以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による外鉄形変圧器1を示す斜視図である。図2は、図1のコイル本体4の一部を拡大して示す断面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。なお、図1では、タンク2、鉄心3及びコイル本体4の一部を断面で示す。また、図2の上側は、コイル本体4の外周側であり、図2の下側はコイル本体4の内周側である。
図1〜3において、静止誘導器としての外鉄形変圧器1は、タンク2、鉄心3、複数のコイル本体4を有している。タンク2の内部には、冷却油(冷媒:図示せず)が充填されている。鉄心3、コイル本体4は、タンク2の内部に収容されている。コイル本体4は、鉄心3の脚部(中心軸)を囲むように取り付けられている。また、コイル本体4は、長手方向を上下にして配置された矩形平板状のコイルである。
コイル本体4は、第1部分コイル組体5と、第2部分コイル組体6とを有している。第1部分コイル組体5は、一組の部分コイル5A,5Bによって構成されている。第2部分コイル組体6も同様に、一組の部分コイル6A,6Bによって構成されている。部分コイル5A,5B,6A,6Bは、それぞれ巻線が平板状に巻き付けられることにより平板状に形成されている。
部分コイル5A,5Bにおけるコイル本体4の外周側及び内周側は、部分コイル接続線7A,7Bを介して、それぞれ短絡されている。即ち、部分コイル5A,5Bは、部分コイル接続線7A,7Bを介して並列接続されている。これと同様に、部分コイル6A,6Bは、部分コイル接続線8A,8Bを介して並列接続されている。
第1部分コイル組体5及び第2部分コイル組体6におけるコイル本体4の内周側(図2の下側)は、コイル接続線9Aを介して直列接続されている。また、第1部分コイル組体5及び第2部分コイル組体6におけるコイル本体4の外周側(図2の上側)には、インパルス電圧のような高周波高電圧が外鉄形変圧器1に印加されたときに発生する高電圧に耐えるように、コイル間絶縁寸法Xが設定されている。
第1部分コイル組体5と、第1部分コイル組体5の隣の第2部分コイル組体6の反対側(図2の左側)に配置されたコイル組体(図示せず)とは、コイル本体4の外周側で、コイル接続線9Bを介して直列接続されている。これと同様に、第2部分コイル組体6と、第2部分コイル組体6の隣の第1部分コイル組体5の反対側(図2の右側)に配置されたコイル組体(図示せず)とは、コイル本体4の外周側で、コイル接続線9Cを介して直列接続されている。
従って、部分コイル5A,5B,6A,6Bが並列接続されて構成される第1及び第2部分コイル組体5,6等が直列接続されて、全体としてコイル本体4が構成されている。即ち、コイル本体4は、複数の部分コイル5A,5B,6A,6B等が軸方向に対向して重なり合うように配置されることにより構成されている。
互いに隣り合う部分コイル5A,5Bの間には、部分コイル間支持部としての平板状の部分コイル間絶縁板10が介在されている。部分コイル間絶縁板10は、図3に示すように、部分コイル5A,5Bの重なり合う領域の全域に亘るように配置されている。また、部分コイル間絶縁板10の一方の面(図2の左側の面、図3の紙面奥側の面:第1の面)は、部分コイル5Aにおける部分コイル5B側の面(図2の右側の面)に接した状態で配置されている。
部分コイル間絶縁板10の他方の面(図2の右側の面、図3の紙面手前側の面:第2の面)には、部分コイル間突出部としての複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11が、間隔をおいて、例えば接着剤等によって貼り付けられている。複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11は、部分コイル間絶縁板10と部分コイル5Bとの間に介在されている。部分コイル間絶縁板10と部分コイル5Bとの間の領域における互いに隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物11同士の間のスペースは、冷媒流路(通油路,冷媒流通路)R1である。即ち、部分コイル間絶縁板10と複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11とは、共同して冷媒流路R1を形成している。
部分コイル間絶縁板10における互いに隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物11同士の間には、開口10aが設けられている。開口10aは、冷媒流路R1に連通されている。これにより、部分コイル5Aにおける開口10aに隣接する箇所が、冷媒流路R1に露出されている。即ち、開口10aによって、冷媒流路R1を流れる冷媒が部分コイル5Aへ導かれる。
第1部分コイル組体5における外側の面の一方、即ち部分コイル5Aにおける部分コイル間絶縁板10の反対側の面(図2の左側の面)には、第1外側絶縁板14が部分コイル5Aから間隔をおいて対向して設けられている。第1外側絶縁板14における部分コイル5A側の面には、複数の第1外側スペーサ絶縁物12がそれぞれ間隔をおいて、例えば接着剤等によって貼り付けられている。
複数の第1外側スペーサ絶縁物12は、第1外側絶縁板14と部分コイル5Aとの間に介在されている。第1外側絶縁板14と部分コイル5Aとの間の領域における互いに隣り合う第1外側スペーサ絶縁物12同士の間のスペースは、冷媒流路R2である。即ち、第1外側絶縁板14と複数の第1外側スペーサ絶縁物12とは、共同して冷媒流路R2を形成している。
第1部分コイル組体5における外側の面の他方、即ち部分コイル5Bにおける部分コイル5Aの反対側の面(図2の右側の面)には、第2外側絶縁板15が部分コイル5Bから間隔をおいて対向して設けられている。第2外側絶縁板15における部分コイル5B側の面には、複数の第2外側スペーサ絶縁物13がそれぞれ間隔をおいて設けられている。
複数の第2外側スペーサ絶縁物13は、第2外側絶縁板15と部分コイル5Bとの間に介在されている。第2外側絶縁板15と部分コイル5Bとの間の領域における互いに隣り合う第1外側スペーサ絶縁物13同士の間のスペースは、冷媒流路R3である。即ち、第2外側絶縁板15と複数の第2外側スペーサ絶縁物13とは、共同して冷媒流路R3を形成している。
第2部分コイル組体6についても、第1部分コイル組体5と同様に、部分コイル間絶縁板10並びに第1及び第2外側絶縁板14,15と同等の絶縁板と、部分コイル間スペーサ絶縁物11並びに第1及び第2外側スペーサ絶縁物12,13と同等の絶縁物とが設けられている。第2部分コイル組体6には、これらの絶縁板及び絶縁物によって、複数の冷媒流路R4〜R6が形成されている。
第1部分コイル組体5と第2部分コイル組体6との間(外側絶縁板同士の間)には、複数のコイル組体間絶縁物16が間隔をおいて設けられている。複数のコイル組体間絶縁物16は、第1部分コイル組体5と第2部分コイル組体6との間に、共同して冷媒流路R7を形成している。なお、各絶縁板10,14,15及び各絶縁物11,12,13,16については、例えばプレスボードや樹脂成形品や樹脂・紙の混合物等を用いることができる。
ここで、外鉄形変圧器1にインパルス電圧のような高周波高電圧が印加されたときには、部分コイル5A,5B間と、部分コイル6A,6B間とのそれぞれに高電圧が発生する。このため、部分コイル5A,5B間と、部分コイル6A,6B間とのそれぞれには、その発生電圧に耐えるための部分コイル間絶縁寸法Yが空けられている。部分コイル間絶縁板10と複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11とは、部分コイル間絶縁寸法Yを保つように、部分コイル5A,5Bの両方を絶縁状態で支持する。
また、各絶縁物11,12,13,16は、部分コイル5A,5Bが対向する方向で、重なり合うように配置されている。即ち、各絶縁物11,12,13,16は、コイル本体4のコイル面(鉄心3の脚部の軸方向に対する直交面と平行な面)内の同じ位置になるように配置されている。
上記のような実施の形態1の外鉄形変圧器1によれば、部分コイル5A,5Bの互いに重なり合う領域の全域に亘るように、部分コイル5A,5B間に部分コイル間絶縁板10及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11が介在されている。これらの部分コイル間絶縁板10及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11は、部分コイル5A,5B間の間隔を保つように部分コイル5A,5Bのそれぞれを支持するとともに、部分コイル5A,5B間に冷媒流路R1を形成している。この構成により、部分コイル5A,5Bを両面から冷却することができ、部分コイル5A,5Bの冷却性能を従来装置よりも高めることができる。これとともに、部分コイル5A,5Bに短絡電磁力が働いた際に部分コイル5A,5Bの変形及び位置ずれの発生を抑えることができる。なお、部分コイル6A,6Bについても部分コイル5A,5Bと同様に、部分コイル間絶縁板及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物によって、部分コイル6A,6Bの変形及び位置ずれの発生を抑えることができる。
また、部分コイル間絶縁板10の片面(第1の面)にのみ複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11が貼り付けられ、これらの部分コイル間絶縁板10及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11によって、冷媒流路R1が形成されている。これにより、部分コイル間絶縁板の両面側にスペーサ絶縁物を貼り付けて冷媒流路を形成する構成(例えば後述の実施の形態2の構成)よりも部品点数が少なくなる。これに加えて、実施の形態1の構成では、冷媒流路の幅が、部分コイル間絶縁板の両面側に分割される構成よりも大きくなるため、部分コイル間絶縁板の両面側に分割される構成に比べて、冷却油の圧力損失が小さくなり、冷却油の流量が大きくなることから、冷却油の循環効率を向上させることができる。
さらに、各絶縁物11,12,13,16が、部分コイル5A,5Bが対向する方向(コイル本体4の軸方向)で、重なり合うように配置されている。この構成により、部分コイル5A,5Bに短絡電磁力が働いた際に、その短絡電磁力による機械力が各絶縁物11,12,13,16に直線的に伝わって分散されるため、部分コイル5A,5Bの変形及び位置ずれの発生をより強く抑えることができ、部分コイル5A,5Bをより強固に支持することができる。
また、部分コイル5A,5B間に設けられた冷媒流路R1に連通する開口10aが部分コイル間絶縁板10に設けられている。この構成により、部分コイル間絶縁板10に隣接する部分コイル5Aにも開口10aを通じて冷却油と接することができるので、冷却性能を向上させることができる。
さらに、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物11が部分コイル間絶縁板10に貼り付けられている。この構成により、外鉄形変圧器1の製造時に、部分コイル間絶縁板10に部分コイル間スペーサ絶縁物11を貼り付けて一体化した後に、その一体物を部分コイル5A,5B間に挿入することによって設置可能となり、外鉄形変圧器1の製造工程の簡略化を図ることができる。これに加えて、部分コイル5A,5B等の振動や短絡電磁力による機械力が部分コイル間スペーサ絶縁物11に加わっても、部分コイル間スペーサ絶縁物11の位置ずれ等が生じず、信頼性の高い支持構造を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、部分コイル間絶縁板10の片面に部分コイル間スペーサ絶縁物11が貼り付けられていた。これに対して、実施の形態2では、部分コイル間絶縁板20の両面に部分コイル間スペーサ絶縁物21,22が貼り付けられている。
図4は、この発明の実施の形態2による外鉄形変圧器1の要部を拡大して示す断面図である。なお、図4は、実施の形態1の図2に対応している。また、図4のIII−III線に沿う断面は、実施の形態1の図3の断面に相当する。図4において、実施の形態2の部分コイル5A,5B間には、実施の形態1の部分コイル間絶縁板10に代えて、部分コイル間絶縁板20が設けられている。部分コイル間絶縁板20の一方の面(第1の面)には、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物21が間隔をおいて貼り付けられている。また、部分コイル間絶縁板20の他方の面(第2の面)には、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物22が間隔をおいて貼り付けられている。
部分コイル間スペーサ絶縁物21,22は、部分コイル5A,5Bが対向する方向で部分コイル間絶縁板20を挟んで重なり合うように(対称に)配置されている。部分コイル5A,5B間には、実施の形態1の冷媒流路R1に代えて、部分コイル間絶縁板20及び部分コイル間スペーサ絶縁物21,22によって、冷媒流路R1a,R1bが形成されている。
部分コイル間絶縁板20における冷媒流路R1a,R1bに隣接する箇所には、冷媒流路R1a,R1bのそれぞれに連通する開口20aが設けられている。なお、第2部分コイル組体6側でも同様に、実施の形態1の冷媒流路R4に代えて、冷媒流路R4a,R4bが形成されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態2の外鉄形変圧器1によれば、部分コイル間絶縁板20及び部分コイル間スペーサ絶縁物21,22によって、部分コイル5A,5B間に冷媒流路R1a,R1bが形成されている。これにより、部分コイル5A,5Bにおける冷却油と接する面積が、実施の形態1の構成に比べて大きくなることから、冷却効率を向上させることができる。
また、部分コイル間スペーサ絶縁物21,22が、部分コイル5A,5Bが対向する方向で部分コイル間絶縁板20を挟んで重なり合うように配置されている。この構成により、部分コイル5Aに短絡電磁力が働いた際に、その短絡電磁力による機械力が直線的に部分コイル間スペーサ絶縁物21,22に伝わるので、部分コイル5A,5Bの変形及び位置ずれの発生をより強く抑えることができるとともに、部分コイル間絶縁板20の変形も抑えることができる。
さらに、冷却油が部分コイル間絶縁板20の開口20aを通じて、部分コイル5A,5B間の2つの冷媒流路R1a,R1bの一方から他方へ流動可能となっているので、冷媒流路R1a,R1b内の冷却油の温度の均一化を図ることができ、冷却効率をより向上させることができる。
なお、実施の形態2では、部分コイル間絶縁板20に開口20aが設けられていたが、この開口20aを省略してもよい。
また、実施の形態2では、部分コイル5A,5Bが対向する方向で部分コイル間絶縁板20を挟んで重なり合うように部分コイル間スペーサ絶縁物21,22が配置されていた。しかしながら、部分コイル5A,5Bが対向する方向で位置をずらして部分コイル間スペーサ絶縁物21,22を配置してもよい。
実施の形態3.
実施の形態1,2では、静止誘導器として外鉄形変圧器1について説明した。これに対して、実施の形態3では、静止誘導器として内鉄形変圧器31について説明する。図5は、この発明の実施の形態3による内鉄形変圧器31を示す平面図である。図6は、図5の内鉄形変圧器31を示す側面図である。図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図である。
図5〜7において、実施の形態3の静止誘導器としての内鉄形変圧器31は、タンク(図示せず)、鉄心33、及び円筒状のコイル本体34を有している。コイル本体34は、鉄心33の脚部を囲むように、鉄心33に取り付けられている。コイル本体34は、層状に重なり合うように配置された複数の部分コイル組体を有している。コイル本体34における各層の部分コイル組体(図9の部分コイル組体35,36)同士の間には、図7に示すように、複数のコイル組体間絶縁物46が設けられている。複数のコイル組体間絶縁物46は、コイル本体34の層毎にコイル本体34の周方向に間隔をおいて配置されている。
図8は、図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。図9は、図7のIX−IX線に沿う断面図である。図10は、図8,9の部分コイル間絶縁板40を示す斜視図である。図8〜10において、第1部分コイル組体35は、1組の部分コイル35A,35Bによって構成されている。第2部分コイル組体36は、1組の部分コイル36A,36Bによって構成されている。
部分コイル35A,35Bにおけるコイル本体4の上端側及び下端側は、部分コイル接続線37A,37Bを介して、それぞれ短絡されている。即ち、部分コイル35A,35Bは、部分コイル接続線37A,37Bを介して並列接続されている。これと同様に、部分コイル36A,36Bは、部分コイル接続線38A,38Bを介して並列接続されている。
第1部分コイル組体35及び第2部分コイル組体36におけるコイル本体34の下端側は、コイル接続線39Aを介して直列接続されている。また、第1部分コイル組体35及び第2部分コイル組体36におけるコイル本体34の上端側には、インパルス電圧のような高周波高電圧が内鉄形変圧器31に印加されたときに発生する高電圧に耐えるように、コイル間絶縁寸法が設定されている。
第1部分コイル組体35と、第1部分コイル組体35の隣の第2部分コイル組体36の反対側(図8,9の左側)に配置されたコイル組体(図示せず)とは、コイル本体34の上端側で、コイル接続線39Bを介して直列接続されている。これと同様に、第2部分コイル組体36と、第2部分コイル組体36の隣の第1部分コイル組体35の反対側(図2の右側)に配置されたコイル(図示せず)とは、コイル本体34の上端側で、コイル接続線39Cを介して直列接続されている。
従って、部分コイル35A,35B,36A,36Bが並列接続されて構成されるコイル組体35,36等が直列接続されて、全体として静止誘導器のコイル本体34が構成されている。即ち、コイル本体34は、複数の部分コイル35A,35B,36A,36B等が径方向に対向して重なり合うように配置されることにより構成されている。
互いに隣り合う部分コイル35A,35Bの間には、部分コイル間支持部としての円筒状の部分コイル間絶縁板40が介在されていている。部分コイル間絶縁板40は、部分コイル35A,35Bの重なり合う領域の全域に亘るように配置されている。また、部分コイル間絶縁板40の内周面(図8,9の左側の面)は、外周面(図8,9の右側の面)に接した状態で配置されている。
部分コイル間絶縁板40の外周面(図8,9の右側の面)には、部分コイル間突出部としての複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41が、コイル本体34の周方向に間隔をおいて、例えば接着剤等によって貼り付けられている。複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41は、コイル本体34の軸方向に沿って配置されている。また、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41は、部分コイル間絶縁板40と部分コイル35Bとの間に介在されている。
部分コイル間絶縁板40と部分コイル35Bとの間の領域における互いに隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物41同士の間のスペースは、冷媒流路R11である。即ち、部分コイル間絶縁板40と複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41とは、共同して冷媒流路R11を形成している。
部分コイル間絶縁板40における互いに隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物41同士の間には、開口40aが設けられている。開口40aは、冷媒流路R11に連通されている。これにより、部分コイル35Aにおける開口40aに隣接する箇所が、冷媒流路R11に露出されている。即ち、開口10aによって、冷媒流路R11を流れる冷媒が部分コイル35Aへ導かれる。
第1部分コイル組体35の内周面、即ち部分コイル35Aの内周面(図8,9の左側の面)には、円筒状の第1外側絶縁板44が部分コイル35Aから間隔をおいて対向して設けられている。第1外側絶縁板44の外周面(図8,9の右側の面)には、複数の第1外側スペーサ絶縁物42がコイル本体34の周方向に間隔をおいて、例えば接着剤等によって貼り付けられている。
複数の第1外側スペーサ絶縁物42は、コイル本体34の軸方向に沿って配置されている。また、複数の第1外側スペーサ絶縁物42は、第1外側絶縁板44と部分コイル35Aとの間に介在されている。第1外側絶縁板44と部分コイル35Aとの間の領域における互いに隣り合う第1外側スペーサ絶縁物42同士の間のスペースは、冷媒流路R12である。即ち、第1外側絶縁板44と複数の第1外側スペーサ絶縁物42とは、共同して冷媒流路R12を形成している。
第1部分コイル組体35における外周面、即ち部分コイル35Bの外周面(図8,9の右側の面)には、第2外側絶縁板45が部分コイル35Bから間隔をおいて対向して設けられている。第2外側絶縁板45の内周面(図8,9の左側の面)には、複数の第2外側スペーサ絶縁物43がそれぞれ間隔をおいて設けられている。
複数の第3外側スペーサ絶縁物43は、コイル本体34の軸方向に沿って配置されている。また、複数の第2外側スペーサ絶縁物43は、第2外側絶縁板45と部分コイル35Bとの間に介在されている。第2外側絶縁板45と部分コイル35Bとの間の領域における互いに隣り合う第2外側スペーサ絶縁物43同士の間のスペースは、冷媒流路R13である。即ち、第2外側絶縁板45と複数の第2外側スペーサ絶縁物43とは、共同して冷媒流路R13を形成している。
第2部分コイル組体36についても、第1部分コイル組体35と同様に、部分コイル間絶縁板40並びに第1及び第2外側絶縁板44,45と同等の絶縁板と、部分コイル間スペーサ絶縁物41並びに第1及び第2外側スペーサ絶縁物42,43と同等の絶縁物とが設けられている。第2部分コイル組体36には、これらの絶縁板及び絶縁物によって、複数の冷媒流路R14〜R16が形成されている。
第1部分コイル組体35と第2部分コイル組体36との間(外側絶縁板同士の間)には、複数のコイル組体間絶縁物46が、コイル本体34の周方向に間隔をおいて設けられている。複数のコイル組体間絶縁物46は、第1部分コイル組体35と第2部分コイル組体36との間に、共同して冷媒流路R17を形成している。他の構成は、実施の形態1と同様である。
ここで、部分コイル35A,35B間と、部分コイル36A,36B間とのそれぞれには、異常電圧に耐えるための部分コイル間絶縁寸法が空けられており、その部分コイル間絶縁寸法を保つように、部分コイル間絶縁板40と複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41とは、部分コイル35A,35Bの両方を支持する。
また、各絶縁物41,42,43,46は、部分コイル35A,35Bが対向する方向で、重なり合うように配置されている。即ち、各絶縁物41,42,43,46は、コイル本体4の径方向で同じ位置になるように配置されている。
上記のような実施の形態3の内鉄形変圧器31によれば、部分コイル35A,35Bの互いに重なり合う領域の全域に亘るように、部分コイル35A,35B間に部分コイル間絶縁板40及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41が介在されている。これらの部分コイル間絶縁板40及び複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41は、部分コイル35A,35B間の間隔を保つように部分コイル35A,35Bのそれぞれを支持するとともに、部分コイル35A,35B間に冷媒流路R11を形成している。この構成により、内鉄形変圧器31であっても、実施の形態1の外鉄形変圧器1と同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態3では、部分コイル間絶縁板40の片面にのみ複数の部分コイル間スペーサ絶縁物41が設けられていた。しかしながら、実施の形態2の部分コイル間絶縁板20のように、部分コイル間絶縁板40の両面に部分コイル間スペーサ絶縁物を設けてもよい。この場合、部分コイルの冷却油と接触可能な面積を広げることができ、冷却油は部分コイル間絶縁板の開口を通じて部分コイル間の2つの通油路を流れることができるので、部分コイルの冷却効率を向上させることができる。
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、部分コイルを両面から冷却することで冷却性能を改善し、静止誘導器の温度上昇を低減させる構造について説明した。ここで、各部分コイルでは、それぞれの巻線を鎖交する磁束の大きさが異なることから、発生する誘導起電力が異なる。このため、例えば図2に示したように、部分コイルを両端それぞれで短絡接続すると、円筒巻線内に大きな循環電流が流れて静止誘導器の損失が増大する。この結果、静止誘導器の温度上昇を抑制することが難しい場合もある。
そこで、実施の形態4以降では、このような問題点を解決するための構造、即ちコイルの冷却性能を確保しつつも、コイルに流れる循環電流を低減し、損失増大を防ぐことができる構造について説明する。
図11は、この発明の実施の形態4による内鉄形変圧器を示す斜視図である。図12は、図11の鉄心とコイル本体との一部を拡大して示す断面図である。図13は、図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。図14は、図12のXIV−XIV線に沿う断面図である。
図11及び図12において、実施の形態4の静止誘導器としての内鉄形変圧器101は、タンク(図示せず)、鉄心102、及び、円筒状のコイル本体103を有している。コイル本体103は、鉄心102の脚部を囲むように、鉄心102に取り付けられている。コイル本体103は、層状に半径方向に重なり合うように配置された3個以上の部分コイル組体を有している。実施の形態4の部分コイル組体は、4個の部分コイル組体113,114,115,116を含んでいる。
4個の部分コイル組体113,114,115,116は、連続して隣接された関係で配置され、相対的に巻軸(鉄心)に近い順に、第1部分コイル組体113、第2部分コイル組体114、第3部分コイル組体115、第4部分コイル組体116という順に並んでいる。なお、「隣接」とは、例えば、巻軸に近い順から1番目と2番目との関係や、n−1番目とn番目との関係等を指し、例えば1番目と3番目との関係等は、含まないものとする。
第1部分コイル組体113及び第2部分コイル組体114の間には、図12に示すように、複数のコイル組体間絶縁物123が設けられている。複数のコイル組体間絶縁物123は、コイル本体103の周方向に間隔をおいて配置されている。なお、図13のコイル本体111は、図12のコイル本体103に相当する。
図13及び図14において、第1部分コイル組体113は、1組の内側部分コイル113a及び外側部分コイル113bによって構成されている。なお、「内側」「外側」は、その部分コイル組体を構成している部分コイルのうちで相対的にみて、巻軸もしくは鉄心102に近い側を、即ち、半径方向の内側を、「内側」としている。
同様に、第2部分コイル組体114は、1組の内側部分コイル114a及び外側部分コイル114bによって構成されている。第3部分コイル組体115は、1組の内側部分コイル115a及び外側部分コイル115bによって構成されている。第4部分コイル組体116は、1組の内側部分コイル116a及び外側部分コイル116bによって構成されている。
隣り合う部分コイル113a,113bの間には、円筒状の部分コイル間絶縁板119が介在されている。部分コイル間絶縁板119は、部分コイル113a,113bの重なり合う領域の全域に亘るように配置されている。また、部分コイル間絶縁板119の内周面(図13及び図14の左側の面)は、部分コイル113aの外周面に接した状態で配置されている。
部分コイル間絶縁板119の外周面(図13及び図14の右側の面)には、部分コイル間突出部としての複数の部分コイル間スペーサ絶縁物120が、コイル本体111の周方向に間隔をおいて貼り付けられている。また、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物120は、部分コイル間絶縁板119と部分コイル113bとの間に介在されている。
部分コイル間絶縁板119と部分コイル113bとの間の領域であって、周方向に隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物120,120同士の間には、部分コイル面通油路(冷媒流路)R101が形成されている。即ち、部分コイル間絶縁板119と複数の部分コイル間スペーサ絶縁物120とは、共同して部分コイル面通油路R101を形成している。
部分コイル面通油路(冷媒流路)R101は、少なくとも一つの部分コイル組体に関し、その部分コイル組体に属する少なくとも一対の部分コイルの間に設けられ、それら部分コイルの間に冷媒を流通させるものである。本例では、4個の部分コイル組体のそれぞれに部分コイル面通油路(冷媒流路)R101が設けられている。具体的には、部分コイル面通油路R101は、部分コイル113a,113bの間、部分コイル114a,114bの間、部分コイル115a,115bの間、及び部分コイル116a,116bの間のそれぞれに設けられている。
第1部分コイル組体113における内側の面、即ち内側部分コイル113aにおける部分コイル間絶縁板119と反対側の面には、円筒状の第1コイル間絶縁板117が内側部分コイル113aから間隔をおいて設けられている。
複数の第1コイル間スペーサ絶縁物118は、コイル本体111の軸方向に沿って配置されている。また、複数の第1コイル間スペーサ絶縁物118は、第1コイル間絶縁板117と内側部分コイル113aとの間に介在されている。第1コイル間絶縁板117と内側部分コイル113aとの間の領域であって、隣り合う第1コイル間スペーサ絶縁物118,118同士の間には、コイル面通油路R102が形成されている。
第1部分コイル組体113における外側の面、即ち外側部分コイル113bの外周面(図13及び図14の右側の面)には、円筒状の第2コイル間絶縁板122が外側部分コイル113bから間隔をおいて設けられている。
複数の第2コイル間スペーサ絶縁物121は、コイル本体111の軸方向に沿って配置されている。また、複数の第2コイル間スペーサ絶縁物121は、第2コイル間絶縁板122と外側部分コイル113bとの間に介在されている。第2コイル間絶縁板122と部分コイル113bとの間の領域であって、隣り合う第2コイル間スペーサ絶縁物121,121同士の間のスペースには、コイル面通油路R103が形成されている。
第1部分コイル組体113と第2部分コイル組体114との間には、複数のコイル組体間絶縁物123が、コイル本体111の周方向に間隔をおいて設けられている。周方向に隣り合うコイル組体間絶縁物123,123の間には、第1部分コイル組体113と第2部分コイル組体114とに挟まれるようにして、コイル組体間通油路R104が形成されている。
第1部分コイル組体113に属する部分コイル113a,113b同士は、コイル本体111の上端側において、単純接続部1129を構成する上端側部分コイル接続線129aにより短絡接続されている。同様に、第4部分コイル組体116に属する部分コイル116a,116b同士は、コイル本体111の上端側において、単純接続部1129を構成する上端側部分コイル接続線129bにより短絡接続されている。
第2部分コイル組体114に属する部分コイル114a,114bと、第3部分コイル組体115に属する部分コイル115a,115bとは、コイル本体111の上端側において、巻軸基準接続部1124によって接続されている。巻軸基準接続部1124は、後述する部分コイル列の数に応じたコイル接続線を有しており、本実施の形態では、上端側部分コイル接続線124a,124bからなる。
巻軸基準接続部1124は、隣接する一対の部分コイル組体の一方に属する複数の部分コイルと、他方に属する複数の部分コイルとを、それぞれ巻軸に近いもの同士で順に接続する。よって、本実施の形態では、部分コイル114a,114bのうち、より巻軸に近い(半径方向内側にある)内側部分コイル114aと、部分コイル115a,115bのうち、より巻軸に近い内側部分コイル115aとが、上端側部分コイル接続線124aを介して接続され、次に巻軸に近い、外側部分コイル114bと外側部分コイル115bとが上端側部分コイル接続線124bを介して接続される。
この態様は、別の捉え方では、部分コイル114a,114bのうち、第3部分コイル組体115の近辺に位置する外側部分コイル114bと、部分コイル115a,115bのうち、第2部分コイル組体114の遠方に位置する外側部分コイル115bとが接続されるとみることもできる。同様に、部分コイル114a,114bのうち、第3部分コイル組体115から遠方に位置する内側部分コイル114aと、部分コイル115a,115bのうち、第2部分コイル組体114の近辺に位置する内側部分コイル115aとが接続されるとみることもできる。
第1部分コイル組体113に属する部分コイル113a,113bと、第2部分コイル組体114に属する部分コイル114a,114bとは、コイル本体111の下端側において、隣接基準接続部1126によって接続されている。同様に、第3部分コイル組体115に属する部分コイル115a,115bと、第4部分コイル組体116に属する部分コイル116a,116bとは、コイル本体111の上端側において、隣接基準接続部1127によって接続されている。隣接基準接続部1126,1127は、後述する部分コイル列の数に応じたコイル接続線を有しており、本実施の形態では、下端側部分コイル接続線126a及び126b,127a及び127bからなる。
隣接基準接続部1126,1127は、隣接する一対の部分コイル組体の一方に属する前複数の部分コイルと、他方に属する複数の部分コイルとを、相互に近いもの同士で順に接続する。よって、本実施の形態では、隣接する一対の部分コイル組体113,114では、相互に近いもの同士となる、部分コイル113bと部分コイル114aとが下端側部分コイル接続線126bによって接続され、次に近いもの同士となる、部分コイル113aと部分コイル114bとが下端側部分コイル接続線126aによって接続される。
この態様は、別の捉え方では、部分コイル113a,113bのうち、第2部分コイル組体114の近辺に位置する外側部分コイル113bと、部分コイル114a,114bのうち、第1部分コイル組体113の近辺に位置する内側部分コイル114aとが接続されるとみることもできる。同様に、部分コイル113a,113bのうち、第2部分コイル組体114から遠方に位置する内側部分コイル113aと、部分コイル114a,114bのうち、第1部分コイル組体113から遠方に位置する外側部分コイル114bとが接続されるとみることもできる。
隣接する一対の部分コイル組体115,116も同様であり、相互に近いもの同士となる、部分コイル115bと部分コイル116aとが下端側部分コイル接続線127bによって接続され、次に近いもの同士となる、部分コイル115aと部分コイル116bとが下端側部分コイル接続線127aによって接続される。
この態様も、別の捉え方では、部分コイル115a,115bのうち、第4部分コイル組体116の近辺に位置する外側部分コイル115bと、部分コイル116a,116bのうち、第3部分コイル組体115の近辺に位置する内側部分コイル116aとが接続されるとみることができる。同様に、部分コイル115a,115bのうち、第4部分コイル組体116から遠方に位置する内側部分コイル115aと、部分コイル116a,116bのうち、第3部分コイル組体115から遠方に位置する外側部分コイル116bとが接続されるとみることもできる。
上記の接続を行うと、部分コイル113a,114b,115b,116aが直列に接続されて部分コイル列128aをなす。同様に、部分コイル113b,114a,115a,116bが直列に接続されて部分コイル列128bをなす。
上記のような実施の形態4の内鉄形変圧器101によれば、図15に示すように、漏れ磁束により個々の部分コイル組体内に発生する誘導起電力が打ち消し合うことで循環電流が減少し、損失増大を抑制できる。図15の下部に符号「a」で示した曲線は、内鉄形変圧器101の内部における漏れ磁束の強度分布を示している。また、図15の下部の符号「b」で示した棒グラフは、漏れ磁束によって個々の部分コイル組体内に発生する誘導起電力を示している。さらに、図15の下部の曲線・棒グラフの上方に図13及び図14に示したコイルを対応させて模擬的に示している。
図15の棒グラフbにおいて、高さで示される誘導起電力は、各部分コイル組体内で、部分コイル列128aに属する部分コイルの電位を基準としたときの部分コイル列128bに属する部分コイルの電位を表す。図15の曲線・棒グラフの横軸は、各部分コイル組体の位置を表し、縦軸は漏れ磁束の大きさや部分コイル組体内に発生する誘導起電力を表す。
部分コイル組体間の相対的な大きさ及び向きの比較の意味で、第1部分コイル組体113内においては、内側部分コイル113aの電位を基準としたときの外側部分コイル113bの電位として、大きさ「1」で向きが正の誘導起電力が発生している。第2部分コイル組体114内においては、外側部分コイル114bの電位を基準としたときの内側部分コイル114aの電位として、大きさ「3」で向きが負の誘導起電力が発生している。
第3部分コイル組体115内においては、外側部分コイル115bの電位を基準としたときの内側部分コイル115aの電位として、大きさ「5」で向きが負の誘導起電力が発生している。第4部分コイル組体116内においては、内側部分コイル116aの電位を基準としたときの外側部分コイル116bの電位として、大きさ「7」で向きが正の誘導起電力が発生している。
従って、部分コイル113a,114b,115b,116aが直列に接続された部分コイル列128aに対する、部分コイル113b,114a,115a,116bが直列に接続された部分コイル列128bの総電位差は、ゼロになる。即ち、実施の形態4の内鉄形変圧器101によれば、個々の部分コイル組体内で発生する誘導起電力が全体では打ち消し合い、循環電流が減少する。
なお、実施の形態4では、上記の特定の接続がなされた部分コイル組体が4個含まれる場合、即ち特定の接続がなされている部分コイル列がそれぞれ4個の部分コイルから構成される場合について説明した。しかしながら、この例に限定するものではなく、一般的に部分コイル組体が4n個の場合、即ち部分コイル列が4n個(nは1以上の整数)の部分コイルから構成される場合、次のように接続を行えば上記のような循環電流低減効果が得られる。
まず、1番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士は上端側において単純接続部により短絡接続され、同様に、4n番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士は上端側において単純接続部により短絡接続される。
次に、2+4k番目(kは、1からn−1までのいずれかの正の整数、あるいは0)の部分コイル組体と3+4k番目の部分コイル組体とは、上端側において、巻軸基準接続部により接続される。
4+4m番目(mは、1からn−2までのいずれかの正の整数、あるいは0)の部分コイル組体と、5+4m番目の部分コイル組体とは、上端側において、以下の(1)〜(3)に挙げる3種類の接続方法のどれかで接続される。
(1)巻軸基準接続部によって接続する。
(2)隣接基準接続部によって接続する。
(3)4+4m番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士を短絡接続するとともに、5+4m番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士を短絡接続し、さらに、それらを相互に接続する。
下端側に関しては、j−1番目(jは、2から4nまでのいずれかの偶数)の部分コイル組体に属する部分コイルと、j番目の部分コイル組体に属する部分コイルとが、隣接基準接続部によって接続されるものとする。
また、部分コイル列が、4n+1個〜+3個(nは1以上の整数)の部分コイルから構成される場合にも、部分コイル列が4n個の部分コイルから構成される場合と同様の接続を行えば、少なくとも4n個分に関して部分コイル列間に発生する電位差を低減でき、循環電流を低減し、損失増大を抑制することができる。
なお、実施の形態4において、上述した接続態様に関して上端・下端の位置関係を逆にして接続した態様であっても、実施の形態4と同様の効果が得られる。
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5による外鉄形変圧器を示す斜視図である。図17は、図16のコイル本体の一部を拡大して示す断面図である。なお、図16では、タンク、鉄心及びコイル本体の一部を断面で示す。また、図17の上側はコイル本体の外周側であり、図17の下側はコイル本体の内周側である。
図16及び図17において、静止誘導器としての外鉄形変圧器141は、タンク142、鉄心143のほか、コイル本体144を有している。タンク142の内部には、図示しない冷却油(冷媒)が充填されている。鉄心143、コイル本体144は、タンク142の内部に収容されている。コイル本体144は、鉄心143の脚部(中心軸)を囲むように取り付けられている。なお、図17のコイル本体151は、図16に示すコイル本体144に相当する。
図17において、コイル本体151は、部分コイル組体153,154,155,156のほか、複数の部分コイル組体を有している。第1部分コイル組体153は、一組の部分コイル153a,153bによって構成されている。同様に、第2部分コイル組体154は一組の部分コイル154a,154bによって構成されている。第3部分コイル組体155は、一組の部分コイル155a,155bによって構成されている。第4部分コイル組体156は、一組の部分コイル156a,156bによって構成されている。部分コイル153a,153b,154a,154b,155a,155b,156a,156bは、それぞれ巻線が平板状に巻きつけられることにより平板状に形成されている。
互いに隣り合う部分コイル153a,153bの間には、部分コイル間支持部としての平板状の部分コイル間絶縁板159が介在されている。部分コイル間絶縁板159は、部分コイル153a,153bの重なり合う領域の全域に亘るように配置されている。また、部分コイル間絶縁板159の一方の面(図17の左側の面)は、部分コイル153aにおける部分コイル153b側の面に接した状態で配置されている。
部分コイル間絶縁板159の他方の面(図17の右側の面)には、複数の部分コイル間スペーサ絶縁物160が、間隔をおいて貼り付けられている。複数の部分コイル間スペーサ絶縁物160は、部分コイル間絶縁板159と部分コイル153bとの間に介在されている。部分コイル間絶縁板159と部分コイル153bとの間の領域における互いに隣り合う部分コイル間スペーサ絶縁物同士の間のスペースは、部分コイル面通油路(冷媒流路)R111をなしている。
部分コイル面通油路(冷媒流路)R111も、部分コイル面通油路R101と同様であり、少なくとも一対の部分コイルの間に設けられているものであるが、本例では、4個の部分コイル組体それぞれに設けられている。
第1部分コイル組体153における外側の面の一方、即ち部分コイル153aにおける部分コイル間絶縁板159と反対側の面には、第1コイル間絶縁板157が部分コイル153aから間隔をおいて対向して設けられている。第1コイル間絶縁板157における部分コイル153a側の面には、複数の第1コイル間スペーサ絶縁物158がそれぞれ間隔をおいて設けられている。
複数の第1コイル間スペーサ絶縁物158は、第1コイル間絶縁板157と部分コイル153aとの間に介在されている。第1コイル間絶縁板157と部分コイル153aとの間の領域における互いに隣り合う第1コイル間スペーサ絶縁物158同士の間のスペースは、コイル面通油路R112をなしている。
第1部分コイル組体153における外側の面の他方、即ち部分コイル153bにおける部分コイル153aと反対側の面(図17の右側の面)には、第2コイル間絶縁板162が部分コイル153bから間隔をおいて設けられている。第2コイル間絶縁板162における部分コイル153b側の面には、複数の第2コイル間スペーサ絶縁物161がそれぞれ間隔をおいて設けられている。
複数の第2コイル間スペーサ絶縁物161は、第2コイル間絶縁板162と部分コイル153bとの間に介在されている。第2コイル間絶縁板162と部分コイル153bとの間の領域における互いに隣り合う第2コイル間スペーサ絶縁物161同士の間のスペースは、コイル面通油路R113である。
第1部分コイル組体153と第2部分コイル組体154との間には、複数のコイル組体間絶縁物163が間隔をおいて設けられている。複数のコイル組体間絶縁物163は、第1部分コイル組体153と第2部分コイル組体154との間に、共同してコイル組体間通油路R114を形成している。
部分コイル153a,153b,154a,154bにおけるコイル本体151の内周側は、次の如く接続される。まず、部分コイル153a,153bのうち、第2部分コイル組体154の近辺に位置する部分コイル153bと、部分コイル154a,154bのうち、第1部分コイル組体153の近辺に位置する部分コイル154aとを、内周側部分コイル接続線166bを介して接続する。
また、部分コイル153a,153bのうち、第2部分コイル組体154から遠方に位置する部分コイル153aと、部分コイル154a,154bのうち、第1部分コイル組体153から遠方に位置する部分コイル154bとを、内周側部分コイル接続線166aを介して接続する。内周側部分コイル接続線166a,166bは、上記隣接基準接続部1126と同様な、隣接基準接続部1166を構成している。
同様に、部分コイル155a,155b,156a,156bにおけるコイル本体151の内周側は、次の如く接続される。まず、部分コイル155a,155bのうち、第4部分コイル組体156の近辺に位置する部分コイル155bと、部分コイル156a,156bのうち、第3部分コイル組体155の近辺に位置する部分コイル156aとを、内周側部分コイル接続線167bを介して接続する。
また、部分コイル155a,155bのうち、第4部分コイル組体156から遠方に位置する部分コイル155aと、部分コイル156a,156bのうち、第3部分コイル組体155から遠方に位置する部分コイル156bとを、内周側部分コイル接続線167aを介して接続する。内周側部分コイル接続線167a,167bは、上記隣接基準接続部1127と同様な、隣接基準接続部1167を構成している。
部分コイル153a,153bにおけるコイル本体151の外周側は、外周側部分コイル接続線169aを介して短絡されている。これと同様に、部分コイル156a,156bの外周側は、外周側部分コイル接続線169bを介して短絡されている。外周側部分コイル接続線169a及び169bはそれぞれ、上記単純接続部1129と同様な、単純接続部1169を構成している。
部分コイル154a,154b,155a,155bにおけるコイル本体151の外周側は、次の如く接続される。まず、部分コイル154a,154bのうち、第3部分コイル組体155の近辺に位置する部分コイル154bと、部分コイル155a,155bのうち、第2部分コイル組体154の遠方に位置する部分コイル155bとを、外周側部分コイル接続線164bを介して接続する。
また、部分コイル154a,154bのうち、第3部分コイル組体155から遠方に位置する部分コイル154aと、部分コイル155a,155bのうち、第2部分コイル組体154の近辺に位置する部分コイル155aとを、外周側部分コイル接続線164aを介して接続する。外周側部分コイル接続線164a,164bは、上記巻軸基準接続部1124と同様な、巻軸基準接続部1164を構成している。
上記の接続を行うと、部分コイル153a,154b,155b,156aが直列に接続されて部分コイル列168aをなす。同様に、部分コイル153b,154a,155a,156bが直列に接続されて部分コイル列168bをなす。従って、上記のような実施の形態5の外鉄形変圧器141によっても、実施の形態4と同様に、漏れ磁束により部分コイル列168aに発生する誘導起電力と部分コイル列168bに発生する誘導起電力とが打ち消し合うことで循環電流が減少し、実施の形態4の内鉄形変圧器101と同様に損失増大を抑制することができる。
また、外鉄形変圧器においても、上述した内鉄形変圧器の場合と同様、部分コイル列が4n個(nは1以上の整数)の部分コイルから構成される場合、次のように接続を行えば上記のような循環電流低減効果が得られる。
1番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士は外周側において単純接続部により短絡接続され、同様に、4n番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士は外周側において単純接続部により短絡接続される。
次に、2+4k番目(kは、1からn−1までのいずれかの正の整数、あるいは0)の部分コイル組体と3+4k番目の部分コイル組体とは、外周側において、巻軸基準接続部により接続される。
4+4m番目(mは、1からn−2までのいずれかの正の整数、あるいは0)の部分コイル組体と、5+4m番目の部分コイル組体とは、外周側において、以下に挙げる3種類の接続方法のどれかで接続される。
(1)巻軸基準接続部によって接続する。
(2)隣接基準接続部によって接続する。
(3)4+4m番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士を短絡接続するとともに、5+4m番目の部分コイル組体に属する部分コイル同士を短絡接続し、さらに、それらを相互に接続する。
内周側に関しては、j−1番目(jは、2〜4nまでのいずれかの偶数)の部分コイル組体に属する部分コイルと、j番目の部分コイル組体に属する部分コイルとが、隣接基準接続部によって接続されるものとする。
また、部分コイル列が、4n+1個〜+3個(nは1以上の整数)の部分コイルから構成される場合にも、部分コイル列が4n個の部分コイルから構成される場合と同様の接続を行えば、少なくとも4n個分に関して2つの部分コイル列の間に発生する電位差を低減でき、循環電流を低減し、損失増大を抑制することができる。
なお、実施の形態5において、上記の接続と内周・外周の位置関係を逆にした接続においても実施の形態5と同様の効果が得られる。
実施の形態6.
実施の形態4では、二つの部分コイルによって一つの部分コイル組体が構成されていた。本発明は、これに限定されるものではなく、P個の部分コイルによって一つの部分コイル組体が構成されていてもよい。本実施の形態6は、3個の部分コイルによって一つの部分コイル組体が構成されている例を示す。
図18は、この発明の実施の形態6による内鉄形変圧器101の要部を拡大して示す断面図であり、実施の形態4における図13に対応したものである。
図18に示されているように、本例では、4個の部分コイル組体113,114,115,116を含めた複数の部分コイル組体が設けられており、4個の部分コイル組体113,114,115,116はそれぞれ、3個の部分コイル113a〜113c,114a〜114c,115a〜115c,116a〜116cを有している。これに伴い、3列の部分コイル列128a〜128cがあり、単純接続部1129も三つ股のコイル接続線129a,129bを含んでいる。さらに、巻軸基準接続部1124も三つのコイル接続線124a〜124cを含んでいる。また、隣接基準接続部1126,1127もそれぞれ、三つのコイル接続線126a〜126c,127a〜127cを含んでいる。
さらに、上記に伴って、部分コイル面通油路(冷媒流路)も部分コイル組体それぞれについて、二経路、即ち内側部分コイルと中間部分コイルとの間、中間部分コイルと外側部分コイルとの間に配置されている。
第1部分コイル組体113に属する部分コイル113a,113b,113cは、コイル本体111の上端側において、単純接続部1129を構成する上端側部分コイル接続線129aにより短絡接続されている。同様に、第4部分コイル組体116に属する部分コイル116a,116b,116cは、コイル本体111の上端側において、単純接続部1129を構成する上端側部分コイル接続線129bにより短絡接続されている。
第2部分コイル組体114に属する部分コイル114a,114b,114cと、第3部分コイル組体115に属する部分コイル115a,115b,115cとは、コイル本体111の上端側において、巻軸基準接続部1124によって接続されている。よって、具体的には、部分コイル組体それぞれでみて、最も巻軸に近い部分コイル114aと部分コイル115aとがコイル接続線124aによって接続されている。次いで巻軸に近い部分コイル114bと部分コイル115bとがコイル接続線124bによって接続されている。さらに続いて巻軸に近い部分コイル114cと部分コイル115cとがコイル接続線124cによって接続されている。
第1部分コイル組体113に属する部分コイル113a,113b,113cと、第2部分コイル組体114に属する部分コイル114a,114b,114cとは、コイル本体111の下端側において、隣接基準接続部1126によって接続されている。同様に、第3部分コイル組体115に属する部分コイル115a,115b,115cと、第4部分コイル組体116に属する部分コイル116a,116b,116cとは、コイル本体111の上端側において、隣接基準接続部1127によって接続されている。
具体的には、第1部分コイル組体113と第2部分コイル組体114との間の関係でみて、最も相互に近いもの同士である部分コイル113cと部分コイル114aとがコイル接続線126cによって接続されている。次いで相互に近いもの同士である部分コイル113bと部分コイル114bとがコイル接続線126bによって接続されている。さらに続いて相互に近いもの同士である部分コイル113aと部分コイル114cとがコイル接続線126aによって接続されている。
同様に、第3部分コイル組体115と第4部分コイル組体116との間の関係でみて、最も相互に近いもの同士である部分コイル115cと部分コイル116aとがコイル接続線127cによって接続されている。次いで相互に近いもの同士である部分コイル115bと部分コイル116bとがコイル接続線127bによって接続されている。さらに続いて相互に近いもの同士である部分コイル115aと部分コイル116cとがコイル接続線127aによって接続されている。
上記の接続を行うと、部分コイル113a,114c,115c,116aが直列に接続されて部分コイル列128aをなす。同様に、部分コイル113b,114b,115b,116bが直列に接続されて部分コイル列128bをなす。部分コイル113c,114a,115a,116cが直列に接続されて部分コイル列128cをなす。
このように構成された実施の形態6の内鉄形変圧器101によっても、漏れ磁束により発生する誘導起電力が打ち消し合い、実施の形態4の内鉄形変圧器101と同様に損失増大を抑制することができる。
なお、実施の形態6では内鉄形変圧器101について説明した。しかしながら、実施の形態5の外鉄形変圧器に対しても、一般的にP個(Pは3以上の整数)の部分コイルによって一つの部分コイル組体を構成でき、実施の形態6と同様に循環電流による損失増大を抑制することができる。
また、実施の形態1,2,5では外鉄形変圧器1,141について説明し、実施の形態3,4,6では静止誘導器として内鉄形変圧器31,101について説明した。しかしながら、この発明は、例えば油入リアクトルについても適用できる。
また、上述した実施の形態4〜6では、特定の接続を行う部分コイル組体が4個以上ある構成を挙げ、それによって、複数の直列に接続された部分コイル列の総電位差は殆どゼロになるものを例示していた。しかしながら、この発明は、部分コイル組体の一端側に、巻軸基準接続部が、少なくとも一つ設けられ、かつ、他端側に、隣接基準接続部が、少なくとも一つ設けられていればよい。それによって、正の誘導起電力が生じる部分コイル組体と、負の誘導起電力が生じる部分コイル組体とが混在することとなり、その分、相殺効果が働き、部分コイル列間の総電位差は減少される。従って、特定の接続を行う部分コイル組体が3個である構成で実施することもできる。
さらに、実施の形態4〜6の部分コイルの支持構造については、実施の形態1〜3で説明した部分コイルの支持構造を用いることができる。例えば、実施の形態1〜3の部分コイル間絶縁板10,20,40と同様に、部分コイル間絶縁板119,159に、部分コイル面通油路(冷媒流路)と連通する開口を設けてもよい。