近年、光通信技術が様々な分野で広く利用されるようになってきた。光通信においては、光ファイバを媒体として光信号が伝送され、光信号の伝送経路を或るファイバから他のファイバへと切換えるためには、一般に、いわゆる光スイッチング装置が使用されている。良好な光通信を達成するうえで光スイッチング装置に求められる特性としては、切換え動作における、大容量性、高速性、高信頼性などが挙げられる。これらの観点より、光スイッチング装置に組み込まれるスイッチング素子としては、マイクロマシニング技術によって作製されるマイクロミラー素子が注目を集めている。マイクロミラー素子によると、光スイッチング装置における入力側の光伝送路と出力側の光伝送路との間で、光信号を電気信号に変換せずに光信号のままでスイッチング処理を行うことができ、上述の特性を得るうえで好適だからである。
マイクロミラー素子については、例えば下記の特許文献1,2および非特許文献1に開示されている。また、マイクロマシニング技術により作製されたマイクロミラー素子を用いた光スイッチング装置は、例えば、論文などに開示されている。
図21は、一般的な光スイッチング装置500の概略構成を表す。光スイッチング装置500は、一対のマイクロミラーアレイ501,502と、入力ファイバアレイ503と、出力ファイバアレイ504と、複数のマイクロレンズ505,506とを備える。入力ファイバアレイ503は所定数の入力ファイバ503aからなり、マイクロミラーアレイ501には、各入力ファイバ503aに対応するマイクロミラー素子501aが複数配設されている。同様に、出力ファイバアレイ504は所定数の出力ファイバ504aからなり、マイクロミラーアレイ502には、各出力ファイバ504aに対応するマイクロミラー素子502aが複数配設されている。マイクロミラー素子501a,502aは、各々、光を反射するためのミラー面を有し、当該ミラー面の向きを制御できるように構成されている。複数のマイクロレンズ505は、各々、入力ファイバ503aの端部に対向するように配置されている。同様に、複数のマイクロレンズ506は、各々、出力ファイバ504aの端部に対向するように配置されている。
光伝送時において、入力ファイバ503aから出射される光L1は、対応するマイクロレンズ505を通過することによって、相互に平行光とされ、マイクロミラーアレイ501へ向かう。光L1は、対応するマイクロミラー素子501aで反射し、マイクロミラーアレイ502へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子501aのミラー面は、光L1を所望のマイクロミラー素子502aに入射させるように、予め所定の方向を向いている。次に、光L1は、マイクロミラー素子502aで反射し、出力ファイバアレイ504へと偏向される。このとき、マイクロミラー素子502aのミラー面は、所望の出力ファイバ504aに光L1を入射させるように、予め所定の方向を向いている。
このように、光スイッチング装置500によると、各入力ファイバ503aから出射した光L1は、マイクロミラーアレイ501,502における偏向によって、所望の出力ファイバ504aに到達する。すなわち、入力ファイバ503aと出力ファイバ504aは1対1で接続される。そして、マイクロミラー素子501a,502aにおける偏向角度を適宜変更することによって、光L1が到達する出力ファイバ504aが切換えられる。
図22は、他の一般的な光スイッチング装置600の概略構成を表す。光スイッチング装置600は、マイクロミラーアレイ601と、固定ミラー602と、入出力ファイバアレイ603と、複数のマイクロレンズ604とを備える。入出力ファイバアレイ603は所定数の入力ファイバ603aおよび所定数の出力ファイバ603bからなり、マイクロミラーアレイ601には、各ファイバ603a,603bに対応するマイクロミラー素子601aが複数配設されている。マイクロミラー素子601aは、各々、光を反射するためのミラー面を有し、当該ミラー面の向きを制御できるように構成されている。複数のマイクロレンズ604は、各々、各ファイバ603a,603bの端部に対向するように配置されている。
光伝送時において、入力ファイバ603aから出射された光L2は、マイクロレンズ604を介してマイクロミラーアレイ601に向かって出射する。光L2は、対応する第1のマイクロミラー素子601aで反射されることによって固定ミラー602へと偏向され、固定ミラー602で反射された後、第2のマイクロミラー素子601aに入射する。このとき、第1のマイクロミラー素子601aのミラー面は、光L2を所望の第2のマイクロミラー素子601aに入射させるように、予め所定の方向を向いている。次に、光L2は、第2のマイクロミラー素子601aで反射されることによって、入出力ファイバアレイ603へと偏向される。このとき、第2のマイクロミラー素子601aのミラー面は、光L2を所望の出力ファイバ603bに入射させるように、予め所定の方向を向いている。
このように、光スイッチング装置600によると、各入力ファイバ603aから出射した光L2は、マイクロミラーアレイ601および固定ミラー602における偏向によって、所望の出力ファイバ603bに到達する。すなわち、入力ファイバ603aと出力ファイバ603bは1対1で接続される。そして、第1および第2のマイクロミラー素子601aにおける偏向角度を適宜変更することによって、光L2が到達する出力ファイバ603bが切換えられる。
図23は、光スイッチング装置500,600などに組み込むためのマイクロミラー素子として提案されているマイクロミラー素子700の一部省略斜視図である。マイクロミラー素子700は、上面にミラー面(図示略)が設けられたミラー形成部710と、内フレーム720と、外フレーム730(一部省略)とを有し、各々に、櫛歯電極が一体的に形成されている。具体的には、ミラー形成部710には、その相対向する端部に一対の櫛歯電極710a,710bが形成されている。内フレーム720には、櫛歯電極710a,710bに対応して一対の櫛歯電極720a,720bが内方に延びて形成されているとともに、一対の櫛歯電極720c,720dが外方に延びて形成されている。外フレーム730には、櫛歯電極720c,720dに対応して、一対の櫛歯電極730a,730bが内方に延びて形成されている。また、ミラー形成部710と内フレーム720は、一対のトーションバー740により連結されており、内フレーム720と外フレーム730は、一対のトーションバー750により連結されている。一対のトーションバー740は、内フレーム720に対するミラー形成部710の回転動作の回転軸心を規定し、一対のトーションバー750は、外フレーム730に対する内フレーム720およびこれに伴うミラー形成部710の回転動作の回転軸心を規定している。
このような構成のマイクロミラー素子700においては、静電力を発生させるために近接して設けられた一組の櫛歯電極、例えば櫛歯電極710aおよび櫛歯電極720aは、電圧非印加時には、図24(a)に示すように、上下2段に分かれた状態をとっている。そして、電圧印加時には、図24(b)に示すように、櫛歯電極710aが櫛歯電極720aに引き込まれ、これによってミラー形成部710が揺動する。より具体的には、図23において、例えば、櫛歯電極710aを正に帯電させ、櫛歯電極720aを負に帯電させると、ミラー形成部710が、一対のトーションバー740を捩りながらM1の方向に回転する。一方、櫛歯電極720cを正に帯電させ、櫛歯電極730aを負に帯電させると、内フレーム720は、一対のトーションバー750を捩りながらM2の方向に回転する。
従来のマイクロミラー素子700の製造方法としては、例えば、絶縁層をシリコン層で挟んでなるSOI(Silicon on Insulator)ウエハから形成するという手法が知られている。具体的には、まず、図25(a)に示すように、第1シリコン層801と、第2シリコン層802と、これらに挟まれた絶縁層803とからなる積層構造を有するウエハ800を用意する。次に、図25(b)に示すように、第1シリコン層801に対して、所定のマスクを介して異方性エッチングを行い、ミラー形成部710、トーションバー140、櫛歯電極710aなどの、第1シリコン層801において成形されるべき構造体を形成する。次に、図25(c)に示すように、第2シリコン層802に対して、所定のマスクを介して異方性エッチングを行い、櫛歯電極720aなどの、第2シリコン層802において成形されるべき構造体が形成される。ただし、図25(a)〜図25(c)は、図面の簡潔化の観点より、ウエハ800における複数箇所の断面を単一断面図で表したものである。
しかしながら、上述のような従来の製造方法においては、ウエハ800の厚さがマイクロミラー素子700の厚さに直接的に反映される。すなわち、マイクロミラー素子700の厚さは、これを形成するために使用するウエハ800の厚さと同一となる。そのため、従来の製造方法では、製造目的のマイクロミラー素子700の厚さと同一の厚さを有するウエハ800を使用する必要があり、マイクロミラー素子700の厚さが薄い場合、薄いウエハ800を使用しなければならない。例えば、ミラー面サイズが100〜1000μm程度のマイクロミラー素子700を形成する場合、ミラー形成部710および内フレーム720からなる可動部全体の質量、当該可動部の動作量、および、当該動作量を達成するために必要な櫛歯電極のサイズなどを総合的に考慮すると、可動部ひいてはマイクロミラー素子700の厚さは100〜200μm程度が望ましく、従って、そのようなマイクロミラー素子700を形成するためには、100〜200μm程度の厚さのウエハ800が使用される。
従来の製造方法においては、薄いマイクロミラー素子700の厚さに応じてこのような薄いウエハ800を使用する必要があるので、ウエハ800がより大口径となる程、そのハンドリングが困難となる。例えば、厚さ200μmで直径6インチのSOIウエハ800から上述のようにしてマイクロミラー素子700を製造する場合、一連の工程の途中においてウエハ800が割れてしまう場合が多い。図25(b)に示すように、第1シリコン層801にて所定の構造体を形成した後には、ウエハ800の強度が低下して、第2シリコン層802を加工する際のハンドリングは特に難しくなる。ウエハ800が薄いと、このように、ハンドリングの観点からウエハの平面サイズは制限されてしまうのである。また、ウエハの平面サイズが制限されると、複数のマイクロミラー素子を単一の基板に対してアレイ状に形成することによってマイクロミラーアレイチップを製造する場合において、アレイサイズが制限されることとなる。
図26は、配線基板に搭載されたマイクロミラー素子700を表す。マイクロミラー素子700については、図23の線XXVI−XXVIに沿った断面が表されている。図23の従来のマイクロミラー素子700においては、ミラー形成部710および内フレーム720からなる可動部は、外フレーム730と同一の厚みを有する。そのため、マイクロミラー素子700を配線基板810に搭載した状態で当該可動部を適切に動作させるためには、図26に示すように、当該配線基板810と外フレーム730との間にスペーサ811を介在させる必要がある。マイクロミラー素子700と配線基板810との間に充分な厚さのスペーサ811を介在させることによって、可動部が配線基板810に当接してその動作が妨げられるのを、回避することができる。配線基板810へのマイクロミラー素子700の搭載の際に、そのようなスペーサ811を別途設けるのは、配線基板810へのマイクロミラー素子700の実装工程上、効率的でない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロミラー素子X1の斜視図である。図2は図1の線II−IIに沿った断面図である。図3は図1の線III−IIIに沿った断面図であり、図4は図1の線IV−IVに沿った断面図である。
図1に示すように、マイクロミラー素子X1は、ミラー形成部110、これを囲む内フレーム120、内フレーム120を囲む外フレーム130、ミラー形成部110と内フレーム120とを連結する一対のトーションバー140、内フレーム120と外フレーム130とを連結する一対のトーションバー150を備える。一対のトーションバー140は、内フレーム120に対するミラー形成部110の回転動作の回転軸心A1を規定する。一対のトーションバー150は、外フレーム130に対する内フレーム120およびこれに伴うミラー形成部110の回転動作の回転軸心A2を規定する。本実施形態においては、回転軸心A1と回転軸心A2は略直交している。マイクロミラー素子X1は、後述のミラー面111および絶縁層160などを除いて導電性材料により一体的に構成されている。導電性材料としては、シリコンやポリシリコンにPやAsなどのn型不純物やBなどのp型不純物をドープしたものを用いる。
ミラー形成部110には、その上面にミラー面111が薄膜形成されている。また、ミラー形成部110の相対向する2つの側面には、櫛歯電極110a,110bが延出成形されている。
内フレーム120は、図1〜図4を合わせて参照するとよく理解できるように、内フレーム主部121と、一対の電極基台122と、これらの間の絶縁層160とからなる積層構造を有する。内フレーム主部121と電極基台122は、絶縁層160によって電気的に分断されている。一対の電極基台122には、内方に延出する櫛歯電極122a,122bが一体的に成形されており、内フレーム主部121には、外方に延出する櫛歯電極121a,121bが一体的に成形されている。櫛歯電極122a,122bは、図2によく表れているように、ミラー形成部110の櫛歯電極110a,110bの下方に位置している。櫛歯電極110a,110bおよび櫛歯電極122a,122bは、ミラー形成部110の回転動作時において互いに当接しないように、例えば櫛歯電極110aおよび櫛歯電極122aについて図4に示す態様で、互いの歯が位置ずれするように配されている。
一対のトーションバー140は、図3によく表れているように、各々、ミラー形成部110よりも薄肉であり、ミラー形成部110と内フレーム主部121とに接続している。
外フレーム130は、図2によく表れているように、第1外フレーム部131と、第2外フレーム部132と、これらの間の絶縁層160とからなる積層構造を有する。第1外フレーム部131と第2外フレーム部132は、絶縁層160によって電気的に分断されている。図3によく表れているように、第2外フレーム部132には、内方に延出する櫛歯電極132a,132bが一体的に成形されている。櫛歯電極132a,132bは、各々、内フレーム主部121の櫛歯電極121a,121bの下方に位置している。櫛歯電極121a,121bおよび櫛歯電極132a,132bは、内フレーム120の回転動作時において互いに当接しないように、互いの歯が位置ずれするように配されている。第2外フレーム部132は、図2〜図4によく表れているように、可動部である内フレーム120の電極基台122および櫛歯電極122a,122b、並びに、外フレーム130に形成されている櫛歯電極132a,132bよりも、所定の長さ下方に突き出ている。
一対のトーションバー150は、各々、図2に示されているように、上層151と、下層152と、これらの間の絶縁層160とからなる積層構造を有する。上層151と下層152は、絶縁層によって電気的に分断されている。上層151は、内フレーム主部121と第1外フレーム部131とに接続し、下層152は、電極基台122と第2外フレーム部132とに接続している。
このような構成のマイクロミラー素子X1において、第1外フレーム部131をグランド接続すると、第1外フレーム部131と同一のシリコン系材料により一体的に成形されているトーションバー150の上層151、内フレーム主部121、トーションバー140およびミラー形成部110を介して、櫛歯電極110a,110bと櫛歯電極121a,121bとがグランド接続されることとなる。この状態において、櫛歯電極122aまたは櫛歯電極122bに所望の電位を付与し、櫛歯電極110aと櫛歯電極122aとの間、または、櫛歯電極110bと櫛歯電極122bとの間に静電力を発生させることによって、ミラー形成部110を、回転軸心A1まわりに揺動させることができる。また、櫛歯電極132aまたは櫛歯電極132bに所望の電位を付与し、櫛歯電極121aと櫛歯電極132aとの間、または、櫛歯電極121bと櫛歯電極132bとの間に静電力を発生させることによって、内フレーム120およびミラー形成部110を、回転軸心A2まわりに揺動させることができる。第2外フレーム部132は、櫛歯電極122a,122b,132a,132bに対して選択的に電位を付与するための導電経路が形成される場として機能すべく、空隙などにより電気的に適宜分断された複数の区画を有する。
図5は、マイクロミラー素子X1を配線基板400に搭載した状態を表す。マイクロミラー素子X1については、図1の線V−Vに沿った断面を表す。マイクロミラー素子X1においては、外フレーム130は、ミラー形成部110および内フレーム120からなる可動部よりも肉厚である。具体的には、外フレーム130の第2外フレーム部132は、内フレーム120の電極基台122および櫛歯電極122a,122b、並びに、外フレーム130に形成されている櫛歯電極132a,132bよりも、所定の長さ下方に突き出ている。駆動時における可動部の最下到達位置、例えば内フレーム120の電極基台122の最下到達位置よりも、第2外フレーム部132は下方に突き出ている。そのため、第2外フレーム部132の下面に配線基板400を接合した状態において、可動部が動作するための空間が確保され、可動部が配線基板400に当接してしまうことが回避される。したがって、マイクロミラー素子X1を配線基板400に搭載する場合には、マイクロミラー素子X1と配線基板400の間において、スペーサを別途介在させる必要はない。
図6〜図8は、マイクロミラー素子X1の第1の製造方法を表す。この方法は、マイクロマシニング技術によって上述のマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。図6〜図8においては、簡略化の観点より、一の断面によって、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、一組の櫛歯電極E1,E2、外フレームF2の形成過程を表す。当該一の断面は、マイクロマシニングが施される材料基板における複数の所定箇所断面をモデル化したものである。具体的には、ミラー形成部Mによってミラー形成部110の部分断面を表し、トーションバーTによってトーションバー140の横断面またはトーションバー150の部分横断面を表し、内フレームF1によって、内フレーム主部121および電極基台122を含む内フレーム120の部分断面を表し、櫛歯電極E1によって櫛歯電極110a,110bまたは櫛歯電極121a,121bの横断面の一部を表し、櫛歯電極E2によって櫛歯電極122a,122bまたは櫛歯電極132a,132bの横断面の一部を表し、外フレームF2によって第1外フレーム部131および第2外フレーム部132を含む外フレーム130の部分断面を表す。
マイクロミラー素子X1の製造においては、まず、図6(a)に示すように、基板として、SOI(Silicon on Insulator)ウエハ1を用意する。SOIウエハ1は、相対的に薄い第1シリコン層11と、厚い第2シリコン層12と、これらに挟まれた中間層としての絶縁層160とからなる積層構造を有する。第1シリコン層11は、PやAsなどのn型の不純物をドープすることによって導電性が付与されたシリコンよりなる。第2シリコン層12は、PやAsなどのn型の不純物をドープすることによって導電性が付与されたシリコンやポリシリコンよりなる。ただし、これら導電性の付与においては、Bなどのp型の不純物を用いてもよい。絶縁層160は、熱酸化法により、第1シリコン層11または第2シリコン層12の表面に成長形成された酸化シリコンよりなる。絶縁層160の成膜手段としては、熱酸化法に代えて、CVD法を採用してもよい。絶縁層160の成長形成の後、第1シリコン層11と第2シリコン層12とを絶縁層160を介して接合することによって、SOIウエハ1が作製される。本実施形態では、第1シリコン層11の厚みは100μmであり、第2シリコン層12の厚みは200μmであり、絶縁層160の厚みは1μmである。
次に、図6(b)に示すように、第1シリコン層11の上に酸化膜パターン51を形成するとともに、第2シリコン層12の上に酸化膜パターン52を形成する。具体的には、まず、CVD法により、第1シリコン層11および第2シリコン層12の上に、酸化シリコンよりなる酸化膜を成長させる。そして、所定のマスクを介したエッチングにより、当該酸化膜をパターニングする。このパターニングにおけるエッチング薬液としては、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムからなるバッファードフッ酸を使用することができる。以降の酸化膜パターンについても、このような酸化膜の成長およびその後のエッチング処理により形成することができる。酸化膜パターン51は、第1シリコン層11において、ミラー形成部M、内フレームF1、櫛歯電極E1、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン51は、図1に表れているミラー形成部110、内フレーム主部121、櫛歯電極110a,110b、櫛歯電極121a,121b、第1外フレーム部131の平面視形態に対応して形成される。酸化膜パターン52は、第2シリコン層12において外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン52は、図1に表れている第2外フレーム部132の平面視形態に対応して形成される。
次に、図6(c)に示すように、第1シリコン層11の上にレジストパターン53を形成する。具体的には、第1シリコン層11上に液状のフォトレジストをスピンコーティングにより成膜し、露光および現像を経て、レジストパターン53を形成する。フォトレジストとしては、例えば、AZP4210(クラリアントジャパン製)やAZ1500(クラリアントジャパン製)を使用することができる。以降のレジストパターンについても、このようなフォトレジストの成膜およびその後の露光・現象を経て形成される。レジストパターン53は、第1シリコン層11において、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1の形成領域、外フレームF2をマスクするためのものである。より具体的には、レジストパターン53は、図1に表れているミラー形成部110、トーションバー140,150、内フレーム主部121、櫛歯電極110a,110bの形成領域、櫛歯電極121a,121bの形成領域、第1外フレーム部131の平面視形態に対応して形成される。
次に、図6(d)に示すように、第1シリコン層11に対して、レジストパターン53をマスクとして、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)により、トーションバーTの厚みに相当する深さまでエッチング処理を行う。本実施形態では5μmの深さまで行う。DRIEでは、エッチングと側壁保護を交互に行うBoschプロセスにおいて、SF6ガスによるエッチングを8秒行い、C4F8ガスによる側壁保護を6.5秒行い、ウエハに印加するバイアスは23Wとすることによって、良好なエッチング処理を行うことができる。以降のシリコン層に対するDRIEについても、この条件を採用することができる。
次に、図7(a)に示すように、レジストパターン53を剥離する。剥離液としては、AZリムーバ700(クラリアントジャパン製)を使用することができる。以降のレジストパターンの剥離についても、これを使用することができる。
次に、図7(b)に示すように、第1シリコン層11に対して、酸化膜パターン51をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。これによって、ミラー形成部Mと、トーションバーTと、内フレームF1の一部と、櫛歯電極E1と、外フレームF2の一部とが形成される。
次に、図7(c)に示すように、第2シリコン層12の上にレジストパターン54を形成する。レジストパターン54は、第2シリコン層12において、内フレームF1および櫛歯電極E2をマスクするためのものである。より具体的には、レジストパターン54は、図1に表れている電極基台122、櫛歯電極122a,122b,櫛歯電極132a,132bの平面視形態に対応して形成される。
次に、図7(d)に示すように、酸化膜パターン52およびレジストパターン54をマスクとして、第2シリコン層12に対して、DRIEにより、櫛歯電極E2の厚みに相当する深さまでエッチング処理を行う。
次に、図8(a)に示すようにレジストパターン54を剥離した後、図8(b)に示すように、第2シリコン層12に対して、酸化膜パターン52を介して、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。これによって、内フレームF1の一部と、櫛歯電極E2と、外フレームF2の一部とが形成される。
次に、図8(c)に示すように、エッチング液に浸漬することによって、露出している絶縁層160をエッチング除去する。このとき、素子表面に露出している酸化膜パターン51,52も同時に除去される。これによって、絶縁層160から100μm以内においてミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1,E2が形成されるとともに、厚さ200μmの第2外フレーム部132を有する外フレームF2が形成される。このようにして、マイクロミラー素子X1が製造される。
このような方法によると、使用される材料基板すなわちウエハよりも薄い可動部および2段櫛歯構造が形成される。したがって、ウエハとしては、可動部および2段櫛歯構造に要求される厚みにかかわらず、マイクロミラー素子の製造における一連の工程において充分な強度を維持可能な厚みを有するものを使用することが可能となる。可動部や2段櫛歯構造に要求される厚みにかかわらず、充分な強度を維持可能な厚みを有するウエハを使用することが可能であるため、ウエハの平面サイズについての制限が低減される。
図9および図10は、マイクロミラー素子X1の第2の製造方法を表す。この方法も、マイクロマシニング技術によって上述のマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。図9および図10においては、図6〜図8と同様に、モデル化した一の断面によって、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、一組の櫛歯電極E1,E2、外フレームF2の形成過程を表す。
第2の製造方法では、まず、第1の製造方法について図6(a)〜図6(d)および図7(a)〜図7(c)を参照して説明したのと同様の工程を経て、SOIウエハ1に対して図9(a)に示す状態にまで加工する。具体的には、図9(a)に示すSOIウエハ1においては、酸化膜パターン51をマスクとしたDRIEにより第1シリコン層11が加工されており、かつ、第2シリコン層12の上に酸化膜パターン52およびレジストパターン54が形成されている。
次に、図9(b)に示すように、第1シリコン層11に対して、レジストパターン54および酸化膜パターン52をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。この後、図9(c)に示すように、レジストパターン54を除去する。
次に、図9(d)に示すように、図中下方からのスプレーにより、フォトレジスト55’を成膜する。スプレーに供するフォトレジスト溶液は、例えば、AZP4210(クラリアントジャパン製)をAZ5200シンナー(クラリアントジャパン製)で4倍希釈したものを使用することができる。
次に、フォトレジスト55’に対する露光および現像を経て、図10(a)に示すように、レジストパターン55を形成する。レジストパターン55は、主に絶縁層160を保護するためのものである。
次に、図10(b)に示すように、第2シリコン層12に対して、酸化膜パターン52をマスクとして、DRIEにより所定の深さまでエッチング処理を行う。これによって、内フレームF1の一部および櫛歯電極E2が形成される。
次に、図10(c)に示すようにレジストパターン55を除去した後、図10(d)に示すように、エッチング液に浸漬することによって、露出している絶縁層160をエッチング除去する。このとき、素子表面に露出している酸化膜パターン51,52も同時に除去される。これによって、絶縁層160から100μm以内においてミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1,E2が形成されるとともに、厚さ200μmの第2外フレーム部132を有する外フレームF1が形成される。このようにして、マイクロミラー素子X1が製造される。
このような方法によると、使用される材料基板すなわちウエハよりも薄い可動部および2段櫛歯構造を形成することができる。したがって、第2の製造方法によっても、第1の製造方法に関して上述したのと同様の効果が奏される。
図11および図12は、マイクロミラー素子X1の第3の製造方法を表す。この方法も、マイクロマシニング技術によって上述のマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。図11および図12においては、図6〜図8と同様に、モデル化した一の断面によって、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、一組の櫛歯電極E1,E2、外フレームF2の形成過程を表す。
第3の製造方法においては、まず、図11(a)に示すように、基板として、SOIウエハ2を用意する。SOIウエハ2は、第1シリコン層13と、第2シリコン層14と、これらに挟まれた中間層としての絶縁層160とからなる積層構造を有する。本実施形態では、第1シリコン層13の厚みは100μmであり、第2シリコン層14の厚みは100μmであり、絶縁層160の厚みは1μmである。SOIウエハ2の形成において、シリコン層に対する導電性の付与手法および絶縁層160の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
次に、図11(b)に示すように、第1シリコン層13の上に酸化膜パターン56を形成するとともに、第2シリコン層14の上に酸化膜パターン57を形成する。酸化膜パターン56は、第1シリコン層13において、ミラー形成部M、内フレームF1、櫛歯電極E1、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン56は、図1に表れているミラー形成部110、内フレーム主部121、櫛歯電極110a,110b,櫛歯電極121a,121b、第1外フレーム部131の平面視形態に対応して形成される。酸化膜パターン57は、第2シリコン層14において内フレームF1および櫛歯電極E2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン57は、図1に表れている電極基台122、櫛歯電極122a,122b,櫛歯電極132a,132bの平面視形態に対応して形成される。
次に、図11(c)に示すように、SOIウエハ2の第2シリコン層14に対して、第3シリコン層15を直接接合する。第3シリコン層15は、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコンよりなり、100μmの厚みを有する。また、第3シリコン層15には、酸化膜パターン57に対応する箇所に、DRIEにより予め退避部が形成されている。本実施形態においては、当該退避部の深さは5μmである。本工程の接合は、例えば、真空度10-4Torr、加熱温度1100℃にて行う。この接合により、第3シリコン層15は、第2シリコン層14と一体となる。
次に、図11(d)に示すように、第1シリコン層13に対して、酸化膜パターン56をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。これにより、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1の一部、櫛歯電極E1、外フレームF2の一部が形成される。
次に、図12(a)に示すように、第3シリコン層15の上に酸化膜パターン58を形成する。酸化膜パターン58は、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン58は、図1に表れている第2外フレーム部132の平面視形態に対応して形成される。
次に、図12(b)に示すように、第3シリコン層15に対して、酸化膜パターン58をマスクとして、DRIEにより、酸化膜パターン57が露出するまでエッチング処理を行う。
次に、図12(c)に示すように、第2シリコン層14に対して、酸化膜パターン57,58をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。これによって、内フレームF1の一部、櫛歯電極E2、外フレームF2の一部が形成される。
次に、図12(d)に示すようにエッチング液に浸漬することによって、露出している絶縁層160をエッチング除去する。このとき、素子表面に露出している酸化膜パターン56,57,58も同時に除去される。これによって、絶縁層160から100μm以内においてミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1,E2が形成されるとともに、厚さ200μmの第2外フレーム部132を有する外フレーム130が形成される。このようにして、マイクロミラー素子X1が製造される。
このような方法によると、可動部および2段櫛歯構造の形成は、これらよりも肉厚の材料基板ないしウエハに対して行うことができる。したがって、第3の製造方法によっても、第1の製造方法に関して上述したのと同様の効果が奏される。図11(d)に示す工程より前には、ウエハの強度低下の要因である、シリコン層に対する構造体の成形加工工程は、行われない。したがって、図11(d)に示す工程より前には、ウエハの平面サイズは過度に抑制されない。
図13および図14は、マイクロミラー素子X1の第4の製造方法を表す。この方法も、マイクロマシニング技術によって上述のマイクロミラー素子X1を製造するための一手法である。図13および図14においては、図6〜図8と同様に、モデル化した一の断面によって、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、一組の櫛歯電極E1,E2、外フレームF2の形成過程を表す。
第4の製造方法においては、まず、図13(a)に示すように、基板として、SOIウエハ3を用意する。SOIウエハ3は、第1シリコン層16と、第2シリコン層17と、これらに挟まれた中間層としての絶縁層160とからなる積層構造を有する。第2シリコン層17には、DRIEにより予め櫛歯電極E2に対応する形状が形成されており、第2シリコン層17は、櫛歯電極E2が絶縁層160に接合するように、絶縁層160が形成された第1シリコン層16に対して接合されている。本実施形態では、第1シリコン層16の厚みは100μmであり、第2シリコン層17の厚みは200μmであり、絶縁層160の厚みは1μmである。SOIウエハ3の形成において、シリコン層に対する導電性の付与手法および絶縁層160の形成手法については、第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
次に、図13(b)に示すように、第1シリコン層16の上に酸化膜パターン59を形成するとともに、第2シリコン層17の上に酸化膜パターン60を形成する。酸化膜パターン59は、第1シリコン層16において、ミラー形成部M、内フレームF1、櫛歯電極E1、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン59は、図1に表れているミラー形成部110、内フレーム主部121、櫛歯電極110a,110b、櫛歯電極121a,121b、第1外フレーム部131の平面視形態に対応して形成される。酸化膜パターン60は、第2シリコン層17において外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン60は、図1に表れている第2外フレーム部132の平面視形態に対応して形成される。
次に、図6(c)〜(d)および図7(a)〜(b)を参照して第1の製造方法に関して上述したのと同様の工程を経て、SOIウエハ3に対して図13(c)に示す状態にまで加工する。
次に、図13(d)に示すように、第2シリコン層17の上にレジストパターン61を形成する。レジストパターン61は、第2シリコン層17において、内フレームF1、櫛歯電極E2の形成領域、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。
次に、図14(a)に示すように、第2シリコン層17に対して、レジストパターン61をマスクとして、DRIEにより、櫛歯電極E2の高さを残す所定の深さまでエッチング処理を行う。この後、図14(b)に示すように、レジストパターン61を除去する。
次に、図14(c)に示すように、第2シリコン層17に対して、酸化膜パターン60をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。これにより、内フレームF1の一部、櫛歯電極E2、外フレームF2の一部が形成される。
次に、図14(d)に示すようにエッチング液に浸漬することによって、露出している絶縁層160をエッチング除去する。このとき、素子表面に露出している酸化膜パターン59,60も同時に除去される。これによって、絶縁層160から100μm以内においてミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1,E2が形成されるとともに、厚さ200μmの第2外フレーム部132を有する外フレームF2が形成される。このようにして、マイクロミラー素子X1が製造される。
このような方法によると、使用される材料基板すなわちウエハよりも薄い可動部および2段櫛歯構造を形成することができる。したがって、第4の製造方法によっても、第1の製造方法に関して上述したのと同様の効果が奏される。
図15は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロミラー素子X2の斜視図である。図16は、図15の線XVI−XVIに沿った断面図である。マイクロミラー素子X2は、ミラー形成部110、これを囲む内フレーム120、内フレーム120を囲む外フレーム130’、ミラー形成部110と内フレーム120とを連結する一対のトーションバー140、内フレーム120と外フレーム130’とを連結する一対のトーションバー150を備える。マイクロミラー素子X2は、外フレームの構成において、マイクロミラー素子X1と相違する。マイクロミラー素子X2のミラー形成部110、内フレーム120、トーションバー140,150の構成については、マイクロミラー素子X1に関して上述したのと同様である。
外フレーム130’は、図16によく表れているように、第1外フレーム部131’と、第2外フレーム部132と、これらの間の絶縁層160とからなる積層構造を有する。第1外フレーム部131’と第2外フレーム部132は、絶縁層160によって電気的に分断されている。第1外フレーム部131’は、図16によく表れているように、可動部であるミラー形成部110、内フレーム120の内フレーム主部121よりも上方に突き出ている。第2外フレーム部132の構成については、第1の実施形態に関して上述したのと同様である。
図17は、マイクロミラー素子X2を配線基板400に搭載するとともに透明カバー401で覆った態様を表す。マイクロミラー素子X2については、図15の線XVII−XVIIに沿った断面を表す。マイクロミラー素子X2においては、外フレーム130’は、ミラー形成部110および内フレーム120からなる可動部よりも肉厚である。具体的には、第2外フレーム部132は、内フレーム120の電極基台122および櫛歯電極122a,122b、並びに、外フレーム130に形成されている櫛歯電極132a,132bよりも下方に突き出ている。駆動時における可動部の最下到達位置、例えば内フレーム120の電極基台122の最下到達位置よりも、第2外フレーム部132は下方に突き出ている。そのため、第2外フレーム部132の下面に配線基板400を接合した状態において、可動部が動作するための空間が確保され、可動部が配線基板400に当接してしまうことが回避される。また、第1外フレーム部131’は、ミラー形成部110および櫛歯電極110a,110b、内フレーム120の内フレーム主部121および櫛歯電極121a,121bよりも上方に突き出ている。駆動時における可動部の最上到達位置、例えば内フレーム120の櫛歯電極121a,121bの最上到達位置よりも、第1外フレーム部131’は上方に突き出ている。そのため、第1外フレーム部131’の上面に透明カバー401を接合した状態において、可動部が動作するための空間が確保され、可動部が透明カバー401に当接してしまうことが回避される。このように、マイクロミラー素子X2においては第1外フレーム部131’および第2外フレーム部132が可動部よりも突き出ているため、マイクロミラー素子X2を配線基板400や透明カバー401に搭載する場合には、マイクロミラー素子X2と配線基板400または透明カバー401との間において、スペーサを別途介在させる必要はない。
図18〜図20は、マイクロミラー素子X2の製造方法を表す。この方法は、マイクロマシニング技術によって上述のマイクロミラー素子X2を製造するための一手法である。図18〜図20においては、図6〜図8と同様に、モデル化した一の断面によって、ミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、一組の櫛歯電極E1,E2、外フレームF2の形成過程を表す。
マイクロミラー素子X2の製造においては、まず、図18(a)に示すように、基板として、SOIウエハ4を用意する。SOIウエハ4は、第1シリコン層18と、第2シリコン層19と、これらに挟まれた中間層としての絶縁層160とからなる積層構造を有する。第1シリコン層18には、予めトーションバーTが埋め込み形成されている。具体的には、第1シリコン層18に所定の溝を形成して当該溝表面に酸化膜を成膜した後、当該溝をポリシリコンで充填することによって、第1シリコン層18に対してトーションバーTを埋め込み形成することができる。このような第1シリコン層18は、トーションバーTが絶縁層160に接するように、絶縁層160が形成された第2シリコン層19に対して接合されている。本実施形態では、第1シリコン層18の厚みは100μmであり、第2シリコン層19の厚みは100μmであり、絶縁層160の厚みは1μmである。また、トーションバーTの厚みは5μmである。SOIウエハ4の形成において、シリコン層に対する導電性の付与手法および絶縁層160の形成手法については、マイクロミラー素子X1の第1の製造方法に関して上述したのと同様である。
次に、図18(b)に示すように、第1シリコン層18の上に酸化膜パターン62を形成するとともに、第2シリコン層19の上に酸化膜パターン63を形成する。酸化膜パターン62は、第1シリコン層18において、ミラー形成部M、内フレームF1、櫛歯電極E1へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン62は、図15に表れているミラー形成部110、内フレーム主部121、櫛歯電極110a,110b、櫛歯電極121a,121bの平面視形態に対応して形成される。酸化膜パターン63は、第2シリコン層19において、内フレームF1および櫛歯電極E2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン63は、図15に表れている電極基台122、櫛歯電極122a,122b、櫛歯電極132a,132bの平面視形態に対応して形成される。
次に、図18(c)に示すように、SOIウエハ4の第1シリコン層18に対して第3シリコン層20を直接接合するとともに、第2シリコン層19に対して第4シリコン層21を直接接合する。第3シリコン層20および第4シリコン層21は、各々、不純物のドープにより導電性が付与されたシリコンよりなり、100μmの厚みを有する。また、第3シリコン層20および第4シリコン層21には、各々、酸化膜パターン62,63に対応する箇所に、DRIEにより予め退避部が形成されている。本実施形態においては、当該退避部の深さは5μmである。本工程の接合は、例えば、真空度10-4Torr、加熱温度1100℃にて行う。この接合により、第3シリコン層20は第1シリコン層18と一体となるとともに、第4シリコン層21は第2シリコン層19と一体となる。
次に、図19(a)に示すように、第3シリコン層20の上に酸化膜パターン64を形成するとともに、第4シリコン層21の上に酸化膜パターン65を形成する。酸化膜パターン64は、第3シリコン層20および第1シリコン層18において、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン64は、図15に表れている第1外フレーム部131’の平面視形態に対応して形成される。酸化膜パターン65は、第4シリコン層21において、外フレームF2へと加工される箇所をマスクするためのものである。より具体的には、酸化膜パターン65は、図15に表れている第2外フレーム部132の平面視形態に対応して形成される。
次に、図19(b)に示すように、第3シリコン層20に対して、酸化膜パターン64をマスクとして、DRIEにより、酸化膜パターン62が露出するまでエッチング処理を行う。続いて、図19(c)に示すように、第1シリコン層18に対して、酸化膜パターン62,64をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。
次に、図20(a)に示すように、第4シリコン層21に対して、酸化膜パターン65をマスクとして、DRIEにより、酸化膜パターン63が露出するまでエッチング処理を行う。続いて、図20(b)に示すように、第2シリコン層19に対して、酸化膜パターン63,65をマスクとして、DRIEにより、絶縁層160に至るまでエッチング処理を行う。
次に、図20(c)に示すように、エッチング液に浸漬することによって、露出している絶縁層160をエッチング除去する。このとき、素子表面に露出している酸化膜パターン62〜65も同時に除去される。これによって、絶縁層160から100μm以内においてミラー形成部M、トーションバーT、内フレームF1、櫛歯電極E1,E2が形成されるとともに、厚さ200μmの第1外フレーム部131’および第2外フレーム部132を有する外フレームF2が形成される。このようにして、マイクロミラー素子X2が製造される。
このような方法によると、可動部および2段櫛歯構造の形成は、これらよりも肉厚の材料基板ないしウエハに対して行うことができる。したがって、当該製造方法によっても、マイクロミラー素子X1の第1の製造方法に関して上述したのと同様の効果が奏される。図19(b)に示す工程より前には、ウエハの強度低下の要因である、シリコン層に対する構造体の成形加工工程は、行われない。したがって、図19(b)に示す工程より前には、ウエハの平面サイズは過度に抑制されない。
上述のいずれのマイクロミラー素子製造方法においても、ミラー形成部110に対するミラー面111の形成は、ミラー形成部110へと加工される箇所をCVD法により酸化膜パターンで覆う前に行う。例えば、ミラー面111は、ミラー形成部110へと加工されるシリコン層の上に対するAuやCrのスパッタリングにより形成することができる。
また、マイクロミラー素子X2の絶縁層160に対する下層の加工については、上述のような加工法に代えて、マイクロミラー素子X1の第1から第4の製造方法に関して上述したいずれかの下層加工法を採用してもよい。そのような組み合わせによる方法であっても、上にも下にも突き出ている外フレーム130’を有するマイクロミラー素子X2を製造することができる。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)材料基板から一体的に成形された、ミラー部を有する可動部と、フレーム部と、当該フレーム部および可動部を連結するトーションバーと、を備え、
前記フレーム部は、前記可動部よりも厚い部位を有することを特徴とする、マイクロミラー素子。
(付記2)中間層およびこれを挟むシリコン層を含む積層構造を有する材料基板から一体的に成形された、可動部と、フレーム部と、当該可動部およびフレーム部を連結するトーションバーと、を備え、
前記可動部は、前記中間層に由来する第1中間部と、当該第1中間部に接する第1構造体と、当該第1構造体とは反対側で前記第1中間部に接する第2構造体とを含み、前記第1構造体の上にはミラー部が形成されており、
前記フレーム部は、前記中間層に由来する第2中間部と、前記第1構造体と同じ側で前記第2中間部に接する第3構造体と、前記第2構造体と同じ側で前記第2中間部に接する第4構造体とを含み、
前記第4構造体は、前記積層構造の積層方向において前記第2構造体よりも突き出ていることを特徴とする、マイクロミラー素子。
(付記3)更に、前記第4構造体に接合された配線基板を備える、付記2に記載のマイクロミラー素子。
(付記4)前記第3構造体は、前記積層方向において前記第1構造体よりも突き出ている、付記2に記載のマイクロミラー素子。
(付記5)中間層およびこれを挟むシリコン層を含む積層構造を有する材料基板から一体的に成形された、可動部と、フレーム部と、当該可動部およびフレーム部を連結するトーションバーと、を備え、
前記可動部は、前記中間層に由来する第1中間部と、当該第1中間部に接する第1構造体と、当該第1構造体とは反対側で前記第1中間部に接する第2構造体とを含み、前記第1構造体の上にはミラー部が形成されており、
前記フレーム部は、前記中間層に由来する第2中間部と、前記第1構造体と同じ側で前記第2中間部に接する第3構造体と、前記第2構造体と同じ側で前記第2中間部に接する第4構造体とを含み、
前記第3構造体は、前記積層構造の積層方向において前記第1構造体よりも突き出ていることを特徴とする、マイクロミラー素子。
(付記6)更に、前記第3構造体に接合された透明カバーを備える、付記4または5に記載のマイクロミラー素子。
(付記7)前記可動部は第1櫛歯電極部を有し、前記フレーム部は、前記第1櫛歯電極部との間に静電力を生じさせることにより前記可動部を変位させるための第2櫛歯電極部を有する、付記1から6のいずれか1つに記載のマイクロミラー素子。
(付記8)前記第1櫛歯電極部は前記第1構造体に形成されており、前記第2櫛歯電極部は、前記第4構造体における前記第2中間部に接する部位に形成されている、付記7に記載のマイクロミラー素子。
(付記9)前記可動部は、前記トーションバーを介して前記フレーム部に連結された中継フレームと、当該中継フレームから離隔するミラー形成部と、当該中継フレームおよびミラー形成部を連結する中継トーションバーとを備え、前記中継トーションバーは、前記トーションバーの延び方向に対して交差する方向に延びている、付記1から8のいずれか1つに記載のマイクロミラー素子。
(付記10)前記ミラー形成部は第3櫛歯電極部を有し、前記中継フレームは、前記第3櫛歯電極部との間に静電力を生じさせることにより前記ミラー形成部を変位させるための第4櫛歯電極部を有する、付記9に記載のマイクロミラー素子。
(付記11)前記第3櫛歯電極部は前記第1構造体に形成されており、前記第4櫛歯電極部は前記第2構造体に形成されている、付記10に記載のマイクロミラー素子。
(付記12)可動部と、フレーム部と、トーションバーとを備えるマイクロミラー素子を製造するための方法であって、
材料基板に対して、前記フレーム部の少なくとも一部へと加工される箇所をマスクするための第1マスクパターン、および、前記可動部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第2マスクパターンを介して、前記材料基板の厚み方向に第1エッチング処理を行う工程と、
前記第2マスクパターンを除去する工程と、
前記材料基板に対して、前記第1マスクパターンを介して第2エッチング処理を行う工程と、を含むことを特徴とする、マイクロミラー素子の製造方法。
(付記13)前記第1エッチング処理は、前記厚み方向の途中まで行い、前記第2エッチング処理は、少なくとも前記可動部を形成するように前記材料基板を貫通するまで行う、付記12に記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記14)前記第1エッチング処理は、前記材料基板を貫通するまで行い、前記第2エッチング処理は、少なくとも前記可動部を形成するように前記材料基板の厚み方向の途中まで行う、付記12に記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記15)可動部と、フレーム部と、トーションバーとを備えるマイクロミラー素子を製造するための方法であって、
第1シリコン層、第2シリコン層、およびこれらの間の中間層を含む積層構造を有する材料基板における前記第1シリコン層に対して、前記フレーム部の少なくとも一部へと加工される箇所をマスクするための第1マスクパターン、および、前記可動部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第2マスクパターンを介して、第1エッチング処理を行う工程と、
前記第2マスクパターンを除去する工程と、
前記第1シリコン層に対して、前記第1マスクパターンを介して第2エッチング処理を行う工程と、を含むことを特徴とする、マイクロミラー素子の製造方法。
(付記16)前記第1エッチング処理は、前記第1シリコン層の厚み方向の途中まで行い、前記第2エッチング処理は、前記中間層に至るまで行う、付記15に記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記17)前記第1エッチング処理は、前記中間層に至るまで行い、前記第2エッチング処理は、前記第1シリコン層の厚み方向の途中まで行う、付記15に記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記18)前記第2マスクパターンは、更に、前記フレーム部に形成される櫛歯電極部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する、付記15から17のいずれか1つに記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記19)可動部と、フレーム部と、トーションバーとを備えるマイクロミラー素子を製造するための方法であって、
第1シリコン層、第2シリコン層、およびこれらの間の中間層による積層構造を有する第1材料基板における前記第1シリコン層に対して、前記可動部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第1マスクパターンを形成する工程と、
前記第1シリコン層において前記第1マスクパターンが形成された面に対して第3シリコン層を接合することによって、前記第1マスクパターンが内蔵された第2材料基板を作製する工程と、
前記第3シリコン層に対して、前記フレーム部の少なくとも一部をマスクするための部位を有する第2マスクパターンを介して、前記第1シリコン層に至るまで第1エッチング処理を行う工程と、
前記第1エッチング処理により露出された第1シリコン層に対して、前記第1マスクパターンを介して、前記中間層に至るまで第2エッチング処理を行う工程と、を含むことを特徴とする、マイクロミラー素子の製造方法。
(付記20)前記第1マスクパターンは、更に、前記フレーム部に形成される櫛歯電極部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する、付記19に記載のマイクロミラー素子の製造方法。
(付記21)可動部と、フレーム部と、トーションバーとを備えるマイクロミラー素子を製造するための方法であって、
第1シリコン層よりなる第1材料基板に対して、前記フレーム部に形成される櫛歯電極部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第1マスクパターンを介して、前記櫛歯電極部の厚みに相当する深さまで第1エッチング処理を行う工程と、
前記第1材料基板と、前記第1材料基板のエッチング処理済み表面に接する中間層と、当該中間層に接する第2シリコン層による積層構造を有する第2材料基板を作製する工程と、
前記第1シリコン層に対して、前記フレーム部の少なくとも一部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第2マスクパターン、および、前記可動部および前記櫛歯電極部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第3マスクパターンを介して、前記第1シリコン層の途中まで第2エッチング処理を行う工程と、
前記第3マスクパターンを除去する工程と、
前記第1シリコン層に対して、前記第2マスクパターンを介して、前記櫛歯電極部に至るまで第3エッチング処理を行う工程と、を含むことを特徴とする、マイクロミラー素子の製造方法。
(付記22)可動部と、フレーム部と、トーションバーとを備えるマイクロミラー素子を製造するための方法であって、
第1シリコン層、第2シリコン層、これらの間の中間層、および、前記中間層に接して前記第1シリコン層の側に内蔵されているトーションバーを有する第1材料基板における第1シリコン層に対して、前記可動部へと加工される箇所をマスクするための部位を有する第1マスクパターンを形成する工程と、
前記第1シリコン層において前記第1マスクパターンが形成された面に対して第3シリコン層を接合することによって、前記第1マスクパターンが内蔵された第2材料基板を作製する工程と、
前記第3シリコン層に対して、前記フレーム部の少なくとも一部へと加工される箇所をマスクするための第2マスクパターンを介して、前記第1マスクパターンが露出するまで第1エッチング処理を行う工程と、
前記第1シリコン層に対して、前記第1マスクパターンを介して前記中間層に至るまで第2エッチング処理を行う工程と、を含むことを特徴とする、マイクロミラー素子の製造方法。