JP5337144B2 - 質量分析装置を用いた定量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は生体関連物質や有機物質の質量分析システムなどに関し、特に創薬における薬物動態あるいは代謝物解析、タンパク質解析、疾患マーカー探索における定量質量分析方法や質量分析システムに関する。さらに、体液等を分析する自動検査装置や自動分析装置に関する。
疾患診断に向けたマーカー探索などにおいては、疾患患者由来の試料と健常者由来の試料の分析結果を比較し、検出される成分の中から差分が顕著な変動成分を抽出することが重要である。さらに、その変動成分を同定することも必要である。このような分析では、液体クロマトグラフ/質量分析装置(LC/MS)がしばしば用いられる。LC/MSは、多成分が含まれる試料をLCで分離し、分離成分をMSで質量分析することができるオンライン分離分析システムであり、マーカー探索以外の分野でも広く用いられている分析装置である。そして、質量分析装置(MS)部分には、ダイナミックレンジが3桁以上確保できる、MS/MS分析などのタンデム質量分析ができる質量分解能が高い質量分析装置がよく用いられる。これにより、定量解析による変動成分の抽出、及び変動成分における多数の未知の成分に対する同定(定性分析)と定量分析による含有量の測定という一連の解析が精度よく可能となる。
タンデム質量分析はよく知られているように、質量分析した結果からある成分のイオンを選んでガス分子と衝突させるなどして分解し、分解されてできたイオンをさらに質量分析する技術であり、物質の同定(定性分析)のために実施されるのが一般的である。一方、定量分析においては、タンデム質量分析を用いない質量スペクトル(マススペクトル)を取得することが多い。ある物質のイオンに注目してタンデム質量分析による定性分析を行うと、その間の時間にはタンデムを用いない質量分析のデータを取得できず、実質的に定量分析の精度が低減するという関係がある。そこで、定量分析を行うときにはタンデム分析を行わないという制御が必要になる。そのため、従来は、先ず、同定のためにタンデム質量分析を実施する定性分析を行い、次に質量スペクトルを取得する定量分析を実施している。
従来の定量分析の手順によると、先ず、幾つかの濃度で標準物質を分析する。そして、その標準物質由来のイオンのm/z(質量/電荷比)に対し、イオン強度の時間変化(マスクロマトグラム)を取得し、マスクロマトグラムのピーク面積を求める。この面積と試料物質濃度との関係より、検量線を作成する。次に、濃度が不明の同一物質を分析し、マスクロマトグラムのピーク面積を求める。そして、作成された検量線に基づき、マスクロマトグラムのピーク面積に対応する物質濃度を決定する。この方法は、標準物質を予め入手し、検量線を作成することが前提となるので、マーカー探索の対象となる未知成分には適用困難である。
特許文献1では、検量線を作成することができない未知成分に対し、相対的な定量解析を行い、マーカーを探索する方法が記載されている。この方法によると、先ず様々な成分を含む標準的な試料で分析データを取得し、次に同一の成分が含まれると期待される別の試料で分析データを取得し、各成分毎にイオン強度比(あるいは面積比)を算出する。そして、標準的なイオン強度比を求め、その値を用いて各成分のイオン強度比を規格化する。以上により、各成分の相対的なイオン強度比を決定することができ、イオン強度の変動が顕著な成分(マーカー候補)を特定することができる。マーカー候補の同定には、別途タンデム質量分析を優先的に行う分析が必要である。
また、検量線を作成することができない未知成分に対し、同位体標識法を用いることにより、相対定量解析を行うことができる。即ち、様々な成分を含む試料と同位体標識を施した標準的な試料を混入させることにより、相対的な定量分析が可能である(非特許文献1)。同位体標識された成分は、未標識成分と同時に検出されるが、検出イオンのm/zが所定の値だけ異なるので、そのイオンペアについてマスクロマトグラムのイオン強度(あるいはピーク面積)を比較することにより、各成分の濃度比を決定することができる。この手法を採用すれば、問題なく定量解析を行うことができる。しかし、この手法は、適用可能な試料の種類に制限があるうえ、手間やコストが掛かる。そのため、マーカー探索においては、同位体標識法が採用されないことが多い。
さて、LC/MSのインターフェースには、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)などのスプレーイオン化法や大気圧化学イオン化法(APCI)、大気圧光イオン化法(APPI)などが使用される。そして、ESIやガス噴霧支援ESI、ソニックスプレーイオン化法(SSI)などのスプレーイオン化法を用いたインターフェースにおいて、マトリックス効果やイオンサプレッション、イオンエンハンスメントと呼ばれる定量分析阻害要因が発生することが知られる。マトリックス効果やイオンサプレッションは、以下のような成分間の電荷の奪い合いが原因でイオン強度が変動してしまう現象であり、特許文献1に記載のような相対的な定量分析を行う場合においても、マトリックス効果やイオンサプレッションなどの定量分析阻害要因が発生すれば、分析データの解析結果は信頼性を損なう可能性がある。ちなみに、マトリックス効果はサンプルにイオン性の成分が多量に含まれる場合にイオン強度が低減する現象であり、サンプル調製において脱塩を充分に実施すれば回避することが可能である。
イオンサプレッションは、インターフェース(イオン化部)で発生可能なイオン量の最大値と比較して、イオン化の対象成分が同等以上の量である場合に発生する。この現象が発生すると、様々な成分の間で電荷の奪い合いが起こり、各成分の化学的な性質や量によりイオン化効率が低減する。その結果、検出されるイオン強度と成分濃度との関係に直線性が失われる(非特許文献2)という結果に至る。発生可能なイオン量の最大値Iは、液体流量Q、液体の電気伝導度κ、表面張力γを用いると、以下のような関係がある。
I=β(ε)(Qκγ/ε)1/2 (1)
ここで、βは定数、εは液体の誘電率である。イオンサプレッションの発生を未然に防止するためには、液体の電気伝導度κを高くするのが有効であることが(1)式より示される。ただ、電気伝導度κが高すぎるとイオン生成効率が低減する。そのため、酸などの移動相への添加により効率よくイオン生成ができる範囲でκを設定することが望ましい。換言すると、電気伝導度κは2つの相反する必要性を満たす必要があるため、実際にはイオンサプレッションを低減させるのに十分な高い値にすることができない。したがって、イオンサプレッション現象を条件によらず有効に防止することは困難である。
上記のような問題は、ESIなどのスプレーイオン化法だけでなく、大気圧化学イオン化法(APCI)などのLC/MSにおける他のインターフェースやGC/MSのイオン化部でも発生する可能性がある。インターフェース(イオン化部)で発生し得る最大のイオン量には上限があるためである。
一方、イオンエンハンスメントは、サンプルに含まれるイオン性の成分が増加することにより、インターフェース(イオン化部)で発生し得る最大のイオン量も増加することに起因する。その結果、各成分の化学的な性質や量によりイオン化効率が増加し、検出されるイオン強度が増加する現象である。
イオンサプレッションのような定量分析阻害要因の発生を検知する方法としては、内部標準物質を用いたイオン強度のモニタが挙げられる。たとえば、非特許文献3には、移動相成分が一定のイソクラティックLC(流量0.25mL/分)を用い、内部標準物質を分離カラムの下流側からインフュージョン(流量5μL/分)で導入することによる試料調製の評価方法が記載されている。試料が充分に精製されていない場合、試料の導入直後は試料に含まれる塩などの影響によりイオンサプレッションなどの定量分析阻害要因が発生し、内部標準物質由来イオンの強度が低減する。このイオン強度をモニタすることで、イオンサプレッションやマトリックス効果などの定量分析阻害要因を検知することができる。しかし、この方法は、LC分離後に比較的長い経路を通過させてからイオン化するため、LC流量が少ない場合に分離精度が低下しやすく、LC流量の高いセミミクロLCや汎用LCなどに有効であるが、LC流量が低いマイクロLCやナノLC(キャピラリーLC)などの分離手段には適用が困難である。さらに、内部標準物質の最適化がなされていない。
定量分析阻害要因の発生を抑制するためには、試料調製を見直して試料の純度を上げ、試料中の定量分析阻害要因となる不純物等を排除するか、あるいはLCでの分離条件を見直して時間をかけて分離するなどして分離成分に含まれる各種成分の種類を減らす必要がある。
米国特許第6,835,927号明細書 Y.Ishihara,T.Sato,T.Tabata,N.Miyamoto,K.Sagane,T.Nagasu,Y.Oda,Quantitative mouse brain proteomics using culture−derived isotope tags as internal standard,Nature Biotechnology 23(2005)617−621. K.Tang,J.S.Page,R.D.Smith,Charge competition and the linear dynamic range of detection in electrospray ionization mass spectrometry,Journal of American Society for Mass Spectrometry 15(2004)1416−1423. R.Bonfiglio,R.C.King,T.V.Olah,K.Merkle,The effects of sample preparation methods on variability of the electrospray ionization response for model drug compounds,Rapid Communications in Mass Spectrometry 13(1999)1175−11885.
以上説明してきたように、マーカー探索においては、疾病患者と健常者由来の試料を比較して変動成分を抽出し、変動成分を構成する多数の種類からなる未知の成分物質を精度よく同定して、イオンサプレッション現象等の定量分析阻害要因の影響を受けずに、高感度・高精度に成分物質の定量分析を行うことが求められる。しかも、この一連の解析をできるだけ短時間に行うこと、すなわち、高スループットが求められている。また、一連の解析をできるだけ低コストで行うことも必要とされている。
この要求に対し、従来の定量分析手法である検量線を用いた分析は、予め標準物質から検量線データを取得しておく必要があり、未知の物質を含む定量分析には適用できない。非特許文献1に記載されたような同位体標識法を用いた分析も、試料の種類が限定され、しかも手間がかかり、コストも高い。また、特許文献1に記載された相対的な定量解析手法は定量分析阻害要因によるイオン強度の変動の影響を避けられないため、分析結果の精度が低下する問題がある。
そこで、同位体標識法を用いず、しかもイオンサプレッション等の定量分析阻害要因の影響を受けない分析を行うことがマーカー探索に向けた課題となる。しかし、同位体標識法を用いずに定量解析する場合、定量分析阻害要因が発生すると、分析をやり直す必要が生じる。そのため、定性分析の回数と定量分析の回数を極力低くすることが、コストやスピードの面で重要である。
高スループット化については、次のような問題がある。マーカー探索では、タンデム質量分析をしないで質量スペクトルを取得する定量分析と、同定のためにタンデム質量分析を実施する定性分析が必要である。しかも、非常に多くの成分からなる試料を分析することが多いが、その場合、一回の分析で検出される全成分に対し定性分析を実施することは困難なことが多い(特開2005−091344号公報)。タンデム質量分析のスループットが有限だからである。したがって、多数回のタンデム質量分析が必要になり、一連のマーカー探索のスループットを上げることができない。
また、定量分析阻害要因の検出手法としては、非特許文献3に記載された手法では、液体流量の低いLCやグラジエントモードLCを用いた定量分析には精度が確保できず、そのため液体流量の低いLCによる高感度分析、微量な試料の分析ができないという問題がある。
LC流量が低い場合には、内部標準物質を分離カラムの上流から導入する必要が発生するが、そのためには内部標準物質が分離カラムに吸着されない必要がある。このことは、LC移動相における有機溶媒の混合比率が一定のイソクラティックモードのみならず、比率が時間的に変化するグラジエントモードにおいて非常に重要な問題である。そのため、内部標準物質の化学的性質を充分に考慮する必要がある。
さらに、イオンサプレッション等の定量分析阻害要因の発生を検知するためには、内部標準物質の化学的性質において、LC移動相における有機溶媒の混合比率が考慮される必要がある。即ち、有機溶媒比率が非常に低い水系の移動相の場合と、有機溶媒比率が非常に高い移動相の場合では、最適な内部標準物質の化学的性質は異なると考えられる。
本発明の課題は、以上の問題を解決し、同位体標識法を用いずに、定量分析阻害要因の影響を受けず、高感度に高スループットに定性、及び、定量解析を行うことである。同位体標識法を用いず、定性、定量分析を最低限の分析回数で信頼できるデータを取得するための分析方法を提供することである。
本発明のさらなる課題は、定量分析阻害要因の発生を検知する内部標準物質を提供することである。
本発明のさらなる課題は、定量分析阻害要因の発生を検知する内部標準物質を用いた自動分析装置や診断装置を提供することである。分析対象物質と類似した化学的性質を有すると期待される類縁体を標準試薬として定量分析を実施する場合には、定量分析阻害要因の発生を検知することが必要と考えられるためである。
上記課題を解決するために、以下の分析手法が提供される。即ち、先ず、分析成分と同時に検出される内部標準物質を液体クロマトグラフの移動相や溶出液に混合させ、定量分析阻害要因が発生しない条件下で、内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを取得し、データ解析部に記録させる。典型的には、分析サンプルを含まないブランク試料を分析する。次に、分析サンプルを混合して試料の分析データを取得するが、その際、データ解析部において分析実時間で内部標準物質由来イオンの強度をブランク試料分析時のものと比較する。このとき、イオン強度に不一致が検出されると、分析サンプル混合時に定量分析阻害要因が発生したと判断し、この場合には定量分析阻害要因により定性分析結果の精度が低下することから、分析モードをタンデム質量分析の優先度が低い定量分析モードからタンデム質量分析を優先させる定性分析モードに変更させる。そして、分析サンプルの混合量を低減するなどして分析実時間で内部標準物質由来イオンの強度がブランク試料のものと一致すれば、再度定量分析モードに変更させる。また、マスクロマトグラムにおいて内部標準物質由来イオンの強度が一致する時間帯がある場合には、この一致する時間帯における試料の分析データを有効な分析データとして取得する。この分析手法において、内部標準物質としては分析実時間の間安定して検出される性質を持つ物質を用いる。
また、イオンサプレッション等の定量分析阻害要因に敏感に反応する物質として、以下の内部標準物質を提供する。即ち、正イオン分析において、移動相における有機溶媒比率が低い水系の場合には、等電点あるいは(酸)解離定数が移動相のpH(水素イオン濃度)よりも顕著に低くなく、親水性が高い物質を提供する。また、有機溶媒比率が高い場合には、等電点あるいは解離定数が移動相のpHよりも顕著に低くなく、疎水性を有する物質を提供する。一方、負イオン分析においては、移動相における有機溶媒比率が低い水系の場合には、塩基性が高く、親水性が高い物質を提供する。即ち、等電点あるいは解離定数が8より高く、疎水性が低い物質を提供する。また、有機溶媒比率が高い場合には、塩基性が高く、疎水性を有する物質を提供する。
液体クロマトグラフを、移動相における有機溶媒比率が時間的に変化するグラジエントモードで使用する場合は、有機溶媒比率の変化範囲に応じて、親水性が高い内部標準物質と疎水性を有する内部標準物質を併用する。移動相の有機溶媒比率に応じて、内部標準物質由来イオンのイオン強度情報を使い分けて分析結果に反映させることにより、精度の高い定量分析を実施することができる。
また、一回のLC/MS分析において正負イオン検出モードを高速に切替えて分析する場合は、互いに等電点又は解離定数が異なる正イオン分析用と負イオン分析用の内部標準物質の両方を移動相あるいは溶出液に混入させてデータ取得を行う。内部標準物質由来イオンのイオン強度情報を正負イオンモード別に使い分けて分析結果に反映させることにより精度の高い定量分析を行うことができる。
また、さらなる効率向上のために、分析阻害要因に対する感度が大きく異なる2種類の内部標準物質を導入し、分析サンプルを混合して分析し両方の内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを比較することにより、一回の分析で分析阻害要因の発生を検出する手法も提供される。分析阻害要因に対する感度が大きく異なる2種類の内部標準物質として、等電点が異なる2種類の内部標準物質を選定する。
また、1種類の内部標準物質を導入し、その他に分析溶液内に存在して第二の内部標準物質になりうる物質を探索して第二の内部標準物質とし、両者のマスクロマトグラムを比較することで、一回の分析で分析阻害要因の発生を検出する手法も提供する。
さらにまた、上記課題を解決するための分析装置として、内部標準物質を混合して移動相を導入する移動相導入部と、試料導入部と分離部とイオン化・質量分析部とデータ解析部と画像表示部を持ち、分析サンプルを混合しない状態で内部標準物質に由来するイオンの第一のマスクロマトグラムを取得して記憶する手段と、分析サンプルを混合した状態で内部標準物質由来イオンの第二のマスクロマトグラムを取得して比較する手段と、第一と第二のマスクロマトグラムの不一致度が一定以下の場合に分析データを収集する手段を持つ分析装置を提供する。
また、第一、第二の内部標準物質が移動相に混合した状態で、両者のマスクロマトグラムを取得して比較し、比較結果に応じて分析データを収集する手段を持つ装置も提供する。さらに、第一の内部標準物質が移動相に混合した状態で、その他に分析溶液内に第二の内部標準物質になりうる物質を探索するための分析データモニタ手段を持ち、探索して得られた第二の内部標準物質と第一の内部標準物質のマスクロマトグラムを取得して比較し、比較結果に応じて分析データを収集する装置についても開示する。
さらに、内部標準物質を分析サンプルに混合させて分析を行うことにより、分析阻害要因の発生の有無を検出するとともに、有意に検出された場合には分析サンプルの試料調製プロトコルを一部変更して再分析を実施する装置についても開示する。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008−096710号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
内部標準物質をLCの移動相や溶出液に混合させ、まず分析阻害要因が発生しない条件でブランク試料を分析する。次に、分析サンプルを分析するが、その際分析実時間で内部標準物質由来イオンの強度を測定して分析実時間でブランク試料の分析結果と比較することで、分析サンプルが混合したときに分析阻害要因が発生したか否かを精度よく検出することができる。さらに、上記不一致度に基づき、定量データの誤差を評価することができる。
ブランク試料と分析サンプル混合時の内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを比較して一致する時間帯のデータは、分析阻害要因の影響を受けていないと判断して、イオン強度が一致する時間帯における分析サンプルの分析データを有効な分析データとして取得することで、分析時間の無駄を省き、分析の効率向上を図ることができる。
また、内部標準物質を2種類導入して一回の分析でマスクロマトグラムを取得して比較することで、一回の分析実時間内に分析阻害要因の発生を検知することができ、分析時間のさらなる短縮を図ることができる。
また、内部標準物質を予めLCの移動相に混入させることにより、液体流量の低いマイクロLCやナノLC(キャピラリーLC)を定量質量分析に使用することができる。このことは、高感度分析に有利であり、微量試料の分析が可能となる。
定量分析阻害要因が発生する場合、非常に多くの成分が同時に検出されることが多いので、定性分析を優先的に実施することにより、トータルの分析回数を低減させることが可能となり、高スループット化が可能になる。
さらに、検出成分の同定には、質量分析装置の質量精度を高く保つ必要がある。しかし、LCを用いたデータ取得では、分析中にm/z値の変動が検出されることがある。そこで、常に検出される内部標準物質(既知物質)由来のイオンのm/z値をモニタすることにより、検出イオンに対して正しいm/z値に補正することができる。このことにより、極めて高い質量精度の分析データを得ることができる。
また、定量分析阻害要因が発生していないことを確認できる場合、内部標準物質由来イオンの強度に基づき、検出イオンの強度(マスクロマトグラム面積)を規格化すると、データ間の比較を高い精度で行うことができる。分析ごとにイオン強度が多少は変動することがあるためである。
また、内部標準物質に対応するマスクロマトグラムにおいて、イオン強度が予め決められた不一致度(閾値)を超えて低減する場合、イオンサプレッション等の定量分析阻害要因が発生することが検知される。そして、その低減率はその時間に検出される他のイオンの強度の低減率の上限を与えるため、他のイオン強度や面積の誤差に低減率を反映させることができる。一方、内部標準物質に対応するマスクロマトグラムにおいて、イオン強度が予め決められた不一致度(閾値)を超えて増加する場合、イオンエンハンスメント等の定量分析阻害要因が発生することが検知される。そして、その増加率はその時間に検出される他のイオンの強度の増加率の下限を与えるため、他のイオン強度や面積の誤差に増加率を反映させることができる。
さらに、自動分析装置や診断装置において、イオンサプレッション等の定量分析阻害要因が検出される場合には、分析サンプルの調製方法などを一部変更して再分析を実施することにより、定量分析阻害要因が検出されない条件下で定量分析を実施することができる。
また、自動分析装置や診断装置において、内部標準物質由来イオンにおけるイオン強度や標準物質由来イオンにおけるイオン強度の情報を用いて、定量データの推定(補正)値及びその誤差を出力データに反映させることができる。
図1は、本発明の質量分析システムにおける一実施例の構成図である。
図2は、典型的なブランク試料分析データにおける内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムである。
図3は、本発明の質量分析システムにおける一実施例における、ブランク試料と分析サンプルの分析データにおける内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較と、定量分析阻害要因の発生検知の検知例を示す図である。
図4は、ブランク試料と分析サンプルの分析データにおける内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較と、定量分析阻害要因の発生が大規模な例を示す図である。
図5は、本発明の質量分析システムにおける一実施例において、二種類の内部標準物質を使用し、分析サンプルの分析データにおける内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較と、定量分析阻害要因の発生検知例を示す図である。
図6は、本発明の質量分析システムにおける一実施例におけるデータ解析部の画面、あるいは、質量分析装置の制御部の画面の模式図である。
図7は、本発明の別の質量分析システムにおける一実施例の構成図である。
図8は、本発明の質量分析システムにおける内部標準物質由来イオンの実測m/zの時間依存性の例を示す図である。
図9は、本発明の第1の実施例における分析工程を説明する図である。
図10は、本発明の第2の実施例における分析工程を説明する図である。
図11は、本発明の第3の実施例における分析工程を説明する図である。
図12は、本発明の質量分析システムを用いて取得した(a)全イオンクロマトグラム、及び、(b)内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較図である。
図13は、本発明の質量分析システムを用いて保持時間(1)に取得した質量スペクトルの比較図である。
図14は、本発明の質量分析システムを用いて保持時間(2)に取得した質量スペクトルの比較図である。
図15は、保持時間(1)及び(2)に検出されたイオンに対する、ピーク面積とインジェクション量との関係を示す図である。
図16は、本発明に関わる自動分析装置の模式的な平面図である。
図17は、本発明の一実施形態における自動分析装置のターンテーブル301及びターンテーブル305の断面模式図である。
101 移動相導入部
102 試料導入部
103 分離部
104 イオン化・質量分析部
105 データ解析部
106 画面表示部
107 分析モード制御部
108 制御系
109 分析モード選択ボタン
110 ポインタ
111 シリンジポンプ
112 ポインティングデバイス
113 データ記憶手段
114 レベル調整手段
115 不一致度算出・比較手段
116 一致時間帯検出手段
117 分析データ収集手段
201 移動相A
202 移動相B
203 移動相C
204 内部標準物質
205 ブランク試料又は分析サンプル
301 ターンテーブル
302 固相抽出カートリッジ
303 カートリッジ保持容器
304 圧力負荷部
307 液面センサー
308 回転式アーム
309 回転式アーム
310 試薬槽
311 試薬容器
312 カートリッジ保管部
313 サンプル搬送部
314 回転式アーム
315 ポンプ
316 サンプル導入部
317 イオン化部
318 質量分析部
319 制御部
1050 ブランク試料の分析ステップ
1051 リアルタイム分析制御ステップ
1201 内部標準物質由来イオンのイオン強度
1201a ブランク試料分析時の内部標準物質由来イオンのイオン強度(データa)
1201b 分析サンプル分析時の内部標準物質由来イオンのイオン強度(データb)
1202a 第1の内部標準物質由来イオンのイオン強度
1202b 第2の内部標準物質由来イオンのイオン強度
1401 内部標準物質のm/z理論値
1402 内部標準物質のm/zの測定値
1403 分析サンプルのm/z補正値
1404 分析サンプルのm/z測定値
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明の質量分析システムにおける一実施例の構成図を図1に示す。装置は、移動相導入部101、試料導入部102、分離部103、イオン化・質量分析部104、データ解析部105、画面表示部106、分析モード制御部107からなる。なお、データ解析部105、画面表示部106、分析モード制御部107をまとめて、制御系108とする。また、移動相導入部101、試料導入部102、分離部103、イオン化・質量分析部104、制御系108の各部は装置全体を統括するシステム制御部で総合的に制御され、装置各部間で双方向に制御状態の情報をやり取りしながら所望の動作を実現させている。移動相導入部101より移動相が導入され、様々な成分からなる試料205が試料導入部102で導入され、液体クロマトグラフ(LC)などの分離装置からなる分離部103において分離される。移動相導入部101には、移動相A(201)、B(202)のみならずC(203)が用意される。移動相A、Bは通常の逆相クロマトグラフで使用されるもので、典型的な移動相A(201)は2%アセトニトリル水(蟻酸0.1%)、移動相B(202)は98%アセトニトリル水(蟻酸0.1%)である。
また、移動相C(203)は、内部標準物質204を一定量だけ移動相Aに添加したものである。最初から、移動相A、Bに内部標準物質が添加される場合には、移動相Cは不要である。重要な点は、内部標準物質204が常に一定濃度で分離部103に導入されることである。試料導入部102に導入される試料(ブランク試料、分析サンプル等)205は、分離部103で分離され、分離成分として、逐次イオン化・質量分析部104に導入され、イオン化、及び、質量分析される。質量分析部の出力はデータ解析部105に導入され、分析データとして保存、及び、データ処理される。図1に示すデータ解析部105には画面表示部106が設けられており、分析実時間における「定量分析優先モード」か「定性分析優先モード」かなど、タンデム質量分析における優先度を示す情報が表示される。その他、全イオン強度の時間依存性(全イオンクロマトグラム)、及び、最新の質量スペクトル又はタンデム質量分析スペクトル等の分析状況が表示される。質量分析部104の制御は、データ解析部105で行われても、破線で示すように別の情報処理設備(分析モード制御部107)で行われても構わない。あるいは、後述するように画面表示部106に分析モード切替えボタンがあって、オペレータが切替え可能な構成であってもよい。
分析手順の概略は以下の通りである。まず、前述のような移動相A、B、Cを用意し、内部標準物質が含まれる移動相Cの比率を3%など一定に保ちつつ、移動相Aと移動相Bの混合比率をある初期値に設定し、時間を追って混合比率を変化させていく。典型的には、例えばスタート時に移動相AとBの混合比率を92%と5%とし(Cは3%固定)、60分後の終了時に比率を47%、50%となるように直線的に混合比率を変える。この混合比率の初期値と終了時の数値、混合時間等は一例であり、適宜、変えることが可能である。なお、この移動相A、Bの混合比を時間的に変えていくグラジエントモードはLC分離においてよく用いられる手法である。また、高スループット分析が要求される薬物動態解析などでは、LC分離においては、移動相A、Bの混合比を時間的に固定させたイソクラティックモードがしばしば利用される。
内部標準物質は、後述の条件により所望の物質を選定し用意しておく。内部標準物質は分析成分と同時に検出されるLC保持時間範囲で常に検出されるよう選定されており、これを移動相や移動相成分などに混合させ、また、試料導入部102からブランク試料を導入して、内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを取得し、データ解析部105に記録させる。データ解析部105には、データ記憶媒体等で構成したデータ記憶手段113が配置されている。このとき、定量分析阻害要因が発生しない条件下でデータ取得を行うことが必要である。そのため、試料導入部102で導入するブランク試料として移動相Aと同一の物質、あるいは純水を導入するなどして移動相に予め存在する物質以外のものを混入しない。また、ブランク試料には不純物が含まれないように注意が必要である。そして、内部標準物質はそれ自体がイオンサプレッションを生じないために、イオン検出に必要な最小限の量だけが含まれていることが必要である。次に、ブランク試料の代わりに試料導入部102で分析サンプルを導入し、内部標準物質を同量混合させた試料の分析データを取得し、データ解析部に記録させる。
典型的な内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを図2に示す。横軸はLCの保持時間、縦軸はイオン強度である。このデータは、液体クロマトグラフ/質量分析装置(LC/MS)を用いて取得したものである。通常、LC/MSにおけるLCでは、分離カラムに逆相カラムが使用されるため、この内部標準物質は逆相カラムを素通りできる程度の高い親水性を有することが望ましい。親水性が非常に高いと、移動相に含まれる内部標準物質由来のイオンが、分離の保持時間において常に安定して検出されるため、定量分析阻害要因の発生を常にモニタすることができる。図2の例では、内部標準物質にアミノ酸配列がSSSSSSKである合成ペプチドを用いた。そして、ブランク試料には純水を用いた。本実施例では、保持時間0のタイミングでブランク試料の純水を導入したところ12.6分後に純水が溶出した。そのため、図2の内部標準物質由来イオンのイオン強度1201は保持時間12.6分において落ち込んでおり、内部標準物質由来のイオンが検出されなくなっている。この時間範囲においては、試料に含まれる分離されない成分が溶出しており、定量解析の対象外と考えれば、定量分析阻害要因の発生をモニタできなくても問題はない。一方、他の時間範囲では、イオン強度の保持時間依存性が非常に低く、滑らかにしか変化しない。このことは、この内部標準物質のイオン化効率が、移動相成分の変化により、顕著に変化しないと説明される。
定量分析阻害要因であるイオンサプレッションの原理について、以下に簡単に述べる。エレクトロスプレーイオン化法などのスプレーイオン化法では、先ず、液体の噴霧によりミクロン程度のサイズの帯電液滴が生成される。この帯電液滴においては、液相のイオンは静電反発力により液滴表面に分布する。次に、帯電液滴から溶媒分子が蒸発することにより、帯電液滴からイオン蒸発過程あるいは電荷残留過程により気体状イオンが生成される。そのため、質量分析計で検出される気体状イオンの主要な起源は、帯電液滴の表面に存在する液相のイオンである。帯電液滴は溶媒分子が蒸発することによりサイズが減少し、表面の電荷密度は増加する。このことにより、液滴表面近傍の電荷を帯びていない分析対象物質もイオン化(プロトン付加など)が進行する。そして、液滴表面の電荷に対して、分析対象物質の量が充分に少ない場合には、分析対象物質のイオン化効率は一定となる。この条件が成立している場合には、検出イオンの強度とサンプル量との関係は一定となる。ところが、分析対象物質の量が液滴表面の電荷と同等以上の場合には、分析対象物質への電荷の供給が一部不足し、液滴表面で分析対象物質間の電荷の奪い合いが発生する。この結果、帯電液滴から気体状イオンが生成される効率が変動(低減)する。即ち、イオンサプレッションの発生である。そして、イオン化効率の低減率は分析対象物質の物理化学的性質に依存する。上記イオン生成過程によると、イオンサプレッションの影響を受け易い分析対象物質を特徴付ける主な要素は、1)液相での電離度の低さ(又は、帯電液滴の逆極性に帯電する性質)と、2)液滴表面への接近のし易さ(表面活性の低さ)と、の2点であると考察される。そして、この表面活性の低さは、疎水性や親水性で表現することができる。一方、液相で完全に電離する成分は、イオンとして帯電液滴表面に存在することができ、イオンサプレッションの影響は受け難いと考えられる。一方、イオンエンハンスメントなどの定量分析阻害要因は、イオン性物質の急激な増加により発生する。この場合、液滴表面の電荷が増加する結果、分析対象物質のイオン化効率は増加する。このイオン化効率の増加率も分析対象物質の物理化学的性質に依存するが、影響を特徴付ける要素は、イオンサプレッション等の場合と同様である。
そこで、定量分析阻害要因の発生をモニタするための内部標準物質の選定において、発明者らは、内部標準物質の等電点又は解離定数(あるいは酸性/塩基性)と疎水性/親水性とが指標に使えることを初めて見出した。等電点とは、両性電解質化合物に対し、化合物全体の電荷平均が0となるときのpHである。等電点が7より低い内部標準物質は酸性であり、正イオン分析において定量分析阻害要因に敏感に反応して定量分析阻害要因の検知に有利であることを確認した。一般的には、解離定数(pK)が7より低い酸性物質は、正イオン分析において定量分析阻害要因に敏感に反応して定量分析阻害要因の検知に有利である。また、解離定数(pK)や等電点が7より高い塩基性物質は、負イオン分析において定量分析阻害要因に敏感に反応して定量分析阻害要因の検知に有利である。一方、疎水性(あるいは親水性)については、有機溶媒比率が低い移動相においては、平均的な疎水性(あるいは親水性)を有するアミノ酸であるGかAに比較し、疎水性が低い(あるいは親水性が高い)ことが必要条件となる。また、有機溶媒比率が50%より高い移動相においては、GかAに比較して高い疎水性を有することが必要条件となる。なお、逆相LC/MSで使用される移動相には、LC分離性とイオン化の兼ね合いから、蟻酸などの酸が添加され、pHが3程度に調製されている場合が多い。そのため、等電点が移動相のpHより充分に低くなると、正イオンの生成効率は非常に低くなりすぎる可能性が生じることに配慮が必要と考えられる。
イオン化効率が低すぎる場合、内部標準物質を高濃度で移動相に混入する必要があり、内部標準物質として好ましくない。定量分析阻害要因の発生は、イオン化される物質の量に依存するため、内部標準物質の添加自体が定量分析阻害を引き起こす可能性があるからである。以上の観点から、有機溶媒比率が低い移動相を用いて正イオンを分析する場合には、親水性が高く、等電点が3以上で8以下である合成ペプチド(DSSSSSやEQQQQQなどの酸性ペプチド、等電点はそれぞれ3.8、4.0)などは内部標準物質に最も好適である。勿論、解離定数が7以下の(ペプチドでない)化合物でも、内部標準物質に用いることができる。そして、解離定数(pK)や等電点が4以下であるものが最も好適である。一方、等電点が8以上の塩基性ペプチド(SSSSSKやSSKSSK、等電点はそれぞれ8.5、10.0)や解離定数が8以上の塩基性化合物、なども同様に内部標準物質として使用できる。ただ、塩基性化合物では、酸性化合物より定量分析阻害要因による影響が少なく検知に不利であることに加え、一価のプロトン化分子のみならず多価のプロトン化分子も生成されやすい傾向がある。多価のプロトン化分子(多価イオン)は気相イオン分子反応による脱プロトン化を受けて、一価イオンになることがありえる。このことは、イオン強度が低減することに対応し、定量分析阻害要因の検知と区別することが困難となり得ることを意味する。
したがって、有機溶媒比率が低い移動相の場合には、多価イオンが生成されやすい等電点が8以上の塩基性化合物は定量分析阻害要因の検知には不適当である。以上をまとめると、有機溶媒比率が低い移動相を用いて正イオンを分析する場合には、疎水性が低い(親水性が高い)うえ、酸性で等電点又は解離定数が4以下で2以上の範囲にある低い値を有し、また一価のプロトン付加分子だけが検出される物質、すなわち等電点又は解離定数が2程度から8までの物質が、内部標準物質に最も好適である。ペプチドを例にとれば、等電点が3以下のアミノ酸がD(等電点2.8)のみで、大抵の成分は等電点が3以上である。そのため、等電点又は解離定数が3程度の性質を有する内部標準物質を用いれば、この内部標準物質由来イオンはイオンサプレッションなどの定量分析阻害要因に最も強く影響を受けると考えることができる。このような内部標準物質に利用可能なペプチドには、典型的な酸性アミノ酸であるDやE、及び、親水性が高く電離し難いSやQ、Nなどをアミノ酸配列に含むものを選択すればよく、DSSSSSやENNNNNなどが好適である。(DやEは親水性が高いうえ、pK(側鎖)は4程度である。)一方、負イオンを分析する場合には、親水性が高い(疎水性が低い)うえ、塩基性で等電点が高い物質が内部標準物質に最も好適である。このような内部標準物質に利用可能なペプチドとしては、典型的な塩基性アミノ酸であるRやK、及び親水性の高いSやQ、Nなどをアミノ酸配列に含むものを選択すればよい。RやKも親水性が高いうえ、等電点は9以上であり、pK(側鎖)では10以上である。一方、SやQ、Nは親水性が高いだけでなく、液相で電離し難い性質を有する。このようなペプチド例としては、KNNNNNとRNNNNNが挙げられ、等電点はそれぞれ8.75と9.75と8以上である。勿論、内部標準物質はペプチドでなければならない理由はなく、上記性質を有した化合物であれば同様に使用できる。
また、50%を超える高い有機溶媒比率の移動相を用いて正イオンを分析する場合には、疎水性を有し、等電点が8以下である合成ペプチドなどは内部標準物質に用いることができる。特に、等電点や解離定数が4以下のペプチドやそれ以外の化合物は、内部標準物質に最も好適である。一方、等電点が8以上の塩基性ペプチドや解離定数が7以上の塩基性化合物、なども同様に内部標準物質として使用できる。ただ、塩基性化合物では、酸性化合物より定量分析阻害要因による影響が少なく検知に不利であることに加え、一価のプロトン化分子のみならず多価のプロトン化分子も生成されやすい傾向がある。多価のプロトン化分子(多価イオン)は気相イオン分子反応による脱プロトン化を受けて、一価イオンになることがありえる。このことは、イオン強度が低減することに対応し、定量分析阻害要因の検知と区別することが困難となり得ることを意味する。
したがって、有機溶媒比率が高い移動相の場合には、多価イオンが生成されやすい等電点が8以上の塩基性化合物は定量分析阻害要因の検知には不適当である。以上をまとめると、有機溶媒比率が高い移動相を用いて正イオンを分析する場合には、疎水性を有するうえ、酸性で等電点又は解離定数が低い値を有し、一価のプロトン付加分子だけが検出される物質、すなわち等電点又は解離定数が2から8までの範囲にある物質が、内部標準物質に最も好適である。ペプチドを例にとれば、等電点が3以下のアミノ酸がD(等電点2.8)のみで、大抵の成分は等電点が3以上である。そのため、等電点又は解離定数が3程度の性質を有する内部標準物質を用いれば、この内部標準物質由来イオンはイオンサプレッションなどの定量分析阻害要因に最も強く影響を受けると考えることができる。このような内部標準物質に利用可能なペプチドには、典型的な酸性アミノ酸であるDやE、及び、疎水性を有して電離し難いGやF、Lなどをアミノ酸配列に含むものを選択すればよく、FDFGFやEFGFGFなどの酸性ペプチド(等電点はそれぞれ3.8、4.0)などが好適である。(DやEは親水性が高いうえ、pK(側鎖)は4程度である。)一方、負イオンを分析する場合には、疎水性を有し、塩基性で等電点又は解離定数が8以上である物質が内部標準物質に最も好適である。このような内部標準物質に利用可能なペプチドとしては、典型的な塩基性アミノ酸であるRやK、及び、疎水性を有するGやFなどをアミノ酸配列に含むものを選択すればよい。RやKも親水性が高いうえ、等電点は9以上であり、pK(側鎖)では10以上である。一方、GやF、Lは疎水性を有するだけでなく、液相で電離し難い性質を有する。このようなペプチド例としては、KGGGGGとRFFFFFなどが挙げられ、等電点はそれぞれ8.75と9.75と8以上である。勿論、内部標準物質はペプチドでなければならない理由はなく、上記性質を有した化合物であれば同様に使用できる。
液体クロマトグラフをグラジエントモードで使用する場合、移動相における有機溶媒比率が時間的に変化する。それでも、有機溶媒比率が常に50%以下の場合には、疎水性の低い内部標準物質を使用することができる。また、有機溶媒比率が常に70%以上の場合には、疎水性を有する内部標準物質を使用することができる。しかし、有機溶媒比率が40%から90%まで変化するような場合には、疎水性の低い内部標準物質か疎水性を有するものかの両者のうちの一方だけを使用することは、精度の高い定量分析を行うためには好ましくない。この場合には、両者を併用することが望ましい。そして、移動相の有機溶媒比率に応じて、各々の内部標準物質由来イオンのイオン強度情報に基づいた定量分析阻害要因発生の有無や影響の程度(誤差)を分析結果に反映させることにより、精度の高い定量分析を実施することができる。この場合、一方の内部標準物質由来イオンのイオン強度情報により定量分析阻害要因の発生が検出されれば、他方で検出されていなくても、定量分析阻害要因が発生していることが判明する。そして、両者の内部標準物質由来イオンにより定量分析阻害要因の発生が検出される場合には、変動の大きい方を定量誤差に反映させることができる。また、一回のLC/MS分析において正負イオン検出モードを高速に切り替える分析モードを使用する場合、正負イオンの分析データを同時に取得することができる。この場合には、正イオン分析用と負イオン分析用の内部標準物質の両方をLC移動相あるいは溶出液に混入させてデータ取得を行い、内部標準物質由来イオンのイオン強度情報を正負イオンモード別に使い分けて分析結果に反映させることにより精度の高い定量分析を行うことができる。
最後に、内部標準物質の分子量について、検討が必要である。質量分析装置の質量分解能で識別ができない程度に、内部標準物由来イオンのm/zが他の検出イオンのm/zと重なると、内部標準物由来イオンの強度が増加したと誤認識する可能性が発生する。この場合、後述のように、イオンサプレッションの検出が困難となる。そのため、例えばペプチドの分析では、内部標準物由来イオンのm/zが600以上あるいは350以下であると他の検出イオンのm/zと重なる可能性が非常に低いと経験的に期待される。また、低分子化合物を分析する場合にはm/zが500以上のものは稀であり、内部標準物由来イオンのm/zが400以上であれば、問題ないと考えられる。一般的に、内部標準物質は分子量が大きくなると疎水性が高くなる傾向があるので、分子量は1000以下が望ましい。
このような内部標準物質を用いる分析では、定量分析阻害要因の発生により、内部標準物質由来イオンの強度が低減あるいは増大する。それと同時に、他イオンも強度が低減あるいは増大する可能性がある。そして、イオンサプレッションなどが発生した時には、イオン強度低減率の上限は内部標準物質由来イオンの強度低減率となる。この性質を利用すれば、内部標準物質由来イオンのイオン強度低減率を、他成分の強度測定値における最大の低減率として誤差に含めることができ、様々なデータの統計的な処理に反映することが可能である。実際には分析データには必ず測定誤差が含まれるため、その誤差に基づく閾値を設定し、それよりも内部標準物質由来イオンのイオン強度低減率の方が低い場合には誤差として閾値を採用し、逆の場合には誤差に内部標準物質由来イオンのイオン強度低減率を採用すればよい。同様に、イオンエンハンスメント発生時には、内部標準物質由来のイオンのイオン強度が増大する。この増大率は他成分の強度測定値における増大率の下限として誤差に含めることができ、様々なデータの統計的な処理に反映することが可能である。なお、ここで説明した等電点や解離定数の数値はすべて概略の目安であり、経験的には10%程度の誤差があってもかまわない。
また、これまではESIやガス噴霧支援ESI、ソニックスプレーイオン化法(SSI)などのスプレーイオン化法を用いた分析を前提としたが、APCIを用いる場合には、気相イオン分子反応を支配するプロトン親和力が、等電点や解離定数に代わって重要な物理量となる。即ち、内部標準物質のプロトン親和力を低く設定することにより、定量分析阻害要因を最も受け易くすることができる。例えば、アミノ酸などのプロトン親和力は200kcal/mol以上なので、それよりもプロトン親和力が低く親水性の高い成分が内部標準物質の候補である。LC移動相溶媒に含まれる水(約165kcal/mol)やメタノール(約180kcal/mol)、アセトニトリル(約187kcal/mol)などの利用が便利である。定量分析阻害要因発生によるイオン強度の低減率は、ESIの場合と同様に扱うことができる。最後に、内部標準物質の第三の要求条件としては、イオンのm/zが分析対象成分のそれと異なることである。
図12に、血漿サンプルの分析例を示す。インジェクション量が0.5μgから0.005μgまで二桁変化させた場合の、全イオンクロマトグラムを(a)に重ねて示す。また、内部標準物質(DSSSSS)由来イオンのマスクロマトグラムを(b)に重ねて示す。この結果より、インジェクション量が0.005μgの場合には、内部標準物質(DSSSSS)由来イオンの強度に低減が観測されない。そのため、ブランクサンプルの分析結果と同等であると考えられ、この分析データは定量解析を実施しても問題ないことが示される。ところが、インジェクション量が0.05μgの場合には、内部標準物質由来イオンの強度が保持時間50分以降で20から40%程度低減している。そのため、保持時間50分以降では、他のイオン強度も可能性としては同程度まで低減すると考えられる。そして、インジェクション量が0.5μgの場合には、分離成分が検出される殆ど全ての保持時間領域において、内部標準物質由来イオンの強度が顕著に低減している。図12の例では、グラジエントモードでLC分離を実施している。一方、イソクラティックモードでLC分離を実施する場合には、移動相の組成が一定である。そのため、定量分析阻害要因が発生しない限り、内部標準物質由来イオンのイオン強度は一定である。このような場合には、図12(b)に示すような内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムにおいて、12分頃におけるサンプルのインジェクションによるイオン強度の低減が観測されるまでは、ブランクサンプルと全く同一のイオン強度を示す。したがって、このような場合には、特にブランクサンプルの分析結果を記憶させておく必要はない。保持時間の早い時間領域における平均的なイオン強度をブランクサンプルの分析結果と同等に扱うことができる。この時間領域が2分以上あると、定量分析阻害要因の発生の有無を高い精度で検知することができる。
図12において、(1)及び(2)で示される保持時間において取得された質量スペクトルの比較を図13及び図14に示す。インジェクション量が最大の場合(c)に取得された質量スペクトルのパターンは、インジェクション量が低い場合((a)や(b))の結果と異なることが示される。この差異は、イオンサプレッションの発生によると説明される。図13及び図14において検出されるイオン(それぞれm/z=637.97、588.96)に着目し、これらのイオンピークの面積(質量スペクトルにおけるピーク面積を保持時間方向に積算したもの)とインジェクション量との関係を図15に示す。
この図は両対数プロットであるため、傾きが1の直線にフィッティングできる場合には定量解析が可能である。図15に示されるように、上記2種類のイオンについては、インジェクション量が0.005と0.05μgの場合は殆ど傾き1の直線上にデータポイントがプロットできるが、インジェクション量が0.5μgの場合には傾き1の直線からデータポイントが明確に外れている。これらのイオンは、0.5μgの場合に、顕著なイオンサプレッションを受けたと説明される。そして、直線からのズレは、内部標準物質由来イオンの強度の低減よりも少ないことが示される。このことは、イオン強度の低減率が内部標準物質由来イオンのそれ以下となるという説明と一致する。
定量解析を行う場合、検出イオンは、そのイオンの保持時間やm/z(又はm若しくはmとz)、ピーク面積又はイオン強度、及び、ピーク面積又はイオン強度の誤差を纏めてデータセットとして処理される。このピーク面積の誤差に、サンプル調製における誤差や質量分析装置における測定誤差だけでなく、イオンサプレッションやイオンエンハンスメントの効果も含めることにより、データ解析結果の精度向上に重要と考えられる。また、検出イオンは、そのイオンの保持時間やm/z(又はm若しくはmとz)、ピーク面積又はイオン強度、及び、定量分析阻害要因の発生の有無を纏めてデータセットとして処理しても構わない。この場合は、定量分析阻害要因が発生した保持時間領域のデータは解析から除外することにより、データ解析結果の精度保持が期待できる。
上記のようなデータセットを用いると、複数サンプルの比較では、保持時間とm/z(又はmとz)が一致するイオンに対するデータセットにおけるピーク面積又はイオン強度を比較解析することができる。そして、データセットに含まれるピーク面積又はイオン強度の誤差を考慮することにより、変動の有無や程度を精度よく解析することが可能となる。
図3には、データ解析部の画面表示部における表示データの例を示す。また、本実施例における分析工程の流れを図9に示し、以下図3と図9を用い、分析工程を詳細に説明する。なお、図9には疾病患者、あるいは健常者のいずれかの検体を分析する素工程を示しており、図9の分析に入る前に両者の顕著な差分を持つ変動成分を抽出してあって図9では変動成分のみを分析するのでもよいし、変動成分をまだ特定せずにすべての構成要素を分析する目的で各検体を図9の工程で分析してもよい。
図3は、BSA(ウシ血清アルブミン)のトリプシン酵素消化産物を分析サンプルとして分析した際の内部標準物質由来イオンのイオン強度1201b(データb、黒の実線)とブランク試料を分析した際の内部標準物質由来イオンのイオン強度1201a(データa、グレーの実線)の例である。内部標準物質としては、図2と同様にアミノ酸配列がSSSSSSKである合成ペプチドを用いた。図9に示すように、分析開始(S1001)後、まず移動相A、B、及び内部標準物質を含有する移動相Cを所定の混合比率(初期値)で混合して移動相導入部から導入し、ブランク試料をほぼ同時に試料導入部から導入する(S1002)。このブランク試料導入のタイミングを時間0として分析を開始する。次に、移動相Cの混合比を一定に保ったまま、移動相A、Bの混合比を所定の変化量で時間変化させながら移動相を導入し(S1003)、内部標準物質の濃度は常に一定になるように制御し、逐次、LCによる分離(S1004)、イオン化部によるイオン化(S1005)、質量分析部による質量分析、内部標準物質由来イオンのイオン強度、すなわちマスクロマトグラムのデータ(データa)取得を行う(S1006)。所定の時間をかけて移動相の混合比を終了時の混合比まで変化させて分析データを取得したら、終了(S1007)してデータをデータaとしてデータ記憶部に記憶する(S1008)。以上のステップで、ブランク試料を用いて取得した参照用の内部標準物質のマスクロマトグラム(データa)を取得した(1050)。
次に、分析サンプルを導入して同様に内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムデータを取得する。まず、データa取得時と同様に、移動相A、B、Cの混合比を初期値に設定して移動相へ導入し、ほぼ同時に分析サンプルを導入する(S1009)。次に、移動相Cの混合比を一定に保ったまま、移動相A、Bの混合比をデータa取得時と同様に時間変化させ(S1010)、ステップ1004〜1006と同様に逐次分離(S1011)、イオン化(S1012)し検出イオンの質量分析、内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムのデータ(データb)取得を行う(S1013)。このとき、分析時には後述するようにリアルタイム分析制御(1051)を行いながらデータ解析・分析(S1021)を行う。以上のステップで、分析サンプルを導入して内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラム取得とサンプルの分析を同時に行う(S1009〜S1023)。
LC/MSのインターフェースにおいてはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いているが、分析毎のイオン強度が必ずしも一致するとは限らない。そこで、試料に含まれる分離されない成分が溶出する直前の保持時間帯(図3中の時間帯I)において、イオン強度を規格化、すなわちレベル調整をしている。図中の時間帯IIIにおいて、内部標準物質由来のイオンの強度がほぼ一致しており、広い範囲で定量分析阻害要因が発生していないことが示される。一方、図3中時間帯IVで示した時間帯では、イオン強度が一致していない。この不一致の発生が、データb取得時(すなわち分析サンプル混合時)にはイオンサプレッション等の定量分析阻害要因が発生し、内部標準物質由来イオンの強度が変動していることを現していると解釈できる。データの規格化及び比較は、高周波なノイズ成分の影響を受けずに各保持時間における平均レベルをもとに規格化及び比較を行うようにデータを処理する。たとえばデータの高周波数成分を除去するなどして低周波数成分を抽出し、同じ保持時間におけるデータ同士を比較演算する。たとえば、規格化処理においては、データaの大きさを100%としてデータbが100%±5%になるように表示を調整する。この±5%は一例であり、予め規格化(レベル調整)許容範囲として制御系8において記憶するか、オペレータが入力できるようにしておく。また、比較処理においても、ほぼ同様にデータaを100%とし、データbがaに対し何%であるかを計算する。たとえばデータbがaに対し97%であるとき、3%の違いがあると判断する。このようにして求めた数値(ここでは3%)を、以下、差分比率と称し、データa、bの不一致度を示す指標とする。
なお、データを詳細に見ると、時間帯IIIにおいても、データaとデータbは数%程度以内の誤差があることがわかる。この数%の誤差は、通常のLC/MSによるマスクロマトグラムの測定ばらつきとしてよく知られたものである。このようなマスクロマトグラムにおけるイオン強度の誤差があるため、データaとbの差分が装置の測定誤差から来る数%以内の微小なずれであれば測定ばらつきとして許容し、データaとbの差がある閾値を超えたときには、定量分析阻害要因による差分が発生したと判定する必要がある。そこで、この判断基準となる差分比率(不一致度)閾値を予め決めておき、データを取得してリアルタイムに差分比率(不一致度)を算出し不一致度閾値と比較する。この不一致度閾値は、上記の規格化許容範囲と同様に、予め制御系8に記憶させておくか、あるいはオペレータが入力できるようにしておく。本実施例では、装置の誤差が標準的なレベルとして5〜10%程度の測定誤差を持つことから、差分比率(不一致度)閾値を15%と設定した。すなわち、データaとbの差分比率dが15%を超えたときに、定量分析阻害要因として判定することにした。このような誤差は質量分析装置に依存すると考えられ、装置に応じた誤差がデータ解析部105に入力できるように構成している。なお、図1のデータ解析部105には、以上説明したデータa、b間のレベル調整を行う演算や画像表示制御を行うレベル調整手段114と、データ間の不一致度を計算して予め記憶させた不一致度閾値と比較する演算手段115が内蔵されている。
さて、検出された図3中時間帯IVの上記不一致は、イオンサプレッションのような定量分析阻害要因が発生したことを示し、時間帯IVでは試料の分析データの精度が低下し定量解析が困難である。一方、時間帯IIIでのデータは十分な精度があり定量解析が可能である。そこで、時間帯IIIにおける分析サンプルのデータだけを抽出することにより、この時間帯における分析サンプルの定量分析を行う。この時間帯IIIで分析サンプルの定量分析が十分行えれば、そのまま信頼性の高い定量解析を行うことが可能となる。これにより、分析中に定量分析阻害要因が発生する場合にも、阻害要因の影響を受けない時間帯のデータを有効に活用でき、分析の無駄を省くことができる。また、時間帯IVにおいては、定量評価阻害要因が発生して定量評価結果の精度が低下してデータを使用できないため、後述するように、時間帯IVにおいては分析実時間で定性評価を優先して行うように分析モードを切替えてもよい。また、一回の分析でデータが取り切れない場合には、以上の分析を繰り返してもよい。
また、このようなイオンサプレッションのような定量分析阻害要因の発生を検知した場合、試料の濃度低減や精製、分離などを施すことにより、定量分析阻害要因を発生させない試料を調製することが可能である。この場合も、データ解析部の画面表示部において、試料の調製にフィードバックをかけて再調製した結果内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムに不一致が観測されなければ、定量分析阻害要因が発生しなくなったことを確認することができる。試料の調製条件の変化を繰り返し行い、定量分析阻害要因が発生しないか、あるいは発生するが影響を受けずに定量分析できる時間帯が一定の時間以上に確保されるときには、試料の調製条件の変更を停止させるように制御してもよい。
図4に、顕著に定量分析阻害要因が発生する例を示す。この例では、図中時間帯IIIで示す非常に広い範囲で内部標準物質由来イオンのイオン強度に不一致が発生して定量分析阻害要因が発生することが示され、このデータは定量解析に不適であることが示される。この場合は、1)分析サンプルの量を1/10程度に低減させる、2)試料調製において予め分離・分画を実施する、3)試料調製において脱塩などによるイオン性の不純物を除去する、などの対策を施してから、再分析を実施することが必要である。このように、イオン強度の不一致の度合いによっては、試料に対策を施さないと有効な定量分析データが取得できない場合がある。これも、予めイオン強度の不一致領域と一致領域の時間に基準値を設け、基準時間よりもイオン強度の一致領域の時間が短い場合、試料の調製を順次やり直すように制御するよう制御系を構成した。この基準時間も、予め制御部8に記憶させるか、オペレータが入力してもよい。
なお、図4中に破線の楕円で示す保持時間帯には、サンプル分析データにおける内部標準物質由来イオンの強度1201b(データb)が増加し、ブランク試料のそれ1201a(データa)と同等になっている。しかし、この場合の質量スペクトルを調べると、内部標準物質由来イオンとは別だがm/zが同等のイオンが検出されていた。したがって、この保持時間帯においても、定量分析阻害要因が発生しなかった訳ではない。このように、非常に複雑な試料を分析する場合は、内部標準物質由来イオンとm/zが殆ど一致するイオンが観測されることがあり、このことが定量分析阻害要因の検知に悪影響を与える可能性がある。そこで、分析の実時間で内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較を実施し、不一致が発生した場合にはMS/MSなどのタンデム質量分析を実施すると便利である。予め内部標準物質由来イオンのイオン強度とタンデム質量分析スペクトルで検出される解離イオンの強度との関係を調べておくことにより、実時間でのタンデム質量分析スペクトル取得により、内部標準物質由来イオンの本来のイオン強度が求められるためである。
さて、プロテオーム解析やメタボローム解析、マーカー探索においては、試料に含まれる成分が必ずしも既知でないため、定性(同定)解析と定量(変動)解析の両方が必要である。しかし、定性(同定)解析では通常の質量スペクトルだけでなくMS/MSなどのタンデム質量分析スペクトルを高スループットで取得することが必要であるのに対し、定量(変動)解析では極力タンデム質量分析を実施しないで通常の質量スペクトルを高スループットで取得することが必要である。即ち、目的に応じて、質量分析装置で取得されるデータの優先順位が異なる。
従来は、たとえば定性分析を先に行い、全ての成分を同定した後に定量分析を行うという手法が一般的であった。具体的には、分析装置の制御部8には分析手順を指示するファイルが格納され、定性分析を行う際に制御部8はこの分析手順指示ファイルを参照して、例えば一度通常の質量分析を行った後、スペクトルのピークを上位10種類まで抽出してタンデム分析し、再度通常の質量分析を行って成分を確認し再度スペクトルから次の上位10種類抽出してタンデム分析するという繰り返しを行って全成分の定性分析を行っていた。このとき、定性分析しようとする成分の種類が少なく、例えば15種類程度の成分しかない場合には、2回目のタンデム分析で全成分を定性分析して終了したらその後は通常の質量分析による定量分析を行うという制御をすることもあった。これを定性分析優先モードと称することもあった。
このような定性分析が終了して定量分析を行う際には、別の分析手順指示ファイルが予め制御部8に格納されていてこれを制御部8が参照し、通常の質量分析を実施して高精度な定量分析を行っていた。すなわち、定性、定量分析にはそれぞれ定性、定量分析用の分析手順指示ファイル(第一、第二の分析手順指示ファイル)が格納されてこれらによる制御が行われ、定性分析→定量分析の順に分析が実行されるのが一般的であった。しかし、予め、定性(同定)解析を目的とするデータ取得を実施し、その後に定量(変動)解析を目的とするデータ取得を実施するので、状況にあわせた高スループットな分析ができなかった。これに対し、分析モードを実時間で変更する機能があれば、多成分が含まれる試料を分析する場合に高スループット化の観点で有利である。
そこで、図1、図6に示すように、本発明では、分析の実時間で、内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムの比較を実施し、不一致が発生した場合には定性(同定)分析優先モードに切替えるなど分析モードを変更するように制御系を構成した。すなわち、定性/定量分析を行う順序を、取得するデータに応じてリアルタイムに制御する。本実施例では、例えば、まず定量分析を優先して分析を行う(定量分析優先モード)。そして、前述した手法で定量分析阻害要因の有無を判定し、阻害要因の影響を受けていない時間帯には定量分析を続行して分析データを制御部8に格納する。阻害要因が発生して影響が顕在化していることを検出した際には、定量分析の精度は低下すると考えられるので定性分析を優先するように切替える(定性分析優先モード)。これにより、定量分析阻害要因の影響を受ける時間帯にも、効率よく定性分析を行うことが可能になった。
上記定量分析優先モードについてさらに詳細に説明する。従来は、定量分析モードであればタンデムによる定性分析を行わない制御を行うのが一般的であった。これに対し、本実施例では、新たに、定量分析中にも、スペクトルの特徴によっては定性分析を行えるように制御を行った。これを称して定量分析優先モードと呼ぶ。例えば、定量分析阻害要因が検出されない時間帯にも、予め分析サンプル中に存在すると予想される成分を制御部8に記憶しておき、定量分析によって予想しなかった成分のスペクトルが得られた場合には、定量分析中に定性分析を実行してもよい。この機能を利用し、例えば、健常者の検体から、分析サンプルの成分分析結果を取得して制御部8に記憶しておき、疾病患者の検体を分析する際にこれを参照し、健常者から検出されなかった成分についてだけ定性分析に切替えて同定することも可能になった。このように分析手順を制御することで、マーカー探索等において精度、効率(すなわちスループット)とも飛躍的に向上させることができた。
この場合、内部標準物質は1種類でも、後述するように2種類でも構わない。そして、図に示すように、分析の状態を、データ解析部の画面、あるいは、質量分析装置の制御部の画面に実時間で「定量解析(優先)モード」や「定性解析(優先)モード」などと表示するようにし、オペレータが、装置が正常に動作していることを目視で確認できるようにした。なお、このモード切替えは、第三の分析手順指示ファイルのようなものを制御部8に格納しておいて、逐次取得したデータをもとに定性解析優先モード」と「定量解析優先モード」を切替えて制御してもよいし、図6に示すように、画面表示部に定性・定量分析のモード選択ボタン109があって、オペレータが分析結果を逐次モニタしながら、必要に応じてポインティングデバイス112等によるポインタ110でモードを切替える構成であってもよい。切替えを判断する判断基準も、制御部8に記憶しておいてもよいしオペレータが入力してもよい。
以上述べたように、図9にリアルタイム分析制御(1051)と表示した制御として、(1)分析初期段階におけるデータaとデータbのリアルタイムにおける規格化・レベル調整(S1014、S1015)、(2)リアルタイムの定量分析阻害要因の有無(内部標準物質由来イオンの強度データa、bの不一致度)判定(S1016)と、判定の結果による定量分析阻害要因の生じていない有効時間帯のデータ抽出(S1017)、(3)定量分析阻害要因の影響度(データaとbの一致する時間の長さ等)に応じ、影響度が大(一致時間の長さが基準値以下)である場合に試料分離調製条件等の見直し(S1018、S1019)、(4)定量分析阻害要因の影響を受けている時間帯の定量/定性(タンデム)分析の優先モード切替え選択(S1020)を行うように制御系を構成し、取得データの解析による定量、定性分析を行う(S1021)ように制御した。さらに、例えば定量分析優先モードにおいても、スペクトルに顕著な特徴、例えば予め記憶させた分析サンプルの予想成分と比較して予想しない成分ピークを検出した場合には定性分析を行うように、リアルタイムに分析モードを制御した。そして、分析が終了して分析データを取り切れていない場合は、分析を繰り返して必要なデータを全て取得する。
なお、データ解析部105には、データaとbの不一致度が不一致度閾値より小さいかあるいは大きい時間帯を検出する手段116と、不一致度が小さい、すなわち一致度が高い時間帯(一致時間帯)における分析データを収集する手段117とが内蔵されている。また、上記の分析手順指示ファイルの記憶部やファイル読み取り制御部を持つ構成となっている。
次に、第2の実施例として、内部標準物質を2種類用いる分析手法について図5、図10を用いて説明する。図10に示すように、内部標準物質を2種類用いると、第1の実施例のように2回分析を行って評価するのではなく、一回の分析において、定量分析阻害要因の発生の有無を評価することができる。それにより、分析時間の更なる短縮を図ることができる。2つの内部標準物質としては、常にイオンとして検出される物質、すなわち親水性物質であり、さらに、一方が酸性、他方が塩基性であり前者が定量分析阻害要因に対し敏感に変化し、後者がほとんど変化しない物質を選定する。
すなわち、内部標準物質の一方は等電点が概略3以上8以下、他方は概略8以上である物質を選定する。ここでは、親水性と酸性が高い物質を第1の内部標準物質、親水性と塩基性が高い物質を第2の内部標準物質とする。図5上図に、本実施例で取得した第1の内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラム(1202a、黒の実線)と第2の内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラム(1202b、グレーの破線)とを示す。本実施例では、図5の時間帯Iにおいて、リアルタイムで第1、第2の内部標準物質由来イオンの強度のレベル調整が行われて強度の規格化がなされ、重ねてデータ解析部の画面表示部で表示される。なお、LC/MSでの分析時には、装置に起因するイオン量の予期できない微妙な変動が起こる可能性があるが、実施例1のように2回にわたって分析を行う場合、その都度ランダムな変動が起こりうるので、この予期できないランダムなイオン量の変動の影響を避けることができない。しかし、本実施例では同時に2つのデータを取得して比較できるので、装置に起因した予期できないイオン量の変動が起きたときにも両者のデータにおいて同様のイオン変動が起こり、両者の差分においてはイオン変動の影響を受けずにすむ。その結果、本実施例では、不一致度の評価を実施例1よりも高い精度で正確に行うことができるという利点がある。
図5下図は全イオンクロマトグラムであり、定量分析阻害要因が発生している保持時間(時間帯IV)とは異なる保持時間領域(時間帯III)の分析データは定量解析が可能である。そこで、上記保持時間領域(時間帯III)の分析データのみを抽出し、別名でデータ解析部などに保存する。このようにして、定量解析が可能な分析データのみを解析することができる。本実施例は、以上説明したように、内部標準物質を2種類用いて1回の分析で定量分析阻害要因の発生有無を判定しながら、目的とする分析サンプルの分析を行う点が第1実施例と異なり、その他の部分は第1実施例と同様である。すなわち、2つの内部標準物質のマスクロマトグラムから、第1実施例と同様に両者の不一致度を算出し、予め定めた不一致度閾値と比較し、不一致度が閾値よりも小さいときの分析時間帯を検出し、この分析時間帯における分析データを収集する。2つの内部標準物質は一定の濃度で移動相に導入し、分析時間全体にわたり安定して検出されるようにする。
そして、第1実施例と同様に、2つのマスクロマトグラムの不一致度が大きい場合には定量・定性分析優先モードを切替えて定性分析(タンデム分析)を優先させたり、切替え状態を表示させたり、不一致度が十分に小さくなる時間帯の長さが予め定めた基準時間より短い場合には、試料の調製状態を見直して不一致度が小さくなるまで繰り返すような制御を行って高効率・高精度な分析を実現した。第二の実施例で使った装置の構成は、データ解析部105や制御系8における演算手段の演算内容の細部が一部異なる以外は図1に示す第1の実施例で使った装置の構成とほぼ同様である。
第3の実施例として、内部標準物質を一種類導入して第1の内部標準物質とし、第2の内部標準物質を積極的には導入せず、意図しないで混入していた不純物等のような成分物質から第2の内部標準物質になりうる成分を探索し、両者のマスクロマトグラムを同時に比較する手法について説明する。この実施例の分析工程は、図11に示すように、図10の第2実施例と比較して第2内部標準物質として使用可能な物質を探索・選定する工程(S1024)が追加される。この場合、第1の内部標準物質は第2の実施例における第1の内部標準物質と同様、親水性、かつ酸性の物質であり、定量分析阻害要因に敏感に反応する物質を選定しておく。
そして、第2内部標準物質探索モニタを設け、分析装置内に存在して広い保持時間領域で安定してイオンとして検出され、しかも定量分析阻害要因に対してほとんど影響を受けない物質を、移動相やサンプルを変えながら検出する。たとえば、シロキサンのような一種の不純物も、広い保持時間領域に安定してイオン観測され、しかもイオンサプレッションのような定量分析阻害要因に対してほとんどイオン強度が変動しなかった。このような物質を第2の内部標準物質として選定し、第2の実施例と同様に第1、第2の内部標準物質のマスクロマトグラムを同時に取得して比較し、定量分析阻害要因を検出する。その他の部分は、第1、第2の実施例と同様である。本実施例の装置は、第一の実施例の装置構成と比較して、第二の内部標準物質となりうる物質を探索するために複数の物質の分析データをモニタするモニタ手段と、探索して見つけた物質を第二の内部標準物質に選んで入力するための入力部、すなわち、ポインティングデバイスやキーボード等による入力デバイスと、選択メニューや選択ボタン、数値入力欄等の画像表示メニュー等をさらに併せ持つ装置構成である。
次に、第4の実施例として、内部標準物質を1種類導入し、ブランク試料の分析を行わず、分析サンプルを導入した分析結果のみで定量分析阻害要因を検出する手法について説明する。図2に示すように、内部標準物質のマスクロマトグラムは、時間に対して急激な変動はしない傾向を示す。そのため、ブランク試料の分析結果を用いなくても、定量分析阻害要因の発生を検知することは原理的に可能である。そこで、分析サンプルを導入した状態のみで、内部標準物質由来イオンのマスクロマトグラムを取得し、時間に対して急激な変化があるか否かを調べることで、定量分析阻害要因を検出する。この分析手法では、分析阻害要因による内部標準物質由来イオンの強度低減が急激でない場合、分析阻害要因の発生を検知することが困難になる点に注意が必要である。
図7に示す本発明の質量分析システムにおける他の一実施例の構成図では、図1の実施例と異なり、分離部103の下流で内部標準物質204がシリンジポンプ111から導入される。このことにより、液体クロマトグラフの溶出液に内部標準物質204が一定の比率で混入される。勿論、内部標準物質204は分析液体に混合できればよく、混合場所はインターフェース(イオン源)より上流側にあれば何処でも良い。液体クロマトグラフの流量が1マイクロリットル/分より高い汎用液体クロマトグラフやセミミクロ液体クロマトグラフ、マイクロ液体クロマトグラフを使用する場合には、このような構成の方が図1に示す構成よりも有利である。内部標準物質を含む溶液の交換が容易であるためである。本実施例は、第1から第4の実施例と組合せて実施することが可能である。
図8に、本発明の質量分析システムにおける他の一実施例における内部標準物質由来イオンの検出を利用した質量シフトの保持時間依存性を示す。液体クロマトグラフを用いた分析が数分以上になると、温度変化などにより、ppmレベルの質量精度が低減することがある。そこで、理論質量(図8の1401)が既知の内部標準物質由来イオンのm/zの測定値(図8の1402)を保持時間に対して調べることにより、各保持時間に検出されるイオンのm/zの測定値(図8の1404)を比例配分により補正することができる(図8の1403)。このことにより、特に定性分析におけるデータベース検索において、物質の同定を非常に高精度で行うことが可能となる。本実施例は、第1から第5の実施例と組合せて実施することが可能である。
これまでは、主に疾患診断に向けたマーカー探索分野に向けた定量分析阻害要因の検出手段やそれを利用する質量分析システムについて述べた。一方、マルチプル・リアクション・モニタリング(Multiple reaction Monitoring:MRM)と呼ばれるタンデム質量分析法が用いられる薬物動態などの分野では、物質の定性分析だけでなく、定量分析においてもタンデム質量分析が用いられる。このような場合、予め内部標準物質由来イオンのタンデム質量分析を実施し、主要なフラグメントイオン1種類か複数種類のm/zを質量分析装置に登録することが必要となる。これにより、内部標準物質由来イオンの主要なフラグメントのマスマスクロマトグラムを取得することができる。そして、フラグメントイオンのマスクロマトグラムにおいて、強度の変動(低減)により定量分析阻害要因の発生を検知することができる。具体的な検知方法などは、これまで述べたものと同様である。
本発明の技術は、血液や尿における薬剤等の濃度や量を調べる自動分析装置や診断装置に適用することができる。そこで、以下では、特に固相抽出法を用いた自動分析装置の構成や工程の一実施例について述べる。なお、自動分析装置や診断装置におけるサンプル調製においては、本実施例で述べるような固相抽出法や質量分析部へのサンプル導入方法とは別の方法を用いることも可能だが、効果は同様に発揮することができる。
本実施例の自動分析装置は、図16や図17に示すように、固相抽出部(16A)と検出部(16B)及び制御部(16C)から構成される。そして、この例では、記憶部は制御部に含まれる。
固相抽出部(16A)は、ディスポーザブルな固相抽出カートリッジ302を保持できるカートリッジ保持容器303が配置されたターンテーブル301、固相抽出カートリッジ302を保管できるカートリッジ保管部312、固相抽出カートリッジ302をカートリッジ保管部312からカートリッジ保持容器303に移動できる回転式アーム309、試薬容器311が配置されたターンテーブル式の試薬槽310、試薬容器311から固相抽出カートリッジ302に試薬を移送できる回転式アーム308、少なくともひとつの固相抽出カートリッジ302に圧力を負荷することで抽出工程を行うことができる圧力負荷部304、ターンテーブル301の下部に固相抽出カートリッジ302から抽出された溶液を受けることができる複数の受皿容器306が配置されたターンテーブル305、抽出された溶液を受皿容器306からサンプル導入部316へ移送できる回転式アーム308、抽出の進行度を検知できる液面センサー307を備える。
固相抽出カートリッジ302には、圧力を開放作動する圧力開放弁が備わっており、事前に設定した液面位置まで、液面センサーで検知した液面位置が達すると圧力開放弁が開放される構成になっている。
検出部(16B)は、イオン化部へサンプルを導入するために溶液を押し出すポンプ315と、電圧を負荷することでサンプルのイオン化を行うイオン化部317と、ポンプ315の後段にイオン化部317の前段に位置しサンプルを流路内に導入するサンプル導入部316と、イオン化されたサンプルを分析・検査する質量分析部318を備える。
制御部(16C)は、本装置を構成している各々の部位を自動一括制御できる制御部319からなる。
以下に、固相抽出作業を含めた装置の検査・分析を工程順に説明する。
標準試薬添加工程
サンプル搬送部313で搬送されたサンプルに、一定濃度の標準試薬が添加される。添加は、試薬槽310内の試薬容器311中の標準試薬を回転アーム308で吸引し、サンプル搬送部313内への試薬の添加が行われる。標準試薬には、サンプル中に含まれる検査・分析の対象となる薬剤等の水素(H)や炭素(C)をHや13Cで置換した安定同位体標識物を用いることが望ましい。しかし、安定同位体標識物の入手が困難な場合には、分析対象物質(薬剤等)と化学構造が一部異なる類縁体が用いられる。この類縁体は、安定同位体標識物のように、物理化学的性質が分析対象物質と同等であることが望ましいが、その保障はない。さて、回転アーム308、309、314の先端には試薬の吸引・吐出ができるピペット又はシリンジが備わっており、試薬の吸引・吐出後先端を自動に洗浄できる機構が備わっている。
固相抽出カートリッジ302の脱着
カートリッジ保管部312はターンテーブル301内に中心から同角度に配置されており、固相抽出カートリッジ302は取替え可能であり、回転式アーム309により順次搬送されカートリッジ保持容器303内に設置される。固相抽出カートリッジ302はベルトコンベアのような輸送手段でカートリッジ保持容器303内へ設置される場合もある。
固相抽出カートリッジ302の洗浄工程
次に、固相抽出カートリッジ302の洗浄が行われる。洗浄工程は、ターンテーブル301が回転アーム308の動作範囲内まで回転し、試薬槽310内の試薬容器311中の洗浄試薬を回転アーム308が吸引し、洗浄試薬が固相抽出カートリッジ302へ注入される。そして、ターンテーブル301は、圧力負荷部304の動作範囲まで回転し、圧力が負荷され、洗浄試薬が固相抽出カートリッジ302の上部から下部へ移動することで洗浄工程が行われる。また、図17に示すように、ターンテーブル301の垂直下部に同形状のターンテーブル305が配置され、抽出成分を捕捉する必要がある場合は、ターンテーブル301及びターンテーブル305の回転角度によって、カートリッジ保持容器303の垂直下部には、受皿容器306が配置され抽出成分の捕捉が行われる。抽出成分の捕捉を行う必要のない場合は、溶出成分は廃液として処理される。なお、ターンテーブル301及びターンテーブル305の回転方向は時計周り及び半時計周りどちらも回転可能な機構を持ち、次の操作位置に短時間で移動できる方向に回転することができる。
ターンテーブル301のカートリッジ保持容器303内には、複数の固相抽出カートリッジ302が配置されており、各々の固相抽出カートリッジ302に対して試薬の吸引及び注入操作と圧力の負荷操作を同時に行うことが可能である。
ターンテーブル301の形状とカートリッジ保持容器303の位置関係は、円形のターンテーブル301の中心から同角度で均等にカートリッジ保持容器303が位置している。
ターンテーブル301に配置されたカートリッジ保持容器303とターンテーブル305に配置された受皿容器306の形状及び位置関係は以下の構造を取り得る。即ち、ターンテーブル301とターンテーブル305が同形状で、カートリッジ保持容器303と受皿容器306が垂直方向に一対一で対応する。あるいは、ターンテーブル301とターンテーブル305が同形状であるが、カートリッジ保持容器303と受皿容器306が一対一で対応せず、カートリッジ保持容器303に対して複数個の受皿容器306を有する形状を取っても構わない。また、ターンテーブル301とターンテーブル305がそれぞれ異なる形状、例えば楕円形や線形の形状を持ち、それに従い、カートリッジ保持容器303に対して複数個の受皿容器306を有する形状を取っても構わない。
固相抽出カートリッジ302への平衡化工程
一旦有機溶媒で洗浄された固相抽出カートリッジ302は、サンプル中の薬剤成分が固相抽出カートリッジ302に吸着できる状態になるように平衡化が行われる。平衡化工程は、試薬槽310が回転アーム308の動作範囲まで回転し、試薬容器311中の平衡化試薬を回転アーム308が吸引・吐出し固相カートリッジ302に注入する。そして、ターンテーブル301は、圧力負荷部304の動作範囲内まで回転し、圧力が負荷され平衡化試薬が固相抽出カートリッジ302の上部から下部へ移動することで平衡化工程が行われる。通常、平衡化試薬は水系の溶液が用いられる。
固相抽出カートリッジ302への吸着工程
平衡化が行われた固相抽出カートリッジ302へ一定濃度の標準試薬の添加が行われたサンプルを注入し、サンプル中の薬剤成分の吸着を行う。吸着工程はサンプル搬送部313が回転アーム314の動作範囲まで回転し、サンプル搬送部313のサンプルを回転アーム314が吸引・吐出し固相カートリッジ302に注入する。そして、ターンテーブル301は、圧力負荷部304の動作範囲内まで回転し、圧力が負荷され平衡化試薬が固相抽出カートリッジ302の上部から下部へ移動することで吸着工程が行われる。
洗浄工程
吸着工程で固相抽出カートリッジ302に吸着した成分のうち、洗浄工程を行うことで、非特異的に吸着した成分が固相抽出カートリッジ302から脱離し、目的の薬剤成分の濃縮が行われる。洗浄工程は試薬槽310が回転アーム308の動作範囲まで回転し、試薬容器311中の洗浄試薬を回転アーム308が吸引・吐出し固相カートリッジ302に注入する。そして、ターンテーブル301は、圧力負荷部304の動作範囲内まで回転し、圧力が負荷され洗浄試薬が固相抽出カートリッジ302の上部から下部へ移動することで洗浄工程が行われる。通常、洗浄試薬は主にメタノール又はアセトニトリル等の有機溶媒を含む溶液が用いられる。
溶出工程
固相抽出カートリッジ302に吸着している薬剤の溶出を行う。溶出工程は、洗浄工程と同様に溶出試薬が固相抽出カートリッジ302へ注入され、圧力が負荷され、溶出試薬が固相抽出カートリッジ302の上部から下部へ移動することで溶出工程が行われる。この溶出試薬は、一定濃度の内部標準物質を含み、溶媒としてメタノール又はアセトニトリル等の有機溶媒が用いられる。
検出部への導入
溶出溶液が検出部(16B)へ導入され、検査・分析が行われる。検出部(16B)への導入は、ターンテーブル305が回転アーム308の動作範囲内まで回転し、受皿容器306から溶出溶液の吸引・吐出が行われサンプル導入部316へ導入される。イオン化部317では、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)又は大気圧化学イオン化法(APCI)によるイオン化が行われる。イオン化部には、MALDIプレートとレーザー光の照射によりイオン化を行うマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI法)も考えられる。
イオン化部でイオン化された分析対象物質やその標準試薬(安定同位体標識物あるいは類縁体)、内部標準物質は、質量分析部318で質量分離及び検出がなされる。そして、それぞれに由来するイオンの強度が求められる。
制御部における取得データの評価
内部標準物質由来イオンの強度がブランク試料のものと閾値範囲内で一致すれば、イオンサプレッションは発生していないことが確認される。この場合は、制御部において、標準試薬由来イオンの強度に基づいて、分析対象物質由来イオンの強度より分析対象物質の濃度や量を検量線を用いて決定するとともに出力することができる。
一方、内部標準物質由来イオンの強度がブランク試料のものと閾値内で一致しなければ、イオンサプレッションの発生が確認される。標準試薬が安定同位体標識物である場合には定量解析しても問題ないが、標準試薬が類縁体である場合には、前処理条件等を一部変更し、再度分析を実施することが望ましい。前処理条件の変更例としては、洗浄工程において固相抽出カートリッジに注入する洗浄試薬の量を増やす、などが考えられる。そして、再分析の結果、内部標準物質由来イオンの強度がブランク試料のものと閾値内で一致すれば、標準試薬由来イオンの強度に基づいて、分析対象物質由来イオンの強度より分析対象物質の濃度や量を決定して出力することができる。もし内部標準物質由来イオンの強度がブランク試料のものと閾値内で一致しなければ、さらに前処理条件を一部変更して、再度分析を実施することになる。このような再分析を実施すると、分析スループットが一時的に低下する結果になる。しかし、再分析が頻繁に発生しなければ、実用上は問題ではない。なお、再分析で取得されたデータの情報には、変更された分析条件の情報が含まれることが望ましい。また、変更される分析条件において、予め検量線を取得しておくことも望ましい。
もし、標準試薬が類縁体であり、上記のような再分析の実施が困難な場合には、標準試薬由来イオンの強度に基づいて、分析対象物質由来イオンの強度より分析対象物質の濃度や量を推定(補正)して出力することが現実的である。推定には、イオンサプレッションの発生を考慮する方法など、様々な方法が考えられる。しかし、イオンサプレッションの発生に起因するイオン強度の低減率が、分析対象物質と類縁体との間で差異が生じる得るため、推定値が真値とは有意に異なることがある。そこで、推定値に、内部標準物質由来イオンの低減率を反映させた誤差を付与することが有効であると考えられる。
以下では、単純な推定例を考察する。即ち、イオンサプレッションの発生に起因する類縁体由来イオンの低減率をT[%]とすると、類縁体由来イオンの強度を100/(100−T)倍に換算し、その換算されたイオン強度と分析対象物質由来イオンの強度との比率から、分析対象物質の濃度や量を推定する。この時、分析対象物質由来イオンはイオンサプレッションの影響を全く受けない可能性がある一方で、内部標準物質由来イオンと同等に大きくイオン強度が低減している可能性もある。即ち、内部標準物質由来イオンの低減率をT[%]とすると、推定値はT[%]だけ過分に補正されている可能性がある一方で、100{1−(100−T)/(100−T)}[%]だけ補正が不足している可能性もある。そこで、これらを推定値の誤差情報に反映させることにより、真値との差を表現することができる。このように、推定値の誤差情報に、類縁体由来イオンの強度の低減率や内部標準物質由来イオンの低減率に基づく誤差情報を付与することは、自動分析装置や診断装置から得られるデータが高い信頼性を維持することに直結する。勿論、類縁体由来イオンの強度に基づく分析対象物質由来イオンの強度の推定方法に、別の方法を採用しても構わない。推定値の誤差情報に、類縁体由来イオンの強度の低減率や内部標準物質由来イオンの低減率に基づく誤差情報を反映させることが重要である。
血液や尿における薬剤等の濃度や量を調べる自動分析装置や診断装置においては、固相抽出法を用いない試料調製法を採用することも可能である。例えば、イオンサプレッションが発生しないと期待される程度まで分析溶液を希釈し、数ナノL/分程度の低流量でエレクトロスプレーイオン化法(ナノエレクトロスプレーイオン化法)による高効率イオン化を実施することも有効である。以下に、分析手順例を示す。
先ず、一定濃度の内部標準物質や標準試薬が含まれる希釈溶液だけを、先端がミクロンサイズのナノスプレー用チップに充填し、ブランクサンプルとして分析する。このことにより、レファレンスデータが取得される。次に、分析溶液を上記希釈溶液により希釈し、別のナノスプレー用チップに充填し、分析する。そして、レファレンスデータと比較して、内部標準物質由来イオンのイオン強度が閾値範囲内で一致すれば、イオンサプレッションが発生していないことが確認される。この場合には、標準試薬由来イオンに対する分析対象物質由来イオンの強度比より分析対象物質の濃度や量を求めることができる。一方、もし内部標準物質由来イオンのイオン強度が閾値範囲内で一致しなければ、その不一致度を測定値の誤差に反映させることができる。しかしながら、精度の高い測定値を得るためには、分析溶液の希釈倍率を増加させて再測定を実施する必要がある。このような再測定は、分析装置や診断装置において自動的に実施されることが望ましい。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (14)

  1. 液体クロマトグラフ/質量分析装置を用いた分析方法において、
    標準物質を分析溶液に混合する工程と、
    該分析溶液に分析サンプルの混合を無視できる状態で該標準物質に由来するイオンの第一のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該分析溶液に該分析サンプルを混合した状態で該標準物質に由来するイオンの第二のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該第一と第二のマスクロマトグラムのレベル調整を行う工程と、
    該第一と第二のマスクロマトグラムの不一致度を算出し、予め記憶している不一致度閾値と比較する工程と、
    該不一致度が、該不一致度閾値よりも小さい状態である分析時間帯を検出する工程と、
    該分析時間帯において取得した分析サンプルの分析データを収集する工程とを有し、
    前記液体クロマトグラフの移動相の有機溶媒比率に応じて、前記分析溶液に混合する前記標準物質の疎水性の高さを変えることを特徴とする分析方法。
  2. 請求項1に記載の分析方法において、前記移動相の有機溶媒比率が50%以下の場合は、前記標準物質は親水性であることを特徴とする分析方法。
  3. 請求項1に記載の分析方法において、前記移動相の有機溶媒比率が70%以上の場合は、前記標準物質は疎水性であることを特徴とする分析方法。
  4. 請求項1に記載の分析方法において、前記標準物質は等電点又は解離定数が概略2以上8以下であることを特徴とする分析方法。
  5. 請求項1に記載の分析方法において、前記標準物質は等電点又は解離定数が概略8以上であることを特徴とする分析方法。
  6. 液体クロマトグラフ/質量分析装置を用いた分析方法において、
    等電点又は解離定数が概略2以上8以下の標準物質と概略8以上の標準物質とを分析溶液に混合する工程と、
    該分析溶液に分析サンプルの混合を無視できる状態で該標準物質に由来するイオンの第一のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該分析溶液に該分析サンプルを混合した状態で該標準物質に由来するイオンの第二のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該第一と第二のマスクロマトグラムのレベル調整を行う工程と、
    該第一と第二のマスクロマトグラムの不一致度を算出し、予め記憶している不一致度閾値と比較する工程と、
    該不一致度が、該不一致度閾値よりも小さい状態である分析時間帯を検出する工程と、
    該分析時間帯において取得した分析サンプルの分析データを収集する工程とを有し、
    1回の液体クロマトグラフ/質量分析において正イオン検出モードと負イオン検出モードとを切替えることを特徴とする分析方法。
  7. 液体クロマトグラフ/質量分析装置を用いた分析方法において、
    親水性の標準物質と疎水性の標準物質とを分析溶液に混合する工程と、
    該分析溶液に分析サンプルの混合を無視できる状態で該親水性及び疎水性の標準物質に由来するイオンの第一のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該分析溶液に該分析サンプルを混合した状態で該親水性及び疎水性の標準物質に由来するイオンの第二のマスクロマトグラムを取得する工程と、
    該親水性の標準物質と該疎水性の標準物質とに由来するイオンに対する第一のマスクロマトグラムと第二のマスクロマトグラムのレベル調整を行う工程と、
    該第一と第二のマスクロマトグラムの不一致度を算出し、予め記憶している不一致度閾値と比較する工程と、
    該不一致度が、該不一致度閾値よりも小さい状態である分析時間帯を検出する工程と、
    該分析時間帯において取得した分析サンプルの分析データを収集する工程と、を有することを特徴とする分析方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析方法において、前記分析サンプルのデータに基づき、イオンピークのデータを、該ピーク面積又はイオン強度とその誤差、保持時間、及び、ピークのm/z又はm若しくはmとzに関する情報として取得することを特徴とする分析方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析方法において、前記分析サンプルのデータに基づき、イオンピークのデータを、該ピーク面積又はイオン強度、定量分析阻害要因発生の有無、保持時間、及び、ピークのm/z又はm若しくはmとzに関する情報として取得することを特徴とする分析方法。
  10. 請求項8又は9に記載の質量分析方法において、複数の前記分析サンプルより得られる前記情報を比較することを特徴とする分析方法。
  11. 分析対象物質を含む分析溶液の試料調製部、イオン化部、質量分析部、制御部、記憶部を用いた分析方法において、
    内部標準物質を該分析溶液に混合する工程と、
    該内部標準物質が混合された分析溶液を該イオン化部に導入してイオン生成を行う工程と、
    分析対象物質濃度が一定濃度以下の分析溶液に内部標準分析物質を混合した状態で該内部標準物質に由来するイオンの強度を該質量分析部で測定し、結果を該記憶部に記憶させる第一の工程と、
    未知濃度の分析対象物質を含む該分析溶液に該内部標準物質を混合した状態で分析対象物質及び該内部標準物質に由来するイオンの強度を該質量分析部で測定し、結果を該記憶部に記憶させる第二の工程と、
    該制御部において、該第一と第二の工程において測定された該内部標準物質に由来するイオン強度の不一致度を算出し、その差異を予め該記憶部に記憶している不一致度閾値と比較する工程と、
    該制御部において、該差異不一致度が、該不一致度閾値を越えているか否かを判定する工程と、
    該判定の結果に応じて、該制御部により該試料調製部における前記分析溶液の分析条件を変更し、分析対象物質を含む分析溶液の再測定を実施して、該分析対象物質の定量値を算出する工程を有することを特徴とする分析方法。
  12. 請求項11に記載の分析方法において、内部標準物質が、第一の内部標準物質と、第2
    の内部標準物質から構成され、第一の内部標準物質のイオン強度及び第2の内部標準物質
    のイオン強度の両者を上記閾値及び上記判定に用いることを特徴とする分析方法。
  13. 請求項12に記載の分析方法において、第2の内部標準物質は、等電点又は解離定数が概略2以上8以下であることを特徴とする分析方法。
  14. 請求項12に記載の分析方法において、該分析対象物質の定量分析測定値の定量値補正に第一の内部標準物質を定量内部標準として用い、第2の内部標準物質を、上記閾値及び上記判定に用いることにより第一の内部標準物質による定量補正精度を保証することを特徴とする、該分析対象物質の分析方法。
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