JP5347971B2 - 球帯状シール体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車排気管の球面管継手に使用される球帯状シール体及びその製造方法に関する。
特開昭54−76759号公報 特開昭58−34230号公報 特開平06−123362号公報
近年の自動車は、車両から排出される排気ガスの浄化のためにキャタライザなどの排気浄化装置を組込んだ排気装置を採用されており、自動車用エンジンの排気ガスは、図34に示す後方排気形式の横置きエンジンの排気装置のように、一般的にエキゾーストマニフォールド500に導かれキャタリススティクコンバーター501、エキゾーストパイプ(排気管)502、プリチャンバー503、サイレンサー504を経てテールパイプ505より大気中に放出される。上記排気装置における排気浄化装置は重量物であり、このことから排気浄化装置が振動系のマスを構成して騒音などの問題を引き起こす要因になることから、この排気装置の振動を吸収するためにフレキシブルジョイント、例えば球面管継手を排気装置の所要箇所に配置して振動を吸収するなどの手段が講じられている。
特許文献1に記載されている球面管継手に使用されるシール体は、耐熱性を有し、相手材とのなじみ性に優れ、また衝撃強度も著しく改善されているという利点を有する反面、乾燥摩擦(ドライ)条件下での摺動摩擦時において往々にして摩擦異常音を発生するという欠点がある。
上記特許文献1に記載されたシール体の欠点を解消するものとして、本出願人は特許文献2及び特許文献3に記載されたシール体を提案した。このシール体600は、図35及び図36に示すように、円筒内面601、部分凸球面状面602並びに部分凸球面状面602の外径側及び小径側の環状端面603及び604により規定された球帯状基体605と、球帯状基体605の部分凸球面状面602に一体的に形成された外層606とを備えている。球帯状基体605は、金網からなる補強材607と、該補強材607の金網の網目を充填し、かつ補強材607と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材608とを具備しており、外層606は、潤滑材609及び耐熱材610と金網からなる補強材611とが圧縮されて補強材611の金網の網目に潤滑材609及び耐熱材610が充填されて当該潤滑材609及び耐熱材610と補強材611とが混在一体化されており、外層606の外表面612は、補強材611からなる面613と潤滑材609からなる面614とが混在した平滑な滑り面となっている。
上記シール体600の外層606の外表面612は、補強材611からなる面613と潤滑材609からなる面614とが混在した平滑な面となっているため、外表面612と摺接する相手材である排気管の凹球面部との円滑な摺動を確保することができ、また、外表面612と凹球面部との摺動摩擦において、凹球面部の表面に外表面612からの潤滑材609の移着がなされて凹球面部に潤滑材609からなる潤滑被膜を形成する一方、潤滑材609の凹球面部への移着が過度に行われても、外表面612に点在して露出した補強材611が適度な潤滑被膜を残して掻き取る作用を発揮するので、相手材との摺動摩擦においては、相手材の表面に形成された潤滑被膜との摺動摩擦に移行し、摩擦異常音を生じることがないという利点を有するものである。
特許文献2及び特許文献3に記載されたシール体は上記利点を有するものであるが、該シール体に微小な揺動運動や軸方向の過大な入力が長時間連続して負荷された場合、シール体の外層の表面に露出した金網からなる補強材が相手材表面を攻撃し、アブレッシブ摩耗(ざらつき摩耗)を誘発して相手材表面を損傷させたり、粗面化させたりしてシール性を著しく低下させる虞があり、さらにはアブレッシブ摩耗への移行に伴い、シール体と相手材との摩擦面に堆積した摩耗粉を介しての摩擦に移行し摩擦異常音の発生を誘発させる虞がある。
本発明者らは、相手材との摩擦摺動面となるシール体の外層に着目し、シール体の外層における金網からなる補強材の露出割合、補強材と膨張黒鉛からなる耐熱材との密着度合、補強材の金網を形成する金属細線の線径など、耐熱材と補強材との有機的な関係を見出し、これらの関係を改良することにより上記問題点は解決されるとの知見を得た。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その目的とするところは、相手材との摺動摩擦において、相手材表面を損傷させたり、粗面化させたりすることを極力防止し、シール性の低下及び摩擦異常音の発生を極力防止し得る球帯状シール体及びその製造方法を提供することにある。
排気管継手に用いられる本発明の球帯状シール体は、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、球帯状基体は、金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材とを具備しており、外層は、金網からなると共に圧縮された他の補強材及びこの他の補強材の金網の網目を充填し、かつ他の補強材に密に圧着されて圧縮された他の膨張黒鉛を含むと共に当該他の補強材の表面と共に外層中間面を形成する他の耐熱材を含んでおり、部分凸球面状面に一体的に形成された基層と、該外層中間面で基層に一体に被着形成されていると共に潤滑組成物からなるすべり層とを具備しており、外層中間面における他の補強材の表面は、外層中間面の全表面に対して5〜35%の面積割合をもって点在しており、外部に露出する外層の表面は、すべり層の平滑な面からなっている。
本発明の球帯状シール体によれば、基層の外層中間面における他の補強材の表面が外層中間面の全表面に対して5〜35%の面積割合をもって点在しており、該外層中間面には潤滑組成物からなるすべり層が一体に被着形成されており、外部に露出する外層の表面は、すべり層の平滑な面から形成されているので、相手材との摩擦においては、相手材表面に外層の他の補強材だけが局部的に摩擦することを回避できる結果、相手材表面の摩擦による損傷や粗面化を極力防止することができるので、シール性の低下を防止でき、また相手材表面に形成された過度の潤滑被膜を掻き取る作用により、相手材表面に形成された適度の厚さの潤滑被膜を介しての摩擦となることから摩擦異常音の発生を極力防止できる。
本発明の球帯状シール体において、球帯状基体及び外層の耐熱材は、好ましい例では、酸化抑制剤としての五酸化リン0.05〜5.00重量%及びリン酸塩1.0〜16.0重量%のうちの少なくとも一方と、膨張黒鉛とを含んでいる。
酸化抑制剤としての五酸化リン及びリン酸塩の少なくとも一方と膨張黒鉛とを含む耐熱材は、球帯状シール体自体の耐熱性及び耐酸化消耗性を向上させることができ、球帯状シール体の500℃ないし500℃を超える高温領域での長期にわたる使用を可能とする。
本発明の球帯状シール体において、球帯状基体及び外層の補強材の金網は、例えば、金属細線を織ったり編んだりして得られる織組金網及び編組金網からなるものである。織組金網及び編組金網を形成する金属細線は、その線径が0.15〜0.32mmの範囲のもの、より具体的には線径が0.15mm、0.175mm、0.28mm及び0.32mmの金属細線が好適である。そして、球帯状基体及び外層の補強材の金網としては、同じ線径の金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用してもよく、また球帯状基体の補強材の金網として線径が上記範囲の上限側の0.28〜0.32mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用し、外層の補強材の金網として線径が上記範囲の下限側の0.15〜0.175mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用してもよい。
本発明の球帯状シール体において、外層中間面に形成されたすべり層の潤滑組成物は、好ましい例では、四ふっ化エチレン樹脂単体からなっているか、四ふっ化エチレン樹脂を含んでおり、他の好ましい例では、六方晶窒化硼素70〜85重量%と酸化硼素0.1〜10重量%とアルミナ水和物5〜20重量%とを含んでおり、更に好ましい例では、六方晶窒化硼素70〜85重量%酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物成分と、該潤滑組成物成分100重量部に対し300重量部以下又は200重量部以下、好ましくは50〜200重量部又は50〜150重量部の四ふっ化エチレン樹脂んでおり、斯かる潤滑組成物を目的に応じて適宜選択して使用するとよい。
これら潤滑組成物からなるすべり層は、球帯状シール体の摺動面としての平滑な面を形成するものであり、斯かる平滑な面により相手材との摺動において摩擦異常音を発生させることなく円滑な摺動を行わせることができる。
上記潤滑組成物中のアルミナ水和物は、好ましい例では、ベーマイト又はダイアスポアなどのアルミナ一水和物、ギブサイト又はバイヤライトなどのアルミナ三水和物及び擬ベーマイトから選択される。
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる本発明の球帯状シール体の製造方法は、(a)密度がαMg/mの膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材を準備する工程と、(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる球帯状基体用の補強材を準備し、この球帯状基体用の補強材を前記球帯状基体用の耐熱材に重ね合わせて重合体を形成した後、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、(c)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる外層用の補強材の二つの層間に、密度が0.3α〜0.6αMg/mの膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を挿入し、当該外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材を該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に外層用の補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材とが面一とされた該外層用の補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とにおける外層用の補強材が5〜35%の面積割合をもって点在して露出している扁平状の複合シート材を形成する工程と、(d)複合シート材の外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とが互いに面一とされた表面に潤滑組成物を被覆して当該表面に潤滑組成物の被覆層を形成した外層形成部材を形成する工程と、(e)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、(f)該予備円筒成形体を金型のコア外周面の挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備しており、球帯状基体は、膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層は、金網からなると共に圧縮された外層用の補強材及びこの外層用の補強材の金網の網目を充填し、かつ外層用の補強材に密に圧着されて圧縮された膨張黒鉛からなると共に当該外層用の補強材の表面と共に外層中間面を形成する外層用の耐熱材を含んでおり、部分凸球面状面に一体的に形成された基層と、該外層中間面で基層に一体に被着形成されていると共に潤滑組成物からなるすべり層とを具備しており、外層中間面における外層用の補強材の表面は、外層中間面において5〜35%の面積割合をもって点在しており、外部に露出する外層の表面は、すべり層の平滑な面からなっている。
本発明の球帯状シール体の製造方法によれば、球帯状基体用の耐熱材を形成する膨張黒鉛シートの密度よりも低い密度をもった膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を金網からなる外層用の補強材の二つの層間に挿入すると共に斯かる外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材を該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に外層用の補強材が埋設するように互いに圧着することにより、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とが面一となっていると共に互いに面一にされた該外層用の補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とにおける外層用の補強材が5〜35%の面積割合をもって点在して露出している扁平状の複合シート材を形成することができる。
この複合シート材により形成された外層では、球帯状基体の部分凸球面状面に一体化された場合においても、その外層中間面において補強材が5〜35%の面積割合をもって点在しているので、相手材との摩擦においては、相手材表面に外層の補強材だけが局部的に摩擦することを回避し得、結果として、相手材表面の摩擦による損傷や粗面化を極力防止することができるので、シール性の低下を防止でき、また相手材表面に形成された過度の潤滑被膜を掻き取る作用により、相手材表面に形成された適度の厚さの潤滑被膜を介しての摩擦となることから摩擦異常音の発生を極力防止できる。
この扁平状の複合シート材において、外層用の補強材の金網として線径が0.28〜0.32mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用した場合、外層用の耐熱シート材を挿入した外層用の補強材の該耐熱シート材の厚さ方向の加圧は、例えば、平滑な円筒状の外周面を有した円筒ローラと軸方向に沿って複数個の環状凹溝をもった円筒状の外周面を有したローラとの間の隙間に供給して加圧した後、更に平滑な円筒状の外周面を有した別の一対の円筒ローラ間の隙間に供給して加圧する方法が好適に用いられる。また、外層用の補強材の金網として線径が0.15〜0.175mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用した場合、外層用の耐熱シート材を挿入した外層用の補強材の該耐熱シート材の厚さ方向の加圧は、例えば、平滑な円筒状の外周面を有した少なくとも一対の円筒ローラ間の隙間に供給して加圧する方法が好適に用いられる。なお、外層用の補強材の金網として線径が0.28〜0.32mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用した場合であっても後者の方法を採ることもでき、また外層用の補強材の金網として線径が0.15〜0.175mmの金属細線からなる織組金網及び編組金網を使用した場合であっても前者の方法を採ることができることは勿論のことである。
本発明の球帯状シール体の製造方法において、好ましい例では、球帯状基体用の耐熱材の密度αは、1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/mであり、外層用の耐熱材の密度は、該球帯状基体用の耐熱材の密度の0.3〜0.6倍、すなわち0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mである。
上記工程(c)を経て得られた扁平状の複合シート材の表面粗さは、好ましい例では、算術平均粗さRaで5〜30μmである。
この複合シート材により形成された外層は、球帯状基体の部分凸球面状面に一体化された場合においても、外層の外層中間面には外層用の補強材が5〜35%の面積割合をもって点在していると共に外層の外層中間面の表面粗さが算術平均粗さRaで5〜30μmであるので、相手材表面との摩擦においては相手材表面との局部的な摩擦は極力防止され、相手材表面を損傷させたり粗面化させたりすることは極力回避し得る、結果として球帯状シール体と相手材との摩擦面からのガス漏れ量を極力少なくすることができるという効果が発揮される。
本発明の球帯状シール体の製造方法において、球帯状基体用及び外層用の耐熱材は、五酸化リン0.05〜5.00重量%及びリン酸塩1.0〜16.0重量%のうちの少なくとも一方と、膨張黒鉛とを含んでいてもよく、複合シート材の一方の表面に被覆する潤滑組成物は、四ふっ化エチレン樹脂を含む水性ディスパージョンであってよく、分散媒として酸を含有する水にアルミナ水和物粒子を分散含有した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、固形分として六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなっていてもよく、分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物を分散含有した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、固形分として六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物成分に、該潤滑組成物成分100重量部に対し、300重量部以下又は200重量部以下、好ましくは50〜200重量部又は50〜150重量部の四ふっ化エチレン樹脂を含有していてもよい。
分散媒としての水に含有された酸は硝酸であってもよく、アルミナ水和物は、ベーマイト又はダイアスポアなどのアルミナ一水和物、ギブサイト又はバイヤライトなどのアルミナ三水和物及び擬ベーマイトから選択されてもよい。
本発明によれば、相手材との摩擦において、相手材表面を損傷させたり、粗面化させたりすることを極力防止し、シール性の低下及び摩擦異常音の発生を防止し得る球帯状シール体及びその製造方法を提供することができる。
次に、本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
図1は、本発明の実施の形態の一例で製造された球帯状シール体の縦断面図、
図2は、図1に示す球帯状シール体の一部拡大説明図、
図3は、本発明の球帯状シール体の製造工程における補強材の形成方法の説明図、
図4は、本発明の球帯状シール体の製造工程における耐熱材の斜視図、
図5は、補強材の金網の網目を示す平面図、
図6は、本発明の球帯状シール体の製造工程における重合体の斜視図、
図7は、本発明の球帯状シール体の製造工程における筒状母材の平面図、
図8は、図7に示す筒状母材の縦断面図、
図9は、本発明の球帯状シール体の製造工程における複合シート材の製造工程の説明図、
図10は、図9に示す製造工程における複数個の環状凹溝を有するローラの正面図、
図11は、図9に示す製造工程における円筒状編組金網からなる補強材内に耐熱材を挿入した状態を示す説明図、
図12は、図9に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとの間に位置させた状態を示す説明図、
図13は、図9に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧している状態を示す説明図、
図14は、図9に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧したあとの状態を示す説明図、
図15は、図9に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧したのち、一対の円筒ローラで加圧している状態を示す説明図、
図16は、複合シート材を示す説明図、
図17は、本発明の球帯状シール体の製造工程における複合シート材の他の製造工程の説明図、
図18は、図17に示す製造工程における円筒状編組金網からなる補強材内に耐熱材を挿入した状態を示す説明図、
図19は、図17に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を一対の円筒ローラ間に位置させた状態を示す説明図、
図20は、複合シート材を示す説明図、
図21は、本発明の球帯状シール体の製造工程における複合シート材の他の製造工程の説明図、
図22は、図21に示す製造工程における補強材内に挿入した耐熱材を一対のローラで加圧する状態を示す説明図、
図23は、複合シート材の一方の表面に露出した補強材の露出面積割合を示す画像、
図24は、複合シート材の一方の表面に露出した補強材の露出面積割合を示す画像、
図25は、従来技術の製造方法で作製した複合シート材の一方の表面に露出した補強材の露出面積割合を示す画像、
図26は、従来技術の複合シート材の製造工程を示す説明図、
図27は、従来技術の複合シート材の製造工程を示す説明図、
図28は、従来技術の複合シート材の製造工程を示す説明図、
図29は、従来技術の複合シート材の製造工程を示す説明図、
図30は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材を示す説明図、
図31は、本発明の球帯状シール体の製造工程における予備円筒成形体の平面図、
図32は、本発明の球帯状シール体の製造工程における金型中に予備円筒成形体を挿入した状態を示す縦断面図、
図33は、本発明の球帯状シール体を組込んだ排気管球面継手の縦断面図、
図34は、エンジンの排気系の説明図、
図35は、従来の球帯状シール体の説明図、そして、
図36は、従来の球帯状シール体の説明図である。
本発明の球帯状シール体における構成材料及び球帯状シール体の製造方法について説明する。
<耐熱材Iについて>
濃度98%の濃硫酸を撹拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間撹拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰り返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸分を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
上記酸処理黒鉛粉末を、950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材Iとする。
<耐熱材II及びIIIについて>
上記酸処理黒鉛粉末を撹拌しながら、該酸処理黒鉛粉末にリン酸として濃度84%のオルトリン酸水溶液及びリン酸塩として濃度50%の第一リン酸アルミニウム水溶液のうちの少なくとも一方をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、成分中のオルトリン酸は脱水反応を生じて五酸化リンを生成し、第一リン酸アルミニウムは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材II及びIIIとする。
このようにして作製された耐熱材IIには、五酸化リン0.05〜5.0重量%若しくは第一リン酸アルミニウム1〜16重量%が含有されており、耐熱材IIIには、五酸化リン0.05〜5.00重量%と第一リン酸アルミニウム1〜16重量%とが含有されている。このリン酸及びリン酸塩のうちの少なくとも一つを含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば500℃ないし500℃を超える高温領域での使用を可能とする。ここで、リン酸塩としては、オルトリン酸のほかにメタリン酸、ポリリン酸、ポリメタリン酸などを使用することができ、またリン酸塩としては、第一リン酸アルミニウムのほかに第一リン酸リチウム、第二リン酸リチウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸アルミニウムなどを使用することができる。
上記耐熱材I、II及びIIIにおいて、球帯状基体用に使用される耐熱材I、II及びIIIは、球帯状シール体の製造時において密度が1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/mの耐熱材が使用されて好適である。また、外層用に使用される耐熱材I、II及びIIIは、球帯状シール体の製造時においては上記球帯状基体用に使用される耐熱I、II及びIIIの密度の0.3〜0.6倍の密度、すなわち0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの密度を有する耐熱材が使用されて好適である。
<補強材について>
補強材は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430などのステンレス鋼線若しくは鉄線(JISG3532)若しくは亜鉛メッキ鉄線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を一本又は二本以上を使用して織ったり、編んだりして形成される織組金網又は編組金網が使用される。
金網を形成する金属細線において、その線径は0.15〜0.32mmの範囲の金属細線、具体的には0.15、0.175.0.28及び0.32mmの金属細線が使用されて好適である。球帯状基体用の補強材としての金網は、線径が上記範囲の上限側、例えば0.28〜0.32mmの線径を有する金属細線が好適に使用され、該線径の金属細線で形成された織組金網又は編組金網の網目の目幅は、編組金網を示す図5において、縦4〜6mm、横3〜5mm程度のものが使用されて好適である。また外層用の補強材としての金網は、線径が上記球帯状基体用の補強材としての金網を形成する金属細線の線径と同径の0.28〜0.32mmの金属細線からなる織組金網若しくは編組金網又は線径が上記範囲の下限側、例えば0.15〜0.175mmの線径を有する金属細線が好適に使用され、該線径の金属細線で形成された織組金網又は編組金網の網目の目幅は、編組金網を示す図5において、縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mmのものが使用されて好適である。
<潤滑組成物について>
被覆層(すべり層)を形成する潤滑組成物は、(1)四ふっ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略称する。)粉末からなる潤滑組成物を固形分として含む水性ディスパージョン、(2)分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物粒子が分散した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物を固形分として含む水性ディスパージョン、(3)上記六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物成分に、該潤滑組成物成分100重量部に対し300重量部以下又は200重量部以下、好ましくは50〜200重量部又は50〜150重量部のPTFEを分散含有した潤滑組成物を固形分として含む水性ディスパージョンの形態で適用される。
上記潤滑組成物(2)において、六方晶窒化硼素は、とくに高温領域において優れた潤滑性を発揮するものであり、主成分として70〜85重量%を占める。成分中の酸化硼素は、それ自体潤滑性を示すものではないが、主成分をなす六方晶窒化硼素に含有されることにより、該六方晶窒化硼素の具有する潤滑性を引出し、とくに高温領域での摩擦の低下に寄与する。そして、その配合量は好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは3〜5重量%である。また、成分中のアルミナ水和物はそれ自体何らの潤滑性を示すものではが、上記六方晶窒化硼素及び酸化硼素に配合されることにより、潤滑組成物の耐熱材表面への被着性を改善し、強固な被覆層の形成に効果を発揮すると共に六方晶窒化硼素の板状結晶の層間の滑りを助長して六方晶窒化硼素の潤滑性を引出す役割を発揮する。そして、アルミナ水和物は、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは7〜15重量%である。アルミナ水和物の含有量5重量%未満では、上記した潤滑組成物の被着性の改善に効果がなく、20重量%を超えて含有すると製造時における水性ディスパージョンが粘稠になりすぎて、ローラ塗り、刷毛塗り等の被着操作を悪化させる。
また、潤滑組成物(3)において、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物に含有されるPTFEはそれ自体低摩擦性を有するものであり、該潤滑組成物に含有されることにより、該潤滑組成物の低摩擦性を向上させて該潤滑組成物からなる被覆層(すべり層)に低摩擦性を改善し、相手材との摩擦摺動において、スティックスリップ(付着−すべり)現象を生じることなく、当該スティツクスリップ現象に起因する摩擦異常音の発生を極力回避し得る。また、該潤滑組成物に圧縮成形時の展延性を高める作用をなし、結果として薄い被覆層(すべり層)の形成を可能とする。
上記アルミナゾルにおいて、分散媒としての水に含有された酸は、アルミナゾルを安定化させる解膠剤として作用するものである。そして、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸等の無機酸が好ましい例として挙げられるが、とくに硝酸が好ましい。そして、アルミナゾルは、水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するものが推奨される。水素イオン濃度が2未満では、アルミナゾル自体が不安定となり、また水素イオン濃度が3を超えるとアルミナゾルの粘度が高くなり、凝集しやすく、不安定となる。
アルミナゾル中のアルミナ水和物は、組成式Al・nHO(組成式中、0<n<3)で表される化合物である。該組成式において、nは、通常、0(零)を超えて3未満の数、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5程度である。アルミナ水和物としては、例えばベーマイト(Al・HO)やダイアスポア(Al・HO)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al・3HO)やバイヤライト(Al・3HO)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどが挙げられる。
次に、上記した構成材料からなる球帯状シール体の製造方法について図面に基づき説明する。
(第一工程)図3に示すように、線径0.15〜0.32mm、好ましくは0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦4〜6mm、横3〜5mm程度(図5参照)の円筒状編組金網1をローラ2及び3間に通して所定の幅Dの帯状金網4を作製し、帯状金網4を所定の長さLに切断した球帯状基体用の補強材5を準備する。
(第二工程)図4に示すように、前記補強材5の幅Dに対して1.10×Dから2.10×Dの幅dを有すると共に、前記補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有するように、密度が1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/mの球帯状基体用の耐熱材6(耐熱材I、II及びIIIのうちの一つからなる)を準備する。
(第三工程)後述する球帯状シール体39(図1参照)において、部分凸球面状面34(図2参照)の軸方向の少なくとも一方の端縁側の環状端面である大径側の環状端面35に全体的に耐熱材6が露出するようにすべく、図6に示すように、部分凸球面状面34の大径側の環状端面35となる補強材5の幅方向の一方の端縁7から最大で0.1×Dから0.8×Dだけ耐熱材6が幅方向にはみ出すと共に端縁7からの耐熱材6の幅方向のはみ出し量δ1が部分凸球面状面34の小径側の環状端面36となる補強材5の幅方向の他方の端縁8からのはみ出し量δ2よりも多くなるようにすると共に補強材5の長さ方向の一方の端縁9から最大で0.3×Lから1.7×Lだけ耐熱材6が長さ方向にはみ出すと共に、補強材5の長さ方向の他方の端縁10と当該端縁10に対応する耐熱材6の長さ方向の端縁11とを実質的に一致させ、しかも補強材5と耐熱材6との幅方向及び長さ方向を合致させて当該耐熱材6と補強材5とを互いに重ね合わせた重合体12を得る。
(第四工程)重合体12を図7に示すように耐熱材6を内側にしてうず巻き状であって耐熱材6が1回多くなるように捲回して、内周側及び外周側の両方に耐熱材6が露出した筒状母材13を形成する。耐熱材6としては、筒状母材13における耐熱材6の巻き回数が補強材5の巻き回数よりも多くなるように、補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有したものが予め準備される。筒状母材13においては、図8に示すように、耐熱材6は、幅方向の一方の端縁側において補強材5の一方の端縁7から幅方向にδ1だけはみ出しており、また耐熱材6の幅方向の他方の端縁側において補強材5の他方の端縁8から幅方向にδ2だけはみ出している。
(第五工程)密度が0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの外層用の耐熱材(耐熱材I、II及びIIIのうちの一つからなる)14を別途準備する。
(第六工程)
<第一の方法> 線径が0.15〜0.32mm、好ましくは0.15〜0.28mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる円筒状編組金網(編組金網の網目の目幅は縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mm)からなる外層用の補強材15の内部に外層用の耐熱材14を連続的に挿入(図9参照)し、該耐熱材14を挿入した補強材15をその挿入開始端側から平滑な円筒状の外周面を有する円筒ローラ16と軸方向に沿って複数個の環状凹溝17をもった円筒状の外周面を有したローラ18(図9及び図10参照)との間の隙間Δ1に供給して該耐熱材14の厚さ方向に加圧(図9、図11、図12、図13及び図14参照)し、さらに別の平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2に供給(図9及び図15参照)して加圧し、外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14を密に充填すると共に該外層用の耐熱材14中に外層用の補強材15が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とを面一に形成すると共に耐熱材14の表面と補強材15の表面とが露出した扁平状の複合シート材21(図16参照)を形成し、これを筒状母材13の外周面を一巻きできる程度の長さに切断する。
円筒ローラ16と軸方向に沿って複数個の環状凹溝17を外周面に有するローラ18との隙間Δ1は、0.35〜0.60mmの範囲に設定されるのが好ましく、また一対のローラ19及び20間の隙間Δ2は、0.45〜0.65mmの範囲に設定されるのが好ましい。
<第二の方法> 図17ないし図20に示すように、密度が0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの外層用の耐熱材(耐熱材I、II及びIIIのうちの一つからなる)14を別途準備する。線径が0.15〜0.32mm、好ましくは0.15〜0.175mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる円筒状編組金網(金網の網目の目幅は縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mm)からなる外層用の補強材15の内部に外層用の耐熱材14を連続的に挿入(図17参照)し、該耐熱材14を挿入した外層用の補強材15をその挿入開始端側から平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ16a及び18a間のすきまΔ1に供給し該耐熱材14の厚さ方向に加圧(図18及び図19参照)し、外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14を密に充填すると共に該外層用の耐熱材14中に外層用の補強材15を埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とを面一に形成すると共に耐熱材14の表面と補強材15の表面とが露出した扁平状の複合シート材21(図20参照)を形成し、これを筒状母材13の外周面を一巻きできる程度の長さに切断する。
上記一対の円筒ローラ16a及び18a間の隙間Δ1は、0.35〜0.60mmの範囲に設定されるのが好ましい。なお、上記第二の方法においても、前記第一の方法における別の平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2に供給(図9及び図15参照)して加圧する工程を入れてもよい。
<第三の方法> 図21及び図22に示すように、前記第五工程で得た外層用の耐熱材14と同様、外層用の補強材(帯状金網)15の幅Dよりも小さい幅dを有すると共に密度が0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの外層用の耐熱材(耐熱材I、II及びIIIのうちの一つからなる)14を別途準備する。線径が0.15〜0.32mm、好ましくは0.15〜0.175mmの金属細線を編んで形成される円筒状編組金網からなる外層用の補強材15を一対の円筒ローラ2及び3間の隙間に通して帯状金網4(図3参照)を作製し、この帯状金網4を予め筒状母材13の外周面を一巻きできる程度の長さに切断する。該帯状金網4内に外層用の耐熱材14を挿入する(図21参照)と共に一対の円筒ローラ16b及び18b間の隙間Δ1に通して該外層用の耐熱材14の厚さ方向に加圧し、帯状金網4からなる外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とを面一に形成すると共に該外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とが露出した扁平状の複合シート材21(図22参照)を形成し、これを筒状母材13の外周面を一巻きできる程度の長さに切断する。
上記一対の円筒ローラ16b及び18b間の隙間Δ1は、0.35〜0.60mmの範囲の隙間に設定されるのが好ましい。なお、第三の方法においても、前記第一の方法における別の平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2に供給して加圧する工程を入れてもよい。
<第四の方法(図示せず)> 前記第五工程で得た外層用の耐熱材14と同様、外層用の補強材(帯状金網)15の幅Dと同じ幅を有すると共に密度が0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの外層用の耐熱材(耐熱材I、II及びIIIのうちの一つからなる)14を別途準備する。線径が0.15〜0.32mm、好ましくは0.15〜0.175mmの金属細線を織って形成される織組金網として平織金網を用意し、この平織金網からなる外層用の補強材15を所定長さと幅とに切断し、該外層用の補強材15を2枚準備する。2枚の外層用の補強材15の間に前記外層用の耐熱材14を挿入(挟み)すると共に一対の円筒ローラ間の隙間に通して該耐熱材14の厚さ方向に加圧し、平織金網からなる外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14を密に充填すると共に該外層用の耐熱材14中に外層用の補強材15が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とを面一に形成すると共に外層用の耐熱材14の表面と外層用の補強材15の表面とが露出した扁平状の複合シート材21を形成し、これを筒状母材13の外周面を一巻きできる程度の長さに切断する。
上記一対の円筒ローラ間の隙間は、0.35〜0.60mmの範囲の隙間に設定されるのが好ましい。なお、上記第四の方法においても、前記第一の方法における別の平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2に供給する工程を入れてもよい。
上記第一、第二、第三及び第四の方法で得られた扁平状の複合シート材21の一方の表面51において、外層用の耐熱材14の表面52と共に露出する外層用の補強材15の表面41の面積割合は、複合シート材21の一方の表面51の面積の5〜35%であることが好ましく、また、外層用の耐熱材14の表面52と共に露出する外層用の補強材15の表面41をもった扁平状の複合シート材21の一方の表面51の表面粗さは、算術平均粗さRaで5〜30μmであることが好ましい。
複合シート材21において、円筒ローラ16及び外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝17を有するローラ18によって、更には一対の円筒ローラ19及び20によって(前記第一の方法)又は平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ16a及び18a、場合によっては更に一対の円筒ローラ19及び20によって(前記第二の方法)又は前記第三及び第四の方法によってそれぞれ加圧された後の外層用の補強材15のスプリングバックは小さいこと、一方、外層用の耐熱材14は、密度が0.3〜0.9Mg/m(球帯状基体用の耐熱材6の密度の0.3〜0.6倍)の低密度であることから、該耐熱材14の厚さ方向の加圧工程によって、外層用の耐熱材14と外層用の耐熱材15とは、外層用の耐熱材14が外層用の補強材15の金網の網目に隙間なく密に充填されると共に該外層用の耐熱材14中に外層用の補強材15が埋設されるように、互いに圧着される。補強材15の表面41が複合シート材21の一方の表面51の耐熱材14の表面52と共に露出していることにより、最終の球帯状シール体39の外層38の外層中間面42(図1及び図2参照)での補強材15の表面41の占有面積割合は5〜35%となる。
また、補強材15の表面41が複合シート材21の一方の表面51の耐熱材14の表面52と共に5〜35%の面積割合で露出した複合シート材21の表面粗さは、算術平均粗さRaで5〜30μmとなっている。
複合シート材21の一方の表面51に露出した外層用の補強材15の表面41の露出面積割合を画像測定した結果と、外層用の補強材15の表面41が露出した複合シート材21の一方の表面51の表面粗さを算術平均粗さRaで測定した結果を説明する。
線径0.15mmのSUS304の線材を用いて縦3.5mm、横1.5mmの目幅を有する円筒状編組金網と、線径0.28mmのSUS304の線材を用いて縦3.5mm、横1.5mmの目幅を有する円筒状編組金網とを夫々作製し、これら円筒状編組金網からなる外層用の補強材15の内部に、密度0.3Mg/m、厚さ1.5mmの膨張黒鉛からなる耐熱シート材14を挿入し、円筒ローラ16と外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝17を有するローラ18との間の隙間Δ1を0.40mmに設定し、また一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2を0.45mmに設定して複合シート材21を作製した。これらの複合シート21材について、該複合シート材21の表面51の耐熱材14の表面52と共に露出する補強材15の表面41の面積割合を、キーエンス社製の画像測定カメラCV−3000を用いて画像測定した。また、補強材15の表面41が露出した複合シート材21の一方の表面51の算術平均粗さRaは、該複合シート材21の幅方向及び長さ方向の60箇所の表面粗さを測定し、その平均値で示した。
図23は、線径0.15mmのSUS304の金属細線を用いて作製した縦3.5mm、横1.5mmの目幅を有する円筒状編組金網と密度0.3Mg/m、厚さ1.5mmの膨張黒鉛からなる耐熱シート材14を用いて作製した複合シート材21の画像測定写真であり、外層用の補強材15の表面41の露出面積割合は、26.528%であった。また、複合シート材21の表面51の算術平均粗さRaは、8.34μmであった。
図24は、線径0.28mmのSUS304の金属細線を用いて作製した縦3.5mm、横1.5mmの目幅を有する円筒状編組金網と密度0.3Mg/m、厚さ1.5mmの膨張黒鉛からなる耐熱シート材14を用いて作製した複合シート材21の画像測定写真であり、外層用の補強材15の表面41の露出面積割合は、23.212%であった。また、複合シート材21の表面51の算術平均粗さRaは、10.82μmであった。
密度が0.3〜0.9Mg/mで、厚さが1.30〜1.50mmの外層用の耐熱材14を使用し、線径が0.15〜0.28mmの金属細線を用いて作製した外層用の補強材15を使用した場合に、複合シート材21の一方の表面51での補強材15の露出面積割合は、円筒ローラ16と外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝17を有するローラ18との間の隙間Δ1を0.35〜0.60mmの範囲に、また一対の円筒ローラ19及び20間の隙間Δ2を0.45〜0.65mmの範囲に適宜選定することにより、5〜35%の面積割合の範囲で適宜調整することができる。
また、密度が0.3〜0.9Mg/mで、厚さが1.30〜1.50mmの外層用の耐熱材14を使用し、線径が0.15〜0.175mmの金属細線を用いて作製した外層用の補強材15を使用した場合に、複合シート材21の一方の表面51での補強材15の露出面積割合は、一対の円筒ローラ16a及び18a間の隙間Δ1を0.35〜0.60mmの範囲に適宜選定することにより、5〜35%の面積割合の範囲で適宜調整することができる。
なお、図25は従来技術である前記特許文献3に記載された方法によって作製した複合シート材21aの画像測定写真を示すものであり、この複合シート材21aの製造方法を図26乃至図29によって説明する。すなわち、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して網目の目幅が縦4mm、横3mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間2及び3に通して帯状金網4(図3参照)とし、これを外層用の補強材5とした。外層用の耐熱材6として、五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの耐熱材を使用した。
上記補強材5と同様の円筒状編組金網を別途作製した後、これをローラ2及び3間に通して作製した帯状金網4を準備し、該帯状金網4内に外層用の耐熱材6を挿入する(図21及び図26参照)と共にこれらを一対の円筒ローラ19及び20間に通して一体化させ(図26、図27及び図28参照)、耐熱材6の表面と補強材5の表面とが露出した偏平状の複合シート材21a作製した(図29参照)。該複合シート材21aの表面51a中において補強材5の表面41aが露出する面積割合は、43.339%であり、複合シート材21aの表面51aの算術平均粗さRaは、71.18μmであった。
(第七工程)潤滑組成物として、(1)PTFE粉末からなる潤滑組成物を固形分として60重量%含む水性ディスパージョン、(2)分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物粒子を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するアルミナゾルに六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物を固形分として30重量%含む水性ディスパージョン、(3)上記六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物成分に、該潤滑組成物成分100重量部に対し300重量部以下又は200重量部以下、好ましくは50〜200重量部又は50〜150重量部のPTFE粉末を分散含有した潤滑組成物を固形分として含む水性ディスパージョンのいずれかを準備する。
前記第一、第二、第三又は第四の方法で作製した複合シート材21の表面51に、前記(1)の潤滑組成物、すなわちPTFE粉末からなる潤滑組成物を固形分として60重量%分散含有した水性ディスパージョン(PTFE60重量%、水分40重量%)をローラ塗りした後、乾燥して該潤滑組成物からなる被覆層22を形成した外層形成部材23(図30参照)を形成する。
又は、複合シート材21の表面51に、前記(2)の潤滑組成物、すなわち六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%からなる潤滑組成物を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素35〜42.5重量%、酸化硼素0.05〜5重量%、アルミナ水和物2.5〜10重量%、水分70重量%)をローラ塗りした後、乾燥して該潤滑組成物からなる被覆層22を形成した外層形成部材23を形成する。
さらには、複合シート材21の表面51に、前記(3)の潤滑組成物、すなわち六方晶窒化硼素17.5〜56.7重量%、酸化硼素0.025〜6.7重量%、アルミナ水和物1.25〜13.3重量%及びPTFE33.3〜75重量%を含む潤滑組成物を固形分として35〜50%分散含有した水性ディスパージョンをローラ塗りした後、乾燥して該潤滑組成物の被覆層22を形成した外層形成部材23を形成する。
上記の潤滑組成物(2)及び(3)において、アルミナ水和物は、例えばベーマイト(Al・HO)又はダイアスポア(Al・HO)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al・3HO)やバイヤライト(Al・3HO)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどの少なくとも一つが使用される。
(第八工程)このようにして得た外層形成部材23をその被覆層22を外側にして筒状母材13の外周面に巻付け、予備円筒成形体24を作製する(図31参照)。
(第九工程)内面に円筒壁面25と円筒壁面25に連なる部分凸球面状面26と部分凸球面状面26に連なる貫通孔27を備え、貫通孔27に段付きコア28を嵌挿することによって内部に中空円筒部29と該中空円筒部29に連なる球帯状中空部30とが形成された図32に示すような金型31を準備し、該金型31の段付きコア28に予備円筒成形体24を挿入する。
金型31の中空円筒部29及び球帯状中空部30に配された予備円筒成形体24をコア軸方向に98〜392N/mm(1〜4トン/cm)の圧力で圧縮成形し、図1及び図2に示すような、中央部に貫通孔32を有すると共に円筒内面33と部分凸球面状面34と部分凸球面状面34の大径側及び小径側の環状端面35及び36とにより規定された球帯状基体37と、球帯状基体37の部分凸球面状面34に一体に形成された外層38とを備えた球帯状シール体39を作製する。
この圧縮成形により、球帯状基体37は、球帯状基体用の耐熱材6と球帯状基体用の補強材5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有すように構成されており、外層38の表面44は、外層用の耐熱材14の表面43と耐熱材14の表面43と面一となった外層用の補強材15の表面41とからなる外層中間面42に一体に被着形成された潤滑組成物のすべり層40の平滑な面45からなっている。
第四工程において、重合体12を、耐熱シート材6を内側にしてうず巻き状に捲回する代わりに、帯状金網4からなる補強材5を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材13を形成すると、球帯状基体37の金網からなる補強材5が円筒内面33において露出する球帯状シール体39を作製することができる。この円筒内面33に金網からなる補強材5が露出した球帯状シール体39においては、排気管の外周面に圧入嵌合する際の嵌合力が強くなり、該排気管の外周面に強固に固着される。
作製された球帯状シール体39は、円筒内面33、部分凸球面状面34並びに部分凸球面状面34の大径側及び小径側の環状端面35及び36により規定された球帯状基体37と、球帯状基体37の部分凸球面状面34に一体に形成された外層38とを備えており、球帯状基体37は、金網からなる補強材5と、補強材5の金網の網目を充填し、かつ補強材5と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材6とを具備しており、外層38は、金網からなると共に圧縮された補強材15及び補強材15の金網の網目を充填し、かつ補強材15に密に圧着されていると共に当該補強材15の表面41と面一であって当該表面41と共に外層中間面42を形成する表面43を有して圧縮された膨張黒鉛からなる耐熱材14を含み、かつ部分凸球面状面34に一体に形成された基層46と、該外層中間面42で基層46に一体に被着形成されている潤滑組成物のすべり層40とを具備しており、該外層38における補強材15と耐熱材14とで形成された基層46の外層中間面42には、該補強材15が5〜35%の面積割合をもって点在していると共に外層中間面42の表面粗さが算術平均粗さRaで5〜30μmに形成されており、外部に露出する外層38の表面44は、すべり層40の平滑な面45からなっている。
球帯状シール体39は、図33に示す排気管球面継手に組込まれて使用される。すなわち、図33に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ102が立設されており、管端部101には、球帯状シール体39が貫通孔32を規定する円筒内面33において嵌合されており、大径側の環状端面35において球帯状シール体39がフランジ102に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と相対峙して配されていると共にマフラー側に連結された下流側排気管200には、凹球面部201と凹球面部201に連接されたフランジ部202とを一体に備えた径拡大部203が固着されており、凹球面部201の内面204が球帯状シール体39の外層38におけるすべり層40の平滑な面45に摺接されている。
図33に示す排気管球面継手において、一端がフランジ102に固定され、他端が径拡大部203のフランジ部202を挿通して配された一対のボルト300とボルト300の膨大頭部及びフランジ部202の間に配された一対のコイルバネ400とにより、下流側排気管200には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、200に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体39の外層38の平滑な面45と下流側排気管200の端部に形成された径拡大部203の凹球面部201の内面204との摺接でこれを許容するように構成されている。
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されないのである。
実施例1
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材とした。耐熱材として、密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に球帯状基体用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmの膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記球帯状基体用の補強材と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.4%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.3μmであった。
潤滑組成物として、解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物としてベーマイト(アルミナ一水和物:Al・HO)を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2を呈するアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルに六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素83重量%と酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%とを含む潤滑組成物を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)を作製した。
上記水性ディスパージョンAを前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図32に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
金型の中空部に配した予備円筒成形体をコア軸方向に294N/mm(3トン/cm)の圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例2
前記実施例1と同様の構成材料を使用し、実施例1と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、線径0.175mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、前記実施例1と同様、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は23.7%であり、その表面の算術平均粗さRaは12.6μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1と同様の水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)を使用し、この水性ディスパージョンAを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例3
前記実施例1と同様の構成材料を使用し、実施例1と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例1と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、前記実施例1と同様、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は20.4%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.34μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1と同様の水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)を使用し、この水性ディスパージョンAを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素83重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト13重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例4
前記実施例1と同様の構成材料を使用し、実施例1と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
前記実施例1と同様の構成材料及び同様の方法で複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.2%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.1μmであった。
潤滑組成物として、PTFE粉末からなる潤滑組成物を固形分として60重量%分散含有した水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)を準備し、この水性ディスパージョンBを前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(PTFE100重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成されたPTFE100重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例5
前記実施例1と同様の構成材料を使用し、実施例1と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例1と同様の密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmの膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例3と同様の線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に前記外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ1は0.45mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に外層用の耐熱材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、20.2%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.28μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例4と同様の水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)を使用し、この水性ディスパージョンBを、前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(PTFE100重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成されたPTFE100重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例6
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmの膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例1と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱材を連続的に挿入し、以下前記実施例1と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.6%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.6μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1で使用した水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)と前記実施例4で使用した水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)とを準備した。これら水性ディスパージョンA及びBを、A:B=70:30の割合で混合して六方晶窒化硼素44.7重量%、酸化硼素2.1重量%、ベーマイト7重量%及びPTFE46.2重量%を含む潤滑組成物を固形分として39重量%分散含有した水性ディスパージョンC(六方晶窒化硼素17.43重量%、酸化硼素0.84重量%、ベーマイト2.73重量%、PTFE18重量%並びに水、硝酸及び界面活性剤61重量%)を作製した。
上記水性ディスパージョンCを前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素44.7重量%、酸化硼素2.1重量%、ベーマイト7重量%及びPTFE46.2重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素44.7重量%、酸化硼素2.1重量%、ベーマイト7重量%及びPTFE46.2重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例7
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例6と同様の第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例6と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例3と同様の線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱材を連続的に挿入し、以下前記実施例5と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、20.4%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.32μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例6と同様の水性ディスパージョンCを使用した。上記水性ディスパージョンCを前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素44.7重量%、酸化硼素2.1重量%、ベーマイト7重量%及びPTFE46.2重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素44.7重量%、酸化硼素2.1重量%、ベーマイト7重量%及びPTFE46.2重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例8
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmの膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例1と同様の外層用の補強材を使用し、以下前記実施例1と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.6%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.6μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1で使用した水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)と前記実施例4で使用した水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)とを準備した。これら水性ディスパージョンA及びBを、A:B=65.5:34.5の割合で混合して六方晶窒化硼素40.4重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト6.2重量%及びPTFE51.4重量%を含む潤滑組成物を固形分として40.3重量%分散含有した水性ディスパージョンD(六方晶窒化硼素16.3重量%、酸化硼素0.8重量%、ベーマイト2.5重量%、PTFE20.7重量%並びに水、硝酸及び界面活性剤59.7重量%)を作製した。
上記水性ディスパージョンDを前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素40.4重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト6.2重量%及びPTFE51.4重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素40.4重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト6.2重量%及びPTFE51.4重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例9
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例3と同様の外層用の補強材を使用し、前記実施例5と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、20.6%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.6μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例8で使用した水性ディスパージョンDを使用し、該水性ディスパージョンDを前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素40.4重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト6.2重量%及びPTFE51.4重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素40.4重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト6.2重量%及びPTFE51.4重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例10
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例1と同様の外層用の補強材を使用し、前記実施例1と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.4%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.2μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1で使用した水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%並びに水及び硝酸70重量%)と前記実施例4で使用した水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)とを準備した。これら水性ディスパージョンA及びBを、A:B=50:50の割合で混合して六方晶窒化硼素27.7重量%、酸化硼素1.3重量%、ベーマイト4.3重量%及びPTFE66.7重量%を含む潤滑組成物を固形分として45重量%分散含有した水性ディスパージョンE(六方晶窒化硼素12.45重量%、酸化硼素0.6重量%、ベーマイト1.95重量%、PTFE30重量%並びに水、硝酸及び界面活性剤55重量%)を作製した。
上記水性ディスパージョンEを前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素27.7重量%、酸化硼素1.3重量%、ベーマイト4.3重量%及びPTFE66.7重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素27.7重量%、酸化硼素1.3重量%、ベーマイト4.3重量%及びPTFE66.7重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例11
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例3と同様の外層用の補強材を使用し、以下前記実施例5と同様の方法で、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、20.3%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.3μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例10と同様の水性ディスパージョンEを使用し、該水性ディスパージョンEを前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素27.7重量%、酸化硼素1.3重量%、ベーマイト4.3重量%及びPTFE66.7重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素27.7重量%、酸化硼素1.3重量%、ベーマイト4.3重量%及びPTFE66.7重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例12
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例1と同様の外層用の補強材を使用し、前記実施例1と同様の方法で外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、26.5%であり、その表面の算術平均粗さRaは19.4μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例1で使用した水性ディスパージョンA(六方晶窒化硼素24.9重量%、酸化硼素1.2重量%、ベーマイト3.9重量%、水及び硝酸70重量%)と前記実施例4で使用した水性ディスパージョンB(PTFE60重量%、水及び界面活性剤40重量%)とを準備した。これら水性ディスパージョンA及びBを、A:B=40:60の割合で混合して六方晶窒化硼素20.8量%、酸化硼素1.0重量%、ベーマイト3.2重量%、PTFE75重量%を含む潤滑組成物を固形分として48重量%分散含有した水性ディスパージョンF(六方晶窒化硼素9.96重量%、酸化硼素0.48重量%、ベーマイト1.56重量%、PTFE36重量%並びに水、硝酸及び界面活性剤52重量%)を作製した。
上記水性ディスパージョンFを前記複合シート材の前記環状凹溝を有するローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素20.8量%、酸化硼素1.0重量%、ベーマイト3.2重量%及びPTFE75重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素20.8量%、酸化硼素1.0重量%、ベーマイト3.2重量%及びPTFE75重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例13
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に外層用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
外層用の耐熱材として、前記実施例8と同様の膨張黒鉛シートを使用した。外層用の補強材として、前記実施例3と同様の外層用の補強材を使用し、以下前記実施例5と同様の方法で、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と耐熱材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は、20.3%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.3μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例12と同様の水性ディスパージョンFを使用し、該水性ディスパージョンFを前記複合シート材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該複合シート材の表面に潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(六方晶窒化硼素20.8量%、酸化硼素1.0重量%、ベーマイト3.2重量%及びPTFE75重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製し、以下前記実施例1と同様の圧縮成形により、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された六方晶窒化硼素20.8量%、酸化硼素1.0重量%、ベーマイト3.2重量%、PTFE75重量%を含む潤滑組成物の被覆層からなるすべり層の平滑な面に形成されている。
実施例14
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材とした。球帯状基体用の耐熱シート材として、五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの耐熱シート材を使用した。耐熱シート材をうず巻き状に一周分捲回した後、耐熱シート材の内側に補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱シート材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
外層用の耐熱シート材として、五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmの耐熱シート材を使用した。外層用の補強材として、前記球帯状基体用の補強材と同様、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱シート材を連続的に挿入し、該耐熱シート材の挿入開始端から該耐熱シート材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした)に供給して加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱シート材を密に充填すると共に該外層用の耐熱シート材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱シート材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱シート材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は26.4%であり、複合シート材の表面の算術平均粗さRaは19.3μmであった。
潤滑組成物として、硝酸を含有する水(分散媒)にアルミナ水和物としてベーマイト〔アルミナ一水和物(Al・HO)〕粒子を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2を呈するアルミナゾルに、六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有して形成した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素86重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト10重量%からなる潤滑組成物を固形分として50重量%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素43重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト5重量%、水分50重量%)を作製した。
この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素86重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト10重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材の被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図26に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
金型の中空部に位置させた予備円筒成形体をコア軸方向に3トン/cm(294N/mm)の圧力で圧縮し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱シート材からなる耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材の表面とからなる外層中間面で基層に一体に被着形成された潤滑組成物のすべり層の円滑な面に形成されている。
実施例15
前記実施例14と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
外層用の耐熱シート材として、前記実施例14と同様の耐熱シート材を使用した。外層用の補強材として、線径0.175mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱シート材を連続的に挿入し、該耐熱シート材の挿入開始端側から該耐熱シート材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした)に供給して加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱シート材を密に充填すると共に該外層用の耐熱シート材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱シート材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱シート材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は23.7%であり、複合シート材の表面の算術平均粗さRaは12.6μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例14と同様の水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素43重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト5重量%、水分50重量%)を使用し、この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素86重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト10重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
以下、前記実施例14と同様にして、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
実施例16
前記実施例14と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
外層用の耐熱シート材として、前記実施例14と同様の耐熱シート材を使用した。外層用の補強材として、線径0.15mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の内面に外層用の耐熱シート材を連続的に挿入し、該耐熱シート材の挿入開始端側から該耐熱シート材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした)に供給して加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした)に供給し、加圧して補強材の金網の網目に外層用の耐熱シート材を密に充填すると共に該外層用の耐熱シート材中に補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱シート材の表面と補強材の表面とを面一に形成すると共に該補強材の表面と外層用の耐熱シート材の表面とが露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する面積割合は20.4%であり、その表面の算術平均粗さRaは8.34μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例14と同様の水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素43重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト5重量%及び水分50重量%)を使用し、この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素86重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト10重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
以下、前記実施例14と同様にして、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
実施例17
前記実施例14と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。また、前記実施例14と同様の材料及び同様の方法により扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する露出面積割合は25.64%であり、複合シート材の表面の算術平均粗さRaは20.1μmであった。
潤滑組成物として、硝酸を含有する水(分散媒)にアルミナ水和物としてベーマイト〔アルミナ一水和物(Al・HO)〕粒子を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2を呈するアルミナゾルに、六方晶窒化硼素粉末及び酸化硼素粉末を分散含有して形成した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素86重量%、酸化硼素4重量%及びベーマイト10重量%からなる潤滑組成物を固形分として50%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素43重量%、酸化硼素2重量%、ベーマイト5重量%、水分50重量%)と、固形分としてPTFE粉末からなる潤滑組成物を50重量%分散含有した水性ディスパージョンとを準備し、これら水性ディスパージョンを混合して固形分として六方晶窒化硼素43重量%、PTFE50重量%、酸化硼素2重量%及びベーマイト5重量%からなる潤滑組成物を固形分として50%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素21.5重量%、PTFE25重量%、酸化硼素1重量%、ベーマイト2.5重量%及び水分50重量%)を作製した。
この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素43重量%、PTFE50重量%、酸化硼素2重量%及びベーマイト5重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
以下、前記実施例14と同様にして、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
実施例18
前記実施例14と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。また、前記実施例15と同様の材料及び同様の方法により扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面に耐熱材の表面と共に露出している露出面積割合は23.6%であり、複合シート材の表面の算術平均粗さRaは19.7μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例17と同様の水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素21.5重量%、PTFE25重量%、酸化硼素1重量%、ベーマイト2.5重量%及び水分50重量%)を使用し、この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素43重量%、PTFE50重量%、酸化硼素2重量%及びベーマイト5重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
以下、前記実施例14と同様にして、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
実施例19
前記実施例14と同様にして筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。また、前記実施例16と同様の材料及び同様の方法により扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出している露出面積割合は21.2%であり、複合シート材の表面の算術平均粗さRaは10.1μmであった。
潤滑組成物として、前記実施例17と同様の水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素21.5重量%、PTFE25重量%、酸化硼素1重量%、ベーマイト2.5重量%及び水分50重量%)を使用し、この水性ディスパージョンを、前記複合シート材の前記環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面にローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該複合シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素43重量%、PTFE50重量%、酸化硼素2重量%及びベーマイト5重量%)を形成した外層形成部材を作製した。
以下、前記実施例14と同様にして、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
比較例1
金属細線として、前記実施例1と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線を使用して網目の目幅が縦4mm、横3mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材とした。球帯状基体用の耐熱材として、五酸化リン0.7重量%、第一リン酸アルミニウム4.0重量%及び膨張黒鉛を含む密度1.12Mg/m、厚さ0.4mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を位置させた筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
上記耐熱材と同様の耐熱材を別途準備し、該耐熱シート材の一方の表面に六方晶窒化硼素粉末85重量%とアルミナ粉末15重量%とからなる潤滑組成物を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素25.5重量%、アルミナ4.5重量%、水分70重量%)をローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該耐熱材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素85重量%及びアルミナ15重量%〕を形成した。
線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を形成したのち、これをローラ間に通して作製した帯状金網を準備し、該帯状金網内に前記被覆層を備えた耐熱材を挿入すると共にこれらをローラ間に通して一体化させ、一方の面に潤滑組成物と金網とが混在した複合シート材を作製した。
この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面の耐熱材の表面と共に露出する面積割合は43.42%であり、その表面の算術平均粗さ(Ra)は71.3μmであった。
前記筒状母材の外周面に、この複合シート材を潤滑組成物の被覆層と金網とが混在した面を外側にして巻付けて予備円筒成形体を作製した。ついで、この予備円筒成形体を実施例1と同様の方法で圧縮成形し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材からなる耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、補強材と被覆層の潤滑組成物とが混在したすべり層の平滑な面からなっている。
比較例2
前記比較例1と同様の材料及び方法により筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱シート材の幅方向の両端部はそれぞれ補強材の幅方向に突出している。
前記比較例1と同様の耐熱材を別途準備し、該耐熱材の一方の表面に六方晶窒化硼素粉末85重量%とアルミナ粉末15重量%とからなる潤滑組成物成分を100重量部とし、これにPTFE粉末を150重量部分散含有した潤滑組成物(六方晶窒化硼素34重量%、PTFE60重量%及びアルミナ6重量%)を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(六方晶窒化硼素10.2重量%、PTFE18重量%、アルミナ1.8重量%、水分70重量%)をローラ塗りし、100℃の温度で乾燥させるという被覆操作を3回繰返し、該耐熱シート材の一方の表面に潤滑組成物の被覆層(六方晶窒化硼素34重量%、PTFE60重量%及びアルミナ6重量%)を形成した。
線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を形成したのち、これをローラ間に通して作製した帯状金網を準備し、該帯状金網内に前記被覆層を備えた耐熱材を挿入すると共にこれらをローラ間に通して一体化させ、一方の面に潤滑組成物と金網とが混在した複合シート材を作製した。
この複合シート材において、補強材の表面が複合シート材の一方の表面の耐熱材の表面と共に露出する面積割合は45.2%であり、その表面の算術平均粗さ(Ra)は72.6μmであった。
以下、前記比較例1と同様の圧縮成形で球帯状シール体を得た。
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材からなる耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状用の補強材と、この補強材の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層の表面は、耐熱材と補強材と潤滑組成物とが混在したすべり層の平滑な面からなっている。
次に、上記した実施例1乃至実施例13及び比較例1乃至2で得た球帯状シール体を図33に示す排気管球面継手に組み込み、熱間せん断入力耐久試験により相手材表面の表面粗さの変化、摩擦音発生の有無及びガス漏れ量(l/min)について試験した結果を説明する。
<熱間せん断入力耐久試験の試験条件>
温度(図33に示す径拡大部203の表面の温度) 300℃
揺動角 ±0.5°
加振周波数 25Hz
加振時間 120Hr
慣性力 錘29.4N
コイルバネによる押圧力 588N
(スプリングセットフフォース)
相手材(図33に示す径拡大部203の材質) SUS304
相手材表面の表面粗さ 十点平均粗さ(RzJIS)
<試験方法>
図33に示す排気管球面継手の一方の排気管100を固定すると共に該排気管100に高温ガスを流通して相手材(図33に示す径拡大部203)の表面温度を300℃まで昇温し、該相手材の表面温度が300℃に到達した時点で、他方の排気管200の外周面に錘を固定すると共に該排気管200を25Hzの加振周波数で±0.5°の揺動運動を120Hr行った後の相手材の表面粗さを十点平均粗さ(RzJIS)で測定した。
<ガス漏れ量の試験条件>
コイルバネによる押圧力(スプリングセットフォース):980N
揺動角度:±2.5°
加振周波数(揺動速度):5Hz
温度(図33に示す凹球面部201の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
揺動回数:100万回
相手材(図33に示す径拡大部203の材質):SUS304
<試験方法>
室温において5Hzの加振周波数で±2.5°の揺動運動を継続しながら温度を500℃まで昇温し、その温度を保持した状態で揺動運動を継続し、揺動回数が100万回に到達した時点でのガス漏れ量について測定した。
<ガス漏れ量の測定方法>
図33に示す排気管球面継手の一方の上流側排気管100の開口部を閉塞し、他方の下流側排気管200側から、0.049MPa(0.5kgf/cm)の圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(球帯状シール体39の面45と径拡大部203との摺接部、球帯状シール体39の円筒内面33と上流側排気管100の管端部101との嵌合部及び環状端面35と上流側排気管100に立設されたフランジ102との当接部)からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験初期(開始前)、(2)揺動回数25万回後、(3)揺動回数50万回後及び(4)揺動回数50万回後の4回測定した。
<摩擦異音発生の有無の試験方法>
コイルバネによる押圧力(スプリングセットフォース):590N
揺動角度:±4°
加振周波数:12Hz
温度(図33に示す凹球面部302の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
試験回数:100万サイクル
相手材(図33に示す径拡大部203の材質):SUS304
<試験方法>
室温(25℃)において12Hzの加振周波数で±4°の揺動運動を1回として45000回行った後、該揺動運動を継続しながら雰囲気温度(図33に示す凹球面部302の外表面温度)を500℃まで昇温し(昇温中の揺動回数45000回)、500℃の温度に到達した時点で115000回の揺動運動を行い、ついで該揺動運動を継続しながら雰囲気温度を室温まで降温する(降温中の揺動回数45000回)という全揺動回数250000回を1サイクルとして4サイクル行う。
摩擦異音の発生の有無の評価は、上記の(1)揺動回数25万回、(2)揺動回数50万回、(3)揺動回数75万回及び(4)揺動回数100万回の時点で、次のようにして行った。
評価記号A:摩擦異音の発生のないもの。
評価記号B:試験片に耳を近づけた状態で、かすかに摩擦異音が聴こえるもの。
評価記号C:定位置(試験片から1.5m離れた位置)では生活環境音に掻き消され、一般には判別が難しいが試験担当者には摩擦異音として判別できるもの。
評価記号D:定位置で誰でも摩擦異音(不快音)として識別できるもの。
表1乃至表4は上記試験結果を示す。





Figure 0005347971



Figure 0005347971



Figure 0005347971



Figure 0005347971
表1乃至表4に示す試験結果から、実施例1乃至実施例13からなる球帯状シール体は、相手材表面の粗面化、ガス漏れ量及び摩擦異常音の評価において、比較例1及び比較例2からなる球帯状シール体よりも優れていることがわかる。また、実施例14乃至実施例19の球帯状シール体においては、試験後の相手材の表面粗さを測定していないが、ガス漏れ量及び摩擦異常音の評価が実施例1乃至実施例13からなる球帯状シール体の評価と遜色ないことから、試験後の相手材表面の粗面化を極力防止し得たものと推察される。一方、比較例1及び比較例2からなる球帯状シール体においては、相手材表面と摺接する外層の表面に外層用の補強材が露出している構造であるので、相手材との摩擦において相手材表面を攻撃して相手材表面を粗面化し、それにより球帯状シール体の外層表面と相手材表面との摩擦面、換言すればシール面からのガス漏れ量の増大を惹起したものと推察される。
以上説明したように、本発明の球帯状シール体は、外層の表面が外層用の耐熱材中に埋設するように互いに圧着されて外層用の耐熱材の表面と該耐熱材の表面と面一となった外層用の補強材とからなる基層の外層中間面に一体に被着された潤滑組成物のすべり層の平滑な面からなっているので、相手材との摩擦において、相手材表面を損傷させたり、粗面化させたりすることを極力防止し得、シール性の低下及び摩擦異音の発生を極力防止し得る。
また、本発明の球帯状シール体の製造方法において、球帯状基体用の耐熱材を形成する膨張黒鉛の密度よりも低い密度をもった膨張黒鉛からなる外層用の耐熱材を金網からなる外層用の補強材の二つの層間に挿入すると共に斯かる外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材を該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に外層用の補強材が埋設するように互いに圧着することにより、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材の表面とが面一となっていると共に互いに面一にされた該外層用の補強材の表面と外層用の耐熱シート材の表面とにおける外層用の補強材が5〜35%の面積割合をもって点在して露出している扁平状の複合シート材を形成することができ、この複合シート材により形成された外層では、球帯状基体の部分凸球面状面に一体化された場合においても、その外層中間面において補強材が5〜35%の面積割合をもって点在しているので、相手材との摩擦においては、相手材表面に外層の補強材だけが局部的に摩擦することを回避し得、結果として、相手材表面の摩擦による損傷や粗面化を極力防止することができるので、シール性の低下を防止でき、また相手材表面に形成された過度の潤滑被膜を掻き取る作用により、相手材表面に形成された適度の厚さの潤滑被膜を介しての摩擦となることから摩擦異常音の発生を極力防止できる。

Claims (20)

  1. 円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、球帯状基体は、金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材とを具備しており、外層は、金網からなると共に圧縮された他の補強材及びこの他の補強材の金網の網目を充填し、かつ他の補強材に密に圧着されて圧縮された他の膨張黒鉛を含むと共に当該他の補強材の表面と共に外層中間面を形成する他の耐熱材を含んでおり、部分凸球面状面に一体的に形成された基層と、該外層中間面で基層に一体に被着形成されていると共に潤滑組成物からなるすべり層とを具備しており、外層中間面における他の補強材の表面は、外層中間面の全表面に対して5〜35%の面積割合をもって点在しており、外部に露出する外層の表面は、すべり層の平滑な面からなっていることを特徴とする球帯状シール体。
  2. 球帯状基体及び外層の耐熱材は、五酸化リン0.05〜5.00重量%及びリン酸塩1.0〜16.0重量%のうちの少なくとも一方と、膨張黒鉛とを含んでいる請求項1に記載の球帯状シール体。
  3. 潤滑組成物は、四ふっ化エチレン樹脂を含む請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
  4. 潤滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
  5. 潤滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物成分、該潤滑組成物成分100重量部に対して300重量部以下又は200重量部以下の四ふっ化エチレン樹脂を含む請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
  6. 潤滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物成分、該潤滑組成物成分100重量部に対して50〜200重量部又は50〜150重量部の四ふっ化エチレン樹脂を含む請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
  7. アルミナ水和物は、ベーマイト又はダイアスポアなどのアルミナ一水和物、ギブサイト又はバイヤライトなどのアルミナ三水和物及び擬ベーマイトから選択される請求項4から6のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
  8. 円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる球帯状シール体の製造方法であって、
    (a)密度がαMg/mの膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材を準備する工程と、
    (b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる球帯状基体用の補強材を準備し、この球帯状基体用の補強材を前記球帯状基体用の耐熱材に重ね合わせて重合体を形成した後、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、
    (c)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる外層用の補強材の二つの層間に、密度が0.3α〜0.6αMg/mの膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を挿入し、当該外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材を該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を密に充填すると共に該外層用の耐熱材中に外層用の補強材が埋設するように互いに圧着して、外層用の耐熱材の表面と外層用の補強材とが面一とされた該外層用の補強材の表面と外層用の耐熱材の表面とにおける外層用の補強材が5〜35%の面積割合をもって点在して露出している扁平状の複合シート材を形成する工程と、
    (d)複合シート材の外層用の耐熱シート材の表面と外層用の補強材の表面とが互いに面一とされた表面に潤滑組成物を被覆して当該表面に潤滑組成物の被覆層を形成した外層形成部材を形成する工程と、
    (e)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその被覆層を外側にして捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、
    (f)該予備円筒成形体を金型のコア外周面挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程と、
    を具備しており、球帯状基体は、膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層は、金網からなると共に圧縮された外層用の補強材及びこの外層用の補強材の金網の網目を充填し、かつ外層用の補強材に密に圧着されて圧縮された膨張黒鉛からなると共に当該外層用の補強材の表面と共に外層中間面を形成する外層用の耐熱材を含んでおり、部分凸球面状面に一体的に形成された基層と、該外層中間面で基層に一体に被着形成されていると共に潤滑組成物からなるすべり層とを具備しており、外層中間面における外層用の補強材の表面は、外層中間面において5〜35%の面積割合をもって点在しており、外部に露出する外層の表面は、すべり層の平滑な面からなっていることを特徴とする球帯状シール体の製造方法。
  9. 外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材の該耐熱材の厚さ方向への加圧は、平滑な外周面を有した円筒ローラと軸方向に沿って複数個の環状凹溝をもった円筒状の外周面を有したローラとの間の隙間に供給して加圧した後、さらに平滑な円筒状の外周面を有した一対の円筒ローラ間の隙間に供給して行う請求項8に記載の球帯状シール体の製造方法。
  10. 潤滑組成物が被覆されると共に複合シート材の外層用の耐熱シート材の表面と外層用の補強材との表面とが互いに面一とされた表面は、複合シート材において環状凹溝を有する円筒ローラによって加圧された側の表面である請求項9に記載の球帯状シール体の製造方法。
  11. 外層用の耐熱材を挿入した外層用の補強材の該耐熱材の厚さ方向への加圧は、平滑な円筒状に外周面を有した少なくとも一対の円筒ローラ間の隙間に供給して行う請求項8に記載の球帯状シール体の製造方法。
  12. 球帯状基体用の耐熱材の密度αは、1.0〜1.5Mg/mである請求項8から11のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  13. 複合シート材の表面粗さは、算術平均粗さRaで5〜30μmである請求項8から12のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  14. 球帯状基体用及び外層用の耐熱材は、五酸化リン0.05〜5.00重量%及びリン酸塩1.0〜16.0重量%のうちの少なくとも一方と、膨張黒鉛とを含んでいる請求項8から13のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  15. 滑組成物は、四ふっ化エチレン樹脂を含む請求項8から14のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  16. 滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む請求項8から14のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  17. 滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物成分、該潤滑組成物成分100重量部に対し300重量部以下又は200重量部以下の四ふっ化エチレン樹脂を含有する請求項8から14のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  18. 滑組成物は、六方晶窒化硼素70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物成分、該潤滑組成物成分100重量部に対し50〜200重量部又は50〜150重量部の四ふっ化エチレン樹脂を含有する請求項8から14のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  19. アルミナ水和物は、ベーマイト又はダイアスポアなどのアルミナ一水和物、ギブサイト又はバイヤライトなどのアルミナ三水和物及び擬ベーマイトから選択される請求項16から18のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
  20. 外層用の耐熱シート材の密度は、0.3〜0.9Mg/m である請求項8から19のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
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