JP5339565B2 - 流体機械 - Google Patents

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Description

本発明は、回転形式の流体機械に関するものであり、より詳細には、インペラの回転によって流体を圧送する遠心ポンプ等の流体機械に関するものである。
流体を圧送する流体機械として、軸流ポンプ、斜流ポンプ及び遠心ポンプ等に代表される回転形式(ターボ形)のポンプと、プランジャポンプ等に代表される往復動形式(容積形)のポンプとが知られている。一般に、前者の形式(ターボ形)のポンプは、比速度が高い低揚程・大流量の運転領域において好適に作動可能な特性を有する。他方、後者の形式(容積形)のポンプは、比速度が大変低い高揚程・小流量の運転領域において好適に作動可能な特性を有する。ターボ形ポンプと容積形ポンプとの中間的な運転領域(比速度=30程度の運転領域)で作動可能なポンプとして、渦流ポンプ(カスケードポンプ)が知られている。
本発明者等は、「右上がり不安定特性」又は「右上がり特性」と呼ばれるターボ形ポンプ特有の不安定特性を防止すべく、再循環流の予旋回を抑制するための多数の浅い溝を圧力勾配の方向にケーシング内壁面に形成した構造のターボ機械を特許第3884880号公報、特開2003−13898号公報、特開2004−132209号公報(特許文献1〜3)において提案している。この溝は、通称「Jグルーブ」として当業界に知られている。上記特許文献1〜3に記載されたターボ機械においては、ケーシング壁面に溝を形成するにすぎない非常に簡易な構造によって予旋回流を制動して各種の異常流動現象を抑制することができる。
本発明者等は又、遠心ポンプのインペラ(羽根車)の背面外周帯域に短い溝又は凹所を局所的に形成することにより、インペラから外方に放出される流体が溝内に再流入する現象を確認している。このような背面外周域の短溝は、前述した不安定特性を解消する上で有効な手段として使用することができる。
外周帯域に少数の溝を形成したインペラを有する遠心ポンプが、特開2002−227795号に記載されている。図18(A)は、この遠心ポンプの構成を概略的に示す断面図である。インペラ101の溝102は、インペラ101の外周帯域104に形成される。遠心ポンプは、径方向中心部に吸込口105を有する。溝102は、インペラ101の外周縁103から径方向内方に延びるが、吸引口105に達しない。溝102と吸引口105との間には、流量制限部106が形成される。流量制限部106では、ポンプケーシングの静止壁面107は、インペラの円形表面108と近接する。インペラ101は軸線X−Xを中心に回転し、被圧送流体aを圧送する。
同様に少数の溝を形成したインペラを有する渦巻ポンプが、特開2004−353564号に記載されている。図18(B)は、この渦巻ポンプの構成を概略的に示す断面図である。遠心ポンプは、径方向中心部に吸込口115を有する。小数の溝112は、吸込口115の領域からインペラ111の外周縁113に延びる。インペラ111の外周帯域114には、動圧軸受を形成する多数のスパイラル状溝119が形成される。スパイラル状溝119の深さhは、10〜100μm程度の寸法である。ポンプケーシングの側壁面117は、インペラの円形表面118と近接する。側壁面117と円形表面118との間に形成される間隙の寸法vも又、10〜100μm程度の寸法である。
特許第3884880号公報 特開2003−13898号公報 特開2004−132209号公報 特開2002−227795号公報 特開2004−353564号公報
一般に、遠心ポンプ等のターボ形ポンプの効率は比速度の低下に伴って大きく低下するので、比速度約70以下のような極低比速度領域においては、ターボ形ポンプを実用運転することは極めて困難である。このため、このような低比速度領域では、通常は、容積形ポンプ又は渦流ポンプが使用される。しかし、容積形ポンプや渦流ポンプにおいては、以下の如き問題が指摘されている。
・流体の漏れがポンプ効率に大きく影響するので、インペラとケーシングとの間の隙間等を厳密に寸法設定し且つ管理する必要があり、高度な部品加工精度が要求される。
・インペラとケーシングとの間の狭小間隙は、塵、粉塵等の影響を受け易い。
・振動・騒音が比較的大きい。
・全体的に部品点数が多く、摺動作用を受ける部品の数も比較的多い。
・高速化が困難であり、流量増大及び小型化を達成し難い。
このような問題は、遠心ポンプ等のターボ形ポンプを採用することにより克服し得ると考えられる。しかし、前述の如く、極低比速度領域においてターボ形ポンプを運転した場合、ポンプの効率は極端に低下する。このため、ターボ形ポンプを極低比速度領域において実用的且つ有効に運転することはできない。
極低比速度領域において効率的に運転することを意図した遠心ポンプが、前述の特開2002−227795号に記載されている。しかし、このポンプは、図18(A)に示すように、溝102と吸引口105とを流量制限部106によって分離した構造を有する。このため、このポンプを極低比速度領域において運転したとしても、ポンプ流量の増大に伴ってポンプの効率が極端に低下する。また、このような流量制限部106を設けた場合には、キャビテーション等による振動・騒音が発生し易く、従って、特開2002−227795号に記載されたポンプでは、ポンプ流量を所望の如く増大させることはできない。
また、インペラの中心部に達する少数の溝を備えた渦巻ポンプが、前述の特開2004−353564号に記載されている。しかし、このポンプでは、外周帯域114に形成されたスパイラル状溝119は、動圧軸受を形成しなければならず、このため、側壁面117と円形表面118との間の寸法vを10〜100μm程度の寸法に制限しなければならない。即ち、前述の特開2004−353564号に記載されたポンプ構造では、間隙の寸法vを厳密に寸法設定し且つ管理する必要があり、極めて高度な部品加工精度又は精密性が要求される。
本発明は、(1)容積形又は渦流形の流体機械に共通する前述の課題(極端な部品加工精度又は精密性の確保、厳密且つ狭小なクリアランスの形成、部品点数の増大等の問題)を解消することができ、(2)回転駆動軸の回転数増大によって流体機械の高速化及び流量増大を図ることができ、しかも、(3)極低比速度領域において実用的且つ有効に運転することができる回転形式の流体機械を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成すべく、回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
吸入口側に位置するインペラの側面には、インペラの径方向中心部から径方向外方に角度間隔を隔てて延びる多数の溝が形成され、該溝は、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって延びて、インペラの外周面に開口しており、
前記インペラの側面と前記ケーシングの側壁面との間の間隙は、インペラ直径(d2)×0.002以上の寸法(q)又は0.4mm以上の寸法(q)を有し、
前記溝は、インペラ直径(d2)×0.002以上の寸法の深さ(h)又は0.4mm以上の深さ(h)を有し、前記インペラの回転時にインペラの外縁部近傍に再循環渦を生じさせることを特徴とする流体機械を提供する。
他の観点より、本発明は、回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
前記インペラの回転時にインペラの外縁部近傍に再循環渦を生じさせる多数の溝がインペラの両側の面に形成され、各面の溝は、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって角度間隔を隔てて延び、インペラの外周面に開口することを特徴とする流体機械を提供する。
好ましくは、インペラの各面とケーシングの側壁面との間に夫々形成されたインペラの両側の間隙を相互連通させる流体連通穴が、インペラの径方向中心部を貫通する。
更に他の観点より、本発明は、回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
吸入口側に位置する前記インペラの側面には、インペラの回転時にインペラの外縁部近傍に再循環渦を生じさせる多数の溝が形成され、該溝は、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって角度間隔を隔てて延び、インペラの外周面に開口しており、
前記ケーシングは、前側壁面、後側壁面及び環状内周壁面を有し、前記インペラの回転軸線を中心とした円形のケーシング内領域を形成する円形ケーシングからなり、
前記再循環渦(R)は、前記溝の内部に形成される径方向外方の流れ(F)と、前記ケーシングの側壁面の近傍に形成される径方向内方の流れ(E)と、径方向内方の流れ(E)から分流して前記溝の中に再循環する再循環流(G)とによって形成されることを特徴とする流体機械を提供する。
本発明の上記構成によれば、回転駆動軸の回転によってインペラが回転すると、インペラの外周部に向かう強い流れ(F)が溝の内部及びその近傍に生起する。同時に、インペラの側面と対向するケーシングの静止壁面(側壁面)近傍には、径方向内方に向かう強い流れ(E)が形成される。この結果、インペラの外縁部近傍には強い再循環渦(R)が発生する。このような再循環渦の形成によってケーシング内流路の流体速度が上昇し、流体機械の揚程が大きく上昇する。従って、この構成を有する回転形式の流体機械は、極低比速度領域において有効且つ実用的に運転することができる。
また、上記構成の流体機械は、回転するインペラの遠心力の作用で流体を径方向外方に付勢する構造を有するので、回転駆動軸の回転数増大によって流体機械を高速化し、流量増大を図ることができる。これは、容積形ポンプ又は渦流ポンプ等ではその装置構造上の理由で実現し得なかった流体機械の小型化を可能にする。
更に、上記構成の流体機械は、簡単な構造を有する回転形式の流体機械であり、しかも、インペラとケーシングの静止壁面(側壁面)との間のクリアランスを比較的大きく設定することができる。従って、本発明によれば、容積形ポンプ又は渦流ポンプ等のようにクリアランスを狭小寸法に厳密に制限する必要がないので、容積形又は渦流形の流体機械に共通する前述の課題(極端な部品加工精度又は精密性の確保、厳密且つ狭小なクリアランスの形成、部品点数の増大等の問題)は解消する。
また、本発明の流体機械は、前述の流量制限部(特開2002−227795号)を利用した構成のものではないので、流量増大時に生じる極端な効率低下や、キャビテーション発生等による振動・騒音の問題は生じない。従って、本発明の流体機械によれば、上記の如く、回転駆動軸の回転数増大によって流量を増大することができる。
更に、本発明の流体機械は、インペラ外周部の溝を用いた前述の動圧軸受(特開2004−353564号)を利用した構成のものではないので、径方向内方の流れ(E)及び再循環流(G)を形成する間隙がインペラの側面とケーシングの側壁面との間に形成される。このため、本発明の流体機械においては、インペラの回転時にインペラの外縁部近傍に再循環渦(R)が発生する。再循環渦は、上記の如く流体機械の揚程を大きく上昇させる。
なお、本明細書において、「多数」の溝は、少なくとも10本の溝を意味するものとし、インペラの「中心部」又は「中心部分」は、インペラ直径の1/2以下の直径を有するインペラの中央領域であって、回転駆動軸に連結されるインペラの部分(ボス部、嵌合部、キー連結部等)を含むインペラの部分を意味するものとする。
本発明の流体機械によれば、以下の効果が得られる。
(1)容積形又は渦流形の流体機械に共通する課題(極端な部品加工精度又は精密性の確保、厳密且つ狭小なクリアランスの形成、部品点数の増大等の問題)を解消することができる。
(2)回転駆動軸の回転数増大によって流体機械の高速化及び流量増大を図ることができる。
(3)極低比速度領域において実用的且つ有効に運転することができる。
図1は、本発明を適用した遠心ポンプの実施例を示す縦断面図、I−I線断面図及び部分拡大断面図である。 2種類のインペラの構造を示す正面図及び断面図である。 図2に示すインペラの斜視図及び部分拡大断面図である。 図3(A)に示すインペラの前側の外観を示す斜視図である。 図2に示すインペラを備えたポンプ機構の全体構成を概念的に示す前側及び後側の斜視図である。 2種類のインペラとケーシングの位置関係を示す遠心ポンプの部分拡大断面図である。 放射溝の溝内及びその近傍に形成される液体の流れを概念的に示す断面図である。 溝付きインペラを備えた遠心ポンプのポンプ性能を示す線図である。 溝付きインペラを備えた遠心ポンプのポンプ性能を示す線図である。 インペラの側面とケーシングの静止壁面との間のクリアランスと、ポンプ性能との関係を示す線図及び断面図である。 溝の長さと、ポンプ性能との関係を示す線図及び斜視図である。 溝の両面配置及び片面配置と、ポンプ性能との関係を示す線図である。 バランスホールの有無と、ポンプ性能との関係を示す線図である。 液体のレイノルズ数(Re数)と、ポンプ性能との関係を示す線図である。 溝の変形例を示すインペラの概略正面図である。 図3(B)に示すインペラの前側の外観を示す斜視図(外観写真)である。 図3(B)に示すインペラの後側の外観を示す斜視図(外観写真)である。 従来構造のインペラを有する遠心ポンプ又は渦巻ポンプの構成を示す概略断面図である。
符号の説明
1、1’ 遠心ポンプ(流体機械)
2 回転駆動軸
3 ケーシング
4 流入管
5 吐出管
6 軸受
7 ケーシング内液体流路(メリディアン流路断面)
8 液体供給管
9 液体送出管
10,10’ インペラ(羽根車)
11 中心部分
12 環状外側部分
13 ボス部
14 バランスホール(貫通穴)
15 放射溝
16 外縁溝(短溝)
17 陸部
18 外周面
X−X 回転軸線
本発明の好適な実施形態において、本発明の流体機械は、比速度70以下の極低比速度領域で作動する遠心ポンプである。好ましくは、溝は、均一な角度間隔を隔ててインペラの側壁面全体に均等に配置され、溝の角度間隔(k)は、10度以下の角度に設定される。
インペラの中心部から径方向に延びる多数の溝は、インペラの中心部において集合する。溝の本数を増大させると、隣接する溝の境界は失われ、隣接する溝は一体化し、この結果、多数の溝は、インペラの中心部において円形又は環状に連続する。即ち、溝の本数を増大させると、溝は、円形又は環状の窪み又は凹所をインペラの中心部に形成する。好ましくは、窪み又は凹所の直径(d1)は、吸入口の直径(d0)よりも大きく、吸入口は、窪み又は凹所の外形輪郭に全体的に包囲される。
本発明の好適な実施形態によれば、溝は、インペラの中心部から直線的に外側に延びる真っ直ぐな溝、或いは、インペラの中心部から湾曲し又は螺旋状に径方向外方に湾曲して延びる湾曲溝又は螺旋溝からなる。直線的な溝は、回転中心から径方向外方に延びる放射状の溝のみならず、径方向に対して所定角度をなして傾斜した方向に延びる真っ直ぐな溝を含む概念である。なお、溝の傾斜方向や、湾曲溝又は螺旋溝の方向は、必ずしもインペラの回転方向後方に傾斜するものに限定されず、回転方向前方に傾斜するものであっても良い。
間隙の寸法(q)は、好ましくは、インペラ直径(d2)×0.005以上の寸法又は1.0mm以上の寸法、更に好ましくは、インペラ直径(d2)×0.015以上の寸法又は3.0mm以上の寸法に設定される。好適には、溝の深さ(h)は、インペラ直径(d2)×0.03以下の寸法又は6.0mm以下の寸法に設定され、溝の幅(w)は、インペラ直径(d2)×0.2以下の寸法又は40mm以下の寸法(更に好適には、インペラ直径(d2)×0.10以下の寸法又は20mm以下の寸法)に設定される。
所望により、径方向外方に延びて外周面に開口する短い溝又は凹所(以下、短溝という)が、隣り合う溝の間の陸部に更に形成される。短溝は、外周部分に配置され、短溝の外端は上記溝と同じくインペラの外周面に開口する。
本発明の好適な実施形態において、溝は、インペラの両側の面に形成され、インペラは、インペラの両側に形成されるケーシング内流路を流体連通させる連通手段を有する。好ましくは、連通手段は、インペラの中央部を回転軸線方向に貫通する貫通穴からなる。例えば、複数の円形貫通穴がインペラの径方向中心部に均等な角度間隔を隔てて穿設される。
本発明の好適な実施形態において、インペラの中心部の厚さ(T)はインペラの外周部の厚さ(T')よりも大きな寸法に設定され、インペラの厚さは径方向外方に向かって漸減する。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した遠心ポンプの実施例を示す縦断面図、I−I線断面図及び部分拡大断面図である。
回転形式の流体機械(fluid machine)を構成する遠心ポンプ1が図1に示されている。ポンプ1は、回転軸線X−Xを中心に同心に配置された回転駆動軸2、円形ケーシング3、流入管(吸引管)4及びインペラ(羽根車)10を有する。インペラ10はケーシング3内に同心状に収容され、ポンプ1の主軸を構成する回転駆動軸2に一体的に連結される。回転駆動軸2は軸受6を貫通し、軸受6に回転可能に支承される。回転駆動軸2は、電動モータ等の駆動源(図示せず)に連結される。ケーシング3の前側壁面31、後側壁面32及び環状内周壁面33は、回転軸線X−Xを中心とした円形(円筒形又は円柱形)のケーシング内領域(直径D、厚さS)を形成する。ケーシング内領域に配置されたインペラ10の両側(前側及び後側)には、液体流路7が形成される。
流入管4は、回転軸線X−Xと同心にケーシング3に接続される。流入管4には、液体供給管8(仮想線で示す)が接続される。液体供給管8は、液体供給源(図示せず)と連通する。吐出管5は、ケーシング3に接線方向に接続される。吐出管5には液体送出管9(仮想線で示す)が接続される。液体送出管9は、任意の機器又は配管系(図示せず)と連通する。
遠心ポンプ1は、回転するインペラ10の遠心力の作用により、液体供給源の液体(水等)をケーシング3内に吸引する。図1(A)に矢印aで示す如く、液体供給源の液体は、遠心ポンプ1の吸引圧力下に管路4、8を介して液体流路7内に流入する。液体流路7内の液体は、回転するインペラ10の遠心力の作用でインペラの外周部から外方に放出され、図1(B)に矢印bで示す如く吐出管5に流出して後続の機器又は配管系に送出される。
図2、図3及び図4は、インペラの構造を示す正面図、断面図及び斜視図であり、図5は、インペラを備えたポンプ機構の構成を概念的に示す斜視図である。
図2(A)、図2(B)及び図3(A)には、図1に示すインペラ10の正面図、断面図及び斜視図が示されている。図2(C)及び図3(B)には、インペラ10の変形例に係るインペラ10’の構造が示されている。
インペラ10は、ボス部13及びバランスホール14を有する中心部分11(直径d1の範囲)と、中心部分11を除く環状外側部分12(直径d2−d1の範囲)とから構成される。多数の放射溝15及び外縁短溝16が環状外側部分12に形成される。放射溝15は、均一な角度間隔kを隔てて配置される。放射溝15及び外縁短溝16の外端部は、インペラ10の外周面18において開口する。図3(C)及び図3(D)には、放射溝15の断面が示されている。溝15は、インペラ10の径方向に連続的に延びる凹部又は窪みからなり、放射状のチャンネル流路をインペラ10の面に形成する。図3(C)に示すように、陸部17が溝15の間に形成される。インペラ10の外縁部では、陸部17の幅は、溝15の幅wよりも大きく、インペラ10の外周帯域には、外縁短溝16が陸部17に形成される(図3(D))。
ボス部13は回転駆動軸2に嵌着し、回転駆動軸2に一体的に連結される。連通手段を構成するバランスホール14は、周方向に等間隔(本例では、60度の角度間隔)を隔てて中心部分11に穿設され、中心部分11を貫通する。液体が流動するインペラ10の両側の領域(液体流路7)は、バランスホール14を介して流体連通する。
多数の放射溝15は、インペラ10の中央領域において集合するので、隣接する放射溝15の境界は失われ、隣接する放射溝15は一体化する。この結果、多数の放射溝15は、インペラの中央領域において環状に連続し、インペラ10の中心部分11には、放射溝15の溝底15aと連続するように全体的にインペラ10の面内に後退した円形又は環状の側面11aが形成される。即ち、インペラ10の中心部分11に形成された円形又は環状の窪み又は凹所は、放射溝15の集合である。なお、独立した放射溝15の部分(側面11aの外側の部分)は、インペラの半径の1/2以上の長さを有することが望ましい。
本例において、放射溝15及び外縁短溝16は、同一の幅1(w)及び深さ(h)を有し、インペラ10の外周帯域において周方向に交互に配置される。インペラ10の各部寸法等は、例えば、以下の如く設定される。
・中心部分11の直径d1=90mm
・インペラ10の直径(外径)d2=202mm
・放射溝15のみを形成した領域の直径d3=160mm
・溝の幅w=2mm
・溝の深さh=3mm
・放射溝15の本数=90本(各側)
・外縁短溝16の本数=90本(各側)
・角度間隔k=4°
図2(B)に示すように、インペラ10は中心部分11において均一な厚さ寸法Tを有する。環状外側部分12の厚さは径方向外方に向かって漸減し、環状外側部分12の外周縁は最小寸法T’を有する。このように中心部分11の厚さを増大することにより、インペラ10の構造強度及び剛性を比較的容易に確保するとともに、その軽量化を図ることができる。
図2(C)及び図3(B)には、インペラ10の変形例に係るインペラ10’が示されている。図2(C)及び図3(B)において、インペラ10の構成要素と実質的に同一の構成要素については、同一の参照符号が付されている。なお、図2(C)は、インペラ10’の片側のみを破断して示す部分破断断面図である。
図2(C)及び図3(B)に示すインペラ10’の環状外側部分12は、全体的に均一な厚さTを有する。インペラ10’は、環状側板(図示せず)を取付け可能な放射状隆起部19を有する。隆起部19に環状側板を固定することにより、インペラ10’をクローズド形式のインペラに更に変形することができる。インペラ10’の他の構造は、前述のインペラ10と実質的に同一である。なお、図16及び図17は、図2(C)及び図3(B)に示すインペラ10’の外観を示す斜視図(外観写真)である。
図6は、インペラ10、10’及びケーシング3の位置関係を示す遠心ポンプ1、1’の部分拡大断面図である。インペラ10を備えたポンプ1(図6(A))では、インペラ10とケーシング3の内壁面31、32との間に画成されるメリディアン流路断面(流路7)は、中心部分11の厚さTと外周面18の厚さT’との寸法差によって径方向外方に拡開する形状を有し、メリディアン流路断面(流路7)の流路寸法(流路幅N、M)は、インペラ10の外縁部において拡大する。他方、インペラ10’を備えたポンプ1’ (図6(B))では、均一な寸法(流路幅N、M)のメリディアン流路断面(流路7)がインペラ10’とケーシング3の内壁面31、32との間に形成される。
インペラ10、10’の側面とケーシングの内壁面31、32との間の間隙の寸法p、qは、少なくともインペラ直径(d2)×0.002以上の寸法且つ0.4mm以上に設定され、好ましくは、インペラ直径(d2)×0.005以上の寸法且つ1.0mm以上の寸法、更に好ましくは、インペラ直径(d2)×0.015以上の寸法又は3.0mm以上の寸法に設定される。溝の深さ(h)は、インペラ直径(d2)×0.002以上且つ0.4mm以上の寸法に設定される。好ましくは、溝の深さ(h)は、インペラ直径(d2)×0.005以上の寸法且つ1.0mm以上の寸法、インペラ直径(d2)×0.03以下の寸法且つ6.0mm以下の寸法に設定される。また、溝の幅(w)は、インペラ直径(d2)×0.2以下の寸法且つ40mm以下の寸法、好適には、インペラ直径(d2)×0.10以下の寸法且つ20mm以下の寸法に設定される。
ケーシング3の前側及び後側の内壁面(静止壁面)31、32は、インペラ10、10’の前側及び後側の側面から離間しており、ケーシング3及びインペラ10、10’の間のクリアランスは、容積形ポンプや渦流ポンプ等においてケーシングとピストンとの間(又はケーシングとインペラとの間)に許容される狭小なクリアランスとは全く相違しており、かなり大きな寸法p、qを有する。
図7は、インペラ10を備えたポンプ1における液体の流れを概念的に示す断面図であり、放射溝15の内部及びその近傍に形成される液体の流れが矢印で示されている。
インペラ10の回転時には、回転するインペラ10の遠心力の作用により、径方向外方に向かう強い流れFが放射溝15の内部及びその近傍に発生する。流れFは、インペラ10の外周縁とケーシング3の環状内周壁面33との間で径方向内方に転向し(転向流C)、径方向内方の流れEとして静止壁面31、32の近傍を逆流する。このため、静止壁面31、32の近傍には、径方向内方に向かう強い流れEが形成される。対向する流れE、Fの間には、径方向内方の流れEから分流して溝15の中に再循環する再循環流Gが形成される。インペラ10の外縁部近傍には、このような流れC、E、F、Gの作用により、強い再循環渦(recirculation vortex)Rが形成される。再循環渦Rは、インペラ10の外側の環状流路(周方向流路)の圧力を全周に亘って実質的に均一に加圧する。このような再循環渦Rは、従来のポンプでは形成されない新規な性質の渦であり、この渦は、流体機械の揚程を大きく上昇させる。
本発明者等は、上記構成のインペラ10、10’を備えた遠心ポンプ1、1’の性能を評価すべく、各種の実験を実施するとともに、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析等の数値解析を実行した。図8は、遠心ポンプ1(実施例1)のポンプ性能を示す線図である。異なる3種類のケーシング(最高効率点の比速度nS BEP=80、60、30)を使用したポンプ性能の実験結果(実験値)及び数値解析結果が図8(A)〜(C)に示されている。従来構造のインペラを備えた遠心ポンプ等では、比速度60以下では、ほぼ全域で揚程曲線に右上がり不安定特性が生じて振動・騒音が増大する傾向があり、しかも、揚程係数ψは1.1〜1.2程度であるにすぎなかった。しかし、インペラ10を備えた遠心ポンプ1では、図8(A)〜(C)に示されるように、かなり高い揚程が得られる。しかも、遠心ポンプ1の揚程曲線には、右上がり不安定特性が実質的に生じておらず、従って、安定且つ静寂な運転が実現する。また、ポンプ効率に関し、従来のフルオープン形インペラ(不安定特性が比較的少ない)を有する従来構造のポンプと遠心ポンプ1とを対比した結果が、図8(D)に示されている。図8(D)に示される如く、遠心ポンプ1(nS=80)は、nS=80のケーシングを用いた従来構造のポンプと比べ、全比速度範囲に亘って高い効率を発揮する。比速度が更に低い領域では、遠心ポンプ1のケーシングの比速度を低下させると、遠心ポンプ1は、更に高い効率を発揮する。
図9は、インペラ10を備えた遠心ポンプ1(実施例1)と、インペラ10’を備えた遠心ポンプ1’(実施例2)と、クローズド形インペラを備えた遠心ポンプ(比較例1)の各ポンプ性能示す線図である。比較例1のインペラは、インペラ10’の隆起部19に円形側板(図示せず)を取り付けてインペラ10’をクローズド形に設計変更した構成のものである。なお、実施例1、2及び比較例1の各遠心ポンプは同一の円形ケーシングを備える。
側板によって放射溝15を遮蔽してインペラをクローズド形に設計変更した比較例1の遠心ポンプでは、遠心ポンプ1’(実施例2)と対比し、揚程が低下する。従って、放射溝15を開放することによってメリディアン流路断面(流路7)に生起する三次元的な逆流C、E、G及び再循環渦Rは、遠心ポンプ1の揚程を増大するのに有効に作用する(実施例1、2)。
また、実施例1と実施例2とを対比すると、実施例1の遠心ポンプ1は相対的に高い揚程を発揮する。これは、実施例1の遠心ポンプ1では、実施例2の遠心ポンプ1’に比べて混合損失が低下することに起因すると考えられる。
図10は、インペラ10’とケーシング3との間のクリアランスの影響を示す線図及び断面図である。
本発明者等は、図10(B)に示すようにインペラ10’を使用し、インペラ10’とケーシング3の静止壁面31、32との間のクリアランスの影響を考察するための実験を実施した。この実験においては、インペラ10’と後側の静止壁面32との間の距離c’を1.17×h(h=溝15の深さ)に固定し、インペラ10’と前側のケーシング壁面31との間の距離cを0.067×h、0.33×h、1.0×h、1.7×hに変化させた。測定結果が図10(A)に示されている。なお、図10(A)の括弧内数値は、距離cの寸法値である。
図10(A)に示す如く、クリアランスの変化は、ポンプ性能にほとんど影響しないことが判明した。これは、本発明の遠心ポンプがオープン形遠心インペラを備えた遠心ポンプや渦流ポンプ(いずれも、クリアランスの変化がポンプ性能に大きく影響する)と全く相違する性質又は特性を有する新規なポンプであることを意味する。
図11(A)は、放射溝15の長さと、ポンプ性能との関係を示す線図であり、図11(B)は、比較例に係るインペラ10”を示す斜視図である。
図11(B)には、外縁短溝16のみを備えたインペラ10”が比較例2として示されている。インペラ10”は、インペラ10’(実施例2)の全ての放射溝15を外縁短溝16に置換した構成を有する。本発明者等は、図11(B)に示すインペラ10”を円形ケーシングに組み込んでポンプ性能を測定した。その結果、短い外縁短溝16だけを備えたインペラ10”(即ち、長い放射溝15を備えていないインペラ10”)では、図11(A)に示す如く、揚程が大きく低下することが判明した。他方、インペラ10’において全ての外縁短溝16を埋め殺した場合であっても、インペラ10’の揚程は、大きく低下しない。従って、本発明の遠心ポンプ1、1’においては、インペラに形成される溝15の長さが重要である。
図12は、放射溝15の両面配置及び片面配置の影響を示すポンプ性能の線図であり、図13は、バランスホール14の有無の影響を示すポンプ性能の線図である。
本発明者等は、実施例1のインペラ10を備えた遠心ポンプ1と、インペラ10の後側面の放射溝15及び外縁短溝16を埋め殺してなるインペラを備えた遠心ポンプとを運転し、ポンプ性能を測定した。前者のインペラ(以下、「両面溝形インペラ」という)は、放射溝15及び外縁短溝16を両面に備えるのに対し、後者のインペラ(以下、「片面溝形インペラ」という)は、放射溝15及び外縁短溝16を前側面のみに有する。なお、これらのインペラは、図1に示す如く、6箇所のバランスホール14を備える。本発明者等は又、3箇所のバランスホール14を埋め殺した片面溝形インペラ(3つのバランスホール14を備えた片面溝形インペラ)と、全てのバランスホール14を埋め殺した片面溝形インペラ(バランスホール14を全く備えない片面溝形インペラ)とを用いた遠心ポンプに関し、ポンプ性能を更に測定した。
図12に示す如く、放射溝15を片側にのみ配設したインペラの場合、低流量域において右上がり不安定性能が生じ易い。また、バランスホール14の個数を低減すると、それに伴って揚程及び軸動力は低下するが、効率は実質的に変化しない。
図13には、実施例1のインペラ10を備えた遠心ポンプ1においてバランスホール14をなくした場合に生じるポンプ性能の変化が示されている。図12に示す片面溝形インペラに関する測定結果と、図13に示すバランスホール完全省略の両面溝形インペラに関する測定結果とを対比することにより、後側面(背面)の放射溝15の作用を考察することができる。これらの測定結果の対比より明らかなとおり、バランスホール14を完全に省略した場合であっても、後側面の放射溝15は、揚程を増大させ且つ効率を向上させる。
図14は、CFDによってインペラ周速から求められた液体のレイノルズ数(Re数)と、ポンプの揚程及び効率との関係を示す線図である。
インペラ10、10’を備えた遠心ポンプ1、1’ は、構造が極めて簡単であることから、回転数(回転速度)を比較的容易に高速化し得る優位性を有する。図14には、レイノルズ数増大と関連したクローズド形遠心ポンプ及び遠心ポンプ1、1’の揚程及び効率の変化が示されている。図14に示す如く、クローズド形遠心ポンプ及び遠心ポンプ1、1’は、いずれも、回転数の増大(レイルノズ数増大)に伴って揚程が向上して効率も向上する。従って、遠心ポンプ1、1’は高速化に適すると考えられる。
図15は、溝の変形例を示すインペラの概略正面図である。
図1〜図7に示す実施例においては、インペラ10、10’は、回転軸線X−Xを中心に放射状に外方に延びる放射溝15及び外縁短溝16を備えるが、図15(A)に示すような湾曲溝(又は螺旋溝)15’と、同様に湾曲した外縁短溝16’とをインペラ10、10’に形成しても良い。
また、図1〜図7に示す外縁短溝16は、図15(B)に示す如く省略しても良い。
更には、図15(C)に示す如く径方向に対して所定角度をなして傾斜する方向に延びる直線的な溝15”をインペラ10、10’に形成しても良い。また、図15(C)に破線で示す如く、外縁短溝16” を各溝15”の間に形成しても良い。
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施例は、本発明を遠心ポンプに適用したものであるが、本発明を回転形式(ターボ形)のコンプレッサに適用しても良い。
また、上記実施例においては、溝は、均等な角度間隔を隔てて配置されているが、溝を不規則な間隔に配置することも可能である。
更には、上記実施例においては、全長に亘って均一な断面(形状、幅及び深さ)を有する方形断面の溝を例示したが、溝の断面(形状、幅及び深さ)を徐々に変化させても良く、或いは、溝の断面を方形断面以外の断面に設計することも可能である。
本発明は、遠心ポンプ、遠心コンプレッサ等の回転形式の流体機械に好適に適用し得る。本発明の流体機械によれば、従来は渦流ポンプ等を使用せざるを得なかった高揚程・小流量の極低比速度領域において実用的に運転可能な回転形式の流体機械が提供される。回転形式の流体機械は、回転速度増大によって、極端な騒音上昇を伴わずに高速運転することができる。これは、極低比速度領域において実用運転可能な小型流体機械の設計を可能にする。
本発明の流体機械は、超高圧又は高揚程の配管系に使用し得るので、化学プラントの原料又は燃料移送系、工作機械の油圧回路、半導体製造装置の液体輸送系、海水淡水化プラントの海水・給水配管系、CO2地下貯留施設の流体輸送系等の各種配管系又はシステムにおいて使用することが可能である。

Claims (20)

  1. 回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された被圧送流体の吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
    吸入口側に位置し且つ前記ケーシングの静止壁面と対向するインペラの側面には、インペラの径方向中心部から径方向外方に10度以下の角度間隔を隔てて延びる多数の溝が形成され、該溝は、前記静止壁面の側に開放するとともに、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって延びて、インペラの外周面に開口しており、
    前記インペラの側面と前記ケーシングの側壁面との間の間隙は、インペラ直径(d)×0.002以上の寸法(q)又は0.4mm以上の寸法(q)を有し、
    前記溝は、インペラ直径(d)×0.002以上の寸法の深さ(h)又は0.4mm以上の深さ(h)を有し、前記インペラの回転時に、径方向外方に向かう前記被圧送流体の流れを各溝内に生じさせるとともに、流体機械の揚程を上昇させる前記被圧送流体の再循環渦をインペラの外縁部近傍に生じさせることを特徴とする流体機械。
  2. 前記溝は、前記インペラの中心部から径方向外方に直線的に延び又は湾曲して延びることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
  3. 前記溝は、前記インペラの径方向中心部において集合し、該中心部に円形又は環状の窪み又は凹所を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体機械。
  4. 前記窪み又は凹所の直径(d)は、前記吸入口の直径(d)よりも大きく、前記吸入口は、前記窪み又は凹所の外形輪郭に全体的に包囲されることを特徴とする請求項3に記載の流体機械。
  5. 前記間隙の寸法(q)は、インペラ直径(d)×0.015以上の寸法又は3.0mm以上の寸法に設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体機械。
  6. 前記インペラの中心部から径方向外方に延びる多数の前記溝が、前記吸入口と反対の側に位置するインペラの側面に更に形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流体機械。
  7. 前記インペラの両側に形成された前記間隙を流体連通させる連通手段が、インペラの径方向中心部に設けられることを特徴とする請求項6に記載の流体機械。
  8. 前記溝の深さ(h)は、インペラ直径(d)×0.03以下の寸法又は6.0mm以下の寸法に設定され、前記溝の幅(w)は、インペラ直径(d)×0.20以下の寸法又は40mm以下の寸法に設定されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体機械。
  9. 前記インペラの中心部は、該インペラの外周部の厚さ(T’)よりも大きい厚さ(T)を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流体機械。
  10. 前記ケーシングは、前側壁面、後側壁面及び環状内周壁面を有し、前記インペラの回転軸線を中心とした円形のケーシング内領域を形成する円形ケーシングからなり、
    被圧送流体の吸引流路が前記吸入口に接続され、
    前記ケーシング内の流体をケーシング内流路の圧力下にケーシング外に送出する吐出流路が前記環状内周壁面に接続されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の流体機械。
  11. 前記再循環渦(R)は、前記溝の内部に形成される径方向外方の流れ(F)と、前記ケーシングの側壁面の近傍に形成される径方向内方の流れ(E)と、径方向内方の流れ(E)から分流して前記溝の中に再循環する再循環流(G)とによって形成されることを特徴とする請求項1乃至10に記載の流体機械。
  12. 径方向外方の前記流れ(F)は、前記インペラの外周縁と前記ケーシングの環状内周壁面(33)との間で径方向内方に転向し、径方向内方の前記流れ(C,E)として前記側壁面の近傍を逆流することを特徴とする請求項11に記載の流体機械。
  13. 回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された被圧送流体の吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
    流体機械の揚程を上昇させる前記被圧送流体の再循環渦を前記インペラの回転時にインペラの外縁部近傍に生じさせる多数の溝が、前記ケーシングの静止壁面と対向するインペラの両側の面に形成され、各面の溝は、前記静止壁面の側に開放するとともに、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって10度以下の角度間隔を隔てて延び、インペラの外周面に開口しており、前記インペラの回転時に、径方向外方に向かう前記被圧送流体の流れを各溝内に生じさせることを特徴とする流体機械。
  14. 前記インペラの各面と前記ケーシングの側壁面との間に夫々形成されたインペラの両側の間隙を相互連通させる流体連通穴が、前記インペラの径方向中心部を貫通することを特徴とする請求項13に記載の流体機械。
  15. 前記溝は、前記インペラの径方向中心部において集合して、該中心部に円形又は環状の窪み又は凹所を形成し、前記連通穴は、前記窪み又は凹所に配置されることを特徴とする請求項13又は14に記載の流体機械。
  16. 前記ケーシングは、前側壁面、後側壁面及び環状内周壁面を有し、前記インペラの回転軸線を中心とした円形のケーシング内領域を形成する円形ケーシングからなり、
    被圧送流体の吸引流路が前記吸入口に接続され、
    前記ケーシング内の流体をケーシング内流路の圧力下にケーシング外に送出する吐出流路が前記環状内周壁面に接続されることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の流体機械。
  17. 回転駆動軸に一体的に連結されたインペラと、インペラを収容するケーシングと、インペラの径方向中心部と対向するように配置された被圧送流体の吸入口とを有する回転形式の流体機械において、
    前記インペラの外側の周方向環状流路の流体圧力を全周に亘って上昇させて流体機械の揚程を増大する被圧送流体の再循環渦をインペラの回転時にインペラの外縁部近傍に生じさせる多数の溝が、吸入口側に位置し且つ前記ケーシングの静止壁面と対向する前記インペラの側面に形成されており、該溝は、前記静止壁面の側に開放するとともに、前記吸入口の径方向内方の領域からインペラの外周縁に向かって角度間隔を隔てて延び、インペラの外周面に開口しており、
    前記溝の深さ(h)は、インペラ直径(d)×0.03以下の寸法又は6.0mm以下の寸法に設定され、
    前記ケーシングは、前側壁面、後側壁面及び環状内周壁面を有し、前記インペラの回転軸線を中心とした円形のケーシング内領域を形成する円形ケーシングからなり、
    前記再循環渦(R)は、前記溝の内部に形成される径方向外方の流れ(F)と、前記ケーシングの側壁面の近傍に形成される径方向内方の流れ(E)と、径方向内方の流れ(E)から分流して前記溝の中に再循環する再循環流(G)とによって形成されることを特徴とする流体機械。
  18. 径方向外方の前記流れ(F)は、前記インペラの外周縁と前記ケーシングの環状内周壁面(33)との間で径方向内方に転向し、径方向内方の前記流れ(C,E)として前記側壁面の近傍を逆流することを特徴とする請求項17に記載の流体機械。
  19. 前記溝は、均一な角度間隔(k)を隔てて前記インペラの側壁面全体に均等に配置されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の流体機械。
  20. 前記流体機械は、比速度70以下の極低比速度領域で作動する遠心ポンプであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の流体機械。
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