JP5334466B2 - 湿式摩擦材 - Google Patents

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本発明は、油中に浸した状態で対向面に高圧力をかけることによってトルクを得る湿式摩擦材であって、平板リング状の芯金にセグメントピースに切断した摩擦材基材を全周両面若しくは片面に接着してなるセグメントタイプ摩擦材、及び平板リング形状の芯金の両面若しくは片面にリング状の摩擦材基材を接着してなるリング状摩擦材に関するものである。
近年、自動車等の自動変速機(Automatic Transmission、以下「AT」とも略する。)の多段化による変速ショックの低減を目的として、ATに用いられる湿式摩擦材において、変速特性(係合・解放特性)の向上が要求されている。解放特性を向上させるには、湿式摩擦材の気孔径を大きくしたり、気孔率を増やしたりすることによって、解放時に湿式摩擦材の摩擦面と相手材プレートとの間に自動変速機潤滑油(Automatic Transmission Fluid、以下「ATF」とも略する。)による油膜をでき難くすることが効果的である。(なお、「ATF」は、出光興(株)の登録商標である。)
特許文献1の「湿式摩擦材」の発明においては、ペーパー基材中に平均粒子径1μm〜10μmのシリカと円盤状の珪藻土を含有し、かつ、レゾール型フェノール樹脂とシリコーン樹脂とを混合して得られる液状樹脂組成物の硬化物を結合材として使用している。これによって、高い摩擦係数を有し、耐熱性(耐ヒートスポット性)に優れ、μ−V特性の正勾配性が向上した湿式摩擦材が得られるとしている。
特開2004−138121号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の湿式摩擦材においては、真比重の小さい珪藻土をペーパー基材中に25重量%〜45重量%含有しており、珪藻土によってペーパー基材の繊維間の気孔が埋められてしまい、気孔径が小さくなって良好な解放特性が得られない場合がある。これに対して、気孔径や気孔率を大きくするために、ペーパー基材の繊維のフィブリル化を大きくしたり、ライニング密度を小さくしたりすると、湿式摩擦材の強度低下やヘタリ量の増加等の弊害が発生するという問題点があった。
そこで、本発明においては、強度低下やヘタリ量の増加等の弊害を起こすことなく、μ−V特性の正勾配性に優れ、引き摺りトルクを低減できるだけでなく、湿式摩擦材の気孔径を大きくすることによって解放特性にも優れた湿式摩擦材を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明に係る湿式摩擦材は、繊維成分とフィラー成分とを含有する抄紙体に熱硬化性樹脂を含浸させて加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、前記フィラー成分中に、平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーを前記抄紙体全体に対して5重量%〜40重量%の範囲内で含有するものである。
また、前記摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが、1μm〜20μmの範囲内にあり、前記摩擦材基材の気孔率が30%〜70%の範囲内であるものである。
ここで、「湿式摩擦材」としては、平板リング状の芯金にセグメントピースに切断した摩擦材基材を接着してなるセグメントタイプ摩擦材、及び平板リング形状の芯金にリング状の摩擦材基材を接着してなるリング状摩擦材の双方が含まれる。
また、「真比重」とは、「嵩(かさ)比重」に対応する用語であり、無機フィラーの中に空間がある場合の嵩比重(見掛け密度)ではなく、無機フィラーを構成する物質の本来の比重をいう。請求項1に記載の要件を満たす「無機フィラー」としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化チタン、等がある。特に、平均粒子径が0.3μm〜1.0μm、真比重が5.5〜6.0、モース硬度が4〜5の酸化亜鉛、または平均粒子径が3μm〜10μm、真比重が4.0〜4.5、モース硬度が3〜4の硫酸バリウムを無機フィラーとして用いることが好ましい。
請求項2の発明に係る湿式摩擦材は、繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体に前記フィラー成分の残部である無機フィラーを添加した後に熱硬化性樹脂を含浸させて、または繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体に前記フィラー成分の残部である無機フィラーを添加した熱硬化性樹脂を含浸させて、加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、前記無機フィラーは平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーであり、前記抄紙体全体の5重量%〜40重量%の範囲内で添加されたものである。
また、前記摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが、1μm〜20μmの範囲内にあり、前記摩擦材基材の気孔率が30%〜70%の範囲内であるものである。
請求項3の発明に係る湿式摩擦材は、請求項1または請求項2の構成において、前記繊維成分は前記抄紙体中における含有率が30重量%〜60重量%の範囲内であり、前記フィラー成分は前記抄紙体中における含有率が40重量%〜70重量%の範囲内であるものである。
請求項1の発明に係る湿式摩擦材は、繊維成分とフィラー成分とを含有する抄紙体に熱硬化性樹脂を含浸させて加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、フィラー成分中に、平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーを、抄紙体全体に対して5重量%〜40重量%の範囲内で含有する。
ここで、「湿式摩擦材」としては、平板リング状の芯金にセグメントピースに切断した摩擦材基材を接着してなるセグメントタイプ摩擦材、及び平板リング形状の芯金にリング状の摩擦材基材を接着してなるリング状摩擦材の双方が含まれる。また、「真比重」とは、「嵩(かさ)比重」に対応する用語であり、無機フィラーの中に空間がある場合の嵩比重(見掛け密度)ではなく、無機フィラーを構成する物質の本来の比重をいう。請求項1に記載の要件を満たす「無機フィラー」としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化チタン、等がある。特に、平均粒子径が0.6μm、真比重が5.5〜6.0、モース硬度が4〜5の酸化亜鉛、または平均粒子径が3μm〜10μm、真比重が4.0〜4.5、モース硬度が3〜4の硫酸バリウムを無機フィラーとして用いることが好ましい。
本発明者らは、湿式摩擦材における解放特性の向上について鋭意実験研究を重ねた結果、フィラー成分中に平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーを、抄紙体全体に対して5重量%〜40重量%の範囲内で含有することによって、湿式摩擦材の強度を確保しつつ解放特性を向上させられることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
すなわち、粒径の小さい無機フィラーを添加することで繊維と繊維との間に無機フィラーが付着し、含浸された樹脂が硬化する際に繊維間を結合し、摩擦材基材の強度を向上させる効果が得られ、また無機フィラーの真比重を確保することで配合される容量が小さくなり、無機フィラーによって摩擦材基材の気孔が埋められることがなく、摩擦材基材の気孔径を確保することができる。これによって、摩擦面からのATFの吸収が速くなるため、解放特性が向上するものである。
ここで、無機フィラーの平均粒子径が0.3μm未満の場合には、抄紙の際に繊維と絡み難く、また抄紙網から水と一緒に流れてしまい安定して配合できず、一方平均粒子径が10μmを超えると、繊維間の気孔が無機フィラーで埋められて気孔径が小さくなり、また無機フィラーの粒子数が減少することによって、繊維間を結合して摩擦材基材の強度を向上させる効果が小さくなってしまう。
また、真比重が4未満であると、配合する容量や粒子数が増加するため気孔が埋められてしまい、気孔径や気孔率が小さくなって良好な解放特性が得られず、一方真比重が6を超えるものであると、配合する容量や粒子数が減少するため繊維間を結合して摩擦材基材の強度を向上させる効果が小さくなるとともに、抄紙時の分散性が悪化して摩擦材基材中に均一に分散できなくなる。
更に、モース硬度が3未満であると、摩擦材が相手材プレートと係合する際に摩擦係数が低下したり、無機フィラーが摩耗する場合があり、一方モース硬度が8を超えるものであると、相手材プレートへの攻撃性が上昇して相手材プレートを摩耗させることになる。また、無機フィラーが抄紙体に対して5重量%未満であると、他のフィラーや繊維の配合割合が大きいため気孔径の確保ができなくなり、一方無機フィラーが抄紙体に対して40重量%を超えると、配合する容量や粒子数が増加して、やはり気孔径の確保ができなくなる。
加えて、摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが1μm〜20μmの範囲内にあり、摩擦材基材の気孔率が30%〜70%の範囲内である。水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが1μm未満や気孔率が30%未満の場合には、湿式摩擦材のATF吸収効果及び排出効果が小さくなることによって解放特性や耐熱性が悪化する場合があり、水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが20μmを超えたり気孔率が70%を超えたりする場合には、湿式摩擦材の強度低下が起こったり、ATF吸収効果及び排出効果が高過ぎることによって、喰い付きショックが発生したりする場合がある。
したがって、摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークは1μm〜20μmの範囲内にあることが好ましく、摩擦材基材の気孔率は30%〜70%の範囲内であることが好ましい。
このようにして、強度低下やヘタリ量の増加等の弊害を起こすことなく、μ−V特性の正勾配性に優れ、引き摺りトルクを低減できるだけでなく、湿式摩擦材の気孔径を大きくすることによって解放特性にも優れた湿式摩擦材となる。
請求項2の発明に係る湿式摩擦材は、繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体にフィラー成分の残部である無機フィラーを添加した後に熱硬化性樹脂を含浸させて、または繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体にフィラー成分の残部である無機フィラーを添加した熱硬化性樹脂を含浸させて、加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、無機フィラーは平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーであり、抄紙体全体の5重量%〜40重量%の範囲内で添加されたものである。
本発明に係る湿式摩擦材は、請求項1に係る湿式摩擦材と摩擦材基材の製造方法が若干異なるのみで、得られる摩擦材基材は実質的に同等なものである。したがって、請求項1に係る湿式摩擦材と同様な理由で、同様な作用効果が得られる。
このようにして、強度低下やヘタリ量の増加等の弊害を起こすことなく、μ−V特性の正勾配性に優れ、引き摺りトルクを低減できるだけでなく、湿式摩擦材の気孔径を大きくすることによって解放特性にも優れた湿式摩擦材となる。
請求項3の発明に係る湿式摩擦材においては、繊維成分は抄紙体中における含有率が30重量%〜60重量%の範囲内であり、フィラー成分は抄紙体中における含有率が40重量%〜70重量%の範囲内である。
繊維成分の含有率が30重量%未満であると、摩擦材の強度低下が起こる場合があり、またフィラー成分が抄紙時に繊維と絡み難く、安定して配合できない場合がある。一方、繊維成分の含有率が60重量%を超えると、繊維によって気孔径や気孔率が小さくなり、良好な解放特性が得られない場合がある。したがって、繊維成分の抄紙体中における含有率は30重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。
これと相対的な関係で、フィラー成分の含有率が40重量%未満であると、繊維によって気孔径や気孔率が小さくなり、良好な解放特性が得られない場合がある。一方、フィラー成分の含有率が70重量%を超えると、繊維成分が少なくなるため摩擦材の強度低下が起こる場合があり、またフィラー成分が抄紙時に繊維と絡み難く、安定して配合できない場合がある。したがって、フィラー成分の抄紙体中における含有率は40重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましい。
このようにして、強度低下やヘタリ量の増加等の弊害を起こすことなく、μ−V特性の正勾配性に優れ、引き摺りトルクを低減できるだけでなく、湿式摩擦材の気孔径を大きくすることによって解放特性にも優れた湿式摩擦材となる。
次に、本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材について、図1乃至図4を参照して説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の解放特性を示すグラフ、(b)は従来の湿式摩擦材の解放特性を示すグラフである。図2は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の剪断強度を比較例と比較して示すグラフである。図3(a)は従来の摩擦材基材の内部構造を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の内部構造を示す模式図である。図4は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の気孔径分布を比較例と比較して示すグラフである。
まず、本実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材を構成する配合材料及び製造方法について、表1を参照して説明する。
Figure 0005334466
表1に示されるように、本実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の配合として、実施例1乃至実施例4の4種類の配合を用いて摩擦材基材を製造し、比較のため比較例1乃至比較例5の5種類の配合を用いて摩擦材基材を製造した。表1に示される配合材料のうち、繊維としてはアラミド繊維及びパルプを使用し、フィラーとしては珪藻土、グラファイト及びカーボンファイバーを使用した。また、「無機フィラーA,B」としては珪藻土を使用し、「無機フィラーC」としては酸化亜鉛を使用し、「無機フィラーD」としては硫酸バリウムを使用し、「無機フィラーE」としては酸化チタンを使用し、「無機フィラーF」としては炭酸カルシウムを使用した。
ここで、実施例1乃至実施例4の4種類の配合材料として用いられている無機フィラーC(酸化亜鉛)、無機フィラーD(硫酸バリウム)及び無機フィラーE(酸化チタン)は、平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内、真比重が4〜6の範囲内、モース硬度が3〜8の範囲内という本発明の請求項1の条件を全て満たしている。なお、無機フィラーC,D,Eの平均粒子径は、レーザー回折法または空気透過法によって測定した値である。これに対して、無機フィラーA,B(珪藻土)は真比重が小さく、また無機フィラーF(炭酸カルシウム)も真比重が小さく、いずれも請求項1の条件を満たしていない。
これらの配合材料を表1に示される配合量にしたがってそれぞれ配合し、水中に分散させてスラリーとして、スラリーから抄紙した紙を乾燥させてペーパー基材を作製した。表1に示されるように、これらのペーパー基材100重量部に対してフェノール樹脂35重量部をそれぞれ含浸した後、乾燥して、200℃で30分間加熱してフェノール樹脂を硬化させ、摩擦材基材を作製した。得られた摩擦材基材について、それぞれ解放特性及び強度を評価した。後述する気孔率の評価結果も含めて、これらの評価結果を、表1の下段にまとめて示す。
解放特性の評価は、得られた摩擦材基材を所定形状のセグメントピースに切断して、ディスクサイズ外径φ176mm−内径φ154mmの平板リング状の芯金の両面に、各40枚ずつ接着してセグメントタイプ湿式摩擦材を作製し、ディスク枚数3枚、相対回転数3000rpm、ATF油温40℃、ATF油量2.4L/min、面圧0.8MPa、荷重スィープ時間約4秒という試験条件で評価した。
なお、得られた摩擦材基材をリング形状に切り出して、ディスクサイズ外径φ176mm−内径φ154mmの平板リング状の芯金の両面に接着して、プレス加工によって片面当たり40本の油溝を設けたリング状摩擦材について同様な試験条件で解放特性を評価したところ、同様な試験結果が得られた。すなわち、以下に示す試験結果は、油溝が片面当たり40本の湿式摩擦材に共通のものである。その試験結果を、図1に示す。
図1(a)に示されるように、本実施の形態の実施例1の配合に係る湿式摩擦材においては、荷重の解放にしたがって滑らかにトルクが減衰しており、理想的な解放特性が得られていることが分かる。これに対して、図1(b)に示されるように、比較例1の配合に係る湿式摩擦材においては、二点鎖線の円で囲んだ部分において急激なトルクの変動が生じており、解放特性に問題があることが判明した。
また、強度の評価は、得られた摩擦材基材を20mm×20mmに切り出した供試体を用いて、引張り速度5mm/minで引張り剪断強度をそれぞれ複数枚の供試体について測定した。測定結果を、図2に示す。図2に示されるように、本実施の形態の実施例1乃至実施例4の4種類の配合に係る摩擦材基材は、比較例2及び比較例5の配合に係る摩擦材基材と同等以上の剪断強度を有し、比較例1,比較例3及び比較例4の配合に係る摩擦材基材よりも高い剪断強度を有している。
このように、本実施の形態の実施例1乃至実施例4の4種類の配合に係る摩擦材基材は、比較例1乃至比較例5の配合に係る摩擦材基材よりも、セグメントタイプ湿式摩擦材及びリング状摩擦材とした場合の解放特性に優れており、また剪断強度においても優れているという評価結果となった。特に、表1の下段に示されるように、平均粒子径が0.6μm、真比重が5.5、モース硬度が5の酸化亜鉛(無機フィラーC)、または平均粒子径が10μm、真比重が4.2、モース硬度が3の硫酸バリウム(無機フィラーD)を無機フィラーとして用いることが、より好ましいことが明らかになった。
この理由としては、図3(a)に示されるように、比較例1乃至比較例5の配合に係る従来の摩擦材基材6は、用いられている無機フィラー7の真比重が小さく嵩高いため、繊維3の間を埋めてしまい気孔径8が小さくなるのに対して、図3(b)に示されるように、実施例1乃至実施例4の配合に係る摩擦材基材1においては、用いられている無機フィラー2の真比重が大きく平均粒子径が小さいため、繊維3と繊維3との間に無機フィラー2が付着し、含浸された樹脂が硬化する際に繊維3同士の間を結合して摩擦材基材1の強度を向上させる効果が得られるとともに、気孔径5が大きくなるためと考えられる。
そこで、本実施の形態の実施例1及び実施例2の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布を、比較例1及び比較例4の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布と比較した。気孔径分布は、水銀圧入法によって測定した。測定結果を、図4に示す。図4に示されるように、実施例1及び実施例2の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布のピークは、気孔径の大きい側に位置しており、これに対して、比較例1及び比較例4の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布のピークは、気孔径1μm未満の位置にある。
また、実施例1及び実施例2の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布は、比較例1及び比較例4の配合に係る摩擦材基材の気孔径分布に比較して、ブロードになっている。そして、気孔径分布のピークは、実施例1の配合に係る摩擦材基材については12μm近辺、実施例2の配合に係る摩擦材基材については3.5μm近辺に、それぞれ位置している。したがって、実施例1及び実施例2の配合に係る摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークは1μm〜20μmの範囲内にある。
これによって、摩擦面からのATFの吸収が速くなるため、解放特性が向上する。更に、摩擦面からのATFの吸収が速くなることによって引き摺りトルクを低減できるだけでなく、μ−V特性の正勾配性にも優れた湿式摩擦材となる。
本実施の形態においては、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂粉末を用いた例について説明したが、変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂を始めとするその他の熱硬化性樹脂の粉末または粉末状でない熱硬化性樹脂を用いることもできる。特に、これらのフェノール樹脂、変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂は容易に入手できるとともに耐熱性に優れているため、湿式摩擦材の材料としての熱硬化性樹脂として好ましい。
また、本実施の形態においては、片面の油溝の数が40本の湿式摩擦材の場合について説明したが、油溝の数が40本に限られるものではなく、要求される特性に応じて自由な本数に設定できるものである。
更に、本実施の形態においては、繊維成分と無機フィラーを含むフィラー成分とを含有する抄紙体を作製して、この抄紙体に熱硬化性樹脂を含浸させて加熱硬化させることによって摩擦材基材を作製する場合について説明したが、繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体にフィラー成分の残部である無機フィラーを添加した後に熱硬化性樹脂を含浸させて、または繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体にフィラー成分の残部である無機フィラーを添加した熱硬化性樹脂を含浸させて、加熱硬化させることによって摩擦材基材を作製することも可能である。
本発明を実施するに際しては、湿式摩擦材のその他の部分の組成、成分、配合量、材質、大きさ、作製方法等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
なお、本実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
図1(a)は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の解放特性を示すグラフ、(b)は従来の湿式摩擦材の解放特性を示すグラフである。 図2は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の剪断強度を比較例と比較して示すグラフである。 図3(a)は従来の摩擦材基材の内部構造を示す模式図、(b)は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の内部構造を示す模式図である。 図4は本発明の実施の形態に係る湿式摩擦材の摩擦材基材の気孔径分布を比較例と比較して示すグラフである。
1 摩擦材基材
2 無機フィラー
3 繊維

Claims (3)

  1. パルプを含む繊維成分とフィラー成分とを含有する抄紙体に熱硬化性樹脂を含浸させて加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、
    前記フィラー成分中に、平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーを前記抄紙体全体に対して5重量%〜40重量%の範囲内で含有し、
    前記摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが1μm〜20μmの範囲内にあり、前記摩擦材基材の気孔率が30%〜70%の範囲内であることを特徴とする湿式摩擦材。
  2. パルプを含む繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体に前記フィラー成分の残部である無機フィラーを添加した後に熱硬化性樹脂を含浸させて、または繊維成分とフィラー成分の一部とを抄紙してなる抄紙体に前記フィラー成分の残部である無機フィラーを添加した熱硬化性樹脂を含浸させて、加熱硬化させてなる摩擦材基材を、平板リング状の芯金の片面または両面に接着してなる湿式摩擦材であって、
    前記無機フィラーは、平均粒子径が0.3μm〜10μmの範囲内で、真比重が4〜6の範囲内で、モース硬度が3〜8の範囲内の1種または2種以上の無機フィラーであり、前記抄紙体全体の5重量%〜40重量%の範囲内で添加され、前記摩擦材基材の水銀圧入法によって測定した気孔径分布のピークが1μm〜20μmの範囲内にあり、前記摩擦材基材の気孔率が30%〜70%の範囲内であることを特徴とする湿式摩擦材。
  3. 前記繊維成分は前記抄紙体中における含有率が30重量%〜60重量%の範囲内であり、前記フィラー成分は前記抄紙体中における含有率が40重量%〜70重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の湿式摩擦材。
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