃料口21が設けられ、副燃料口21も吸気通路49に開口している。副燃料口21と主燃料口20とはスロットルバルブ24およびチョークバルブ29の共通の側で吸気通路49に開口している。
図1が示すように、吸気通路49は気化器18の下流側で仕切り壁19によって混合気通路8と空気供給通路10とに仕切られている。主燃料口20と副燃料口21とは、吸気通路49の、混合気通路8の上流側にある領域に開口している。仕切り壁19には段部26が設けられ、段部26にはスロットルバルブ24が完全開弁位置において当接する。この完全開弁位置においてスロットルバルブ24は仕切り壁19の方向に指向し、仕切り壁19と同じ面内に位置する。スロットルバルブ24は、全負荷位置に相当するその完全開弁位置において、混合気通路8と空気供給通路10とをさらに分離させる。このときチョークバルブ29も完全開弁位置にあり、すなわちチョークを操作しない状態で仕切り壁19の方向に指向し、スロットルバルブ24と同じ面内で全負荷位置にある。スロットルバルブ24の全負荷位置を図3に図示した。
図1が示すように、混合気通路8は、混合気取り込み口9によって、シリンダ2の、ピストン5によって制御される領域に開口している。混合気通路8は、ピストン5の上死点OTの範囲で、混合気取り込み口9を介してクランクケース4と連通する。空気供給通路10は空気供給通路取り込み口11によってシリンダ2に開口している。空気供給通路取り込み口11は、ピストン5の上死点OTの範囲で、ピストン5に形成されているピストンポケット12を介して掃気通路13と15の掃気窓14と16と連通する。この場合、それぞれ1つのピストンポケット12がシリンダ2の各側に配置され、2つの掃気窓14,16と連通するために設けられているのが有利である。
2サイクルエンジン1の作動中に、ピストン5が上昇行程を実施すると、燃料空気混合気が混合気通路8を通じてクランクケース4内に吸い込まれる。掃気通路13と15には、燃料をほとんど含んでいない空気が空気供給通路10からピストンポケット12を介して予め蓄積される。ピストンの下降行程時には、まず混合気取り込み口9と空気供給通路取り込み口11とが閉じる。クランクケース4内の燃料空気混合気は圧縮される。ピストン5の下死点UTの範囲で掃気窓14,16が燃焼室3に対し開口する。その際、まず、予め蓄積されていた、燃料をほとんど含んでいない空気が空気供給通路10から燃焼室3内に流入し、次に燃料空気混合気がクランクケース4から流入する。ピストン5の上昇行程時に、燃焼室3内の燃料空気混合気が圧縮され、上死点OTの範囲で、燃焼室3内へ突出している点火プラグ22によって点火される。これによりピストン5はクランクケース4のほうへ加速される。ピストン5の下降行程時に、まず排気通路17が開口し、その結果排ガスを燃焼室3から排出できる。残りの排ガスは、掃気窓14,16を介して流入する掃気用予備蓄積空気によって排気通路17を通じて掃気される。
掃気用予備蓄積空気の一部は排ガスとともに排気通路17から掃気されるので、空気供給通路10内の空気に含まれる燃料は可能な限り少なくなければならない。図1に図示したスロットルバルブ24の部分負荷位置では、スロットル軸25と仕切り壁19の段部26との間に形成される隙間を通じて燃料が混合気通路18から空気供給通路10内へ達する。図3に図示したスロットルバルブ24の全負荷位置では、混合気通路8と空気供給通路10とは互いに十分に仕切られている。しかしながら、スロットルバルブ24の領域で両者を互いに完全に密封するには多大な構造コストが必要である。スロットルバルブ24の上流側にして該スロットルバルブ24とチョークバルブ29との間において混合気通路8と空気供給通路10とが連通することがある。スロットルバルブ24が完全に開弁した位置で、すなわち全負荷位置で、燃料が混合気通路8から空気供給通路10内へ達するのを回避するため、本発明によれば、混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pよりも小さいか等しいときに、正確に位相同期させて(phasengenau)燃料を装入させる。エアフィルタ27の浄化室31を介して燃料が混合気通路8から空気供給通路10内へ溢流するのを回避するため、本発明によれば、さらに、エアフィルタ27の浄化室31内の圧力pが混合気通路8内の圧力pよりも高いかこれに相当している場合にだけ、燃料が吸気通路49内へ供給される。この場合、それぞれ、少なくとも燃料量の大部分を、合目的には少なくとも60%を、有利には少なくとも80%を、特に少なくとも90%を、そして特に有利には燃料全量を前記時間で供給するのが好ましい。必要な切換え時間を必要な精度で実現するためにかなりの高コストを要する場合には、前記時間で燃料全量を供給しないのが有利である。これにより、混合気通路8から空気供給通路10内への燃料の吸込みを、または、エアフィルタ27の浄化室31への燃料の吸込みを、実質的に、特に完全に回避することができる。
図2は、混合気通路8、空気供給通路10、エアフィルタ27の浄化室31内の圧力経過を示している。この場合、圧力pの経過と時間tとの関係が図示されている。エアフィルタ27の浄化室31内の圧力pは実質的に一定である。しかしながら、作動中にわずかな圧力変動が生じることがである。圧力pの圧力レベルは、作動時間が経過するうちにフィルタ材28の汚染によって変化することがある。燃料系統内の圧力pはエアフィルタ27の浄化室31内の圧力pよりもいくぶん高いのが有利であり、場合によってはほぼ一定であるのが有利である。ピストン5の上昇行程の際に、まず混合気通路8内の圧力pが降下する。時間的にいくぶん遅れて、空気供給通路10内の圧力pが降下し始める。時間帯tの間、混合気通路8内の圧力pは空気供給通路10内の圧力pよりも小さい。本発明によれば、この時間帯tの間に燃料が供給される。この場合、燃料を時間帯tの間ずっと供給する必要はない。これは供給すべき燃料量に依存している。
上死点OTに達する前に、まず混合気通路8内の圧力pが上昇し、時間的に遅れて空気供給通路10内の圧力pが上昇する。上死点OTの範囲と上死点OTの後では、混合気通路8内の圧力pは空気供給通路10内の圧力pよりも上にある。したがって、空気供給通路10内では混合気通路8に比べて負圧が支配する。この負圧のために燃料が混合気通路8から非密封部を通じて空気供給通路10内へ吸い込まれる可能性がある。それ故、混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pよりも上にある時間帯tの間、燃料が混合気通路8内へ供給されるべきではない。ピストン5の上死点OTの後では、混合気通路8内の圧力pが再び降下し始めて、エアフィルタ27の浄化室31内の圧力pに相当するレベルに達する。この時点で混合気取り込み口9がピストン5によって閉鎖される。時間的に遅れて、空気供給通路10内の圧力pも降下して、エアフィルタ27の浄化室31内の圧力pに相当するレベルに達する。
第3の時間帯tの間は、混合気通路8内の圧力pは空気供給通路10内の圧力pよりも下にあるが、しかし混合気通路8内の圧力pはエアフィルタ27の浄化室31内の圧力pよりも上にあるか、或いは同レベルにある。混合気通路8内の圧力pが浄化室31内の圧力pよりも上にある間、燃料は供給すべきでない。有利には、圧力pが圧力pに相当している間も燃料は供給されないのがよい。というのは、この範囲では、空気供給通路10内の圧力pに対する圧力差は非常にわずかであり、しかも混合気通路8内の圧力と浄化室31内の圧力とが同圧であるために混合気通路8から浄化室31への燃料の逆流を完全に回避することができないからである。下死点UT範囲では、混合気取り込み口9も空気供給通路取り込み口11も閉鎖され、その結果混合気通路8内でも空気供給通路10内でも浄化室31の圧力レベルが支配する。時間帯tの間は、混合気取り込み口9と空気供給通路取り込み口11とは閉じている。この時間帯でも燃料の供給を行なわないのが有利である。時間帯tないしtを合わせた時間帯tは、クランク軸の1回転に相当する。燃料の供給は、混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pよりも下にあり、且つ浄化室31内の圧力pよりも下にある時間帯tでのみ行なうのが有利である。
図1が示すように、仕切り壁19はエアフィルタ27の浄化室31内へ延長されていてもよい。これを図1では概略を示した仕切り壁部分19”によって示唆した。
図3は気化器18の構成詳細図である。スロットルバルブ24は全負荷位置で図示されており、すなわち完全開弁位置で図示されている。スロットルバルブ24の下流側には仕切り壁19が配置され、仕切り壁19はスロットルバルブ24の方向に延在している。スロットルバルブ24とチョークバルブ29(同様に完全開弁位置で図示されている)との間には仕切り壁部分19’が配置されている。これにより混合気通路8と空気供給通路10とは互いに十分に切離されている。スロットルバルブ24とチョークバルブ29とを仕切り壁19の段部に当接させて、混合気通路8と空気供給通路10との十分な切離しを行なってもよい。浄化室31内にはチャンバー50が形成され、チャンバー50には、吸気通路49の、混合気通路8と連通している部分と空気供給通路10と連通している部分との双方が開口している。図3の図示では、浄化室31のチャンバー50は仕切り壁部分19”によって複数個のチャンバーに分割されていない。
浄化室31のチャンバー50内の圧力pを検知する圧力センサ56が設けられている。スロットルバルブ24の領域、または、スロットルバルブ24の下流側には、混合気通路8内の圧力pを検知する圧力センサ57と、空気供給通路10内の圧力pを検知する圧力センサ58とが設けられている。圧力センサ56,57,28は2サイクルエンジン1の制御部48に接続されている。制御部48は、さらに、2サイクルエンジン1の回転数nに対応する信号を発する回転数検知器にも接続されている。回転数検知器は、たとえばクランク軸7に配置されている発電機(図示せず)またはクランク軸センサであってよい。2サイクルエンジン1の点火モジュールによって発生する信号も回転数nの検知のために利用してよい。
気化器18は制御室34を有している。制御室34は燃料ポンプ32から燃料の供給を受ける。燃料ポンプ32は吸い込み弁33を介して制御室34と連通している。吸込み弁33は制御ダイヤフラム35によって制御され、吸込み弁33はこの制御ダイヤフラム35にレバー36を介して結合されている。制御ダイヤフラム35はたとえば周圧に依存して変位する。制御室34からは燃料通路37が出ており、燃料通路37内には電磁弁39が配置されている。電磁弁39は、浄化室31、混合気通路8、空気供給通路10内の圧力状態に依存して、且つ燃料系統内の圧力pに基づいて、制御部48により制御される。電磁弁39は、混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pおよび浄化室31内の圧力pよりも小さいときに開く。混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pおよび浄化室31内の圧力pに対応しているときに電磁弁39を開くようにしてもよい。燃料は、燃料系統内の圧力pが混合気通路8内の圧力pよりも大きいときに吸気通路49内へ吸い込まれる。図2が示すように、時間帯tおよびtの間の圧力pは部分的に燃料系統内の圧力pよりも上にある。これらの時間帯では、圧力pが高すぎるために燃料は吸い込まれない。これらの時間帯でも電磁弁39は開いていてよい。この場合、電磁弁39が無電流状態で開いているのが特に有利である。電磁弁39が時間帯tおよびtの間でも部分的に開いていることにより、エネルギーを節約することができる。電磁弁39の代わりに、切換え時間が短くて済むような他の型式の弁を使用してもよい。
図3において破線で示したバイパス通路38によって示唆したように、いかなる作動状態においても最少燃料供給量を確保するバイパス通路を電磁弁39に対し設けてもよい。有利には、バイパス通路38内に固定絞り40を配置するのがよい。バイパス通路38は電磁弁39の下流側で燃料通路37に開口している。燃料通路37には、加速ポンプ41と連通している管が開口している。燃料通路37は、絞り45と逆止弁46とを介して主燃料口20と連通している燃料通路51に燃料を供給する。燃料通路51は、ベンチュリー部23の領域に設けた主燃料口20を介して吸気通路49に開口しており、より厳密には、仕切り壁部分19’の混合気通路8側に開口している。燃料通路37からはアイドリング通路43が分岐している。アイドリング通路43は、絞り45と逆止弁46とを介してアイドリングチャンバー42と連通している。アイドリングチャンバー42からは燃料通路52,53,54が出ている。燃料通路52,53,54はそれぞれ絞り47を介して副燃料口21と連通している。
燃料通路37は、さらに、部分負荷通路44と連通している。部分負荷通路44は、絞り45と部分負荷燃料口55に設けた逆止弁46とを介して、混合気通路8の下流側で吸気通路49に開口している。
作動中、燃料は、混合気通路8内の負圧により、燃料口20,21,55を介して制御室34から吸い込まれる。燃料の供給量と、燃料を吸い込むことができる時点または時間帯とは、制御部48を介して電磁弁39の切換えにより決定される。これにより、空気供給通路10内または浄化室31内に混合気通路10に対し負圧が支配する限りは、バイパス通路38を介して燃料が供給されず、或いは、わずかな燃料しか吸い込まれないよう簡単に保証することができる。したがって、混合気通路8から空気供給通路10内への燃料の吸込みを簡単に回避することができる。
本発明によれば、わずかな量の燃料を、有利には燃料供給量の40%以下を、特に20%以下を、たとえば電磁弁39の達成可能な切換え時間の公差のために混合気通路8内の圧力pが空気供給通路10内の圧力pよりも高い場合にも、供給するようにしてもよい。
1 2サイクルエンジン
4 クランクケース
5 ピストン
8 混合気通路
10 空気供給通路
13,15 掃気通路
18 気化器
19 仕切り壁
19’ 仕切り壁部分
23 ベンチューリ部
24 スロットルバルブ
27 エアフィルタ
29 チョークバルブ
31 浄化室
39 電磁弁
44 部分負荷通路
48 制御部
49 吸気通路
50 浄化室内のチャンバー
51,52,53 燃料通路
エアフィルタの浄化室内の圧力
空気供給通路内の圧力
混合気通路内の圧力

Claims (16)

  1. 2サイクルエンジン(1)が燃料供給装置を有し、燃料供給装置内に吸気通路(49)の一部分が形成され、吸気通路(49)が燃料供給装置の上流側でエアフィルタ(27)の浄化室(31)と連通し、吸気通路(49)が、燃料供給装置の下流側で仕切り壁(19)により、燃料をほとんど含んでいない空気を供給するための空気供給通路(10)と、燃料空気混合気を供給するための混合気通路(8)とに分割され、吸気通路(49)の前記一部分に、少なくとも1つの作動状態で仕切り壁(19)の方向へ指向するスロットルバルブ(24)が回動可能に支持されている構成の2サイクルエンジン(1)の作動方法において、
    燃料を供給するための弁(39)を設け、少なくともスロットルバルブ(24)が仕切り壁(19)の方向へ指向している作動状態において、混合気通路(8)内の圧力(p)が空気供給通路(10)内の圧力(p)よりも高くない時点で、供給された燃料の少なくとも60%を前記弁(39)を介して吸気通路(49)に供給することを特徴とする作動方法。
  2. 混合気通路(8)内の圧力(p)がエアフィルタ(27)の浄化室(31)内の圧力(p)よりも高くない時点でのみ、少なくともスロットルバルブ(24)が仕切り壁(19)の方向へ指向している作動状態で燃料を吸気通路(49)に供給することを特徴とする、請求項1に記載の作動方法。
  3. 前記作動状態が全負荷作動であることを特徴とする、請求項1または2に記載の作動方法。
  4. 吸気通路(49)に供給される燃料の全量を前記弁(39)を介して供給することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の作動方法。
  5. 燃料を、作動中に吸気通路(49)内に発生する負圧によって吸気通路(49)に吸い込ませることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の作動方法。
  6. 燃料供給装置を有し、燃料供給装置内に吸気通路(49)の一部分が形成され、吸気通路(49)が燃料供給装置の上流側でエアフィルタ(27)の浄化室(31)と連通し、吸気通路(49)が、燃料供給装置の下流側で仕切り壁(19)により、燃料をほとんど含んでいない空気を供給するための空気供給通路(10)と、燃料空気混合気を供給するための混合気通路(8)とに分割され、吸気通路(49)の前記一部分に、少なくとも1つの作動状態で仕切り壁(19)の方向へ指向するスロットルバルブ(24)が回動可能に支持されている構成の2サイクルエンジン(1)において、
    燃料を供給するための弁(39)が設けられていること、
    混合気通路(8)の内の圧力(p)と空気供給通路(10)内の圧力(p)との差圧を検出するための手段が設けられていること、を特徴とする2サイクルエンジン。
  7. 混合気通路(8)の内の圧力(p)とエアフィルタ(27)の浄化室(31)内の圧力(p)との差圧を検出するための手段が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の2サイクルエンジン。
  8. 混合気通路(8)内の圧力(p)を検出するための手段と、空気供給通路(10)内の圧力(p)を検出するための手段とが設けられ、これら手段が制御部(48)と接続されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の2サイクルエンジン。
  9. エアフィルタ(27)の浄化室(31)内の圧力(p)を検出するための手段が設けられ、該手段が制御部(48)と接続されていることを特徴とする、請求項8に記載の2サイクルエンジン。
  10. 燃料供給装置が、吸気通路(49)に開口する少なくとも1つの燃料通路(51,52,53,54,44)を有し、該燃料通路(51,52,53,54,44)を流れる燃料の流量が前記弁(39)によって制御されていることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
  11. 吸気通路(49)に開口しているすべての燃料通路(51,52,53,54,44)を流れる燃料の流量が前記弁(39)によって制御されていることを特徴とする、請求項10に記載の2サイクルエンジン。
  12. 前記弁(39)が電磁弁であることを特徴とする、請求項6から11までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
  13. スロットルバルブ(24)の上流側にチョークバルブ(29)が吸気通路(49)内に配置され、スロットルバルブ(24)とチョークバルブ(29)との間に仕切り壁部分(19’)が配置されていることを特徴とする、請求項6から12までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
  14. エアフィルタ(27)の浄化室(31)が、空気供給通路(10)にも混合気通路(8)にも連通しているチャンバー(50)を有していることを特徴とする、請求項6から13までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
  15. 燃料供給装置が、作動中に吸気通路(49)内に発生する負圧により燃料が供給される気化器(18)であり、気化器(18)が、吸気通路(49)の、混合気通路(8)の上流側にある周領域に、ベンチューリ部(23)を有していることを特徴とする、請求項6から14までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
  16. 2サイクルエンジン(1)が少なくとも1つの掃気通路(13,15)を有し、作動中に燃料をほとんど含んでいない空気が空気供給通路(10)から該掃気通路(13,15)に予め蓄積されることを特徴とする、請求項6から15までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
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