JP5369975B2 - ステンレス基板への金めっきパターンの形成方法 - Google Patents
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また、ステンレス基板の全面に第1層目としてニッケルめっき層を形成し、次いで、所望のパターンで銀めっき層あるいは金めっき層を積層し、その後、不要なニッケルめっき層を剥離除去することにより2層構造のパターンを形成する場合、ニッケルめっき層の剥離に使用する剥離液がアルカリ系および酸系いずれの剥離液であっても、ニッケルめっき層と銀めっき層あるいは金めっき層とのイオン化傾向の相違に起因して、銀めっき層あるいは金めっき層に侵食を示す変色がみられた。そして、この剥離液の侵食による欠陥発生を回避するためには、外気からの水分の取り込みを防止する必要があり、銀めっき層あるいは金めっき層を厚くしたり、電流密度を増大して緻密性を向上させることが要求される。しかし、これにより、厚みが1μm以下の薄膜パターンの形成は困難なものとなり、また、製造時間が長くなるために生産効率に支障を来すという問題があった。一方、剥離液の侵食による欠陥発生を回避するために、第1層目であるニッケルめっき層を剥離せずに全面に残すこともできるが、予めステンレス基板に微細加工形状が形成されている場合、この微細加工の精度を十分に活用できないという問題があった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、ステンレス基板への腐食を抑え、薄く欠陥のない金めっき層のパターンをステンレス基板上に形成する方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記第1めっき工程におけるステンレス基板の前処理は、アルカリ洗浄処理と塩酸浸漬処理を含むような構成とした。
本発明の他の態様として、前記第1めっき工程の後、前記第2めっき工程の後に、金イオン回収を行うような構成とした。
本発明では、第1めっき工程にて、ステンレス基板に前処理を施した後、全面に塩酸めっき液を用いて第1金めっき層を形成する。
本発明の金めっき層の形成方法を用いる対象となるステンレス基板には特に制限はなく、例えば、オーステナイト系、フェライト系のステンレス鋼からなるものであってよい。また、エッチング加工、プレス加工等によって溝、孔部等の種々の微細加工が予め施されたステンレス基板であってもよい。
ステンレス基板に対する前処理は、表面の脱脂、不動態被膜の除去による活性化が目的であり、例えば、アルカリ浸漬処理、アルカリ電解処理、酸電解処理、酸浸漬処理等の処理方法から適宜選択して行うことができる。尚、前処理を施した後、第1金めっき層の形成までの移行時間は、ステンレス基板に不動態被膜が再形成されない程度の範囲とする。
形成する第1金めっき層の厚みの上限は0.15μmとすることが好ましく、0.15μmを超えると、剥離工程における第1金めっき層の剥離効率が低下し好ましくない。また、形成する第1金めっき層の厚みの下限は、第2めっき工程で使用するめっき液に応じて設定することが好ましい。すなわち、第2めっき工程でシアン系めっき液を使用する場合、第1金めっき層の厚みの下限は、均一な膜厚制御が可能であることを考慮して、0.010μmとする。また、第2めっき工程で塩酸系めっき液を使用する場合、第1金めっき層の厚みの下限は、第2めっき工程での塩酸系めっき液によるステンレス基板の腐食を防止することを考慮して、0.015μmとする。
尚、第1めっき工程で形成した第1金めっき層の活性化を目的として、中和処理を施してもよい。このような活性化を行うことにより、後工程での第2金めっき層の密着性が更に向上する。
形成する第2金めっき層の厚みは、形成する金めっき層のパターンの用途に応じて適宜設定することができるが、本発明では、第1金めっき層との総厚みが1μm以下の薄膜となるように第2金めっき層の厚みを設定することが可能である。
本発明では、ステンレス基板に形成する金めっき層のパターンは、ステンレス基板の一方の面に形成するもの、両面に形成するもの、いずれでもよく、また、形成するパターンの数にも制限はない。
上述の本発明の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、第1めっき工程の後、金めっき反応せずにステンレス基板に付着してめっき液から持ち出されるめっき液中の金イオンを回収する工程を加えてもよい。このような金イオン回収工程は、第2めっき工程の後にも加えることができる。このような金イオン回収工程を加えることにより、パターン形成のコストの低減が可能となる。
[実施例1]
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS316材(150mm×150mm)を準備した。
<第1めっき工程>
塩酸めっき液として、下記の組成の塩酸めっき液Aを調製した。
(塩酸めっき液Aの組成)
・金属金 … 2.0g/mL
・塩酸 … 40g/mL
・コバルト … 0.1g/mL
また、上記のステンレス基板に前処理を施した後、水洗し、その直後に、上記の塩酸めっき液Aを用いて下記の条件で第1金めっき層をステンレス基板の全面に形成した。この第1金めっき層の形成では、めっき処理時間を調節することにより、下記の表1に示すように5種の厚みで第1金めっき層を形成した。
(第1金めっきの条件)
・電流密度 : 3A/dm2
・処理時間 : 5〜15秒
シアンめっき液として、下記の組成のシアンめっき液を調製した。
(シアンめっき液の組成)
・金属金 … 6.0g/mL
・コバルト … 0.5g/mL
次に、直径が2mmの円形開口を有するマスクを介して、第1金めっき層上に、上記のシアンめっき液を使用して下記の条件で直径2mmの円形パターンの第2金めっき層(厚み0.25μm)を形成した。
(第2金めっきの条件)
・電流密度 : 12A/dm2
・処理時間 : 3〜10秒
剥離液としてアルカリ系剥離液(エボニック デグサ ジャパン(株)製のゴールドストリッパー645)を用い、この剥離液(液温25〜35℃)にステンレス基板を10秒間浸漬し、その後、水洗した。これにより、露出している第1金めっき層が剥離され、直径2mmの円形パターンの金めっき層をステンレス基板上に形成することができた。
(密着性テスト)
金めっき層パターンを形成したステンレス基板を350℃で5分間保持し、常温に戻した後、金めっき層パターンにおける膨れ、クラックの異常の有無を顕微鏡で観察して、下記の表1に示した。
(テープ剥離試験)
粘着テープ(住友スリーエム(株)製 600番)を使用し、ASTM B571に記載された密着性テストに準拠して、金めっき層パターンに対してテープ剥離試験を行い、金めっき層パターンの剥離の有無を下記の表1に示した。
(基板侵食)
剥離工程において第1金めっき層を剥離して露出したステンレス基板の表面を顕微鏡で観察し、侵食の有無を評価して結果を下記の表1に示した。
実施例1と同じステンレス基板を準備した。
<第1めっき工程>
実施例1と同様にステンレス基板に前処理を施し、水洗し、その直後に、実施例1と同じ塩酸めっき液Aを使用し、実施例1と同じめっき条件で第1金めっき層をステンレス基板の全面に形成した。この第1金めっき層の形成では、めっき処理時間を調節することにより、下記の表2に示すように5種の厚みで第1金めっき層を形成した。
塩酸めっき液として、下記の組成の塩酸めっき液Bを調製した。
(塩酸めっき液Bの組成)
・金属金 … 4.0g/mL
・塩酸 … 60g/mL
・コバルト … 0.1g/mL
上述の実施例1にある前処理を施した後、この塩酸めっき液Bにステンレス基板を10秒間浸漬し、水洗した後、走査電子顕微鏡で観察した結果、ステンレス基板の表面への微小孔食の発生程度は単位面積(mm2)当り5個を超える(10〜15個)ことを確認した。
次に、直径が2mmの円形開口を有するマスクを介して、第1金めっき層上に、上記の塩酸めっき液Bを使用して下記の条件で直径2mmの円形パターンの第2金めっき層(厚み0.25μm)を形成した。
(第2金めっきの条件)
・電流密度 : 3A/dm2
・処理時間 : 50〜60秒
実施例1と同様にして、露出している第1金めっき層を剥離した。これにより、直径2mmの円形パターンの金めっき層をステンレス基板上に形成することができた。
<評 価>
実施例1と同様にして、密着性テスト、テープ剥離試験および基板侵食の評価を行い、結果を下記の表2に示した。
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS316L材(150mm×150mm)を準備し、実施例1と同様にして、第1金めっき層の厚みが異なる5種の金めっき層の円形パターンを作製した。
作製した5種の試料について、実施例1と同様にして、密着性テスト、テープ剥離試験および基板侵食の評価を行ったところ、実施例1と同様の結果(密着性テストにおける異常なし、テープ剥離試験における剥離なし、ステンレス基板の侵食なし)が得られた。
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS316L材(150mm×150mm)を準備し、実施例2と同様にして、第1金めっき層の厚みが異なる5種の金めっき層の円形パターンを作製した。
作製した5種の試料について、実施例1と同様にして、密着性テスト、テープ剥離試験および基板侵食の評価を行ったところ、実施例2と同様の結果(第1金めっき層の厚みが0.015μm以上である試料では、密着性テストにおける異常なし、テープ剥離試験における剥離なし、ステンレス基板の侵食なし)が得られた。
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS304材およびSUS304L材(150mm×150mm)を準備し、実施例1と同様にして、2種のステンレス基板に第1金めっき層の厚みが異なる5種の金めっき層の円形パターンを作製した。
2種のステンレス基板に作製した各5種の試料について、実施例1と同様にして、密着性テスト、テープ剥離試験および基板侵食の評価を行ったところ、実施例1と同様の結果(密着性テストにおける異常なし、テープ剥離試験における剥離なし、ステンレス基板の侵食なし)が得られた。
ステンレス基板として、厚み0.15mmのSUS304材およびSUS304L材(150mm×150mm)を準備し、実施例2と同様にして、2種のステンレス基板に第1金めっき層の厚みが異なる5種の金めっき層の円形パターンを作製した。
2種のステンレス基板に作製した各5種の試料について、実施例1と同様にして、密着性テスト、テープ剥離試験および基板侵食の評価を行ったところ、実施例2と同様の結果(第1金めっき層の厚みが0.015μm以上である試料では、密着性テストにおける異常なし、テープ剥離試験における剥離なし、ステンレス基板の侵食なし)が得られた。
Claims (3)
- ステンレス基板に表面の脱脂と不動態被膜除去により活性化を目的とした前処理を施した後、全面に塩酸めっき液を用いて第1金めっき層を形成する第1めっき工程と、
該第1金めっき層上にマスクめっきにより所望のパターンで第2金めっき層を形成する第2めっき工程と、
該第2金めっき層の存在しない領域の前記第1金めっき層をアルカリ系剥離液を用いて剥離除去する剥離工程と、を有し、
前記第1めっき工程で使用する塩酸めっき液は、該塩酸めっき液中に前処理を施した前記ステンレス基板を10秒間浸漬し、水洗した後に走査電子顕微鏡で観察するステンレス基板の表面への微小孔食の発生程度が単位面積(mm 2 )当り5個以下となる塩酸めっき液であり、
前記第2めっき工程ではシアン系めっき液、あるいは、塩酸系めっき液を使用し、シアン系めっき液を使用する場合、前記第1金めっき層の厚みを0.010〜0.15μmの範囲とし、また、塩酸系めっき液を使用する場合、前記第1金めっき層の厚みを0.015〜0.15μmの範囲することを特徴とするステンレス基板への金めっきパターンの形成方法。 - 前記第1めっき工程におけるステンレス基板の前処理は、アルカリ洗浄処理と塩酸浸漬処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のステンレス基板への金めっきパターンの形成方法。
- 前記第1めっき工程の後、前記第2めっき工程の後に、金イオン回収を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステンレス基板への金めっきパターンの形成方法。
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