ところで、特許文献1〜3のリチウムイオン二次電池では、その使用(充放電)に伴って、発電部において、非水電解液のLiイオン濃度に偏りが生じることがあった。具体的には、例えば、放電電流値に比べて充電電流値を大きくして(充電電流をハイレートにして)充放電を繰り返すと、電極体をその軸線方向について見たとき、発電部の一端部及び他端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度が上昇し、一方、発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度が低下し、発電部において非水電解液のLiイオン濃度に偏りが生じてしまう。反対に、充電電流値に比べて放電電流値を大きくして(放電電流をハイレートにして)充放電を繰り返すと、電極体をその軸線方向について見たとき、発電部の一端部及び他端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度が低下し、一方、発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度が上昇し、発電部において非水電解液のLiイオン濃度に偏りが生じてしまう。
このように、発電部において非水電解液のLiイオン濃度に偏りが生じると、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が上昇してしまう。詳細には、電極体の軸線方向について発電部の一端部及び他端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度と、電極体の軸線方向について発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度との濃度差が大きくなるにしたがって、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が上昇してしまう。このため、リチウムイオン二次電池の使用に伴って、発電部の一端部及び他端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度と、発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度との濃度差が大きくなり、リチウムイオン二次電池の出力が大きく低下してしまうことがあった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制し、電池の内部抵抗の上昇を抑制することができる電池システム、及びハイブリッド自動車を提供することを目的とする。
第1電極板、第2電極板、及びセパレータを捲回してなる電極体であって、上記第1電極板の活物質塗工部と上記第2電極板の活物質塗工部と上記セパレータとが重なり合う発電部を有する電極体と、Li塩を含有する非水電解液であって、上記発電部の内部に含まれる非水電解液と、上記電極体の軸線方向について上記発電部の一端部に配置され、上記発電部の上記一端部に含まれる上記非水電解液に接触する第1の測定電極と、上記軸線方向について上記発電部の中央部に配置され、上記発電部の上記中央部に含まれる上記非水電解液に接触する第2の測定電極と、を備えるリチウムイオン二次電池が好ましい。
上述のリチウムイオン二次電池は、電極体の軸線方向(軸線が延びる方向)について発電部の一端部に配置されて、発電部の一端部に含まれる非水電解液に接触する第1の測定電極を有している。従って、第1の測定電極によって、発電部の一端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度に応じた電位を測定することができる。さらに、上述のリチウムイオン二次電池は、電極体の軸線方向について発電部の中央部に配置されて、発電部の中央部に含まれる非水電解液に接触する第2の測定電極を有している。従って、第2の測定電極において、発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度に応じた電位を測定することができる。
このため、第2の測定電極と第1の測定電極との間の電位差ΔV21は、発電部の一端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度(以下、第1濃度ともいう)と発電部の中央部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度(以下、第2濃度ともいう)との濃度差に応じた電位差になる。従って、上述のリチウムイオン二次電池について、電位差ΔV21を測定し、この電位差ΔV21に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することで、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することが可能になる。これにより、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
例えば、上述のリチウムイオン二次電池について、以下のように充放電制御すると良い。まず、第2の測定電極と第1の測定電極との間の電位差ΔV21を測定する。次いで、この電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差(以下、濃度差ΔC21ともいう)が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否かを判断する。さらに、電位差ΔV21に基づいて、第1濃度が第2濃度より高いか否かを判断する。なお、電位差ΔV21と濃度差ΔC21(第1濃度と第2濃度との濃度差)との相関を、実験等により予め把握しておくことで、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差ΔV21を把握することができる。
電位差ΔV21が、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であると判断し、且つ、第1濃度が第2濃度よりも高いと判断した場合は、リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる。これにより、濃度差ΔC21を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
一方、電位差ΔV21が、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であると判断し、且つ、第1濃度が第2濃度よりも低いと判断した場合は、リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる。これにより、濃度差ΔC21を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、第1の測定電極及び第2の測定電極としては、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、Li4Ti5O12等の活物質を有する測定電極や、Li金属からなる測定電極などを用いることができる。
また、第1の測定電極及び第2の測定電極は、発電部の内部(例えば、第2電極板とセパレータとの間)に配置しても良いし、発電部の外周面上に配置しても良い。
さらに、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記軸線方向について前記発電部の他端部に配置され、上記発電部の上記他端部に含まれる上記非水電解液に接触する第3の測定電極、を備えるリチウムイオン二次電池とすると良い。
上述のリチウムイオン二次電池は、第1の測定電極及び第2の測定電極に加えて、軸線方向について発電部の他端部(一端部と反対側の部位)に配置され、発電部の他端部に含まれる非水電解液に接触する第3の測定電極を備えている。
このため、上述のリチウムイオン二次電池について、第2の測定電極と第1の測定電極との間の電位差ΔV21を測定すると共に、第2の測定電極と第3の測定電極との間の電位差ΔV23を測定し、電位差ΔV21と電位差ΔV23とに基づいて、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを判断することで、電位差ΔV21のみに基づいて発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを判断する場合に比べて、判断の精度を高めることができる。この判断に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することで、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを適切に抑制することができる。これにより、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
例えば、上述のリチウムイオン二次電池について、以下のように充放電制御すると良い。まず、電位差ΔV21及び電位差ΔV23を測定する。次いで、電位差ΔV21が、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否かを判断する。さらに、電位差ΔV21に基づいて、第1濃度が第2濃度より高いか否かを判断する。さらに、電位差ΔV23が、発電部の他端部に含まれる非水電解液のLiイオン濃度である第3濃度と前記第2濃度との濃度差(以下、濃度差ΔC23ともいう)が上記閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否かを判断する。電位差ΔV21が、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であり、且つ、電位差ΔV23が、濃度差ΔC23が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値である場合に限り、以下のようにして充電電流または放電電流を制御する。
第1濃度が第2濃度よりも高い場合は、リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる。これにより、濃度差ΔC21及び濃度差ΔC23を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
一方、第1濃度が第2濃度よりも低いと判断した場合は、リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる。これにより、濃度差ΔC21及び濃度差ΔC23を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、第3の測定電極としては、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、Li4Ti5O12等の活物質を有する測定電極や、Li金属からなる測定電極などを用いることができる。
また、第3の測定電極は、発電部の内部(例えば、第2電極板とセパレータとの間)に配置しても良いし、発電部の外周面上に配置しても良い。
さらに、上記いずれかのリチウムイオン二次電池であって、前記測定電極は、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極であるリチウムイオン二次電池とすると良い。
上述のリチウムイオン二次電池では、測定電極として、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極を用いている。ここで、「測定電極」とは、当該リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極(例えば、アルミニウム箔の表面にLiFePO4を含む電極合剤を積層したもの)では、Liに対する電位が、SOC(State Of Charge)20〜80%の範囲にわたって一定となる。このように、SOCの変動に拘わらず広いSOC範囲にわたってLiに対する電位が一定である測定電極を用いることで、電位差ΔV21(電位差ΔV23)を精度良く測定することができる。測定精度の高い電位差ΔV21(電位差ΔV23)に基づいて、前述のようにしてリチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することで、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを適切に抑制することができる。
具体的には、例えば、この測定電極をSOC40〜60%(好ましくはSOC50%)の充電状態に設定しておけば、仮に、リチウムイオン二次電池の使用に伴って測定電極のSOCが多少変動したとしても、SOCの範囲が20〜80%の範囲から外れることはない。従って、当該測定電極の電位が当該測定電極のSOC変動の影響を受けることがないので、非水電解液のLiイオン濃度差に応じた電位差ΔV21(電位差ΔV23)を精度良く測定することができる。
さらに、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記測定電極は、SOC50%の充電状態に設定されてなるリチウムイオン二次電池とすると良い。
上述のリチウムイオン二次電池では、前記測定電極(LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極)として、SOC50%の充電状態に設定された測定電極を用いている。このため、前述のように、電位差ΔV21(電位差ΔV23)を精度良く測定することができる。
なお、上述のリチウムイオン二次電池において、「測定電極」とは、当該リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
さらに、上記いずれかのリチウムイオン二次電池であって、前記測定電極は、前記発電部の外周面上に配置されてなり、前記発電部は、各々の上記測定電極と対向する位置に、前記第1電極板と前記第2電極板との間に挟まれた前記セパレータのうち最も上記外周面側に位置する外周面側セパレータを、上記測定電極に向けて露出させる露出穴を構成する形態を有し、上記測定電極は、それぞれ、上記露出穴を通じて前記非水電解液と接触してなるリチウムイオン二次電池とすると良い。
上述のリチウムイオン二次電池では、測定電極を、発電部の外周面上に配置している。このように、測定電極を発電部の外周面上に配置するのは、測定電極を発電部の内部(例えば、第1電極板とセパレータとの間)に配置する場合に比べて、測定電極の配置が容易であるため、リチウムイオン二次電池の製造が容易となり、低コストとなる。
また、上述のリチウムイオン二次電池では、発電部のうち測定電極と対向する位置に、外周面側セパレータを測定電極に向けて露出させる露出穴を設け、この露出穴を通じて、各々の測定電極を、発電部の内部に含まれる非水電解液と接触させている。具体的には、第1の測定電極は、露出穴(第1の露出穴とする)を通じて、発電部の一端部に含まれる非水電解液に接触する。また、第2の測定電極は、露出穴(第2の露出穴とする)を通じて、発電部の中央部に含まれる非水電解液に接触する。第3の測定電極を有する場合、第3の測定電極は、露出穴(第3の露出穴とする)を通じて、発電部の他端部に含まれる非水電解液に接触する。これにより、発電部の外周面上に設けた各測定電極によって、各部位(一端部、中央部、他端部)における非水電解液のLiイオン濃度に応じた電位を適切に測定することができる。
なお、上述のリチウムイオン二次電池において、「測定電極」とは、当該リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
さらに、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記リチウムイオン二次電池は、前記電極体、前記非水電解液、及び前記測定電極を収容する直方体形状の電池ケースを有し、上記電池ケースは、上記電極体を挟んで対向する第1内側面及び第2内側面を有し、前記発電部は、前記軸線方向に直交する方向に切断した断面が長円状をなす扁平捲回型の発電部であり、上記発電部の前記外周面は、上記電池ケースの上記第1内側面と対向する平坦状の第1平坦部と、上記電池ケースの上記第2内側面と対向する平坦状の第2平坦部と、を有し、上記リチウムイオン二次電池に配置される全ての前記測定電極は、電気絶縁性を有する絶縁シートの間に挟まれて一体化され、厚み均一な1枚のシート状をなす一体型測定電極シートであって、上記発電部の上記第1平坦部の全面を覆うことが可能な形状の一体型測定電極シートを構成してなり、上記一体型測定電極シートは、上記発電部の上記第1平坦部の全面を覆って配置されてなるリチウムイオン二次電池とすると良い。
上述のリチウムイオン二次電池は、直方体形状の電池ケース内に、断面長円状の扁平捲回型の発電部を有する電極体が収容され、発電部の第1平坦部が電池ケースの第1内側面と対向し、発電部の第2平坦部が電池ケースの第2内側面と対向しているリチウムイオン二次電池である。このようなリチウムイオン二次電池では、充電時に電極体が膨張すると、発電部の第1平坦部が電池ケースの第1内側面によって押圧されると共に、発電部の第2平坦部が電池ケースの第2内側面によって押圧される。
このため、電極体の第1平坦部に部分的(一端部、中央部、他端部)に測定電極を配置して、第1平坦部のうち測定電極を配置しない部分については何も配置せずに露出させる形態とした場合、充電時に電極体が膨張したとき、電池ケースの第1内側面による発電部の第1平坦部への押圧力が不均一となる。具体的には、第1平坦部のうち測定電極を配置していない部分は、測定電極を配置している部分に比べて、測定電極の厚みの分だけ電池ケースの第1内側面から遠ざかっているので、第1平坦部のうち測定電極を配置していない部分では、測定電極を配置している部分に比べて押圧力が小さくなる。この影響で、充電ムラ等が生じ、電池の出力特性が低下する虞があった。
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、リチウムイオン二次電池に配置される全ての測定電極を、厚み均一な1枚のシート状をなし、発電部の第1平坦部の全面を覆うことが可能な形状の一体型測定電極シートとして一体化させている。そして、この一体型測定電極シートを、発電部の第1平坦部の全面を覆うように配置している。これにより、充電時に電極体が膨張したとき、電池ケースの第1内側面による発電部の第1平坦部への押圧力を均一にすることができる。これにより、充電ムラ等を抑制し、電池の出力特性を良好にすることができる。
本発明の一態様は、第1電極板、第2電極板、及びセパレータを捲回してなる電極体であって、上記第1電極板の活物質塗工部と上記第2電極板の活物質塗工部と上記セパレータとが重なり合う発電部を有する電極体と、Li塩を含有する非水電解液であって、上記発電部の内部に含まれる非水電解液と、上記電極体の軸線方向について上記発電部の一端部に配置され、上記発電部の上記一端部に含まれる上記非水電解液に接触する第1の測定電極と、上記軸線方向について上記発電部の中央部に配置され、上記発電部の上記中央部に含まれる上記非水電解液に接触する第2の測定電極と、を有するリチウムイオン二次電池と、上記第2の測定電極と上記第1の測定電極との間の電位差ΔV21を測定する電位差測定装置と、上記電位差ΔV21に基づいて、上記リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御する制御装置であって、上記電位差ΔV21が、上記発電部の上記一端部に含まれる上記非水電解液のLiイオン濃度である第1濃度と上記発電部の上記中央部に含まれる上記非水電解液のLiイオン濃度である第2濃度との濃度差が閾値を上回っているときに得られる電位差値である場合において、上記第1濃度が上記第2濃度よりも高いとき、上記リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行い、上記第1濃度が上記第2濃度よりも低いとき、上記リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う制御装置と、を備える電池システムである。
上述の電池システムでは、リチウムイオン二次電池が、電極体の軸線方向について発電部の一端部に配置されて、発電部の一端部に含まれる非水電解液に接触する第1の測定電極を有している。さらに、このリチウムイオン二次電池は、電極体の軸線方向について発電部の中央部に配置されて、発電部の中央部に含まれる非水電解液に接触する第2の測定電極を有している。
さらに、上述の電池システムは、第2の測定電極と第1の測定電極との間の電位差ΔV21を測定する電位差測定装置と、電位差ΔV21に基づいてリチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御する制御装置とを備えている。
具体的には、制御装置は、電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であり、且つ、第1濃度が第2濃度よりも高い場合は、リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
一方、電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であり、且つ、第1濃度が第2濃度よりも低い場合は、リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、電位差ΔV21と濃度差ΔC21(第1濃度と第2濃度との濃度差)との相関を、実験等により予め把握しておくことで、濃度差ΔC21が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差ΔV21を把握しておくことができる。
また、本発明の一態様をなす上述の電池システムには、複数のリチウムイオン二次電池が電気的に直列に接続して組電池を構成してなる電池システムも含まれる。この電池システムでは、組電池を構成する全てのリチウムイオン二次電池が同様に充放電される。このため、組電池を構成するリチウムイオン二次電池では、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りも同様になる。この電池システムの場合、組電池を構成する複数のリチウムイオン二次電池のうち少なくともいずれか1つのリチウムイオン二次電池が、「第1の測定電極及び第2の測定電極を有するリチウムイオン二次電池」であれば良い。組電池を構成するリチウムイオン二次電池は全て電気的に直列に接続されているので、少なくとも1つの「第1の測定電極及び第2の測定電極を有するリチウムイオン二次電池」について上述の電流制御を行うことは、組電池を構成する全てのリチウムイオン二次電池について、上述の電流制御を行うことになる。従って、この電池システムでは、組電池を構成する全てのリチウムイオン二次電池について、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制し、内部抵抗の上昇を抑制することができる。
さらに、上記の電池システムであって、前記リチウムイオン二次電池は、前記軸線方向について前記発電部の他端部に配置され、上記発電部の上記他端部に含まれる上記非水電解液に接触する第3の測定電極を有し、前記電位差測定装置は、前記電位差ΔV21、及び、上記第2の測定電極と上記第3の測定電極との間の電位差ΔV23を測定し、前記制御装置は、上記電位差ΔV21が、前記第1濃度と前記第2濃度との濃度差が前記閾値を上回っているときに得られる電位差値である場合で、且つ、上記電位差ΔV23が、上記発電部の上記他端部に含まれる上記非水電解液のLiイオン濃度である第3濃度と前記第2濃度との濃度差が前記閾値を上回っているときに得られる電位差値である場合において、上記第1濃度が上記第2濃度よりも高いとき、上記リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行い、上記第1濃度が上記第2濃度よりも低いとき、上記リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う電池システムとすると良い。
上述の電池システムでは、リチウムイオン二次電池が、第1の測定電極及び第2の測定電極に加えて、軸線方向について発電部の他端部(一端部と反対側の部位)に配置され、発電部の他端部に含まれる非水電解液に接触する第3の測定電極を備えている。さらに、電位差測定装置が、前記電位差ΔV21、及び、第2の測定電極と第3の測定電極との間の電位差ΔV23を測定する。そして、制御装置が、電位差ΔV21及び電位差ΔV23に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御する。
具体的には、制御装置は、電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であり、且つ、電位差ΔV23が、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(例えば0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値である場合に限り、以下のようにして充電電流または放電電流を制御する。
第1濃度が第2濃度よりも高い場合は、リチウムイオン二次電池の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を、閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
一方、第1濃度が第2濃度よりも低い場合は、リチウムイオン二次電池の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(例えば0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
このように、電位差ΔV21と電位差ΔV23とに基づいてリチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することで、電位差ΔV21のみに基づいて制御する場合に比べて、的確な制御を行うことができる。これにより、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを適切に抑制することができる。
さらに、上記いずれかの電池システムであって、前記閾値は、0.6mol/Lである電池システムとすると良い。
第1濃度と第2濃度との濃度差が0.6mol/Lより大きくなると、電池の内部抵抗が大きくなり過ぎて、電池の出力が大きく低下する。第3濃度は第1濃度とほぼ等しくなるので、やはり、第3濃度と第2濃度との濃度差が0.6mol/Lより大きくなると、電池の内部抵抗が大きくなり過ぎて、電池の出力が大きく低下する。
そこで、上述の電池システムでは、充電電流及び放電電流を制御するか否かの閾値を0.6mol/Lとした。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差が0.6mol/L(第3濃度と第2濃度との濃度差が0.6mol/L)を上回るのを抑制することができるので、電池の内部抵抗が大きくなり過ぎて、電池の出力が大きく低下するのを抑制できる。
さらに、上記いずれかの電池システムであって、前記測定電極は、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極である電池システムとすると良い。
前述のように、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極を用いることで、電位差ΔV21(電位差ΔV23)を精度良く測定することができる。従って、上述の電池システムでは、測定精度の高い電位差ΔV21(電位差ΔV23)に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することができるので、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを適切に抑制することができる。
なお、上述の電池システムにおいて、「測定電極」とは、リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
さらに、上記の電池システムであって、前記測定電極は、SOC50%の充電状態に設定されてなる電池システムとすると良い。
前述のように、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかで表される活物質を有する測定電極として、SOC50%の充電状態に設定された測定電極を用いることで、電位差ΔV21(電位差ΔV23)を精度良く測定することができる。従って、上述の電池システムでは、測定精度の高い電位差ΔV21(電位差ΔV23)に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電電流及び放電電流を制御することができるので、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りを適切に抑制することができる。
なお、上述の電池システムにおいて、「測定電極」とは、リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
さらに、上記いずれかの電池システムであって、前記測定電極は、前記発電部の外周面上に配置されてなり、前記発電部は、各々の上記測定電極と対向する位置に、前記第1電極板と前記第2電極板との間に挟まれた前記セパレータのうち最も上記外周面側に位置する外周面側セパレータを、上記測定電極に向けて露出させる露出穴を構成する形態を有し、上記測定電極は、ぞれぞれ、上記露出穴を通じて前記非水電解液と接触してなる電池システムとすると良い。
上述の電池システムでは、測定電極を発電部の外周面上に配置したリチウムイオン二次電池を用いている。測定電極を発電部の外周面上に配置するのは、測定電極を発電部の内部(例えば、第2電極板とセパレータとの間)に配置する場合に比べて、測定電極の配置が容易であるため、リチウムイオン二次電池の製造が容易となり、低コストとなる。
また、上述の電池システムでは、リチウムイオン二次電池において、発電部のうち測定電極と対向する位置に、外周面側セパレータを測定電極に向けて露出させる露出穴を設け、この露出穴を通じて、各々の測定電極を、発電部の内部に含まれる非水電解液と接触させている。具体的には、第1の測定電極は、露出穴(第1の露出穴とする)を通じて、発電部の一端部に含まれる非水電解液に接触する。また、第2の測定電極は、露出穴(第2の露出穴とする)を通じて、発電部の中央部に含まれる非水電解液に接触する。第3の測定電極を有する場合、第3の測定電極は、露出穴(第3の露出穴とする)を通じて、発電部の他端部に含まれる非水電解液に接触する。これにより、発電部の外周面上に設けた各測定電極によって、各部位(一端部、中央部、他端部)における非水電解液のLiイオン濃度に応じた電位を適切に測定することができる。
なお、上述の電池システムにおいて、「測定電極」とは、当該リチウムイオン二次電池に設けられている全ての測定電極をいい、第1の測定電極及び第2の測定電極を含み、さらに第3の測定電極を有する場合はこれも含む。
さらに、上記の電池システムであって、前記リチウムイオン二次電池は、前記電極体、前記非水電解液、及び前記測定電極を収容する直方体形状の電池ケースを有し、上記電池ケースは、上記電極体を挟んで対向する第1内側面及び第2内側面を有し、前記発電部は、前記軸線方向に直交する方向に切断した断面が長円状をなす扁平捲回型の発電部であり、上記発電部の前記外周面は、上記電池ケースの上記第1内側面と対向する平坦状の第1平坦部と、上記電池ケースの上記第2内側面と対向する平坦状の第2平坦部と、を有し、上記リチウムイオン二次電池に配置される全ての前記測定電極は、電気絶縁性を有する絶縁シートの間に挟まれて一体化され、厚み均一な1枚のシート状をなす一体型測定電極シートであって、上記発電部の上記第1平坦部の全面を覆うことが可能な形状の一体型測定電極シートを構成してなり、上記一体型測定電極シートは、上記発電部の上記第1平坦部の全面を覆って配置されてなる電池システムとすると良い。
上述の電池システムは、直方体形状の電池ケース内に、断面長円状の扁平捲回型の発電部を有する電極体が収容され、発電部の第1平坦部が電池ケースの第1内側面と対向し、発電部の第2平坦部が電池ケースの第2内側面と対向しているリチウムイオン二次電池を有している。このようなリチウムイオン二次電池では、充電時に電極体が膨張すると、発電部の第1平坦部が電池ケースの第1内側面によって押圧されると共に、発電部の第2平坦部が電池ケースの第2内側面によって押圧される。このため、電極体の第1平坦部に部分的(一端部、中央部、他端部)に測定電極を配置して、平坦部のうち測定電極を配置しない部分については何も配置せずに露出させる形態とした場合、前述のように、電池ケースの第1内側面による発電部の第1平坦部への押圧力が不均一となり、この影響で、充電ムラ等が生じ、電池の出力特性が低下する虞があった。
これに対し、上述の電池システムでは、リチウムイオン二次電池に配置される全ての測定電極を、厚み均一な1枚のシート状をなし、発電部の第1平坦部の全面を覆うことが可能な形状の一体型測定電極シートとして一体化させている。そして、この一体型測定電極シートを、発電部の第1平坦部の全面を覆うように配置している。これにより、充電時に電極体が膨張したとき、電池ケースの第1内側面による発電部の第1平坦部への押圧力を均一にすることができるので、充電ムラ等を抑制し、電池の出力特性を良好にすることができる。
また、本発明の他の態様は、ハイブリッド自動車であって、前記いずれかの電池システムを、当該ハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして搭載してなるハイブリッド自動車である。
ハイブリッド自動車の駆動用電源として搭載されたリチウムイオン二次電池は、ハイレートで充電または放電が行われることが多いので、発電部における非水電解液のLiイオン濃度の偏りが生じ易く、内部抵抗が上昇し易い環境にある。
これに対し、上述のハイブリッド自動車は、前述の電池システムを、当該ハイブリッド自動車の駆動用電源システムとして搭載している。前述の電池システムでは、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。従って、上述のハイブリッド自動車では、走行性能の低下を抑制することができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例1にかかるハイブリッド自動車1は、図1に示すように、車体2、エンジン3、フロントモータ4、リヤモータ5、電池システム6、及びケーブル7を有し、エンジン3とフロントモータ4及びリヤモータ5との併用で駆動するハイブリッド自動車である。具体的には、このハイブリッド自動車1は、電池システム6(詳細には、電池システム6の組電池10、図2参照)をフロントモータ4及びリヤモータ5の駆動用電源として、公知の手段により、エンジン3とフロントモータ4及びリヤモータ5とを用いて走行できるように構成されている。
このうち、電池システム6は、ハイブリッド自動車1の車体2に取り付けられており、ケーブル7によりフロントモータ4及びリヤモータ5に接続されている。この電池システム6は、図2に示すように、複数のリチウムイオン二次電池101及びリチウムイオン二次電池100を互いに電気的に直列に接続した組電池10と、制御装置30と、電位差測定装置50とを備えている。
リチウムイオン二次電池100は、図3に示すように、直方体形状の電池ケース110と、正極外部端子121と、負極外部端子131とを備える、角形密閉式のリチウムイオン二次電池である。このうち、電池ケース110は、直方体形状の収容空間をなす金属製の角形収容部111と金属製の蓋部112とを有するハードケースである。電池ケース110(角形収容部111)の内部には、電極体150などが収容されている。
電極体150は、断面長円状をなし、シート状の正極板155、負極板156、及びセパレータ157を、軸線CLの周りに捲回してなる扁平型の捲回体である(図5,図6参照)。正極板155は、アルミニウム箔からなる正極集電部材151と、その表面に塗工された正極合剤152(正極活物質153を含む合剤)を有している。負極板156は、銅箔からなる負極集電部材158と、その表面に塗工された負極合剤159(負極活物質154を含む合剤)を有している。
この電極体150は、図3に示すように、発電部150bと正極捲回部150dと負極捲回部150cとにより構成される。このうち、発電部150bは、正極板155のうち正極集電部材151の表面に正極合剤152が塗工されている正極活物質塗工部155cと、負極板156のうち負極集電部材158の表面に負極合剤159が塗工されている負極活物質塗工部156cと、セパレータ157とが重なり合う部位である(図5,図6参照)。
負極捲回部150cは、電極体150の軸線方向X(軸線CLが延びる方向、図3において左右方向)について発電部150bの一端部150b1(図3において左端部)に隣り合い、負極板156のうち負極集電部材158の表面に負極合剤159が塗工されていない負極活物質未塗工部156bのみが重なり合う部位である。正極捲回部150dは、電極体150の軸線方向X(図3において左右方向)について発電部150bの他端部150b3(図3において右端部)に隣り合い、正極板155のうち正極集電部材151の表面に正極合剤152が塗工されていない活物質未塗工部155bのみが重なり合う部位である。
正極捲回部150dは、正極集電部122を通じて、正極外部端子121に電気的に接続されている。負極捲回部150cは、負極集電部132を通じて、負極外部端子131に電気的に接続されている。なお、正極外部端子121と正極集電部122とは一体に形成され、正極集電端子部材120を構成している。また、負極外部端子131と負極集電部132とは一体に形成され、負極集電端子部材130を構成している。
また、発電部150bの内部(主にセパレータ157の内部)には、非水電解液140(図6参照)が含まれている。
リチウムイオン二次電池100では、正極活物質153としてニッケル酸リチウムを用いている。また、負極活物質154として、天然黒鉛を用いている。また、セパレータ157として、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層構造複合体多孔質シート(厚さ25μm)を用いている。また、非水電解液140として、EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを混合した非水溶媒中に、六フッ化燐酸リチウム(LiPF6)を溶解して、LiPF6の濃度を1.0mol/Lに調整した非水電解液を用いている。
さらに、リチウムイオン二次電池100は、電極体150の内部(例えば、負極板156とセパレータ157との間)に、第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dを有している(図3参照)。第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dは、図7に示すように、アルミニウム箔からなる集電部材171と、集電部材171の表面に積層された電極合剤172と、これらを覆う袋状の絶縁部材173とを有している。電極合剤172は、LiFePO4で表される活物質172bを含んでいる。また、絶縁部材273は、セパレータ157と同じ素材で形成されている。
詳細には、第1測定電極170bは、電極体150の内部(例えば、負極板156とセパレータ157との間)のうち、発電部150bの一端部150b1(図3において左端部)に配置されている。これにより、第1測定電極170bは、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140に接触する。第2測定電極170cは、電極体150の内部(例えば、負極板156とセパレータ157との間)のうち、発電部150bの中央部150b2(図3において左右方向中央部)に配置されている。これにより、第2測定電極170cは、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140に接触する。第3測定電極170dは、電極体150の内部(例えば、負極板156とセパレータ157との間)のうち、発電部150bの他端部150b3(図3において右端部)に配置されている。これにより、第3測定電極170dは、発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140に接触する。
第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dは、LiFePO4で表される活物質172bを有しているため、Liに対する電位が、SOC20〜80%の範囲にわたって一定となる。従って、本実施例1では、第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dのSOCを50%に設定している。第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dをSOC50%の充電状態に設定しておけば、仮に、リチウムイオン二次電池100の使用に伴って第1〜第3測定電極170b〜170dのSOCが多少変動したとしても、SOCの範囲が20〜80%の範囲から外れることはない。これにより、第1〜第3測定電極170b〜170dの電位が、第1〜第3測定電極170b〜170dのSOC変動の影響を受けることがない。
従って、第1測定電極170bでは、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を、精度良く測定することができる。また、第2測定電極170cでは、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を、精度良く測定することができる。また、第3測定電極170dでは、発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を、精度良く測定することができる。
図3に示すように、第1測定電極170bには、導線175bの一端部が電気的に接続されている。第2測定電極170cには、導線175cの一端部が電気的に接続されている。第3測定電極170dには、導線175dの一端部が電気的に接続されている。導線175b,175c,175dは、測定電極と電気的に接続するAg線176と、このAg線176を被覆する絶縁樹脂(例えばPTFE)からなる被覆部材177とを有する。
導線175cは、蓋部112に設けられている貫通孔を通じて、リチウムイオン二次電池100の外部に引き出され、電位差測定装置50(電圧計)の負極端子に接続される(図2参照)。また、導線175b,175dは、蓋部112に設けられている貫通孔を通じて、リチウムイオン二次電池100の外部に引き出され、スイッチ52(図2参照)を介して電位差測定装置50の正極端子に接続される。
リチウムイオン二次電池101は、図4に示すように、上述のリチウムイオン二次電池100と比較して、第1測定電極170b、第2測定電極170c、及び第3測定電極170dと、導線175b,175c,175dとを有していない点のみが異なるリチウムイオン二次電池である。
組電池10は、複数(例えば100個)のリチウムイオン二次電池101と、1個のリチウムイオン二次電池100とを、電気的に直列に接続した組電池である(図2参照)。この組電池10は、制御装置30を通じて、インバータ及びモータ(フロントモータ4及びリヤモータ5)に接続されている。従って、組電池10を構成するリチウムイオン二次電池100,101は、制御装置30を通じて、等しく充放電される。
制御装置30は、所定時間毎(例えば、0.1秒毎)に、スイッチ52により、導線175b,175dと電位差測定装置50との接続を切り替える制御を行う。なお、電位差測定装置50の正極端子にはスイッチ52が接続され、電位差測定装置50の負極端子には、第2測定電極170cに接続した導線175cが接続されている。これにより、電位差測定装置50は、所定時間毎(例えば、0.1秒毎)に、第2測定電極170cと第1測定電極170bとの間の電位差ΔV21、及び、第2測定電極170cと第3測定電極170dとの間の電位差ΔV23を測定することができる。
なお、本実施例1では、電位差ΔV21=(第1測定電極170bの電位)−(第2測定電極170cの電位)となる。また、電位差ΔV23=(第3測定電極170dの電位)−(第2測定電極170cの電位)となる。
制御装置30は、電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21及び電位差ΔV23を、逐次入力する。そして、電位差ΔV21,ΔV23に基づいて、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の充電電流及び放電電流を制御する。
具体的には、制御装置30は、「電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否か」を判定する。ここで、第1濃度とは、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度である。また、第2濃度は、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度である。
なお、図13に示すように、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回ると、第2測定電極170cと第1測定電極170bとの電位差が33.0mVを上回る。すなわち、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回ると、電位差ΔV21の絶対値(|ΔV21|)が33mVより大きくなる。従って、|ΔV21|>33mVであるか否かを判定することで、「電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否か」を判定することになる。
さらに、制御装置30は、「電位差ΔV23が、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否か」を判定する。ここで、第3濃度とは、発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度である。なお、図13に示すように、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回ると、第2測定電極170cと第3測定電極170dとの電位差が33.0mVを上回る。すなわち、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回ると、電位差ΔV23の絶対値(|ΔV23|)が33mVより大きくなる。従って、|ΔV23|>33mVであるか否かを判定することで、「電位差ΔV23が、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値であるか否か」を判定することになる。
さらに、制御装置30は、|ΔV21|>33mVであり、且つ、|ΔV23|>33mVである場合、ΔV21>0mVであるか否かを判定する。すなわち、第1測定電極170bの電位が、第2測定電極170cの電位より高いか否か(従って、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140の第1濃度が、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140の第2濃度よりも高いか否か)を判定する。第1測定電極170bの電位が第2測定電極170cの電位より高い場合は、ΔV21>0mVとなる。
なお、リチウムイオン二次電池100及びリチウムイオン二次電池101は、電気的に直列に接続されているので、同様に充放電される。このため、リチウムイオン二次電池100及びリチウムイオン二次電池101では、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りも同様になる。従って、リチウムイオン二次電池100において、|ΔV21|>33mVである(第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っている)場合、リチウムイオン二次電池101においても、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っていると考えられる。さらに、リチウムイオン二次電池100において、|ΔV23|>33mVである(第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っている)場合、リチウムイオン二次電池101においても、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っていると考えられる。
制御装置30は、ΔV21>0mVであると判定した場合(すなわち、第1濃度が第2濃度よりも高いと判断した場合)、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。例えば、放電電流値の上限値を20Cとしていた場合は、上限値を10Cに低減する。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、組電池10を構成するリチウムイオン二次電池100,101について、第1濃度及び第3濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる。これにより、リチウムイオン二次電池100,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池100,101の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、1Cの電流値とは、SOC100%の電池を1時間でSOC0%まで定電流放電できる電流値をいう。従って、20Cの電流値は、SOC100%の電池を3分でSOC0%まで放電できる電流値に相当する。リチウムイオン二次電池100,101の電池容量は、15Ahとしている。
一方、制御装置30は、ΔV21>0mVでないと判定した場合(第1濃度が第2濃度よりも低いと判断した場合)、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる。これにより、リチウムイオン二次電池100,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池100,101の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、閾値(0.6mol/L)は、次のようにして決定した。
まず、リチウムイオン二次電池100について、充放電サイクル試験を行った。具体的には、リチウムイオン二次電池100を多数用意し、充電電流値を20C(ハイレート)、放電電流値を5Cとして、各リチウムイオン二次電池100について、充放電サイクル数を異ならせて充放電サイクル試験を行った。その後、各リチウムイオン二次電池100について、内部抵抗値(具体的には、IV抵抗値)を測定した。なお、リチウムイオン二次電池100の初期のIV抵抗値は、約3.0mΩであった。
なお、IV抵抗値は、次のようにして算出した。充放電サイクル試験後の各リチウムイオン二次電池100について、電池電圧(端子間電圧VA)を測定した。その後、各リチウムイオン二次電池100について、60A(4C)の電流値で10秒間定電流放電させ、放電後の電池電圧(端子間電圧VB)を測定した。そして、定電流放電前後の端子間電圧差(VA−VB)を、放電電流値60Aで除して、IV抵抗値を得た。
その後、IV抵抗値が4.2mΩとなったリチウムイオン二次電池100と、IV抵抗値が4.5mΩとなったリチウムイオン二次電池100とを分解し、第1測定電極170bに接触する非水電解液140(発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140)と、第2測定電極170cに接触する非水電解液140(発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140)と、第3測定電極170dに接触する非水電解液140(発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140)について、Liイオン濃度(第1濃度、第2濃度、第3濃度)を測定した。IV抵抗値が4.2mΩとなったリチウムイオン二次電池100の測定結果を図8に、IV抵抗値が4.5mΩとなったリチウムイオン二次電池100の測定結果を図9に示す。なお、非水電解液140のLiイオン濃度(Li塩濃度に一致)は、公知のNMR装置を用いて測定した。
図8に示すように、IV抵抗値が4.2mΩとなったリチウムイオン二次電池100では、第1濃度(発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度)が0.8mol/L、第2濃度(発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度)が1.4mol/L、第3濃度(発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度)が0.8mol/Lとなった。従って、第1濃度と第2濃度との濃度差が0.6mol/L(=1.4−0.8)となり、第3濃度と第2濃度との濃度差も0.6mol/L(=1.4−0.8)となった。
なお、図8、図9、及び図10では、第1濃度を(1)、第2濃度を(2)、第3濃度を(3)で表している。
また、図9に示すように、IV抵抗値が4.5mΩとなったリチウムイオン二次電池100では、第1濃度が0.7mol/L、第2濃度が1.5mol/L、第3濃度が0.8mol/Lとなった。従って、第1濃度と第2濃度との濃度差が0.8mol/L(=1.5−0.7)となり、第3濃度と第2濃度との濃度差は0.7mol/L(=1.5−0.8)となった。
これらの結果(図8及び図9参照)より、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差が大きくなるほど、リチウムイオン二次電池100の内部抵抗(IV抵抗値)が大きくなることがわかる。また、放電電流値に比べて充電電流値を大きくして充放電を繰り返し行うと、第1濃度及び第3濃度が低下し、第2濃度が上昇することがわかる。
また、リチウムイオン二次電池100について、放電電流値を20C(ハイレート)、充電電流値を5Cとして、充放電サイクル試験を行った。その後、このリチウムイオン二次電池100について内部抵抗値(具体的には、IV抵抗値)を測定したところ、約4.5mΩであった。その後、このリチウムイオン二次電池100についても、前述のようにして、非水電解液140の第1濃度、第2濃度、及び第3濃度を測定した。この結果を図10に示す。
図10に示すように、このリチウムイオン二次電池100では、第1濃度が1.3mol/L、第2濃度が0.5mol/L、第3濃度が1.2mol/Lとなった。従って、第1濃度と第2濃度との濃度差が0.8mol/L(=1.3−0.5)となり、第3濃度と第2濃度との濃度差は0.7mol/L(=1.2−0.5)となった。このように、充電電流値に比べて放電電流値を大きくして充放電を繰り返し行うと、放電電流値に比べて充電電流値を大きくして充放電を繰り返し行った場合(図9参照)とは反対に、第1濃度及び第3濃度が上昇し、第2濃度が低下することがわかる。
また、充電電流値に比べて放電電流値を大きくして充放電を繰り返し行った場合(図10参照)でも、IV抵抗値が4.5mΩとなったリチウムイオン二次電池100では、放電電流値に比べて充電電流値を大きくして充放電を繰り返し行った場合(図9参照)と同様に、第1濃度と第2濃度との濃度差が0.8mol/Lとなり、第3濃度と第2濃度との濃度差が0.7mol/Lとなった。このように、充電電流値に比べて放電電流値を大きくして充放電を繰り返し行った場合でも、放電電流値に比べて充電電流値を大きくして充放電を繰り返し行った場合でも、IV抵抗値が等しくなったリチウムイオン二次電池100では、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差が同程度になった。
前述のように、リチウムイオン二次電池100の初期のIV抵抗値は約3.0mΩであった。このリチウムイオン二次電池100では、IV抵抗値が4.2mΩを上回ると、内部抵抗が大きくなりすぎて、十分な出力が得られなくなった。
以上の結果より、IV抵抗値が4.2mΩとなったときの、第1濃度と第2濃度との濃度差(第3濃度と第2濃度との濃度差)である0.6mol/Lを、放電電流または放電電流の上限値を低減させる制御を行うか否かの閾値とした。これにより、第1濃度と第2濃度との濃度差(第3濃度と第2濃度との濃度差)が0.6mol/Lを上回るのを抑制し、リチウムイオン二次電池100のIV抵抗値が4.2mΩを上回るのを抑制することができる。
また、図12に示す試験装置60を用いて、測定電極の電位差と非水電解液の濃度差との相関(図13参照)を得た。試験装置60は、非水電解液140bを収容する大型の容器61と、非水電解液140cを収容する小型の容器62とを備えている。非水電解液140cは、LiPF6の濃度を1.0mol/Lにした非水電解液140である。一方、非水電解液140bは、LiPF6の濃度を0.3〜2.0mol/Lの範囲内で変動させる非水電解液140である。
容器62は、容器61内に配置されている。また、容器62の底部の一部は、バイコールガラス63によって形成されている。これにより、バイコールガラス63を通じて、容器62内に収容されている非水電解液140cと容器61内に収容されている非水電解液140bとの間で、電気的な導通が得られる。
さらに、非水電解液140b中には第1測定電極170bが浸漬され、非水電解液140c中には第2測定電極170cが浸漬されている。第1測定電極170bは、導線175bを通じて電位差測定装置50の正極端子に接続されている。第2測定電極170cは、導線175cを通じて電位差測定装置50の負極端子に接続されている。
このような構成の試験装置60を用いて、非水電解液140bのLiPF6の濃度を、0.3mol/Lから2.0mol/Lに至るまで0.1mol/Lずつ上昇させて、非水電解液140bの各濃度ごとに、電位差測定装置50によって、第1測定電極170bと第2測定電極170cとの電位差を測定した。このときの、第1測定電極170bと第2測定電極170cとの電位差(絶対値)と、非水電解液140bと非水電解液140cとの濃度差(絶対値)との関係を図13に示す。
図13に示すように、非水電解液140bと非水電解液140cとの濃度差が大きくなるにしたがって、第1測定電極170bと第2測定電極170cとの電位差が大きくなった。そして、非水電解液140bと非水電解液140cとの濃度差が0.6mol/Lに達したとき、第1測定電極170bと第2測定電極170cとの電位差が33.0mVになった。この結果より、本実施例1の電池システム6において、第2測定電極170cと第1測定電極170bとの電位差が33.0mVを上回ったとき(すなわち、|ΔV21|>33mVであるとき)、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)に達したと判断することができる。同様に、第2測定電極170cと第3測定電極170dとの電位差が33.0mVを上回ったとき(すなわち、|ΔV23|>33mVであるとき)も、第3濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)に達したと判断することができる。
次に、本実施例1のハイブリッド自動車1におけるリチウムイオン二次電池の充放電制御について、図11を参照して説明する。
まず、ステップS1において、制御装置30は、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)について、通常充放電モードによる充放電制御を開始する。ここで、通常充放電モードとは、ハイレート充放電(例えば、20Cの電流値での充放電)を許容するモードである。なお、本実施例1の電池システム6では、通常充放電モードにおいて、充電電流値の上限値及び放電電流値の上限値を、共に20C(=300A)に設定している。
次いで、ステップS2に進み、制御装置30は、電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21及び電位差ΔV23に基づいて、|ΔV21|>33mVであり、且つ、|ΔV23|>33mVであるか否かを判定する。|ΔV21|>33mVであり、且つ、|ΔV23|>33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップS3に進み、ΔV21>0mVであるか否かを判定する。すなわち、第1測定電極170bの電位が、第2測定電極170cの電位より高いか否かを判定する。
ΔV21>0mVである(Yes)と判定した場合、ステップS4に進み、制御装置30は、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。具体的には、放電電流値の上限値20Cを、例えば、10Cにまで低減する。その後、ステップS5に進み、制御装置30は、放電電流値の上限値を10Cに低減した後に電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21及び電位差ΔV23に基づいて、|ΔV21|≦33mVであり、且つ、|ΔV23|≦33mVであるか否かを判定する。
ステップS5において、|ΔV21|及び|ΔV23|の少なくとも一方が33mVより大きい(No)と判定した場合は、ステップS6に進み、制御装置30は、放電電流値の上限値を10Cに低減した後、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)について、所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われたか否かを判定する。所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われていない(No)と判定した場合は、ステップS5に戻り、上述の処理を行う。
一方、所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われた(Yes)と判定した場合は、ステップS4に戻り、放電電流値の上限値をさらに低減する。例えば、放電電流値の上限値が10Cである場合は、上限値を5Cにまで低減する。このように、放電電流値の上限値を低減してゆくことで、放電電流値に比べて充電電流値をより大きくすることができるので、第1濃度及び第3濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる(図8参照)。これにより、第1測定電極170b及び第3測定電極170dの電位を低下させ、第2測定電極170cの電位を上昇させることができるので、|ΔV21|及び|ΔV23|を低減することができる。
その後、ステップS5において、|ΔV21|≦33mVであり、且つ、|ΔV23|≦33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップS1に戻り、通常充放電モードによる充放電制御を行う。すなわち、低減した放電電流値の上限値を20Cに戻して、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の充放電を制御する。
また、ステップS3において、ΔV21>0mVでない(No)と判定した場合は、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。具体的には、充電電流値の上限値20Cを、10Cにまで低減する。その後、ステップS8に進み、制御装置30は、充電電流値の上限値を10Cに低減した後に電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21及び電位差ΔV23に基づいて、|ΔV21|≦33mVであり、且つ、|ΔV23|≦33mVであるか否かを判定する。
ステップS8において、|ΔV21|及び|ΔV23|の少なくとも一方が33mVより大きい(No)と判定した場合は、ステップS9に進み、制御装置30は、充電電流値の上限値を10Cに低減した後、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)について、所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われたか否かを判定する。所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われていない(No)と判定した場合は、ステップS8に戻り、上述の処理を行う。
一方、所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われた(Yes)と判定した場合は、ステップS7に戻り、充電電流値の上限値をさらに低減する。例えば、充電電流値の上限値が10Cである場合は、上限値を5Cにまで低減する。このように、充電電流値の上限値を低減してゆくことで、充電電流値に比べて放電電流値を大きくしてゆくことができるので、第1濃度及び第3濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる(図10参照)。これにより、第1測定電極170b及び第3測定電極170dの電位を上昇させ、第2測定電極170cの電位を低下させることができるので、|ΔV21|及び|ΔV23|を低減することができる。
その後、ステップS8において、|ΔV21|≦33mVであり、且つ、|ΔV23|≦33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップS1に戻り、通常充放電モードによる充放電制御を行う。すなわち、低減した充電電流値の上限値を20Cに戻して、組電池10(リチウムイオン二次電池100,101)の充放電を制御する。
以上のように制御することで、リチウムイオン二次電池100,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池100,101の内部抵抗の上昇(IV抵抗値が4.2mΩを上回ること)を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。これにより、ハイブリッド自動車1の走行性能の低下を抑制することができる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例2のハイブリッド自動車11は、実施例1のハイブリッド自動車1と比較して、電池システムが異なる(図1参照)。具体的には、本実施例2のハイブリッド自動車11は、電池システム26を備えている。この電池システム26は、実施例1の電池システム6と比較して、組電池及び制御装置が異なる。
本実施例2の電池システム26は、図14に示すように、実施例1の電池システム6と異なり、組電池12と制御装置230を備えている。このうち、組電池12は、実施例1の組電池10と比較して、リチウムイオン二次電池100をリチウムイオン二次電池200に変更した点のみが異なる。リチウムイオン二次電池200は、図15に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池100と比較して、第3測定電極170d及び導線175dを有していない点のみが異なる。
制御装置230は、電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21を、逐次入力する。なお、本実施例2では、導線175cが、電位差測定装置50の負極端子に接続され、導線175bが、電位差測定装置50の正極端子に接続されている。従って、実施例1と同様に、電位差ΔV21=(第1測定電極170bの電位)−(第2測定電極170cの電位)となる。
制御装置230は、電位差ΔV21に基づいて、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の充電電流及び放電電流を制御する。具体的には、制御装置230は、電位差ΔV21が、第1濃度と第2濃度との濃度差が閾値(0.6mol/L)を上回っているときに得られる電位差値(33mVより大きい値)であるか否かを判定する。詳細には、|ΔV21|>33mVであるか否かを判定する。ここで、第1濃度とは、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度である。また、第2濃度は、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度である。
さらに、制御装置230は、|ΔV21|>33mVである場合、ΔV21>0mVであるか否かを判定する。すなわち、第1測定電極170bの電位が、第2測定電極170cの電位より高いか否か(従って、発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140の第1濃度が、発電部150bの中央部150b2に含まれる非水電解液140の第2濃度よりも高いか否か)を判定する。
ΔV21>0mVであると判定した場合(すなわち、第1濃度が第2濃度よりも高いと判断した場合)は、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、放電電流値を抑制する(すなわち、相対的に充電電流値を大きくする)制御を行うことで、組電池12を構成するリチウムイオン二次電池200,101について、第1濃度及び第3濃度を低下させ、第2濃度を上昇させることができる(図8参照)。これにより、リチウムイオン二次電池200,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池200,101の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
一方、ΔV21>0mVでないと判定した場合(第1濃度が第2濃度よりも低いと判断した場合)は、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。このように、充電電流値を抑制する(すなわち、相対的に放電電流値を大きくする)制御を行うことで、第1濃度及び第3濃度を上昇させ、第2濃度を低下させることができる(図10参照)。これにより、リチウムイオン二次電池200,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池100,101の内部抵抗の上昇を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。
なお、図8〜図10に示すように、第1濃度(発電部150bの一端部150b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度)と第3濃度(発電部150bの他端部150b3に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度)は、ほぼ等しい値となる。従って、第1濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とすることで、第3濃度と第2濃度との濃度差も閾値(0.6mol/L)以下とすることが可能となる。
次に、本実施例2のハイブリッド自動車11におけるリチウムイオン二次電池の充放電制御について、図16を参照して説明する。
まず、制御装置230は、ステップT1の処理を、実施例1のステップS1と同様に行う。次いで、ステップT2に進み、制御装置230は、電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21に基づいて、|ΔV21|>33mVであるか否かを判定する。|ΔV21|>33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップT3に進み、実施例1のステップS1と同様の処理を行う。
ステップT3においてΔV21>0mVである(Yes)と判定した場合、ステップT4に進み、制御装置230は、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の放電時における放電電流の上限値を低減させる制御を、実施例1のステップS4と同様にして行う。その後、ステップT5に進み、制御装置230は、放電電流値の上限値を低減した後に電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21に基づいて、|ΔV21|≦33mVであるか否かを判定する。
ステップT5において、|ΔV21|≦33mVでない(No)と判定した場合は、ステップT6に進み、制御装置230は、実施例1のステップS6と同様の処理を行う。
ステップT6において所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われた(Yes)と判定した場合は、ステップT4に戻り、放電電流値の上限値をさらに低減する。その後、ステップT5において、|ΔV21|≦33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップT1に戻り、通常充放電モードによる充放電制御を行う。すなわち、低減した放電電流値の上限値を20Cに戻して、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の充放電を制御する。
一方、ステップT3において、ΔV21>0mVでない(No)と判定した場合は、、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の充電時における充電電流の上限値を低減させる制御を行う。その後、ステップT8に進み、制御装置230は、充電電流値の上限値を低減した後に電位差測定装置50によって測定された電位差ΔV21に基づいて、|ΔV21|≦33mVであるか否かを判定する。
ステップT8において、|ΔV21|≦33mVでない(No)と判定した場合は、ステップT9に進み、実施例1のステップS9と同様の処理を行う。
ステップT9において所定回数(例えば、50サイクル)充放電が行われた(Yes)と判定した場合は、ステップT7に戻り、充電電流値の上限値をさらに低減する。その後、ステップT8において、|ΔV21|≦33mVである(Yes)と判定した場合は、ステップT1に戻り、通常充放電モードによる充放電制御を行う。すなわち、低減した充電電流値の上限値を20Cに戻して、組電池12(リチウムイオン二次電池200,101)の充放電を制御する。
以上のように制御することで、リチウムイオン二次電池200,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部150bにおける非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池200,101の内部抵抗の上昇(IV抵抗値が4.2mΩを上回ること)を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。これにより、ハイブリッド自動車11の走行性能の低下を抑制することができる。
(変形例1)
変形例1のハイブリッド自動車21は、実施例1のハイブリッド自動車1と比較して、電池システムが異なる(図1参照)。具体的には、本変形例1のハイブリッド自動車21は、電池システム36を備えている。この電池システム36は、実施例1の電池システム6と比較して、組電池のみが異なる(図2参照)。
本変形例1の電池システム36は、図2に括弧書きで示すように、実施例1の電池システム6と異なり、組電池13を備えている。組電池13は、実施例1の組電池10と比較して、リチウムイオン二次電池100をリチウムイオン二次電池300に変更した点のみが異なる。リチウムイオン二次電池300は、図17に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池100と比較して、第1測定電極170b〜第3測定電極170dに代えて、一体型測定電極シート370を設けた点が大きく異なる。
一体型測定電極シート370は、図19及び図20に示すように、厚み均一な1枚のシート状をなす一体型測定電極シートである。具体的には、一体型測定電極シート370は、電気絶縁性を有する第1絶縁シート374(例えば、ポリプロピレンシート)と、アルミニウム箔からなる配線層371と、電極合剤172からなる電極合剤層372と、電気絶縁性を有する第2絶縁シート373(例えば、ポリプロピレンシート)とが積層されてなる。なお、電極合剤172は、実施例1と同様に、LiFePO4で表される活物質172bを含んでいる。
配線層371は、円形状をなす第1集電部371bと、これに接続する第1配線部371eと、円形状をなす第2集電部371cと、これに接続する第2配線部371fと、円形状をなす第3集電部371dと、これに接続する第3配線部371gとを有している。
電極合材層372は、第1集電部371bの表面と、第2集電部371cの表面と、第3集電部371dの表面とに、それぞれ積層された電極合剤172からなる。
また、第2絶縁シート373のうち電極合剤172と対向する位置には、電極合剤172を外部に露出させる円形状の貫通孔373b,373c,373dが形成されている。
このような一体型測定電極シート370では、第1集電部371bとその表面に積層された電極合剤172とにより、第1測定電極370bが形成される。さらに、第2集電部371cとその表面に積層された電極合剤172とにより、第2測定電極370cが形成される。さらに、第3集電部371dとその表面に積層された電極合剤172とにより、第3測定電極370dが形成される。従って、一体型測定電極シート370は、第1測定電極370b、第2測定電極370c、及び第3測定電極370cが、第1絶縁シート374と第2絶縁シート373との間に挟まれて一体化され、厚み均一な1枚のシート状をなす一体型測定電極シートであるといえる。
一体型測定電極シート370は、図17、図18、及び図21に示すように、電極体350の発電部350bの外周面350c上に配置(例えば、バインダ樹脂により接着)されている。なお、電極体350は、実施例1の電極体150と比較して、発電部の形態のみが異なる。具体的には、電極体350の発電部350bは、図21に示すように、実施例1の発電部150bと比較して、第2絶縁シート373の貫通孔373b,373c,373dと対向する位置に、外周面側セパレータ157bを、第1測定電極370b、第2測定電極370c、及び第3測定電極370cに向けて露出させる第1露出穴156f、第2露出穴156g、及び第3露出穴156hが形成されている点のみが異なる。ここで、外周面側セパレータ157bとは、正極板155と負極板156との間に挟まれたセパレータ157のうち、最も外周面350c側に位置する部位である。また、本変形例1では、第1露出穴156f、第2露出穴156g、及び第3露出穴156hは、最も外周面350c側に位置する負極板156を貫通する丸穴である。
なお、図21では、発電部350bの第1平坦部350d側のみを示しており、その他の部位は図示を省略している。
このような構成のリチウムイオン二次電池300では、一体型測定電極シート370に含まれる第1測定電極370bが、第1露出穴156f及び貫通孔373bを通じて、発電部350bの一端部350b1に含まれる非水電解液140に接触する。さらに、一体型測定電極シート370に含まれる第2測定電極370cが、第2露出穴156g及び貫通孔373cを通じて、発電部350bの中央部350b2に含まれる非水電解液140に接触する。さらに、一体型測定電極シート370に含まれる第3測定電極370dが、第3露出穴156h及び貫通孔373dを通じて、発電部350bの他端部350b3に含まれる非水電解液140に接触する。
これにより、一体型測定電極シート370に含まれる第1測定電極370bによって、発電部350bの一端部350b1に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を適切に測定することができる。さらに、一体型測定電極シート370に含まれる第2測定電極370cによって、発電部350bの中央部350b2に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を適切に測定することができる。さらに、一体型測定電極シート370に含まれる第3測定電極370dによって、発電部350bの他端部350b3に含まれる非水電解液140のLiイオン濃度に応じた電位を適切に測定することができる。
なお、本変形例1では、第1測定電極370bに接続する第1配線部371eに、導線175bの一端部が接続されている。また、第2測定電極370cに接続する第2配線部371fに、導線175cの一端部が接続されている。また、第3測定電極370dに接続する第3配線部371gに、導線175dの一端部が接続されている。
このような変形例1の電池システム36でも、制御装置30により、実施例1と同様にして(図11参照)、充電電流及び放電電流を制御する。これにより、組電池13を構成するリチウムイオン二次電池300,101について、第1濃度と第2濃度との濃度差及び第3濃度と第2濃度との濃度差を閾値(0.6mol/L)以下とし、発電部における非水電解液140のLiイオン濃度の偏りを抑制することができる。従って、リチウムイオン二次電池300,101の内部抵抗の上昇(IV抵抗値が4.2mΩを上回ること)を抑制し、電池の出力低下を抑制することができる。これにより、ハイブリッド自動車21の走行性能の低下を抑制することができる。
ところで、電池ケース110の角形収容部111は、図18に示すように、電極体350を挟んで対向する第1内側面111b及び第2内側面111cを有している。また、発電部350の外周面350cは、角形収容部111の第1内側面111bと対向する平坦状の第1平坦部350dと、角形収容部111の第2内側面111cと対向する平坦状の第2平坦部350eとを有している。
このようなリチウムイオン二次電池300では、充電時に電極体350が膨張する(図18において左右方向に膨張する)と、発電部350bの第1平坦部350dが角形収容部111の第1内側面111bによって押圧されると共に、発電部350bの第2平坦部350eが角形収容部111の第2内側面111cによって押圧される。
このため、電極体350の第1平坦部350dに部分的(一端部、中央部、他端部)に測定電極を配置して、第1平坦部350dのうち測定電極を配置しない部分については何も配置せずに露出させる形態とした場合、充電時に電極体350が膨張したとき、角形収容部111の第1内側面111bによる発電部350bの第1平坦部350dへの押圧力が不均一となる。具体的には、第1平坦部350dのうち測定電極を配置していない部分は、測定電極を配置している部分に比べて、測定電極の厚みの分だけ第1内側面111bから遠ざかっているので、第1平坦部350dのうち測定電極を配置していない部分では、測定電極を配置している部分に比べて押圧力が小さくなる。この影響で、充電ムラが生じ、電池の出力特性が低下する虞があった。
これに対し、本変形例1では、一体型測定電極シート370を、発電部350bの第1平坦部350dの全面を覆うことが可能な形状としている。そして、この一体型測定電極シート370を、発電部350bの第1平坦部350dの全面を覆って配置している(図17、図18、図21参照)。これにより、充電時に電極体350が膨張したとき、角形収容部111の第1内側面111bによる発電部350bの第1平坦部350dへの押圧力を均一にすることができる。これにより、充電ムラを抑制し、電池の出力特性を良好にすることができる。
以上において、本発明を実施例1,2及び変形例1に即して説明したが、本発明は上記実施例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1,2及変形例1では、測定電極として、LiFePO4を有する測定電極を用いた。しかしながら、LiFePO4に代えて、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLi4Ti5O12のいずれかを有する測定電極を用いるようにしても良い。あるいは、Li金属からなる測定電極を用いても良い。
また、変形例1では、一体型測定電極シートとして、第1測定電極370b、第2測定電極370c、及び第3測定電極370cを含む一体型測定電極シート370を例示した。しかしながら、第3測定電極370cを有することなく、第1測定電極370b及び第2測定電極370cを有し、外寸法を一体型測定電極シート370と同等にした一体型測定電極シートを用いるようにしても良い。この場合、実施例2と同様にして、充電電流及び放電電流を制御すると良い。