JP5352897B2 - 緊張材の緊張方法、及び緊張材の緊張システム - Google Patents
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Description
(1) 上記定着盤から突出した緊張材にマルチ緊張装置を配置する工程
上記マルチ緊張装置は、複数の緊張材を一定の緊張力で一括して緊張可能なものとする。
(2) 上記マルチ緊張装置の後端から突出した個々の緊張材に、シングル緊張装置を配置してこの緊張材を緊張し、各緊張材の弛みを低減した状態で仮固定する工程
上記シングル緊張装置は、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なものとする。
(3) 上記シングル緊張装置による緊張後、上記マルチ緊張装置により、上記定着盤から突出した複数の緊張材を同時に緊張して、これらの緊張材を上記定着盤に固定する工程
この定着構造は、図3に示すようにコンクリート構造物100の内部に複数の緊張材200が挿通され、この構造物100の端面から突出するこれらの緊張材200の端部をアンカーディスク110(定着盤)を用いて定着する構造である。より具体的には、コンクリート構造物100の内部に複数の緊張材200がほぼ平行に配置され、これら緊張材200の外周は、筒状の内トランペット130及び外トランペット131、上記構造物100の端面側に配置された概略円錐台状の筒状のリブキャストアンカー132により覆われている。リブキャストアンカー132上に、アンカーディスク110が配置される。アンカーディスク110は、十分な厚みを有する円盤状の部材であり、各緊張材200が挿通される複数の貫通孔110aを有する。貫通孔110aの中間部から一方の開口部(コンクリート構造物100から離れた側の開口部)に向かってテーパ状に形成されている。このテーパ状部分は、緊張材200を把持する定着用ウェッジ120が嵌め込まれるウェッジ孔110bに利用される。
緊張材200は、緊張状態で、その端部がコンクリート構造物100の端面に定着されることで、導入された緊張荷重をプレストレスとしてコンクリートに付与する部材である。ここでは、緊張材200として、PC鋼より線を利用している。このPC鋼撚り線は、複数本のPC鋼線を撚り合せて、その外周を樹脂被覆した被覆PC鋼より線である。その他、緊張材は、上記樹脂被覆を具えていない裸PC鋼より線、PC鋼線の外周にメッキを具えるメッキPC鋼線を撚り合せたメッキPC鋼より線、或いは単一のPC鋼線やPC鋼棒などを利用することができる。
定着用ウェッジ120は、複数の分割片を組み合わせることで円錐台状に形成される組物である。これら分割片を組み合わせた組物の中心部には、この組物の軸方向に伸びる円孔が形成される。この円孔内にて緊張材200が把持される。各分割片の内側には、緊張材200を強固に把持できるよう、凹凸面が構成されている。通常、分割片の数は、2〜3程度である。これらの分割片は、例えば、定着用ウェッジの外周にOリングを嵌め込んで拘束すると、ばらばらにならない。後述する緊張用ウェッジ10及び小引張用ウェッジ20も、定着用ウェッジ120と同様の構成である。
図1は、定着盤から突出した複数の緊張材を緊張するときの緊張手順の説明図であり、(A)は、緊張前の状態、(B)は、マルチ緊張装置を配置する前の状態、(C)は、マルチ緊張装置を配置する状態、(D)は、マルチ緊張装置の後端にシングル緊張装置を配置した状態を示し、図2は、シングル緊張装置により緊張材を緊張する状態の説明図である。図2では、分かり易いように緊張材及び貫通孔の数を少なくした状態で示す。PC鋼より線の緊張作業には、マルチ緊張装置1とシングル緊張装置2とを具える緊張システムを利用する。
マルチ緊張装置1は、複数の緊張材200を一定の緊張力で一括して緊張可能な装置である。具体的には、複数の緊張材200を緊張用ウェッジ10により把持して緊張する緊張用ジャッキ部(図示せず)と、緊張用ジャッキ部に直列的に配置され、一定の力で一括して複数の定着用ウェッジ120をアンカーディスク110側に押し込む定着用ジャッキ部(図示せず)とを具える。マルチ緊張装置1が緊張材200に取り付けられたときに定着用ジャッキ部がアンカーディスク110側(マルチ緊張装置1の先端側)、緊張用ジャッキ部が緊張材200の端部側(マルチ緊張装置1の後端側)となるように、両ジャッキ部がマルチ緊張装置1に内蔵されている。マルチ緊張装置1においてアンカーディスク110側(図1では左側)に配される端面15には、各緊張材200がそれぞれ挿通される複数の挿通孔16が設けられている。これらの挿通孔16にそれぞれ挿通された各緊張材200の中間部は、平行した状態でマルチ緊張装置1の内部に挿通配置され、各緊張材200の端部は、マルチ緊張装置1の後端から突出される。マルチ緊張装置1の後端には、ディスク部11を具える。ディスク部11には、複数の緊張材200がそれぞれ挿通される複数の貫通孔11aを有する。貫通孔11aの中間部から一方の開口部(後端側の開口部)に向かってテーパ状に形成され、このテーパ状部分は、緊張材200を把持する緊張用ウェッジ10が嵌め込まれるウェッジ孔11bに利用される。上述したマルチ緊張装置1の基本的な構成は、公知のマルチジャッキ、例えば、特許文献1に開示されているジャッキと同様であり、既存のマルチジャッキをほぼそのまま利用することができる。
シングル緊張装置2は、1本の緊張材200のみを把持して緊張可能な装置であり、1本の緊張材200を小引張用ウェッジ20により把持して緊張する小引張用ジャッキ部(図示せず)と、小引張用ジャッキ部と直列的に配置され、緊張用ウェッジ10をディスク部11に押し込む仮固定用ジャッキ部(図示せず)とを具える。シングル緊張装置2が緊張材200に取り付けられたときに仮固定用ジャッキ部がアンカーディスク110側(シングル緊張装置2の先端側)、小引張用ジャッキ部が緊張材200の端部側(シングル緊張装置2の後端側)となるように、両ジャッキ部がシングル緊張装置2に内蔵されている。シングル緊張装置2の内部には、1本の緊張材200の中間部が挿通配置され、緊張材200の端部がシングル緊張装置2の後端から突出される。上述したシングル緊張装置2の基本的な構成は、公知のシングルジャッキ、例えば、特許文献2に開示されている緊張装置と同様であり、既存のシングルジャッキをほぼそのまま利用することができる。
支圧部材30は、断面]状の円盤状の部材であり、複数の緊張材200がそれぞれ挿通される複数の挿通孔30aを具え、一面側に円筒状の凹部30bが設けられ、凹部30bの内周の縁側部分がマルチ緊張装置1の位置決め部11cに嵌め込まれることで、マルチ緊張装置1に位置決めされる。この支圧部材30は、上記シングル緊張装置2により緊張材200を緊張するときの緊張力の反力を受ける。従って、この反力に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成される。支圧部材30をマルチ緊張装置1の後端のディスク部11に装着したとき、ディスク部11の後端面と、凹部30bの内端面との間に、緊張用ウェッジ10の高さ(軸方向の長さ)よりも小さいギャップが形成されるように、凹部30bの深さを調整することが好ましい。この場合、ディスク部11の後端面と凹部30bの内端面との間につくられる空間に緊張用ウェッジ10が抜け落ちることを防止できる。
アタッチメント31は、シングル緊張装置2により緊張している緊張材(以下、この緊張材を緊張材200aと表記する)に隣接する他の緊張材200に干渉することなく、シングル緊張装置2の緊張時の緊張力を支圧部材30に伝達するために利用される部材である。具体的には、円筒状の部材であり、その一端側は、シングル緊張装置2における先端側の端面と同程度の断面を有する太径部31aであり、その他端側は、上記先端側の端面よりも小さい断面を有する細径部31bである。太径部31aの端部側は、中央部分が突出した段差形状になっており、この凸部31cがシングル緊張装置2の取付部21の凹部21aに嵌め込まれることで、アタッチメント31は、シングル緊張装置2に位置決めされると共に取り付けられる。太径部31a及び細径部31bの断面及び長さはシングル緊張装置2による緊張材200aの緊張時、緊張材200aの周囲に存在する他の緊張材200に邪魔されずに緊張力を支圧部材30に伝達できる範囲で、適宜選択することができる。また、アタッチメント31は、上記緊張力の伝達に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成されている。
圧入ラム32は、シングル緊張装置2の仮固定用ジャッキ部により、緊張用ウェッジ10をディスク部11のウェッジ孔11bに押圧するときに、緊張用ウェッジ10を直接押圧する部材である。具体的には、一様な断面を有する円筒状の部材であり、アタッチメント31の内周に配置されると共に、一端側は、シングル緊張装置2の取付部21のラム用孔21bに嵌め込まれ、他端側は、支圧部材30の挿通孔30aに挿通され、この他端側の端面により緊張用ウェッジ10を押圧する。従って、圧入ラム32は、この押圧力に十分耐え得る材料、例えば炭素鋼により形成されている。
以下、主として図1を参照して、緊張手順を説明する。上述のようにコンクリート構造物100に配置されたアンカーディスク110から突出した複数の緊張材200のそれぞれの外周に定着用ウェッジ120を配置する(図1(A))。次に、これらの緊張材200にマルチ緊張装置1を配置する。ここでは、まず、これらの緊張材200が交差などしていないことを確認する。具体的には、各緊張材200がそれぞれ挿通可能な複数の挿通孔51を具える円板状の確認用プレート50を用いて確認する。この確認用プレート50を緊張材200の端部から挿通し、アンカーディスク110側に向かって移動させることにより(図1(B))、各緊張材200が平行状態にあるかどうかを容易に確認できる。確認後、確認用プレート50をアンカーディスク110側に寄せておく。確認用プレート50は、特許文献1に記載されるプレートを利用することができる。確認用プレートを用いず、例えば、目視などにより確認してもよい。
上述のようにマルチ緊張装置1による緊張前に、マルチ緊張装置1の後端にシングル緊張装置2を直列的に配置して、シングル緊張装置2により緊張材200を引っ張って弛みを低減した状態とし、この状態でマルチ緊張装置1による緊張を行うことで、この緊張後の各緊張材200の導入張力のばらつきを低減することができる。そのため、この緊張方法を利用することで、定着構造の信頼性を高められる。
10 緊張用ウェッジ 11 ディスク部 11a 貫通孔 11b ウェッジ孔
11c 位置決め部 15 端面 16 挿通孔 17 迎え棒 17a 先端キャップ
20 小引張用ウェッジ 21 取付部 21a 凹部 21b ラム用孔
30 支圧部材 30a 挿通孔 30b 凹部 31 アタッチメント 31a 太径部
31b 細径部 31c 凸部 32 圧入ラム 50 確認用プレート 51 挿通孔
100 コンクリート構造物 110 アンカーディスク 110a 貫通孔
110b ウェッジ孔 120 定着用ウェッジ 130 内トランペット
131 外トランペット 132 リブキャストアンカー 140 キャップ
200,200a 緊張材
Claims (5)
- 一つの定着盤から突出した複数の緊張材を所定の緊張荷重を付した状態で前記定着盤に定着する緊張材の緊張方法であって、
複数の緊張材を一定の緊張力で一括して緊張可能なマルチ緊張装置を前記定着盤から突出した緊張材に配置する工程と、
前記マルチ緊張装置の後端から突出した複数の緊張材のうちの任意の1本の緊張材に、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なシングル緊張装置を配置してこの緊張材を緊張し、この緊張材の弛みを低減した状態で仮固定する操作を繰り返して、前記複数の緊張材の全てを仮固定する工程と、
前記シングル緊張装置による緊張後、前記マルチ緊張装置により、前記定着盤から突出した複数の緊張材を同時に緊張して、これらの緊張材を前記定着盤に固定する工程とを具え、
前記仮固定する工程では、
前記シングル緊張装置により緊張される前記1本の緊張材を把持する緊張用ウェッジをこの緊張材の外周に配置すると共に、前記緊張用ウェッジを前記マルチ緊張装置のディスク部に設けられたウェッジ孔に嵌め込み、
前記マルチ緊張装置の後端に、前記シングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける支圧部材を配置し、
前記シングル緊張装置によって緊張する前記1本の緊張材において前記支圧部材から突出した部分の外周に、円筒状の伝達部材と、この伝達部材の内周に位置して前記緊張用ウェッジを前記ウェッジ孔に押圧する筒状の押圧部材とを配置し、
前記伝達部材は、その一端側が前記シングル緊張装置における先端側の端面と同程度の断面を有する太径部であり、前記支圧部材側に配置される他端側が前記先端側の端面よりも小さい断面を有する細径部である一体の部材とし、
前記シングル緊張装置における定着盤側の端面と前記支圧部材との間に前記伝達部材が介在するように、前記マルチ緊張装置の後端から所定の距離だけ離して前記シングル緊張装置を配置した後、
前記シングル緊張装置により緊張材を緊張して弛みを低減し、このシングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、前記シングル緊張装置の緊張時の緊張力を前記伝達部材を介して前記支圧部材に伝達すると共に、前記緊張用ウェッジを前記押圧部材により前記ウェッジ孔に押圧することで前記弛みを低減した状態を仮固定する緊張材の緊張方法。 - 前記シングル緊張装置による緊張時の緊張力は、前記マルチ緊張装置による緊張時の緊張力よりも小さい請求項1に記載の緊張材の緊張方法。
- 前記各緊張材は、裸PC鋼より線、メッキPC鋼より線、樹脂被覆PC鋼より線、及びアンボンドPC鋼より線のいずれかである請求項1又は2に記載の緊張材の緊張方法。
- 一つの定着盤から突出した複数の緊張材を所定の緊張荷重を付した状態で前記定着盤に定着する緊張材の緊張システムであって、
複数の緊張材を一定の緊張力で一括して緊張可能なマルチ緊張装置と、
前記マルチ緊張装置の後端から突出した複数の緊張材のうちの任意の1本の緊張材に配置されて、1本の緊張材のみを把持して緊張可能なシングル緊張装置と、
前記シングル緊張装置により緊張される前記緊張材を把持する緊張用ウェッジと、
前記マルチ緊張装置の後端に配置されて、前記シングル緊張装置の緊張時の緊張力の反力を受ける支圧部材と、
前記マルチ緊張装置の後端に配置された前記シングル緊張装置の前記定着盤側の端面と前記支圧部材との間における緊張材の外周に配置され、前記シングル緊張装置により緊張している緊張材に隣接する緊張材に干渉することなく、前記シングル緊張装置の緊張時の緊張力を前記支圧部材に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材の内周に配置され、前記シングル緊張装置の緊張時に前記緊張用ウェッジを前記マルチ緊張装置のディスク部に設けられたウェッジ孔に押圧する筒状の押圧部材とを具え、
前記伝達部材は、その一端側が前記シングル緊張装置における先端側の端面と同程度の断面を有する太径部であり、前記支圧部材側に配置される他端側が前記先端側の端面よりも小さい断面を有する細径部である一体の円筒状の部材であり、
前記マルチ緊張装置は、前記シングル緊張装置による緊張後、前記緊張用ウェッジにより把持された前記複数の緊張材の全てを同時に緊張する緊張材の緊張システム。 - 前記マルチ緊張装置のディスク部に、前記支圧部材の位置決めを行う位置決め部を有する請求項4に記載の緊張材の緊張システム。
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