JP5333149B2 - ステンレス基板への金めっき層の形成方法およびそれに用いるめっき装置 - Google Patents

ステンレス基板への金めっき層の形成方法およびそれに用いるめっき装置 Download PDF

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Description

本発明は、ステンレス鋼、特にステンレス基板に対して表裏のめっき厚みを制御して金めっき層を形成する方法とそれに用いるめっき装置に関する。
従来から、ステンレス鋼は基板等の形態としてリードフレーム、燃料電池、ハードディスクサスペンション等の種々の製品に用いられている。そして、ステンレス基板の耐食性を部分的に高めたり外部接続導通のために、銅、ニッケル、銀、金等の導電性材料からなる所望のパターンをステンレス基板上に形成することが行われている(特許文献1、2)。
特開2003−247097号公報 特開2007−220785号公報
しかし、ステンレス基板にシアン系金めっき液を用いて直接金めっき層を形成する場合、ステンレス基板の不動態被膜の除去処理が不十分であると、金めっき層の密着性が不均一となったり、根本的な密着不良が発生し、一方、不動態被膜の除去処理が過度になるとステンレス基板の表面腐食が発生するという問題があった。
一方、塩酸系の金めっき液を用いる場合、金めっき中に同時作用としてステンレス基板の表面腐食作用も生じるので、金めっき層の密着性は良好なものとなる。そして、金めっき層が必要な部位がステンレス基板の一方の面だけの場合、あるいは、ステンレス基板の一方の面の一部だけの場合、ステンレス基板の全面に金めっき層を形成した後、不必要な部位が露出するようにマスクパターンを形成して、不要な部位の金めっき層を除去することができる。しかし、ステンレス基板の全面に同じ厚みで金めっき層が形成され、不要な部位の金めっき層の除去に要する時間、および、コストの点で問題があった。また、金めっき層が不要な部位、例えば、ステンレス基板の一方の面をマスクで被覆して、他の面のみに金めっき層を形成することもできるが、マスクで被覆された面は、当該マスクとの界面を通ってめっき液が侵入し腐食が発生するので、品質の点で問題があった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、ステンレス基板に対して表裏のめっき厚みを制御して金めっき層を形成する方法と、これに使用するめっき装置を提供することを目的とする。
このような課題を解決するために、本発明のステンレス基板への金めっき層の形成方法は、塩酸系金めっき液中にステンレス基板を陰極としてその一方の面を陽極と対向させて配設し、かつ、前記ステンレス基板の他の面に対向するように制御用電極を配設し、第1直流電源により前記陽極と前記制御用電極との間に電圧を印加可能とし、第2直流電源により前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加可能とし、かつ、前記陽極と前記制御用電極と前記第1直流電源からなる回路と、前記陽極と前記陰極と前記第2直流電源からなる回路とが並列となるように構成し、前記陽極と前記制御用電極との間の電流密度を、前記陽極と前記陰極との間の電流密度以下で設定することにより、前記制御用電極に対向する陰極の面への金析出を制御しながら陰極の全面に金めっき層を形成するめっき工程を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ステンレス基板に対してアルカリ洗浄処理と塩酸浸漬処理を含む前処理を施すような構成とした。
本発明の他の態様として、前記めっき工程の後、金めっき反応せずにステンレス基板に付着してめっき液から持ち出されるめっき液中の金イオンを回収する回収工程を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記めっき工程の後、めっき液から引き上げたステンレス基板を水洗し、アルカリ系剥離液に浸漬して、金めっき層の厚みを所望の厚みとする剥離工程を有するような構成とした。
また、本発明は、被めっき基板の全面に金めっき層を形成するためのめっき装置において、めっき槽と、所定の間隔を設けて対向した陽極と制御用電極と、該陽極と該制御用電極との間に位置する被めっき基板からなる陰極と、前記陽極と前記制御用電極との間に電圧を印加するための第1直流電源と、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加するための第2直流電源と、を備え、前記陽極と前記制御用電極と前記第1直流電源とからなる回路と、前記陽極と前記陰極と前記第2直流電源とからなる回路とが並列回路を構成しているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記陽極と前記制御用電極との間の電流密度が、前記陽極と前記被めっき基板との間の電流密度以下となるように前記第1直流電源と前記直流第2電源を調節するための制御装置を備えるような構成とした。
本発明の金めっき層の形成方法では、ステンレス基板の一方の面と他方の面に異なる厚みで金めっき層を形成することができるので、ステンレス基板の一方の面に所定の厚みの金めっき層を形成したい場合には、他方の面の金めっき層の厚みを薄くすることができ、製造コストの低減が可能となる。また、ステンレス基板の他方の面に形成した薄い金めっき層を剥離工程により除去して、ステンレス基板の所望の一方の面のみに金めっき層を形成することもでき、この場合、金めっき層が剥離除去された面は腐食が生じていない良好な状態が維持される。
また、本発明のめっき装置は、本発明の金めっき層の形成方法による金めっき層の形成を容易に行うことができる。
本発明のめっき装置の一実施形態を示す概略構成図である。 本発明のめっき装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のめっき装置の一実施形態を示す概略構成図である。図1において、本発明のめっき装置1は、めっき液を保持してめっき浴とするためのめっき槽2と、所定の間隔を設けて対向した陽極4と制御用電極5と、陽極4と制御用電極5との間に位置する陰極6とを備え、さらに、陽極4と制御用電極5との間に電圧を印加するための第1直流電源7と、陽極4と陰極6との間に電圧を印加するための第2直流電源8と、を備えている。そして、陽極4と制御用電極5と第1直流電源7とからなる回路と、陽極4と陰極6と第2直流電源8とからなる回路とが並列回路を構成している。また、陽極4、制御用電極5、および、陰極6は、図示しない固定具を介してめっき槽2に固定されている。
このようなめっき装置1を構成する陽極4は、例えば、チタン材に白金をめっきして被覆したもの、あるいは、クラッド材やカーボン板等の材料を使用することができる。このような陽極4の大きさは、対向する陰極6(被めっき基板)と同じ、あるいは、1/2程度までの大きさであることが好ましい。また、制御用電極5は、例えば、ステンレス等の金属材料を使用することができる。このような制御用電極5の大きさは、対向する陰極6(被めっき基板)と同じ、あるいは、1/2程度までの大きさであることが好ましい。また、上記の陰極6は被めっき基板である。
次に、本発明の金めっき層の形成方法の実施形態について、上記のようなめっき装置1を用いた場合を例として説明する。
本発明のめっき工程では、被めっき基板であるステンレス基板を陰極6としてその一方の面6aを陽極4と対向させて塩酸系金めっき液21中に浸漬し、さらに、陰極6の他の面6bに対向するように制御用電極5を配設する。また、陽極4と制御用電極5と第1直流電源7からなる回路と、陽極4と陰極6と第2直流電源8からなる回路とが並列となるように構成する。そして、第1直流電源7と第2直流電源8を調節することにより、陽極4から制御用電極5に流れるめっき電流の電流密度A1を、陽極4から陰極6に流れるめっき電流の電流密度A2以下の範囲で設定する。これにより、制御用電極5に対向する陰極6の面6b付近のめっきの電流密度を、陽極4に対向する陰極6の面6a付近のめっきの電流密度よりも低くすることができる。このように陰極6の面6b付近のめっきの電流密度を低くすることで、陰極6の面6bへの金析出が抑制される。したがって、電流密度A1を電流密度A2以下の範囲で適宜設定することにより、制御用電極5に対向する陰極6の面6bへの金析出を制御しながら陰極(ステンレス基板)6の全面に金めっき層を形成することができる。
尚、上記のように陽極4から制御用電極5に流れるめっき電流の電流密度A1を、陽極4から陰極6に流れるめっき電流の電流密度A2以下の範囲で設定するという技術事項には、制御用電極5の電流が陰極6(被めっき基板)と同じ極性(すなわち零以上)となる範囲で設定することに加えて、陽極4から制御用電極5に流れるめっき電流の電流密度A1として負の電流(逆電流)を流すことも包含される。このように、第1直流電源7を調節することにより負の電流を流す場合は、制御用電極5が反応して金めっき液21中に溶け出す可能性があるため、制御用電極5を陽極4と同様の材料とし、制御用電極5の溶け出しを防止する必要がある。
上述のような本発明で使用する塩酸系金めっき液は、ステンレス基板の侵食防止とめっき時間の短縮化とを考慮したものを使用することが好ましい。例えば、めっき対象となるステンレス基板の表面への微小孔食の発生程度が単位面積(mm2)当り5個以下となるように調製された塩酸系金めっき液を使用することができる。ここで、微小孔食の測定は、塩酸系金めっき液中にステンレス基板を10秒間浸漬し、水洗した後に走査電子顕微鏡で観察して測定する。このような塩酸系金めっき液を使用することにより、金めっき中において、同時作用としてステンレス基板の表面に適度の腐食作用が生じ、めっき層とステンレス基板との密着性は良好なものとなる。
本発明の金めっき層の形成方法を用いる対象となるステンレス基板には特に制限はなく、例えば、オーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼からなるものであってよい。また、エッチング加工、プレス加工等によって溝、孔部等の種々の微細加工が予め施されたステンレス基板であってもよい。
また、ステンレス基板に対し、表面の脱脂、不動態被膜の除去による活性化等を目的として前処理を施してもよい。このような前処理は、例えば、アルカリ浸漬処理、アルカリ電解処理、酸電解処理、酸浸漬処理等の処理方法から適宜選択して行うことができる。尚、前処理を施した後、金めっき層の形成までの移行時間は、ステンレス基板に不動態被膜が再形成されない程度の範囲とする。
このような本発明により陰極(ステンレス基板)6の全面に形成される金めっき層の厚みは、陽極4に対向する陰極(ステンレス基板)6の面6aで、例えば、0.01〜0.4μm程度とすることができる。また、上記のように、電流密度A1を電流密度A2以下の範囲で適宜設定することにより、制御用電極5に対向する陰極(ステンレス基板)6の面6bでの金めっき層の厚みは、陰極(ステンレス基板)6の面6a以下とすることができ、下記のような厚み測定方法で検出不可能な程度まで薄い金めっき層とすることもできる。
ここで、金めっき層の厚みは、金めっき層を形成後、セイコーインスツル(株)製の蛍光X線膜厚測定装置を使いて測定する。尚、前もって、測定したい膜厚目標値を包含するような、これよりも薄い標準箔と厚い標準箔を準備し、少なくともこれら2つの標準箔を用いて、X線出力と膜厚との検量線を事前に作成しておく。また、FIB(集束イオンビーム)による断面加工を行った後、SEM(走査電子顕微鏡)にて断面を観察し、撮影される倍率に応じたスケールをもとに厚みの確認を行うこともできる。
また、本発明は、上記のめっき工程の後、金めっき液21から引き上げたステンレス基板(陰極6)を水洗し、アルカリ系剥離液に浸漬して、金めっき層の厚みを所望の厚みまで低下させる剥離工程を有するものであってもよい。使用するアルカリ系剥離液としては、エボニック デグサ ジャパン(株)製のゴールドストリッパー645やメルテックス(株)製のエンストリップAU−78M等を挙げることができ、これらの任意の1種を使用して、スプレー噴霧、浸漬等により金めっき層の厚みの低下、あるいは、金めっき層の剥離を行うことができる。
本発明では、ステンレス基板に形成する金めっき層は、ステンレス基板の一方の面に所望の厚みで金めっき層が形成され、これよりも薄い金めっき層が他方の面に形成されたもの、あるいは、ステンレス基板の一方の面のみに金めっき層が形成されたもの、いずれでもよい。前者の場合には、上記のような剥離工程により、ステンレス基板の他方の面に形成されている膜厚の薄い金めっき層を剥離除去することができる。また、後者の場合であっても、ステンレス基板の一方の面の金めっき層を所望の厚みとするために、上記のような剥離工程を通すことができる。
このような本発明の金めっき層の形成方法では、ステンレス基板の一方の面と他方の面に異なる厚みで金めっき層を形成することができるので、ステンレス基板の一方の面に所定の厚みの金めっき層を形成したい場合には、他方の面の金めっき層の厚みを薄くすることができ、製造コストの低減が可能となる。また、ステンレス基板の他方の面に形成した薄い金めっき層を剥離工程により除去して、ステンレス基板の所望の一方の面のみに金めっき層を形成することもできる。
また、本発明のめっき装置は、本発明の形成方法による金めっき層の形成を容易に行うことができる。
上述の本発明の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の金めっき層の形成方法では、めっき工程の後、金めっき反応せずにステンレス基板に付着してめっき液から持ち出されるめっき液中の金イオンを回収する工程を加えてもよい。このような金イオン回収工程を加えることにより、金めっき層形成のコストの低減が可能となる。
また、本発明のめっき装置1では、陽極4と制御用電極5との間の電流密度が、陽極4と陰極(被めっき基板)6との間の電流密度以下となるように第1直流電源7と第2直流電源8とを調節するための制御装置を備えるものであってもよい。
また、本発明のめっき装置は、図2に示されるような実施形態としてもよい。図2において、本発明のめっき装置11は、めっき液を保持してめっき浴とするためのめっき槽12と、所定の間隔を設けて対向した陽極14と制御用電極15と、陽極14と制御用電極15との間に位置する陰極16とを備え、さらに、制御用電極15と陰極16との間に電圧を印加するための第1直流電源17と、陽極14と陰極16との間に電圧を印加するための第2直流電源18と、を備えている。そして、制御用電極15と陰極16と第1直流電源17とからなる回路と、陽極14と陰極16と第2直流電源18とからなる回路とが直列回路を構成している。また、陽極14、制御用電極15、および、陰極16は、図示しない固定具を介してめっき槽12に固定されている。
このようなめっき装置11を構成する陽極14および制御用電極15は、例えば、チタン材に白金をめっきして被覆したもの等の材料を使用することができる。このような陽極14、制御用電極15の大きさは、対向する陰極16(被めっき基板)と同じ、あるいは、1/2程度までの大きさであることが好ましい。また、上記の陰極16は被めっき基板である。
次に、上記のようなめっき装置11を用いた場合を例として、本発明の金めっき層の形成方法について説明する。この場合、めっき工程では、被めっき基板であるステンレス基板を陰極16としてその一方の面16aを陽極14と対向させて塩酸系金めっき液21中に浸漬し、さらに、陰極16の他の面16bに対向するように制御用電極15を配設する。また、制御用電極15と陰極16と第1直流電源17からなる回路と、陽極14と陰極16と第2直流電源18からなる回路とが直列となるように構成する。そして、第1直流電源17と第2直流電源18を調節することにより、制御用電極15から陰極16に流れるめっき電流の電流密度A1を、陽極14から陰極16に流れるめっき電流の電流密度A2以下の範囲で設定する。これにより、制御用電極15に対向する陰極16の面16b付近のめっきの電流密度を、陽極14に対向する陰極16の面16a付近のめっきの電流密度よりも低くすることができる。このように陰極16の面16b付近のめっきの電流密度を低くすることで、陰極16の面16bへの金析出が抑制される。したがって、電流密度A1を電流密度A2以下の範囲で適宜設定することにより、制御用電極15に対向する陰極16の面16bへの金析出を制御しながら陰極(ステンレス基板)16の全面に金めっき層を形成することができる。
尚、上記のように制御用電極15から陰極16に流れるめっき電流の電流密度A1を、陽極14から陰極16に流れるめっき電流の電流密度A2以下の範囲で設定するという技術事項には、制御用電極15の電流が陰極16(被めっき基板)と異なる極性となる範囲で設定することに加えて、第1直流電源7を調節することにより制御用電極15の電流を陰極16(被めっき基板)と同じ極性として設定することも包含される。
また、本発明のめっき装置11では、制御用電極15と陰極(被めっき基板)16との間の電流密度が、陽極14と陰極(被めっき基板)16との間の電流密度以下となるように第1直流電源17と直流第2電源18とを調節するための制御装置を備えるものであってもよい。
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
<めっき工程>
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS316材(150mm×150mm)を準備した。
また、塩酸系金めっき液として、下記の組成の塩酸金めっき液を調製した。
(塩酸金めっき液Aの組成)
・金属金 … 2.0g/mL
・塩酸 … 40g/mL
・コバルト … 0.1g/mL
上記のステンレス基板に前処理として、アルカリ洗浄処理(常温、30秒間)を施し、次いで、塩酸浸漬処理(10%塩酸水溶液に30秒間浸漬)を施した。この前処理後に水洗し、その後、上記の塩酸金めっき液に上記のステンレス基板を10秒間浸漬し、水洗した後、走査電子顕微鏡で観察した結果、ステンレス基板の表面への微小孔食の発生程度は単位面積(mm2)当り5個以下であることを確認した。
一方、めっき装置として、図1に示されるようなめっき装置を準備した。このめっき装置における陽極は、厚み0.15mmのカーボン板(150mm×150mm)とし、制御用電極は、厚み0.15mmのステンレス板(150mm×150mm)とした。
次に、上記の前処理を施したステンレス基板を水洗し、その直後に、上記のめっき装置に陰極として装着し、上記の塩酸金めっき液を用いて下記の条件で金めっき層を陰極の全面に形成した。この金めっき層の形成では、陽極と制御用電極間の電流密度を調節することにより、下記の表1に示すよう4種の試料(1−1〜1−4)を作製した。
(金めっきの条件)
・陽極と陰極(ステンレス基板)間の電流密度 : 4A/dm2
・陽極と制御用電極間の電流密度 : 下記の4種
4A/dm2
1A/dm2
0.5A/dm2
0.25A/dm2
・めっき時間 : 30秒
<剥離工程>
次に、剥離液としてアルカリ系剥離液(エボニック デグサ ジャパン(株)製のゴールドストリッパー645)を用い、この剥離液(液温25〜35℃)に上記の4種の試料(1−1〜1−4)を10秒間浸漬し、その後、水洗した。これにより、制御用電極と対向していた陰極(ステンレス基板)の面の金めっき層が剥離され、ステンレス基板の一方の面のみに金めっき層が存在することとなった。また、金めっき層が剥離され露出したステンレス基板の表面を顕微鏡で観察し、侵食の有無を評価して結果を下記の表1に示した。
(金めっき層の膜厚測定)
上記のように作製した4種の試料(剥離工程前)について、陽極と対向していた面の金めっき層の厚み、制御用電極と対向していた面の金めっき層の厚みをそれぞれ測定して、下記の表1に示した。この金めっき層の厚みは、セイコーインスツル(株)製の蛍光X線膜厚測定装置を使いて試料の中央部位、四隅近傍部位の計5ヶ所を測定し、その平均値とした。尚、前もって、測定したい膜厚目標値を包含するような、これよりも薄い標準箔と厚い標準箔を準備し、少なくともこれら2つの標準箔を用いて、X線出力と膜厚との検量線を作成した。
(密着性の評価)
上記のように作製した4種の試料(剥離工程前)を350℃で5分間保持し、常温に戻した後、金めっき層における膨れ、クラックなどの異常の有無を顕微鏡で観察して、下記の表1に示した。また、上記の加熱処理後、粘着テープ(住友スリーエム(株)製 600番)を使用し、ASTM B571に記載された密着性テストに準拠して、金めっき層に対してテープ剥離試験を行い、金めっき層の剥離の有無を下記の表1に示した。
Figure 0005333149
[実施例2]
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS316L材(150mm×150mm)を準備し、実施例1と同様にして、4種の試料(2−1〜2−4)を作製した。
作製した4種の試料(2−1〜2−4)について、実施例1と同様にして、金めっき層の厚みを測定し、密着性を評価し、また、剥離工程後の基板侵食の有無を観察して結果を下記の表2に示した。
Figure 0005333149
[実施例3]
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS304材(150mm×150mm)を準備し、実施例1と同様にして、4種の試料(3−1〜3−4)を作製した。
作製した4種の試料(3−1〜3−4)について、実施例1と同様にして、金めっき層の厚みを測定し、密着性を評価し、また、剥離工程後の基板侵食の有無を観察して結果を下記の表3に示した。
Figure 0005333149
[実施例4]
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS304L材(150mm×150mm)を準備し、実施例1と同様にして、4種の試料(4−1〜4−4)を作製した。
作製した4種の試料(4−1〜4−4)について、実施例1と同様にして、金めっき層の厚みを測定し、密着性を評価し、また、剥離工程後の基板侵食の有無を観察して結果を下記の表4に示した。
Figure 0005333149
表1〜表4に示されるように、何れのステンレス基板においても、陽極と制御用電極間の電流密度を調節することにより、制御用電極と対向するステンレス基板の面における金めっき層の厚みを制御することが可能であった。このとき、陽極と対向するステンレス基板の面における金めっき層の厚みはほぼ一定であった。
また、形成された金めっき層はステンレス基板に対して優れた密着性を示し、さらに、制御用電極と対向するステンレス基板の面に形成された金めっき層を剥離除去しても、ステンレス基板に侵食が生じていないことが確認された。
ステンレス鋼に金めっき層の形成を必要とする種々の製造分野に利用することができる。
1,11…めっき装置
2,12…めっき槽
4,14…陽極
5,15…制御用電極
6,16…陰極(被めっき基板)
7,17…第1直流電源
8,18…第2直流電源

Claims (6)

  1. 塩酸系金めっき液中にステンレス基板を陰極としてその一方の面を陽極と対向させて配設し、かつ、前記ステンレス基板の他の面に対向するように制御用電極を配設し、第1直流電源により前記陽極と前記制御用電極との間に電圧を印加可能とし、第2直流電源により前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加可能とし、かつ、前記陽極と前記制御用電極と前記第1直流電源からなる回路と、前記陽極と前記陰極と前記第2直流電源からなる回路とが並列となるように構成し、前記陽極と前記制御用電極との間の電流密度を、前記陽極と前記陰極との間の電流密度以下で設定することにより、前記制御用電極に対向する陰極の面への金析出を制御しながら陰極の全面に金めっき層を形成するめっき工程を有することを特徴とするステンレス基板への金めっき層の形成方法。
  2. 前記ステンレス基板に対してアルカリ洗浄処理と塩酸浸漬処理を含む前処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のステンレス基板への金めっき層の形成方法。
  3. 前記めっき工程の後、金めっき反応せずにステンレス基板に付着してめっき液から持ち出されるめっき液中の金イオンを回収する回収工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステンレス基板への金めっき層の形成方法。
  4. 前記めっき工程の後、めっき液から引き上げたステンレス基板を水洗し、アルカリ系剥離液に浸漬して、金めっき層の厚みを所望の厚みとする剥離工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のステンレス基板への金めっき層の形成方法。
  5. 被めっき基板の全面に金めっき層を形成するためのめっき装置において、
    めっき槽と、所定の間隔を設けて対向した陽極と制御用電極と、該陽極と該制御用電極との間に位置する被めっき基板からなる陰極と、前記陽極と前記制御用電極との間に電圧を印加するための第1直流電源と、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加するための第2直流電源と、を備え、前記陽極と前記制御用電極と前記第1直流電源とからなる回路と、前記陽極と前記陰極と前記第2直流電源とからなる回路とが並列回路を構成していることを特徴とするめっき装置。
  6. 前記陽極と前記制御用電極との間の電流密度が、前記陽極と前記被めっき基板との間の電流密度以下となるように前記第1直流電源と前記直流第2電源を調節するための制御装置を備えることを特徴とする請求項5に記載のめっき装置。
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