JP5346760B2 - 常時噛合式自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、変速開始のタイミングを適切にできる常時噛合式自動変速機の制御装置を提供することを目的としている。
この構成によれば、クラッチの油圧を検出するだけで、シフトアクチュエータの作動を開始させることができ、変速開始のタイミングを適切にすることができる。
また、上記構成において、前記変速段に応じて前記所定油圧の値を制御するようにしてもよい。この構成によれば、変速段に応じて適切な所定油圧を設定でき、変速開始のタイミングをより適切にでき、変速制御精度を向上することができる。
また、上記構成において、前記シフタギヤ係合部引き抜き荷重は、前記シフタギヤ(m3、m4、n5、n6)までの減速レシオと、前記シフタギヤの係合部の摩擦係数とに基づいて算出されるようにしてもよい。この構成によれば、シフタギヤ係合部引き抜き荷重を精度良く算出でき、より緻密な変速制御をすることが可能になる。
また、上記構成において、前記油圧検出手段(222)で検出した油圧に基づいてシフト制御とクラッチ制御とを行うようにしてもよい。この構成によれば、シフト制御とクラッチ制御とで油圧センサを兼用でき、部品点数を削減することができる。
また、上記構成において、前記クラッチアクチュエータ(71)により作動されるクランク(105)の回転位置を検出する回転検出手段(231)を有し、前記油圧検出手段(222)のバックアップとして前記回転検出手段(231)を用いて前記シフトアクチュエータ(61)を制御するバックアップ機能を具備するようにしてもよい。この構成によれば、油圧検出手段を用いて変速制御できない事態が生じた場合でも、変速制御を継続して行うことができる。
また、油圧クラッチは、当該油圧クラッチの油圧が高から低になると切断状態に切り替わる常時開放型クラッチであり、判定手段は、油圧検出手段で検出した油圧が所定油圧より低いか否かを判定し、シフト制御手段は、所定油圧より低いと判定されると、シフトアクチュエータの作動を開始させるようにすれば、常時開放型クラッチを有する構成で、変速開始のタイミングを適切にすることができる。
また、変速機は、シフトドラムの作動に伴って移動するシフタギヤの係合部を予定ギヤに嵌合させて変速段を確立する構成を有し、変速段に応じてシフタギヤ係合部引き抜き荷重を算出し、算出結果に応じて所定油圧の値を制御するようにすれば、より緻密な変速制御をすることが可能になる。
また、シフタギヤ係合部引き抜き荷重は、シフタギヤまでの減速レシオと、シフタギヤ係合部の摩擦係数とに基づいて算出されるようにすれば、シフタギヤ係合部引き抜き荷重を精度良く算出でき、より緻密な変速制御をすることが可能になる。
また、油圧検出手段で検出した油圧に基づいてシフト制御とクラッチ制御とを行うようにすれば、シフト制御とクラッチ制御とで油圧センサを兼用でき、部品点数を削減することができる。
また、クラッチアクチュエータにより作動されるクランクの回転位置を検出する回転検出手段を有し、油圧検出手段のバックアップとして回転検出手段を用いてシフトアクチュエータを制御するバックアップ機能を具備するようにしてもよい。この構成によれば、油圧検出手段を用いて変速制御できない事態が生じた場合でも、変速制御を継続して行うことができる。
図1及び図2において、100は自動二輪車(小型車両)を示す。自動二輪車100の車体フレーム111は、車体前部に位置するヘッドパイプ112と、このヘッドパイプ112から車体中央まで後方に延びる左右一対のメインフレーム114と、メインフレーム114の後端部から下方に延びる左右一対のピボットプレート115と、メインフレーム114の後端部から車両後部まで延びるリヤフレーム(不図示)とを備えている。
ヘッドパイプ112には、フロントフォーク116が回動自在に取り付けられ、このフロントフォーク116の下端に前輪117が回転自在に支持されている。また、ヘッドパイプ112の上部には、操舵用ハンドル118が取り付けられている。
パワーユニットPは、前後V型4気筒のエンジンEを備え、該エンジンEは、図2に示すように、平面視で両メインフレーム114内に配置されている。該エンジンEは、クランクシャフト2(図1参照)を左右水平方向に指向し横置き配置であって、OHC型の水冷式で、クランクケース3を備え、該クランクケース3から2気筒ずつ前後に傾いたフロントバンクBfと、リヤバンクBrとがV型に構成され、互いのバンク角が90度よりも小さい狭角V型エンジンである。
また、リヤフォーク122と車体フレーム111との間には、リヤフォーク122からの衝撃を吸収するリヤクッション124が掛け渡されている。パワーユニットPの後部には、車体を停めるためのスタンド125が設けられ、パワーユニットPの左側面の下部には、サイドスタンド126が設けられている。
シリンダヘッド4fの各気筒には、シリンダボア3fの中心軸線であるシリンダ軸線C1上に、プラグ差込孔15が形成されており、このプラグ差込孔15には点火プラグ16(右側の気筒の点火プラグは不図示)がその先端を燃焼室20内に臨ませて配置されている。6はピストン、7fは連接棒である。
クランクシャフト2の図中右端側には、クランクシャフト2の回転を出力するカムシャフト駆動スプロケット17が設けられている。エンジンEのカムシャフト駆動スプロケット17側には、各バンクBf,Br内で上下に延在するカムチェーン室35が設けられ、カムシャフト25と一体に回転する従動スプロケット36は、カムシャフト25の一端に固定されてカムチェーン室35内に位置している。従動スプロケット36とカムシャフト駆動スプロケット17には、カムチェーン37が巻き回され、カムシャフト25はカムチェーン37及び従動スプロケット36を介して、クランクシャフト2の回転の半分の回転速度で回転されている。また、クランクシャフト2の図中左端側には、発電機としてのジェネレータ18が設けられている。
クランクケース3内には、クランクシャフト2とそれぞれ平行にメイン軸41、カウンタ軸42、及び出力軸43が設けられている。クランクシャフト2を含むこれらの軸41,42,43は、クランクシャフト2の回転をメイン軸41、カウンタ軸42、及び出力軸43の順に伝達する歯車伝達機構を備えている。
クランクシャフト2のカムチェーン室35側の端には、メイン軸41を回転させるクランク側駆動歯車2Bが固定され、クランク側駆動歯車2Bはメイン軸41のメイン軸側被動歯車41Aと噛み合っている。メイン軸41は、両端に設けられた軸受41Cを介して支持されている。メイン軸側被動歯車41Aは、メイン軸41上にメイン軸41と相対回転自在に設けられるとともに、クラッチ機構44に接続されており、このクラッチ機構44を介してメイン軸側被動歯車41Aの回転、つまり、クランクシャフト2の回転がメイン軸41へと伝達される。
最も変速比の大きい1速歯車対m1,n1はメイン軸側被動歯車41Aが支持されるメイン軸41の一端側に配置され、2速歯車対m2,n2はメイン軸41の他端側に配置されている。1速歯車対m1,n1と2速歯車対m2,n2との間には、一端側から順に、5速歯車対m5,n5、4速歯車対m4,n4、3速歯車対m3,n3、及び6速歯車対m6,n6が配置されている。
出力軸43の略中央には、ばね受け部材53が固定され、円筒部材52とばね受け部材53との間にコイルばね54が設けられ、円筒部材52が被動歯車43Aに向けて付勢されている。カム式トルクダンパ51は、円筒部材52、ばね受け部材53及びコイルばね54を備えて構成されている。出力軸43の左端部には駆動傘歯車48が一体的に設けられ、この駆動傘歯車48は、車体の前後方向に延びるドライブシャフト49の前端に一体に設けられた被動傘歯車49Aに噛み合う。これによって、出力軸43の回転がドライブシャフト49に伝達される。
カウンタ軸42上の5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6は、それぞれカウンタ軸42にスプライン結合されてカウンタ軸42を軸方向に移動するシフタギヤに形成されており、シフタとなってそれぞれ軸方向に移動する。5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6のそれぞれには、左右に係合凸部が設けられ、それぞれの係合凸部が隣接する4速被動歯車n4、3速被動歯車n3に設けられた係合凹部にそれぞれ嵌合し、4速被動歯車n4、3速被動歯車n3と選択的に係合自在に構成されている。
シフタとなるメイン軸41上の3速駆動歯車m3及び4速駆動歯車m4と、カウンタ軸42上の5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6とは、図3の最下部に示した変速切換機構47によって移動されて予定ギヤ(3速駆動歯車m3又は4速駆動歯車m4、4速被動歯車n4又は3速被動歯車n3)にそれぞれ嵌合し、これによって変速段が確立する。なお、この変速装置46の構造は、従来の常時噛合式のマニュアル変速機と同構造である。
上述した変速歯車対は、変速切換機構47のシフトフォーク47B1,47C1を移動させることによって変更され、この変更された変速歯車対を介して、メイン軸41の回転動力がカウンタ軸42へと伝達される。
シフトドラム47Aは、シフトドラム47Aの回転量を制御するラチェット機構47Dを介してシフトスピンドル47Eに連結されている。
シフトスピンドル47Eの図中左端には、シフトアクチュエータ61が連結され、シフトアクチュエータ61はシフトモータ62を有し、シフトモータ62にはギヤ列63を介してシフトスピンドル47Eが連結されている。
続いてクラッチ機構44の構造を説明する。
図4はクラッチ機構44を周辺構成と共に示す図である。
図4に示すように、メイン軸41には軸方向に中空部41Dが貫通し、中空部41Dには、クラッチリフターロッド(プッシュロッドとも言う)66が配置されている。クラッチリフターロッド66の図中左端には、クラッチスレーブシリンダ68内のクラッチピストン67が固着されている。クラッチスレーブシリンダ68には、油圧ホース74を介して、クラッチスレーブシリンダ68内に作動油を供給するクラッチアクチュエータ(油圧クラッチ作動機構)71が接続されている。このクラッチスレーブシリンダ68は、クラッチアクチュエータ71から供給される作動油によってクラッチリフターロッド66を油圧作動し、クラッチ機構44を油圧で作動させる油圧シリンダとして機能する。
図3において、クラッチアクチュエータ71(油圧発生装置72と油圧制御装置73)が作動すると、クラッチスレーブシリンダ68に一定の油圧力が作用し、クラッチアクチュエータ71が作動しないとき、クラッチスレーブシリンダ68には一定の油圧力が作用しない。クラッチスレーブシリンダ68に一定の油圧力が作用しない状態では、図4に示すように、戻しスプリング93が、プレッシャープレート85を常に左方に押圧し、プレッシャープレート85が、図中左端の駆動摩擦板81Bから離れ、駆動摩擦板81Bと被動摩擦板83Bとが断(非圧接状態)となる。これによりクラッチアウタ81とクラッチインナ83とが断(切断状態)となり、メイン軸側被動歯車41Aからの回転動力が、クラッチアウタ81に伝達されても、クラッチアウタ81が空回りし、メイン軸側被動歯車41Aからメイン軸41への回転動力の伝達が断たれる。
このように、このクラッチ機構44は、クラッチスレーブシリンダ68への油圧が高の場合に接続状態となり、クラッチスレーブシリンダ68への油圧が低の場合に切断状態となり、つまり、油圧が高から低になると切断状態に切り替わる常時開放型クラッチに構成されている。
図5は、クラッチアクチュエータ71を示す系統図、図6は、図5のVI−VI断面図である。図5において、クラッチアクチュエータ71は、クラッチ操作のための油圧を発生する油圧発生装置72と、その油圧を必要により制御するための油圧制御装置73とを備えている。油圧発生装置72は、クラッチ制御モータ101を有し、クラッチ制御モータ101の出力軸102には、減速ギヤ列103を介して、駆動ギヤ104が連結されている。駆動ギヤ104には、偏心したクランク受け104Aが形成され、クランク受け104Aには、クランク105が嵌合し、クランク105と駆動ギヤ104が一体化されている。クランク105と駆動ギヤ104は、回転軸106から距離L1、偏心した偏心軸107を持ち、偏心軸107の外周には軸受108が嵌合する。軸受108の外周にはクランク室109内でピストン110が当接し、ピストン110はシリンダ211内を延出し、ばね212で軸受108に向けて付勢されている。
そして、油圧発生装置72の油圧経路218から、油圧制御装置73の油圧経路219を経て、油圧ホース74、及び上記クラッチスレーブシリンダ68に至るまでの油圧経路は、閉じた油圧経路となっており、該油圧経路内の一定の油圧は、油圧発生装置72の上記ピストン110の作動によって発生する。
クラッチアクチュエータ71が機能すると、上記多板クラッチ80(図4)が断・接される。すなわち、多板クラッチ80の接続時には、クラッチ制御モータ101を正回転する。すると、減速ギヤ列103を介して、駆動ギヤ104とクランク105が一体になって、図6に示すように、位置A〜Bへ反時計方向に回動し、軸受け108がピストン110を押し退けて、該経路内の油圧力を一定の圧力まで上昇する。
これが上昇すると、油圧制御装置73の油圧経路219、油圧ホース74を経て、クラッチスレーブシリンダ68に一定の圧力の作動油が供給され、クラッチリフターロッド66を右方に押動し(図4)、多板クラッチ80が接続される。
油圧力を一定の圧力まで上昇する場合、軸受108は、位置Aから、上死点の位置Cを越えて、位置Bでストッパ113に当たって停止するため、軸受け108は、クラッチ制御モータ101で逆回転されない限り、位置Bでその位置を保持される。従って、クラッチ制御モータ101の作動電流をゼロにしても、クランクが押し戻されることがなく、軸受け108が逆回転することはない。
これが下降すると、クラッチスレーブシリンダ68内に一定の油圧力が立たなくなり、クラッチリフターロッド66は、図4を参照し、戻しスプリング93のばね力により、プレッシャープレート85、ホルダ88、及びリフタ91を介して、左方に移動する。これにより、プレッシャープレート85が、図中左端の駆動摩擦板81Bから離れ、多板クラッチ80が断とされる。
従って、この常時開放型クラッチ構造では、従来のように、クラッチレバーなどのクラッチリリース機構などを設けることなく、自動二輪車100の停止時に、始動スイッチのオフなどで電源がオフ(車両各部への電源供給が停止)されても、自動二輪車100の押し歩きが可能である。
必要トルク算出部410Aは、エンジン回転数センサ402及びスロットルセンサ403の出力信号(エンジン回転数とスロットル開度)に基づいて発進に必要なトルク(発進トルクを得るための目標クラッチ容量)を算出し、トルク・油圧変換部410Bに出力する。
トルク・油圧変換部410Bは、入力したトルク(目標クラッチ容量)をクラッチ機構44(多板クラッチ80)が伝達するクラッチ油圧(目標クラッチ油圧)に変換し、発進時クラッチ制御部411Aに出力する。
また、発進時シフト制御部421Aは、発進制御時において、変速装置(変速機)46を1速にするようにシフトアクチュエータ61を制御する。
従って、エンジン回転数とスロットル開度から求めた発進トルクで発進するようにクラッチ機構44(多板クラッチ80)が接続され、つまり、いわゆる半クラッチ状態が実現されて自動二輪車100を適切に発進させることができる。なお、発進後は、半クラッチ状態を解除すべく、クラッチ油圧を高めてクラッチ機構44(多板クラッチ80)を完全に接続状態とし、エンジントルクを効率よく後輪131側へ伝達することができる。
例えば、この位置センサ231が検出するクランク回転位置を取得することにより、クラッチ制御モータ101の制御状態を取得でき、この制御状態が適切になるように(例えば、確実に発進可能な所定のデューティー比となるように)クラッチアクチュエータ71(クラッチ制御モータ101)を制御する。このような不具合発生時に対応するバックアップ機能を具備することで、油圧センサ222の不具合発生時でも発進制御を継続して行うことができ、ライダーは自動二輪車100を確実に発進させることができる。
図8は、制御装置401の変速制御時の構成を周辺構成と共に示す機能ブロック図である。この図に示すように、制御装置401は、変速要求の有無を判定する変速要求判定部431と、変速時にクラッチ制御部(クラッチ制御手段)411として機能する変速時クラッチ制御部411Bと、変速時にシフト制御部(シフト制御手段)421として機能する変速時シフト制御部421Bと、変速開始タイミング(シフト開始タイミングとも言う)を判定するシフト開始判定部(判定手段)432とを備えている。
変速要求判定部431は、シフト信号SAを入力したか否かを判定することにより変速要求を入力したか否かを判定する。ここで、シフト信号SAは、自動変速機400の変速モードが手動変速(MT)モードの場合には、ライダーが操作する変速用操作子(不図示)が操作された場合に出力される信号であり、変速モードが自動変速(AT)モードの場合には、制御装置401が車速、エンジン回転数、スロットル開度などの情報に応じて変速段を切り換える場合に出力する信号である。なお、本自動二輪車100は、両変速モードを具備するタイプ、或いは、いずれか一方の変速モードを具備するタイプのいずれに構成してもよい。
変速時クラッチ制御部411Bは、変速制御開始信号SBを入力すると、クラッチアクチュエータ71を制御してクラッチ機構44(多板クラッチ80)を切断状態へと切り換える。本実施形態のクラッチ機構44(多板クラッチ80)が常時開放型クラッチであるため、変速時クラッチ制御部411Bは、車両の始動スイッチがオンで車両走行中の場合、変速制御開始信号SBを入力していないときはクラッチアクチュエータ71を駆動してクラッチ機構44(多板クラッチ80)を接続状態に保持し、変速制御開始信号SBを入力すると、クラッチアクチュエータ71を切断側へ駆動させ、クラッチ油圧を下げてクラッチ切断状態へと切り換える。
ところで、自動変速機400では、変速開始タイミング(シフト開始タイミング)をできるだけ早くすることが臨まれており、クラッチ油圧paが最下限圧paminに至った後にシフトアクチュエータ61を駆動するのでは変速が遅くなってしまう。
しかしながら、クラッチアクチュエータ71によるクラッチ切断状態への制御を開始してから変速可能になるタイミングは、一定時間ではなく、現在の変速段やクラッチアクチュエータ71それぞれの部品ばらつきなどで変動してしまい、変速開始タイミングを適切かつ早いタイミングに設定することが難しかった。
そこで、本実施形態では、シフト開始判定部432が、変速制御開始信号SBを入力すると、油圧センサ222で検出されるクラッチ油圧(検出油圧とも言う)paに基づいて変速開始タイミングを判定する処理(変速開始タイミング判定処理)を行い、この判定結果に基づいて変速時シフト制御部421Bがシフトアクチュエータ61を駆動制御するようにしている。
この図に示すように、シフト開始判定部432は、変速要求があったか否か、つまり、変速制御開始信号SBを入力したか否かを判定する処理を行い(ステップS1)、変速要求がない場合、つまり、変速制御開始信号SBを入力しない場合(ステップS1:NO)、処理を終了する。
その後、所定の割り込み信号が到来したタイミングで、シフト開始判定部432は、上記ステップS1の処理を実行する。つまり、シフト開始判定部432は、上記ステップS1の処理を時間間隔を空けて繰り返し実行しており、ステップS1の判定結果が肯定とならない限り、油圧センサ222の検出油圧paの取得及び油圧判定を含む各種センサの結果検出及び判定処理を行っていない。このため、制御装置401の処理負担の軽減及び消費電力の低減を図ることができる。
次いで、シフト開始判定部432は、取得した変速段に応じた規定油圧pbを算出する(ステップS4)。
この規定油圧pbは、シフトドラム47Aの作動に伴って移動するシフタギヤ(メイン軸41上の3速駆動歯車m3及び4速駆動歯車m4、カウンタ軸42上の5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6)のそれぞれの係合凸部(ギヤダボ)を、クラッチトルクにより嵌合しているギヤから引き抜ける第1条件を満足する値である。
クラッチトルクTcdは、以下の式(1)により算出される。
Tcd=(pa×Ss−fr)×rc×μc×nc・・・式(1)
ここで、Ssはクラッチスレーブシリンダ68の面積、frはクラッチスプリング荷重、rcはクラッチ有効半径、μcはクラッチ摩擦係数、ncはクラッチ面数、paは、油圧クラッチの油圧(=油圧センサ222の検出油圧)である。クラッチトルクTcdは、検出油圧paに比例する値であり、本実施形態では、検出油圧pa以外は固定値として扱っている。なお、クラッチスプリング荷重frやクラッチ摩擦係数μcを変数としてもよい。
Fd=Tcd×Rg×μd/rd・・・式(2)
ここで、Rgはシフタギヤまでの減速レシオ、μdはシフタギヤ係合部の摩擦係数、rdはシフタギヤ係合部の有効半径である。このうち、変数は、シフタギヤまでの減速レシオRg、シフタギヤ係合部の摩擦係数μdである。
pa=(Fd×rd/(Rg×μd×rc×μc×nc)+fr)/Ss・・・式(3)
が得られる。
pb=(Fd×rd/(Rg×μd×rc×μc×nc)+fr)/Ss・・・式(4)
但し、Fd=Fm・・・式(5)
なお、(Rg、μd)以外は固定値であるため、6速の変速段毎の(Rg、μd)をメモリーに格納し、変速段毎に(Rg、μd)を読み出してシフタギヤ係合部引き抜き荷重Fdを算出する方法に代えて、変速段毎のシフタギヤ係合部引き抜き荷重Fdをメモリーに格納しておき、変速段毎にシフタギヤ係合部引き抜き荷重Fdを読み出すように構成してもよい。
その後、検出油圧paが規定油圧pbより低くなると(ステップS4:YES)、シフト開始判定部432は、シフト開始を指示する信号(以下、シフト開始信号という)SCを、変速時シフト制御部421Bに出力し(ステップS5)。変速時シフト制御部421Bによりシフトアクチュエータ61の作動を開始させて変速動作を行わせる。
図9に示すように、本実施形態の変速開始タイミングtsは、検出油圧paが規定油圧pbと略一致したタイミングとなる。このタイミングは、上記したように、シフタギヤの係合凸部をクラッチトルクにより嵌合しているギヤから引き抜ける最も早いタイミングであるため、確実に変速を行いつつ変速開始タイミングを早くすることができる。
例えば、この位置センサ231が検出するクランク回転位置を取得し、このクランク回転位置が規定位置(例えば、クラッチトルクが低く、変速可能な予め定めた位置)か否かを判定し、規定位置となった場合、或いは、規定位置を過ぎた場合にシフト開始信号SCを変速時シフト制御部421Bに出力し、変速動作を開始させるようにしてもよい。この不具合発生時に対応するバックアップ機能を具備することで、油圧センサ222の不具合発生時でも変速制御を継続して行うことができる。
この場合、規定油圧pbとして、変速装置46のシフタギヤをクラッチトルクにより嵌合しているギヤから引き抜けるシフタギヤ係合部引き抜き荷重Fmとなったときの油圧paの値としているので、確実に変速を行いつつ変速開始のタイミングを早くすることができる。
さらに、シフタギヤ係合部引き抜き荷重FMは、シフタギヤまでの減速レシオRgと、シフタギヤ係合部の摩擦係数μdとに基づいて算出されるので、シフタギヤ係合部引き抜き荷重FMを精度良く算出でき、より緻密な変速制御をすることが可能になる。
また、本構成では、シフトドラム47Aの作動に伴いシフタギヤを移動させ、その移動荷重がシフトアクチュエータ61のトルクに連動するシフトフォーク47B1,47C1を有するので、シフトフォーク47B1,47C1の移動荷重の制御が容易であり、シフトフォーク47B1,47C1を確実に作動させて緻密な変速制御をすることができる。
また、変速要求があった場合に、シフト開始判定部432が、油圧センサ222の油圧検出及び油圧判定を行うので、シフト開始判定部432は常時作動する必要がなく、消費電力を削減することができる。
さらに、本構成では、クラッチアクチュエータ71により作動されるクランク105の回転位置を検出する位置センサ(回転検出手段)231を有し、油圧センサ222のバックアップとして位置センサ231を用いてシフトアクチュエータ61の作動を開始させるバックアップ機能を具備するようにしたので、油圧センサ222の不具合発生時など、油圧センサ222を用いて変速制御できない事態が生じた場合でも、変速制御を継続して行うことができる。
例えば、第1条件を満足する油圧paの上限値を規定油圧pbとした場合に、シフタギヤの係合凸部を変速後の予定ギヤに入れたときの衝撃力が許容範囲外となるか否かを、実際の車両での実験或いはシミュレーションなどで検討し、衝撃力が許容範囲外となる場合は、衝撃力が許容範囲内となるように、規定油圧pbを許容範囲内にする補正処理を追加し、補正後の値を規定油圧pbとするようにすればよい。なお、この補正処理は、規定油圧pbを算出するシフト開始判定部432が行えばよい。
一方、第1条件を満足する油圧paの上限値を規定油圧pbとした場合に、上記衝撃力が許容範囲内であれば、その規定油圧pbを用いればよい。この場合、第1条件と第2条件とを満足しつつ変速開始タイミングを最も早くすることができる。
これによれば、第1条件と第2条件とを満足するので、上記各種効果に加えて、シフト時のフィーリング向上を図ることができる。
クラッチ制御モータ101が正回転すると、減速ギヤ列103を介して、ギヤ244が正回転し、ボールねじ143に螺合した上記ねじ軸145が上昇し、ピストン110を上方に押し退ける。これにより、油圧系統の圧力が上昇し、上述したように、多板クラッチ80が接とされる。クラッチ制御モータ101が逆回転すると、減速ギヤ列103を介して、ギヤ244が逆回転し、ボールねじ143に螺合した上記ねじ軸145が下降し、ばね212のばね力で、ピストン110が押し下げられる。これにより、油圧系統の圧力が低下し、多板クラッチ80が断とされる。
このボールねじ式のクラッチアクチュエータ71の場合でも、図11に示すように、油圧クラッチ(クラッチ機構44)の油圧paを検出する油圧センサ222を備えており、この油圧センサ222の検出油圧paに基づいて上記と同じ変速制御が可能である。
要は、常時開放型クラッチや常時接続型クラッチのいずれの場合でも、油圧クラッチを切断する場合に、油圧センサ222で検出した油圧paが規定油圧pbになったか否か(規定油圧pbの値と一致、或いは、該値を跨いだか否か)を判定し、検出油圧paが規定油圧pbになったと判定されると、シフトアクチュエータ61の作動を開始させるようにすればよい。
また、上記実施の形態では、油圧センサ222が油圧制御装置73に配置されているが、これに限らず、クラッチアクチュエータ71の他の部分やクラッチスレーブシリンダ(油圧シリンダ)68などに配置してもよい。
41 メイン軸(被動回転部材)
44 クラッチ機構(油圧クラッチ)
46 変速装置(変速機)
47A シフトドラム
61 シフトアクチュエータ
68 クラッチスレーブシリンダ(油圧シリンダ)
71 クラッチアクチュエータ
100 自動二輪車
105 クランク
222 油圧センサ(油圧検出手段)
231 位置センサ(回転検出手段)
400 自動変速機(常時噛合式自動変速機)
401 制御装置
411 クラッチ制御部(クラッチ制御手段)
421 シフト制御部(シフト制御手段)
432 シフト開始判定部(判定手段)
pa 検出油圧(クラッチ油圧)
pb 規定油圧
P パワーユニット
E エンジン
Claims (8)
- 駆動回転部材(2)及び被動回転部材(41)間に設けられる油圧クラッチ(44)を作動させるクラッチアクチュエータ(71)と、常時噛合式の変速機(46)の変速段を切り換えるシフトドラム(47A)を作動させるシフトアクチュエータ(61)とを制御し、油圧クラッチ(44)を選択作動させて変速を行う常時噛合式自動変速機の制御装置において、
前記油圧クラッチ(44)は、当該油圧クラッチ(44)の油圧が高から低になると切断状態に切り替わる常時開放型クラッチであり、
前記油圧クラッチ(44)の油圧を検出する油圧検出手段(222)と、
前記油圧検出手段(222)で検出した油圧が所定油圧より低いか否かを判定する判定手段(432)と、
前記所定油圧より低いと判定されると、前記シフトアクチュエータ(61)の作動を開始させるシフト制御手段(421)とを備えることを特徴とする常時噛合式自動変速機の制御装置。 - 前記変速段に応じて前記所定油圧の値を制御することを特徴とする請求項1に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
- 前記変速機(46)は、前記シフトドラム(47A)の作動に伴って移動するシフタギヤ(m3、m4、n5、n6)の係合部を予定ギヤ(m5、m6、n4、n3)に嵌合させて変速段を確立する構成を有し、
前記変速段に応じてシフタギヤ係合部引き抜き荷重を算出し、算出結果に応じて前記所定油圧の値を制御することを特徴とする請求項2に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。 - 前記シフタギヤ係合部引き抜き荷重は、前記シフタギヤ(m3、m4、n5、n6)までの減速レシオと、前記シフタギヤの係合部の摩擦係数とに基づいて算出されることを特徴とする請求項3に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
- 前記シフトドラム(47A)の作動に伴い前記シフタギヤ(m3、m4、n5、n6)を移動させ、その移動荷重がシフトアクチュエータ(61)のトルクに連動するシフトフォーク(47B1、47C1)を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
- 前記油圧検出手段(222)で検出した油圧に基づいてシフト制御とクラッチ制御とを行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
- 前記判定手段(432)は、変速要求があった場合に、前記油圧検出手段(222)の油圧検出及び油圧判定を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
- 前記クラッチアクチュエータ(71)により作動されるクランク(105)の回転位置を検出する回転検出手段(231)を有し、前記油圧検出手段(222)のバックアップとして前記回転検出手段(231)を用いて前記シフトアクチュエータ(61)を制御するバックアップ機能を具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の常時噛合式自動変速機の制御装置。
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