JP5343219B2 - ひずみ計測方法、ひずみ計測システム - Google Patents

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Description

本願は、物体のひずみを計測するひずみ計測方法、及びそのシステムに関するものである。
従来から、ひずみゲージや電子カメラなどの光学式撮影装置を用いて、計測対象物としての物体(例えば、既設のコンクリート構造物など)の表面に発生するひずみを計測する方法が知られている。
ひずみゲージを用いたひずみ計測方法は、物体の表面にひずみゲージを貼り付けて当該物体の変形に応じてひずみゲージが伸び縮みすることで発生する当該ひずみゲージの抵抗体の抵抗値を検出し、その抵抗値の変化に基づいて物体に発生するひずみを計測するものである(例えば、特許文献1参照)。
一方、光学式撮影装置を用いたひずみ計測方法は、物体のひずみ変化発生前後の表面を光学式撮影装置により撮影し、当該撮影された画像の各所定画素(点)の変化量及び方向をデジタル画像相関法で求め、物体に発生するひずみを計測するものである(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−304191号公報 特開2003−232688号公報
しかしながら、ひずみゲージを用いたひずみ計測方法において、計測対象物のひずみを面的に把握したい場合には、多数のひずみゲージを取り付ける必要があり、作業性の悪化を伴う。
また、計測対象物がコンクリートなどの不均一材料で構成されている場合には、ひずみゲージのゲージ長や当該ひずみゲージを取り付ける位置によって値がばらつくという問題があり、さらにその問題を解決するために同一個所に複数のひずみゲージを取り付けて計測することは困難である。
また、ひずみゲージは、微小領域、又は凹凸のある計測対象物には適さず、一度の計測で使い捨てであるなどの問題がある。
一方、光学式撮影装置を用いたひずみ計測は、凹凸のある計測対象物や計測対象物のひずみ分布を面的に把握したい場合などに適応可能であるものの、以下のような問題がある。
光学式撮影装置を用いたひずみ計測では、一般的に、デジタル画像相関法によってひずみ解析され、当該ひずみ解析では、2点間の変位前後の距離変化を用いてひずみが求められる。しかしながら、デジタル画像相関法の解析分解能は1画素辺りの50から100分の1と一般的に言われており、変位量が小さい場合には、精度の良い結果が得られないなどの問題がある。
本発明は、上記各問題点の解決を課題の一例として為されたもので、簡易、且つ高精度に物体の表面に発生するひずみを計測可能なひずみ計測方法等を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載のひずみ計測方法は、被測定物の任意の基点のひずみをデジタル画像相関法を用いて計測するひずみ計測方法であって、前記基点を中心とした複数の同心円上にロゼット解析のための複数の指標点を設定し、前記基点及び指標点が含まれるように前記被測定物の変形前後の表面を光学式撮像装置により撮像し、変形前後の画像データを取得する画像データ取得工程と、変形前後の画像データから前記基点を点対称とする指標点の2点間の距離変化を求めて前記基点から各指標点方向のひずみを算出し、その算出結果に基づいて前記基点に作用する応力を算出する応力算出工程と、と、を備えていることを特徴とする。
また、請求項に記載のひずみ計測方法は、請求項に記載のひずみ計測方法において、前記応力は、前記基点をもとにロゼット解析のためのひずみの組み合わせを異なる同心円に設定された指標点を用いて複数抽出し、各組み合わせによって求まる応力の平均値を算出することを特徴とする。
また、請求項に記載のひずみ計測方法は、請求項1に記載のひずみ計測方法において、前記ひずみ計測方法は、コア抜きによる応力解放に用いられることを特徴とする。
また、請求項に記載のひずみ計測システムは、被測定物の任意の基点のひずみをデジタル画像相関法を用いて計測するひずみ計測システムであって、前記を中心とした複数の同心円上にロゼット解析のための複数の指標点を設定し、前記基点及び指標点が含まれるように前記被測定物の変形前後の表面を光学式撮像装置により撮像し、変形前後の画像データを取得する画像データ取得手段と、変形前後の画像データから前記基点を点対称とする指標点の2点間の距離変化を求めて前記基点から各指標点方向のひずみを算出し、その算出結果に基づいて前記基点に作用する応力を算出する応力算出手段と、を備えていることを特徴とする。
以下、本願の最良の実施形態について、図1乃至図7を用いて詳細に説明する。図1はひずみ計測システムの概略構成図、図2は解析装置の概略構成図、図3はひずみ計測システムのフローチャート図、図4は計測対象領域に設定される指標点を示す拡大図、図5は1軸圧縮試験時のひずみ分布図、図6はロゼット解析の一例で応力を求める際に用いられる説明図、図7はコア抜き試験を行った時のひずみ分布図である。
本実施形態のひずみ計測システムは、例えば、自重または荷重によりコンクリート構造物に発生するひずみを計測するものである。本実施形態は、一例としてコンクリート構造物を被測定物2としているが、この実施形態に限定されるものではなく、たとえば、鋼構造物、岩盤、金属材料、石材、石膏、プラスチック材料等の弾性体材料にも適用可能である。なお、以下に示す計測対象領域Sとは、予め規定される計測対象点(基点)を含む周辺領域を意味するものである。
図1に示すように、ひずみ計測システムは、被測定物2の表面の計測対象領域Sを撮像する撮像装置5と、この撮像装置5により撮像された画像データに基づいて計測対象領域Sに発生するひずみを解析する解析装置10と、を備えている。
撮影装置5は、例えば、ディジタルビデオカメラなどの光学式撮像装置を用い、被測定物2の表面(計測対象領域)を撮像する。なお、撮影装置5は、当該ディジタルビデオカメラに限られるものではなく、CCDカメラ、デジタルカメラ、又はスキャナー等を適宜用いることが可能である。
図1及び図2に示すように、解析装置10は、一般にコンピュータと称される装置であって表示画面10aを有している。この解析装置10は、撮像装置5によって撮像された画像データが入力されるI/F部12と、当該画像データを記憶する記憶部14と、当該画像データを画像解析する画像解析部15、画像解析によって得られたひずみ分布、及び応力を表示画面10a上に出力する出力部17と、制御部19と、を備えている。
制御部19は、演算機能を有するCPU(Central Processing Unit)、作業用RAM、不揮発性メモリ、及び各種処理プログラムやデータを記憶するROM等を備えている。そして、CPUが、ROMに記憶された各種処理プログラムを読み出し実行することにより、各部12、14、15、17を統括制御するようになっている。
次に、ひずみ計測システムを用いて、被測定物2に発生するひずみや応力を計測する方法について図3を参照して説明する。
まず、被測定物2の表面において計測対象領域Sが使用者等によって設定され、当該計測対象領域Sが撮像可能になるように撮像装置5が固定される。そして、当該撮像装置5によって初期の状態(自重又は荷重による被測定物2の変位前)での計測対象領域Sが撮像される(ステップS11)。当該撮像された画像データは、I/F部12を介して記憶部14に記憶される(ステップS12)。
次に、所定期間経過後(自重又は荷重による被測定物2の変位後)、撮像装置5によって当該計測対象領域Sが撮像される(ステップS13)。当該撮像された画像データは、I/F部12を介して記憶部14に記憶される(ステップS14)。
次に、画像解析部15は、変位前の画像データと変位後の画像データを記憶部14から読み出して、所定の画像解析法に基づく解析を行う(ステップS15)。
当該画像解析法としては、デジタル画像相関法が用いられる。2枚の画像を利用して変位量と移動方向を求める画像解析方法は数多く存在するため、その詳しい説明は省略する。
本実施形態では、図4に示すように、変位前後の画像データをもとに、例えば、ユーザによって計測対象領域Sの中心を基点Xとし、その基点を中心とした複数の同心円上に指標点が設定される。当該指標点は、例えば、基点Xを中心として円周方向に64分割した基準線Lと、複数の同心円とが交差するそれぞれの点に設定される。
そして、画像解析部15は、変位前後の画像データから基点Xとそれぞれの指標点の2点間(半径方向)の距離変化を求め、その距離変化を基点Xとそれぞれの指標点間の距離で除算することによって、基点Xから各指標点方向(半径方向)のひずみを算出する。
なお、変位前後の画像データから基点Xを点対称とする指標点の2点間(直径方向)の距離変化を求め、その距離変化を指標点間の距離で除算することによって、基点Xを点対称とする2点の指標点方向(直径方向)のひずみを算出するようにしても構わない。
当該画像解析部15は、算出されたひずみをもとに基点X周辺のひずみ分布を作成し、当該ひずみ分布を出力部17にて表示画面10a上に出力させる。
図5はひずみ分布の表示例を示す。この表示例は、直方体状に形成されたコンクリートに所定の垂直荷重を加えた時の一例を示すものであるが、ユーザは、基点Xを中心とするX方向には伸びる力が作用し、Y方向には縮む力が作用し、XY方向には力が作用していないことが容易にわかり、コンクリートの現状の応力状態を評価する上で有効である。
このようにして、基点を中心とする半径方向の指標点の2点、又は基点を点対称とする指標点の2点の距離変化に基づいて所定方向のひずみを算出し、当該算出したひずみをもとに基点周辺のひずみ分布を出力すれば、変位量が小さい場合であっても精度の高いひずみの計測が可能である。また、当該ひずみ分布によって基点周辺のひずみの発生状況を容易に把握可能であり、例えば、異常値が検出されれば、その指標点付近でクラックが生じているなどの状況がわかる。また、同一個所における複数のひずみ計測が可能となり、被測定物2に発生するひずみを面的に把握することが容易に可能となる。
また、画像解析部15は、被測定物2に発生する応力を算出する。応力は、基点をもとに平面ひずみ状態が解析できるロゼット解析のための3軸又は4軸方向のひずみの組み合わせを抽出して算出される。一般に、ロゼット解析で用いられるロゼットの種類として、基点をもとに120°又は45°の角度をなす3軸方向のひずみから応力を算出する等角三軸型、又は直角三軸型の三方向測定ロゼットや基点をもとに45°の角度をなす4軸方向のひずみから応力を算出する二重直角四軸型、又はTデルタ四軸型の四方向測定ロゼットと称される方式が知られている。
以下に直角三軸型における応力算出方法を一例として説明する。
例えば、図6に示すように、同一点を基点としてx方向、y方向、及びx方向とy方向と45度の角度をなすxy方向の3軸方向のひずみa〜cが求まれば、被測定物における最大(最小)主応力は、次式(式1)から求まることが従来から知られている。
Figure 0005343219
すなわち、本実施形態では、同一の基点から上記3軸方向のひずみの組み合わせを複数抽出し、それぞれの組み合わせによって求められる応力を算出後、それらの平均が算出される。これにより、同一基点から多数のひずみ解析結果を得られるため、高精度のひずみ計測が可能となる。
具体的には、例えば、図4では基点Xを中心として円周方向に64分割された線Lと複数の同心円のそれぞれが交差している点に指標点が配置されているため、複数の同心円のうち1の円において、基点Xから半径方向での異なる3軸方向の組み合わせが64組抽出可能となっている。よって、画像解析部15は、64組の組み合わせからなる3軸方向のひずみをもとに応力を算出後、それらの平均を算出する。
しかしながら、必ずしも64組のそれぞれの組み合わせにおける主応力の平均を算出すべき必要はなく、そのいくつかの組み合わせをランダムに抽出して、その組み合わせにおける応力の平均を算出するようにしても構わない。
なお、上記実施形態では、基点Xから半径方向での異なる3軸方向の組み合わせを抽出しているが、基点Xを点対称とする直径方向での異なる3軸方向の組み合わせを抽出するようにしても構わない。その場合には、上記実施形態では、異なる3軸方向の組み合わせが32組抽出可能となる。
ここで、ひずみの計測精度を検証するために、幅370mm、奥行き240mm、高さ470mmの直方体に形成された不均一材料であるコンクリートを試験体として、鉛直荷重(P=1335kN)を加えた時に生じる応力をひずみ計測システムを用いて解析した。なお、解析結果を図5に示す。
図5に示す解析結果をもとに、3軸方向のひずみの組み合わせをランダムに16組抽出してひずみの解析を行い、主応力の平均値を算出した結果、最大主応力σ1は、15.75N/mm2であった。
一方、一般的な計算式で主応力を算出すると、σ1’=載荷荷重/断面積より、15.03N/mm2であるから、解析結果と計算値とはほぼ一致し、その精度が高いことが確認できた。
ひずみゲージで計測すると、その計測位置によって非常に大きな誤差を持つバラツキが生じるなどの不具合が発生するものの、本願発明によるひずみ解析では精度を高めることが容易に可能である。
また、応力開放実験のように局所的な変形や測定物の形状によって基点Xから円周方向に離れて設定されている指標点は、変形の影響を受けない。これらの場合では変形の影響を受けない不動点が設定できるため、その不動点が含まれるように計測対象領域を広げ、変位前後の画像データから当該不動点の移動状態(移動方向及び移動量)を求め、ひずみ解析を行なう際に当該不動点の移動状態を参照して補正することで、撮像装置が何らかの要因により移動した場合などの影響を除去することが可能となりひずみ計測の精度をより高めることが可能となる。具体的には、変位前後の画像データ中の不動点が移動した場合には、変位後の画像データに対して、その不動点の移動量及び方向を補正すれば良い。また、測定物の変形の影響を受けない不動点を変位前後で同時に解析画像上に取り込むことで任意に不動点を作ることも可能である。
また、他の実施形態として、図5で用いた試験体に鉛直荷重(P=1335KN)を作用させた状態で、直径50mmの円孔(深さ50mm)を設けて試験体の側面中心部付近を応力開放し、応力開放前後のひずみ変化の状態を解析し、その結果を図7に示す。なお、この時の解析を行った指標点は円孔外周近傍から外側に規定し、応力開放前後の基点から各指標点方向のひずみを上記に示す実施形態と同様に算出し、ひずみ分布を出力したものである。
図7に示す解析結果(ひずみ分布図)からも明らかなように、円孔近傍で鉛直方向への縮み状態、水平方向の伸びの状態、基点を中心として45°で伸びる方向が無ひずみの状態であることが確認できた。この結果より、被測定体の端部が円形の場合であってもひずみ分布を容易に解析することができることが確認できた。なお、応力を求める場合には、ひずみ分布の変化量をFEM解析などにより逆算することで容易に求めることが可能である。
なお、本願発明は、コンクリートなどの材料で計測対象点のひずみ計測にばらつきが生じ易い場合や計測対象物が凹凸形状、又は柔らかい材料であるためにひずみゲージを取り付けにくい場合、計測対象物が微小であるためにひずみゲージを取り付けにくい場合、ひずみ変化が大きい部分のひずみ分布を緻密に計測したい場合などの特に有効である。
また、本実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではない。
ひずみ計測システムの概略構成図である。 解析装置の概略構成図である。 ひずみ計測システムのフローチャート図である。 計測対象領域に設定される指標点を示す拡大図である。 1軸圧縮試験時のひずみ分布図である。 ロゼット解析の一例で応力を求める際に用いられる説明図である。 コア抜き試験を行った時のひずみ分布図である。
符号の説明
S 計測対象領域
2 被測定物
5 光学式計測装置
10 解析装置

Claims (4)

  1. 被測定物の任意の基点のひずみをデジタル画像相関法を用いて計測するひずみ計測方法であって、
    前記基点を中心とした複数の同心円上にロゼット解析のための複数の指標点を設定し、前記基点及び指標点が含まれるように前記被測定物の変形前後の表面を光学式撮像装置により撮像し、変形前後の画像データを取得する画像データ取得工程と、
    変形前後の画像データから前記基点を点対称とする指標点の2点間の距離変化を求めて 前記基点から各指標点方向のひずみを算出し、その算出結果に基づいて前記基点に作用する応力を算出する応力算出工程と、
    を備えていることを特徴とするひずみ計測方法。
  2. 前記応力は、前記基点をもとにロゼット解析のためのひずみの組み合わせを異なる同心円に設定された指標点を用いて複数抽出し、各組み合わせによって求まる応力の平均値を算出することを特徴とする請求項に記載のひずみ計測方法。
  3. 前記ひずみ計測方法は、コア抜きによる応力解放に用いられることを特徴とする請求項1に記載のひずみ計測方法。
  4. 被測定物の任意の基点のひずみをデジタル画像相関法を用いて計測するひずみ計測システムであって、
    前記基点を中心とした複数の同心円上にロゼット解析のための複数の指標点を設定し、 前記基点及び指標点が含まれるように前記被測定物の変形前後の表面を光学式撮像装置により撮像し、変形前後の画像データを取得する画像データ取得手段と、
    変形前後の画像データから前記基点を点対称とする指標点の2点間の距離変化を求めて前記基点から各指標点方向のひずみを算出し、その算出結果に基づいて前記基点に作用する応力を算出する応力算出手段と、
    を備えていることを特徴とするひずみ計測システム。
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