JP5333240B2 - 降下煤塵の煤塵種の特定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種の特定方法に関する。
高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵は、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題があり、このような問題への対策が必要となる。そのためには、特定の地点で捕集された降下煤塵の発生源を特定する技術が必要であり、降下煤塵の発生源を特定するための手法として、捕集された降下煤塵の煤塵種を特定することが有力であると考えられる。
降下煤塵の煤塵種の特定方法としては、例えば、化学分析がある。化学分析は、降下煤塵試料を薬品処理したり、加熱したりすることにより、降下煤塵試料の成分を分析して成分構成率を求め、この成分構成率と対応付けられた既知の煤塵種を降下煤塵試料の煤塵種であると特定する手法である。この手法は、所要設備が安価であるという利点がある一方で、分析のために必要となる試料の質量が代表的な煤塵の単位重量と比べて大きいという欠点がある。そのため、常に必要な質量の煤塵を採取できるとは限らず、また、個々の煤塵粒子の判別が不可能である、という問題があった。
このような化学分析の欠点を補う手法として、電子顕微鏡を用いた分析がある。電子顕微鏡を用いた分析は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等を用いて、降下煤塵試料の成分構成率を定量的に求め、この成分構成率と対応付けられた既知の煤塵種を降下煤塵試料の煤塵種であると特定する手法である。この手法は、化学分析とは異なり、個々の煤塵粒子の判別が可能であり、また、少量の試料でも分析が可能という利点がある一方で、分析のための装置が高価であり、試料の前処理(例えば、試料を樹脂に埋め込んだ後に研磨する処理等)が複雑であり、測定に時間がかかる、という欠点がある。そのため、多数の試料を処理するためには時間と費用がかかる、という問題があった。
また、化学分析と電子顕微鏡を用いた分析の双方の欠点を補う手法として、目視観察がある。目視観察は、光学顕微鏡等を用いて、降下煤塵試料を人間が観察し、個々の煤塵の煤塵種を人間が直接特定する手法である。この手法は、所要設備が安価であり、個数の少ない煤塵試料を分析する際には、迅速に分析が可能であるという利点がある一方で、分析者が異なると分析結果が容易に変化するので、分析の再現性が低いという欠点があった。また、目視では区別できない煤塵種が多いので、目視観察には、分析精度が低いという欠点もあった。例えば、φ30μm程度以下の磁鉄鉱微粒子と石炭微粒子とは、少なくとも数十倍程度の低倍率での顕微鏡観察では区別が困難である。この場合、高倍率の観察を行えば、磁鉄鉱微粒子と石炭微粒子とを区別できる場合もあるが、分析の生産性が極端に低下するため現実的でない。さらに、目視観察には、個数の多い煤塵を含む試料では分析の生産性が低いという欠点もあった。
このような目視観察の欠点を補うために、画像処理を用いた手法(以下、「画像処理法」と称する。)がある。この手法は、光学顕微鏡等を用いて、降下煤塵試料を撮像し、撮像された画像に画像処理を施すことにより、個々の煤塵の煤塵種を自動的に特定する手法である。この手法は、目視観察に比べて分析の再現性と生産性が高いという利点があるものの、目視では区別できない煤塵種は、単に画像処理を施しても区別できないため、少なくとも目視観察と同程度に分析精度が低いという欠点がある。
上記のような画像処理法を用いた粒子の判別方法としては、例えば、撮像サンプル粒子の色情報に基づいて粒子を判別する方法(例えば、特許文献1を参照)、検体粒子の面積、周囲長、平均濃度等の特徴から粒子画像を分類して記録する方法(例えば、特許文献2を参照)、粉粒体の粒度分布を二次元フーリエ変換を用いて撮像画像の画像処理を行って求める方法(例えば、特許文献3を参照)、偏光板を通過する粒子観察光の特徴を検出してアスベスト粒子の種類を判別する方法(例えば、特許文献4を参照)、降下粉塵にヨウ素ドーピングして石炭粒子を識別する方法(例えば、特許文献5を参照)、浮遊煤塵を吸着して粒子画像処理を行う方法(例えば、特許文献6を参照)等が提案されている。
特開平10―332567号公報 特開平11−132934号公報 特開2006−126061号公報 特開2007−108624号公報 特開平10−55060号公報 特開2004−301768号公報
しかし、高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵の煤塵種の特定に、特許文献1に記載された方法を適用したとしても、撮像サンプル粒子の色情報のみでは煤塵種を特定することができない。同様に、高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵の煤塵種の特定に、特許文献2に記載された方法を適用したとしても、検体粒子の面積、周囲長、平均濃度等の粒子情報のみでは煤塵種を特定することができない。
また、特許文献3に記載された方法では、粒度分布を求めることはできるが、降下煤塵の煤塵種を特定することはできない。
また、特許文献4に記載された方法は、偏向性を有する粒子が対象となっており、高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵のように、一般に偏向性を有しない粒子の判別には適用できない。
また、特許文献5に記載された方法では、石炭粒子以外の粒子を識別できないので、高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵の複数種の煤塵種の中から一の煤塵種を特定することはできない。
また、特許文献6に記載された方法では、個々の微粒子の大きさや形状、性質、あるいは個々の微粒子間の相対的な位置や微粒子間の距離等を測定することはできるとされているが、高炉法による製鉄プラントで発生する降下煤塵の煤塵種を特定することはできない。
以上のように、これまでは、簡易・安価・迅速に、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を特定できる方法が提案されていなかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡易、安価、かつ迅速に、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を高い精度で特定可能な降下煤塵の煤塵種の特定方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、捕集された降下煤塵を着磁性の有無により分離し、さらに、分離された各煤塵粒子を、画像処理法を用いて明度の高低により識別することにより、簡易、安価、かつ迅速に、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を高い精度で特定できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を、主に鉄鉱石に由来する鉄系煤塵、主に石炭に由来する石炭系煤塵、主に高炉スラグに由来する高炉スラグ系煤塵、及び主に製鋼スラグに由来する製鋼スラグ系煤塵のいずれかに判別して、特定する、降下煤塵の煤塵種の特定方法であって、捕集された前記降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分離する第1の工程と、前記第1の工程で分離された前記着磁性降下煤塵と前記非着磁性降下煤塵のそれぞれを撮像し、前記着磁性降下煤塵の画像である着磁性煤塵画像と、前記非着磁性降下煤塵の画像である非着磁性煤塵画像とを生成する第2の工程と、前記着磁性煤塵画像と前記非着磁性煤塵画像のそれぞれに画像処理を施すことにより、前記着磁性煤塵画像中に存在する個々の前記着磁性降下煤塵と前記非着磁性煤塵画像中に存在する個々の前記非着磁性降下煤塵を、所定の明度しきい値を用いて明色粒子と暗色粒子とに区分し、当該区分結果を利用して、捕集された前記降下煤塵を、着磁性及び明度の組み合わせで規定される煤塵特性に応じて、着磁性暗色粒子と、着磁性明色粒子と、非着磁性暗色粒子と、非着磁性明色粒子とのいずれかに分類する第3の工程と、前記第3の工程での分類結果と、煤塵種が既知の標準試料の前記煤塵特性とに基づいて、前記降下煤塵の煤塵種を、前記着磁性暗色粒子を前記鉄系煤塵とし、前記着磁性明色粒子を前記製鋼スラグ系煤塵とし、前記非着磁性暗色粒子を石炭系煤塵とし、前記非着磁性明色粒子を高炉スラグ系煤塵として判別して、特定する第4の工程と、を含む降下煤塵の煤塵種の特定方法が提供される。
ここで、前記降下煤塵の煤塵種の特定方法において、前記第1の工程で前記降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、0.1T以上0.4T以下であることが好ましい。
また、前記降下煤塵の煤塵種の特定方法では、前記第3の工程において、個々の前記降下煤塵の粒径を測定してもよい。
また、前記降下煤塵の煤塵種の特定方法において、前記煤塵種として、少なくとも前記鉄系煤塵と前記製鋼スラグ系煤塵とを含む場合に、前記第2の工程において、前記着磁性降下煤塵の各粒子に白色光を照射し、当該白色光に対する前記粒子からの反射光を青色フィルタを透過させた後に、モノクロカメラを用いて撮像することにより、前記着磁性煤塵画像を生成し、前記第4の工程において、前記着磁性煤塵画像上での粒子の明度が所定値以上のものを前記製鋼スラグ系煤塵と特定し、当該製鋼スラグ系煤塵以外の粒子を前記鉄系煤塵と特定することもできる。
また、前記降下煤塵の煤塵種の特定方法において、前記煤塵種として、少なくとも前記鉄系煤塵と前記製鋼スラグ系煤塵とを含む場合に、前記第2の工程において、前記着磁性降下煤塵の各粒子に青色LEDを用いて青色光を照射し、当該青色光に対する前記粒子からの反射光をモノクロカメラを用いて撮像することにより、前記着磁性煤塵画像を生成し、前記第4の工程において、前記着磁性煤塵画像上での粒子の明度が所定値以上のものを前記製鋼スラグ系煤塵と特定し、当該製鋼スラグ系煤塵以外の粒子を前記鉄系煤塵と特定することもできる。
本発明によれば、捕集された降下煤塵を着磁性の有無と明度の高低に基づいて判別することにより、簡易、安価、かつ迅速に、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を高い精度で特定することができる。
高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る降下煤塵の煤塵種の特定方法における操作の流れを示すフローチャートである。 高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種の磁束密度[T]と着磁率[質量%]との関係の概略を示すグラフである。 本発明者が調査した高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種の磁束密度[T]と着磁率[質量%]との関係の一例を示すグラフである。 本発明の第1工程の磁力分離で使用する磁石の形状の一例を示す説明図である。 本発明の第1の工程における降下煤塵の磁力分離方法の一例を示す説明図である。 本発明の第2の工程において着磁性煤塵画像及び非着磁性煤塵画像を生成する装置の一例を示す説明図である。 本発明の第3の工程における粒子画像処理計測の流れを示すフローチャートである。 エージングが不十分な製鋼スラグ系煤塵と鉄系煤塵との判別に用いる撮像系の一例を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[概要]
本発明は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を、主に鉄鉱石に由来する鉄系煤塵、主に石炭に由来する石炭系煤塵、主に高炉スラグに由来する高炉スラグ系煤塵、及び主に製鋼スラグに由来する製鋼スラグ系煤塵のいずれかに判別して、特定する、降下煤塵の煤塵種の特定方法であり、以下の第1〜第4の工程を含むものである。
(第1の工程)捕集された降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分離する。
(第2の工程)第1の工程で分離された着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを撮像し、着磁性降下煤塵の画像である着磁性煤塵画像と、非着磁性降下煤塵の画像である非着磁性煤塵画像とを生成する。
(第3の工程)着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像のそれぞれに画像処理を施すことにより、着磁性煤塵画像中に存在する個々の着磁性降下煤塵と、非着磁性煤塵画像中に存在する個々の非着磁性降下煤塵を、所定の明度しきい値を用いて明色粒子と暗色粒子とに区分し、当該区分結果を利用して、捕集された降下煤塵を、着磁性及び明度の組み合わせで規定される煤塵特性に応じて、着磁性暗色粒子と、着磁性明色粒子と、非着磁性暗色粒子と、非着磁性明色粒子とのいずれかに分類する。
(第4の工程)第3の工程での分類結果と、煤塵種が既知の標準試料の煤塵特性とに基づいて、降下煤塵の煤塵種を、前記着磁性暗色粒子を前記鉄系煤塵とし、前記着磁性明色粒子を前記製鋼スラグ系煤塵とし、前記非着磁性暗色粒子を石炭系煤塵とし、前記非着磁性明色粒子を高炉スラグ系煤塵として判別して、特定する。
以下、本発明の説明の際に前提となる用語の定義や各工程の詳細について説明する。
[降下煤塵の定義]
降下煤塵とは、大気中を浮遊する固体粒子のうち、大気中を平均的に沈降し得る比較的大径(概ねφ10μm以上)の粒子のことをいう。
[煤塵種の定義]
本発明における「煤塵種」とは、特に限定はされないが、上述した降下煤塵の発生源や構成成分等によって分類される煤塵の種類をいう。例えば、発生源によって分類する場合には、煤塵種は、鉄鉱石の原料ヤードから発生する鉄鉱石由来の煤塵、石炭の原料ヤードから発生する石炭由来の煤塵、高炉から発生する高炉スラグ由来の煤塵、転炉から発生する転炉スラグ由来の煤塵等に分類される。
また、本発明では、類似した煤塵種をまとめて包括的に分類する場合もある。ここで、「類似」とは、少なくとも主成分が共通し、かつ、以下の(i)または(ii)の関係にあることをいう。
(i)原料と生成物の関係にあること
(ii)類似の工程によって発生すること
上記(i)の例としては、主成分が炭素で共通する石炭とコークスを包括するもの(以降、「石炭系煤塵」と称する。)や、主成分が酸化鉄で共通する鉄鉱石と焼結鉱、酸化鉄粉(例えば、製鋼ダスト)等を包括するもの(以降、「鉄系煤塵」と称する。)がある。(ii)の例としては、主成分が酸化ケイ素及び酸化カルシウムで共通し、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する高炉水砕スラグと高炉徐冷スラグ等を包括するもの(以降、「高炉スラグ系煤塵」と称する。)や、主成分が酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化鉄で共通し、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する転炉スラグと溶銑予備処理スラグ等を包括するもの(以降、「製鋼スラグ系煤塵」と称する。)がある。現代の高炉法による製鉄プラントにおける降下煤塵となり得る煤塵種は、上述した石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵でほぼ網羅することができる。
なお、本発明に係る降下煤塵の煤塵種の特定方法は、主として、煤塵種が、主に鉄鉱石に由来する煤塵種、主に石炭に由来する煤塵種、主に高炉スラグに由来する煤塵種、及び主に製鋼スラグに由来する煤塵種を対象としている。

[基本となる技術思想]
次に、図1を参照しながら、本発明の基本となる技術思想について説明する。図1は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。
上述したように、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵は、主に、石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵の4種類の煤塵種に分類される。また、一般に、高炉スラグ系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は白色系の明度の高い粒子(明色粒子)であり、石炭系煤塵や鉄系煤塵は黒色系の明度の低い粒子(暗色粒子)であることから、従来のように、低倍率の光学顕微鏡を用いて撮影した画像に画像処理を施し、個々の煤塵粒子の明度の高低を識別することにより、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵とからなる煤塵種と、石炭系煤塵及び鉄系煤塵からなる煤塵種とに判別することができる。
しかし、このような明色粒子と暗色粒子との分類のみでは、同程度の明度の粒子の判別、例えば、高炉スラグ系煤塵と製鋼スラグ系煤塵との判別をすることができない。すなわち、上記のように、単に撮影画像に画像処理を施して明度の高低のみによる分類では、包括的過ぎて、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種(ひいては降下煤塵の発生源)を特定することができないため、実用性が低いものである。
そこで、本発明者は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵(以降、「製鉄由来降下煤塵」と称する場合がある。)の煤塵種を特定するために、煤塵粒子の明度の高低のみではなく、着磁性の有無に着目した。その結果、本発明者は、明度の高低と着磁性の有無との組み合わせにより煤塵特性を規定することができ、この煤塵特性に基づいて、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を特定できることを見出した。
より詳細には、本発明者は、図1に示すように、低倍率の光学顕微鏡撮影画像を単に画像処理しただけでは判別できない製鉄由来降下煤塵の煤塵種を、明度の高低と着磁性の有無の組み合わせにより、石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵の4種類に判別することができることを見出した。ここで、本発明における着磁性とは、対象とする煤塵粒子に磁力を付与することにより、着磁する(磁性を有するようになり、磁石に吸着される)性質を意味し、本発明では、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分類し、さらに、この着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを、明度の高低により明色粒子と暗色粒子とに分類している。
具体的には、石炭系煤塵は、明度が低く(暗色で)非着磁性の非着磁性暗色粒子、鉄系煤塵は、明度が低く(暗色で)着磁性の着磁性暗色粒子、高炉スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)非着磁性の非着磁性明色粒子、製鋼スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)着磁性の着磁性明色粒子、というように分類することができる。
[本発明の優位性]
次に、上述した技術思想を有する本発明の先行技術に対する優位性について説明する。
まず、製鉄由来降下煤塵を着磁性の有無により分類することについてであるが、代表的な鉄鉱石である赤鉄鉱は、代表的な永久磁石であるフェライト磁石の磁力では磁石に吸着しない。このため、一般の鉄鋼業技術者は、赤鉄鉱と石炭との分離に磁力を用いるという発想をそもそも持ち得なかった。なお、鉄鋼技術者においては、磁石を用いた分離は、赤鉄鉱と、鉄鋼原料に一部配合される磁鉄鉱(フェライト磁石に容易に着磁する)とを分離する技術と専ら考えられてきた。
また、製鉄所では、使用済みのスラグのうち鉄分を多く含むものを強力な電磁石を用いて回収する磁力選別が実施される場合があり、スラグ塊の中には強力な磁石に着磁するものが存在することは知られていた。しかしながら、このような磁力選別の対象は、通常、少なくとも数十mm以上の直径を有する粗大なスラグ塊に限られる。この理由は、スラグは通常大塊で得られ、これを微粒子化するのには費用がかかるので、実操業ではスラグを選別処理可能な最大の大きさまで粉砕するのに留めることが多いためである。粗大なスラグ塊は、精錬中に生成した鉄鋼塊または銑鉄塊(いずれも酸化鉄ではない)を物理的にスラグ内に包含して凝固することがしばしばある一方で、スラグ微粒子が鉄鋼や銑鉄を包含することはまれである。これは、鉄鋼や銑鉄を包含するスラグ塊が微細化する際に、スラグ微粒子と鉄鋼や銑鉄の微粒子とに分離するからである。以上の事情から、鉄鋼業技術者の間では、上述した磁力選別は、鉄鋼塊や銑鉄塊を包含したスラグ塊を回収するものと理解されてきた。また、実操業上、回収されたスラグ塊に含まれる鉄鋼塊や銑鉄塊は、スラグ塊ごと精錬炉に投入されれば、鉄鋼原料(Fe源)として容易に再利用することができる。一方、スラグ成分である酸化鉄を精錬炉に再投入しても鉄鋼原料としてスラグ塊から離脱させることは一般に困難である。従って、磁力選別においてスラグ成分である酸化鉄が磁石に吸着されるか否かに対する鉄鋼業技術者の関心は一般に低く、高炉スラグであれ、転炉スラグであれ、スラグが鉄鋼や銑鉄を包含しているかどうかが主たる関心事であった。このため、高炉スラグ系微粒子(煤塵)と転炉スラグ系微粒子(煤塵)との選別に磁石を用いるという発想はこれまでは存在し得なかった。
仮に、一般の磁力選別技術者に高炉スラグと転炉スラグとを分離するニーズがあったとしても、従来の大塊を対象とした磁力選別では、スラグ塊の着磁性が成分だけではなく、粒子径(直径)にも依存するため(大きい塊ほど着磁しにくい。)、着磁性によって煤塵種(煤塵種は大きさとは無関係であり、主に成分に対応する。)を選別する操作では、スラグ塊サイズの誤差が大きくいため、定量的な選別は行えないものと考えられる。一方、磁石の断面積に対して十分に小さな粒子径を有する微粒子では、粒子径は着磁性に影響しにくく、主に成分によって微粒子の着磁性が決定する。これは、以下の理由によるものである。すなわち、磁石の磁力の及ぶ距離には限界があり(限界深度)、着磁するスラグ塊がこの限界深度よりも大きい場合には、限界深度の範囲にのみ働く磁力でスラグ塊全体を重力に抗して保持しなければならない。従って、大きな塊ほど着磁(保持)しにくくなる。このため、前述のスラグの磁力選別において、鉄鋼塊や銑鉄塊を含まない粗大なスラグ塊は、酸化鉄を多量に含有していたとしても磁石に着磁することはない。このため、このような酸化鉄含有量の多寡に応じてスラグの着磁性が変化することを、スラグ磁力選別に携わる技術者が想到することはなかった。一方、微粒子の場合には、限界深度よりもはるかに粒子径が小さいので、微粒子に付与される磁力は粒子の厚み方向で変化が小さく、粒子全体にはたらく磁力は、粒子の水平断面積と粒子の厚みの積、すなわち、粒子の体積に比例する。一方、粒子にかかる重力も粒子体積に比例する。従って、微粒子では、粒子体積の影響は磁力と重力で相殺するので、体積の影響は無くなるからである。このような微粒子の磁力選別で特有な事情に本発明者は気づき、磁力を用いた場合でも粒子の定量的な選別の行えることを見出した。
また、本発明者の調査の結果、単に赤鉄鉱が着磁しうる強力な磁石を用いれば煤塵粒子を上述した代表的な4種類の煤塵種ごとに分離できるわけではないことを本発明者は見出した。これは、強力過ぎる磁石を煤塵種に接触させた場合、わずかな鉄分(鉄・鉄鋼・銑鉄・酸化鉄)を含む煤塵でも着磁してしまうので、単に、全く鉄分を含まない微粒子と鉄分を微量でも含む微粒子に選別できるのみである。高炉法による製鉄プラントで発生する煤塵は、多かれ少なかれ鉄分を含有することが普通であるので(例えば、石炭には灰分中に1質量%程度の酸化鉄が含まれことが多い。また、高炉スラグにも通常、少なくとも0.3質量%程度以上の鉄分が含有されている。)、高炉法による製鉄プラントで発生する煤塵における全く鉄分を含まない微粒子は、実質的には、製鉄所内土壌由来の石英系土砂等のような主要ではない煤塵種に限定される。従って、このような磁力選別は、少なくとも製鉄プラントでの煤塵種の特定にはあまり役に立たない。そこで、本発明では、適度に強い磁石を用いることで、鉄分を含むが含有量の少ない煤塵種(石炭系煤塵と高炉スラグ系煤塵)を着磁させないことができ、着磁性の煤塵種(鉄系煤塵と製鋼スラグ系煤塵)から分離することができる。
さらに、煤塵粒子の明度の高低差を利用して暗色の煤塵種(石炭系煤塵と鉄系煤塵)と明色の煤塵種(高炉スラグ系煤塵と製鋼スラグ系煤塵)とに分離できる。その結果、高炉法による製鉄プラントで発生する上述した主要な4種類の煤塵種に限定すれば、着磁性と明度の組み合わせにより規定される煤塵特性を用いることで、個々の煤塵を実用的、かつ、簡易に、4種類の主要な煤塵種に分類できる。以上の事項を本発明者は初めて見出した。これに対して、一般の粒子分析技術者(特に、電子顕微鏡を用いた分析技術者)は、高炉法による製鉄プラントで発生する煤塵には限られない、より汎用性の高い煤塵種分析手法を指向していた。また、一般の粒子分析技術者は、分析可能な元素数や分子数を増やすことや、成分構成率の分析を高精度化することに労力を傾注していた。従って、本発明におけるように、高炉法による製鉄プラントで発生する4種類の主要な煤塵種のみに個々の煤塵を分類することだけでも十分に高い実用性を有する分野における分析技術に、一般の粒子分析技術者が想到することは、これまで無かった。
[本発明の一実施形態に係る降下煤塵の煤塵種の特定方法]
以上、本発明の先行技術に対する優位性について説明したが、続いて、図2を参照しながら、本発明に係るに降下煤塵の煤塵種の特定方法に含まれる各工程の内容について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る降下煤塵の煤塵種の特定方法における操作の流れを示すフローチャートである。
(第1の工程)
第1の工程は、捕集された降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と着磁しない非着磁性降下煤塵とに分離する工程である(図2のS101〜S105)。
<降下煤塵の捕集>
第1工程では、まず、分析(特定)対象となる降下煤塵を捕集する(S101)。本発明における降下煤塵の捕集方法としては、大きく分けて、湿式法と乾式法とがある。湿式法は、底部に水を貯めた開放容器内に落下した降下煤塵を容器内に捕集し、容器内の水とともに回収する方法である。この湿式法を用いる装置としては、例えば、市販のデポジットゲージ等を使用することができる。なお、湿式法を適用する場合には、事前に、煤塵粒子を水から分離して乾燥させておく必要がある。また、乾式法は、上方に向けて開放された煤塵採取口(例えば、漏斗状の形状を有する。)に落下した降下煤塵を吸引してメンブランフィルタ等に捕集する方法である。この乾式法に用いる装置としては、例えば、特開2008−224332号公報等に記載された連続式粉塵煤塵計を使用することができる。なお、乾式法を適用する場合には、事前に、粒子をメンブランフィルタから分離しておくことが望ましい。ただし、捕集粒子数が少なく、個々の粒子をメンブランフィルタ上で分離して認識できれば、必ずしもこの処理は必要でない。
<分析用サンプルの加工>
次に、分析用(特定対象の)サンプルを加工する。具体的には、捕集された降下煤塵粒子を基板上に散布する(S103)。この際、各粒子同士が接触しないように、散布量を調整する。また、必ずしも捕集された降下煤塵の全てを分析用サンプルとして加工(基板上に散布)する必要はなく、捕集された降下煤塵の一部を抜き取って分析用サンプルとしてもよい。ただし、試料のばらつきの影響を評価するためには、少なくとも100個以上の降下煤塵粒子を分析用サンプルとして供用することが好ましい。
降下煤塵粒子を散布する基板としては、平坦な形状を有し、降下煤塵と化学的及び電気的に接着や付着し難いものであれば、特に限定はされず、例えば、薬包紙や表面の平滑な金属板やガラス板等を使用することができる。
また、降下煤塵は、通常φ10μm以上の粗大な粒子であるので、降下煤塵粒子を散布する際には、降下煤塵粒子の大気中での自由落下を利用することができる。具体的には、例えば、捕集された降下煤塵を匙ですくって基板上に上方から落下させることにより、降下煤塵粒子を基板上に散布することができる。
<磁力分離方法>
次に、基板上に散布された降下煤塵の各粒子に対して、磁石を用いて磁力を付与することにより、捕集された降下煤塵を着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵とに分離する(S105)。この際に用いる磁石としては、鉄系煤塵や製鋼スラグ系煤塵が着磁し、石炭系煤塵や高炉スラグ系煤塵が着磁しない程度の強力な磁力を有する磁石を使用することが必要である。具体的には、第1の工程で降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、少なくとも降下煤塵の表面において0.1T以上0.4T以下であるような磁石を使用することが好ましい。
ここで、図3及び図4を参照しながら、高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種の着磁性について説明する。図3は、高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種の磁束密度[T]と着磁率[質量%]との関係の概略を示すグラフであり、図4は、本発明者が調査した高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種の磁束密度[T]と着磁率[質量%]との関係の一例を示すグラフである。ここで、本発明における着磁率とは、吸着面においてほぼ一定で一様な磁束密度を有する磁石を検体粒子群に接触させ、磁石に吸着されたもの(着磁性粒子)と吸着されなかったもの(非着磁性粒子)とに分離した際における、分離前の検体粒子群の総量に対する着磁性粒子の総量の比率をいう。ここで、「総量」とは、質量比率で定義する場合には、質量の総量を意味し、体積比率で定義する場合には、体積の総量を意味する。なお、以下の説明において、特に断らない限り、総量は、体積で定義するものとする。
本発明者が検討したところによれば、高炉法による製鉄プランで発生する降下煤塵の代表的な煤塵種である鉄鉱石(マグネタイト(磁鉄鉱))、鉄鉱石(ヘマタイト(赤鉄鉱))、製鋼スラグ、コークス、高炉スラグは、図3に示すような傾向を有していることが判明した。すなわち、鉄鉱石(マグネタイト)は、0.01T程度の小さな磁束密度から着磁率が高く、フェライト磁石等の弱い磁力を有するものでも着磁する。また、鉄鉱石(ヘマタイト)や製鋼スラグは、0.1T未満の小さな磁束密度では着磁率が低く、フェライト磁石等の弱い磁力を有するものでも着磁しないが、0.1T付近で急激に着磁率が上昇し、0.1T以上の大きな磁束密度となると着磁率が高くなり、ネオジウム磁石等の強力な磁力を有する磁石には着磁することがわかった。また、コークスや高炉スラグは、0.4T程度の磁束密度になっても着磁率が低く、ネオジウム磁石等の強力な磁力を有する磁石にも着磁しないことがわかった。さらに、コークスは、0.4Tを超えるさらに大きな磁束密度になると着磁率が上昇するが、高炉スラグは、0.4Tを超えても着磁率は低い傾向にあった。
以上の性質は、本発明者が行った検討結果にも現れている。すなわち、図4に示すように、鉄系煤塵(製鋼ダスト(マグネタイトが主成分))は、着磁面(例えば、煤塵粒子が着磁する磁石の下端部)での磁束密度が0.1T未満の小さなときから着磁率が高く、鉄系煤塵(鉄鉱石[ヘマタイト])や製鋼スラグ(転炉スラグ)系煤塵は、磁束密度が0.1T未満の小さなときには着磁率が小さく、磁束密度が0.1T以上となると着磁率が急激に上昇していた。また、石炭系煤塵(コークス)は、磁束密度が0.4T程度までは着磁率が低く、0.4Tを超えると着磁率が上昇していた。さらに、高炉スラグ系煤塵(水砕スラグ、徐冷スラグ)は、磁束密度が検討範囲である0.5T以下の範囲では、着磁率が低いままであった。
以上の検討結果から、本発明に係る降下煤塵の煤塵種の特定方法では、代表的煤塵種の1つである鉄系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵を磁石に吸着させるための条件として、第1の工程で降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、少なくとも降下煤塵の表面において0.1T以上であることを好適な範囲とした。一方、第1の工程で降下煤塵に付与する磁力が強力過ぎても、代表的煤塵種の1つである石炭系煤塵中に微量に含まれる鉄分によって、石炭系煤塵が鉄系煤塵等と同様に磁石に吸着してしまうため、このような現象を避けるための条件として、第1の工程で降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、少なくとも降下煤塵の表面において0.4T以下であることを好適な範囲とした。
以上のような好適な範囲の磁束密度の範囲を実現できる磁石の具体例としては、例えば、磁束密度が0.1T以上0.4T以下の範囲を実現できる電磁石がある。また、永久磁石では、磁束密度が0.1T以上0.4T以下の範囲の磁力を有するネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石等を使用できる。なお、代表的な永久磁石であるフェライト磁石は、磁力が弱いので、本発明の第1工程の磁力分離で使用する磁石としては好適でない。
次に、図5を参照しながら、本発明の第1工程の磁力分離で使用する磁石の形状について説明する。図5は、本発明の第1工程の磁力分離で使用する磁石の形状の一例を示す説明図であり、(a)は鉛直断面図であり、(b)は(a)における(b)−(b)断面で切断した断面図であり、(c)は(a)における(c)−(c)断面で切断した断面図である。
図5に示すように、本発明の第1工程の磁力分離で使用する磁石11は、磁石保持器13により保持されており、必要に応じて、先端(降下煤塵と接触する側)にスペーサ15が設けられていてもよい。また、磁石11を降下煤塵と接触させる際には、磁石11の先端と降下煤塵とを直接接触させてもよく、磁石11(またはスペーサ15)と降下煤塵との間に分離板17を配置して、この分離板17を介して磁石11と降下煤塵とを接触させてもよい。
磁石11は、先端(降下煤塵と接触する側)が平坦な形状を有していればよく、磁石11としては、例えば、円柱型や角柱型等のものを使用できる。また、平坦な基板上に散布された降下煤塵粒子との接触性と各煤塵粒子に付与する磁力の均一性を確保するため、磁石11の先端部の断面積は、0.1cm以上であることが好ましい。また、磁石11として、先端部の断面積が小さな細い磁石を使用する場合には、磁石11の先端から離れるに従って水平面内における磁束密度の勾配が小さくなり、磁力が均一化するため、適宜、磁石11の先端にスペーサ15を設けて、降下煤塵が必要以上に磁石11の先端に近接しないようにしてもよい。このようなスペーサ15の材質としては、非着磁性のものであれば特に限定はされないが、例えば、プラスチック板(ゴムや塩化ビニル等の弾性を有する合成樹脂)等を使用することができる。また、スペーサ15の形状も特に限定はされないが、例えば、図5に示すような略リング状の形状のものを使用することができる。また、分離板17の材質も、非着磁性のものであれば特に限定されないが、後述のように、着磁性降下煤塵の粒子サンプル上に分離板17を留置する場合には、透明な素材を用いることで、留置した分離板17を通して、粒子サンプルを撮像できるので好適である。このような透明な素材としては、例えば、透明アクリル製のもの等を用いることができる。
続いて、図6を参照しながら、本発明の第1の工程における降下煤塵の磁力分離方法の詳細について説明する。図6は、本発明の第1の工程における降下煤塵の磁力分離方法の一例を示す説明図である。なお、図6は、図5におけるスペーサ15を使用しない場合の例を示している。
図6に示すように、まず、平坦な基板1上に散布された(着磁性降下煤塵Pmと非着磁性降下煤塵Pnとからなる)降下煤塵上に、磁石11の先端の平坦面を基板1と平行な状態にして、磁石11の先端を直接、または、磁石11と降下煤塵との間に分離板17(スペーサと共用してもよい。)を介して接触させる(図6の(a)〜(b))。この際の磁石11と降下煤塵との接触時間は、例えば1秒以上とすればよい。
その後、磁石11を引き上げる(分離版17を使用した場合には、分離板17も磁石11に接触させた状態でそのまま引き上げる)。このとき、基板1上に残留した降下煤塵が非着磁性降下煤塵Pnのサンプルである(図6の(b)〜(c))。さらに、基板1とは別の基板2上に、降下煤塵が吸着した磁石11を降ろして基板2と接触させる(図6の(c))。
さらに、磁石11を降下煤塵、または、下面に降下煤塵が付着した分離板17と引き離す。具体的に、磁石11が電磁石の場合には、電磁石に流していた電流を切り(消磁機能のある装置では、消磁電量を供給した後に電流を切り)、そのまま、磁石11のみを引き上げて、着磁していた降下煤塵を基板2上に残留させる。一方、磁石11がネオジウム磁石等の永久磁石の場合には、分離板17を基板2上に固定し、磁石11のみを引き上げて、分離板17の下に降下煤塵(着磁していたもの)を残留させる。こうすることで、着磁性の降下煤塵を分離板17の重力によって上方から押さえ、着磁性降下煤塵を永久磁石から引き離すことができる。分離板17を固定するためには、分離板17の重力を利用して、単に、分離板17を基板2上に静置すればよい。このとき基板2上に残留した降下煤塵が着磁性降下煤塵Pmのサンプルである(図6の(d))。
(第2の工程)
第2の工程は、第1の工程で分離された着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを撮像し、着磁性降下煤塵の画像である着磁性煤塵画像と、非着磁性降下煤塵の画像である非着磁性煤塵画像とを生成する工程である(図2のS107)。
ここで、図7を参照しながら、第2の工程の内容の詳細について説明する。図7は、本発明の第2の工程において着磁性煤塵画像及び非着磁性煤塵画像を生成する装置の一例を示す説明図である。
第2の工程では、例えば、図7に示すような照明手段や撮像手段等が取り付けられた市販の顕微鏡を使用して、着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを撮像する。具体的には、基板1上散布された降下煤塵粒子P(着磁性降下煤塵または非着磁性降下煤塵)に、照明手段25を用いて均一に光を照射する。本発明では、粒子画像の明度測定を行うために、降下煤塵の撮像時の照明条件は、撮像面上で常に一定の照度となるように設定することが好ましい。照明手段25としては、市販の顕微鏡用のリング照明等を用いることができる。
次に、着磁性降下煤塵のサンプルと非着磁性降下煤塵のサンプルのそれぞれを、撮像手段21を用いて撮像し、着磁性煤塵画像及び非着磁性煤塵画像を生成する。この撮像手段21による撮像方法としては、例えば、照明手段25から降下煤塵粒子Pに向けて照明を照射し、降下煤塵粒子Pの表面からの反射光を撮像手段21(またはレンズ23)で受光し、撮像手段21により、撮像画像(着磁性煤塵画像及び非着磁性煤塵画像)を生成する。撮像手段21としては、CCD式やCMOS式のディジタルカメラを使用することができる。
また、各煤塵粒子の明度(代表明度)は、各粒子画像の対応する個々のCCD素子のサイズ内で平均化されるので、カメラの画素数が多いことが粒子の明度の測定精度上望ましい。具体的には、対象とする粒子を少なくとも9画素以上(モノクロカメラ)で撮像できる密度の画素を有する撮像手段21を使用することが好ましい。粒子の明度を正確に記録する観点からは、モノクロカメラであることが好ましい。撮像手段21として単板式カラーカメラ(通常、隣り合うCCD素子には異なるカラーフィルタが施されている。)を用いる場合には、少なくとも4画素分の明度を用いて補間された明度値(CCDがベイヤー配列の場合)を測定すべき明度として使用する等の測定精度上の処理が必要であることから、対象とする粒子を少なくとも54画素以上で撮像できる密度の画素を有する撮像手段21を使用することが好ましい。また、対象とする粒子の撮像に必要な画素密度を確保するために、必要であれば顕微鏡等のレンズ23を介して粒子を拡大して撮像してもよい。
(第3の工程)
第3の工程は、着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像のそれぞれに画像処理を施すことにより、着磁性煤塵画像中に存在する個々の着磁性降下煤塵と、非着磁性煤塵画像中に存在する個々の非着磁性降下煤塵を、所定の明度しきい値を用いて明色粒子と暗色粒子とに区分し、当該区分結果を利用して、捕集された降下煤塵を、着磁性及び明度の組み合わせで規定される煤塵特性に応じて、着磁性暗色粒子と、着磁性明色粒子と、非着磁性暗色粒子と、非着磁性明色粒子とのいずれかに分類する工程である(図2のS109、S111及び図8)。
ここで、図2及び図8を参照しながら、第3の工程の内容の詳細について説明する。図8は、本発明の第3の工程における粒子画像処理計測の流れを示すフローチャートである。
第3の工程では、第2の工程で撮像した着磁性煤塵画像及び非着磁性煤塵画像のそれぞれ(原画像)に対して、一般的に行われている粒子画像処理計測を行う。この粒子画像処理計測に、例えば、“ImageProPlus”のような市販の画像処理ソフトに標準的に搭載されている粒子画像処理計測機能を利用して行うことができる。
具体的には、図8に示すように、まず、所定の明度しきい値T1を用いて、撮像データ(原画像)を二値化する(S151)。この場合の明度しきい値T1の設定方法の一例としては以下のような方法がある。すなわち、煤塵種が既知のサンプル(例えば、配合比がわかっている石炭系煤塵と高炉スラグ系煤塵との混合物)に対して、ある明度しきい値t1を仮決めし、この明度しきい値t1を用いて二値化し、後述する方法を用いて明色粒子(上の例の場合は高炉スラグ系煤塵となるはずである。)と暗色粒子(上の例の場合は石炭系煤塵となるはずである。)とを判別する。このとき、判別結果が予め決めておいた配合比と大きく異なる場合には、さらに別の明度しきい値t2を仮決めし、この明度しきい値t2を用いて二値化し、同様にして明色粒子と暗色粒子とを判別する。以上のような操作を繰り返し、一番分離が良い(判別結果と予め決めておいた配合比とがほぼ一致する)明度しきい値を明度しきい値T1とすることができる。ただし、明度しきい値T1の設定方法は、上記のような方法には限られず、一番分離が良い明度しきい値を求めることが可能な方法であれば、どのような方法であってもよい。
なお、撮像手段(カメラ)の視野内の全域で完全に均一な照度を得ることは実際には困難であることから、二値化の前に、記録された画素の明度に、画素の二次元位置の関数である補正値を増減して、画像内での照度のバラツキを補正してもよい。この場合の補正値算出方法としては、例えば、予め散乱光反射率値が知られている灰色のテストピースを本発明で使用する撮像系で撮影しておき、このとき記録された画像での全画素の平均明度値から各画素の明度を減じたものを、各画素での明度補正値として用いることができる。補正値が画素のダイナミックレンジに比べて十分小さければ、この補正方法での誤差は小さくなる。また、この補正値が小さくなるように、撮影面上での照度をできる限り均一にすることが望ましい。
次に、隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度が連続し、かつ、他の領域と独立した領域を粒子が存在する領域として特定する(S153)。さらに、必要に応じて、ステップS153で存在が特定された個々の粒子の面積を算出するととともに、その粒子の中心位置と等価円に換算した直径を算出する(S155)。なお、ステップS155で算出された個々の粒子の面積、中心位置、直径等のデータを、撮像系に設けられている記憶手段(図示せず。)に記録する。
次に、ステップS151における明度しきい値T1よりも高明度の明度しきい値T2(>T1)を用いて、撮像データ(原画像)を二値化し(S157)、ステップS153と同様に、同一の二値化明度が連続し、かつ、他の領域と独立した領域を粒子が存在する領域として特定する(S159)。さらに、ステップS155と同様に、必要に応じて、ステップS159で特定された個々の粒子の面積を算出するととともに、その粒子の中心位置と等価円に換算した直径を算出する(S161)。これらステップS159及びS161で特定された粒子を明色粒子として特定する。
次に、ステップS155で形状が特定された粒子と、ステップS161で形状が特定された粒子(明色粒子)とを比較して、個々の粒子の中心位置が所定のしきい値以内の粒子を同一粒子(明色粒子)と特定し、この明色粒子と特定された粒子を、ステップS155で形状が特定された粒子の集合から除外し、残った粒子を暗色粒子として特定する(S163)。
以上のようにして区分された明色粒子と暗色粒子の区分結果と、第1工程のステップS105で行われた分離結果とから判別される煤塵特性に応じて、撮像された降下煤塵粒子を、着磁性暗色粒子、着磁性明色粒子、非着磁性暗色粒子、及び、非着磁性明色粒子のいずれかに分類する(S165)。
以上のステップS151〜S165の処理を、ステップS105で分離された着磁性降下煤塵のサンプル粒子と非着磁性降下煤塵のサンプル粒子のそれぞれに対して実施する(ステップS167)ことによって、捕集された降下煤塵の粒子を、着磁性暗色粒子、着磁性明色粒子、非着磁性暗色粒子、及び、非着磁性明色粒子のいずれかに分類することができる(図2のS111)。
本発明の画像処理においては、各粒子の明度を用いて明暗を判別しているので、粒子の背景は、検体粒子の平均的明度に応じて、コントラストを確保しやすい明度のものを適宜用いればよい。
(第4の工程)
第4の工程は、第3の工程での分類結果と、煤塵種が既知の標準試料の煤塵特性とに基づいて、降下煤塵の煤塵種を特定する工程である(図2のS113〜S117)。
第4の工程では、まず、煤塵種が既知の標準試料(代表サンプル:1種の煤塵種のみ含まれる純粋な試料)を用意して、それぞれの煤塵種の標準試料に対して、上述した図8のステップS151〜S165の処理を行う。そして、個々の粒子の煤塵特性(着磁性の有無と明度の高低)から、各煤塵種ごとに、煤塵特性の違いに応じた粒子の構成率を求める。その結果、各煤塵種で最も構成率を有する粒子の煤塵特性を、当該煤塵種の煤塵特性として特定し、煤塵種と煤塵特性とを対応付ける(S113)。例えば、ある煤塵種の標準試料において、着磁性暗色粒子の構成率が最も高い場合には、当該煤塵種と、着磁性で暗色という煤塵特性とを対応付ける。
本発明者の知見によれば、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の代表的な煤塵種は、以下のような煤塵特性を有する粒子に分類でき、互いに区別することができる。
(a)石炭系煤塵(石炭とコークス):煤塵特性は、非着磁性・暗色
(b)鉄系煤塵(鉄鉱石、焼結鉱、製鋼ダスト等の酸化鉄粉):煤塵特性は、着磁性・暗色
(c)高炉スラグ系煤塵(高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ):煤塵特性は、非着磁性・明色
(d)製鋼スラグ系煤塵(転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ):煤塵特性は、着磁性・明色
上述した煤塵種が既知の標準試料を用いた煤塵種と煤塵特性との対応付け(S113)は、標準試料の妥当性が失われない限り、捕集された降下煤塵の煤塵種の特定をする際に、1回だけ実施すればよく、2回目以降の分析では、1回目の結果をそのまま流用することができる。
次に、捕集された降下煤塵について、上述した第3工程のステップS111で分類された煤塵特性を、ステップS113で煤塵種と対応付けられた煤塵特性と比較し、同一の煤塵特性を有する標準試料の煤塵種と特定する(S115)。例えば、捕集された降下煤塵のうち分析サンプルとして用いた粒子の煤塵特性が「着磁性・暗色」であれば、当該降下煤塵を鉄系煤塵と特定する。また、捕集された降下煤塵のうち分析サンプルとして用いた粒子の煤塵特性が「非着磁性・明色」であれば、高炉スラグ系煤塵と特定する。
また、第3工程で求めた各煤塵粒子の直径及びステップS115で求めた捕集された降下煤塵の煤塵種に関する情報を用いて、分析サンプルとして用いた試料の煤塵種と粒径分布を求める。次いで、求めた試料の煤塵種と粒径分布に関する情報を、製鉄プラントの各煤塵源での煤塵種と粒径分布に関する情報とを比較して、これらの情報の類似性の高い発塵源を捕集された降下煤塵の発塵源として特定することができる(S117)。
ステップS115における同一の煤塵特性を有するか否かの判断やステップS117における類似性の判断は、人間が行ってもよいし、計算機を用いて行ってもよい。計算機を用いて前記の各判断を行う場合には、例えば、人間の判断方法をルール化し、このルールに基づいて判断を行うエキスパートシステムのアルゴリズムを用いることができる。
(エージングが不十分な製鋼スラグ系煤塵の特定)
上述したように、鉄系煤塵と製鋼スラグ系煤塵は、所定の磁束密度の磁石を用いることにより、ともに着磁し得る。一方、鉄系煤塵と製鋼スラグ系煤塵とは発塵源が全く異なるものである。従って、両者は、互いに明確に判別できるようにすべきである。
ここで、長期間屋外で風雨にさらされるなどしてエージング処理が十分に施された転炉スラグ(製鋼スラグ)系煤塵は、表面に明灰色の炭酸カルシウム層が生成されていることから、一般に暗色である鉄系煤塵と判別することができる。
しかし、製鋼スラグの中にはエージング処理が未だ十分に施されていないものも少量含まれている。このような製鋼スラグ系の煤塵は、表面に明灰色の炭酸カルシウム層が十分に生成されていないことから、やや暗色である。従って、エージングが不十分な製鋼スラグ系煤塵は、着磁性や明度のみによっては、鉄系煤塵のうち明度の比較的高い粒子と区別することができない場合がある。
そこで、本発明者は、鉄系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵に白色光を照射した場合の反射光のスペクトルを解析した結果、目視では区別できないものの、鉄系煤塵のうち明度の比較的高い粒子では黄色から赤色(波長600μm〜780μm)に鋭いピークを有することがわかった。一方、製鋼スラグ系煤塵(製鋼スラグ)では、鉄系煤塵に見られるような黄色から赤色の範囲のスペクトルのピークは顕著ではない。従って、白色光に対する反射光を全てカメラ等の撮像手段で検出した場合には、同一の平均明度を有すると判断される鉄系煤塵の粒子と製鋼スラグ系煤塵の粒子であっても、650μm未満の波長の光のみについて反射光を検出すれば、鉄系煤塵の粒子は相対的に暗色な粒子として、製鋼スラグ系煤塵の粒子は相対的に明色な粒子として検出できるので、両者を明度のみにより判別することができる。以下、このような判別を行うための具体的な方法について説明する。
<青色フィルタを用いる方法>
第1の例としては、図9に示すように、基板1上に散布された分析サンプルとしての粒子Pと撮像系との間に青色フィルタ27を配置し、白色光(例えば、照明手段25としてハロゲンランプを用いる。)を照射した粒子Pからの反射光を、青色フィルタ27を透過させた後にモノクロCCDカメラ等の撮像手段21で撮像する方法がある。このとき、青色フィルタ27としては、例えば、ガラスフィルタで550μm以上の波長の光をほぼ完全に遮断するものが市販されているので、このようなフィルタを用いればよい。
<青色LEDを用いる方法>
第2の例としては、図7に示したような撮像系において、照明手段25として、青色LEDランプを用い、粒子Pに直接青色の光を照射し、この青色の光に対する粒子Pからの反射光をモノクロCCDカメラ等の撮像手段21で撮像する方法がある。このとき、青色LEDランプとしては、市販されているものを用いればよい。
<カラーCCDカメラを用いる方法>
また、カラーCCDカメラを用いて青色成分のみを分析する方法も原理的にはあり得る。ただし、市販のカラーCCDカメラでは、隣り合うCCD素子ごとに異なる色フィルタがコーティングされており、これらのフィルタは、一般的には、鉄系煤塵と製鋼スラグ系煤塵とを判別するという目的で使用するための範囲の波長域と対応していない。このため、カメラのRGB出力のうち、B(青)信号のみの画像を用いて分析しても、鉄系煤塵の粒子と製鋼スラグ系煤塵の粒子とを明度のみにより判別することは困難な場合が多い。また、カラーCCDカメラでは、同一のフィルタをコーティングした素子が隣り合うことが少ないので、青色光のみに着目した分析を行う場合、各粒子の撮像時の空間分解能が著しく小さくなるので、この点でも不利となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(分析サンプルの作成)
まず、煤塵種が既知の標準試料として、鉄鉱石、石炭、高炉水砕スラグ及び転炉スラグを準備し、各々の試料500μgを匙ですくって、白色アルマイト処理した第1のアルミ板上に匙で散布し、ステンレス製のへらを用いて、各粒子が互いに重ならないようにアルミ板に拡げた。拡げた粒子群は、直径約10mmの範囲に存在していた。
次に、直径10mmの市販の円柱状の電磁石を中心軸が鉛直方向となるように設置し、磁石の先端面(下端面)での平均磁束密度が0.3Tとなるように電磁石に供給する電流を調整した。この状態で、作業者が電磁石を手で保持してアルミ基板上に散布された粒子の上方から垂直に下降させ、粒子に電磁石を接触させた。この状態で1秒間静止させた後、電磁石を上方に持ち上げて、着磁した粒子を電磁石とともに移動させ、別途準備しておいた白色アルマイト処理した第2のアルミ板上に、上方から垂直に電磁石を下降させて電磁石を第2のアルミ板上に載置した。次いで、電磁石に消磁電流を与えた後、電磁石への電流の供給を止め、電磁石を上方に持ち上げて第2のアルミ板上から離隔させた。
なお、使用した第1のアルミ板及び第2のアルミ板の寸法は、ともに、大きさが30mm×30mmで、厚みが3mmであった。また、電磁石の消磁方法としては、市販の電磁石用消磁コントローラを使用した。
以上の操作の結果、第1のアルミ板上に残留した粒子を非着磁性降下煤塵のサンプルとし、第2のアルミ板上に残留した粒子を着磁性降下煤塵のサンプルとした。
(粒子の撮像)
次に、市販の三眼式実体顕微鏡(対物レンズ倍率:0.5倍)に、市販のリング状光源(白色光)をレンズ鏡筒に、市販のモノクロディジタルカメラ(CCD600万画素、画素寸法は3μm角)をカメラ装着口に、それぞれ装着した。次いで、顕微鏡のステージに、着磁性降下煤塵のサンプルと非着磁降下煤塵のサンプルをそれぞれ載置し、照明条件を同一にするとともに、カメラの絞り及び露出を同一条件として順に撮影し、着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像を得た。
このとき、顕微鏡の倍率は、測定対象の粒子の実寸法がカメラのCCD素子上で同一の寸法に結像するように調整した。また、顕微鏡で認識する対象の粒子は、降下煤塵であり粒子が粗大であることから、φ10μm以上の大きさの粒子とした。なお、本実施例において、当該粒子の大きさは、CCDの9画素以上に対応するものである。
(画像処理)
上述したようにして得られた着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像に対し、市販の粒子画像処理ソフトであるIMAGRPRO PLUS VER.5を用いて粒子画像処理計測を行った。このとき、計測の対象としては、各粒子の中心位置、各粒子の円等価直径及び各粒子の平均明度(粒子として認識される画素領域に存在する各画素の明度の平均値)とした。
具体的には、予め定めたおいた明度しきい値T1を用いて、この明度しきい値T1未満の明度である画素領域を粒子が存在する領域として特定し、当該画素領域に存在する各画素の位置や明度に基づいて、着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像のそれぞれの画像中に存在する各粒子の中心位置、平均明度及び円等価直径を算出し、算出結果を記録した。
次に、上述のようにして算出した各粒子の平均明度を、予め定めておいた明度しきい値T2(>T1)と比較し、画像中の各粒子を暗色粒子と明色粒子とに区分した。
さらに、上述のようにして算出した各粒子の円等価直径を用いて、予め境界値を定めた粒度区分別に各粒子を分類し、粒度区分ごとの粒子構成率を明度区分(暗色粒子と明色粒子)ごとに求めた。
以上の操作により求めた標準試料の煤塵特性は、以下の表1の通りである。
Figure 0005333240
また、表1に記載された標準試料のうち、鉄鉱石(着磁性暗色粒子)に関し、粒度区分ごとの粒子構成率を求めた例を以下に示す。
鉄鉱石:<φ30μm:20% <φ100μm:70% ≧φ100μm:10%
(捕集された降下煤塵の分析)
次に、高炉法による製鉄プラントの敷地内で降下煤塵を市販のデポジットゲージで1週間捕集し、100mgの降下煤塵を得た。この降下煤塵を屋内で3日間自然乾燥した後、降下煤塵の全量のうち500μgを用いて、上述した標準試料と同様の方法により処理して、降下煤塵粒子の煤塵特性を得た。その結果を下記の表2に示す。
Figure 0005333240
このようにして得られた捕集された降下煤塵試料の煤塵特性と、上記表1に示された標準試料の煤塵特性とを比較し、降下煤塵試料が主に着磁性暗色粒子で構成されていることから、捕集された降下煤塵は、同様に主に着磁性暗色粒子で構成されている鉄鉱石であったものと特定した。
なお、捕集された降下煤塵試料の粒度区分ごとの粒子構成率は、以下のようであった。
降下煤塵:<φ30μm:50% <φ100μm:45% ≧φ100μm:5%
この結果を見ると、上に示した鉄鉱石の粒度分布とは異なっているが、この結果から、本実施例における試料である降下煤塵が捕集された場所が、発塵源(鉄鉱石が保存されているヤード等)から遠く離れていたため、捕集場所に届くまでの間に、大径の粒子が途中で落下し、大径の粒子の構成率が減少してしまったものと推測できる。
1 (第1の)基板
2 第2の基板
11 磁石
13 磁石保持器
15 スペーサ
17 分離板
21 撮像手段
23 レンズ
25 照明手段
27 青色フィルタ
Pm 着磁性降下煤塵
Pn 非着磁性降下煤塵

Claims (5)

  1. 高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を、主に鉄鉱石に由来する鉄系煤塵、主に石炭に由来する石炭系煤塵、主に高炉スラグに由来する高炉スラグ系煤塵、及び主に製鋼スラグに由来する製鋼スラグ系煤塵のいずれかに判別して、特定する、降下煤塵の煤塵種の特定方法であって、
    捕集された前記降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分離する第1の工程と、
    前記第1の工程で分離された前記着磁性降下煤塵と前記非着磁性降下煤塵のそれぞれを撮像し、前記着磁性降下煤塵の画像である着磁性煤塵画像と、前記非着磁性降下煤塵の画像である非着磁性煤塵画像とを生成する第2の工程と、
    前記着磁性煤塵画像と前記非着磁性煤塵画像のそれぞれに画像処理を施すことにより、前記着磁性煤塵画像中に存在する個々の前記着磁性降下煤塵と前記非着磁性煤塵画像中に存在する個々の前記非着磁性降下煤塵を、所定の明度しきい値を用いて明色粒子と暗色粒子とに区分し、当該区分結果を利用して、捕集された前記降下煤塵を、着磁性及び明度の組み合わせで規定される煤塵特性に応じて、着磁性暗色粒子と、着磁性明色粒子と、非着磁性暗色粒子と、非着磁性明色粒子とのいずれかに分類する第3の工程と、
    前記第3の工程での分類結果と、煤塵種が既知の標準試料の前記煤塵特性とに基づいて、前記降下煤塵の煤塵種を、前記着磁性暗色粒子を前記鉄系煤塵とし、前記着磁性明色粒子を前記製鋼スラグ系煤塵とし、前記非着磁性暗色粒子を石炭系煤塵とし、前記非着磁性明色粒子を高炉スラグ系煤塵として判別して、特定する第4の工程と、
    を含むことを特徴とする、降下煤塵の煤塵種の特定方法。
  2. 前記第1の工程で前記降下煤塵に磁力を付与する際の磁束密度が、0.1T以上0.4T以下であることを特徴とする、請求項1に記載の降下煤塵の煤塵種の特定方法。
  3. 前記第3の工程において、個々の前記降下煤塵の粒径を測定することを特徴とする、請求項1または2に記載の降下煤塵の煤塵種の特定方法。
  4. 前記煤塵種として、少なくとも前記鉄系煤塵と前記製鋼スラグ系煤塵とを含む場合に、
    前記第2の工程において、前記着磁性降下煤塵の各粒子に白色光を照射し、当該白色光に対する前記粒子からの反射光を青色フィルタを透過させた後に、モノクロカメラを用いて撮像することにより、前記着磁性煤塵画像を生成し、
    前記第4の工程において、前記着磁性煤塵画像上での粒子の明度が所定値以上のものを前記製鋼スラグ系煤塵と特定し、当該製鋼スラグ系煤塵以外の粒子を前記鉄系煤塵と特定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の降下煤塵の煤塵種の特定方法。
  5. 前記煤塵種として、少なくとも前記鉄系煤塵と前記製鋼スラグ系煤塵とを含む場合に、
    前記第2の工程において、前記着磁性降下煤塵の各粒子に青色LEDを用いて青色光を照射し、当該青色光に対する前記粒子からの反射光をモノクロカメラを用いて撮像することにより、前記着磁性煤塵画像を生成し、
    前記第4の工程において、前記着磁性煤塵画像上での粒子の明度が所定値以上のものを前記製鋼スラグ系煤塵と特定し、当該製鋼スラグ系煤塵以外の粒子を前記鉄系煤塵と特定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の降下煤塵の煤塵種の特定方法。
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