JP5334233B2 - レーザー焼結に使用される球状ポリアミド粉体およびそれを用いた成形体の製造方法およびレーザー焼結物品 - Google Patents

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本発明は、選択的レーザー焼結により成形体を製造するために用いる粉体、その粉体を用いる成形体の製造方法
及び成形された焼結物品に関する。本発明において用いる粉体は、球状ポリアミド粉体を水媒体中で形状を保持したまま加水分解を行い、溶融性を改善した粉体からなるレーザー焼結用粉体、当該レーザー焼結用粉体を選択的レーザー焼結により成形体を製造する方法および当該粉体を用いて選択的レーザー焼結により形成したレーザー焼結物品に関する。
ひな型、模型または原型等の成形品を迅速に製造する方法として選択的レーザー焼結法が知られている。この方法の場合、プラスチック粉体にチャンバー内で短時間、選択的にレーザービームを照射し、レーザービームがあたった粉体を溶融させる。溶融した粉体は相互に流れ再び固体の材料へと硬化する。常に新たに導入される層に照射することにより、三次元の成形品を容易かつ迅速に製造することができる。この時成形品の強度を改善するために、射出成形品と同等の高密度の3次元造形品を得るための改善が種々なされてきた。粉体状のポリマーを使用して成形体を製造するための選択的レーザー焼結法に用いられるレーザー焼結用粉体としてはポリアセテート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマーおよびポリアミドがあげられている。(特許文献1,2)
従来これらの用途に用いられるポリアミド粉体は溶媒の温度による溶解度の差を利用する化学粉砕方式で製造
する方法(特許文献3〜5)や高速回転する円盤の上に溶融ポリアミドを滴下し、周囲に飛散させて微細な粉体を得る方法(特許文献6)等の方法により製造することが知られていたが、公知の方法で得られるものの多くは多孔質状であり球状にならない、あるいは粒度分布が広いという欠点があった。レーザー焼結用の焼結粉体用途に於ける品質向上(成形品の高密度化)のため、球状で粒子径の比較的そろった多孔質状でない品質の高いポリアミド粉体が求められていた。
一方炭素数6〜12のラクタム類の1種又は2種以上をパラフイン等の不活性溶媒中で、重合促進剤として三塩化リンを使用してアルカリ触媒重合を行って得られる球状のポリアミド粉体(特許文献7〜9)は球状で狭い粒度分布を有するが溶融性が悪いという欠点を有しているためレーザー焼結用粉体としては使用が困難であった。
特許公報(B2) 特許第3621703号 特開平11−216779号公報 特開昭50−14806号公報 特開昭53−186739号公報 特開2002−80629号公報 特開平5―70598号公報 特開昭47−25157号公報 特開2000−248061号公報 特開2005−307096号公報
選択的レーザー焼結による成形品が高密度で良好な性状を有する、球状で狭い粒度分布を有し溶融性の良好なポリアミド粉体からなるレーザー焼結用粉体、当該レーザー焼結用粉体を用いて選択的レーザー焼結により成形体を製造する方法および当該粉体を用いて選択的レーザー焼結により形成したレーザー焼結物品を提供することが本発明の課題である。
本発明者は、鋭意研究した結果、球状ポリアミド粉体を水媒体中で形状を保持したまま加水分解を行うことにより、溶融性を改善でき、当該ポリアミド粉体はレーザー焼結用粉体として良好な性能を有していることを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明は球状ポリアミド粉体を、水媒体中で形状を保持したまま加水分解することを特徴とする溶融性を改善した球状ポリアミド粉体からなるレーザー焼結用粉体、当該レーザー焼結用粉体を用いて選択的レーザー焼結により成形体を製造する方法および当該粉体を用いて選択的レーザー焼結により形成したレーザー焼結物品に関するものである。球状ポリアミド粉体は特に限定されないが好ましくは炭素数6〜12のラクタム類の1種又は2種以上をパラフイン中で、重合促進剤として三塩化リンを使用してアルカリ触媒重合を行って得られる球状ポリアミド粉体である。加水分解は水のみでも良いが、水媒体中に加水分解触媒を加えることが好ましく、触媒としては炭素数1〜4の有機酸、硫酸、塩酸、硝酸及び燐酸から選ばれる酸があげられる。さらに炭素数1〜4の低級アルコールから選ばれたアルコール及び/または酸性条件で安定な界面活性剤を添加することが好ましい。上記方法で製造した粉体をレーザー焼結装置のレーザー焼結ゾーン内で使用することによりレーザー焼結成形体を作成することができる。本発明に使用されるレーザー焼結装置は特に限定されない。
本発明の球状ポリアミド粉体をレーザー焼結用粉体として使用して成形した成形体は、加水分解前の球状ポリアミド粉体を用いた成形体に比較して高い密度や良好な性状を有し、レーザー焼結用粉体として適している。
本発明の溶融性を改善した球状ポリアミド粉体の製造方法について以下に詳細に述べる。均質な球状で、狭い粒度分布幅を有するが溶融性が悪い球状ポリアミド粉体の製造方法は公知であり、特許文献7〜9に示される方法で製造することができる。例えば、ラウロラクタム及び/または炭素数6〜8のラクタム類の1種又は2種以上をパラフイン中で、重合促進剤として三塩化リンを使用してアルカリ触媒重合を行って得られる事が知られている。本発明に用いる球状ポリアミド粉体の粒子径は特に限定されないが、3μm以上200μm以下が好ましく、15μm以上150μm以下が特に好ましい。
本発明の溶融性を改善した球状ポリアミド粉体は上記の溶融性が悪い球状ポリアミド粉体を水媒体中で形状を保持したまま加水分解して製造することができる。また、水媒体中には加水分解を触媒する物質、及び/または、ポリアミド粉体と水の親和性を増すため低級アルコールや界面活性剤を含有させることが好ましい。
用いる水の量は球状ポリアミド粉体1部に対して水1〜40部が用いられるが、特に水2〜20部が好ましい。水の量が多いと容積効率が悪くなり、分離に手間がかかり、また水の量が少ないと攪拌が困難となる。
加水分解触媒としてはポリアミド粉体を加水分解させるものであれば特に限定されないが、例えば加水分解酵素、有機酸及び無機酸等があげられる。有機酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1〜4の有機酸が好ましく、無機酸としては硫酸、塩酸、硝酸、燐酸が好ましく、これらの酸の1種又は2種以上を用いることができる。反応活性や経済性から硫酸、塩酸及び硝酸が特に好ましい。それらの酸の添加量は特に限定されないが、ポリアミドの1基本モルの0.1〜10倍当量が好ましく、0.3〜5.0倍当量を使用することが特に好ましい。
球状ポリアミド粉体と水の親和性を増すためにメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の炭素数1〜4の低級アルコール及び/または界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤が使用できるが、酸に対する安定性や濡れ性改善の性能等から非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤は特に限定されるものではないが、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどが上げられる。これらの非イオン性界面活性剤は一種を単独で用いても二種以上を併用しても良い。
低級アルコールや界面活性剤の添加量は限定されないが、低級アルコールの添加量は球状ポリアミド粉体の濡れ性が改善する量、すなわち水媒体100部に対して5〜20部が好ましく、界面活性剤の添加量は水媒体100部に対して0.05〜5部が好ましい。添加量が上記の範囲より少ないと球状ポリアミド粉体の水媒体中への分散が悪くなり、上記の範囲より多くなると反応時の泡立ちが多くなったり、経済性が悪くなったりするため好ましくない。
加水分解は処理後の球状ポリアミド粉体の溶融温度以下で行うことができるが、反応操作や反応制御の容易さから80〜150℃が好ましい。反応温度が80℃より低いと処理時間が長くかかり、反応温度が150℃より高いと高加圧下の反応となるため反応が煩雑となったり、加水分解反応の制御が難しくなり加水分解反応が進みすぎて球状ポリアミド粉体の物性が悪くなったりするため好ましくない。
球状ポリアミド粉体の溶融性は触媒の種類や量、処理温度及び処理時間によって容易にコントロールすることが可能であり、目的の性能に合わせてそれらを設定することができる。
加水分解処理後はろ過、中和、洗浄等の通常の分離精製操作を行うことにより溶媒中の球状ポリアミド粉体を単離することができる。また必要に応じて過酸化水素等で脱色することができる。
上記の方法によって得られた球状ポリアミド粉体は要求特性に応じて耐熱剤、紫外線吸収剤、耐候剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、安定剤、分散剤などを添加しても良く、また他の粉体状樹脂と混合して用いることもできる。
本発明の方法により球形で比較的粒子径の分布幅が狭く、融点幅も狭く、溶融性の良好な球状ポリアミド粉体が製造される。この方法で製造された球状ポリアミド粉体をレーザー焼結用の焼結粉体として用いて製造された成形体は高い密度や、良好な性状を有しており、レーザー焼結用の焼結粉体として良好な性能を有するものである。
次に本発明の実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記実施例で用いた評価方法を以下にまとめて示す。なお、%は重量%を示す。
[評価方法]
<融点測定方法>
微量融点測定器MP−S3型(株式会社柳本製作所製)を使用して測定した。カバーグラスの上に少量のポリアミド粉体をのせ、昇温し、結晶が融け始めてから全体が均一透明になるまでのところを融点とした。
<粒子径及び粒度分布測定方法>
粒子径及び粒度分布の測定にはレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000(株式会社島津製作所製)を用いて行った。
<レーザー焼結成形体の製造および評価方法>
レーザー焼結装置(EOSINT−P EOS社)を用いて直方体の成形品を作り、比重及び性状を評価した。
(比較例1)
特許文献8の実施例1に記載の方法に準じて平均粒子径8μmの球状ポリアミド粉体を製造した。なお、90%以上の粉体が粒子径7μm〜10μmの範囲に入り、その粒度分布は極めてシャープであった。
(比較例2)
温度計、滴下ロート、撹拌機、窒素ガス流入口をセットした1000mlの四つ口フラスコにイソパラフィン(ペガゾールAS−100、エクソンモービル化学有限会社製)408g、ラウロラクタム106g、カプロラクタム6.8g、金属カリウム2.5g、ステアリン酸3.5gを添加し、窒素気流下に500rpmで撹拌しながら175℃まで加温し、そこに三塩化リン1.7gを添加した。次に種として比較例1で製造した平均粒子径8μmのポリアミド粉体を33.4%含有するスラリー29.0gを添加し、撹拌を45分間続けた。反応液は冷却後、ろ過し、固液分離を行なうことにより、ポリアミドケーキを得た。本ポリアミドケーキにイソプロピルアルコール200gを加え、30分撹拌後ろ過しポリアミドケーキを得た。さらに、本操作を3回繰り返し、得られたポリアミドケーキを10mmHg減圧下、80℃で8時間乾燥し、球状ポリアミド粉体を得た。なお、本製造における最終収率は74%であった。また、得られた球状ポリアミド粉体の平均粒子径を測定した結果、19μmであった。なお、90%以上の粉体が粒子径12μm〜22μmの範囲に入り、その粒度分布は極めてシャープであった。
(比較例3)
イソパラフィン(前述)408g、ラウロラクタム 105.6g、カプロラクタム 6.8g、金属カリウム2.5g、ステアリン酸3.5g、三塩化リン1.7g、種として比較例2で製造した平均粒子径19μmのポリアミド粉体を33.4%含有するスラリー31.4gを使用して比較例2と同様に重合反応を行った。
得られた球状ポリアミド粉体の最終収率は85%であった。また、得られた球状ポリアミド粉体の平均粒子径を測定した結果、44μmであった。なお90%以上の粉体が粒子径34μm〜52μmの範囲に入り、その粒度分布は極めてシャープであった。
(実施例1)
比較例1で得られた平均粒子径8μmの球状ポリアミド粉体10g及びイソプロピルアルコールを10%含有する1N硫酸水溶液100gを温度計、攪拌機をセットした300mlの四つ口フラスコに入れ、89℃〜92℃で24時間加水分解反応を行った。その後ろ過して球状ポリアミド粉体を分離し、炭酸ナトリウム水溶液で中和、水洗及びイソプロピルアルコール洗浄後乾燥して目的とする球状ポリアミド粉体を得た。得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例1と比較し表1に示した。表1に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
Figure 0005334233
(実施例2)
比較例2で得られた平均粒子径19μmの球状ポリアミド粉体10g及びイソプロピルアルコールを10%含有する1N硫酸水溶液100gを温度計、攪拌機をセットした300mlの四つ口フラスコに入れ、89℃〜92℃で24時間加水分解反応を行った。その後ろ過して球状ポリアミド粉体を分離し、炭酸ナトリウム水溶液で中和、水洗及びイソプロピルアルコール洗浄後乾燥して目的とする球状ポリアミド粉体を得た。得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例2と比較し表2に示した。表2に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
Figure 0005334233
(実施例3)
比較例3で得られた平均粒子径44μmの球状ポリアミド粉体10g及びイソプロピルアルコール10%含有する1N硫酸水溶液100gを温度計、撹拌機をセットした300mlの四つ口フラスコに入れ、89℃〜92℃で24時間加水分解反応を行った。その後ろ過して球状ポリアミド粉体を分離し、炭酸ナトリウム水溶液で中和、水洗及びイソプロピルアルコール洗浄後乾燥し目的とする球状ポリアミド粉体を得た。得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例3と比較し表3に示した。表3に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
(実施例4)
比較例3で得られた平均粒子径44μmの球状ポリアミド粉体45g及びナロアクティHN95(ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、三洋化成株式会社製)を0.26%含有する1N硫酸水溶液100gを95℃〜98℃で21時間加水分解反応を行った。その後ろ過して球状ポリアミド粉体を分離し、炭酸ナトリウム水溶液で中和、水洗及びイソプロピルアルコール洗浄後乾燥し目的の球状ポリアミド粉体を得た。得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例3と比較し表3に示した。表3に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
(実施例5)
比較例3で得られた平均粒子径44μmの球状ポリアミド粉体10g及び2N塩酸水溶液100gを温度計、撹拌機をセットした300mlの四つ口フラスコに入れ、95℃〜98℃で4時間加水分解反応を行った。その後ろ過して球状ポリアミド粉体を分離し、炭酸ナトリウム水溶液で中和、水洗及びイソプロピルアルコール洗浄後乾燥することにより目的とする球状ポリアミド粉体を得た。得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例3と比較し表3に示した。表3に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
実施例3〜5によって得られた加水分解処理後の球状ポリアミド粉体の融点、平均粒子径及びその形状を比較例3と比較し表3に示した。表3に示すように加水分解処理を行ったものは平均粒子径及びその形状は変化がなかったが融点が低下し、その幅も狭くなり溶融性が改善した。
Figure 0005334233
(実施例6)
<レーザー焼結体の製造>
比較例3および実施例3〜5で得られたポリアミド粉体をレーザー焼結装置によって直方体の試験片を作成し、その成形物の密度と性状を評価した。その結果を表4に示した。
Figure 0005334233
実施例3〜5の本発明による加水分解処理を行った球状ポリアミド粉体を用いて選択的レーザー焼結により成形した成形体は、比較例3の加水分解処理前の球状ポリアミド粉体から成形したものに比較して明らかに大きな強度と密度を有していた。
本発明による球状ポリアミド粉体は選択的レーザー焼結に利用できる。

Claims (5)

  1. 炭素数6〜12のラクタム類の1種又は2種以上をパラフイン中で、重合促進剤として三塩化リンを使用してアルカリ触媒重合を行って球状ポリアミド粒子を得た後に、水媒体中で形状を保持したまま加水分解を行って溶融性を改善することを特徴とするレーザー焼結用粉体の製造方法。
  2. 球状ポリアミド粉体を水媒体中に加水分解触媒を加えて加水分解することを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結用粉体の製造方法
  3. 加水分解触媒が炭素数1〜4の有機酸、硫酸、塩酸、硝酸及び燐酸から選ばれる酸の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー焼結用粉体の製造方法
  4. 水媒体中に炭素数1〜4の低級アルコールから選ばれたアルコール及び/または界面活性剤を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の球状ポリアミド粒子の製造方法
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー焼結用粉体を使用することを特徴とする粉体状材料の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法。



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