本発明は、微小な可動部を有する例えばマイクロミラー素子、角速度センサ、加速度センサなどのマイクロ可動素子を複数含むマイクロ可動素子アレイ、および、通信機器に関する。
近年、様々な技術分野において、MEMS(micro electro mechanical systems)技術により形成される微小構造を有する素子の応用化が図られている。そのような素子には、例えば、マイクロミラー素子や、角速度センサ、加速度センサなど、微小な可動部を有するマイクロ可動素子が含まれる。マイクロミラー素子は、例えば光通信技術や光ディスク技術の分野において、光反射機能を担う素子として利用される。角速度センサおよび加速度センサは、例えば、ビデオカメラやカメラ付き携帯電話の手振れ防止機能、カーナビゲーションシステム、エアバッグ開放タイミングシステム、車やロボット等の姿勢制御システムの用途で、利用される。このようなマイクロ可動素子については、例えば下記の特許文献1〜4に記載されている。
先行技術文献
特開2003−19700号公報
特開2004−341364号公報
特開2005−305582号公報
特開2006−72252号公報
図39から図41は、従来のマイクロ可動素子の一例たるマイクロ可動素子90を表す。図39は、マイクロ可動素子90の平面図である。図40および図41は、それぞれ、図39の線XL−XLおよび線XLI−XLIに沿った断面図である。
マイクロ可動素子90は、可動主部91と、これを囲むフレーム92と、これを囲むフレーム93と、可動主部91およびフレーム92を連結する一対のトーションバー94と、フレーム92,93を連結する一対のトーションバー95とを備える。一対のトーションバー94は、可動主部91の回転変位の軸心B1を規定し、一対のトーションバー95は、フレーム92およびこれに伴う可動主部91の回転変位の軸心B2を規定し、軸心B1,B2は直交する。すなわち、マイクロ可動素子90は、いわゆる二軸型の揺動素子である。
このようなマイクロ可動素子90が例えばマイクロミラー素子として構成される場合、可動主部91上にミラー面91aが設けられ、可動主部91が軸心B1まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定の第1アクチュエータ(図示略)が設けられる。また、フレーム92およびこれに伴う可動主部91が軸心B2まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定の第2アクチュエータ(図示略)も設けられる。そして、両アクチュエータが適宜稼動することによって、可動主部91が各軸心B1,B2まわりに回転変位ないし揺動駆動される。このような可動主部91の揺動駆動により、可動主部91上に設けられたミラー面91aにて反射される光信号の反射方向が適宜切り換えられる。
一方、マイクロ可動素子90が角速度センサとして構成される場合、例えば、可動主部91の軸心B1まわりの回転変位量に応じて静電容量が変化する、相対する一対の検出用キャパシタ電極(図示略)のそれぞれが可動主部91およびフレーム92に設けられる。また、フレーム92およびこれに伴う可動主部91が軸心B2まわりに回転変位するための駆動力を発生させる所定のアクチュエータ(図示略)も設けられる。そして、アクチュエータが稼動してフレーム92およびこれに伴う可動主部91が所定の振動数ないし周期で軸心B2まわりに揺動動作される。この振動状態において、可動主部91に所定の角速度が作用すると、可動主部91が軸心B1まわりに回転変位し、検出用キャパシタ電極対間の静電容量が変化する。この静電容量変化に基づいて、可動主部91の回転変位量が検出され、その検出結果に基づき、マイクロ可動素子90ないし可動主部91に作用する角速度が導出される。
従来の技術では、複数の上述のようなマイクロ可動素子90を一列に配し且つフレーム93を共通化して一体化させることによってマイクロ可動素子アレイを構成するとき、素子配列方向において充分に高い可動主部91の占有率を実現することが困難な場合がある。その理由は次のとおりである。
上記マイクロ可動素子アレイないしマイクロ可動素子90の各部は、MEMS技術によって材料基板に対して作り込まれるものであるところ、一定の厚さの材料基板を貫通する空隙を形成する際にその空隙につき実現できる最小幅には、加工技術上の限界がある。すなわち、上記マイクロ可動素子アレイにおいて隣り合うマイクロ可動素子90の離隔距離については、加工限界を超えて小さくすることができない。そのため、隣り合うマイクロ可動素子90の可動主部91間の離隔距離については、加工限界を超えて小さくすることができない。
また、上記マイクロ可動素子アレイの各マイクロ可動素子90は可動部を有し、当該可動部は電気的に駆動されるものである。そのため、上記マイクロ可動素子アレイでは、隣り合うマイクロ可動素子90の間において、機械的干渉や電気的干渉をするのを回避するのに必要な離隔距離を確保する必要がある。
以上のような加工限界や、機械的干渉回避の必要性、電気的干渉回避の必要性ため、従来の技術では、素子配列方向において充分に高い可動主部91の占有率を実現することが困難な場合があるのである。
素子配列方向において充分に高い可動主部91の占有率を実現することができないと、複数のマイクロ可動素子90を備える上記マイクロ可動素子アレイにおいて、充分な高機能化を図ることができない場合がある。例えば、各マイクロ可動素子90がマイクロミラー素子であって、上記マイクロ可動素子アレイが波長選択型光スイッチング装置に組み込まれるマイクロミラー素子アレイである場合を想定する。この場合、素子配列方向における可動主部91の占有率が低いほど、上記マイクロ可動素子アレイが全体として受けて各ミラー面91aにて反射する光信号について、損失が増大することが知られている。例えば、各マイクロ可動素子90が角速度センサや加速度センサであって、上記マイクロ可動素子アレイがセンシングデバイスである場合を想定する。この場合、素子配列方向における可動主部91の占有率が低いほど、検出信号がノイズの影響を受けやすく、センサ感度が低下することが知られている。複数のマイクロ可動素子90が隣り合って配置されることで、各素子にて発生するノイズが、隣り合う素子間でキャンセルし合う効果が期待されるが、素子配列方向の可動主部91の占有率が低いほど当該ノイズキャンセル効果ないしノイズ低減効果が減弱する。
発明の概要
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであって、複数の可動主部の配列方向において大きな可動主部占有率を実現するのに適したマイクロ可動素子アレイ、および、そのようなマイクロ可動素子アレイを備える通信機器を提供することを、目的とする。
本発明の一側面によるとマイクロ可動素子アレイが提供される。このマイクロ可動素子アレイは、第1フレームと、第1可動主部を有して前記第1フレームに支持された複数の第1可動部を含む第1可動部列と、第2フレームと、第2可動主部を有して前記第2フレームに支持された複数の第2可動部を含む第2可動部列と、を備え、前記第1フレームおよび前記第2フレームは、前記第1可動部列および前記第2可動部列が対向配置されるように積層配置され、前記第1可動部列では、前記複数の第1可動部は、第1可動主部およびギャップが交互に位置して複数の第1可動主部が一方向に配列するように、位置し、前記第2可動部列では、前記複数の第2可動部は、各第2可動主部が前記第1可動部列の一の前記ギャップに対向して複数の第2可動主部が前記一方向に配列するように、位置しており、ベース部と、前記第1フレームおよび前記第2フレームの間に介在する複数の第1スペーサと、前記第2フレームおよび前記ベース部の間に介在する複数の第2スペーサと、を更に備え、前記第1フレームの一部は、少なくとも一つの前記第1スペーサ、前記第2フレームの一部、および少なくとも一つの前記第2スペーサを介して前記ベース部と電気的に接続されており、前記第2フレームの他の一部は、少なくとも一つの前記第2スペーサを介して前記ベース部と電気的に接続されている。
図1は、第1の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイの分解一部省略平面図である。
図2は、第1の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイの一部省略断面図である。
図3は、第1の実施形態における第1アレイの一部省略平面図である。
図4は、第1の実施形態における第2アレイの一部省略平面図である。
図5は、第1の実施形態における第1アレイおよび第2アレイに含まれるマイクロ可動素子の平面図である。
図6は、図5に示すマイクロ可動素子の一部省略平面図である。
図7は、図5の線VII−VIIに沿った拡大断面図である。
図8は、図5の線VIII−VIIIに沿った拡大断面図である。
図9は、図5の線IX−IXに沿った拡大断面図である。
図10は、図5の線X−Xに沿った拡大断面図である。
図11は、図5の線XI−XIに沿った拡大断面図である。
図12は、図5の線XII−XIIに沿った拡大断面図である。
図13は、図5の線XIII−XIIIに沿った拡大断面図である。
図14は、図5の線XIV−XIVに沿った拡大断面図である。
図15は、駆動時における図5の線VII−VIIに沿った拡大断面図である。
図16は、マイクロ可動素子の製造方法における一部の工程を表す。
図17は、図16の後に続く工程を表す。
図18は、図17の後に続く工程を表す。
図19は、マスクパターンの平面図である。
図20は、他のマスクパターンの平面図である。
図21は、第2の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイの分解一部省略平面図である。
図22は、第2の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイの一部省略断面図である。
図23は、図21に示す第1アレイの平面図である。
図24は、図21に示す第2アレイの平面図である。
図25は、第2の実施形態における第1アレイに含まれるマイクロ可動素子の平面図である。
図26は、図25に示すマイクロ可動素子の一部省略平面図である。
図27は、図25の線XXVII−XXVIIに沿った拡大断面図である。
図28は、図25の線XXVIII−XXVIIIに沿った拡大断面図である。
図29は、図25の線XXIX−XXIXに沿った拡大断面図である。
図30は、図25の線XXX−XXXに沿った拡大断面図である。
図31は、図25の線XXXI−XXXIに沿った拡大断面図である。
図32は、図25の線XXXII−XXXIIに沿った拡大断面図である。
図33は、図25の線XXXIII−XXXIIIに沿った拡大断面図である。
図34は、図25の線XXXIV−XXXIVに沿った拡大断面図である。
図35は、第2の実施形態における第2アレイに含まれるマイクロ可動素子の平面図である。
図36は、図35の線XXXVI−XXXVIに沿った拡大断面図である。
図37は、第3の実施形態に係る光スイッチング装置の概略構成を表す。
図38は、第4の実施形態に係る光スイッチング装置の概略構成を表す。
図39は、従来のマイクロ可動素子の平面図である。
図40は、図39の線XL−XLに沿った断面図である。
図41は、図39の線XLI−XLIに沿った断面図である。
発明を実施するための形態
図1および図2は、第1の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイX1を表す。図1は、マイクロ可動素子アレイX1の分解一部省略平面図である。図2は、マイクロ可動素子アレイX1の一部省略断面図である。
マイクロ可動素子アレイX1は、第1アレイ1と、第2アレイ2と、ベース部3と、複数のスペーサ4と、複数のスペーサ5とを含み、本実施形態においてはマイクロミラー素子アレイである。第1アレイ1および第2アレイ2の間に複数のスペーサ4が介在し、第2アレイ2およびベース部3の間に複数のスペーサ5が介在する。ベース部3は配線基板であり(図1および図2において配線は省略)、第1アレイ1の一部は、一部のスペーサ4、第2アレイ2の一部、および一部のスペーサ5を介して、ベース部3の配線の一部と電気的に接続されている。第2アレイ2の一部は、一部のスペーサ5を介してベース部3の配線の一部と電気的に接続されている。これら電気的接続のためのスペーサ4,5は、導電材料よりなり、例えば、単一の又は積層された金バンプである。
図3は、第1アレイ1の一部省略平面図である。図4は、第2アレイ2の一部省略平面図である。第1アレイ1および第2アレイ2は、それぞれ、複数のマイクロ可動素子Y1を含む(図3および図4では、一部のマイクロ可動素子Y1を省略する)。
図5から図14は、第1アレイ1および第2アレイ2に含まれるマイクロ可動素子Y1を表す。図5は、マイクロ可動素子Y1の平面図である。図6は、マイクロ可動素子Y1の一部省略平面図である。図7から図14は、それぞれ、図5の線VII−VII、線VIII−VIII、線IX−IX、線X−X、線XI−XI、線XII−XII、線XIII−XIII、および線XIV−XIVに沿った拡大断面図である。
マイクロ可動素子Y1は、内可動部10と、外可動部たるフレーム20と、固定部たるフレーム30と、一対の連結部40と、一対の連結部50A,50Bと、電極部60,70,80とを備え、本実施形態においてはマイクロミラー素子である。また、マイクロ可動素子Y1は、MEMS技術により、いわゆるSOI(silicon on insulator)ウエハである材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ可動素子Y1における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図3から図5においては、第1シリコン層に由来する部位について斜線ハッチングを付して表す。また、図6に示す構造は、マイクロ可動素子Y1において第2シリコン層に由来するものである。
内可動部10は、ランド部11と、電極部12と、梁部13と、シールド部14とを有する。
ランド部11は、第1シリコン層に由来する部位であり、その表面には、光反射機能を有するミラー面11’が設けられている。このようなランド部11およびミラー面11’は可動主部である。この可動主部ないしランド部11は、図8に示すように、厚さ方向Hにおいて部分的に薄肉であってフレーム20に対向する対向部11aを有する。対向部11aは、ランド部11の縁端において、図5に示す矢印D2方向に延びる。また、ランド部11について図5および図8に示す長さL1は、例えば20〜300μmである。
電極部12は、第1シリコン層に由来する部位であり、一対のアーム12A,12B、複数の電極歯12a、および複数の電極歯12bを有する。電極歯12aは、図5および図10に示すようにアーム12Aからアーム12B側へ延出し、且つ、図5に示すようにアーム12Aの延び方向に離隔して並列する。電極歯12bは、アーム12Bからアーム12A側へ延出し、且つ、アーム12Bの延び方向に離隔して並列する。このように、電極部12は櫛歯電極構造を有する。また、電極部12は、マイクロ可動素子Y1の駆動時に所定の基準電位(例えばグラウンド電位)が付与されるための部位である。
梁部13は、第1シリコン層に由来する部位であり、ランド部11および電極部12を連結する。
シールド部14は、図6に示すように第2シリコン層に由来する部位であり、図9に示すように絶縁層15を介して電極部12に接合している。シールド部14および電極部12は、絶縁層15を貫通する導電ビア16を介して電気的に接続されている。
フレーム20は、例えば図7および図11に示すように、第1シリコン層に由来する第1層部21と、第2シリコン層に由来する第2層部22と、当該第1および第2層部21,22の間の絶縁層23とからなる積層構造を有する。第1層部21は、図5に示すように、相互に離隔した部分21a,21b,21cを有する。第2層部22は、図6に示すように、相互に離隔した部分22a,22bを有する。第1層部21の部分21aは、図5に示すように内可動部10を部分的に囲む形状を有する。第2層部22の部分22aは、内可動部10を部分的に囲む形状を有する。部分21a,22aは、図11に示すように、絶縁層23を貫通する導電ビア24を介して電気的に接続されている。部分21b,22bは、絶縁層23を貫通する導電ビア25を介して電気的に接続されている。部分21c,22aは、図13に示すように、絶縁層23を貫通する導電ビア26を介して電気的に接続されている。
また、フレーム20は、内可動部10のランド部11ないし可動主部に沿って図5および図6に示す矢印D2方向に延びる一対の延び部20Aを含む。
一対の延び部20Aは、図8に示すように厚さ方向Hにおいて空隙を介してランド部11ないし可動主部の対向部11aに対向する。厚さ方向Hにおけるランド部11と延び部20Aの間のギャップG1は、上述の材料基板の絶縁層の厚さより大きく、例えば0.5〜20μmである。また、一対の延び部20Aの外端間の図8に示す長さL2は、ランド部11ないし可動主部についての上述の長さL1以下である。
フレーム30は、図12に示すように、第1シリコン層に由来する第1層部31と、第2シリコン層に由来する第2層部32と、当該第1および第2層部31,32の間の絶縁層33とからなる積層構造を有する。図5および図12に示すように、第1層部31は、相互に離隔する部分31a,31bを含む。部分31aは、相互に離隔する部分を含む(図示略)。図6および図12に示すように、第2層部32は、相互に離隔する部分32a,32b,32cを含む。部分32aは、相互に離隔する部分を含む(図示略)。部分31b,32bは、図12に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア34を介して電気的に接続されている。部分31aの一部および部分32cは、図14に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア35を介して電気的に接続されている。
一対の連結部40は、それぞれ、図5に示すように二本のトーションバー41からなる。各連結部40は、第1シリコン層に由来する部位であり、内可動部10の梁部13とフレーム20の第1層部21の部分21aとに接続して、内可動部10およびフレーム20を連結する(梁部13と部分21aは連結部40を介して電気的に接続されている)。各連結部40を構成する二本のトーションバー41の間隔は、フレーム20の側から内可動部10の側にかけて漸増する。また、トーションバー41は、図7に示すように、厚さ方向Hにおいて、内可動部10よりも薄肉であり、且つ、フレーム20の第1層部21よりも薄肉である。このような一対の連結部40は、内可動部10ないし可動主部(ランド部11,ミラー面11’)の回転変位の軸心A1を規定する。上述の電極歯12a,12bの延出方向は、軸心A1の延び方向と平行である。フレーム20の側から内可動部10の側にかけて間隔が漸増する二本のトーションバー41を含む各連結部40は、内可動部10が動作するに際して不要な変位成分が発生するのを抑制するのに好適である。
一対の連結部50A,50Bは、それぞれ、図5に示すように二本のトーションバー51からなる。各連結部50A,50Bは、第1シリコン層に由来する部位であり、フレーム20およびフレーム30を連結する。具体的には、図5に示すように、連結部50Aは、フレーム20の第1層部21の部分21bと、フレーム30の第1層部31の部分31bとに接続して、これらを連結する(部分21b,31bは連結部50Aを介して電気的に接続されている)。連結部50Bは、フレーム20の第1層部21の部分21cと、フレーム30の第1層部31の部分31aの一部とに接続して、これらを連結する(部分21cと部分31aの当該一部とは連結部50Bを介して電気的に接続されている)。各連結部50A,50Bを構成する二本のトーションバー51の間隔は、フレーム30の側からフレーム20の側にかけて漸増する。また、トーションバー51は、厚さ方向Hにおいて、トーションバー41と同様にフレーム20の第1層部21よりも薄肉であり、且つ、フレーム30の第1層部31よりも薄肉である。このような一対の連結部50A,50Bは、フレーム20およびこれに伴う内可動部10の回転変位の軸心A2を規定する。本実施形態では、軸心A2は軸心A1と直交する。フレーム30の側からフレーム20の側にかけて間隔が漸増する二本のトーションバー51を含む各連結部50A,50Bは、フレーム20およびこれに伴う内可動部10が動作するに際して不要な変位成分が発生するのを抑制するのに好適である。
電極部60は、第2シリコン層に由来する部位であり、図6によく表れているように、アーム61、複数の電極歯62a、および複数の電極歯62bを有する。アーム61は、フレーム20の第2層部22の部分22bから延出する。複数の電極歯62aは、電極部12のアーム12A側へアーム61から延出し、且つ、アーム61の延び方向に離隔して並列する。複数の電極歯62bは、電極部12のアーム12B側へアーム61から延出し、且つ、アーム61の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部60は櫛歯電極構造を有する。
電極部70は、第1シリコン層に由来する部位であり、図5に示すように複数の電極歯71からなる。複数の電極歯71は、図5および図14に示すようにフレーム20の第1層部21の部分21cから電極部80側へ延出し、且つ、軸心A2の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部70は櫛歯電極構造を有する。
電極部80は、第2シリコン層に由来する部位であり、図6に示すようにアーム81および複数の電極歯82からなる。アーム81は、軸心A2の延び方向に延びる。複数の電極歯82は、アーム81から電極部70側へ延出し、且つ、アーム81の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部80は櫛歯電極構造を有する。
マイクロ可動素子Y1において、一対の電極部12,60は、軸心A1まわりの内可動部10の回転変位に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。また、一対の電極部70,80は、フレーム20およびこれに伴う内可動部10の軸心A2まわりの回転変位に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。
マイクロ可動素子Y1の駆動時には、内可動部10の電極部12および電極部70に基準電位が付与される。電極部12に対する基準電位の付与は、フレーム30の第1層部31の部分31aの一部、連結部50B(トーションバー51)、フレーム20の第1層部21の部分21c、導電ビア26(図13に示す)、フレーム20の第2層部22の部分22a、導電ビア24(図11に示す)、フレーム20の第1層部21の部分21a、連結部40(トーションバー41)、および内可動部10の梁部13を介して、実現することができる。電極部70に対する基準電位の付与は、フレーム30の第1層部31の部分31aの一部、連結部50B(トーションバー51)、およびフレーム20の第1層部21の部分21cを介して、実現することができる。フレーム30の第1層部31の部分31aにおいて基準電位が付与される部位(基準電位付与部)は、部分31aの他の部位から離隔して電気的に分離されている。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
そして、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60,80のそれぞれに対して必要に応じて付与する。電極部60への駆動電位の付与により、電極部12,60間に静電引力を発生させて図15に示すように内可動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができる。電極部80への駆動電位の付与により、電極部70,80間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う内可動部10を軸心A2まわりに回転変位させることができる。マイクロ可動素子Y1は、いわゆる二軸型の揺動素子である。電極部60に対する駆動電位の付与は、フレーム30の第2層部32の部分32b、導電ビア34(図12に示す)、フレーム30の第1層部31の部分31b、連結部50A(トーションバー51)、フレーム20の第1層部21の部分21b、導電ビア25(図11に示す)、およびフレーム20の第2層部22の部分22bを介して、実現することができる。このような二軸型の駆動により、マイクロ可動素子Y1のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
図1から図3に示すように、第1アレイ1は、複数のマイクロ可動素子Y1を含む。第1アレイ1において、複数のマイクロ可動素子Y1は、全ての軸心A2(図1から図3では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。第1アレイ1において、各マイクロ可動素子Y1のフレーム30は一体化されて枠体をなし、全マイクロ可動素子Y1の第1可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)を囲む。第1アレイ1における全マイクロ可動素子Y1の複数の第1可動部が第1可動部列をなす。第1可動部列では、複数の第1可動部は、ミラー面11’を伴うランド部11(可動主部)とギャップG2とが交互に位置し且つ当該可動主部が第1可動部の配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。本実施形態では、第1可動部列にて、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の長さL1とギャップG2とは同じに設定されている。そのため、本実施形態では、第1アレイ1のフレーム30内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%程度となる。第1アレイ1の当該占有率については、異なる値を設定してもよい。また、第1アレイ1においては、フレーム30における第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、全マイクロ可動素子Y1にわたって連続している。第1アレイ1の全マイクロ可動素子Y1の内可動部10の電極部12及びシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21c及び第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は電気的に接続されている。
図1、図2および図4に示すように、第2アレイ2は、複数のマイクロ可動素子Y1を含む。第2アレイ2において、複数のマイクロ可動素子Y1は、全ての軸心A2(図4では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。第2アレイ2において、各マイクロ可動素子Y1のフレーム30は一体化されて枠体をなし、全マイクロ可動素子Y1の第2可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)を囲む。第2アレイ2における全マイクロ可動素子Y1の複数の第2可動部が第2可動部列をなす。第2可動部列では、複数の第2可動部は、ミラー面11’を伴う各ランド部11(可動主部)が第1可動部列の一のギャップG2に対向し且つ複数の可動主部がギャップG3を介して配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。また、第2可動部列では、可動主部とギャップG3とが交互に位置する。第2可動部列にて、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の長さL1とギャップG3とを同じに設定した場合、第2アレイ2のフレーム30内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%程度となる。第2アレイ2の当該占有率については、異なる値を設定してもよい。配列方向D1において第2アレイ2の各ランド部11(ミラー面11’)の両端部が、第1アレイ1のランド部11(ミラー面11’)と重なり合うように第2アレイ2のランド部11(ミラー面11’)の長さL1を設定してもよい。この場合、第2アレイ2にてG3<L1であり、第2アレイ2のフレーム30内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%より大きい。また、第2アレイ2においては、フレーム30における第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、全マイクロ可動素子Y1にわたって連続している。第2アレイ2の全マイクロ可動素子Y1の内可動部10の電極部12及びシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21c及び第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は電気的に接続されている。
ベース部3は、基準電位配線および複数対の駆動配線(第1駆動配線,第2駆動配線)を有する。基準電位配線は、第1アレイ1および第2アレイ2の各フレーム30における第1層部31の部分31aの上述の基準電位付与部と電気的に接続している。第1駆動配線は、第1アレイ1および第2アレイ2における各マイクロ可動素子Y1の上述の電極部60と電気的に接続している。第2駆動配線は、第1アレイ1および第2アレイ2における各マイクロ可動素子Y1の上述の電極部80と電気的に接続している。具体的には、次のとおりである。
上述の第1アレイ1では、フレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(基準電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの基準電位付与部には、導電材料よりなる少なくとも一つの上述のスペーサ4が接合され、当該スペーサ4は、第2アレイ2におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部に接合されている。したがって、第1アレイ1におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部と、第2アレイ2におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部とは、電気的に接続している。これと共に、第2アレイ2では、フレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(基準電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの基準電位付与部には、導電材料よりなる少なくとも一つの上述のスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の配線の一部(基準電位配線)に接合されている。したがって、第1アレイ1および第2アレイ2の各フレーム30における第1層部31の部分31aの基準電位付与部と、ベース部3の基準電位配線とは、電気的に接続している。
第1アレイ1の各マイクロ可動素子Y1におけるフレーム30の第2層部32の部分32b(上述のように、同一マイクロ可動素子Y1内の電極部60と電気的に接続している)には、導電材料よりなるスペーサ4が接合されている。当該スペーサ4は、第2アレイ2におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの一部(第1駆動電位付与部)に接合されている。第2アレイ2では、フレーム30の第1層部31の部分31aの各第1駆動電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(第1駆動電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの各第1駆動電位付与部には、導電材料よりなるスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の一の第1駆動配線に接合されている。したがって、第1アレイ1の各マイクロ可動素子Y1における部分32bしたがって電極部60は、ベース部3の一の第1駆動配線と電気的に接続している。
第1アレイ1の各マイクロ可動素子Y1における電極部80には、導電材料よりなるスペーサ4が接合されている。当該スペーサ4は、第2アレイ2におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの一部(第2駆動電位付与部)に接合されている。第2アレイ2では、フレーム30の第1層部31の部分31aの各第2駆動電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(第2駆動電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの各第2駆動電位付与部には、導電材料よりなるスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の一の第2駆動配線に接合されている。したがって、第1アレイ1の各マイクロ可動素子Y1における電極部80は、ベース部3の一の第2駆動配線と電気的に接続している。
第2アレイ2の各マイクロ可動素子Y1におけるフレーム30の第2層部32の部分32b(上述のように、同一マイクロ可動素子Y1内の電極部60と電気的に接続している)には、導電材料よりなるスペーサ5が接合されている。当該スペーサ5は、ベース部3の一の第1駆動配線に接合されている。したがって、第2アレイ2の各マイクロ可動素子Y1における部分32bしたがって電極部60は、ベース部3の一の第1駆動配線と電気的に接続している。
第2アレイ2の各マイクロ可動素子Y1における電極部80には、導電材料よりなるスペーサ5が接合されている。当該スペーサ5は、ベース部3の一の第2駆動配線に接合されている。したがって、第2アレイ2の各マイクロ可動素子Y1における電極部80は、ベース部3の一の第2駆動配線と電気的に接続している。
マイクロ可動素子アレイX1の各マイクロ可動素子Y1における基準電位付与部(電極部12,70を含む)および電極部60,80と、ベース部3の基準電位配線および複数対の駆動配線との間には、具体的には以上のような電気的接続関係が形成されている。
マイクロ可動素子アレイX1の駆動時には、全マイクロ可動素子Y1における内可動部10の電極部12と電極部70に対して共通的に基準電位が付与された状態で、選択されたマイクロ可動素子Y1の電極部60,80のそれぞれに対して駆動電位が付与される。これにより、各マイクロ可動素子Y1の内可動部10およびフレーム20が個別に揺動駆動され、各マイクロ可動素子Y1の内可動部10のランド部11上のミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
以上の構成を有するマイクロ可動素子アレイX1では、第1アレイ1ないしそのフレーム30と、第2アレイ2ないしそのフレーム30とは、スペーサ4を介して積層配置されている。図3に示すように、第1アレイ1のフレーム30には、複数のマイクロ可動素子Y1の複数の第1可動部(内可動部10とフレーム20を含む)が支持されて、上述のように当該複数の第1可動部が第1可動部列をなす。第1可動部列では、上述のように、複数の第1可動部は、ミラー面11’を伴うランド部11(可動主部)とギャップG2とが交互に位置し且つ可動主部が配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。
一方、図4に示すように、第2アレイ2のフレーム30には、複数のマイクロ可動素子Y1の複数の第2可動部(内可動部10とフレーム20を含む)が支持されて、上述のように当該複数の第2可動部が第2可動部列をなす。第2可動部列では、上述のように、複数の第2可動部は、ミラー面11’を伴う各ランド部11(可動主部)が第1可動部列の一のギャップG2に対向し且つ複数の可動主部がギャップG3を介して配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。
マイクロ可動素子アレイX1では、配列方向D1において隣り合う二つの可動部の一方は第1アレイ1側にあり、他方は第2アレイ2側にあり、当該隣り合う可動部は、図2に示すように、第1アレイ1および第2アレイ2の積層方向に位置ずれしている。そして、配列方向D1において隣り合う二つの可動主部(第1可動主部,第2可動主部)も、第1アレイ1および第2アレイ2の積層方向に位置ずれしている。このようなマイクロ可動素子アレイX1では、配列方向D1において隣り合う二つの可動部の機械的干渉や電気的干渉を回避しつつ、当該二つの可動部の可動主部(第1および第2可動主部)について、加工限界に関わらず近接して配置することが可能である。したがって、マイクロ可動素子アレイX1は、素子ないし可動部の配列方向D1において高い可動主部(本実施形態では、ミラー面11’を伴うランド部11)の占有率を実現することができる。配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率が高いほど、マイクロ可動素子アレイX1が全体として受けて各ミラー面11’にて反射する光信号について、損失を低減することができる。マイクロ可動素子アレイX1では、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率について、99%以上であって実質的に100%を実現することが可能である。波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)通信システムにおける波長選択スイッチとしてマイクロ可動素子アレイX1を使用する場合を想定する。この場合、マイクロ可動素子アレイX1においては、反射対象信号として各ミラー面11’に割り当てられる光信号について、間断なく波長帯域ないし周波数帯域を設定して大きな波長帯域ないし周波数帯域を設定することが可能である。
一般に、光反射面の縁端部にて反射した光は散乱することがある。そして、光スイッチングデバイスにおいては、当該散乱光は、ノイズとなり、通信信号の質に影響を与え得る。しかしながら、マイクロ可動素子アレイX1の第2アレイ2における各ミラー面11’の縁端部にて反射して生ずる散乱光の多くは、第1アレイ1における可動部(ランド部11およびフレーム20を含む)にて遮蔽される。そのため、マイクロ可動素子アレイX1を例えばWDM通信システムにおける波長選択スイッチとして使用する場合、前述のような散乱光に起因する通信信号への影響を抑制することが可能である。
マイクロ可動素子アレイX1の各マイクロ可動素子Y1では、内可動部10の電極部12と、シールド部14と、フレーム20の第2層部22の部分22aと、フレーム30の第2層部32の部分32cとは、電気的に接続されている。したがって、駆動時には、電極部12と共にシールド部14および部分22a,32cにも基準電位(例えばグラウンド電位)が付与される。そのため、基準電位よりも高い駆動電位に起因して、駆動時に電極部60から例えば内可動部10のランド部11側へ発する電界は、シールド部14によって吸収されやすい(即ち、当該電界は、シールド部14を越えて例えばランド部11に至りにくい)。これと共に、駆動時に電極部60から発する電界は、部分22aによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、フレーム20の第2層部22の部分22a側を越えて素子外に漏出しにくい)。これと共に、基準電位よりも高い駆動電位に起因して、駆動時に電極部80から電極部70とは反対の側に発する電界は、部分32cによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、部分32cを越えて素子外に漏出しにくい)。これら電界吸収効果は、マイクロ可動素子Y1における素子外への電界漏れを防止または抑制する。このような素子外への電界漏れの防止または抑制により、各マイクロ可動素子Y1における駆動機構(電極部12,60,70,80)からの漏れ電界が、隣接する他のマイクロ可動素子Y1の駆動特性に不当な影響を与えることを、回避することができる。したがって、上述の電界吸収効果は、マイクロ可動素子Y1の配列方向における高密度化、ひいては、配列方向D1における可動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有率の向上に資する。
マイクロ可動素子アレイX1の上述の各マイクロ可動素子Y1は、角速度センサや加速度センサなどのセンシングデバイスとすることができる。センシングデバイスとしてのマイクロ可動素子Y1においては、内可動部10のランド部11上のミラー面11’は必ずしも設ける必要はない。
角速度センサとされたマイクロ可動素子Y1の駆動時には、例えば、可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)は、一定の振動数ないし周期で軸心A2まわりに揺動動作される。この揺動動作は、電極部70,80間に対して一定の周期で電圧印加を行うことによって実現される。本実施形態では、例えば、電極部70をグラウンド接続したうえで、電極部80への駆動電位の付与を一定の周期で行う。
例えばこのようにして可動部を揺動動作ないし振動させている状態において、マイクロ可動素子Y1ないし内可動部10に所定の角速度が作用すると、内可動部10が軸心A1まわりに一定量回転変位して、電極部12,60の相対的配置が変化して当該電極部12,60間の静電容量が変化する。これら静電容量変化に基づいて、内可動部10の回転変位量を検出することができる。その検出結果に基づき、マイクロ可動素子Y1ないし内可動部10に作用する角速度を導出することが可能である。
加速度センサとして構成されたマイクロ可動素子Y1の駆動時には、例えば、電極部12,60間に所定の直流電圧印加を行うことによって、フレーム20や電極部60に対して内可動部10を静止状態にさせる。この状態で、マイクロ可動素子Y1ないし内可動部10に法線方向(図5の平面図において紙面に垂直な方向)の加速度が作用すると、加速度と平行なベクトル成分の慣性力が働く。そして、内可動部10に対し、一対の連結部40によって規定される軸心A1まわりに回転トルクが作用し、加速度に比例した回転変位(軸心A1まわりの回転変位)が内可動部10に生じる。当該慣性力は、図5に現れる平面視において内可動部10の重心位置が軸心A1と重ならないように設計しておくことで、発生させ得る。回転変位量は、電極部12,60間の静電容量の変化として電気的に検出することができる。その検出結果に基づき、マイクロ可動素子Y1ないし内可動部10に作用する加速度を導出することが可能である。
図16から図18は、マイクロ可動素子アレイX1に含まれる各マイクロ可動素子Y1の製造方法の一例を表す。この方法は、MEMS技術により各マイクロ可動素子Y1を製造するための一手法である。図16から図18においては、図18(d)に示すランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施されるウエハにおける単一のマイクロ可動素子形成区画に含まれる複数の所定箇所の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。ランド部Lは、ランド部11の一部に相当する。梁部Bは、梁部13に相当する。フレームF1は、フレーム20の一部に相当する。フレームF2は、フレーム20における延び部20A(第2層部22の部分22aの一部)に相当する。フレームF3は、フレーム30の一部に相当する。連結部C1は、連結部40に相当し、トーションバー41の延び方向の断面を表す。連結部C2は、連結部40,50A,50Bのそれぞれに相当し、各トーションバー41,51の横断面を表す。電極E1は、電極部12,70のそれぞれの一部に相当し、一組の電極歯12aおよび一組の電極歯71のそれぞれの横断面を表す。電極E2は、電極部60,80のそれぞれの一部に相当し、一組の電極歯61および一組の電極歯82のそれぞれの横断面を表す。
マイクロ可動素子Y1の製造においては、まず、図16(a)に示すようなシリコンウエハ101’を用意する。シリコンウエハ101’は、ランド部11における薄肉の対向部11aが成形される箇所に対応して延びる溝101aを有する。このようなシリコンウエハ101’の作製においては、厚さが例えば200μmの未加工のシリコンウエハに対し、溝101aに対応する開口部を有するレジストパターンをマスクとして利用して、DRIE(deep reactive ion etching)により、所定の深さ(例えば30μm)までエッチング処理を行う。DRIEでは、SF6ガスを用いて行うエッチングとC4F8ガスを用いて行う側壁保護とを交互に繰り返すBoschプロセスにおいて、良好な異方性エッチング加工を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなBoschプロセスを採用することができる。また、シリコンウエハ101’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。
次に、図16(b)に示すように、シリコンウエハ101’上に絶縁膜101bを形成する。絶縁膜101bは、例えば、シリコンウエハ101’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。絶縁膜101bの厚さは例えば500nmである。本工程の後、上述の導電ビア(導電ビア16,24〜26,34,35を含む)のそれぞれの一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)を、絶縁膜101bに埋め込み形成する。具体的には、絶縁膜101bの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填する。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
次に、図16(c)に示すような、表面に絶縁膜102aを伴うシリコンウエハ102’を用意する。シリコンウエハ102’は、不純物をドープすることにより導電性を付与されたシリコン材料よりなる。不純物としては、Bなどのp型不純物や、PおよびSbなどのn型不純物を採用することができる。シリコンウエハ102’の厚さは例えば200μmである。絶縁膜102aの厚さは例えば500nmである。絶縁膜102aは、例えば、シリコンウエハ102’の表面を熱酸化法によって酸化することによって形成することができる。また、絶縁膜102aには、上述の導電ビア(導電ビア16,24〜26,34,35を含む)のそれぞれの一部をなすこととなる複数の導電部(図示せず)が、埋め込み形成されている。このような導電部は、絶縁膜102aの所定の箇所に開口部を形成し、当該開口部に導電材料を充填することによって、形成することができる。導電材料としては、例えばタングステンやポリシリコンを採用することができる。
次に、図16(d)に示すように、シリコンウエハ101’,102’を位置合わせしたうえで接合する。これにより、絶縁膜101bに埋め込み形成されている上述の導電部と、絶縁膜102aに埋め込み形成されている上述の導電部とから、各導電ビアが形成されることとなる。シリコンウエハ101’,102’を接合するには、例えば、シリコンウエハ101’,102’を、アンモニア水溶液で洗浄し、清浄な環境にて貼り合わせ、窒素雰囲気下において例えば1200℃の高温でアニールする。
次に、シリコンウエハ101’,102’のそれぞれに対して研磨処理を施すことにより、図17(a)に示すようにシリコンウエハ101’,102’を所望の厚さにまで薄くする。これにより、溝101aを伴うシリコン層101と、シリコン層102と、当該シリコン層101,102間の絶縁層103とからなる積層構造を有するSOIウエハたる材料基板100が得られる。材料基板100の絶縁層103には、上述の導電ビア(導電ビア16,24〜26,34,35を含む)が埋め込み形成されている(図示略)。シリコン層101の厚さは例えば20〜200μmであり、シリコン層102の厚さは例えば20〜200μmであり、絶縁層103の厚さは例えば0.3〜2μmである。
次に、図17(b)に示すように、シリコン層101上にミラー面11’を形成する。ミラー面11’の形成においては、まず、スパッタリング法により、シリコン層101上に例えばCr(50nm)およびこれに続いてAu(200nm)を成膜する。次に、マスクを介してこれら金属膜に対してエッチング処理を順次行うことにより、ミラー面11’をパターン形成する。Auに対するエッチング液としては、例えば、ヨウ化カリウム−ヨウ素水溶液を使用することができる。Crに対するエッチング液としては、例えば硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液を使用することができる。
次に、図17(c)に示すように、シリコン層101上に酸化膜パターン110およびレジストパターン111を形成し、シリコン層102上に酸化膜パターン112を形成する。酸化膜パターン110は、シリコン層101において成形されるべき内可動部10の一部(ランド部11、電極部12、梁部13を含む)、フレーム20の第1層部21、フレーム30の第1層部31、および電極部70に対応する図19に示すパターン形状を有する。酸化膜パターン110の形成においては、例えば、スパッタリング法またはCVD法によって材料基板100のシリコン層101側に酸化物材料を成膜した後、当該酸化物膜をパターニングする。レジストパターン111は、連結部40,50A,50Bに対応するパターン形状を有する。レジストパターン111の形成においては、例えば、スピンコーティング法によって材料基板100のシリコン層101側にレジスト材料を成膜した後、当該レジスト膜をパターニングする。酸化膜パターン112は、シリコン層102において成形されるべき内可動部10のシールド部14、フレーム20の第2層部22、フレーム30の第2層部32、および電極部60,80に対応する図20に示すパターン形状を有する。酸化膜パターン112の形成においては、例えば、スパッタリング法またはCVD法によって材料基板100のシリコン層102側に酸化物材料を成膜した後、当該酸化物膜をパターニングする。
次に、図17(d)に示すように、酸化膜パターン110およびレジストパターン111をマスクとして利用して、DRIEにより、シリコン層101に対して所望の深さまでエッチング処理を行う。所望の深さとは、連結部C1,C2の厚さに相当する深さであり、例えば5μmである。
次に、図18(a)に示すようにレジストパターン111を除去する。例えば、所定の剥離液を作用させることにより、レジストパターン111を剥離することができる。
次に、図18(b)に示すように、酸化膜パターン110をマスクとして利用して、DRIEにより、連結部C1,C2を残存形成しつつシリコン層101に対してエッチング処理を行う。本工程にて、ランド部L、梁部B、電極E1、フレームF1の一部(フレーム20の第1層部21)、フレームF3の一部(フレーム30の第1層部31)、および各連結部C1,C2が、成形される。
次に、図18(c)に示すように、酸化膜パターン112をマスクとして利用して、DRIEによりシリコン層102に対してエッチング処理を行う。本工程にて、フレームF1の一部(フレーム20の第2層部22)、フレームF2(フレーム20の第2層部22の一部たる延び部20A)、フレームF3の一部(フレーム30の第2層部32)、および電極E2が、成形される。
次に、図18(d)に示すように、絶縁層103において露出している箇所、および酸化膜パターン110,112を、エッチング除去する。エッチング手法としては、ドライエッチングまたはウエットエッチングを採用することができる。ドライエッチングを採用する場合、エッチングガスとしては、例えば、CF4やCHF3などを採用することができる。ウエットエッチングを採用する場合、エッチング液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸(BHF)を使用することができる。
以上の一連の工程を経ることにより、ランド部L、梁部B、フレームF1,F2,F3、連結部C1,C2、および一組の電極E1,E2を成形するなどしてマイクロ可動素子Y1を製造することができる。マイクロ可動素子アレイX1の第1アレイ1および第2アレイ2は、各マイクロ可動素子Y1についてこのような製造過程を経ることによって製造することができる。
マイクロ可動素子アレイX1の製造においては、まず、基材上に上述の基準電位配線および複数対の駆動配線をパターン形成して上述のベース部3を作製する。次に、ベース部3上に、複数のスペーサ5をワイヤーボンディングによって形成する。次に、各スペーサ5の頭頂部に導電性接着剤を塗布した後、ベース部3および第2アレイ2を、位置合わせしつつ、スペーサ5および導電性接着剤を介して接合する。次に、第2アレイ2上に、複数のスペーサ4をワイヤーボンディングによって形成する。次に、各スペーサ4の頭頂部に導電性接着剤を塗布した後、第1アレイ1および第2アレイ2(ベース部3を伴う)を、位置合わせしつつ、スペーサ4および導電性接着剤を介して接合する。
図21および図22は、第2の実施形態に係るマイクロ可動素子アレイX2を表す。図21は、マイクロ可動素子アレイX2の分解一部省略平面図である。図22は、マイクロ可動素子アレイX2の一部省略断面図である。
マイクロ可動素子アレイX2は、第1アレイ6と、第2アレイ7と、ベース部3と、複数のスペーサ4と、複数のスペーサ5とを含み、本実施形態においてはマイクロミラー素子アレイである。第1アレイ6および第2アレイ7の間に複数のスペーサ4が介在し、第2アレイ7およびベース部3の間に複数のスペーサ5が介在する。ベース部3は配線基板であり(図21および図22において配線は省略)、第1アレイ6の一部は、一部のスペーサ4、第2アレイ7の一部、および一部のスペーサ5を介して、ベース部3の配線の一部と電気的に接続されている。第2アレイ7の一部は、一部のスペーサ5を介してベース部3の配線の一部と電気的に接続されている。これら電気的接続のためのスペーサ4,5は、導電材料よりなり、例えば、単一の又は積層された金バンプである。
図23は、第1アレイ6の一部省略平面図である。第1アレイ6は、複数のマイクロ可動素子Y2を含む(図23では、一部のマイクロ可動素子Y2を省略する)。図24は、第2アレイ7の一部省略平面図である。第2アレイ7は、複数のマイクロ可動素子Y3を含む(図24では、一部のマイクロ可動素子Y3を省略する)。
図25から図34は、第1アレイ6に含まれるマイクロ可動素子Y2を表す。図25は、マイクロ可動素子Y2の平面図である。図26は、マイクロ可動素子Y2の一部省略平面図である。図27から図34は、それぞれ、図25の線XXVII−XXVII、線XXXVIII−XXXVIII、線XXIX−XXIX、線XXX−XXX、線XXXI−XXXI、線XXXII−XXXII、線XXXIII−XXXIII、および線XXXIV−XXXIVに沿った拡大断面図である。
マイクロ可動素子Y2は、内可動部10と、外可動部たるフレーム20と、固定部たるフレーム30’と、一対の連結部40と、一対の連結部50C,50Dと、電極部60,70と、電極部80’とを備え、本実施形態においてはマイクロミラー素子である。マイクロ可動素子Y2は、フレーム30に代えてフレーム30’を備える点、一対の連結部50A,50Aに代えて一対の連結部50C,50Dを備える点、および、電極部80に代えて電極部80’を備える点において、上述のマイクロ可動素子Y1と異なる。フレーム30’、連結部50C,50Dおよび電極部80’以外のマイクロ可動素子Y2の構成は、マイクロ可動素子Y1と同様である。また、マイクロ可動素子Y2は、マイクロ可動素子Y1と同様に、MEMS技術により、SOIウエハである材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ可動素子Y2における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図23および図25においては、第1シリコン層に由来する部位について斜線ハッチングを付して表す。また、図26に示す構造は、マイクロ可動素子Y2において第2シリコン層に由来するものである。
フレーム30’は、図32に示すように、第1シリコン層に由来する第1層部31と、第2シリコン層に由来する第2層部32と、当該第1および第2層部31,32の間の絶縁層33とからなる積層構造を有する。図25および図32に示すように、第1層部31は、相互に離隔する部分31a,31bを含む。部分31aは、相互に離隔する部分を含む(図示略)。図26および図32に示すように、第2層部32は、相互に離隔する部分32a,32b,32cを含む。部分32aは、相互に離隔する部分を含む(図示略)。部分31b,32bは、図32に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア34を介して電気的に接続されている。
一対の連結部40は、それぞれ、図25に示すように二本のトーションバー41からなる。各連結部40は、第1シリコン層に由来する部位であり、内可動部10の梁部13とフレーム20の第1層部21の部分21aとに接続して、内可動部10およびフレーム20を連結する(梁部13と部分21aは連結部40を介して電気的に接続されている)。各連結部40を構成する二本のトーションバー41の間隔は、フレーム20の側から内可動部10の側にかけて漸増する。また、トーションバー41は、図27に示すように、厚さ方向Hにおいて、内可動部10よりも薄肉であり、且つ、フレーム20の第1層部21よりも薄肉である。このような一対の連結部40は、内可動部10ないし可動主部(ランド部11,ミラー面11’)の回転変位の軸心A1を規定する。上述の電極歯12a,12bの延出方向は、軸心A1の延び方向と平行である。フレーム20の側から内可動部10の側にかけて間隔が漸増する二本のトーションバー41を含む各連結部40は、内可動部10が動作するに際して不要な変位成分が発生するのを抑制するのに好適である。
一対の連結部50C,50Dは、それぞれ、図25に示すように一本の弾性バーである。各連結部50C,50Dは、第1シリコン層に由来する部位であり、フレーム20およびフレーム30’を連結する。具体的には、図25に示すように、連結部50Cは、フレーム20の第1層部21の部分21bと、フレーム30’の第1層部31の部分31bとに接続して、これらを連結する(部分21b,31bは連結部50Cを介して電気的に接続されている)。連結部50Dは、フレーム20の第1層部21の部分21cと、フレーム30’の第1層部31の部分31aの一部とに接続して、これらを連結する(部分21cと部分31aの当該一部とは連結部50Dを介して電気的に接続されている)。また、連結部50C,50Dは、厚さ方向Hにおいて、トーションバー41と同様にフレーム20の第1層部21よりも薄肉であり、且つ、フレーム30’の第1層部31よりも薄肉である。このような一対の連結部50C,50Dは、軸心A1方向においてマイクロ可動素子Y2の可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60,70)が並進変位することが可能なようにマイクロ可動素子Y2を支持する弾性部位である。
電極部80’は、第1シリコン層に由来する部位であり、図25に示すようにアーム81および複数の電極歯82からなる。アーム81は、軸心A2の延び方向に延びる。複数の電極歯82は、アーム81から電極部70側へ延出し、且つ、アーム81の延び方向に離隔して並列する。このように、電極部80’は櫛歯電極構造を有する。また、電極部80’のアーム81は、図34に示すように、絶縁層33を貫通する導電ビア35を介してフレーム30’の部分32cと電気的に接続されている。
マイクロ可動素子Y2において、一対の電極部12,60は、軸心A1まわりの内可動部10の回転変位に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。また、一対の電極部70,80は、フレーム20およびこれに伴う内可動部10の軸心A1方向の並進変位に係る駆動力を発生させるための駆動機構ないしアクチュエータを構成し得る。
マイクロ可動素子Y2の駆動時には、内可動部10の電極部12および電極部70に基準電位が付与される。電極部12に対する基準電位の付与は、フレーム30’の第1層部31の部分31aの一部、連結部50D、フレーム20の第1層部21の部分21c、導電ビア26(図33に示す)、フレーム20の第2層部22の部分22a、導電ビア24(図31に示す)、フレーム20の第1層部21の部分21a、連結部40のトーションバー41、および内可動部10の梁部13を介して、実現することができる。電極部70に対する基準電位の付与は、フレーム30’の第1層部31の部分31aの一部、連結部50D、およびフレーム20の第1層部21の部分21cを介して、実現することができる。フレーム30’の第1層部31の部分31aにおいて基準電位が付与される部位(基準電位付与部)は、部分31aの他の部位から離隔して電気的に分離されている。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
マイクロ可動素子Y2の駆動時には、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60に対して必要に応じて付与する。電極部60への駆動電位の付与により、電極部12,60間に静電引力を発生させて内可動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができる。電極部60に対する駆動電位の付与は、フレーム30’の第2層部32の部分32b、導電ビア34(図32に示す)、フレーム30’の第1層部31の部分31b、連結部50C、フレーム20の第1層部21の部分21b、導電ビア25(図31に示す)、およびフレーム20の第2層部22の部分22bを介して、実現することができる。このような駆動により、マイクロ可動素子Y2のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
マイクロ可動素子Y2の駆動時には、基準電位よりも高い駆動電位を電極部80’に対して必要に応じて付与する。電極部80’への駆動電位の付与により、電極部70,80’間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う内可動部10のランド部11(ミラー面11’)を軸心A1方向に並進変位させることができる。電極部80’に対する駆動電位の付与は、フレーム30’の第2層部32の部分32c、および導電ビア35(図34に示す)を介して、実現することができる。
図35および図36は、第2アレイ7に含まれるマイクロ可動素子Y3を表す。図35は、マイクロ可動素子Y3の平面図である。図36は、図35の線XXXVI−XXXVIに沿った拡大断面図である。
マイクロ可動素子Y3は、内可動部10と、外可動部たるフレーム20と、固定部たるフレーム30と、一対の連結部40と、一対の連結部50A,50Bと、電極部60,70と、電極部80とを備え、本実施形態においてはマイクロミラー素子である。マイクロ可動素子Y3の方が、マイクロ可動素子Y1よりも、内可動部10のランド部11およびミラー面11’が軸心A1方向において長い。マイクロ可動素子Y3におけるランド部11およびミラー面11’の長さL3は、マイクロ可動素子Y1における長さL1より大きい限りにおいて、例えば50〜500μmである。マイクロ可動素子Y3では、ランド部11ないし可動主部についての上述の長さL3は、フレーム20の一対の延び部20Aの外端間の図36に示す長さL2より大きい。マイクロ可動素子Y3の他の構成は、マイクロ可動素子Y1と同様である。また、マイクロ可動素子Y3は、マイクロ可動素子Y1と同様に、MEMS技術により、SOIウエハである材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。マイクロ可動素子Y3における上述の各部位は主に第1シリコン層および/または第2シリコン層に由来して形成されるところ、図の明確化の観点より、図35においては、第1シリコン層に由来する部位について斜線ハッチングを付して表す。
各マイクロ可動素子Y3の駆動時には、内可動部10の電極部12および電極部70に基準電位が付与される。電極部12,70に対して基準電位を付与するための電気的経路については、上述のマイクロ可動素子Y1の駆動時に関して上述したのと同様である。基準電位は、例えばグラウンド電位であり、好ましくは一定に維持される。
各マイクロ可動素子Y3の駆動時には、基準電位よりも高い駆動電位を電極部60,80のそれぞれに対して必要に応じて付与する。電極部60への駆動電位の付与により、電極部12,60間に静電引力を発生させて内可動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができる。電極部80への駆動電位の付与により、電極部70,80間に静電引力を発生させてフレーム20およびこれに伴う内可動部10を軸心A2まわりに回転変位させることができる。マイクロ可動素子Y3は、いわゆる二軸型の揺動素子である。電極部60,80に対して駆動電位を付与するための電気的経路については、上述のマイクロ可動素子Y1の駆動時に関して上述したのと同様である。このような二軸型の駆動により、マイクロ可動素子Y3のランド部11上に設けられたミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
図21から図23に示すように、第1アレイ6は、複数のマイクロ可動素子Y2を含む。第1アレイ6において、複数のマイクロ可動素子Y2は、全ての軸心A2(図21から図23では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。第1アレイ6において、各マイクロ可動素子Y2のフレーム30’は一体化されて枠体をなし、全マイクロ可動素子Y2の第1可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)を囲む。第1アレイ6における全マイクロ可動素子Y2の複数の第1可動部が第1可動部列をなす。第1可動部列では、複数の第1可動部は、ミラー面11’を伴うランド部11(可動主部)とギャップG2とが交互に位置し且つ当該可動主部が第1可動部の配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。本実施形態では、第1可動部列にて、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の長さL1とギャップG2とは同じに設定されている。そのため、本実施形態では、第1アレイ1のフレーム30’内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%程度となる。第1アレイ6の当該占有率については、異なる値を設定してもよい。また、第1アレイ6においては、フレーム30’における第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、全マイクロ可動素子Y2にわたって連続している。第1アレイ6の全マイクロ可動素子Y2の内可動部10の電極部12及びシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21c及び第2層部22の部分22a、フレーム30’の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は電気的に接続されている。
図21、図22および図24に示すように、第2アレイ7は、複数のマイクロ可動素子Y3を含む。第2アレイ7において、複数のマイクロ可動素子Y3は、全ての軸心A2(図21,22,24では図示せず)が相互に平行となるように、軸心A1の延び方向に一列に配されている。第2アレイ7において、各マイクロ可動素子Y3のフレーム30は一体化されて枠体をなし、全マイクロ可動素子Y3の第2可動部(内可動部10,フレーム20,連結部40,電極部60)を囲む。第2アレイ7における全マイクロ可動素子Y3の複数の第2可動部が第2可動部列をなす。第2可動部列では、複数の第2可動部は、ミラー面11’を伴う各ランド部11(可動主部)が第2可動部列の一のギャップG2に対向し且つ複数の可動主部がギャップG3を介して配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。また、第2可動部列では、可動主部とギャップG3とが交互に位置する。第2可動部列にて、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の長さL3とギャップG3とを同じに設定した場合、第2アレイ7のフレーム30内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%程度となる。第2アレイ7の当該占有率については、異なる値を設定してもよい。配列方向D1において第2アレイ7の各ランド部11(ミラー面11’)の両端部が、第1アレイ1のランド部11(ミラー面11’)と重なり合うように第2アレイ7のランド部11(ミラー面11’)の長さL1を設定してもよい。この場合、第2アレイ7にてG3<L3であり、第2アレイ7のフレーム30内の配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率は50%より大きい。また、第2アレイ7においては、フレーム30における第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、全マイクロ可動素子Y3にわたって連続している。第2アレイ7の全マイクロ可動素子Y3の内可動部10の電極部12及びシールド部14、フレーム20の第1層部21の部分21a,21c及び第2層部22の部分22a、フレーム30の第2層部32の部分32c、並びに電極部70は電気的に接続されている。
ベース部3は、基準電位配線および複数対の駆動配線(第1駆動配線,第2駆動配線)を有する。基準電位配線は、第1アレイ6および第2アレイ7のフレーム30,30’における第1層部31の部分31aの上述の基準電位付与部と電気的に接続している。第1駆動配線は、第1アレイ6における各マイクロ可動素子Y2の上述の電極部60、および、第2アレイ7における各マイクロ可動素子Y3の上述の電極部60と、電気的に接続している。第2駆動配線は、第1アレイ6における各マイクロ可動素子Y2の上述の電極部80’、および、第2アレイ7における各マイクロ可動素子Y3の上述の電極部80と、電気的に接続している。具体的には、次のとおりである。
第1アレイ6では、フレーム30’の第1層部31の部分31aの基準電位付与部は、フレーム30’の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30’の第2層部32の部分32aの一部(基準電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの基準電位付与部には、導電材料よりなる少なくとも一つの上述のスペーサ4が接合され、当該スペーサ4は、第2アレイ7におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部に接合されている。したがって、第1アレイ6におけるフレーム30’の第1層部31の部分31aの基準電位付与部と、第2アレイ7におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの基準電位付与部とは、電気的に接続している。これと共に、第2アレイ7では、フレーム30における部分31aの基準電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30における部分32aの一部(基準電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの基準電位付与部には、導電材料よりなる少なくとも一つの上述のスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の配線の一部(基準電位配線)に接合されている。したがって、第1アレイ6および第2アレイ7のフレーム30,30’における第1層部31の部分31aの基準電位付与部と、ベース部3の基準電位配線とは、電気的に接続している。
第1アレイ6の各マイクロ可動素子Y2におけるフレーム30’の第2層部32の部分32b(上述のように、同一マイクロ可動素子Y2内の電極部60と電気的に接続している)には、導電材料よりなるスペーサ4が接合されている。当該スペーサ4は、第2アレイ7におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの一部(第1駆動電位付与部)に接合されている。第2アレイ7では、フレーム30の第1層部31の部分31aの各第1駆動電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(第1駆動電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの各第1駆動電位付与部には、導電材料よりなるスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の一の第1駆動配線に接合されている。したがって、第1アレイ6の各マイクロ可動素子Y2における部分32b従って電極部60は、ベース部3の一の第1駆動配線と電気的に接続している。
第1アレイ6の各マイクロ可動素子Y2におけるフレーム30’の第2層部32の部分32c(上述のように、同一マイクロ可動素子Y2内の電極部80’と電気的に接続している)には、導電材料よりなるスペーサ4が接合されている。当該スペーサ4は、第2アレイ7におけるフレーム30の第1層部31の部分31aの一部(第2駆動電位付与部)に接合されている。第2アレイ7では、フレーム30の第1層部31の部分31aの各第2駆動電位付与部は、フレーム30の絶縁層33を貫通する所定の導電ビア(図示略)を介して、フレーム30の第2層部32の部分32aの一部(第2駆動電位付与部)と電気的に接続している。この部分32aの各第2駆動電位付与部には、導電材料よりなるスペーサ5が接合され、当該スペーサ5は、ベース部3の一の第2駆動配線に接合されている。したがって、第1アレイ6の各マイクロ可動素子Y2における部分32c従って電極部80’は、ベース部3の一の第2駆動配線と電気的に接続している。
第2アレイ7の各マイクロ可動素子Y3におけるフレーム30の第2層部32の部分32b(上述のように、同一マイクロ可動素子Y3内の電極部60と電気的に接続している)には、導電材料よりなるスペーサ5が接合されている。当該スペーサ5は、ベース部3の一の第1駆動配線に接合されている。したがって、第2アレイ7の各マイクロ可動素子Y3における部分32bしたがって電極部60は、ベース部3の一の第1駆動配線と電気的に接続している。
第2アレイ7の各マイクロ可動素子Y3における電極部80には、導電材料よりなるスペーサ5が接合されている。当該スペーサ5は、ベース部3の一の第2駆動配線に接合されている。したがって、第2アレイ7の各マイクロ可動素子Y3における電極部80は、ベース部3の一の第2駆動配線と電気的に接続している。
マイクロ可動素子アレイX2のマイクロ可動素子Y2,Y3における基準電位付与部(電極部12,70を含む)および電極部60,80,80’と、ベース部3の基準電位配線および複数対の駆動配線との間には、具体的には以上のような電気的接続関係が形成されている。
マイクロ可動素子アレイX2の駆動時には、全マイクロ可動素子Y2,Y3における内可動部10の電極部12と電極部70に対して共通的に基準電位が付与される。この状態で、選択されたマイクロ可動素子Y2の電極部60,80’のそれぞれに対して必要に応じて駆動電位が付与される。マイクロ可動素子Y2では、電極部60への駆動電位付与によって内可動部10を軸心A1まわりに回転変位させることができ、電極部80’への駆動電位付与によって内可動部10のランド部11(ミラー面11’)を軸心A1方向に並進変位させることができる。これと共に、選択されたマイクロ可動素子Y3の電極部60,80のそれぞれに対して必要に応じて駆動電位が付与される。これにより、各マイクロ可動素子Y2にて、内可動部10(ミラー面11’を伴うランド部11を含む)が揺動動作され、且つ、フレーム20に伴う内可動部10(ミラー面11’を伴うランド部11を含む)が揺動動作される。このようなマイクロ可動素子アレイX2では、各マイクロ可動素子Y2,Y3の内可動部10のランド部11上のミラー面11’にて反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
以上の構成を有するマイクロ可動素子アレイX2では、第1アレイ6ないしそのフレーム30’と、第2アレイ7ないしそのフレーム30とは、スペーサ4を介して積層配置されている。図23に示すように、第1アレイ6のフレーム30’には、複数のマイクロ可動素子Y2の複数の第1可動部(内可動部10とフレーム20を含む)が支持されて、上述のように、当該複数の第1可動部が第1可動部列をなす。
一方、図24に示すように、第2アレイ7のフレーム30には、複数のマイクロ可動素子Y3の複数の第2可動部(内可動部10とフレーム20を含む)が支持されて、上述のように当該複数の第2可動部が第2可動部列をなす。第2可動部列では、上述のように、複数の第2可動部は、ミラー面11’を伴う各ランド部11(可動主部)が第1可動部列の一のギャップG2に対向し且つ複数の可動主部がギャップG3を介して配列方向D1に一列に並ぶように、一列に配されている。
マイクロ可動素子アレイX2では、配列方向D1において隣り合う二つの可動部の一方は第1アレイ6側にあり、他方は第2アレイ7側にあり、当該隣り合う可動部は、図22に示すように、第1アレイ6および第2アレイ7の積層方向に位置ずれしている。そして、配列方向D1において隣り合う二つの可動主部(第1可動主部,第2可動主部)も、第1アレイ6および第2アレイ7の積層方向に位置ずれしている。このようなマイクロ可動素子アレイX2では、配列方向D1において隣り合う二つの可動部の機械的干渉や電気的干渉を回避しつつ、当該二つの可動部の可動主部(第1および第2可動主部)について、加工限界に関わらず近接して配置することが可能である。したがって、マイクロ可動素子アレイX2は、配列方向D1ないし可動部配列方向において高い可動主部(本実施形態では、ミラー面11’を伴うランド部11)の占有率を実現することができる。配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率が高いほど、マイクロ可動素子アレイX2が全体として受けて各ミラー面11’にて反射する光信号について、損失を低減することができる。マイクロ可動素子アレイX2では、配列方向D1におけるランド部11ないしミラー面11’の占有率について、99%以上であって実質的に100%を実現することが可能である。WDM通信システムにおける波長選択スイッチとしてマイクロ可動素子アレイX2を使用する場合を想定する。この場合、マイクロ可動素子アレイX2においては、反射対象信号として各ミラー面11’に割り当てられる光信号について、間断なく波長帯域ないし周波数帯域を設定して大きな波長帯域ないし周波数帯域を設定することが可能である。また、この場合、選択されたマイクロ可動素子Y3と隣り合う一のマイクロ可動素子Y2について、図22にて矢印D3で示すように並進変位駆動することにより、当該選択されたマイクロ可動素子Y3について、割り当てられる反射対象の光信号の波長帯域ないし周波数帯域を拡大することができる。マイクロ可動素子アレイX2では、各マイクロ可動素子Y3について、割り当てられる反射対象の光信号の波長帯域ないし周波数帯域を拡大することができる。
マイクロ可動素子アレイX2の各マイクロ可動素子Y2では、内可動部10の電極部12と、シールド部14と、フレーム20の第2層部22の部分22aと、フレーム30’の第2層部32の部分32cとは、電気的に接続されている。したがって、駆動時には、電極部12と共にシールド部14および部分22a,32cにも基準電位(例えばグラウンド電位)が付与される。そのため、基準電位よりも高い駆動電位に起因して、駆動時に電極部60から例えば内可動部10のランド部11側へ発する電界は、シールド部14によって吸収されやすい(即ち、当該電界は、シールド部14を越えて例えばランド部11に至りにくい)。これと共に、駆動時に電極部60から発する電界は、部分22aによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、フレーム20の第2層部22の部分22a側を越えて素子外に漏出しにくい)。これと共に、基準電位よりも高い駆動電位に起因して、駆動時に電極部80’から電極部70とは反対の側に発する電界は、部分32cによって吸収されやすい(即ち、当該電界は、部分32cを越えて素子外に漏出しにくい)。これら電界吸収効果は、マイクロ可動素子Y2における素子外への電界漏れを防止または抑制する。このような素子外への電界漏れの防止または抑制により、各マイクロ可動素子Y2における駆動機構(電極部12,60,70,80’)からの漏れ電界が、隣接する他のマイクロ可動素子Y2の駆動特性に不当な影響を与えることを、回避することができる。したがって、上述の電界吸収効果は、マイクロ可動素子Y2の配列方向における高密度化、ひいては、配列方向D1における可動主部(ランド部11,ミラー面11’)の占有率の向上に資する。
マイクロ可動素子アレイX2の上述の各マイクロ可動素子Y2は、角速度センサや加速度センサなどのセンシングデバイスとすることができる。センシングデバイスとしてのマイクロ可動素子Y2においては、内可動部10のランド部11上のミラー面11’は必ずしも設ける必要はない。
上述のマイクロ可動素子アレイX1,X2に含まれるマイクロ可動素子Y1,Y3については、いわゆる一軸型の揺動素子としてもよい。マイクロ可動素子Y1,Y3を一軸型の揺動素子とする場合、電極部70,80を設けず、且つ、フレーム20をフレーム30に対して固定する構造を採用するのがよい。
上述のマイクロ可動素子アレイX1,X2は、通信機器に具備される光スイッチング装置を構成するためのマイクロミラー素子アレイとして採用することができる。
図37は、第3の実施形態に係る空間光結合型の光スイッチング装置400の概略構成を表す。光スイッチング装置400は、一対のマイクロミラーアレイユニット401,402と、入力ファイバアレイ403と、出力ファイバアレイ404と、複数のマイクロレンズ405,406とを備える。入力ファイバアレイ403は所定数の入力ファイバ403aからなり、マイクロミラーアレイユニット401には、各入力ファイバ403aに対応するマイクロミラー素子401aが複数配設されている。出力ファイバアレイ404は所定数の出力ファイバ404aからなり、マイクロミラーアレイユニット402には、各出力ファイバ404aに対応するマイクロミラー素子402aが複数配設されている。マイクロミラー素子401a,402aは、それぞれ、光を反射するためのミラー面を有して当該ミラー面の向きを制御できるように設けられている。マイクロミラーアレイユニット401,402は、上述のマイクロ可動素子アレイX1,X2のいずれかである。複数のマイクロレンズ405は、それぞれ、入力ファイバ403aの端部に対向するように配置されている。また、複数のマイクロレンズ406は、それぞれ、出力ファイバ404aの端部に対向するように配置されている。
光スイッチング装置400において、入力ファイバ403aから出射される光L1は、対応するマイクロレンズ405を通過することによって、相互に平行光とされ、マイクロミラーアレイユニット401へ向かう。光L1は、対応するマイクロミラー素子401aで反射し、マイクロミラーアレイユニット402へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子401aのミラー面は、光L1を所望のマイクロミラー素子402aに入射させるように、予め所定の方向を向いている。次に、光L1は、マイクロミラー素子402aで反射し、出力ファイバアレイ404へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子402aのミラー面は、所望の出力ファイバ404aに光L1を入射させるように、予め所定の方向を向いている。
このように、光スイッチング装置400によると、各入力ファイバ403aから出射した光L1は、マイクロミラーアレイユニット401,402における偏向によって、所望の出力ファイバ404aに到達する。すなわち、入力ファイバ403aと出力ファイバ404aは一対一で接続される。そして、マイクロミラー素子401a,402aにおける偏向角度を適宜変更することによって、光L1が到達する出力ファイバ404aが切換えられる。
光ファイバを媒体として伝送された光信号の伝送経路を或るファイバから他のファイバへと切換えるための光スイッチング装置に求められる特性としては、切換え動作における、大容量性、高速性、高信頼性などが挙げられる。これらの観点より、光スイッチング装置に組み込まれるスイッチング素子としては、MEMS技術によって作製されるマイクロミラー素子が好ましい。マイクロミラー素子によると、光スイッチング装置における入力側の光伝送路と出力側の光伝送路との間で、光信号を電気信号に変換せずに光信号のままでスイッチング処理を行うことができ、上述の特性を得るうえで好適だからである。
図38は、第4の実施形態に係る波長選択型の光スイッチング装置500の概略構成を表す。光スイッチング装置500は、マイクロミラーアレイユニット501と、一本の入力ファイバ502と、三本の出力ファイバ503と、複数のマイクロレンズ504a,504bと、分光器505と、集光レンズ506とを備える。マイクロミラーアレイユニット501は、複数のマイクロミラー素子501aを有し、当該複数のマイクロミラー素子501aは、マイクロミラーアレイユニット501において例えば一列に配設されている。各マイクロミラー素子501aは、光を反射するためのミラー面を有して当該ミラー面の向きを制御できるように設けられている。マイクロミラーアレイユニット501は、上述のマイクロ可動素子アレイX1,X2のいずれかである。マイクロレンズ504aは、入力ファイバ502の端部に対向するように配置されている。マイクロレンズ504bは、出力ファイバ503の端部に対向するように配置されている。分光器505は、波長によって反射光の回折の程度が異なる反射型回折格子である。
光スイッチング装置500において、入力ファイバ502から出射される光L2(複数の波長が混在している)は、マイクロレンズ504aを通過することによって、平行光とされる。この光L2は、分光器505にて反射する(このとき、波長ごとに異なる角度で反射する)。当該反射光は、集光レンズ506を通過する。その際、波長ごとに、マイクロミラーアレイユニット501において対応するマイクロミラー素子501aへ集光される。各波長の光は、対応するマイクロミラー素子501aで所定方向に反射される。このとき、マイクロミラー素子501aのミラー面は、対応する波長の光を所望の出力ファイバ503に到達させるように、予め所定の方向を向いている。マイクロミラー素子501aにて反射した光は、その後、集光レンズ506、分光器505、およびマイクロレンズ504bを経由して、選択された所定の出力ファイバ503に入射する。このようにして、光スイッチング装置500によると、光L2から所望の波長の光を選択することができる。