以下、本発明の生体内組織閉鎖装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1および図2は、それぞれ、本発明の生体内組織閉鎖装置の第1実施形態を示す斜視図、図3は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の配置装置の主要部の分解斜視図(各部材(部品)を示す図)、図4は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の閉鎖具を示す斜視図、図5は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の閉鎖具の結び目の一例を示した説明図、図6は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の閉鎖具の結び目の他例を示した説明図、図7は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の糸支持部、ピンおよび糸を示す斜視図、図8は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第1チャージ部材の基部を示す断面図、図9は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の保持部材を示す斜視図、図10は、図9に示す保持部材の基端側部材および先端側部材を示す斜視図、図11は、図9に示す保持部材を示す断面図、図12は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図、図13は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第1の状態における第1チャージ部材、コネクタおよびケーシングを示す断面図、図14は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第1の状態における第1チャージ部材およびコネクタを示す正面図、図15は、図1に示す生体内組織閉鎖装置のケーシングを示す斜視図、図16は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第2の状態における第1チャージ部材、コネクタおよびケーシングを示す断面図、図17は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第2の状態における第1チャージ部材およびコネクタを示す正面図、図18は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第2の状態における第1チャージ部材、コネクタおよびケーシングであって、その第1チャージ部材およびコネクタが先端方向へ移動した状態を示す断面図である。また、図19〜図26は、それぞれ、図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
なお、図2、図19〜図20、図22〜図26では、ケーシングの上カバーの図示を省略する。
また、図1では、破線で丸く囲った部分のカバーチューブの内部および固定チューブの内部を拡大して示す。
また、図11では、カバーチューブおよび固定チューブをそれぞれ破線で示し、図12(c)では、固定チューブを破線で示す。
また、図1、図2、図19〜図20、図22〜図26では、図面が煩雑になるのを避けるため、一部を除き、糸の図示を省略する。
また、説明の都合上、図1、図2、図3、図7〜図11、図13〜図20、図22〜図26において、図中の矢印Aの方向を「先端」、矢印Bの方向(手元側)を「基端」、矢印Cの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とし、図4〜図6、図12および図21において、図中の上側を「基端」、下側を「先端」として説明する。
これらの図に示す生体内組織閉鎖装置1は、例えば、血管等の生体管腔、生体内部器官、生体内部組織等の生体内組織膜に形成され、経皮的に貫通した望ましくない穴(生体内組織膜を貫通する望ましくない穴)を閉じる(閉鎖する)装置である。以下、前記望ましくない穴を「傷穴」と言う。
図1〜図4に示すように、生体内組織閉鎖装置1は、先端部が生体内組織膜を貫通する傷穴を貫通可能であり、基端側に手元部9を有する長尺状の配置装置(移送・変形手段)3と、中心部に軸線方向に貫通する貫通孔(内腔)51を有するシース(長尺状の管体)5と、配置装置3の先端部において着脱自在に保持(連結)され、生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる閉鎖具(生体内組織閉鎖具)であるクリップ4とを備えている。
クリップ4は、クリップ本体(閉鎖具本体)40と、固定部である糸(第1の糸状体)46とを有し、クリップ本体40は、アンカー41と、変形可能な変形部42と、アンカー41と変形部42とを接続する接続部44とで構成されている。また、糸46は、結び目461および輪462を有している。なお、このクリップ4については、後に詳述する。
配置装置3は、シース5内に挿入、すなわち、シース5に着脱自在に装着して用いられる(シース5を配置装置3に着脱自在に装着して用いられる)(図20参照)。これらシース5および配置装置3により、長尺状の本体部2が構成される。また、止血作業(傷穴を閉じる作業)の際は、これらシース5および配置装置3の先端部と、クリップ4とが、それぞれ、傷穴を貫通する。すなわち、傷穴から血管等の生体の管腔(生体管腔)内に挿入される。
シース5は、長尺状の第1の管状体であるチューブ50と、チューブ50の基端部に設けられたハブ(コネクタ)52とを有している。また、ハブ52の内周側には、図示しないスリットが形成された止血弁(弁体)が設置されている。
また、ハブ52の側部には、貫通孔51に連通する管腔(流路)を有するポート部(突起)53が形成されている。
また、ハブ52の基端部の外周部には、溝54が周方向に沿って1周に亘って形成されている。
このシース5としては、例えば、カテーテルを用いた治療(PCI)や診断(CAG)の処置後に留置されているシース(イントロデューサシース)を用いてもよく、また、この生体内組織閉鎖装置1専用のものであってもよい。
配置装置3は、クリップ4(クリップ4の糸46)に対して着脱自在に連結し、クリップ4(クリップ4の糸46)を保持する糸(第2の糸状体)8と、先端部が傷穴を貫通可能な長尺状の第2の管状体(長尺部)であるカバーチューブ(カバー部材)(カバー手段)6と、先端部が傷穴を貫通可能な長尺状の第3の管状体である固定チューブ(係止部材)(係止手段)7と、初期状態(組み立て直後の状態)においてカバーチューブ6の先端部に位置し、クリップ4を収納(保持)し、カバーチューブ6に沿って基端側(基端方向)に移動可能な保持部材(インサータ)18と、固定チューブ7およびカバーチューブ6の基端側に設けられた手元部9とを有している。保持部材18は、基端側に移動する際、クリップ4が保持部材18に保持された状態から、変形部42をカバーチューブ6の後述する開口部61に押し込み、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61(先端部)に保持された状態にする機能を有する部材であるが、この保持部材18は後に詳述する。
クリップ4(クリップ4の糸46)は、この配置装置3の先端部において、カバーチューブ6および糸8により着脱自在に保持されており、これとともに、さらに、初期状態から保持部材18を基端側に移動させるまでは、保持部材18に収納され、保持されている。なお、糸8は、クリップ4における変形部42のアンカー41と反対側(先端側)の部分が変形部42のアンカー41側(根本部側)(基端側)の部分に対して相対的に移動(変位)し得るようにクリップ4を保持している。
また、固定チューブ7は、カバーチューブ6の管腔内(内側)に、同心的に設置(挿入)されており、カバーチューブ6は、固定チューブ7に対して、それらの長手方向に移動(摺動)し得るようになっている。これらカバーチューブ6および固定チューブ7は、シース5を装着する際、そのシース5の貫通孔51に挿入される。また、手元部9は、これら固定チューブ7およびカバーチューブ6の基端側に設けられている。
固定チューブ7は、比較的硬い構成材料で形成されている。この固定チューブ7の横断面での形状は、先端部71では、後述するクリップ4の糸46の結び目461を係止でき(管腔内に結び目461が入らない)、かつ後述する保持部材18が回転しない形状として、例えば、略楕円形(円を潰したような形状)をなし、それよりも基端側の部位では、略円形をなしている。
また、カバーチューブ6の先端部には、クリップ4の変形部42が挿入され、その変形部42を着脱自在に保持(装着)し得る開口部61が形成されている。この開口部61は、固定チューブ7の先端よりも先端側に位置している。また、カバーチューブ6の横断面での形状は、先端部、すなわち開口部61では、変形部42を保持し易い形状として、例えば、略楕円形(円を潰したような形状)をなし、また、その直近の基端側の部位(固定チューブ7の先端部71に対応する部位)では、固定チューブ7の先端部71に対応した形状、すなわち、略楕円形に変形し、また、それよりも基端側の部位では、略円形をなしている。
また、糸8は、固定チューブ7の管腔内(内側)に設置(挿入)されており、その固定チューブ7に対して、固定チューブ7の長手方向に移動し得るようになっている。
また、配置装置3のカバーチューブ6および固定チューブ7をシース5の基端側から貫通孔51に挿入し、そのシース5を最も基端側に位置させたとき、シース5(チューブ50)の先端からカバーチューブ6の開口部61が露出し(シース5の先端がカバーチューブ6の先端より基端側に位置し)、シース5の先端が固定チューブ7の先端より基端側に位置するようになっている。
なお、カバーチューブ6により、固定チューブ7の外表面が覆われ、その開口部61によりクリップ4の変形部42の少なくとも一部が覆われる。
一方、固定チューブ7は、糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引される際、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461を相対的に先端方向へ移動させることにより、糸46を締め付けて変形部42を変形させる機能を有する。なお、その固定チューブ7、糸8、後述する糸支持部15、ピン170、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および1対のコイルバネ22により、クリップ4の変形部42を変形させる変形機構の主要部が構成される。
図1〜図3に示すように、手元部9は、ケーシング(本体)11と、カバーチューブ6を支持するカバーチューブ支持部(カバー部材支持部)14と、糸8を支持する糸支持部(保持部材支持部)15と、糸支持部15に回動可能に設置され、糸8を糸支持部15に着脱自在に連結するピン(連結手段)170と、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33と、糸支持部15と第2チャージ部材33とを着脱自在に連結するスライド連結部材(連結手段)34と、弾性部材(発動部材)である1対のコイルバネ(バネ)22と、1対のガイドバー37と、レバー(摘み)28と、レバー28の下側に接合されているロック部29と、ストッパー35とを有している。なお、第1チャージ部材32および第2チャージ部材33により、チャージ手段が構成される。
ケーシング11は、上方に位置する上カバー11aと、下方に位置し、上カバー11aに接合された下カバー11bとを有している。このケーシング11は、基端側が閉じた筒状をなし、その先端部に小径部111が形成されている。
ケーシング11の小径部111には、シース5を手元部9(ケーシング11)に装着(固定)する機構、すなわち、保持部材18および後述する第1チャージ部材32の基部321を介してシース5のハブ52をケーシング11に連結(固定)する機構として、第1チャージ部材32の基部321が着脱自在に固定されるコネクタ31が設けられている。このコネクタ31は、筒状をなしており、ケーシング11の小径部111の外周側に、そのケーシング11に対して周方向に回動(回転)自在に設置されている。また、コネクタ31は、小径部111よりも先端側に突出している。
より詳細に説明すると、図13および図15に示すように、コネクタ31の基端部には、ピン(突起)313が、そのコネクタ31の内側に突出するように設けられており、ケーシング11の小径部111の外周側には、そのピン313をガイドするガイドレールとして、溝112が形成されている。ピン313は、溝112に挿入され、その溝112に沿って移動し得るようになっており、このピン313および溝112により、ケーシング11に対するコネクタ31の移動方向が規制される。
溝112は、小径部111の周方向に延在する第1の部位1121と、その第1の部位1121に連通し、軸方向(長手方向)に延在する第2の部位1122とを有している。第2の部位1122は、直線状をなし、第1の部位1121の端部から先端方向に延びている。ピン313が溝112の第1の部位1121に位置するときは、ピン313がその第1の部位1121に沿って移動することにより、コネクタ31は、ケーシング11に対して周方向に回動することができ、また、ピン313が溝112の第2の部位1122に位置するときは、ピン313がその第2の部位1122に沿って移動することにより、コネクタ31は、ケーシング11に対して軸方向に移動することができる。また、ピン313が溝112の第1の部位1121と第2の部位1122との境界部に位置するときは、ピン313は、第1の部位1121と第2の部位1122とのいずれでもそれに沿って移動することができるので、コネクタ31は、ケーシング11に対して周方向と軸方向とのいずれにも移動することができる。
なお、溝112の第1の部位1121およびピン313は、それぞれ、図13中では、その紙面の手前側に位置するが、それらを二点鎖線(仮想線)で示す。
ここで、初期状態では、コネクタ31のピン313は、ケーシング11の溝112における第1の部位1121の第2の部位1122と反対側の端部に位置しており、コネクタ31は、ケーシング11に対して、先端方向および基端方向(軸方向)への移動が阻止され、周方向にのみ回転することができる(第1の状態)。
また、初期状態からコネクタ31を所定方向(図示例では、先端方向から見て反時計回り)に回転させ、ピン313が第1の部位1122と第2の部位1122との境界部まで移動した状態(コネクタ31が回転しなくなるまで回転した状態)では、コネクタ31は、ケーシング11に対して、先端方向(軸方向)へ移動することが可能になる(第2の状態)。コネクタ31をケーシング11に対して先端方向へ移動させるときのコネクタ31(シース5)の移動距離の最大値は、溝112の第2の部位1122の長さと等しく、適宜、その第2の部位1122の長さを設定することで、前記コネクタ31の移動距離の最大値を所望の値に設定することができる。
このように、コネクタ31は、ケーシング11に対して回動することにより、先端方向(軸方向)への移動が阻止された第1の状態と、先端方向(軸方向)への移動が可能な第2の状態とに切り替え可能に構成されている。
なお、前記コネクタ31、ケーシング11の小径部111およびシース5の所定部位により、クリップ4のアンカー41の姿勢を調整する調整手段の主要部が構成されるが、その調整手段の作用については、後に詳述する。
また、図13および図14に示すように、コネクタ31の先端側の内周面には、後述する第1チャージ部材32の基部321に形成されている1対の突起327、328を係止する1対の螺旋状のリブ(凸条)311、312が形成されている。なお、第1チャージ部材32は、ケーシング11に対して、周方向には回動せず、軸方向にのみ移動することができるようになっている。
リブ311および312は、それぞれ、互いに同一方向に旋回する螺旋状をなしており、リブ311の基端面に、突起327の先端面が係止され、リブ312の先端面に、突起328の基端面が係止されるように形成されている。
なお、リブ311および312は、コネクタ31のピン313が第1の部位1121の第2の部位1122と反対側の端部に位置するときのみは、先端方向(軸方向)から見て、第1チャージ部材32の基部321の突起327がリブ311の先端部と重ならず、突起328がリブ312の先端部と重なるようになっている。これにより、前記コネクタ31のピン313が第1の部位1121の第2の部位1122と反対側の端部に位置している状態では、第1チャージ部材32を基端方向に移動させ、その基部321の突起327をリブ311の先端部より基端側に配置し、かつ、基部321の突起328をリブ312に当接させるかまたはそのリブ312の直前に配置することができる。
また、コネクタ31の外周面には、操作の際に指掛け部として作用する複数のリブ(凸条)315が、等間隔(等角度間隔)で形成されている。
また、ケーシング11の先端部であって、上カバー11aの内側および下カバー11bの内側には、それぞれ、後述する第1チャージ部材32の対応する棒状体322の基端部325が当接し得るリブ(凸条)91が、互いに対向するように、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って形成されている。
また、ケーシング11の基端部であって、下カバー11bの内側には、リブ(凸条)92が、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って形成されており、このリブ92の先端部の先端側に、段差部921が形成されている。
また、ケーシング11内の中央部には、ガイドバー支持部38が設けられ(固定され)、基端部には、ガイドバー支持部39が設けられている(固定されている)。
1対のガイドバー37は、それぞれ、ガイドバー支持部38とガイドバー支持部39との間に配置され、各ガイドバー37の先端部は、それぞれ、ガイドバー支持部38に保持(支持)され、基端部は、それぞれ、ガイドバー支持部39に保持(支持)されている。また、各ガイドバー37は、それぞれ、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って、互いに平行になるように配置されている。
なお、各ガイドバー37は、それぞれ、図示例では、パイプ(管)で構成されているが、これに限らず、例えば、中実であってもよい。
また、ケーシング11内の基端側の側部には、1対のレール36が設けられている(固定されている)。各レール36は、それぞれ、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って、互いに平行になるように配置されている。
各レール36には、それぞれ、その長手方向(軸方向)に沿って延在する溝361が形成されている。各溝361は、互いに対向するように、レール36の内側に形成されている。各レール36の溝361には、それぞれ、後述するスライド連結部材34の対応する棒状体342が挿入されている。
また、ケーシング11の内部には、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33と、カバーチューブ支持部14と、スライド連結部材34と、糸支持部15とが、それぞれ、ケーシング11に対して、その配置装置3(ケーシング11)の長手方向に移動可能に設置されている。
この場合、先端側から基端側に向って、第1チャージ部材32、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15の順番に配置されている。そして、第2チャージ部材33は、その先端部と基端部との間にガイドバー支持部38が位置するように配置されている。
また、カバーチューブ支持部14は、ガイドバー支持部38と第2チャージ部材33の基端部との間に位置するように配置されている。
また、第1チャージ部材32の基部321は、コネクタ31より先端側に位置している。
スライド連結部材34は、基部341と、基部341の両側部から基端方向に向って突出する1対の棒状体342とで構成されている。
各棒状体342の基端部347には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する爪343が立設されている。
また、基部341には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部344が形成されている。
また、基部341の中央部には、糸8が挿通する孔部345が形成されている。
また、基部341には、上方に向って突出し、ロック部29の突出部291に係止される突起346が形成されている。
図1〜図7に示すように、糸支持部15の先端部の両側部には、それぞれ、スライド連結部材34の対応する爪343と係合する突起155が形成されている。
また、糸支持部15の先端部より基端側には、上方および基端に開放した凹部150が形成されている。
また、糸支持部15の先端部には、糸8が引っ掛けられる糸固定部156と、糸8が挿通する孔部157と、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部158とが形成されている。
ピン170は、基部171と、基部171の中央部に立設された突起172とで構成されている。
このピン170は、その基部171において、糸支持部15に対し、回動自在に設置されており、突起172(ピン170)が起立した起立状態と、突起172(ピン170)が伏倒した伏倒状態とを採り得るようになっている。そして、ピン170は、基部171の下面(裏面)がケーシング11のリブ92の上面に当接することにより、起立状態に保持されている。なお、ピン170は、糸支持部15の凹部150に配置されている。
ストッパー35は、先端側に隙間が形成された(先端側が開放している)C字状のストッパー本体351と、ストッパー本体351を支持する支持部352とで構成されており、支持部352は、ガイドバー支持部39に設置(保持)されている。このストッパー35のストッパー本体351には、ピン170の突起172が挿入されている。これにより、ストッパー35によって、ピン170を介して糸支持部15が保持(ロック)され、糸支持部15の移動が阻止される。すなわち、ストッパー35により、ピン170および糸支持部15が、ケーシング11に対して先端方向へ移動するのが阻止されている。
また、ストッパー35のうちの少なくともストッパー本体351は、適度な硬さを有し、かつ、弾性変形し得るように構成されている。また、ストッパー本体351の先端側の隙間の長さ(間隙距離)は、ピン170の突起172の外径(直径)より小さく設定されている。
これにより、糸8を介して糸支持部15(ピン170)に加わる力、すなわち、糸8を介して糸支持部15が先端方向に引っ張られる力(引っ張り力)が、所定のしきい値(予め定めた値)を超えるまでは、糸支持部15の移動は阻止されるが、前記しきい値を超えると、ピン170の突起172が、ストッパー本体351の隙間から抜けて、糸支持部15が、ケーシング11に対して先端方向に移動し得るようになっている。この場合、後述するように、糸支持部15(糸支持部15、スライド連結部材34および第2チャージ部材33)が先端方向に移動し得るようになることで、コイルバネ22を収縮状態(変形状態、活性状態)に保持する規制の解除が可能になる。換言すれば、コイルバネ22を収縮状態に保持する規制の解除は、糸支持部15に加わる力が所定のしきい値を超えたことを条件に可能となる。
前記しきい値は、150〜1500gf程度であるのが好ましく、200〜1000gf程度であるのがより好ましい。
これにより、クリップ4のアンカー41が傷穴およびその周辺組織に確実に当接する前に、血管内等でクリップ4が多少引っ掛かったとしても、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)前にクリップ4が外れることが期待でき、そのクリップ4を傷穴まで移動させ、アンカー41を傷穴およびその周辺組織に当接させることができる。また、クリップ4によって傷穴およびその周辺組織が基端方向に過度に引っ張られてしまう前に、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)ことが期待でき、安全かつ確実に、アンカー41を傷穴およびその周辺組織に当接させることができる。
糸8は、1本の糸(糸状体)を折り返してその両端部を結び付け、輪にしたもの、すなわち、二重糸(二重糸状体)で構成されている。
この糸8は、クリップ4(クリップ4の糸46の輪462)を挿通して配置装置3の先端部で折り返されてクリップ4を保持した状態で、一方の端部81が糸支持部15の糸固定部156に引っ掛けられている(取り付けられている)。なお、糸8の端部81は、糸支持部15の糸固定部156に巻き付けられていてもよく、また、結び付けられていてもよい。また、糸8の他方の端部82は、糸支持部15の孔部157を挿通し、ピン170の突起172に引っ掛けられ、そのピン170により糸支持部15に着脱自在に連結されている。
なお、糸8は、本実施形態では、2重であるが、これに限らず、1重または3重以上になっていてもよい。
また、糸8は、輪になっていなくてもよい。具体的には、例えば、糸8の先端側は、クリップ4の糸46の輪462に結び付けられていてもよく、また、糸8の先端側に、糸46の輪462を挿通した輪が形成されていてもよい。また、糸8の基端側に、ピン170の突起172に引っ掛けられる輪が形成されていてもよい。
第2チャージ部材33は、外形の全体形状が略四角柱(直方体)の籠状(枠状)をなしている。
この第2チャージ部材33の先端部には、カバーチューブ6が挿通する孔部331が形成されている。
また、第2チャージ部材33の基端部には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部333が形成されている。さらに、第2チャージ部材33の基端部の1対の孔部333の間には、固定チューブ7が挿通する孔部332が形成されている。
また、第2チャージ部材33の基端部には、その上部および下部から基端方向に向って突出する1対の突出部334が立設されている。各突出部334の基端部には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する爪335が立設されている。この1対の爪335は、スライド連結部材34の基部341に係合する。
また、第2チャージ部材33の先端部の上部および下部には、1対の凹部336が形成されている。
第1チャージ部材32は、基部321と、基部321の基端部の上部および下部から基端方向に向って突出する1対の棒状体322とで構成されている。
各棒状体322の基端部325には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する凸部323が立設されている。この1対の凸部323は、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336に係合する。そして、各棒状体322の基端部325がケーシング11の対応するリブ91に当接することにより、両棒状体322の基端部325の間隔が広がることが阻止され、これにより、各棒状体322の凸部323が第2チャージ部材33の各凹部336に係合した状態が保持される。
また、図8に示すように、第1チャージ部材32の基部321は、筒状をなしている。すなわち、基部321の中央部には、カバーチューブ6が挿通するとともに、保持部材18が挿入される孔部324が形成されている。そして、この孔部324内には、1対の爪326が設けられている。
また、図13および図14に示すように、基部321の基端部の外側面(外周面)には、1対の突起327、328が形成されている。突起327と突起328とは、互いに、中心角で略180°ずれ、軸方向の位置が一致するように配置されている。また、突起327は、基部321の下部から下方に向かって突出するように形成され、突起328は、基部321の上部から上方に向かって突出するように形成されている。
カバーチューブ支持部14には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部143が形成されており、カバーチューブ6の基端部は、カバーチューブ支持部14の1対の孔部143の間に固定(支持)されている。
また、カバーチューブ6内に挿入されている固定チューブ7の基端部は、スライド連結部材34の基部341に嵌合(固定)されている。
この固定チューブ7の本体の外径(直径)は、第2チャージ部材33の基端部の孔部332の内径(直径)より小さく設定されている。
前記第2チャージ部材33の1対の孔部333、カバーチューブ支持部14の1対の孔部143、スライド連結部材34の1対の孔部344および糸支持部15の1対の孔部158には、それぞれ、1対のガイドバー37が挿通している。さらに、スライド連結部材34の1対の棒状体342は、それぞれ、1対のレール36の溝361に挿入されている。
これにより、第2チャージ部材33、カバーチューブ支持部14および糸支持部15は、それぞれ、各ガイドバー37によって、そのガイドバー37の長手方向(軸方向)に沿って案内される。
また、スライド連結部材34は、各ガイドバー37および各レール36によって、そのガイドバー37およびレール36の長手方向(軸方向)に沿って案内される。
ここで、図1に示す初期状態(組み立て直後の状態)において、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336には、第1チャージ部材32の1対の凸部323が係合している。これにより、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33とは、一体的に移動する。
また、初期状態において、糸支持部15の先端部の1対の突起155には、スライド連結部材34の1対の爪343が係合している。これにより、スライド連結部材34および固定チューブ7と、糸支持部15とは、一体的に移動する。すなわち、糸支持部15が固定チューブ7に対して移動(基端方向に移動)するのが阻止されている。但し、厳密には、ストッパー35やロック部29により、スライド連結部材34および糸支持部15の移動は、阻止されている。
なお、スライド連結部材34の1対の棒状体342の基端部347が対応するレール36に当接することにより、両棒状体342の基端部347の間隔が広がることが阻止され、これにより、各棒状体342の爪343が糸支持部15の対応する突起155に係合した状態が保持される。
また、初期状態において、第2チャージ部材33と、スライド連結部材34とは、所定距離離間している。これにより、第1チャージ部材32および第2チャージ部材33と、スライド連結部材34、固定チューブ7および糸支持部15とは、別々に移動する。
そして、後述するように、図19や図20に示す使用の際のチャージ状態(各コイルバネ22が活性状態である収縮状態に保持された状態)においては、第2チャージ部材33の1対の爪335が、スライド連結部材34の基部341に係合するとともに、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336と、第1チャージ部材32の1対の凸部323との係合が外れる。これにより、第2チャージ部材33と、スライド連結部材34と、糸支持部15と、固定チューブ7とが、一体的に移動するようになる。
また、クリップ4と、糸支持部15と、ケーシング11とを、配置装置3の長手方向に沿って連結する部材のうちに、バネのような配置装置3の長手方向に伸張する部材が含まれていないので、チャージ状態において、糸8を介して糸支持部15に加わる力が前記所定のしきい値を超えるまでは、クリップ4と、ケーシング11との間の距離は略一定に保持されている。
また、1対のコイルバネ22は、それぞれ、1対のガイドバー37の外周に配置されている。各コイルバネ22は、それぞれ、スライド連結部材34の孔部344を挿通し、第2チャージ部材33の基端部と、糸支持部15の先端部との間に位置しており、その先端は、第2チャージ部材33の基端部に当接し、基端は、糸支持部15の先端部に当接している。なお、初期状態において、各コイルバネ22は、それぞれ、自然状態または若干、収縮した状態にある。
レバー28は、初期状態においては、スライド連結部材34、固定チューブ7および糸支持部15と、ケーシング11との相対的な移動が阻止された状態(ロック状態)と、これらの相対的な移動が可能な状態(ロック解除状態)とを切り換え、また、チャージ状態においては、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および1対のコイルバネ22と、ケーシング11との相対的な移動が阻止された状態(ロック状態)と、これらの相対的な移動が可能な状態(ロック解除状態)とを切り換える操作を行なうための操作部(操作部材)である。
このレバー28は、ケーシング11の上カバー11aの外側の上面に、図1〜図3に示す矢印aおよびbの方向に移動(スライド)可能に設置されている。
そして、レバー28の下側には、ロック部29が接合されており、レバー28とロック部29とが一体的に移動するようになっている。このロック部29は、ケーシング11の上カバー11aの内側に位置している。また、ロック部29には、下方に向って突出する突出部291が立設されている。
レバー28が、図1〜図3に示すロック位置に位置しているときは、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346の先端側に当接して、突起346が突出部291に係止され、これにより、スライド連結部材34の先端方向への移動が阻止される。すなわち、ロック部29によりスライド連結部材34がロックされ、初期状態においては、スライド連結部材34、固定チューブ7および糸支持部15の先端方向への移動が阻止され、また、チャージ状態においては、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22の先端方向への移動が阻止され、これにより各コイルバネ22を発動させる動作が禁止される。
また、レバー28を矢印bの方向に移動させると(ロック解除位置に位置させると)、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346より側方(突起346のない位置)に移動(退避)し、突出部291への突起346の係止が解除される。これにより、前記ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除(ロックの解除)を条件に、スライド連結部材34は、先端方向へ移動可能になる。すなわち、ロック部29によるスライド連結部材34のロックが解除され、チャージ状態においては、ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除を条件に、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22は、先端方向へ移動可能になり、これにより各コイルバネ22を発動させる動作が可能になる。
なお、これらレバー28およびロック部29により、トリガ手段が1対のコイルバネ(発動部材)22を発動させる動作を禁止するロック状態と、前記動作を可能にするロック解除状態とを切り換える切換手段が構成される。
次に、クリップ4について説明する。
図4に示すように、クリップ(閉鎖具)4は、クリップ本体(閉鎖具本体)40と、固定部である糸(第1の糸状体)46とを有している。
クリップ本体40は、アンカー41と、変形可能な変形部42と、アンカー41と変形部42とを接続する接続部44とで構成されている。これらアンカー41、変形部42および接続部44、すなわち、クリップ本体40は、同一の材料で一体的に形成されているのが好ましい。
アンカー41は、生体内組織膜の一方の面(内面)側から傷穴の周辺部(生体内組織膜の傷穴を含む部分)に密着して傷穴および傷穴の周辺部を覆う平面部(平面)412を有する部材であり、板状をなしている。
このアンカー41における後述する変形部42が接続された面(図4中上側の面)は、略平面をなしている。また、アンカー41は、接続部44が設けられている部位を中心にして遥動し得る(変形部42に対する角度を変更し得る)ようになっている。また、アンカー41は、図4中の左右方向の長さが幅Wの方向の長さよりも長くなっており、図4中の左右方向がアンカー41の長軸方向(長手方向)となっている。
接続部44は、アンカー41の長軸方向に対して垂直な方向、すなわち、アンカー41の幅Wの方向に延在する板状をなしており、アンカー41の略央部の図4中上側の面に設けられている。これにより、アンカー41は、その幅Wの方向と平行な軸の回りにのみ(一方向にのみ)揺動する。
なお、血管壁と、その血管壁から皮膚に至る穿刺孔とのなす角度は、一定とは限らず、色々な角度の場合があるが、アンカー41は、その長軸方向が血管の走行方向となるように血管の走行方向に沿って配置されるので、アンカー41がその幅Wの方向と平行な軸の回りに揺動することにより、あらゆる角度(個体差)に対応することができ、アンカー41により、確実に、傷穴および傷穴の周辺部を覆うことができる。
変形部42は、略菱形の枠状体からなるパンタグラフ様形状をなしており、接続部44を介してアンカー41の平面部412の略中央に連結(接続)されている。
すなわち、変形部42は、アンカー41に対して略垂直な方向に伸び、アンカー41に対して略平行な方向に縮小した第1の形態と、アンカー41に対して略垂直な方向に縮み、アンカー41に対して略平行な方向に拡張した第2の形態との間において変形可能である枠状をなしている。従って、この変形部42は、図4に示す基本形態(基本形状)(自然状態)から、傷穴を通過可能な形態や、生体内組織膜の他方の面(外面)側からアンカー41とで生体内組織膜を挟み、傷穴を閉じることが可能な形態等、前記第1の形態と前記第2の形態との間の任意の形態に変形することができる。
なお、生体内組織膜が、血管壁(生体管腔壁)である場合は、前記一方の面は、血管壁(生体管腔壁)の体表から遠位の面、すなわち、内面であり、前記他方の面は、血管壁(生体管腔壁)の体表から近位の面、すなわち、外面である。
ここで、本実施形態では、変形部42は、帯状体を4回屈曲させて四角形の環状をなす形状(帯状体を複数回屈曲させて多角形の環状をなす形状)としたものである。すなわち、変形部42は、4つのリンクを一体的に形成してなり、ヒンジ状に屈曲可能な4つの角部を有する四角形(四角形の枠状)をなしている。そして、図4中上下方向の対角位置にある2つの角部421、422のうちの図4中下側(アンカー41側)の角部422が、接続部44を介してアンカー41の平面部412略中央に連結され、接続部44の図4中上側の端部に対して移動不可能な不動部となっている。
これにより、変形部42は、角部421と角部422とが接近、離間するように変形する、すなわち直行する2方向へ伸縮変形することができ、かつ、アンカー41に対し、揺動することもできる。
また、2つの角部421、422のうちの図4中上側(アンカー41と反対側)の角部421の上面(アンカー41と反対側の表面)423は、湾曲凸面をなしている。この変形部42の角部421(変形部42のアンカー41と反対側の端部)の中央付近には、2つの孔(貫通孔)425および428が形成され、角部422の中央付近には、2つの孔(貫通孔)426および427が形成されている。
また、変形部42における図4中左右方向の対角位置にある2つの角部よりも上側の部分は、その両側部がそれぞれ細長く切り欠かれており、これにより4つの段差部429が形成されている。各段差部429には、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が押し込まれる際、カバーチューブ6の先端が当接する。これにより、変形部42のカバーチューブ6の開口部61への挿入量が規制される。これによって、クリップ4を折り畳んだとき、アンカー41をより大きく傾斜させる(寝かせる)ことができ、クリップ4をよりコンパクトにすることができる。
また、接続部44は、板状をなしており、その中央付近には、孔(貫通孔)441が形成されている。この接続部44により、アンカー41と変形部42の角部422とを所定距離離間させることができる。
糸46は、変形部42のアンカー41と反対側の端部側と、変形部42のアンカー41側の端部側とに掛けられ、クリップ本体40に取り付けられている。本実施形態では、糸46は、変形部42の角部421(変形部42のアンカー41と反対側の端部)および接続部44を貫通した状態で、変形部42の角部421と接続部44とに掛けられている。すなわち、この糸46は、図4中上側から、順次、変形部42の角部421の孔425を挿通(貫通)し、角部422の孔426を挿入し、接続部44の孔441を挿通し、角部422の孔427を挿通し、角部421の孔428を挿通し、その角部421側(変形部42の外側)で、図5または図6に示すような形状の結び目461を形成している。このような結び目は、クリンチ・ノット(Clinch Knot)と呼ばれる。また、結び目461の図4中上側には、糸8が挿通する輪462が形成されている。
結び目461は、先端方向、すなわち、図4中下方に移動可能な結び方になっており、この結び目461を、糸46上を先端方向に移動させて糸46を締め付けることにより、変形部42が前記第1の形態と前記第2の形態との間の所定の形態に変形し、その状態を保持することができる。糸46が、変形部42が前記所定の形態になった状態を保持しているとき、その結び目461は、変形部42のアンカー41と反対側の端部、すなわち、角部421に位置する。結び目461は、糸46上を強く締め付けているため、強い力が加えられない限り自然に基端方向に移動することはない。
前記結び目461は、固定チューブ7の内径よりも大きく形成され、また、前記輪462は、固定チューブ7の内径よりも小さく形成されている。これにより、固定チューブ7によって、クリップ4の糸46の結び目461を移動させ、糸46を締め付けて変形部42を変形させる際、輪462は、固定チューブ7の管腔内に入ることができ、また、結び目461が固定チューブ7の管腔内に入ってしまうことを防止することができ、確実に、結び目461を移動させることができる。このようにして、糸46は変形部42の固定部として機能する。
前述したように、糸8は、糸46の輪462を挿通した状態で、固定チューブ7の管腔内を挿通する。
なお、前記糸46がこの糸8を兼用していてもよい。この場合、糸46で変形部42を固定した後、その糸46を結び目461より基端側で、はさみ等で切断すればよい。
また、前記糸46は、1本の糸(糸状体)を折り返してなり、一方の端部が折り返し部となる二重糸(二重糸状体)で構成され、その折り返し部により、輪462が形成されていてもよい。
前記クリップ4のクリップ本体40の少なくとも一部は、生体吸収性材料で構成されるのが好ましく、特に、クリップ本体40の主要部分(大部分)は、生体吸収性材料で全体を一体的に構成されるのが好ましい。これにより、クリップ本体40の主要部分が所定期間後に生体に吸収され、最終的に生体内に残らないので、人体への影響をなくすことができる。また、糸46も生体吸収性材料で構成されるのが好ましい。
用いられる生体吸収性材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン等の単体、あるいはこれらの複合体が挙げられる。
なお、クリップ4のクリップ本体40の構成材料としては、生体吸収性材料に限らず、例えば、樹脂や金属等の生体適合性材料を用いることができる。また、糸46の構成材料も生体吸収性材料には限定されない。
また、前記クリップ4のクリップ本体40として、特に、変形部42の変形機能に求められる材料物性としては、ヒンジ特性に優れたものであることが望ましい。具体的には、引張り強さ250〜500(Kg/cm2)、伸び150〜800%、引張弾性率8〜20(×103Kg/cm2)、曲げ強さ300〜700(Kg/cm2)のものが好ましい。これらの物性値を満たすことによって、クリップ本体40は、ヒンジ特性に優れ、変形部42が所望の変形能を有することができる。
図12に示すように、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の先端部から離脱し、その変形部42が変形可能な状態で、糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引されると、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461が先端方向に移動して、糸46が締め付けられ、変形部42が変形する。
この場合、クリップ4がカバーチューブ6の開口部61に保持されているときは、クリップ4の変形部42は、図12(a)に示すように、アンカー41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向(軸方向))に伸び、アンカー41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に縮小した形態をなしている。そして、結び目461が先端方向に移動して糸46が締め付けられるにつれて、変形部42の角部421が図12中下側に移動してゆき、その変形部42は、図12(a)に示す形態から、図12(b)に示す形態、図12(c)および(d)に示す、アンカー41と変形部42で生体内組織膜を挟み、傷穴を閉じることが可能な形態へと、連続的に変形する。すなわち、変形部42は、アンカー41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向)に縮み、アンカー41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に拡張してゆく。
また、前述したように、結び目461は、強い力が加えられた場合にのみ先端方向へ移動可能な結び方になっているので、糸46により、変形部42が所定の形態になった状態が保持される。
このように、このクリップ4によれば、変形部42の変形の度合いを連続的に規制(調整)することができる(2つの角部421、422の間の距離を連続的に規制(調整)することができる)。すなわち、変形部42が所望の形態になった状態で、その状態を保持することができる。これにより、例えば、血管壁のような生体内組織膜が厚い人、薄い人、硬い人、軟らかい人等、種々の場合に対応することができる(様々な生体内組織膜の状態(状況)に対応することができる。
なお、本発明では、クリップ(閉鎖具)の構成は、アンカーおよび変形部を有しているものであれば、前記のものに限定されないことは言うまでもない。
例えば、本発明では、クリップの変形部の形状は、四角形に限らず、他の多角形でもよく、また、円環状、楕円環等の角のない枠状であってもよい。
また、クリップの変形部は、例えば、コラーゲン等の生分解性樹脂材料(合成樹脂材料)を主材料とするスポンジ状の多孔質体(多孔質材料)や繊維の集合体等で構成することができる。
また、クリップの固定部は、糸状体には限定されない。
次に、保持部材18について説明する。
図9〜図11に示すように、保持部材18は、全体として略筒状をなしており、基端側に配置される基端側部材18aおよび先端側に配置される先端側部材18bで構成されている。
基端側部材18aと先端側部材18bとは、先端側部材18bが基端側部材18aの内側(内周側)に嵌合し、一体化している。また、先端側部材18bの外周部には、1対の凸部181が形成され、基端側部材18aの各凸部181に対応する部位には、それぞれ、側孔182が形成されている。これにより、基端側部材18aと先端側部材18bとを嵌合すると、先端側部材18bの各凸部181がそれぞれ基端側部材18aの対応する側孔182に臨む縁部に係合し、基端側部材18aと先端側部材18bとが互いに固定される。なお、図9および図11では、各凸部181および各側孔182は、それぞれ、一方のみが見えている。以下、基端側部材18aと先端側部材18bとを個別にではなく、それらを一体化した状態の保持部材18を説明する。
保持部材18の先端側の内周部には、シース5のハブ(コネクタ)52の溝54に挿入し、その溝54内の面に係合し得る1対のリブ(凸条)183が形成されている。各リブ183は、それぞれ、周方向に沿って形成されている。これら各リブ183および溝54により、保持部材18とシース5のハブ52とが接続され(連結し)、その状態が保持される。従って、各リブ183および溝54により、保持部材18とシース5のハブ52とを接続する第1の接続部が構成される。
また、保持部材18の基端側の外周部には、第1チャージ部材32の基部321の1対の爪326が挿入される溝184が形成されており、その溝184内の面に各爪326が係合し得るようになっている。この溝184は、周方向に沿って1周に亘って形成されている。これら溝184および各爪326により、保持部材18と手元部9とが接続され(連結し)、その状態が保持される。従って、溝184および各爪326により、保持部材18と手元部9とを接続する第2の接続部が構成される。
この保持部材18は、比較的広い空間(内腔)(広空間)が形成されている広空間部191と、広空間部191よりも先端側に設けられ、広空間部191よりも狭い空間(狭空間)が形成されている狭空間部192と、広空間部191と狭空間部192との間に設けられ、前記広空間と前記狭空間とに連通する空間が形成されている移行部193とを有する収納部190備えている。なお、空間の横断面(軸線に対して垂直な断面)における面積の大小を、空間の広狭(大小)としている。
広空間部191は、最も広い空間を有し、先端側に設けられた最広空間部1911と、それよりも基端側に設けられた基端側空間部1912とで構成されている。
初期状態(組み立て直後の状態)において、クリップ4は、収納部190(本実施形態では、広空間部191および移行部193)に収納(保持)されている。この場合、クリップ4の変形部42は、その大部分が、広空間部191の基端側空間部1912に収納され、残部が、最広空間部1911に収納されている。そして、アンカー41は、移行部193および広空間部191の最広空間部1911に収納されている。
基端側空間部1912の横断面での内形形状(空間の形状)は、略四角形をなし、その各頂点は、丸みを帯びている。また、その四角形の所定の1対の辺は、図11の紙面に対して垂直な方向を向き、他の1対の辺は、図11中上下方向を向いている。これにより、クリップ4は、アンカー41の図4に示す幅Wの方向が図11の紙面に対して垂直な方向となるような姿勢で収納されている。
また、初期状態において、図示の構成では、クリップ4は、問題がない程度に、基端側空間部1912からその変形部42に僅かな負荷がかかっていてもよく、この場合、変形部42が自然状態に対しカバーチューブ6の径方向に潰す負荷が僅かにかかった状態(カバーチューブ6の長手方向に伸ばすように僅かに折り畳まれた状態)で、収納されている。
生体内組織閉鎖装置1を組み立てる際は、クリップ4を収納部190の所定の位置に収納した後、基端側部材18aと先端側部材18bとを嵌合し、一体化する。これにより、クリップ4の変形部42に問題となるような大きさの負荷をかけることなく、クリップ4を収納部190に収納することができる。
なお、クリップ4は、その変形部42に全く負荷がかからず、変形部42が全く変形しないように収納されていてもよい。また、クリップ4は、広空間部191のみに収納されていてもよい。
また、初期状態において、カバーチューブ6および固定チューブ7は、保持部材18の内腔に、保持部材18の基端から挿入されている。この場合、カバーチューブ6の開口部61は、広空間部191に位置し、固定チューブ7の先端部71は、保持部材18の広空間部191よりも基端側の部位に位置している。比較的硬い固定チューブ7が保持部材18の内腔に位置しているので、これにより、カバーチューブ6の折れ曲がり(キンク)を防止することができる。
また、保持部材18の広空間部191より基端側の部位(基端部186)の横断面での内形形状(内腔の形状)は、潰れた状態の変形部42を保持するのに適した形状(例えば、略楕円状)をなしている。一方、前述したように、固定チューブ7の先端部71の横断面での形状と、カバーチューブ6の固定チューブ7の先端部71に対応する部位の横断面での形状は、それぞれ、略楕円形をなしているので、保持部材18に対するカバーチューブ6および固定チューブ7の回転を防止することができる。なお、前記楕円の向きは、保持部材18が基端側に移動する際、カバーチューブ6の開口部61にクリップ4の変形部42が挿入されるように設定されている。
また、横断面における寸法は、保持部材18の基端部186の内腔よりも、カバーチューブ6の開口部61の方が大きく設定されている。これにより、保持部材18がカバーチューブ6の先端部から離脱してしまうのを防止することができる。
また、保持部材18の最基端部187の内径は、先端側から基端側に向かって漸増している。また、その部位の表面は、丸みを帯びている。これにより、保持部材18を基端側に移動させる際、カバーチューブ6が座屈してしまうのを防止することができる。
また、保持部材18の基端部186と最基端部187との境界部の内径は、その保持部材18とカバーチューブ6との間の隙間から血液が漏れないか、または、その漏れ量が非常に少なくなるように設定するのが好ましい。すなわち、保持部材18の基端部186と最基端部187との境界部の内径は、カバーチューブ6の外径よりも若干小さく設定するのが好ましい。なお、前記境界部の内面にパッキン(弾性部材)を設置することにより、血液漏れをより確実に防止することができ、この場合は、前記境界部の内径をカバーチューブ6の外径よりも大きくしても血液漏れを防止することができる。
また、保持部材18は、その保持部材18が基端側に移動する際、クリップ4が、移行部193を経て、狭空間部192に挿入されるよう構成されている。
移行部193は、図11中下側に傾斜面194を有している。この傾斜面194は、先端側よりも基端側が図11中下側に位置するように傾斜している(先端側から基端側に向かって傾斜している)。
保持部材18が基端側に移動する際は、クリップ4は、この傾斜面194に沿って徐々に折り畳まれる。すなわち、クリップ4のアンカー41は、傾斜面194に沿って徐々に傾斜する。
一方、移行部193の図11中上側の面は、傾斜してない。これにより、クリップ4を、円滑に折り畳むことができる。
また、クリップ4が狭空間部192に挿入されると、その変形部42にかかる負荷が増大し、変形部42は、初期状態のときよりも圧縮され、図4に示す基本形態のときのクリップ4のアンカー41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向)に伸び、そのアンカー41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に縮小した形態(図12(a)参照)となる。これにより、クリップ4は、完全に折り畳まれ、この折り畳まれた状態(変形部42が圧縮された状態)で、変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される(開口部61および変形部42について図20参照)。
また、保持部材18は、内腔が狭空間部192の空間に連通する管状部185を有している。管状部185は、保持部材18の先端部の中央部に、先端側に向かって突出形成されている。シース5のハブ52と保持部材18とを接続する際は、この管状部185がハブ52の止血弁からそのハブ52内に挿入され、管状部185の内腔を介して、狭空間部192の空間とシース5の貫通孔51とが連通する。
また、管状部185の狭空間部192よりも先端側の部位の横断面での内形形状(内腔の形状)は、略四角形をなしており、保持部材18を基端側に移動させたとき、クリップ4のアンカー41(図4に示す幅Wの方向)が、その四角形の一方の対角線と略一致するようになっている。これにより、クリップ4が管状部185の内腔を通過する際、アンカー41の回転を防止することができる。
また、管状部185は、クリップ4が管状部185の内腔を通過するときの抵抗(摩擦抵抗)が、クリップ4が狭空間部192を通過するときの抵抗よりも大きくなるよう構成されている。具体的には、管状部185(先端側部材18b)は、前記四角形の対角線の長さが、アンカー41の幅Wよりも小さく設定され、かつ、柔軟性を有し、変形し得るようになっている。これにより、アンカー41が管状部185の内腔を通過する際、適度な抵抗(摩擦抵抗)が発現し、これによって、確実に、クリップ4の変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される。また、適度な抵抗であるので、アンカー41が管状部185の内腔を通過するのを阻害することもない。
そして、保持部材18が基端側に移動する際、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が保持されたクリップ4は、管状部185の内腔を通過し、保持部材18から排出され、シース5の貫通孔51に挿入される。この場合、クリップ4は、ハブ52の止血弁に接触することなく、シース5の貫通孔51に挿入されるので、確実に、正常な状態で、シース5の貫通孔51に挿入される。このようにして、クリップ4が保持部材18の収納部190に収納された状態から、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61に保持された状態になる。
なお、保持部材18の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。また、内部の視認性を確保するために、光透過性を有する(実質的に透明または半透明である)ものが好ましい。また、管状部185は、変形し得るように、比較的柔軟な樹脂材料等を用いるのが好ましい。
次に、生体内組織閉鎖装置1を用いて行なう止血作業の手順および生体内組織閉鎖装置1の作用について説明する。
カテーテルを用いた治療(PCI)や診断(CAG)の処置後は、シース5が留置されており、このシース5を用いる。シース5の先端部は、傷穴を貫通し、血管内に挿入されている。
図1〜図3に示すように、初期状態においては、レバー28は、ロック位置に位置し、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346の先端側に当接して、突起346が突出部291に係止され、これにより、スライド連結部材34の先端方向への移動が阻止されている。
まず、術者(使用者)は、シース5のハブ52に、配置装置3の保持部材18を接続する。この場合、保持部材18の管状部185をハブ52の止血弁からそのハブ52内に挿入し、ハブ52を保持部材18の先端部の内側に押し込む。これにより、保持部材18の各リブ183がハブ52の溝54に挿入され、その溝54内の面に係合する。これによって、保持部材18とシース5のハブ52とが接続され(連結し)、その状態が保持される。
次に、シース5および保持部材18をカバーチューブ6に沿って基端側に移動させる。
これにより、クリップ4は、カバーチューブ6の開口部61の先端に当接し、その開口部61により、係止される(先端側に押される)。これによって、クリップ4のアンカー41は、傾斜面194に沿って徐々に傾斜する(図11参照)。
そして、クリップ4が狭空間部192に挿入されると、変形部42にかかるカバーチューブ6の径方向の負荷が増大し、変形部42は、初期状態のときよりもカバーチューブ6の径方向に圧縮され、図4に示す基本形態のときのクリップ4のアンカー41に対して略垂直な方向に伸び、そのアンカー41に対して略平行な方向に縮小した形態となる。これにより、クリップ4は、完全に折り畳まれる。
また、アンカー41が管状部185の内腔を通過する際、適度な抵抗が発現し、これによって、クリップ4の変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される。
そして、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が保持されたクリップ4は、管状部185の内腔を通過し、保持部材18から排出され、シース5の貫通孔51に挿入される。このようにして、クリップ4が保持部材18の収納部190に収納された状態から、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61に保持された状態になる。
さらに、シース5および保持部材18をカバーチューブ6に沿って基端側に移動させ、第1チャージ部材32の基部321に、保持部材18を接続する。この場合、保持部材18の基端部を基部321の内側に押し込む。これにより、基部321の各爪326が保持部材18の溝184に挿入され、その溝184内の面に係合する。これによって、基部321と保持部材18(手元部9)とが接続され(連結し)、その状態が保持される。すなわち、基部321とハブ52とが保持部材18を介して接続される(基部321と保持部材18とハブ52とが一体化する)。
次に、図13、図14および図19に示すように、コネクタ31のピン313が、ケーシング11の溝112における第1の部位1121の第2の部位1122と反対側の端部に位置している状態で、シース5、保持部材18および第1チャージ部材32を基端方向に押し込み(移動させ)、第1チャージ部材32の基部321の基端部をコネクタ31内に挿入し、側面視で基部321の突起327がコネクタ31のリブ311の先端部より基端側に位置し、かつ、基部321の突起328がコネクタ31のリブ312に当接するかまたはそのリブ312の直前に位置している状態とする。
この際、第1チャージ部材32とともに第2チャージ部材33が基端方向に移動し、これにより、コイルバネ22が、この第2チャージ部材33と糸支持部15とで挟まれて収縮(変形、活性化、チャージ)されてゆく。そして、第2チャージ部材33の1対の爪335が、スライド連結部材34の基部341に係合し、この後、第1チャージ部材32の1対の棒状体322の基端部325が、ケーシング11の1対のリブ91の基端部よりも基端側に移動し、この両棒状体322の基端部325の間隔が広がり、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336と、第1チャージ部材32の1対の凸部323との係合が外れる(図3、図19参照)。
これにより、第2チャージ部材33は、スライド連結部材34および糸支持部15に対して移動不能となり、コイルバネ22が、収縮状態(変形状態、活性状態)に保持される。すなわち、第2チャージ部材33とスライド連結部材34と糸支持部15と固定チューブ7とコイルバネ22との位置関係が固定され、これらが一体的に移動し得るようになる。この状態をチャージ状態という。
この状態では、クリップ4(クリップ4のアンカー41)は、シース5の貫通孔(ルーメン)51内に収納されている。このため、前記第1チャージ部材32の基部321をコネクタ31内に挿入してチャージ状態にする際に、クリップ4により、血管壁を傷付けてしまうことはなく、非常に安全である。
次に、図16、図17および図20に示すように、コネクタ31をケーシング11に対して所定方向(図示例では、先端方向から見て反時計回り)に回転させる。これによって、コネクタ31のリブ311により突起327が基端方向に押され、第1チャージ部材32が基端方向に徐々に移動し、シース5の先端部からクリップ4のアンカー41およびカバーチューブ6が徐々に突出する。この際、コネクタ31は、そのピン313がケーシング11の溝112の第1の部位1121に沿って移動することで、軸方向への移動が阻止され、周方向へのみ円滑に回転する。なお、術者は、ピン313が、第1の部位1121の第2の部位1122側の端部、すなわち、第1の部位1121と第2の部位1122との境界部まで移動し、コネクタ31が回転しなくなるまで、そのコネクタ31を回転させる。
このようにして、シース5の先端部からカバーチューブ6の開口部61が突出するとともに、クリップ4のアンカー41が突出し、血管内に挿入されるとともに、第1チャージ部材32の基部321は、基端方向に移動し、さらにコネクタ31内に挿入される。また、リブ311の基端面に突起327の先端面が係止されるとともに、リブ312の先端面に突起328の基端面が係止され、これにより、第1チャージ部材32の基部321がコネクタ31に固定(連結)される。すなわち、保持部材18および第1チャージ部材32の基部321を介してシース5のハブ52が、コネクタ31に固定(連結)される。また、コネクタ31のピン313は、溝112の第1の部位1121と第2の部位1122との境界部に位置するので、コネクタ31は、ケーシング11(クリップ4)に対して先端方向へ移動することが可能となる。なお、第1チャージ部材32と第2チャージ部材33との係合は既に外れているので、第2チャージ部材33は、移動しない。
このように、前記コネクタ31を回転操作する前の状態では、クリップ4は、シース5の貫通孔51内に収納されており、また、その状態からコネクタ31を回転操作することで、第1チャージ部材32の基部321が、基端方向に徐々に移動するので、クリップ4のアンカー41が、シース5の先端から血管壁に向って急激に突出してしまうのを確実に防止することができる。
次に、図18に示すように、コネクタ31をケーシング11(クリップ4)に対して先端方向に移動させ、シース5の先端をクリップ4のアンカー41に当接させて、そのアンカー41の姿勢を調整する。
すなわち、術者は、ピン313が第2の部位1122の先端部まで移動し、コネクタ31がケーシング11に対して先端方向に移動しなくなるまで、そのコネクタ31をケーシング11に対して先端方向に移動させる。
これにより、図21(a)から(b)に示すように、コネクタ31、第1チャージ部材32、保持部材18およびシース5が、一体的に、ケーシング11に対して先端方向に移動する。この際、図18に示すように、コネクタ31は、そのピン313がケーシング11の溝112の第2の部位1122に沿って移動することで、周方向への回転が阻止され、先端方向へのみ円滑に移動する。そして、図21(b)に示すように、シース5の先端が、カバーチューブ6の先端を越えてクリップ4のアンカー41に当接し、そのアンカー41の姿勢が適正な姿勢、すなわち、アンカー41(平面部412)がシース5(カバーチューブ6)の軸に対して略垂直となる姿勢に調整される。
ここで、クリップ4は、前述したように、カバーチューブ6や糸8により、そのカバーチューブ6の開口部61に保持されており、クリップ4のケーシング11に対する位置は変化しないので、シース5がケーシング11に対して先端方向に移動すると、図21(b)に示すように、シース5内にクリップ4の変形部42および接続部44が挿入され、そのシース5の先端が、アンカー41を先端方向に押圧しつつ、アンカー41に当接する。この際、アンカー41がシース5の軸方向に傾いている場合は、アンカー41は、変形部42に対して接続部44が設けられている部位を中心にして遥動し、シース5の軸に対して略垂直となるように矯正される。これにより、後述するクリップ4のアンカー41の位置決めの際、アンカー41が傷穴を通り抜けてしまうことを防止することができ、アンカー41を傷穴および傷穴の周辺部に確実に当接させることができる。
前記クリップ4のアンカー41の姿勢が適正な姿勢になった後、コネクタ31をケーシング11に対して基端方向に移動させ、図16に示す元の位置に戻す。これにより、図21(b)から(c)に示すように、コネクタ31、第1チャージ部材32、保持部材18およびシース5が、一体的に基端方向に移動し、シース5の先端がアンカー41から離間し、シース5とクリップとの位置関係が元に戻る。
なお、前記コネクタ31を先端方向へ移動させる操作(押し引きする操作)は、1回のみ行ってもよく、また、複数回行ってもよい。
次に、手元部9のケーシング11を手指で把持し、その手元部9、すなわち、本体部2(配置装置3)をゆっくりと、一方向、すなわち、傷穴から引き抜く方向(基端方向)に移動させ、クリップ4のアンカー41で血管壁の内側から傷穴および傷穴の周辺部(周辺組織)を覆う(アンカー41の位置決めを行なう)(図22参照)。クリップ4の変形部42は、血管の外側に移動する。
術者は、前記アンカー41で傷穴および傷穴の周辺部を覆う際の作業(操作)においては、本体部2を傷穴から引き抜く方向に移動させた際、アンカー41が傷穴およびその周辺組織に当接したときの抵抗(面当て抵抗)を感知すると、アンカー41が傷穴およびその周辺組織に当接し(面当てされ)、アンカー41の位置決めが完了したものと判断する。
この場合、クリップ4と、糸支持部15と、ケーシング11とを、配置装置3の長手方向に沿って連結する部材のうちに、バネのような配置装置3の長手方向に伸張する部材が含まれておらず、クリップ4と、ケーシング11との間の距離は略一定に保持されているので、術者は、クリップ4のアンカー41にかかる力を直接的に手指で感知することでき、これにより、クリップ4のアンカー41が傷穴およびその周辺組織に当接したときの抵抗を正確に感知することができる。
また、ロック部29により、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22の先端方向への移動が阻止されているので、前記アンカー41の位置決めが完了する前に各コイルバネ22が発動してしまうのを確実に防止することができる。
これにより、容易かつ確実に、クリップ4のアンカー41の位置決めを行なうことができる。
次に、図22に示すように、レバー28を矢印bの方向に移動させ、ロック解除位置に位置させる。これにより、ロック部29が矢印bの方向に移動し、その突出部291が、スライド連結部材34の突起346より側方(突起346のない位置)に移動(退避)し、突出部291への突起346の係止が解除される。これによって、ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除を条件に、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22は、先端方向へ移動可能になる。
次に、本体部2(配置装置3)をゆっくりと、傷穴から引き抜く方向(基端方向)に移動させて、本体部2を傷穴から引き抜く。これにより、すべての各操作(動作)が順次、連続して行われ、クリップ4により傷穴が閉じられて、そのクリップ4が生体内に配置(留置)される。以下、この際の手順や作用を詳細に説明する。
まず、図23に示すように、手元部9(ケーシング11)を基端方向に移動させると、クリップ4のアンカー41が血管壁の内面(体表から遠位の面)に当接しているので、糸支持部15は、糸8を介して先端方向に引っ張られる。そして、この糸8を介して糸支持部15に加わる力(引っ張り力)が、所定のしきい値を超えると、ピン170の突起172が、ストッパー35のストッパー本体351の隙間から抜け、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22が、一体的に、ケーシング11に対して先端方向に移動する。
ここで、仮に、前記ロック部29によりスライド連結部材34の先端方向への移動が阻止された状態でのアンカー41の位置決めにおいて、例えば、血管内でクリップ4が引っ掛かったりして、その位置決めが不完全だったとしても、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)前にクリップ4が外れることが期待でき、そのクリップ4を傷穴まで移動させ、アンカー41を傷穴およびその周辺組織に当接させることができる。このように、クリップ4のアンカー41の位置決め操作が2重に行なわれるので、アンカー41を傷穴およびその周辺組織に確実に当接させることができる。
前記第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22が、ケーシング11に対して先端方向に移動すると、固定チューブ7と共に、クリップの変形部42がカバーチューブ6に対して先端方向へ移動し、カバーチューブ6の先端部から変形部42が離脱し、変形部42が変形可能になる。
そして、図24に示すように、スライド連結部材34の1対の棒状体342の基端部347が、1対のレール36の先端部よりも先端側に移動すると、各棒状体342の基端部347は、それぞれ、側方(矢印E、Fの方向)に移動(変位)することが可能になる。一方、スライド連結部材34は、各コイルバネ22の復元力により、糸支持部15に対して先端方向に付勢されているので、各棒状体342の基端部347は、その付勢力により、各突起155に沿って略側方に移動し、各棒状体342の爪343が、糸支持部15の各突起155から外れる。
これにより、スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結が解除され、糸支持部15が、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7に対して基端方向に移動するのが可能となる。また、前記スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結を解除することにより、糸支持部15と、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7との相対的な移動を可能とすることで、各コイルバネ22を変形状態(活性状態)に保持する規制が解除される。
これにより、糸支持部15は、各コイルバネ22の復元力によって、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7に対して、基端方向に移動する。このように、スライド連結部材34、糸支持部15の1対の突起155、第2チャージ部材33の1対の突出部334および1対のレール36は、各コイルバネ22を活性状態に保持する規制を解除することによって各コイルバネ22を発動させるトリガ手段として機能する。また、スライド連結部材34、糸支持部15の1対の突起155および第2チャージ部材33の1対の突出部334は、各コイルバネ22を活性状態に保持する規制手段として機能する。また、糸支持部15と第2チャージ部材33とを連結しているスライド連結部材34の各棒状体342の基端部347を側方(各棒状体342の爪343が糸支持部15の各突起155から外れる方向)へ移動させる動作(トリガ動作)は、術者が手元部9を基端側に引き抜く(移動させる)動作および各コイルバネ22の付勢力によって自動的に行なわれる。
前記糸支持部15が固定チューブ7に対して基端方向に移動すると、図24に示すように、糸8が基端方向へ移動し、その糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引され、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461が先端方向に移動して、糸46が締め付けられ、変形部42が変形する。
これにより、変形部42が血管壁の外側から傷穴および傷穴の周辺部を覆い、アンカー41が血管壁の内側から傷穴および傷穴の周辺部を覆い、これらアンカー41と変形部42とで血管壁が挟み込まれ、傷穴が閉じる。そして、糸46により、変形部42が前記の形態になった状態が保持(固定)される。
また、前記スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結が解除(各コイルバネ22を変形状態に保持する規制が解除)された後、すなわち、クリップ4の変形部42の変形が完了した後、図25に示すように、クリップ4のアンカー41が血管壁の内面に当接した状態で、手元部9(ケーシング11)を基端方向にさらに移動させると、ケーシング11が糸支持部15に対して基端方向にさらに移動する。すなわち、糸支持部15がケーシング11に対して先端方向にさらに移動する。
そして、糸支持部15に設けられているピン170が、ケーシング11のリブ92の先端部より先端側に位置するまで移動すると、段差部921でピン170が回動してその突起172が伏倒する。
これにより、ピン170による糸8と糸支持部15との連結が解除され、これによって糸8とクリップ4の糸46との連結が解除される(糸8によるクリップ4の保持状態が解除される)。すなわち、糸8の端部82がピン170の突起172から外れ、その糸8をクリップ4の糸46の輪462から抜き取ることができるようになる。従って、前記段差部921により、連結解除手段および保持状態解除手段が構成される。
そして、引き続き、手元部9(ケーシング11)を基端方向に移動させると、まずは、本体部2のみ(シース5、カバーチューブ6および固定チューブ7の先端部まで)が患者から抜去される。この段階では、図25に示すように、糸8の端部82は、クリップ4の糸46の輪462から抜けずに、患者の体外に位置し、糸8によりクリップ4が保持されている。
すなわち、この生体内組織閉鎖装置1では、構造および機構上、糸8の長さが比較的長く設定されるので、本体部2が患者から抜去された直後の段階では、糸8の端部82がクリップ4の糸46の輪462から抜けておらず、糸8によりクリップ4が保持されているとともに、糸8の端部82は、患者の体外に位置している。このため、術者は、本体部2と、糸8の端部82とを掴んでいることで、糸8を介してクリップ4を保持(確保)していることができ、これにより、種々の事態に対応することができ、安全性が非常に高い。この場合、例えば、術者は、血管内のクリップ4を、糸8を介して保持しつつ、手術で取り出すこともできる。
問題がなければ、図26に示すように、手元部9(ケーシング11)を基端方向にさらに移動させ、患者から糸8を抜去する。これにより、クリップ4が生体内に配置(留置)される。
以上説明したように、この生体内組織閉鎖装置1によれば、血管等の生体内組織膜に形成された傷穴を閉じる(閉鎖する)際、配置装置3のカバーチューブ6の開口部61に保持されているクリップ4をシース5を介して血管内に挿入した後、容易かつ確実に、そのクリップ4のアンカー41の姿勢を適正な姿勢に調整することができる。これにより、傷穴を容易かつ確実に閉じる(閉鎖する)ことができる。
また、クリップ4のアンカー41の位置決めが完了し、レバー28を操作してロック解除状態とした後は、手元部9(ケーシング11)を基端方向(一方向)に移動させるだけの操作で、すべての各操作(動作)が術者の操作を必要とすることなく行われ、クリップ4により傷穴が閉じられて、そのクリップ4を生体内に配置(留置)することができる。このため、片手でも容易に操作することができ、血管壁等の生体内組織膜に形成された傷穴に対し、止血作業を容易、迅速かつ確実に行なうことができる。すなわち、傷穴を容易、迅速かつ確実に閉じることができる。
特に、コイルバネ22の復元力によりクリップ4の変形部42を変形させるので、術者は、手作業でクリップ4の変形部42を変形させる操作を行う必要がなく、また、常に一定の締め込み力を得ることができ、傷穴を極めて容易、迅速かつ確実に閉じることができる。
また、クリップ4の変形部42が第1の形態と第2の形態との間の所望の形態になった状態で、糸46により、その状態を保持することができる。これにより、様々な生体内組織膜の状態(状況)に対応することができる。
なお、本実施形態では、コネクタ31にピン313が設けられ、ケーシング11に溝112が設けられているが、本発明では、逆に、コネクタ31に溝(ガイドレール)が設けられ、ケーシングにピン(突起)が設けられていてもよい。
また、本発明では、ガイドレールは、溝(有底のもの)に限らず、例えば、スリット(無底のもの)等であってもよい。
<第2実施形態>
図27は、本発明の生体内組織閉鎖装置の第2実施形態におけるケーシング、コネクタおよび第1チャージ部材を示す断面図である。
なお、図27は、第1実施形態の図13に対応する。また、以下では、図27中の矢印Aの方向を「先端」、矢印Bの方向(手元側)を「基端」、矢印Cの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」として説明を行う。
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図27に示すように、第2実施形態の生体内組織閉鎖装置1は、コネクタ31を基端方向に向けて付勢する付勢手段として、コイルバネ(弾性部材)121を有している。
コイルバネ121は、コネクタ31内に配置されており、その基端部は、ケーシング11の小径部111の先端部に接続(固定)され、先端部は、固定部材122を介してコネクタ31に接続(固定)されている。
固定部材122は、環状をなしており、コネクタ31の内周側に、そのコネクタ31に対し、軸方向(長手方向)には移動せずに、周方向のみに回動(回転)自在に設置されている。そして、この固定部材122に、前記コイルバネ121の先端部が接続されている。これにより、コネクタ31を回転させる際、コイルバネ121が捻れてしまうことを防止することができる。
なお、初期状態において、コイルバネ121は、自然状態または若干、伸長した状態にある。
クリップ4のアンカー41の姿勢を調整する際は、術者は、手指でコネクタ31を摘み、コイルバネ121の付勢力(弾性力)に抗して、コネクタ31をケーシング11(クリップ4)に対して先端方向に移動させる。これにより、シース5の先端がクリップ4のアンカー41に当接し、そのアンカー41の姿勢が適正な姿勢に調整される。また、コイルバネ121は、伸長する。
そして、この後、コネクタ31を摘んでいる力を緩めるか、またはコネクタ31を離す。これにより、コネクタ31は、コイルバネ121の付勢力(復元力)により、基端方向に引っ張られてケーシング11に対して基端方向に移動し、元の位置に戻り、シース5の先端がアンカー41から離間する。
この生体内組織閉鎖装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
そして、この生体内組織閉鎖装置1では、コイルバネ121の付勢力により、自動的に、シース5が基端方向に移動し、シース5の先端がアンカー41から離間するので、アンカー41の姿勢を調整する作業をより容易に行うことができる。
<第3実施形態>
図28および図29は、それぞれ、本発明の生体内組織閉鎖装置の第3実施形態を示す斜視図、図30は、カム機構の他の構成例を示す斜視図である。
なお、図28は、第1実施形態の図20に対応する。また、以下では、図28〜図30において、図中の左側を「先端」、右側を「基端」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
以下、第3実施形態について、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図28および図29に示すように、第3実施形態の生体内組織閉鎖装置1は、クリップ4のアンカー41の姿勢を調整する調整手段が、コネクタ31をケーシング11(クリップ4)に対して相対的に先端方向へ移動させる移動機構13を有している。
移動機構13は、操作部材131と、操作部材131の運動をコネクタ31の直線運動に変換する変換機構とを有している。
操作部材131は、環状(筒状)をなしており、コネクタ31の基端側に配置されている。この操作部材131は、ケーシング11の小径部111の外周側に、そのケーシング11に対し、軸方向(長手方向)には移動せずに、周方向のみに回動(回転)自在に設置されている。
また、前記変換機構は、本実施形態では、カム機構で構成されている。すなわち、操作部材131の先端部(先端面)には、第1のカム面132が形成され、コネクタ31の基端部(基端面)には、その第1のカム面132に対面(対向)する第2のカム面316が形成されている。第1のカム面132の形状と第2のカム面316の形状は、それぞれ、円筒体(筒状体)を斜めに切ったときの一方の切り口の形状と他方の切り口の形状をなしており、第1のカム面132および第2のカム面316により、操作部材131の回転運動がコネクタ31の軸方向の直線運動に変換されるようになっている。
また、操作部材131の外周面には、操作の際に指掛け部として作用する複数のリブ(凸条)133が形成されている。各リブ133は、それぞれ、コネクタ31の各リブ315に対応する部位に位置するように、等間隔(等角度間隔)で配置されている。
クリップ4のアンカー41の姿勢を調整する際は、術者は、手指で操作部材131を摘み、図28に示す状態から操作部材131を所定方向に180°回転させる。これにより、図29に示すように、コネクタ31は、第1のカム面132および第2のカム面316の作用により、コイルバネ121の付勢力(弾性力)に抗して、ケーシング11(クリップ4)に対して先端方向に移動し、シース5の先端がクリップ4のアンカー41に当接し、そのアンカー41の姿勢が適正な姿勢に調整される。また、コイルバネ121は、伸長する。
そして、この後、操作部材131をさらに180°回転させる。これにより、図28に示すように、コネクタ31は、コイルバネ121の付勢力(復元力)により、基端方向に引っ張られてケーシング11に対して基端方向に移動し、元の位置に戻り、シース5の先端がアンカー41から離間する。
ところで、コネクタ31をケーシング11に対して回転させる際は、第1のカム面132および第2のカム面316の作用により、そのコネクタ31とともに操作部材131が一体的に回転し、コネクタ31と操作部材131の位置関係は保持される。
なお、移動機構13のカム機構の構成は、前記のものには限定されず、次に、カム機構の他の構成例について説明する。
図30に示すように、このカム機構では、操作部材131の第1のカム面132aの形状とコネクタ31の第2のカム面316aの形状が、それぞれ、円筒体(筒状体)を周方向に沿って波状に切ったときの一方の切り口の形状と他方の切り口の形状をなしている。
この移動機構13では、操作部材131を所定方向に90°回転させるまでは、コネクタ31は、第1のカム面132aおよび第2のカム面316aの作用により、ケーシング11に対して先端方向に移動し、操作部材131をさらに90°回転させると、コネクタ31は、コイルバネ121の付勢力により、基端方向に引っ張られてケーシング11に対して基端方向に移動し、元の位置に戻る。
この生体内組織閉鎖装置1によれば、前述した第2実施形態と同様の効果が得られる。
そして、この生体内組織閉鎖装置1では、操作部材131が設けられているので、アンカー41の姿勢を調整する作業をさらに容易に行うことができる。
<第4実施形態>
図31および図32は、それぞれ、本発明の生体内組織閉鎖装置の第4実施形態を示す斜視図である。
なお、図31および図32では、シース等の先端側の部材の図示を省略する。
また、以下では、図31および図32において、図中の左側を「先端」、右側を「基端」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
以下、第4実施形態について、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図31および図32に示すように、第4実施形態の生体内組織閉鎖装置1では、移動機構13が移動体134を有するとともに、変換機構がリンク機構で構成されている。
移動体134は、環状(筒状)をなしており、コネクタ31の基端側に配置されている。この移動体134は、ケーシング11の小径部111の外周側に、そのケーシング11に対し、周方向には回動せずに、軸方向(長手方向)のみに移動可能に設置されている。
また、前記リンク機構は、1対のリンク(棒状体)135、136を有している。リンク135とリンク136は、その中央部において、互いに回動(回転)自在に連結されている。そして、リンク135の下端部は、移動体134に回動自在に連結され、リンク136の下端部は、ケーシングの先端部の外周面に回動自在に連結されている。なお、このリンク135やリンク136が、移動機構13の上端部が操作部材を兼ねる(操作部材として機能する)。
クリップ4のアンカー41の姿勢を調整する際は、術者は、手指でリンク135の上端部を押し、図31に示す状態からリンク136を図31中時計回りに回転させる。これにより、図32に示すように、リンク135および136の作用により、移動体134が先端方向に移動し、コネクタ31は、その移動体134により先端方向に押され、コイルバネ121の付勢力(弾性力)に抗して、ケーシング11(クリップ4)に対して先端方向に移動し、シース5の先端がクリップ4のアンカー41に当接し、そのアンカー41の姿勢が適正な姿勢に調整される。また、コイルバネ121は、伸長する。
そして、この後、リンク135を押している力を緩めるか、またはリンク135を離す。これにより、図31に示すように、コネクタ31は、移動体134とともに、コイルバネ121の付勢力(復元力)により、基端方向に引っ張られてケーシング11に対して基端方向に移動し、元の位置に戻り、シース5の先端がアンカー41から離間する。
なお、前記の操作は、リンク136を使用して行ってもよい。また、移動機構13のリンク機構の構成は、前記のものに限定されないことは言うまでもない。
この生体内組織閉鎖装置1によれば、前述した第3実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明の生体内組織閉鎖装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
なお、前記実施形態では、糸8の2つの端部のうち、一方を手元部9内に固定し、他方を連結解除されるものとしたが、本発明では、両端とも同時に解除されるものとすることもできる。そのように構成すれば、糸8はクリップ4に接続されたまま生体側に残ることとなる。その後、糸8は術者の手技により、自由に除去することができる。
また、本発明では、コイルバネ(第1弾性部材)22を変形状態(活性状態)に保持する規制の解除(トリガ手段)が、例えば、スイッチやボタンの操作等で行われるようになっていてもよい。
また、本発明では、調整手段の移動機構は、例えば、モータ(駆動源)を備え、電気的なスイッチの操作により、そのモータが駆動して作動するように構成されていてもよい。
また、本発明では、保持部材18が省略されていてよく、例えば、初期状態(組み立て直後の状態)において、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61に保持されていてもよい。
また、前記実施形態では、シース5のハブ52とコネクタ31とが、他の部材を介して間接的に連結されるようになっているが、本発明では、これに限らず、ハブ52とコネクタ31とが、直接、連結されるようになっていてもよい。