JP5331685B2 - 二塩基性b鎖末端を有するインスリン類似体の生産方法 - Google Patents

二塩基性b鎖末端を有するインスリン類似体の生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、二塩基性鎖末端を有するインスリンの前駆体の生物工学的調製、及びリシンアミド若しくはアルギニンアミドとの、又は保護基によって修飾されるリシン若しくはアルギニンとの酵素触媒連結反応におけるその後の変換によって、並びに場合によりその後の加水分解によって二塩基性末端を有するインスリンを得る、該インスリンの調製方法に関する。
世界中で約1億7千7百万人の人が、糖尿病に罹患している。これらには、現在のところ欠損している内分泌性インスリン分泌のその置換が唯一の可能な治療法である約1700万人のI型糖尿病患者が含まれる。患者は、通常1日に何度ものインスリン注射に、生涯を通じて依存している。II型糖尿病は、インスリンの欠乏が必ずしも存在しない点でI型糖尿病と対照的であるが、多くの症例では、特に進行した段階において、経口抗糖尿病薬と適切に組み合わせたインスリンによる治療が、最も好ましいタイプの治療法であるとされている。
健常者において、インスリンの放出は、血中グルコース濃度に厳密に結びついている。食後に生じる高血糖レベルなどの高血糖レベルは、インスリン分泌の対応した上昇によって、迅速に補償される。空腹状態において、血漿インスリンレベルは、インスリン感受性の器官及び組織へのグルコースの継続的な供給を保証し、夜間に肝臓グルコース生産を低く維持するのに十分であるベースライン値にまで低下する。外来性インスリンによる、通常インスリンの皮下投与による内在性インスリン分泌の置換は、通常は上述の血中グルコースの生理学的レギュレーションの質に近づくことはない。血中グルコースレベルの上向き又は下向きの再構成(rearrangement)がしばしば起り、最も重症型では生命を脅かしかねない。しかしながら、さらに、何年間も続く高血中グルコースレベルは、初期症状がないのに、健康上のかなりの危険を呈する。米国における大規模なDCCT研究(The Diabetes Control and Complications Trial Research Group (1993) N. Engl. J. Med. 329, 977-986)は、慢性的に上昇した血中グルコースレベルが、実質的に後期糖尿病合併症の発症の原因になることを明快に証明した。後期糖尿病合併症は、微小血管及び大血管の損傷であり、これは幾つかの状況において、網膜症、腎症又は神経障害として現れることになり、そして失明、腎不全及び四肢の喪失に至り、さらに心臓血管障害の増大した危険と関連する。糖尿病の改善された治療法が、生理学的範囲内に可能な限りきっちりと血中グルコースを維持することを何よりもまず目的としなければならないことは、そこから推定すべきである。強化インスリン療法の方針は、速効性及び遅効性インスリン製剤を1日に何度も注射することによって、これを達成しようとするものである。速効性製剤は、血中グルコースの食後の上昇を補償するために食事の時に与えられる。遅効性の基礎インスリンは、特に夜間低血糖に至らしめることなく、インスリンの基礎供給を保証しようとするものである。
インスリンは、2個のアミノ酸鎖に分割される、51個のアミノ酸から構成されるポリペプチドである。A鎖は、21個のアミノ酸を、B鎖は、30個のアミノ酸を有する。鎖は、2個のジスルフィド架橋によって一緒に連結される。インスリン製剤は、糖尿病の治療のために長年使用されてきた。さらに、天然のインスリンだけでなく、より最近ではインスリン誘導体及び類似体も使用される。
インスリン類似体は、天然インスリン、すなわちヒトインスリン又は動物インスリンの類似体であり、これは少なくとも1つの天然アミノ酸残基の他のアミノ酸残基による置換によって、及び/又は対応する、さもなくば同一の、天然のインスリンからの少なくとも1つのアミノ酸残基の付加/欠失によって、異なる。米国特許第5,656,722号には、例えば、des−Phe(B1)−インスリン誘導体が記載されている。また、付加された及び/又は置換されたアミノ酸残基は、天然では生じないアミノ酸残基であってよい。
インスリン誘導体は、天然インスリン又はインスリン類似体の誘導体であって、ここで1つ若しくはそれ以上のアミノ酸残基、並びに/又はA鎖及び/若しくはB鎖のN末端若しくはC末端が、官能基によって置換される。官能基は、アミド残基、アミン残基、カルボキシル残基、アルキル残基、アルコール残基及びアルコキシ残基を含む群より選択される。
効率的なインスリン療法は、いわゆる基礎インスリンを活用する。基礎インスリンは、外来投与インスリンのゆっくりとした継続的な放出を可能にする製剤を意味する。この療法で、糖尿病に罹患しているヒトの生理学的状態に及ぼす有利な効果を有する、身体のベースラインインスリン濃度を、長期にわたって達成する。
組換えインスリン類似体Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)は、これに関連して、基礎効果を達成するために、わずかに24時間ごと、すなわち1日に1回のみ身体に供給する必要があることにとって重要である。1日1回の投与は、生活の質の改善をもたらす。改善された生理機能によって、例えばHba1cレベルの低下につながり、この改善によって、糖尿病の後期続発症は、たとえ現れるとしてもかなり遅延して現れ、従って関連する糖尿病患者の平均余命の長期化を可能にすることが期待され得る。
このインスリン類似体の需要は、相応して高い。糖尿病患者数が持続的に増加しているので、対応する類似体を調製するための経費を最小化する経済的な関心がさらにある。米国特許第5,656,722号には、融合部分(「プレ部分」)とサルプロインスリン変異体とからなるプレプロインスリン融合タンパク質を介したインスリン類似体の可能な調製が記載されている。記載される類似体の1つは、位置A(21)においてアスパラギン酸の代わりにグリシンを含む。対応する融合タンパク質は、インスリングラルギンを調製するためのペプチド前駆体変異体である。この方法は、トリプシンとの反応によるこの融合タンパク質からのプレ部分及びCペプチドの欠失を提供する。欧州特許第0,668,292(A)号には、同一の原理に従うが、米国特許第5,656,722号を上回る改善である方法によってインスリングラルギンの調製を可能にする融合タンパク質が記載されている。これに関連して、部分的な切断が、二塩基性構造Arg−Argによって定義される、インスリンB鎖及びC鎖の境界で特に起こり、そしてB31モノargヒトインスリン類似体をもたらし得ることは、当業者には明らかである。
この欠陥のある産物は、関心対象の実際の化合物から除去されなければならない。これによって、収量が顕著に損なわれる。この問題は、プロインスリンの組換え調製、及び該プロスリンの、例えばリシルエンドペプチダーゼ等の特異的なエンドプロテアーゼとの反応、並びに半合成ペプチド化学アプローチで得られるdes−B30ヒトインスリン(類似体)のトリペプチドThr−Arg−Argとの反応によって、回避できる。欧州特許第0,132,769(A)号及びWO2003/044210には、反応中トリペプチドの反応基を保護する必要性が記載されている。保護基は、反応後に除去される。この経路は、化学合成及び保護基の導入によるトリペプチドの製造から生じる経費と関係している。従って、Arg(B31)、Arg(B32)−インスリン類似体の、Arg(B31)ヒトインスリン前駆体からの調製を可能にする方法を有することが望ましいことになる。
独国特許出願第10,2005,046,113.1号(非刊行)には、C末端のアミド化されたアミノ酸の、C末端のアミノ酸がリシン又はアルギニンからなるペプチドへのトリプシンにより触媒される連結を含む方法が記載されている。この場合に観察される収量は、驚くべきことに高く、さらに保護基でマスキングすることなくカップリング反応を行うことが可能である。反応は、非水性媒体中で生じる。
いまや驚くべきことに、アルギニンアミド又はリシンアミドのB31インスリン類似体へのカップリングが、高い収量で可能であることを発見した。さらに驚くべきことに、Arg(B31)、Arg(B32)−ヒトインスリンアミドの形態の、又はArg(B31)、Lys(B32)−ヒトインスリンアミドの形態のインスリン類似体が優先的に形成されるよう、反応を調節することが可能である。さらに、収率は、60%を超える。アミド基は、反応の終了時に酸性加水分解によって除去できる。同様に驚くべきことに、リシンアミド又はアルギニンアミドの代替物として、保護基を場合により有するアルギニン又はリシンを反応に使用できることを発見した。例として言及し得る保護基は、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)又はジメトキシフェニルプロピルオキシカルボニル(DZZ)である。特に保護されたアルギニン誘導体が、様々な溶媒に不安定であり得ることが文献に記載されているので、ペプチド化学における改善された安定性の効果を有する新たな保護基の継続的な開発が存在することは、当業者に明らかである。収量に及ぼす正の影響は、保護基又はアミド基に従って反応条件を変えることによって可能である。このことは、当業者によく知られており、本発明はそれにも関する。従って、インスリングラルギン又はプレプロインスリン前駆体由来の匹敵するArg(B31),Arg(B32)インスリン類似体の調製における部分的な切断産物B(31)ヒトインスリン(米国特許第5,656,722号)は、価値のある産物を調製するために利用可能となる。対応する融合タンパク質は、この場合、細胞内で調製される必要はない。また、プロインスリン類似体が、続いて周辺質への及び/又は培養上清への分泌を伴う細菌発現によっても調製され得ることは当業者に明らかである。欧州特許出願第1,364,029(A)号には、一例としてこれが記載されている。本発明は、このような細菌法からの発現後に直接的に得られるArg(B31)ヒトインスリン前駆体の使用にも関する。
さらに、本発明が同様に関係する方法のさらなる技術的な側面がある。欧州特許出願第0,347,781(A)号並びに欧州特許出願第1,364,030(A)号及び第1,364,032(A)号には、高い収量でミニプロインスリンを調製するための酵母ベースの方法が記載されていする。このような方法、又は米国特許第5,656,722号に記載されるアミノ酸残基、すなわち、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asp又はGluを位置A21に有するミニプロインスリンの調製と類似の方法を拡張することによって、これらのミニプロインスリンを、2つの鎖のインスリンへの切断直後にArg(B31),Arg(B32)インスリン類似体に変換できる。
融合タンパク質を介して欧州特許第1,364,032(A)号に記載のとおり発現が生じる場合、トリプシン又は類似のエンドプロテアーゼでプレ部分を除去するのは有利ではない。代わりに、プレ部分又は融合部分を適切に除去するためにインスリン誘導体を切断しない特異的エンドプロテアーゼで認識される切断部位を組み込む。例証としてエンテロキナーゼ(DDDDK)又は活性化第X因子(IEGR)を記載する。本発明はそれにも関する。さらに、その2つの切断反応を、1容器反応において進め得ることは当業者には明らかである。さらなる可能性は、次の工程でのみ融合部分を除去することである。この場合、融合タンパク質部分を、効率的に分泌される多数のタンパク質の誘導体であるよう選択することが可能である。細菌に関して言及し得る例は、DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)、グルタチオンS転移酵素及びヒルジンである。酵母分泌に使用され得る例は、アルブミン又はその誘導体、スーパーオキシドジスムターゼ又はその誘導体、インターロイキン2又はその誘導体及びヒルジン又はその誘導体である。本願において、例証として、ヒルジン誘導体を、細菌発現及び酵母発現の両者のための融合部分として使用する。これに関連して驚くべきことに、ミニプロインスリン部分のフォールディングに負の影響を及ぼすことなく、ヒルジン配列を、連続したヒスチジンのペプチド配列及び/又はエンテロキナーゼの認識部位を表すペプチド配列DDDDKを導入することによってさらに修飾できることを発見した。従って、アフィニティクロマトグラフィーの方法が利用可能となる。本発明は、それにも関する。
さらに、例証として記載した発現システムが、タンパク質の組換え調製のために開発された宿主/ベクター系の小さなセグメントのみを表すという事実は当業者にはよく知られている。従って、標的ペプチドの調製を可能にする宿主/ベクター系も、本発明の一部を形成する。
従って、本発明は、トリプシンにより触媒されるアルギニン又はリシンとの連結反応を経由してインスリン類似体のArg(B31)ヒトインスリン前駆体からのアミノ酸残基Arg(B31)、Arg(B32)又はArg(B31)、Lys(B32)の存在によって特徴付けられるインスリン類似体の調製に関する。これに関連して、反応の驚くべき選択性のため、連結反応を複数の反応サイクルにわたって反復させることもでき、位置B31及びB32以外にさらなる塩基性アミノ酸リシン又はアルギニンを有するインスリン類似体が利用可能となることは、当業者に明らかである。このことは、カップリング反応、末端アミノ酸の脱アミド化又は脱保護を行うこと、及び適切なその後の反応サイクルにおいてその生産物を再度使用することによって達成される。同様に、Arg(B31)、Arg(B32)又はArg(31)、Lys(B32)を既に有する類似体を前駆体として使用することによってこのような生産物を得ることが可能である。同様に、位置B31に、そして、その後遺伝子的にコード可能な任意のアミノ酸(これは、配列中のアルギニン又はリシンである必要はないが、そのC末端が二塩基性配列Arg−Arg、Arg−Lys、Lys−Lys又はLys−Argで特徴付けられる)を含む類自体を調製することが可能である。さらに、本反応は、触媒としてのトリプシンの使用に限定されない。公知市販のラット、ウシ、ブタ若しくはヒトトリプシン又は他のアイソザイム、又はその誘導体若しくは変異体のほかに、以下の酵素:カテプシン、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)由来及びストレプトミセス属(S.グリセウス、S.エクスフォリアタス、S.エリスラエウス(erythraeus)、S.フラジアエ(fradiae)及びS.アルビドフラブス(albidoflavus))由来のトリプシン、トリプターゼ、マスチン、アクロシン、カリクレイン、ヘプシン、プロスタシンI、リシルエンドペプチダーゼ(リシン−C)及びエンドプロテアーゼArg−C(クロストリパイン)を使用することも可能である。
従って、本発明は、インスリン類似体又はその誘導体を調製するための方法であって、ここで、
アミド化され、若しくは保護基でC末端が保護された天然の塩基性アミノ酸を、又は天然の塩基性アミノ酸、若しくはその類似体若しくは誘導体からなりかつC末端でアミド化され、若しくは保護基で保護されたペプチドを、
A鎖及び/若しくはB鎖のC末端アミノ酸が天然の塩基性アミノ酸、若しくはその類似体若しくは誘導体を含む群より選択される出発インスリン類似体、若しくはその誘導体に、
トリプシンの生物活性を有する酵素の存在下で上記1つのC末端アミノ酸に、付加し、
そして得られる修飾されたインスリン類似体を精製し、そして場合により付加されたア
ミノ酸の又は付加されたペプチドのアミド基又はC末端保護基を除去する、
方法に関する。
本発明はさらに、インスリン類似体が、一般式I
Figure 0005331685
[式中、意味は、
(A1−A5)ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A1〜A5のアミノ酸残基、
(A12−A19)ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A12〜A19のアミノ酸残基、
A21 天然のアミノ酸残基、
(B8−B18)ヒトインスリン又は動物インスリンのB鎖の位置B8〜B18のアミノ酸残基、
(B20−B26)ヒトインスリン又は動物インスリンのB鎖の位置B20〜B26のアミノ酸残基、
(A8−A10)ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A8〜A10のアミノ酸残基、
R30 化学結合又は天然のアミノ酸残基、
B1 化学結合又は天然のアミノ酸残基、
B3 天然のアミノ酸残基、
B27、B28
及びB29 天然のアミノ酸残基、
R1 アミノ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
R2 カルボキシ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
R3 アミノ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
R4 化学結合、又はC末端に存在するアミノ酸残基が塩基性アミノ酸を表す1〜3個の天然のアミノ酸残基、
R5 C末端が遊離又はアミド化されたの何れかである1又は2個の塩基性アミノ酸残基であり、
そこで、C末端でR5のN末端に連結されるアミノ酸残基が、天然の塩基性アミノ酸を含む群より選択される]
によって特徴付けられる上述の方法に関する。
本発明はさらに、出発インスリン類似体が、一般式II
Figure 0005331685
[式中、R1、(A1−A5)、(A8−A10)、(A12−A19)、A21、R2、R3、B1、B3、(B8−B18)、(B20−B26)、B27、B28、B29、B30及びR4が、請求項1で定義される通りであり、かつB鎖のC末端アミノ酸残基が、天然の塩基性アミノ酸を含む群より選択される]
によって特徴付けられる上述の方法に関する。
本発明はさらに、アミド化され、又は保護基でC末端が、保護された天然の塩基性アミノ酸が、C末端でアミド化されたアルギニン、又はBoc保護基でC末端を保護されたアルギニンである、上述の方法に関する。
本発明はさらに、修飾されたインスリン類似体が、B鎖のC末端がアミド化されたGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリンであり、出発インスリン類似体は特に、Gly(A21)、Arg(B31)ヒトインスリンである上述の方法に関する。
本発明はさらに、出発インスリン類似体が、出発インスリン類似体のA鎖及びB鎖を含む前駆体タンパク質の組換え発現によって調製される、上述の方法、特に、レプリコンの部分である遺伝子を発現するこの種の方法に関する。
本発明はさらに、細菌又は酵母を宿主細胞として使用する、上述の方法に関する。
本発明はさらに、前駆体タンパク質が発現後に分泌される、特に、そこで前駆体タンパク質が細菌又は酵母の細胞上清から単離される、上述の方法に関する。
本発明はさらに、前駆体タンパク質が、細菌の周辺質から単離される、上述の方法に関する。
本発明はさらに、特許請求の範囲の何れかに記載のとおり得られる前駆体タンパク質を、フォールディングプロセス及び酵素的切断に供する、上述の方法に関する。
本発明はさらに、出発インスリン類似体が、組換え体直接発現によって調製される、上述の方法に関する。
本発明はさらに、トリプシンの生物活性を有する酵素が、ヒトトリプシン、ブタトリプシン、ウシトリプシン、並びにヒトトリプシン、ブタトリプシン及びウシトリプシンの変異体を含む群より選択される、上述の方法に関する。
本発明はさらに、修飾されたインスリン類似体のB鎖のC末端が、その後加水分解反応において脱保護される、上述の方法に関する。
本発明はさらに、得られたインスリン類似体が、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリンである、上述の方法に関する。
本発明はさらに、A鎖及び/又はB鎖のC末端アミノ酸がアミド化された、インスリン類似体又はその誘導体の薬剤としての使用に関する。
本発明は、A鎖及び/又はB鎖のC末端アミノ酸がアミド化された、上述の方法によって得ることのできるインスリン類似体又はその誘導体に関する。
以下に、幾つかの手順的実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。これらの手順的実施例は、限定的な効果を有するよう意図するものではない。
実施例1:インビトロでのフォールディング後の融合タンパク質からのArg(B31)、Gly(A21)インスリンの調製
米国特許第5,663,291号の実施例1には、構造
Figure 0005331685
の正確に折りたたまれたインスリン融合タンパク質の取得が記載されている。
この物質は、米国特許第5,227,293号の実施例5に従いトリプシンとの反応によって、2つの鎖のインスリンに変換され、Arg(B31)、Arg(B31)、Gly(A21)インスリン及びArg(B31)、Gly(A21)インスリンが単離された。
従って、Arg(B31)、Arg(B31)、Gly(A21)インスリン類似体は直接的に得ることが可能であり、一方Arg(B31)、Gly(A21)副産物は修飾されたアルギニン又はリシンとのトリプシン触媒連結反応における前駆体として使用することができた。
実施例2:分泌によって得られており、かつ正確に折りたたまれたプロインスリンを含む融合タンパク質からのArg(B31)、Gly(A21)インスリンの調製
実施例1に対する代替として、融合タンパク質は、また細菌系における分泌によって調製することが可能であった。この場合、融合タンパク質の部分としてのプロインスリン構造は正確に折りたたまれており、「インビトロ」でのリフォールディング工程なしで済ますことができた。国際特許出願公開WO02/068660は、この種類の系を提案している。例えば、Asn(A21)についてのコドンが、この国際特許出願の実施例1において記載されているプラスミドpBpfuHir_InsにおけるGly(A21)についてのコドンによって置換される場合、結果として、一例としてインスリングラルギンを得ることができる融合タンパク質が生じ、そしてさらにArg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンを、実施例1に記載したように、副産物として単離することが可能であった。
その配列を調製するために、以下の構造
Figure 0005331685
を有する新たなプライマーinsu_a21_gly_revが必要であった。
このプライマーを、PCRにおいてプラスミドpBpfuHir_insのDNAに関してプライマーpfu1を使用する国際特許出願公開WO02/068660と同様に使用した。国際特許出願公開WO02/068660の実施例に従ってクローニングすることが可能であるBamH1/Hind3断片をPCR産物から単離することができた。発現後、融合タンパク質を単離し、本願の実施例1に従ってさらに処理した。
前駆体Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンを、融合タンパク質の細菌分泌によって直接的に得られ得ることも、当業者に明らかである。本発明は、それにも関する。
実施例3:アルギニンアミドとのカップリングによるArg(B31)、Gly(A21)前駆体からのArg(B31)、Arg(B32)、Gly(A21)インスリンの調製
21A−Gly−30B a L−Arg−インスリン100mgをアルギニンアミド溶液0.95mL(446g/L)に溶解し、1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)0.13mL及びDMF2mLを添加した。反応混合物を12℃に冷却し、トリプシン0.094mL(0.075mg、Roche Diagnostics)を添加することによって開始した。
8時間後、TFAをpH2.5まで添加することによって反応を停止させ、HPLCによって分析した。60%を超えるArg(B31)、Arg(B32)、Gly(A21)ヒトインスリンが生成した。トリプシン阻害剤溶液を添加した後、米国特許第5,656,722号と同様に、アミド化された類似体を精製した。次に、アミド化されたインスリン類似体を、酸の存在下で数時間加水分解して、Arg(B31)、Arg(B32)、−Gly(A21)ヒトインスリンを得た。
実施例4:リシンアミドとのカップリングによるArg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリン前駆体からのArg(B31)、Lys(B32)、Gly(A21)ヒトインスリンの調製
21A−Gly−30B a L−Arg−インスリン100mgをリシンアミド溶液0.93mL(400g/L)に溶解し、1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)0.13mL及びDMF2mLを添加した。反応混合物を12℃に冷却し、トリプシン0.094mL(0.075mg、Roche Diagnostics)を添加することによって開始した。
8時間後、TFAをpH2.5まで添加することによって反応を停止させ、HPLCによって分析した。Arg(B31)、Lys(B32)−NH2、Gly(A21)ヒトインスリンを生成させ、米国特許第5,656,722号と同様に、トリプシン阻害剤溶液の添加後に精製した。次に、酸の存在下で、アミド化されたインスリン類似体を数時間加水分解し、Arg(B31)、Lys(B32)、Gly(A21)ヒトインスリンを得た。
実施例5:H−Arg(Boc)2−OHとのカップリングによるArg(B31)、Gly(A21)前駆体からのArg(B31)、Arg(B32)、Gly(A21)インスリンの調製
Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリン0.25mgをエッペンドルフ容器中で0.1Mピリシン酢酸緩衝液(pH5.6)11μL、0.1Mピリシン酢酸緩衝液(pH5.6)中のH−Arg(Boc)2−OH×HCl130g/L溶液60μL及びDMF119μLと混合し、トリプシン(Roche Diagnostics)と共に12℃で数時間インキュベートした。
25%水、25%アセトニトリル及び50%トリフルオロ酢酸の混合物を添加することによって、反応を停止させた。混合物を凍結乾燥し、保護基を除去するために、TFA1mLに溶解し、室温で約3時間放置した。Arg(B31)、Arg(B32)−NH2、Gly(A21)ヒトインスリンの精製は、例証として、米国特許第5,656,722号と同様に行った。
実施例6:H−Lys(Boc)−OtBuとのカップリングによるArg(B31)、Gly(A21)前駆体からのArg(B31)、Lys(B32)、Gly(A21)インスリンの調製
Arg(B31)、−Gly(A21)ヒトインスリン50mgをH−Lys(Boc)−OtBu溶液(0.5g/mL、pH5)0.62mLに溶解し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mLを添加した。混合物を12℃に冷却し、トリプシン(Roche Diagnostics)2mgを添加した。
10時間を超えた後、50%濃度のアセトニトリル/水混合物2mL及びTFA(100%)1mLを添加することによって、反応を停止させた。混合物を凍結乾燥し、Boc保護基を除去するために、TFA1mLに溶解し、室温で約3時間放置した。Arg(B31)、Lys(B32)、OHの精製は、例証として、米国特許第5,656,722号と同様に行った。
実施例7:パン酵母によるヒルジンArg(B31)、Gly(A21)インスリン融合タンパク質の分泌のための遺伝子配列
欧州特許出願公開第1,364,032(A)号により、酵母における価値のある医薬的に関心のある他のタンパク質の発現及び分泌のための融合パートナーとしてのヒルジンの使用が提唱された。
欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の実施例1には、ヒルジン誘導体とミニプロインスリンとからなる融合タンパク質を調製するための宿主−ベクター系が記載されている。この系は、一例として、位置A21でアミノ酸アスパラギンが米国特許第5,656,722号において記載されるようなアミノ酸によって置換したミニプロインスリンを調製するために使用することができる。
プライマーinsnco1revが置換され、位置A21におけるコドンが変化するよう設計される場合、発現ベクターを、欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の例と同様に構築することが可能である。
Arg(B31)、GlyA(21)ヒトインスリンをコードする配列を調製するために、例えば、次のプライマーを合成した。
Figure 0005331685
この場合、プライマーは、インスリン類似体のアミノ酸A15〜A21をコードする遺伝子セグメントを完全にカバーする。このプライマーと前記出願の実施例1由来の配列番号4のプライマーとの組み合わせ、及びテンプレートとしてのプラスミドpADH2Hir_insの使用によって、制限酵素Kpnl及びNcoIによる消化後それに伴って開かれる発現ベクター中に挿入されるDNA断片のPCRによる生成が可能となり、所望の融合タンパク質が構成される。
本ベクターを、pADH2Hir_ins_glyA21と命名した。欧州特許出願公開第1,364,032(A)号に従って、融合タンパク質を発現させ及び処理して、Gly(A21)−ミニプロインスリンを得、実施例2に従って、Gly(A21)−ミニプロインスリンをArg(B31)、Lys(B32)、Gly(A21)ヒトインスリンに変換した。
実施例8:パン酵母によるArg(B31)、Gly(A21)前駆体の直接的な分泌のための遺伝子配列
実施例7に記載したプラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAを使用して、Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンの直接的な分泌のためのベクターコンストラクトを調製した。
次のプライマーを合成した。
Figure 0005331685
それは、α要素のC末端、Lys−Argのためのコドン及びミニプロインスリン配列のN末端をカバーする。
Figure 0005331685
このプライマーは、プラスミドpADH2Hir_ins_glyA21中にクローニングされたインスリン類似体配列の3’末端とハイブリダイズする。PCR(標準的な条件)によって、制限酵素KpnI及びNcoIによる消化後に、開かれる発現ベクター中に挿入されるDNA断片を生成させ、所望の融合タンパク質を構成した。酵母Y79系のコンピテント細胞において形質転換した。その後、形質転換体を実施例7に記載されるとおり発現させた。Arg(B31)、Gly(A21)−ミニプロインスリンを公知の方法(欧州特許出願公開第0,229,998(A)号)によって単離し、実施例2のとおり、Arg(B31)、Lys(B32)、Gly(A21)ヒトインスリンに変換した。
実施例9:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)によるヒルジン−Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリン融合タンパク質の分泌のための遺伝子配列
発現ベクターのクローニングは、欧州特許出願公開第1,364,032号(A)の実施例4と同様に行った。この場合、配列プライマーpichia_H_Irev2の代わりに、プライマーins_gly_rev2を使用し、その後、そのPCR産物
Figure 0005331685
でのGly(A21)ヒトインスリンの発現の見込みが可能となった。
得られたプラスミドを、pPich_Hir_Ins−GlyA21と命名した。二塩基性鎖末端を有する類似体を生成させるための出発材料としてのArg(B31)、Gly(A21)−ミニプロインスリンの精製を、記載されるとおり行った。
実施例10:ピキア・パストリスによるArg(B31)、Gly(A21)前駆体の直接的な分泌のための遺伝子配列
適切な発現ベクターを、実施例7と同様に構築した。プラスミドpPich_Hir_ins−GlyA21並びに2つのプライマーpich_insgly_dirf及びpich_insgly_dirrevのDNA
Figure 0005331685
実施例11:酵母分泌によって得られ、正確に折りたたまれたプロインスリンを含み、その融合部分がHis6アミノ酸配列を含む融合タンパク質からのArg(B31)、Gly(A21)−インスリンの調製
プラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAは、テンプレートとして機能する。2つのプライマーを合成した。
Figure 0005331685
プライマーは、Refludan(R)配列の連続した6個のヒスチジン及びアミノ酸3〜8及び9(部分的)のためのコドンを含んだ。
Figure 0005331685
プライマーは、連続した6個のヒスチジンのコドン、レピルジン配列のアミノ酸1及び2のコドン、及びLys−Argプロセッシング部位を含み、制限酵素Kpn1のための認識部位をカバーする、α要素の配列コドンを含む。プラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAは、本願の実施例7由来のプライマーalpha_LT_H6_hirf1及びins_gly_a21_revを使用する標準的なPCRにおいてテンプレートとして機能する。反応産物を単離し、アリコートをプライマーalpha_LT_H6_hirf2及びins_gly_a21_revを使用する第二のPCRのためのテンプレートとして使用した。記載されるとおり、反応産物をKPN1及びNco1で処理した後、クローニングした。結果としてプラスミドpADH2_LT_H6_Hir_ins_glyA21が生じた。Y79をプラスミドDNAで形質転換した後、融合タンパク質を発現させた。遠心分離によって細胞を上清から分離し、そして上清を例えばSartorius製のメンブレンフィルターを通し、Invitrogen ProBond TM精製システムのためのプロトコルに従ったNi2+アフィニティクロマトグラフィーによって濃縮した。代替法としての透析及び/又は濾過若しくはゲル濾過によって溶出緩衝液を除去した後、融合タンパク質を公知の方法で処理して、Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンを得、次いでインスリングラルギンに変換することができた。
実施例12:酵母分泌によって得られ、正確に折りたたまれたプロインスリンを含む融合タンパク質で、その融合タンパク質が酵素エンテロキナーゼによって除去される、該融合タンパク質からのArg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンの調製
プラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAは、出発材料として機能する。本願の実施例7由来のプライマーins_gly_a21_rev及び出願公開WO02/070722A1の実施例1由来のhirf1を使用した。この目的のために、2つの新たなプライマーを調製した。
Figure 0005331685
プライマーは、ミニプロインスリン配列のアミノ酸B1〜B7及びB8(部分的)をカバーし、エンテロキナーゼのための認識部位を表すアミノ酸配列Asp−Asp−Asp−Asp−Lysのコドンを含む。
Figure 0005331685
逆方向プライマーは、レピルジン配列のアミノ酸60〜65をカバーし、エンテロキナーゼの認識部位を表すアミノ酸配列Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号
13)のコドンを含む。第一に、プライマーペア、hirf1/Hir_entero_insrev及びHir_entero_insf/ins_gly_a21_revを使用して、2回のPCRを行った。反応産物を単離した。その材料のアリコートを混合し、その混合物をプライマーペアhirf1/ins_gly_a21_revのためのテンプレートとして、第三のPCRにおいて使用した。記載のとおり、反応産物をクローニングした。その結果、ベクターpADH2Hir_ins_glyA21が生じた。記載のとおり、融合タンパク質を調製した。
エンテロキナーゼを使用して、融合タンパク質を切断した。該酵素は、市販されている。
特定の製造元の情報に従った酵素の量を使用する切断反応を、エンテロキナーゼ緩衝液(20mMトリス/HCl、50mM NaCl、2mM CaCl2、pH7.4)で行った。切断は通常、宿主細胞の除去及びその後の後処理工程後に実施した。しかしながら、切断は、最適な反応条件が調整された後、発酵後の上清で直接行うことも可能である。
実施例13:酵母分泌によって得られ、及び正確に折りたたまれたプロインスリンを含む融合タンパク質で、その融合部分が酵素エンテロキナーゼによって除去され、かつ及びポリヒスチジン配列を含む、該融合タンパク質からのArg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンの調製
プラスミドpADH2_LT_H6_Hir_ins_glyA21のDNA及びプライマーHir_entero_insrev、Hir_entero_insf及びins_gly_a21_revを使用し、以下の配列を有するプライマーalpha_lt_enterofによってプライマーhirf1を置換した。
Figure 0005331685
次に、実施例12と同様に、ヒルジン融合部分が、位置3においてN末端で開始する6個のヒスチジンによって伸長され、及び配列DDDDK(配列番号14)によって位置72からC末端で伸長された融合タンパク質をコードするベクターpADH2_LT_H6_Hir_entero_ins_glyA21を構築した。
次に、実施例11及び12に記載した方法を組み合わせることによって、Arg(B31)、Gly(A21)ヒトインスリンを調製した。
実施例14:パン酵母によるヒルジンdes−Phe(B1)、Arg(B31)、Gly(A21)インスリン融合タンパク質の分泌のための遺伝子配列
形質転換及び発現は、実施例7と同様に行った。
2つのプライマー配列を合成した。
Figure 0005331685
実施例7由来のプラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAは、テンプレートとして機能する。互いに独立して2回のポリメラーゼ連鎖反応を行った。反応1において、プライマーDesphe_rev1及び欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の実施例1由来のプライマー配列番号4を使用し、反応2において、本願の実施例7由来のプライマーins_gly_a21_rev及びプライマーDesphef1を使用した。2回の反応の反応産物を単離し、生産物のアリコートを第三の反応において組み合わせ、欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の実施例1由来のプライマー配列番号4及びins_gly_a21_revからなるプライマーペアのテンプレートとして使用した。実施例7に記載のとおり、第三の反応の反応産物をクローニングし、形質転換し及び発現させた。得られた融合タンパク質は、二塩基性鎖末端を有する相応するインスリン類似体を調製するための出発材料として機能する。
実施例15:パン酵母によるヒルジンAla(B31)、Arg(B32)、Gly(A21)インスリン融合タンパク質の分泌のための遺伝子配列
2つのプライマー配列を合成した。
Figure 0005331685
実施例7由来のプラスミドpADH2Hir_ins_glyA21のDNAは、テンプレートとして機能する。互いに独立して2回のポリメラーゼ連鎖反応を行った。反応1において、プライマーAla_b31rev1及び欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の実施例1由来のプライマー配列番号4を使用し、反応2において、本願の実施例7由来のプライマーins_gly_a21_rev及びプライマーAla_b31f1を使用した。2回の反応の反応産物を単離し、生産物のアリコートを第三の反応において組み合わせ、欧州特許出願公開第1,364,032(A)号の実施例1由来のプライマー配列番号4及びins_gly_a21_revからなるプライマーペアのテンプレートとして使用した。実施例7に記載のとおり、第三の反応の反応産物をクローニングし、形質転換し及び発現させた。得られた融合タンパク質は、二塩基性鎖末端を有する対応するインスリン類似体を調製するための出発材料として機能する。
実施例16:パン酵母によるLys(B31)前駆体の直接的な分泌のための遺伝子配列
2つのプライマーを合成した。
Figure 0005331685
出願公開WO02/070722A1の実施例1由来のプラスミドpADH2Hir_insのDNAは、2回のポリメラーゼ連鎖反応のためのテンプレートとして機能する。反応1において、プライマーLys_b31f1及びinsnco1rev(WO02/070722A1由来の配列番号6)を使用し、反応2において、本願の実施例7由来のプライマーLys_b31rev及びalpha_insf1を使用した。標準的な反応を行い、得られたPCR断片を単離した。2つの生産物のアリコートは組み合わされ、プライマーinsnco1rev及びWO02/070722A1由来の配列番号6を使用する第三の反応のためのテンプレートとして機能する。実施例8に記載のとおり、得られたPCR断片をクローニングし、そして発現させた。結果として、リシルエンドペプチダーゼでB(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリンに、そしてその後それぞれの二塩基性類似体に変換可能なB30−アルギニンアミドインスリン又はB30リシンアミド−インスリンを調製するための中間体として変換されるLys(B31)−ミニプロインスリンが生じた。
実施例17:リシルエンドペプチダーゼによる切断
独国特許第3844211号に記載のとおり、インスリン前駆体をリシルエンドペプチダーゼ(LEP)と反応させた(実施例1)。この目的のため、Lys(B31)−ミニプロインスリン10mgをトリス緩衝液(pH8.0)に溶解し、リソバクター酵素前駆体(enzymogene)由来のLEPを添加した(1mg/mL濃度の水溶液0.01mL、Merckbiosciences)。インキュベーションを室温で2時間行い、RP−HPLC(Nucleosil 120−5カラム)によって精製した。結果としてB(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリンが生成した。
実施例18:アルギニンアミドとのカップリングによるB(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリン前駆体からのArg(B30)−インスリンの調製
B(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリン100mgをアルギニンアミド溶液0.95mL(446g/L)に溶解し、1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)0.13mL及びDMF2mLを添加した。反応混合物を12℃に冷却し、トリプシン0.094mL(0.075mg、Roche Diagnostics)を添加することによって開始した。
8時間後、TFAをpH2.5まで添加することによって反応を停止させ、HPLCによって分析した。60%を超えるArg(B30)−インスリンアミドが生成した。トリプシン阻害剤溶液を添加後、米国特許第5,656,722号と同様に、アミド化類似体を精製した。次いでアミド化類似体を酸の存在下で数時間加水分解してArg(B30)インスリンを得るか、又はアミドを薬剤として直接使用することが可能であった。
実施例19:リシンアミドとのカップリングによるB(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリン前駆体からのLys(B30)−インスリンの調製
B(1〜29)−A(1〜21)スプリットインスリン100mgをリシンアミド溶液0.93mL(400g/L)中に溶解し、1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)0.13mL及びDMF2mLを添加した。反応混合物を12℃に冷却し、トリプシン0.094mL(0.075mg、Roche Diagnostics)を添加することによって出発した。8時間後、TFAをpH2.5まで添加することによって反応を停止させ、HPLCによって分析した。Lys(B30)−インスリンアミドが生成し、米国特許第5,656,722号と同様に、トリプシン阻害剤溶液の添加後に精製した。次に、アミド化されたインスリンを酸の存在下で数時間加水分解してLys(B30)−インスリンを得るか、又は薬剤として直接使用することが可能であった。

Claims (15)

  1. C末端でアミド化されたアルギニン、又は保護基でC末端が保護されたアルギニンを、一般式II
    Figure 0005331685
    [式中、
    (A1−A5) ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A1〜A5のアミノ酸残基、
    (A12−A19) ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A12〜A19のアミノ酸残基、
    A21 天然のアミノ酸残基、
    (B8−B18) ヒトインスリン又は動物インスリンのB鎖の位置B8〜B18のアミノ酸残基、
    (B20−B26) ヒトインスリン又は動物インスリンのB鎖の位置B20〜B26のアミノ酸残基、
    (A8−A10) ヒトインスリン又は動物インスリンのA鎖の位置A8〜A10のア
    ミノ酸残基、
    B30 化学結合又は天然のアミノ酸残基、
    B1 化学結合又は天然のアミノ酸残基、
    B3 天然のアミノ酸残基、
    B27、B28及びB29 天然のアミノ酸残基、
    R1 アミノ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
    R2 カルボキシ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
    R3 アミノ基又は1〜3個の天然のアミノ酸残基、
    R4 C末端に存在するアミノ酸残基が塩基性アミノ酸を表す1〜3個の天然のアミノ酸残基、
    である]
    で表される出発インスリン類似体若しくはその誘導体のB鎖のC末端アミノ酸残基に、トリプシンの生物活性を有する酵素の存在下で付加し、
    そして得られる一般式I
    Figure 0005331685
    [式中、R1、(A1−A5)、(A8−A10)、(A12−A19)、A21、R2、R3、B1、B3、(B8−B18)、(B20−B26)、B27、B28、B29、B30及びR4は、上記で定義される通りであり、
    R5は、C末端が遊離であるか又はアミド化されたか又はC末端保護基で保護されたかの何れかであるアルギニン残基である]
    で表される修飾されたインスリン類似体を精製し、そして場合により、付加されたアルギニン残基のアミド基又はC末端保護基を除去する、
    インスリン類似体又はその誘導体を調製するための方法。
  2. 修飾されたインスリン類似体が、B鎖のC末端がアミド化されたGly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリンである、請求項1に記載の方法。
  3. 出発インスリン類似体が、Gly(A21)、Arg(B31)ヒトインスリンである、請求項2に記載の方法。
  4. 出発インスリン類似体が、出発インスリン類似体のA鎖及びB鎖を含む前駆体タンパク質の組換え発現によって調製される、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. レプリコンの部分である遺伝子を発現する、請求項4に記載の方法。
  6. 細菌又は酵母を、宿主細胞として使用する、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前駆体タンパク質が発現後に分泌される、請求項4〜6の何れか一項に記載の方法。
  8. 前駆体タンパク質が細菌又は酵母の細胞上清から単離される、請求項7に記載の方法。
  9. 前駆体タンパク質が、細菌の周辺質から単離される、請求項6に記載の修飾されたインスリン類似体を調製するための方法。
  10. 請求項4〜7の何れか一項に記載のとおり得られる前駆体タンパク質を、フォールディングプロセス及び酵素的切断にかける、請求項4〜7の何れか一項に記載の方法。
  11. 出発インスリン類似体が、組換え体直接発現によって調製される、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  12. トリプシンの生物活性を有する酵素が、ヒトトリプシン、ブタトリプシン、ウシトリプシン、並びにヒトトリプシン、ブタトリプシン及びウシトリプシンの変異体を含む群より選択される、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
  13. 酵素が、リシルエンドペプチダーゼ活性を有する、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
  14. 修飾されたインスリン類似体のB鎖のC末端が、その後加水分解反応において脱保護される、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
  15. 得られるインスリン類似体が、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリンである、請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
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