JP5353800B2 - 炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法 - Google Patents

炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、化学気相堆積法(CVD, Chemical Vapor Deposition法)によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法に関する。
炭化珪素(SiC)単結晶は、絶縁破壊耐性、放射線耐性、高温環境耐性等に優れて、パワーデバイスへの応用に最も適した材料である。デバイス作製にあたっては、目的とするデバイス特性に合わせて、膜厚やドープ値を調整したエピタキシャル膜(以下、エピ膜と略す場合もある)をSiCベア基板上に作製する必要がある。
これまで、オフ角のないジャスト基板では、3Cをはじめとする異種ポリタイプの発生を抑制するために、CVD法によってエピタキシャル成長(以下、エピ成長と略す場合もある)させる場合には、1700〜1800℃の成長温度が必要であった。その後、C軸を[11-20]方向に8°オフした基板上を用いて、1600℃付近の低温でもエピ成長が可能であることが発見され、基板口径が2インチの場合は8°オフが一般的となった。ところが、バルク結晶をスライスしてオフ基板を作製するにあたり、オフ角度が小さい方が1つのバルク結晶からより多くのスライス基板が作製可能なことから、最近では、4°のオフ角を有した基板の使用が主流となっている。そして、基板口径が大きくなるにつれて、オフ角度の低減は更に進むことが予想される。
ところが、オフ角度が小さい基板では、原子ステップの間隔が広くなり、原子ステップ間に位置する(0001)面(以下、テラスと言う)が広くなる。テラスが広くなると、原料ガスの分解によって生成されたSiC分子がテラス上に飛来し、原子ステップに到達する前にテラス上で他のSiC分子と会合・結合して、2次元核を形成し易くなってしまう。
一般に、複数の原子から構成される化合物半導体では、エピ成長中に原子の積層順序の乱れが起こる。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)の場合、アンチフェイズドメイン(anti-phase domain)と呼ばれる鏡面対象の関係にある2種類の積層構造が現れる。ところが、GaAsでは2種類の積層構造であるが、SiCの場合は、積層構造の種類が極めて多様であり、その数は100種類を超える。積層構造は結晶形と1対1に対応することから、化学組成がSiCと表記されるものでも、SiCの結晶形は実に多様である。
多様な結晶形をポリタイプあるいは結晶多形と呼ぶが、結晶多形の主なものには4H、6H、15R、3C等がある。そして、SiCは、ポリタイプの影響により、GaAsに比べて遥かに積層構造の乱れが起こりやすく、SiCにおいては、積層乱れに抗する対策が極め重要になる。すなわち、テラス上に2次元核が発生すると、これを基点にエピ成長中に基板のポリタイプと異なるポリタイプがエピ膜に混入したり、原子ステップの移動がテラス上の2次元核によって阻害されて原子ステップが合体し、ステップバンチング(step-bunching)が形成され易くなるためである。
そのため、SiC単結晶基板上にエピタキシャル膜を成膜する上では、2次元核に起因する問題を克服する必要があり、これまでに様々な方法が提案されている。そのひとつは、エッチング作用を有するHClガスを添加した雰囲気にして、基板の表面にステップが現れるようにしながら、エピタキシャル膜を成膜する方法である(例えば特許文献1及び2参照)。また、所定の基板温度にした状態で、水素ガスとプロパンガスの混合ガスにより基板を清浄化してから、エピタキシャル膜を成長させる方法(特許文献3参照)や、バルク単結晶から切り出した際の基板表面の加工損傷を、化学的機械的研磨(CMP)や水素エッチングにより完全に除去してから、エピタキシャル膜を成膜する方法(特許文献4及び5参照)も提案されている。更に、特別なオフ角を見つけ出して、そのようなSiC基板を利用してエピ成長を行う方法(例えば特許文献6及び7参照)のほか、2次元核の形成確率が小さくなるように、予め、原料ガス中の炭素と珪素の原子数比(C/Si)を0.5以上1.0未満にして、SiC単結晶基板の表面に欠陥低減層を形成しておき、上記C/Si比を1.0以上1.5以下にして、この欠陥低減層の上に活性層を形成する方法(特許文献8参照)なども提案されている。
特開2006−321696号公報 特開2000−1398号公報 特開2005−64383号公報 特開2006−321707号公報 特開2007−182330号公報 特開2006−66722号公報 特開2007−131504号公報 特開2009−256138号公報
上述したように、CVD法による従来の炭化珪素エピタキシャル膜の製造では、事前にCMPや水素エッチングによりエピ成長させる基板の表面を平坦化したり(特許文献4及び5)、水素ガスとプロパンガスの混合ガスにより基板を清浄化してから(特許文献3)、エピタキシャル膜の結晶成長を行う方法であったり、特殊なオフ角を備えた基板を用いてエピ成長させることで(特許文献6及び7)、ステップバンチングやエピ成長欠陥の発生を未然に防ぐ方法や、あるいは、エピ成長のための原料ガス中にHClガスを含めて、基板をエッチングしながらエピタキシャル膜を成膜する方法(特許文献1及び2)が採用されている。これら以外に、SiC単結晶基板の表面に欠陥低減層を形成しておき、この上に活性層を形成するようなエピタキシャル膜の製造方法もある(特許文献8)。
ところが、洗浄したり平坦化した基板を用いる方法や、特殊な基板を用いる方法では、エピ成長中にテラスに2次元核が形成するおそれを完全に排除することは難しく、また、原料ガスとは異なる別のエッチングガスを含んだ雰囲気でエピ成長させる方法では、本来望まれる正常な成膜が阻害されるおそれもあり、いずれも高品質なエピタキシャル膜を製造する上で、十分な方法であるとは言えない。
したがって、上述のような2次元核に起因する問題を解消して、各種デバイスを形成しても不良デバイが発生しないような高品質のエピタキシャル膜を容易に形成できる方法が望まれている。
したがって、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、特殊なエッチングガス等を用いずとも、高品質のエピタキシャル膜を容易に製造することができる、新たな炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法を提供すること目的とする。
本発明者等は、上述の問題について、SiCエピタキシャル膜の成長過程を、SiC基板上での表面エネルギーの差異に注目して見直しを行ったところ、従来までの方法とは全く異なる新しい成膜方法を見出し、2次元核に起因する問題を解消することに成功したことから、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、後述するような知見に基づき発明された炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であり、その発明とするところは次のようである。
(1)化学気相堆積法によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であって、
圧力条件又は基板温度条件のうち、いずれか一方の条件を固定したまま、成膜途中で、他方の条件を、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えるようにし、その際、前記圧力条件を1.0×10 4 Pa以上3.0×10 4 Pa以下の範囲内で固定し、前記基板温度条件を、1700℃以上1750℃以下の範囲内で設定した高温設定条件と、1600℃以上1650℃以下の範囲内で設定した低温設定条件との間で切り替えることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
化学気相堆積法によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であって、
圧力条件又は基板温度条件のうち、いずれか一方の条件を固定したまま、成膜途中で、他方の条件を、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えるようにし、その際、前記基板温度条件を1600℃以上1750℃以下の範囲内で固定し、前記圧力条件を、2.0×104Pa以上3.0×104Pa以下の範囲内で設定した高圧設定条件と、0Pa超1.0×104Pa以下の範囲内で設定した低圧設定条件との間で切り替えることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
)前記切り替えする条件が圧力条件の場合、1度の切り替えで高圧設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下であり、一度の切り替えで低圧設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下である()に記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
)前記切り替えする条件が基板温度条件の場合、1度の切り替えで高温設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下であり、1度の切り替えで低温設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下である(1)に記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
)前記切り替えで高い設定条件下にして行う成膜工程において、エピタキシャル膜の原料ガス中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si)を1.0以上1.5以下にし、また、前記切り替えで低い設定条件下にして行う成膜工程において、エピタキシャル膜の原料ガス中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si)を0.1以上0.5以下にする(1)〜()のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
)前記炭化珪素単結晶基板上に、膜厚5μm以上50μm以下の炭化珪素エピタキシャル膜を成膜させる(1)〜()のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
本発明によれば、異種ポリタイプの混入やステップバンチングを引き起こす2次元核を除去しながら、高品質のSiCエピタキシャル膜を成長させることができる。また、特殊なエッチングガス等を用いずとも、高品質のエピタキシャル膜を容易に製造することができる。そのため、得られたSiCエピタキシャル膜は、ダイオード、トランジスタ、MOSFET、IGBT等のパワーデバイス材料や、MESFET、LED等の窒化物半導体デバイスをはじめ、各種電子デバイス向けの半導体材料として好適に利用することができる。
図1は、本発明の製造方法において、圧力条件又は基板温度条件のいずれか一方を環境パラメーターとして利用し、他方を安定化パラメーターとして利用する様子を説明する模式図である。 図2は、実施例1で製造したSiCエピタキシャル膜に含まれるエピ欠陥を光学顕微鏡で検知した例である。 図3は、実施例1で製造したSiCエピタキシャル膜の表面粗さをAFMで走査した観察像である。 図4は、比較例1で製造したSiCエピタキシャル膜の表面粗さをAFMで走査した観察像である。
先ず、CVD法によるSiCエピタキシャル膜の成長過程、及び、SiC基板上での表面エネルギーの差異について述べる。
SiCエピタキシャル膜の成長素過程は、原料ガスが分解して生成された珪素原子及び炭素原子、或いは両者が結合した分子状集合体が、基板表面の原子ステップに取り込まれることにより行われる。一方、正常な成膜を阻害する2次元核は、原料ガスから生成された珪素原子及び炭素原子、或いはこれらの分子状集合体が、SiC基板表面の原子ステップ間に位置する(0001)Si面又は(0001)C面のテラス上でSiCとして堆積・固着することによって形成される。
ここで、SiC基板の表面での原子ステップと2次元核との構造安定性を比べると、テラス上に形成される2次元核の方が、対向する空間により広く曝露されていることから表面エネルギーが高いと言え、不安定である。そして、原子ステップと2次元核とが、SiCが堆積するエピ成長条件下におかれた場合を想定すると、両者の表面エネルギーの差により、2次元核の形成・成長に比べて、原子ステップへのSiCの取り込みと、原子ステップの前進の方が、盛んになると考えられる。一方、原子ステップと2次元核とが、SiCの分解・再蒸発条件下におかれた場合を想定すると、やはり両者の表面エネルギーの差により、原子ステップからのSiCの離脱・再蒸発や、原子ステップの後退に比べて、2次元核の分解・再蒸発の方が盛んになると考えられる。
つまり、SiCが堆積する環境下でも、SiCが分解・再蒸発する環境条件下のいずれとも、原子ステップは、2次元核に比べて安定であって、優勢な構造であると言える。
このような考え方に基づき、本発明では、SiCが堆積するエピタキシャル成長条件にて原子ステップの前進による成長を促進させ、成膜段階の途中で、あえて圧力条件又は基板温度条件のいずれか一方をSiCが堆積する条件から外し、SiCが分解・再蒸発する条件にして、2次元核の分解・再蒸発を促進させることで、結果的に、異種ポリタイプの混入やステップバンチングを引き起こす2次元核を除去しながら、高品質のSiCエピタキシャル膜を成長させることに成功した。
すなわち、本発明は、化学気相堆積法によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であって、圧力条件又は基板温度条件のうち、いずれか一方の条件を固定したまま、成膜途中で、他方の条件を、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法である。
本発明では、図1に示すように、圧力条件又は基板温度条件のいずれか一方を、設定した条件のまま固定してSiCの成膜を行い(図中の条件I)、他方の条件は、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えて、成膜途中に変調させる(図中の条件II)。これら圧力条件又は基板温度条件は、互いに独立して、原子ステップの前進や2次元核の分解・再蒸発を制御でき、SiCエピタキシャル膜を成長させる基板表面の安定性を決めるパラメーターになる。そこで、本発明では、これらのパラメーターを基板表面の安定性を制御する目的で、意図して変調させる場合を安定化パラメーターと呼び、変調させずに固定するパラメーターを環境パラメーターと呼び、両者を区別する。
すなわち、圧力条件を環境パラメーターにした場合は、成膜途中に高温設定条件(II-1)と低温設定条件(II-2)との間で切り替えを行い、2次元核の分解・再蒸発と原子ステップの前進とをそれぞれ促進させるように、基板温度条件を安定化パラメーターとして利用する。逆に、基板温度条件を環境パラメーターにした場合は、成膜途中に高圧設定条件(II-1)と低圧設定条件(II-2)との間で切り替えを行い、原子ステップの前進と2次元核の分解・再蒸発とをそれぞれ促進させるように、圧力条件を安定化パラメーターとして利用する。
先ず、環境パラメーターとして利用する条件(すなわち成膜途中で固定する条件)については、安定化パラメーターとして利用する条件(すなわち成膜途中で切り替える条件)を高低の設定条件間で切り替えることで、SiCが堆積するエピ成長条件と、SiCが分解・再蒸発する条件とを作り出せる環境に設定するのが良い。このような観点から、圧力条件を環境パラメーターにする場合は、好ましくは1.0×104Pa以上3.0×104Pa以下の範囲内である。1.0×104Pa未満では、エピ成長速度が十分得られない場合がある。3.0×104Paを超えると、良質なエピ成長膜が得られない場合がある。より好ましくは1.5×104Pa以上2.5×104Pa以下の範囲内で設定するのが良い。一方、基板温度条件を環境パラメーターにする場合は、好ましくは1600℃以上1750℃以下の範囲内である。1600℃未満であると、原料ガスが十分に分解せずにSiCの堆積が効率よく行われない場合がある。1750℃を超えると、表面からの原子の再蒸発が生じやすくなり、成長速度の低下や表面荒れ等が発生し易くなる場合がある。より好ましくは1625℃以上1675℃以下の範囲内で設定するのが良い。
次に、安定化パラメーターとして利用する条件について、高い設定条件下では、SiCの取り込みによる原子ステップの前進が促進されるようにするのが良く、低い設定条件下では、2次元核の分解・再蒸発が促進されるようにするのが良い。このような観点から、基板温度条件を環境パラメーターにして、圧力条件を安定化パラメーターにする場合、高圧設定条件として、好ましくは2.0×104Pa以上3.0×104Pa以下の範囲内である。2.0×104Pa未満では、SiCの取り込みによる原子ステップの前進が進みに難くなり、効率的なエピ成長が得られない場合がある。3.0×104Paを超えると、SiCの堆積速度が大きくなり、良質なエピ膜が得られない場合がある。高圧設定条件として、より好ましくは2.3×104Pa以上2.8×104Pa以下の範囲内で設定するのが良い。一方、低圧設定条件としては、好ましくは0Pa超1.0×104Pa以下の範囲内である。2次元核の分解・再蒸発には圧力が低いほど効率的であるが、2次元核の分解・再蒸発が生じている条件で圧力をゼロに保つことができないために、下限を0Pa超としている。1.0×104Paを超えると、2次元核の分解・再蒸発が十分促進されない場合がある。低圧設定条件として、より好ましくは1.0×103Pa以上6.0×103Pa以下の範囲内で設定するのが良い。
また、圧力条件を環境パラメーターにして、基板温度条件を安定化パラメーターにする場合、高温設定条件としては、好ましくは1700℃以上1750℃以下の範囲内である。1700℃未満では、SiCの取り込みによる原子ステップの前進が進みに難くなり、効率的なエピ成長が得られない場合がある。1750℃を超えると、SiCの堆積速度が大きくなり、良質なエピ膜が得られない場合がある。高温設定条件として、より好ましくは1720℃以上1740℃以下の範囲内で設定するのが良い。一方、低温設定条件としては、好ましくは1600℃以上1650℃以下の範囲内である。これらの範囲から外れると、2次元核の分解・再蒸発が十分に促進されない場合がある。低温設定条件として、より好ましくは1620℃以上1640℃以下の範囲内で設定するのが良い。
また、本発明におけるSiCエピタキシャル膜の製造方法では、安定化パラメーターとして利用する条件を成膜途中で切り替えながら成膜するのが好ましい。すなわち、高い設定条件下で行われる成膜工程(II-1)と、低い設定条件下で行われる成膜工程(II-2)とを、それぞれ2回以上含むようにして交互に繰り返して、原子ステップにSiCを取り込ませて原子ステップを前進させる工程と、正常な成膜を阻害する2次元核を分解・再蒸発させる工程とを交互に行い、エピタキシャル膜を製造するのが好ましい。
ここで、各成膜工程の長さ(時間)については、少なくともそれぞれの工程での目的が達成できるようにすると共に、切り替え直前の工程の長さと調整しながら設定するようにするのが良い。圧力条件を安定化パラメーターにする場合、好適には、1度の切り替えで高圧設定条件にして行う成膜工程の時間(t1)は1分以上10分以下であるのが好ましい。前記t1が、1分未満であると、エピ成長が十分進まずエピ膜を得るのに時間がかかり過ぎる場合がある。前記t1が、10分を超えると、2次元核の発生が抑制できず、良好なエピ膜が得られない場合がある。また、一度の切り替えで低圧設定条件にして行う成膜工程の時間(t2)は1分以上10分以下であるのが好ましい。前記t2が、1分未満であると、2次元核を分解・再蒸発させることが十分でない場合がある。前記t2が、10分を超えると、2次元核以外の表面原子も多く除去されるようになる場合があり、効率的なエピ成長が行えない場合がある。
同様に、基板温度条件を安定化パラメーターにする場合、好適には、1度の切り替えで高温設定条件にして行う成膜工程の時間(t1)は1分以上10分以下であるのが好ましい。前記t1が、1分未満では、2次元核を分解・再蒸発させることが十分でない場合がある。前記t1が、10分を超えると、2次元核以外の表面原子も多く除去されるようになる場合があり、効率的なエピ成長が行えない場合がある。また、一度の切り替えで低温設定条件にして行う成膜工程の時間(t2)は1分以上10分以下であるのが好ましい。前記t2が、1分未満では、エピ成長が十分進まずエピ膜を得るのに時間がかかり過ぎる場合がある。前記t2が、10分を超えると、2次元核の発生が抑制できず、良好なエピ膜が得られない場合がある。
また、各成膜工程の回数については、SiC単結晶基板上に成長させるエピタキシャル膜の膜厚によっても異なるが、例えば最終的に厚さ10μmのSiCエピタキシャル膜を製造する場合、各成膜工程がそれぞれ合計10〜200回程度含まれるようにして、原子ステップを前進させる工程と2次元核を分解・再蒸発させる工程とを交互に繰り返すようにするのが良い。本発明では、得られたSiCエピタキシャル膜は、パワーデバイス材料をはじめ、各種半導体デバイス材料として利用できることから、SiC単結晶基板上に成長させるSiCエピタキシャル膜の膜厚は5μm以上50μm以下であるのが好適である。但し、膜厚は、目的とするSiCエピタキシャル膜の用途等に応じて変動するものであり、先に述べた各成膜工程の長さやその回数を含めて、これらに制限されない。また、高い設定条件の成膜工程と低い設定条件の成膜工程との間での切り替えに際しては、圧力条件又は基板温度条件を昇降させるのに所定の切り替え時間を設けるようにしてもよい。
ところで、SiCエピタキシャル膜の原料として供給する原料ガスは、原子ステップの前進や2次元核の分解・再蒸発に少なからず影響してくるものと考えられる。そのため、本発明では、圧力条件及び基板温度条件に加えて、ケイ素源ガスと炭素源ガスとを含んだ原料ガス濃度を、環境パラメーターや安定化パラメーターとして利用するようにしても良い。すなわち、原料ガス濃度を環境パラメーターとして利用する場合、原料ガス中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si)は、好ましくは0.5以上2.0以下の範囲であるのが良く、より好ましくは1.0以上1.5以下の範囲であるのが良い。一方、原料ガス濃度を安定化パラメーターとして利用する場合、高C/Si設定条件としては、1.0以上1.5以下の範囲であるのが好ましい。高C/Si設定が、1.0未満であると、Si原子が過剰となり原子ステップの前進が阻害されステップバンチングが発生する。高C/Si設定が、1.5を超えると、C原子が過剰となり原子ステップの先進が阻害されステップバンチングが発生する。高C/Si設定条件として、より好ましくは1.1以上1.3以下の範囲であるのが良い。また、低C/Si設定条件としては、0.1以上0.5以下の範囲であるのが好ましい。低C/Si設定が、0.1未満であると、Si原子が過剰となり基板表面にSi液滴という異物が形成され問題である。低C/Si設定が、0.5を超えると、Si原子が不足し、2次元核の分解・再蒸発の過程で原子ステップからSi原子が選択的に脱落し、表面荒れをもたらす。低C/Si設定条件として、より好ましくは0.1以上0.3以下の範囲であるのが良い。
なお、原料ガス濃度を安定化パラメーターとして利用する場合、圧力条件又は基板温度条件のいずれか一方の安定化パラメーターの切り替え動作から独立して制御することも可能ではあるが、原子ステップにSiCを取り込ませて原子ステップを前進させる工程と、正常な成膜を阻害する2次元核を分解・再蒸発させる工程とのそれぞれの目的をより確実に達成するために、圧力条件又は基板温度条件のいずれか一方の安定化パラメーターの切り替え動作と連動させて、高い設定条件の成膜工程(II-1)において高C/Si設定条件となるように切り替えし、低い設定条件の成膜工程(II-2)において低C/Si設定条件となるように切り替えするのが好ましい。
本発明において、安定化パラメーターとして「高い設定条件」と「低い設定条件」とを設ける趣旨は、次のように説明することができる。すなわち、本発明におけるエピタキシャル膜の製造方法では、原子ステップを前進させる工程と、2次元核を分解・再蒸発させる工程とを交互に繰り返すものであり、このうち、前者の工程は、従来知られているエピタキシャル膜の成長工程に相当するものである。一方、後者の工程は、エピタキシャル膜の品質劣化を引き起こす原因となる2次元核をテラス上から除去する工程である。本発明では、この2次元核を分解・再蒸発させる工程を交互に登場させることで、エピタキシャル膜の高品質化を達成できる。そのため、2次元核を分解・再蒸発させる工程では、分解・再蒸発作用を確実に実現することを基本的な考え方としており、原子ステップの後退、言い換えればエピタキシャル膜厚の減少をも許容するものである。
詳しくは、安定化パラメーターが「高い設定条件」にある成膜工程では、例えば、ホットウォールCVD装置において、キャリアガスとして1.69×102Pa m3/s(100SLM)前後のH2を供給し、珪素源ガスとして8.45×10-2Pa m3/s(50sccm)前後のモノシラン(SiH4)を供給し、炭素源ガスとして1.27×10-1Pa m3/s(75sccm)前後のメタン(CH4)を供給した場合に、6μm/Hr程度の成長速度でエピタキシャル膜を成長させることができ、得られるエピタキシャル膜は5.0個/cm2程度のエピ欠陥密度を有し、表面粗さRa(μ-roughness Ra)が2nm程度の品質になることが想定される。一方、安定化パラメーターが「低い設定条件」にある成膜工程では、同じくホットウォールCVD装置において、上記と同じキャリアガス、珪素源ガス、及び炭素源ガスの供給条件下では、10分間で0.1〜1.0μm程度の厚さのエピタキシャル膜が減少するが、「低い設定条件」にある成膜工程を通じて得られるエピタキシャル膜の表面粗さRaは、1nm程度に収めることができる。
SiCエピタキシャル膜の原料ガスとしては、CVD法等で一般に使用されるものを用いることができ、ケイ素源ガスとしては、例えばモノシラン、ジシラン、ジクロルシラン、トリクロルシラン等が例示でき、炭素源ガスとしては、例えばプロパン、メタン、エタン、エチレン、アセチレン等が例示できるが、これらに制限されない。また、これらの原料ガスは、ArやHe等の希ガスやH2ガス等をキャリアガスとして用いて供給するようにしてもよい。キャリアガスの種類や、キャリアガスに対する各原料ガスの比率(濃度)については、一般的なCVD法等と同様であり、特に制限はない。更には、目的とするエピタキシャル膜の用途等に応じて、窒素ガス等のドナー不純物を供給してエピタキシャル膜をn型化したり(場合によってはp型化したり)、そのキャリア濃度を調整するようにしてもよい。なお、本発明の目的から外れない範囲であれば、HCl、ジククロールシラン、トリクロルシラン等のCl原子を含むガスを供給しながら、SiCエピタキシャル膜を製造するようにしてもよい。
SiCエピタキシャル膜を成長させるSiC単結晶基板については、CVD法等で一般に使用されるものを用いることができ、オフセットの方向や角度のほか、基板の面方位等について特に制限はないが、本発明では、原子ステップの前進と、2次元核の分解・再蒸発とを交互に繰り返しながらエピタキシャル膜を成長させていくため、2次元核が形成され易く、従来、その問題が顕著であったような、(0001)面から[11-20]方向に4°以下のオフ角を有したSiC単結晶基板に対しても、高品質のSiCエピタキシャル膜を製造することができる。また、本発明の方法は、CVD法を用いたSiCエピタキシャル膜の製造に好適であるが、これに類似の方法を用いてSiCエピタキシャル膜を製造するようにしても同様の作用効果が得られる。なお、MCP(Mechano-Chemical Polishing)を施して基板加工に起因するダメージを排除したり、洗浄して研磨砥粒等の残渣を除去したSiC単結晶基板を用いて、エピ成長させるのが望ましいのは勿論のことであり、また、SiCエピタキシャル成長に先駆けて、成膜装置に装着した基板をHClガス等でエッチングするなど、公知の浄化処理を施した後に、本発明の方法によってSiCエピタキシャル膜を製造するようにしてもよい。
以下、実施例等に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の内容に制限されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、圧力条件を安定化パラメーター(図1中の条件II)として利用し、基板温度条件及び原料ガス濃度条件を環境パラメーター(図1中の条件I)として利用して、SiCエピタキシャル膜を製造した例である。
エピタキシャル成長を行う基板は口径3インチであり、ポリタイプが4H型のSiC単結晶基板である。このSiC単結晶基板は、窒素ドープによりn型化したSiCインゴットから、<0001>c軸に対して[11-20]方向に4°のオフ角を有するように切り出した。切り出し後、ダイヤモンド砥粒の粒度を順次細かくしながら、粗LAP(Lapping)、仕上げLAP、鏡面研磨の順に加工し、鏡面化した。更に、基板表面の加工ダメージを除去するためにMCPを行った。研磨剤としては、砥粒サイズ0.5μmのコロイダルシリカスラリーを用い、これに次亜塩素酸ナトリウムを加えて、基板表面に対する酸化力を強化するようにした。この研磨剤を用いて、研磨布を貼った研磨盤で基板のSi面に2時間のMCPを施した。研磨後はSC−1(パーティクル除去を目的としたアンモニア水−過酸化水素からなるStandard Clean 1)、5%HF、SC−2(金属不純物除去を目的として塩酸−過酸化水素からなるStandard Clean 2)の各洗浄液を用いて順次洗浄を行い、基板表面の研磨砥粒及び金属汚染を除去して、エピタキシャル成長用のSiC単結晶基板を準備した。
上記で用意したSiC単結晶基板をホットウォールCVD装置に装着し、キャリアガスとしてH2ガスを1.3519×102Pa m3/s(80SLM)の流量で流しながら、圧力2.0×104Paにして、基板温度を1650℃に昇温した。昇温完了後、モノシラン(SiH4)を6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)、及びメタン(CH4)を8.112×10-2Pa m3/s(48sccm)供給して、キャリアガスに対するケイ素源ガスの分子数比を5×10-4とすると共に、原料ガス中の炭素と珪素の原子数比(C/Si)を1.2として成膜を開始し、この状態を4分間保持した。なお、図1に従えば、この実施例1で言う圧力2.0×104Paが安定化パラメーターのII-1の条件に相当し、ここで言う成膜時間4分がt1に相当する。
成膜を開始して4分後、基板温度及び原料ガス濃度は上記の条件で固定したまま、安定化パラメーターの圧力条件を0.5×104Paに切り替えて(II-2の条件に相当)、4分間の成膜を行った(t2に相当)。この際、圧力条件を降圧するのに1分間の時間を要するようにした。その後、同様に基板温度及び原料ガス濃度は固定したまま、昇圧に1分間の時間をかけて、圧力条件を再び2.0×104Paに切り替えて4分間の成膜を行い、以降、このような切り替え動作を繰り返して合計2時間の成膜を行い、高圧設定条件下では、原子ステップの前進によって駆動されるエピタキシャル膜の成長を行い、低圧設定条件下では、テラス上の2次元核の分解・再蒸発を行って、最終的に、SiC単結晶基板上に厚さ8μmのSiCエピタキシャル膜を成膜した。
成膜終了後、得られたSiCエピタキシャル膜のエピ欠陥及びステップバンチングを以下のようにして評価した。エピ欠陥については、ノマルスキー式微分干渉光学顕微鏡を用いて、SiC単結晶基板の中心に相当する位置を通りながら、基板の1stオリフラに対して平行方向にエピタキシャル膜の表面を走査し、同じく基板の中心に相当する位置を通りながら、基板の1stオリフラに対して垂直方向にエピタキシャル膜の表面を走査した。その際、倍率100倍で検知されたエピ欠陥を計数し、観察面積で除算することによってエピ欠陥密度を求めたところ、1.2個/cm2であった。図2に光学顕微鏡で検知したエピ欠陥の一部を示す。また、ステップバンチングについては、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)を用いて観察及び定量化を行った。定量化にあたっては、面積10×10μm2を走査し、表面粗さ(μ-roughness Ra)を用いて評価したところ、SiC単結晶基板の中央に相当するエピタキシャル膜のRaは0.23nmであった。図3にAFMで走査したSiCエピタキシャル膜の表面粗さを示す。なお、RaはJIS B0601に規定する算術平均粗さである。
この実施例1において、SiCエピタキシャル膜を成膜する際に使用した圧力、基板温度、及び原料ガス濃度の3つのパラメーターについて、安定化パラメーターと環境パラメーターとの区別を表1にまとめた。あわせて、得られたSiCエピタキシャル膜の評価を示す。なお、表1において、塗りつぶした丸を付した条件は安定化パラメーターを表し、白抜きの丸を付した条件は環境パラメーターを表す。
(実施例2)
実施例2は、基板温度条件を安定化パラメーター(図1中の条件II)として利用し、圧力条件及び原料ガス濃度条件を環境パラメーター(図1中の条件I)として利用して、SiCエピタキシャル膜を製造した例である。
エピタキシャル成長を行う基板は実施例1と同様にして用意したものを使用し、これをホットウォールCVD装置に装着した。キャリアガス(H2)を実施例1と同じ条件で供給しながら、圧力2.0×104Paにして、基板温度を1650℃まで昇温した。昇温完了後、実施例1と同じ条件になるようにモノシラン(SiH4)及びメタン(CH4)を供給して成膜を開始し、この状態を4分間保持した。なお、この実施例2で言う基板温度1650℃は、安定化パラメーターの低温設定条件(II-2)に相当する。
成膜を開始して4分後、圧力条件及び原料ガス濃度は上記の条件で固定したまま、安定化パラメーターの基板温度条件を1750℃に切り替えて(II-1の条件に相当)、4分間の成膜を行った。この際、基板温度を昇温するのに1分間の時間を要するようにした。以降、同様にして基板温度のみを高温設定条件と低温設定条件との間で切り替えて、高温設定条件下では、原子ステップの前進によって駆動されるエピタキシャル膜の成長を行い、低温設定条件下では、テラス上の2次元核の分解・再蒸発を行うようにして、高温設定条件の成膜工程(4分間)と低温設定条件の成膜工程(4分間)とを交互に繰り返しながら合計2時間10分の成膜を行い、最終的に、SiC単結晶基板上に厚さ8μmのSiCエピタキシャル膜を得た。
成膜終了後、得られたSiCエピタキシャル膜について、実施例1と同様にしてエピ欠陥及びステップバンチング(表面粗さ)を評価したところ、エピ欠陥密度は1.1個/cm2であり、Raは0.23nmであった。この実施例2で使用した安定化パラメーターと環境パラメーターとの区別を表1にまとめ、得られたSiCエピタキシャル膜の評価をあわせて示す。
(実施例3)
実施例3は、圧力条件を安定化パラメーターとして利用すると共に、この圧力条件の切り替え動作に連動させるように、原料ガス濃度についても安定化パラメーターとして利用した製造例であり、基板温度を環境パラメーターとして、SiCエピタキシャル膜を製造した。
エピタキシャル成長を行う基板は実施例1と同様にして用意したものを使用し、これをホットウォールCVD装置に装着した。キャリアガス(H2)を実施例1と同じ条件で供給しながら、圧力2.0×104Paにして、基板温度を1650℃まで昇温した。昇温完了後、モノシラン(SiH4)を6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)、及びメタン(CH4)を8.112×10-2Pa m3/s(48sccm)供給して、原料ガス中の炭素と珪素の原子数比(C/Si)を1.2として成膜を開始し、この状態を4分間保持した。なお、図1に従えば、この実施例3で言う圧力2.0×104Pa、及びC/Si比1.2が、安定化パラメーターのII-1の条件に相当し、ここで言う成膜時間4分間がt1に相当する。
成膜を開始して4分後、基板温度は上記の条件で固定したまま、安定化パラメーターのうち圧力条件を1.0×104Paに切り替えると共に、モノシラン(SiH4)の供給量は6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)に固定したままで、メタン(CH4)の供給量を6.76××10-3Pa m3/s(4sccm)に減らしてC/Si比を0.1に切り替えて(II-2の条件に相当)、4分間の成膜を行った(t2に相当)。この際、圧力条件及びC/Si比を切り替えるのに1分間の時間を要するようにした。その後、同様にして基板温度を固定したまま、1分間の時間をかけて、圧力条件を2.0×104Paに昇圧すると共に、メタン(CH4)の供給量を調整してC/Si比を1.2に増加して、4分間の成膜を行い、以降、このような切り替え動作を交互に繰り返して、合計1時間50分の成膜を行った。
上記のような切り替え動作を含んだ成膜により、圧力及びC/Si比が高い設定条件(図1でII-1の条件)下では、原子ステップの前進によって駆動されるエピタキシャル膜の成長を行い、圧力及びC/Si比が低い設定条件(図1でII-2の条件)下では、テラス上の2次元核の分解・再蒸発を行って、最終的に、SiC単結晶基板上に厚さ8μmのSiCエピタキシャル膜を成膜した。成膜終了後、実施例1と同様にして、得られたSiCエピタキシャル膜のエピ欠陥密度及びステップバンチング(表面粗さ)を評価したところ、エピ欠陥密度は1.3個/cm2であり、Raは0.21nmであった。この実施例3で使用した安定化パラメーターと環境パラメーターとの区別を表1にまとめ、得られたSiCエピタキシャル膜の評価もあわせて示す。
(比較例1)
比較例1は、基板温度条件、圧力条件及び原料ガス濃度条件のすべてを変調させずに、環境パラメーターとして用いて、SiCエピタキシャル膜を製造した例である。
エピタキシャル成長を行う基板は実施例1と同様にして用意したものを使用し、これをホットウォールCVD装置に装着した。キャリアガス(H2)を実施例1と同じ条件で供給しながら、圧力2.0×104Paにして、基板温度を1650℃に昇温した。昇温完了後、実施例1と同じ条件になるようにモノシラン(SiH4)及びメタン(CH4)を供給して成膜を開始した。成膜開始後は、圧力条件、原料ガス濃度及び基板温度条件の3つのパラメーターは変調させずに上記のまま条件を維持し、合計1時間10分の成膜を行って、SiC単結晶基板上に厚さ8μmのSiCエピタキシャル膜を得た。
成膜終了後、得られたSiCエピタキシャル膜について、実施例1と同様にしてエピ欠陥及びステップバンチングを評価したところ、エピ欠陥密度は5.0個/cm2であり、Raは2.1nmであった。図4は、AFMで走査した比較例1のSiCエピタキシャル膜の表面粗さを示す。表1に、この比較例1で使用したパラメーターの種類と、得られたSiCエピタキシャル膜の評価をまとめた。
(実施例4〜34、比較例2〜6)
基板温度条件、圧力条件、及び原料ガス濃度条件(C/Si)のなかから、安定化パラメーターとして利用する条件と、環境パラメーターとして利用する条件とを選択し、表2〜表4に示すような組み合わせでSiCエピタキシャル膜を成膜した。使用した基板、及びCVD装置は全て実施例1と同じであり、また、CVD装置に供給するキャリアガス、珪素源ガス、及び炭素源ガスの種類と供給量についても、下記で述べたもの以外は、全て実施例1と同様にした。
環境パラメーターとして利用した条件については、表2〜表4のなかで白抜きの丸と共に設定値を示した。一方、安定化パラメーターとして利用した条件については、表2〜表4のなかで塗りつぶした丸と共に高低2種類の設定値を示した。このうち、原料ガス濃度条件(C/Si)を安定化パラメーターとした場合について、実施例23〜26では、圧力を安定化パラメーターとして高低間で切り替えると共に、C/Siを高低間で切り替えた。そして、安定化パラメーターについては、高い設定条件での成膜工程(t1)と低い設定条件での成膜工程(t2)とを、所定の切り替え時間(t0)を挟んで交互に繰り返し、表2に示した各合計時間の成膜を行った。それぞれ得られたSiCエピタキシャル膜について、実施例1と同様にして、エピ欠陥及びステップバンチング(表面粗さRa)を評価した。結果を表2〜表4にまとめて示す。なお、C/Siを安定化パラメーターとして利用した実施例23について、i)高い設定条件での成膜ではモノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)とし、ii)低い設定条件での成膜ではモノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン6.76×10-3Pa m3/s(4sccm)とした。同様に、実施例24については、i)モノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン5.41×10-2Pa m3/s(32sccm)とし、ii)モノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン6.76×10-3Pa m3/s(4sccm)とした。実施例25については、i)モノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン1.01×10-1Pa m3/s(60sccm)とし、ii)モノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン3.38×10-2Pa m3/s(20sccm)とした。実施例26については、i)モノシラン6.76×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン×10-2Pa m3/s(68sccm)とし、ii)モノシラン1.15×10-2Pa m3/s(40sccm)及びメタン3.38×10-3Pa m3/s(20sccm)とした。

Claims (6)

  1. 化学気相堆積法によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であって、
    圧力条件又は基板温度条件のうち、いずれか一方の条件を固定したまま、成膜途中で、他方の条件を、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えるようにし、その際、前記圧力条件を1.0×10 4 Pa以上3.0×10 4 Pa以下の範囲内で固定し、前記基板温度条件を、1700℃以上1750℃以下の範囲内で設定した高温設定条件と、1600℃以上1650℃以下の範囲内で設定した低温設定条件との間で切り替えることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
  2. 化学気相堆積法によって、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法であって、
    圧力条件又は基板温度条件のうち、いずれか一方の条件を固定したまま、成膜途中で、他方の条件を、高い設定条件と低い設定条件との間で切り替えるようにし、その際、前記基板温度条件を1600℃以上1750℃以下の範囲内で固定し、前記圧力条件を、2.0×104Pa以上3.0×104Pa以下の範囲内で設定した高圧設定条件と、0Pa超1.0×104Pa以下の範囲内で設定した低圧設定条件との間で切り替えることを特徴とする炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
  3. 前記切り替えする条件が圧力条件の場合、1度の切り替えで高圧設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下であり、一度の切り替えで低圧設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下である請求項に記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
  4. 前記切り替えする条件が基板温度条件の場合、1度の切り替えで高温設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下であり、1度の切り替えで低温設定条件にして行う成膜工程の時間が1分以上10分以下である請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
  5. 前記切り替えで高い設定条件下にして行う成膜工程において、エピタキシャル膜の原料ガス中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si)を1.0以上1.5以下にし、また、前記切り替えで低い設定条件下にして行う成膜工程において、エピタキシャル膜の原料ガス中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si)を0.1以上0.5以下にする請求項1〜のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
  6. 前記炭化珪素単結晶基板上に、膜厚5μm以上50μm以下の炭化珪素エピタキシャル膜を成膜させる請求項1〜のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル膜の製造方法。
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