JP6020314B2 - クロマトグラフ質量分析データ処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ等のクロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせたクロマトグラフ質量分析装置で得られた質量分析データを処理するクロマトグラフ質量分析データ処理装置に関する。
近年、クロマトグラフィと質量分析とを組み合わせたクロマトグラフ質量分析は、医療や医薬品、食品、環境など様々な分野において広く利用されている。クロマトグラフ質量分析で得られたデータの解析手法には種々のものがあるが、その一つとして、二つ又はそれ以上の複数のグループのデータ間の差異を調べる差異解析がある。差異解析の具体的な例としては、健常者には見られず癌患者でのみ見られる特異的なタンパク質(即ち、当該癌疾患のバイオマーカ)の発見を目的として、クロマトグラム及びマススペクトルにおいて、複数の健常者から採取した生体サンプルグループには存在せず、複数の癌患者から採取した生体サンプルグループには存在するピークを探索するような解析処理が挙げられる。
液体クロマトグラフ質量分析装置を用いて、上記差異解析を行う際の概略的な手順を述べる。
まず、被検者(健常者又は患者)から採取したサンプルに含まれる一つ又は複数のタンパク質を消化酵素によって複数のペプチドに分解し、ペプチド混合物を得る。次に、そのペプチド混合物を液体クロマトグラフに導入し、各ペプチドをそれぞれの保持時間(Retention Time)に応じて分離する。こうして保持時間に応じて分離されたペプチドが含まれる試料を質量分析装置により測定し、ペプチド由来のイオンの信号強度が反映されたデータを収集する。
図7はこうして得られる三次元クロマトグラムデータの概念図である。即ち、液体クロマトグラフ質量分析装置により収集されるデータは、或る時間、或る質量電荷比m/zにおける信号強度(イオン強度)を示すデータである。
或るペプチド由来のピークは、そのペプチドに対応する保持時間(RT)で且つそのペプチドに対応する質量電荷比m/zに現れる。即ち、或るペプチド由来のピークの出現位置は(RT,m/z)の座標、又はそれらを要素とする2次元べクトルで表される。したがって、そのペプチドが或るサンプルグループに存在するか否かを調べるには、そのペプチドに対応する(RT,m/z)にピークが存在するか否かを調べればよい。しかしながら、一般に、クロマトグラムデータの再現性(つまり時間方向の再現性)はマススペクトルデータの再現性(つまり質量電荷比方向の再現性)に比べて低いため、同じ物質由来のピークであっても、サンプルや分析条件等によって保持時間はずれてしまう。
そこで一般には、実際に複数のグループ間でのピークの差異を探索する前に、各グループ内でさらには各グループ間で、同一物質由来のマススペクトルピークが同じ保持時間の位置に来るように時間軸方向の補正が行われる。こうした補正の一つの方法が、測定時点それぞれにおけるマススペクトルの信号強度値の合計を時間軸方向にプロットして得られるトータルイオンクロマトグラム(TIC=Total Ion Chromatogram)を利用して補正を行う「TICによるRTアライメント」である。
なお、以下の説明では、特に説明を付しない限り、「TICによるRTアライメント」を単に「RTアライメント」という。つまり、本明細書における「RTアライメント」とは、基本的に「TICによるRTアライメント」のことを指す。
液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせて使用する場合、エレクトロスプレイイオン化法(ESI)や大気圧化学イオン化法(APCI)といった大気圧イオン化法によるイオン源が利用されることが多い。一般に、こうした液体クロマトグラフ質量分析装置において得られるマススペクトルの再現性は高く、同じペプチドに対してはほぼ同じ信号強度を示すピークが得られる。そのため、TICの波形形状の再現性も高く、同種の試料に対して得られた複数のTICの波形形状の類似性は高い。
そこで、こうしたTICの波形形状の類似性を利用し、ダイナミックプログラミング(DP)などの既知のアルゴリズムを用いたRTアライメントによって、「Treatment」として指定したサンプルのTIC波形が「Control」として指定したサンプルのTIC波形に極力近くなるように各クロマトグラムピークを時間軸方向に補正する。また、このとき分析者は、ダイナミックプログラミングの計算条件などのパラメータを様々に変化させ、補正後のTreatmentのTIC波形とControlのTIC波形とを目視で比較し、最も妥当な(つまり二つのTIC上のピークの位置や波形が時間的に最も近くなるような)パラメータを探索する。それによって、良好なRTアライメントが達成できる。
例えば非特許文献1には、相関係数を用いたダイナミックプログラミングによるRTアライメントが開示されている。この技術を用いて実際にRTアライメントを行った結果の一例を図8に示す。
図8(a)はControlとして指定したサンプルのTIC、図8(b)はTreatmentとして指定したサンプルのTICである。そして、RTアライメントを行った後の、ControlのTICと補正後のTreatmentのTICとをオーバーラップ表示させたグラフが図8(c)である。また、図8(c)の25〜35分付近の時間範囲を拡大したグラフが図8(d)である。この図から、両TIC波形のピークトップやピークボトムの位置、或いはピークの幅などがかなり良く一致していることが分かる。即ち、この場合には、RTアライメントが精度良く行われているといえる。
ところが、本願発明者の検討によれば、上述したRTアライメントの手法は、ESI等によるイオン源を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置により取得された三次元クロマトグラムデータには適しているものの、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法によるイオン源を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置により取得された三次元クロマトグラムデータには適さないことが判明した。その理由は次のように推測される。
即ち、上述したダイナミックプログラミングなどによるRTアライメントは、アライメント対象である複数の(例えばControlとTreatmentとの)TICの波形形状の類似性が或る程度高いことを前提とし、複数のTICの波形形状の一致性が低い箇所付近のピークの保持時間をずらすなどして類似性を高める処理を行うものである。しかしながら、MALDIイオン源では、1回のレーザパルスの照射に対するイオン生成量のばらつきが大きく、また質量電荷比毎のイオン生成効率の再現性もあまり良好でない。そのため、MALDI質量分析装置により得られたマススペクトルでは各ピークの信号強度の再現性が低く、マススペクトル毎に全ての信号強度値を加算することで得られる、或る測定時点における全信号強度値の再現性も低い。その結果、異なるサンプル間でのTIC波形形状の類似性も乏しくなる。このように類似性が乏しいTIC同士では、たとえダイナミックプログラミングを実行することができたとしても保持時間を適切に補正することができない。
また、前述のように、RTアライメントが成功したか否かは、図8(c)、(d)に示したようなTICのオーバーラップ表示を分析者が目視で確認して判断する。そのためには、保持時間を補正する前の段階で二つのTIC波形形状の類似性が或る程度高くなければならないが、上述したようにMALDIイオン源を用いた場合には、異なるサンプル間でのTIC波形形状の類似性が乏しい。そのため、オーバーラップ表示を行っても、RTアライメントが正しく実行できたか否かの判断を分析者が目視で行うことは困難である。また、それ故に、ダイナミックプログラミングのためのパラメータの最適な調整も困難である。
青島健、田中聡、他7名、「疾病の診断、創薬研究に向けた3次元アライメントによるマーカー探索手法(AB3D)」、第56回質量分析総合討論会講演要旨集、2008年、pp.520-521
本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、その主な目的は、例えばMALDIイオン源を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置などで収集されたデータに基づいて作成されるTICでの保持時間の補正を的確に精度良く行うことができるクロマトグラフ質量分析データ処理装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、クロマトグラフ質量分析装置により収集されたデータを処理するデータ処理装置であって、複数の試料に対してそれぞれ得られたデータから求まる複数のクロマトグラムの保持時間のずれを補正するためのアライメント処理を行うデータ処理装置において、
a)全測定時間範囲内又は一部の測定時間範囲内の各測定時点毎に、当該測定時点に得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルの信号強度をスケーリングするマススペクトルスケーリング処理部と、
b)前記マススペクトル毎に、前記マススペクトルスケーリング処理部によりスケーリングされた後の信号強度値を加算した全信号強度値を計算する全信号強度値算出部と、
c)複数の試料のそれぞれについて、前記全信号強度値算出部により算出された複数の全信号強度値からトータルイオンクロマトグラム(TIC)を作成するクロマトグラム作成部と、
d)前記クロマトグラム作成部により作成された複数のクロマトグラムを用いてアライメント処理を実行するアライメント実行部と、
を備えることを特徴としている。
スペクトル解析等のデータ処理において、ピーク等のスケーリングは一般的に用いられる技術の一つではあるが、それは専ら、ピーク同士を比較するためにその前処理として行われたり、波形全体の傾向を比較するために行われたりする。それに対し、本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置では、比較される複数の波形、具体的にはTIC波形に対しスケーリングを適用するのではなく、そうした波形を構成する各データ点を求めるための元の多数のデータ点で構成される波形、具体的にはマススペクトルに対してスケーリングを適用する。そして、一つのマススペクトルにおいてスケーリングによって値が修正された多数の信号強度値を加算することで、該マススペクトルに対応する一つの全信号強度値を算出する。
上述したように、例えばMALDIイオン源を用いた質量分析装置では、マススペクトルに現れるピーク信号強度の再現性が良好でなく、たとえ同一物質であっても、異なるマススペクトル上のピークの信号強度に比較的大きな差異が生じる。一つのマススペクトルに現れる信号強度値を加算して得られる全信号強度値は、マススペクトル上に現れる信号強度値が大きなピークの影響を受け易く、複数のサンプル間でのそうしたピークの信号強度値の極端な差異はTICの類似性を下げる大きな要因となる。一方で、そうした信号強度値の差異や変動もマススペクトルの特性であるといえるから、差異や変動を反映したスケーリングも必要である。
そこで、本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置の一態様として、上記マススペクトルスケーリング処理部は、一つのマススペクトル内での信号強度値のばらつき(変動)の程度を、異なるマススペクトル間で等しくする又は少なくとも縮小させる第1のスケーリングと、マススペクトル毎の信号強度値の相対的なばらつきに応じた重み付けを行う第2のスケーリングと、を組み合わせた可変スケーリングを行う構成とすることができる。
上記第1のスケーリングは例えば、そのマススペクトル中の任意のピーク又は任意のデータ点の信号強度値を、該マススペクトル中のピーク(通常は複数のピーク)の信号強度値又は任意のデータ点の標準偏差で除する処理とすることができる。これは、複数のマススペクトル間での信号強度値のばらつきの程度を揃えることを意味する。また、上記第2のスケーリングは例えば、そのマススペクトル中の任意のピーク又は任意のデータ点の信号強度値を、そのマススペクトル中のピーク又は任意のデータ点の信号強度値から求まる変動係数(=標準偏差/平均値)で除する、換言すれば変動係数の逆数を重みとして乗じる処理とすることができる。これは、一つのマススペクトルにおける信号強度値のばらつきに関するマススペクトル間の相対的な差異を反映させることを意味する。
また本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置の別の態様として、上記マススペクトルスケーリング処理部は、一つのマススペクトル中のピークの信号強度の対数をとるスケーリングを行う構成としてもよい。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置において、クロマトグラム作成部は、それぞれスケーリングされた信号強度値に基づいて算出された、それぞれ異なる測定時点に対する複数の全信号強度値から、所定の時間範囲のクロマトグラム、つまりTICを作成する。このTICは、差分解析等の対象である試料毎に作成される。そして、アライメント実行部は、上記クロマトグラム作成部により作成された複数のTICを用いてアライメント処理を実行し、同一物質に由来するクロマトグラムピークがほぼ同じ時間に現れるように保持時間のずれを補正する。なお、このときのアライメント処理の手法は特に限定されず、ダイナミックプログラミングなど、従来から用いられている種々の手法を用いることができる。
マススペクトルに対する上述したような特徴的なスケーリングによって、マススペクトル上で特に大きな信号強度を示すピークが全信号強度値に与える影響が小さくなり、それによってマススペクトルにおけるピーク強度の再現性の低さがTICに反映されにくくなる。その結果、アライメント処理の実行対象である複数の試料におけるTICの波形形状の類似性が高くなり、アライメント処理を適切に実行することができ、同一物質に対するピークの保持時間を揃えることが可能となる。また、アライメント処理の実行対象である複数の試料におけるTIC波形形状の類似性が高くなるために、分析者が目視でこの波形を確認しアライメント処理が正しく実行できたか否かを判断することも容易になる。さらに、ダイナミックプログラミングなどのアライメント処理を行うためのパラメータ調整も、分析者が目視でTIC波形を確認しながら容易に且つ的確に行うことが可能となる。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置によれば、MALDIイオン源を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置で取得されたマススペクトルのように、ピーク強度の再現性が低い場合であっても、複数の試料についてそれぞれ互いに波形形状の類似性が高いTICを作成し、このTICを用いて同一物質由来のクロマトグラムピークが同一時間に出現するように適切なアライメント処理を行うことができる。また、複数の試料に対するTICの波形形状の類似性が高まるために、分析者の目視によるアライメント処理の成否の判断が可能になるとともに、アライメント処理のためのパラメータ調整も可能になり、その点でもRTアライメントの精度向上を図ることができる。そして、このようにRTアライメントの精度が向上することで、例えば複数の試料に対する差分解析の精度を向上させることができる。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置を備えた液体クロマトグラフ質量分析システムの一実施例の概略構成図。 本実施例の液体クロマトグラフ質量分析システムにおけるデータ処理部で実行されるRTアライメント処理の処理手順を示すフローチャート。 マススペクトルに対するスケーリングを実施しないときの個々のTIC波形とそれをオーバーラップさせたグラフの一例を示す図。 マススペクトルに対するスケーリングを実施したときの個々のTIC波形とそれをオーバーラップさせたグラフの一例を示す図。 複数種類のタンパク質の混合物である試料に対する同定処理及び差異解析の結果の一例を示す図。 本発明によるRTアライメント処理の効果を説明するための模式図。 液体クロマトグラフ質量分析装置で得られる三次元クロマトグラムデータ及びTICの概念図。 ESIイオン源を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置で得られたデータに対するRTアライメント実行結果の一例を示す図。
以下、本発明に係るデータ処理装置を含む液体クロマトグラフ質量分析システムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の液体クロマトグラフ質量分析システムの概略構成図である。
図1において、液体クロマトグラフ部1は、図示しないものの、一定流量で流れる移動相中に試料溶液を導入するインジェクタと、試料に含まれる各種物質を時間方向に分離するカラムとを含み、そのカラムの出口から溶出する溶出液中には時間経過に伴って各種物質が順次現れる。スポッティング部2はこの溶出液を所定の時間間隔で以て分画し、分画した溶出液とマトリクスとを混合してMALDI用のサンプルプレート上に滴下し、それぞれ分画試料を調製する。即ち、異なる分画試料は異なる時点でカラムから溶出した溶出液中の物質を含む。
質量分析部3は、MALDIイオン源31と、飛行時間(TOF)型質量分離部32と、検出器33とを含む。MALDIイオン源31はサンプルプレート上の一つの分画試料に対しレーザ光を照射することで、該分画試料に含まれる物質をイオン化する。生成されたイオンはTOF型質量分離部32に導入され、所定長さの飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じてイオンを分離する。検出器33は質量電荷比に応じて分離された状態で到達するイオンを検出し、到達したイオンの量に応じた検出信号を出力する。検出器33で得られた検出信号はアナログデジタル変換器(ADC)4においてデジタルデータに変換され、データ処理部5に入力される。MALDIイオン源31においてサンプルプレートの位置は走査され、それにより、該プレート上に形成された多数の分画試料に対する質量分析が順次実行される。
データ処理部5は、三次元データ格納部51、マススペクトルスケーリング計算部52、全信号強度値計算部53、修正TIC作成部54、RTアライメント実行部55、差異解析部56などの機能ブロックを含む。上述したようにアナログデジタル変換器4を経てデータ処理部5に入力されるデータは、或る時点(例えばMALDIイオン源31において分画試料にレーザ光が照射される時点)を基準とした飛行時間と信号強度(イオン強度)との関係を示す飛行時間スペクトルデータである。データ処理部5には、飛行時間と質量電荷比m/zとの関係を示す較正データが記憶されており、この較正データに基づいて、飛行時間は質量電荷比に換算され、質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルデータとして三次元データ格納部51に格納される。
なお、データ処理部5の機能は、専用のハードウエアを用いて実現することも可能であるが、汎用のパーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、該パーソナルコンピュータにインストールされた専用の処理ソフトウエアを実行することにより実現するのが一般的である。
本実施例の液体クロマトグラフ質量分析システムにおいては、液体クロマトグラフ部1から連続的に溶出する溶出液が所定時間毎に分画されてそれぞれ異なる分画試料となり、その分画試料毎に所定の質量電荷比範囲に亘るマススペクトルデータが得られる。したがって、一つの分画試料に対する一つのマススペクトルをその分画試料が得られた時系列の順序で並べてゆくと、図7に示したような三次元クロマトグラムデータが得られる。複数の試料に対する差異解析を行う場合には、試料毎にそれぞれ上述したようなクロマトグラフ質量分析を実行し、図7に示したような三次元クロマトグラムデータをそれぞれ取得する。
いま、ここでは、差異解析の対象である試料A、試料Bという二つの試料についてそれぞれ三次元クロマトグラムデータが既に取得され、三次元データ格納部51に格納されているものとする。データ処理部5では、これらデータに対して図2に示すフローチャートに従ってRTアライメント処理を実行することで同一物質に対するクロマトグラムピークの保持時間を揃え、その後に差異解析を実行する。
まずマススペクトルスケーリング計算部52は処理対象の試料(例えば試料A)を選択し(ステップS1)、三次元データ格納部51に格納されているその試料に対する三次元クロマトグラムデータの中から、所定の測定時点における所定質量電荷比範囲に亘るマススペクトルデータを読み出す(ステップS2)。
次に、マススペクトルスケーリング計算部52は、読み出されたマススペクトルデータにより得られるマススペクトル上で検出される各ピークの信号強度値(又は該マススペクトル上の各質量電荷比における信号強度値)に対し可変スケーリングを行い、その信号強度値を修正する(ステップS3)。全信号強度値計算部53は一つのマススペクトルにおいて可変スケーリングによって修正された各ピークの信号強度値を加算することで、その一つの測定時点における全信号強度値を計算する(ステップS4)。
具体的に、この実施例では、次の(1)式に示す計算式に従って、可変スケーリング(上記ステップS3の処理)及び全信号強度値の計算(上記ステップS4の処理)を行う。
TICRT=t=Σ(Inti/SRT=t)・(<IntRT=t>/SRT=t) …(1)
ここで、Σはi=1からNまでの総和であり、TICRT=tはRT=tにおける(測定時点がtであるときの)全信号強度値(スケーリングによる修正値)、NはRT=tにおけるマススペクトル中のピークの数(又は全データの数)、iはRT=tにおけるマススペクトル中で付された連続的なピーク番号、Intiはi番目のピーク(又はデータ点)の信号強度値、SRT=tはRT=tにおけるマススペクトルの各ピーク(又は各データ点)の信号強度値から求めた標準偏差、<IntRT=t>はRT=tにおけるマススペクトルの各ピーク(又はデータ点)の信号強度値の平均値、である。
上記(1)式の技術的な意味を説明する。
上述したように、MALDIイオン源を用いた質量分析装置で得られるマススペクトルではピーク強度の再現性が低く、異なる試料の間でも、また同一試料に対する異なる測定時点の間でも、同一質量電荷比におけるピークの信号強度値の差異(変動)が大きい。TICにはマススペクトル中で信号強度が大きなピークの影響が現れ易い。つまり、マススペクトル中に他のピークと比べて信号強度が極端に大きなピークが存在すると、信号強度が小さい他のピークの影響を覆い隠してしまう。そのため、こうした信号強度が相対的に大きなピークの信号強度の変動や差異が大きければ、サンプル間のTIC波形の類似性は低くなる。そこで、ピーク強度の再現性の低さを補ったTICを求めるには、マススペクトルの中で信号強度が大きなピークの影響を抑えるようなスケーリングを行う必要がある。一方、ピーク強度の差異や変動の大きさもそのマススペクトルの特性であることは確かであるから、マススペクトル間の特性の相違を出すには、マススペクトル毎のピーク強度の変動や差異の大きさに応じたスケーリングを行うことも必要である。
上記(1)式の右辺の総和(シグマ)内の第1項、(Inti/SRT=t)は、各マススペクトル(RT=tにおけるマススペクトル)において、i番目のピークの信号強度値を、そのマススペクトルにおけるピーク強度の標準偏差で除す処理である。この項によって、各マススペクトルにおけるピーク強度のばらつき(つまりは標準偏差)がすべて等しく「1」になる。即ち、この第1のスケーリングによって、複数のマススペクトル間の差異や変動は等しくなる。一方、上記(1)式の右辺の総和内の第2項、(<IntRT=t>/SRT=t)は、各マススペクトルにおけるピーク強度の平均値を標準偏差で除したものであり、これはRT=tにおけるマススペクトルに存在するピーク強度のばらつきによって上記第1項による結果を重み付けする第2のスケーリングである。なお、この第2項は、RT=tにおけるマススペクトル中のピーク強度の変動係数の逆数を乗じる(変動係数で除する)処理である。
即ち、上記(1)式の右辺の総和内の演算は、各マススペクトル中のピーク強度のばらつき(変動や差異)の程度がマススペクトル間で一旦等しくなるようにスケーリングしたのち、さらに各マススペクトルにおけるピーク強度の平均値に対するピーク強度のばらつきの大きさに応じて再度スケーリングを行う、という二段階のスケーリングである。このような二段階のスケーリングによって、マススペクトル中で信号強度が大きなピークの影響を抑えつつも、スケーリング前に各マススペクトルが有する特性、つまりは本質的なピークの変動や差異は維持される。
上記(1)式の右辺の総和演算は、一つのマススペクトルの中でスケーリングされた各ピークの信号強度値を加算する処理であるから、マススペクトル中で検出される各ピークの信号強度値に対し(1)式の演算を行うことで、スケーリングされたマススペクトルに基づく全信号強度値が求まる。或る一つの測定時点におけるマススペクトルに対する一つの全信号強度値が求まると、全ての測定時点での処理が終了したか否かが判定され(ステップS5)、未処理の測定時点が残っている(ステップS5でNoである)場合には、ステップS2に戻り、未処理である一つの測定時点における所定質量電荷比範囲に亘るマススペクトルデータを読み出して、ステップS3〜S5の処理を繰り返す。
ステップS2〜S5の処理を繰り返すことで、或る一つの試料(例えば試料A)に対する全測定時間範囲に亘る全信号強度値が得られると、ステップS5でYesと判定され、修正TIC作成部54が得られた全信号強度値を用いてTICを作成する(ステップS6)。特に明記しないが、これは通常のTICではなく、スケーリングされたマススペクトルに基づいて作成されるTICである。
次に、処理対象である全ての試料のTICを作成したか否かが判定され(ステップS7)、未処理の試料が残っている(ステップS7でNoである)場合には、ステップS1に戻り、未処理である試料に対しステップS2〜S7の処理を繰り返す。したがって、試料Aに対するTICが作成されたあとに、引き続き、試料Bに対するTICが作成される。処理対象である全ての試料のTICが得られると、ステップS7からS8へと進み、RTアライメント実行部55は、得られたTICを用いてRTアライメント処理を実行する。
各試料のTICは上述したようなスケーリングが行われたマススペクトルに基づいて作成されたものであるため、同種の物質を含む異なる試料のTICの波形形状の類似度は高くなっている。そのため、例えばダイナミックプログラミングを用いたRTアライメントを実行したときに、アライメントが適切に行われ、同一物質に対するクロマトグラムピークの保持時間はほぼ揃うようになる。また、共通に含まれる物質が多い試料同士であれば、TIC波形形状は類似しているので、分析者がTIC波形をモニタ(図1中には図示せず)の表示画面上で確認しながらRTアライメントが成功したか否かを容易に且つ的確に判断することが可能になり、さらにRTアライメント処理のパラメータの調整も可能になる。
以上のようにして二つの試料のTICを用いたRTアライメントが終了したならば、差異解析部56は保持時間の補正を反映したデータに基づいた差異解析を実行し、例えば両方の試料に共通に存在するピークと、いずれか一方の試料にのみ存在するピークとを識別し、解析結果を出力する。
また、上記説明では二つの試料のTICを用いたRTアライメント処理について述べたが、三以上の複数の試料のTICを用いたRTアライメント処理でもよいことは明らかである。
また上記実施例の液体クロマトグラフ質量分析システムでは、(1)式に基づきマススペクトルに対し可変スケーリングを行っていたが、別の手法による可変スケーリングを用いることもできる。
具体的には、次の(2)式で示すようなlogスケーリングを用いることができる。
TICRT=t=ΣlogInti …(2)
ここで、Σ、TICRT=t 、Intiの定義は(1)式と同じである。即ち、この式では、マススペクトル上の各ピーク信号強度値の対数を求め、保持時間毎に再計算した全信号強度値を用いてRTアライメントを行うことになる。このようなlogスケーリングは、ピークの大小関係を維持し(つまり、どの保持時間のマススペクトルに信号強度が大きなピークがあるかがTICに反映される)つつ信号強度が大きなピークの影響を相対的に抑えるスケーリングであり、それによって、マススペクトル中に他のピークと比べて信号強度が極端に大きなピークが存在した場合でも、該ピークによって信号強度が小さい他のピークの影響覆い隠されることを回避することができる。
次に、上述した本発明に特徴的なスケーリング(ここでは(1)式に基づくスケーリング)を含むRTアライメント処理の効果を確認するための実験結果と、差異解析の結果とを併せて説明する。ここで実験に用いた試料は次の二つのグループである。
(1)「4種混合タンパク質」グループ:4種類のタンパク質、即ち、エノラーゼ(Enolase)、アルコールデヒドロゲナーゼ(Alcohol Dehydrogenase)、フォスフォリラーゼ b(Phosphorylase b)、及びウシヘモグロビン(Bovine Hemoglobin)、を混合し、それらタンパク質を消化酵素によってペプチドに分解した試料である。
(2)「4種混合タンパク質+BSA」グループ:上記「4種混合タンパク質」グループで用いた4種類のタンパク質に、さらに別のタンパク質「ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)」を加え、それらタンパク質を消化酵素によってペプチドに分解した試料である。なお、以下の説明では、ウシ血清アルブミンをBSAと略す。
これら二つのグループ間の差異解析を行い、「4種混合タンパク質」グループには存在せず「4種混合タンパク質+BSA」グループに存在するピークがBSA又はそれ由来のペプチドのピークであると同定されれば、RTアライメントが適切であって差異解析が正確に行われたと結論付けることができる。
図3(a)、(b)は二つの試料に対するスケーリング無しのTIC、図3(c)はそれらTICを用いてRTアライメントを実行した後の両TICをオーバーラップ表示したグラフである。ここで使用した試料は「4種混合タンパク質+BSA」グループに属する二つの試料であり、便宜上、一方を「Control」、他方を「Treatment」とみなした。RTアライメントを実行する前の時点で、ControlのTICとTreatmentのTICとの波形形状の類似性が低いため、RTアライメントを行ってもピークトップやピークボトム、ピーク幅などが一致せず、RTアライメントが成功したか否かの判断は難しい。なお、このときのRTアライメントのパラメータは後述の図4におけるRTアライメントのパラメータと同じである。
図4(a)、(b)は図3と同じ試料から得られたデータに上述した特徴的なスケーリングを適用した後に計算によって得られたTIC、図4(c)はそれらTICを用いてRTアライメントを実行した後の両TICをオーバーラップ表示したグラフである。図4(a)、(b)を見れば(特に図3(a)、(b)と比較すれば)分かるように、RTアライメントを実行する前の時点で、ControlのTICとTreatmentのTICの波形形状の類似性がかなり高くなっている。また、RTアライメントを行った後に、ピークトップやピークボトム、ピーク幅などがよく一致しているので、RTアライメントが成功していると判断することができる。なお、この図4(c)は、RTアライメントのパラメータを調整し、RTアライメントが最も成功していると分析者が目視で判断したときの結果である。
以上の実験結果から、本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置によれば、マススペクトル中に観測されるピーク強度の再現性が低い場合であっても、TIC波形からRTアライメントが成功したか否かの判断が可能になり、RTアライメントの際のパラメータ調整も可能であることが確認できる。
図5は、図3、図4で行ったRTアライメント処理を他の試料にも適用し、同定処理や差異解析を行った結果を示す図である。この実験では、「4種混合タンパク質」グループに属する試料を5個、「4種混合タンパク質+BSA」グループに属する試料を4個用いた。図5(a)はRTアライメントを全く行わずに同定処理及び差異解析を行った結果であり、図5(b)はスケーリング無しでRTアライメントを実行した場合(つまりは従来の一般的なRTアライメントを実行した場合)の結果であり、図5(c)は本発明を適用した場合(つまりは上述した特徴的なスケーリングを実施した後にRTアライメントを実行した場合)の結果である。
図5において、「RANK」及び「Score」は、タンパク質同定に頻用される米国マトリクスサイエンス社製のマスコット(Mascot)を用いたデータベース検索における検索結果で提示されるものである。この検索結果において、ENO1(2)_YEASTはエノラーゼに、ADH1_YEASTはアルコールデヒドロゲナーゼに、PYGM_RABITはフォスフォリラーゼ bに、HBA_BISBO/HBB_BOVINはウシヘモグロビン(試料に含まれるタンパク質はウシヘモグロビンであるが、「HBA_BISBO又はHBB_BOVINである」と同定された。両タンパク質を構成するペプチドが非常に似ており、区別できなかったことを意味する)に、ALBU_BOVIN(=BSA)はウシ血清アルブミンに相当する。また、「同定されたピーク数」、及び「同定されたピーク数のうち、u検定の結果p<0.05であるピークの数」とは、それぞれ全ての試料(ここでは9個の試料)に対するマススペクトル上で「そのタンパク質由来のペプチドのピークである」と同定されたピークの数であり、それらにおいて( )内の数値は重複ピークを除いたピーク数である。ここでいう「重複ピーク」とは以下のような意味を持つ。
異なる試料から得られたTICについてRTアライメントを行わないと、同じ物質(ここではペプチド)由来のクロマトグラムピークであっても、試料毎に異なる時間にピークが観測されることが多い。図6(a)はその一例であり、質量電荷比m/zがβである同じ物質由来のピークが試料AではRT=α1に、別の試料BではRT=α2に、さらに別の試料CではRT=α3にピークトップを持つ。このような場合、本来は同一ピークであるにも拘わらず、複数のピークとして誤って検出されることになる。そこで、このように本来は一つであるピークであるものの、複数のピークであるとして捉えられるピークを、ここでは「重複ピーク」と呼んでいる。図6(a)では、本来のピークは1個であるから、重複ピークが2個存在することになる。
これに対し、RTアライメントが適切に行われれば、同じ物質由来のピークはいずれの試料のTICにおいても同じ時間に現れるように補正される。即ち、図6(b)に示すように、同じ物質由来のピークのピークトップがいずれもRT=αに現れる。この場合には、重複ピークは存在しないことになる。このように、RTアライメントが適切に行われた場合には、重複ピークが減少する又は無くなることが期待される。換言すれば、重複ピークの減少又は消滅が確認できれば、それはRTアライメントが適切に行われたことを意味する。
なお、厳密には、重複ピークがない状態とは、複数の試料間で同じ物質由来のピークのピークトップの時間が完全に重なっている(つまり図6(b)でいえば全てのピークのピークトップの出現時間がαである)状態であるが、実際には、様々な誤差要因やばらつきによって、こうした状態を達成するのは困難である。そこで、ピークトップの出現時間について予め適度な許容範囲を定めておき、その許容範囲内に収まった場合には、重複ピークではないと判断するとよい。
また、ここでは、「4種混合タンパク質」グループに存在せず「4種混合タンパク質+BSA」には存在するピークがあるか否かは、統計量であるp値で以て判断する。具体的には、そのピークの位置(RT,m/z)におけるピークの面積値(又は信号強度値等)をグループ間で比較した場合、p値<0.05以下であるならば、グループ間に差異がある可能性が高いものと判断する。
この実験における差異解析の目的は、バイオマーカであるペプチドを特定する又はその候補を絞ることであるため、差異であると誤判定される又は本来の差異との区別がつかないペプチド由来のピークについての重複ピーク、の数は少ないほど好ましく、理想的には重複ピークはゼロであるとよい。もちろん、何らかの手法を用いて重複ピークの数を減らすことができたとしても、それによって、同定されるペプチドの数(つまり全同定ピーク数から重複ピークを除いたピーク数)が大きく減少しては意味がない。即ち、好ましいのは、全同定ピーク数から重複ピークを除いたピーク数をできるだけ減らすことなく、重複ピークの数を減らす又はゼロにすることである。また、共通のペプチド由来のピークであるにも拘わらず、両グループ間で「差がある」と誤判定されてしまうピーク数は少ないほど好ましく、理想的にはゼロであるとよい。
これらをまとめると、RTアライメントが成功しているのであれば、図5に示した同定処理及び差異解析結果は次のようになることが期待される。
(A)全てのタンパク質について重複ピーク数が減少する。つまり、「同定されたピーク数」の欄における括弧( )外のピーク数と括弧( )内のピーク数とが近くなる。
(B)「4種混合タンパク質+BSA」グループのみに含まれるALBU_BOVIN(=BSA)について、「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」の欄における重複ピーク数(括弧( )外のピーク数と括弧( )内のピーク数との差)が減少する。
(C)ALBU_BOVIN(=BSA)について、「同定されたピーク数」と「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」とが近くなる又は等しくなる。即ち、同定されたピークの殆ど又は全部が、グループ間で「差がある」と判定される。
(D)ALBU_BOVIN(=BSA)について、図5(c)において同定されたペプチド数が図5(a)及び(b)に比べて大きく減少しない。
(E)両グループに共通に存在するタンパク質(4種類)について、「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」が減少する。即ち、共通に存在するタンパク質が一方のみに存在すると誤判定されることが減る。
上記のような観点から、図5の結果をみると次のようにいえる。
いま、図5(b)中の「同定されたピーク数」の欄をみると、「ALBU_BOVIN」(=BSA)であると同定された全ピーク数は32であるが、上述したような予め定めた許容範囲内で重複しているピークを除くとピーク数は21である。これは、かなり多くの重複ピークが存在している、つまりは同一ペプチド由来のクロマトグラムピークが異なる保持時間の位置に出現していることを示している。また、図5(a)と(b)とを比較するとそれほど大きな差はみられない。つまり、スケーリング無しのRTアライメントとRTアライメント無しとで結果の大きな違いは見られず、差異解析を行う上で、スケーリング無しのRTアライメントはあまり有効ではないと結論付けることができる。
これに対し、図5(a)と(c)とを比較すると、5種類のタンパク質のいずれにおいても重複ピークの顕著な減少がみられる。つまり上記(A)が実現されている。また、ALBU_BOVIN(=BSA)由来の「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」における重複ピークの数は「11」から「1」に激減しており、上記(B)も実現されている。また、ALBU_BOVIN(=BSA)由来の「同定されたピーク数」と「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」とは等しく、(C)も実現されている。さらに、図5(a)では「6(4)」と比較的大きかったタンパク質「PYGM_RABIT」由来の「同定されたピークの中でu検定の結果p<0.05であるピークの数」が、図5(c)では「2(1)」と顕著に減少している。つまり上記(E)も実現されている。さらに、重複ピークを除くALBU_BOVIN(=BSA)由来の「同定されたピーク数」は殆ど変化がなく、このピーク数はペプチド数に対応すると考えられるから、上記(D)も実現されている。
以上より、この実験例では、RTアライメントが正しく実行できていると結論付けることができ、本発明における特徴的なスケーリングを含むRTアライメント処理の優位性が確認できる。
ここでは、タンパク質の混合物を試料としたが、上述したように、本発明に特有のRTアライメント処理はタンパク質やペプチドの特性や特異性を利用したものではないので、適用対象はタンパク質やペプチドに限るものではなく、任意の種類に試料に利用することができることは明らかである。
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…液体クロマトグラフ部
2…スポッティング部
3…質量分析部
31…MALDIイオン源
32…TOF型質量分離
3…検出器
4…アナログデジタル変換器
5…データ処理部
51…三次元データ格納部
52…マススペクトルスケーリング計算部
53…全信号強度値計算部
54…修正TIC作成部
55…RTアライメント実行部
56…差異解析部

Claims (4)

  1. クロマトグラフ質量分析装置により収集されたデータを処理するデータ処理装置であって、複数の試料に対してそれぞれ得られたデータから求まる複数のクロマトグラムの保持時間のずれを補正するためのアライメント処理を行うデータ処理装置において、
    a)全測定時間範囲内又は一部の測定時間範囲内の各測定時点毎に、当該測定時点に得られたデータに基づいて作成されるマススペクトルの信号強度をスケーリングするマススペクトルスケーリング処理部と、
    b)前記マススペクトル毎に、前記マススペクトルスケーリング処理部によりスケーリングされた後の信号強度値を加算した全信号強度値を計算する全信号強度値算出部と、
    c)複数の試料のそれぞれについて、前記全信号強度値算出部により算出された複数の全信号強度値からトータルイオンクロマトグラムを作成するクロマトグラム作成部と、
    d)前記クロマトグラム作成部により作成された複数のクロマトグラムを用いてアライメント処理を実行するアライメント実行部と、
    を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  2. 請求項1に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    前記マススペクトルスケーリング処理部は、一つのマススペクトル内での信号強度値のばらつきの程度を、異なるマススペクトル間で等しくする又は少なくとも縮小させる第1のスケーリングと、マススペクトル毎の信号強度値の相対的なばらつきに応じた重み付けを行う第2のスケーリングと、を組み合わせた可変スケーリングを行うことを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  3. 請求項2に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    第1のスケーリングは、当該マススペクトル中のピークの信号強度の標準偏差で除する処理であり、第2のスケーリングは、当該マススペクトル中のピークの信号強度の平均値を前記標準偏差で除した値を乗じる処理であることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  4. 請求項1に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    前記マススペクトルスケーリング処理部は、一つのマススペクトル中のピークの信号強度の対数をとるスケーリングを行うことを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
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