JP5331037B2 - トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材 - Google Patents

トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材 Download PDF

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Description

本発明は、トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材に関する。更に詳しくは、本発明は、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、圧縮永久歪も小さく、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用軟質ポリウレタンフォームに関する。また、このトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなり、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材に関する。
各種プリンタ等の画像形成装置では、一様に帯電させた像担持体に選択的な露光を施して潜像を形成し、この潜像をトナーで顕像化し、形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより画像が記録される。このような装置では、適時、トナーを補給しなければならないが、このトナーの補給には、像担持体、帯電器、現像器、クリーニング器等が一体化されたトナーカートリッジが用いられており、使用者がカートリッジを装置本体に着脱することにより、トナーの補給、或いは寿命となった像担持体の交換等をすることができ、メンテナンスが容易である。このプロセスカートリッジ方式は、多くの画像形成装置において採用されているが、トナーが漏出すると画像不良を生じるため、カートリッジ本体の枠体間、現像器の現像スリーブと現像枠体との隙間等の樹脂成形品の当接面などにトナーシール材が介装されている。また、クリーニング器の像担持体の端部と廃トナー留めとの隙間には、廃トナーが漏出しないように、像担持体の端部側にトナーシール材が介装されている。
トナーシール材としては、ポリウレタンフォーム等の各種の樹脂フォーム、軟質ゴム、或いはエラストマー等の種々の弾性体からなるものが用いられている。また、樹脂フォームの場合、一般に、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、優れたシール性を有する製品が用いられており、よりシール性を高めるため、熱プレスされた樹脂フォームが用いられることも多い。更に、微細なセルを有するフォームとするためには、粘度の高いポリオールを用いる必要があるが、汎用のポリオールであるポリエーテルポリオールは一般に粘度が低く、微細セルの形成が難しく、十分なシール性を有するフォームを得ることは困難である。また、トナーシール材には、設計の自由度を高めるため、湿熱下等における圧縮永久歪が小さいこと等の特性も要求されている。更に、画像形成装置では、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性が必要とされるが、このような高い難燃性を付与するためには、これまではハロゲン系難燃剤を用いざるを得ない状況であった。
また、上記のような微細なセルを有するポリウレタンフォームを安価に、良好に得ることを目的として、ポリオール成分として、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとの反応により得られた水酸基末端プレポリマーを用いた製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。更に、硬度が低く柔軟なトナーシール材として、ポリイソシアネートと、特定のポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを含有するフォーム原料を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームを用いたトナーシール材が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2006−328295号公報 特開2003−48944号公報
しかし、熱プレスしたフォームでは、シール材が硬すぎ、反発弾性が過度に大きくなり、カートリッジ本体の枠体等の樹脂成形品が変形したり、亀裂が生じたりすることがある。また、特許文献1に記載されたポリウレタンフォームの製造方法は、硬いフォーム原料を得ることを目的としており、難燃性については全く言及されておらず、シール材として用いることについても記載はない。更に、引用文献2に記載されたトナーシール材は、硬度が低く柔軟であるかもしれないが、難燃性については何ら配慮されていない。
また、このような用途に、既存の止水用フォームを転用することが考えられるが、このフォームは一般に湿熱歪が大きいという問題がある。プロセスカートリッジ、或いはこれが組み込まれた製品は、船輸送されることも多いが、輸送時に高温多湿等の過酷な雰囲気に曝されることがある。その際にカートリッジ本体の枠体間等に圧縮された状態で介装されたトナーシール材は、長期間、圧縮に対する反発力が維持されなければならない。即ち、圧縮永久歪が小さくなければならない。
本発明は、上記の従来の問題点を解決するものであり、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、圧縮永久歪も小さく、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム(以下、「トナーシール用フォーム」と略記することもある。)を提供することを目的とする。また、このトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなり、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材を提供することを目的とする。
粘度の高い特定のポリオールと、多量のエチレンオキサイド単位を含有する特定のポリオールとを併用し、且つ難燃剤として縮合リン酸エステル系難燃剤等のリン系液状難燃剤を用いることにより、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、ハロゲン系難燃剤及び無機系難燃剤等を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用フォームとすることができる。また、このトナーシール用フォームを用いることにより、優れたシール性等を備えるトナーシール材とすることができる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下のとおりである。
1.ポリオール、ポリイソシアネート及びリン系液状難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなるトナーシール用軟質ポリウレタンフォームであって、上記ポリオールは、25℃における粘度が15000〜30000mPa・sであるポリオール(a)と、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(b)とを含有し、上記ポリオールを100質量%とした場合に、上記ポリオール(a)の含有量は50〜98質量%であり、上記ポリオール(b)の含有量は2〜23質量%であって、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.3〜2.1質量%であることを特徴とするトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
2.上記リン系液状難燃剤が縮合リン酸エステル系難燃剤である上記1.に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
3.JIS K 7222により測定した密度が17〜27kg/mである上記1.又は2.に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
4.JIS K 6400により測定した測定した硬さが65〜135Nである上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
5.JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が0.2〜2.2cm/cm/秒である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
6.JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が2.0〜10.0%である上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
7.上記縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である上記2.乃至6.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
7.上記1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなることを特徴とするトナーシール材。
本発明のトナーシール用フォームでは、フォーム原料に、粘度の高いポリオール及び多量のエチレンオキサイド単位が含有されるポリオールが用いられており、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、トナーの漏出が確実に防止されるトナーシール用フォームとすることができる。また、圧縮永久歪が小さく、経時後も十分なシール性が維持される。更に、難燃剤が液状であるため、より多量に配合しても圧縮永久歪が大きくなることがなく、且つ家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を有するトナーシール用フォームとすることができる。
また、リン系液状難燃剤が縮合リン酸エステル系難燃剤である場合は、より容易に、通気性が低く、且つ柔軟であり、優れた難燃性を有するトナーシール用フォームとすることができる。
更に、JIS K 7222により測定した密度が17〜27kg/mである場合、及びJIS K 6400により測定した硬さが65〜135Nである場合は、より通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、優れたシール性を有するトナーシール用フォームとすることができる。
また、JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が0.2〜2.2cm/cm/秒である場合は、トナーの漏出をより十分に防止することができる。
更に、JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が2.0〜10.0%である場合は、経時によるへたりが抑えられ、優れたシール性が維持されるトナーシール用フォームとすることができる。
また、縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である場合は、フォーム原料に所要量の難燃剤を配合することにより、容易に所定量のリンを含有するトナーシール用フォームとすることができる。
本発明のトナーシール材は、本発明のトナーシール用フォームを用いてなるため、圧縮永久歪が小さく、過酷な雰囲気に曝されても、適度な硬度と優れた耐湿熱老化性が損なわれることがなく、経時後も十分なシール性が維持される。また、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を併せて有する。
画像形成装置の1種であるプリンタにおいて、トナーカートリッジが配設される位置を説明するための模式図である。
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム
本発明のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート及びリン系液状難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなり、ポリオールは、25℃における粘度が15000〜30000mPa・sであるポリオール(a)と、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(b)とを含有し、ポリオールを100質量%とした場合に、ポリオール(a)の含有量は50〜98質量%であり、ポリオール(b)の含有量は2〜23質量%であって、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.3〜2.1質量%である。
上記「ポリオール」としては、粘度の高いポリオール(a)と、エチレンオキサイド単位の含有量が多いポリオール(b)とが併用される。また、ポリオール(a)、(b)と、少なくとも1種の他のポリオールとを併用することもできる。
上記「ポリオール(a)」は、25℃における粘度が15000〜30000mPa・sであり、且つ所定の質量割合で含有されることを除いて特に限定されない。このポリオール(a)としては、所定の粘度を有するヒドロキシル末端プレポリマー、ポリエステルポリオール及びポリエステルエーテルポリオールを用いることができる。
尚、ポリオール(a)の粘度はB型粘度計により、ローター番号 4、ローターの回転速度 12回転/分の条件で測定した値である。
ポリオール(a)の粘度は17000〜27000mPa・s、特に18000〜25000mPa・sであることが好ましい。更に、ポリオール(a)の含有量は、ポリオールの全量を100質量%とした場合に、50〜98質量%であり、60〜95質量%、特に70〜95質量%とすることができる。また、ポリオール(a)の官能基数及び数平均分子量は特に限定されない。ポリオール(a)の官能基数は、通常、2又は3であり、数平均分子量は、3000〜15000、特に4000〜14000であることが好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量が上記の範囲、特に4000〜14000であれば、容易に所定の粘度を有するポリオールとすることができ、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟であり、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。
上記「ポリオール(b)」は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位(以下、「EO単位」と略記する。)の含有量が60質量%以上(100質量%であってもよい。)であり、且つ所定の質量割合で含有されることを除いて特に限定されない。このポリオール(b)の含有量は、セルが微細であって通気性が低く、且つ硬度が低く柔軟なトナーシール用フォームとするためには、ポリオールの全量を100質量%とした場合に、2〜23質量%であり、3〜15質量%であることが好ましい。
ポリオール(b)の官能基数は特に限定されず、2又は3、特に3であることが好ましい。ポリオール(b)の官能基数が3であれば、難燃性に優れ、より圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。更に、ポリオール(b)の数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に3000〜4000であることが好ましい。ポリオール(b)の数平均分子量が上記の範囲、特に3000〜4000であれば、難燃性に優れ、より圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。
ポリオールとしては、ポリオール(a)及び(b)を除く少なくとも1種の他のポリオールを併用することができる。この他のポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、特に2種以上を併用する必要はなく、1種のみで十分である。他のポリオールは特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、他のポリオールとしては、アルキレンオキサイドの全量を100質量%とした場合に、EO単位の含有量が30質量%未満、特に15質量%以下、更に10質量%以下(EO単位が含有されていなくてもよい。)のポリオールが好ましい。
他のポリオールの官能基数も特に限定されず、2又は3、特に3であることが好ましい。他のポリオールの官能基数が3であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。また、他のポリオールの数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に2000〜4000であることが好ましい。他のポリオールの数平均分子量が上記の範囲、特に2000〜4000であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。この他のポリオールは、ポリオールの全量を100質量%とした場合に、この全量から、ポリオール(a)と(b)との合計を差し引いた含有量になる。
他のポリオールとしては、上記の他のポリオールの他に、官能基数が3であり、数平均分子量が250〜1400であるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール(以下、「低分子量トリオール」という。)の少なくとも一方を併用することもできる。この低分子量トリオールの併用によって、硬度をより低下させることができる。併用する他のポリオールの官能基数が3でない場合は、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。また、数平均分子量が250未満であると、トナーシール用フォームの硬度を十分に低下させることができないことがある。一方、1400を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。
低分子量トリオールの数平均分子量は、250〜1000、特に250〜700であることが好ましい。このような低分子量のトリオールを併用することにより、より圧縮永久歪の小さいトナーシール用フォームとすることができ、経時後も優れたシール性が維持される。更に、この低分子量トリオールとしては、ポリエーテルポリオールが特に好ましく、ポリエーテルポリオールであれば、硬度が十分に低く、且つ圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。
低分子量トリオールの含有量は特に限定されないが、低分子量トリオールを除くポリオールの合計を100質量部とした場合に、10〜60質量部とすることができ、20〜40質量部であることが好ましい。低分子量トリオールの含有量が10質量部未満であると、フォームの硬度を十分に低下させることができないことがある。一方、60質量部を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。
他のポリオールとしては、トナーシール用フォームの低い通気性及び硬度、並びに優れた圧縮永久歪等が損なわれない範囲で、上記の特定のポリオールの他に、ポリカーボネート系ポリオール、ポリジエン系ポリオール等が含有されていてもよい。これらの特殊な他のポリオールは、1種のみであってもよく、2種以上が含有されていてもよい。
上記「ポリイソシアネート」は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に一般に使用されるポリイソシアネートを用いることができる。このポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDIの他、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを用いることができる。更に、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを用いることもできる。これらの他、プレポリマー型のポリイソシアネートを用いることもできる。
ポリイソシアネートは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
また、ポリオールとポリイソシアネートとは、イソシアネートインデックスが95〜120、特に100〜115となる質量割合で使用することができる。
上記「リン系液状難燃剤」としては、リン酸エステル系、ポリリン酸系等の有機リン化合物が用いられ、これらのうちではリン酸エステル系難燃剤、特に縮合リン酸エステル系難燃剤が好ましい。液状難燃剤を用いた場合、優れた圧縮永久歪が損なわれることがなく、経時によるシール性の低下が防止される。また、液状難燃剤としては、塩素、臭素等のハロゲンを含有するハロゲン含有タイプもあるが、ハロゲンは環境の面で問題があるため、本発明では、リン系液状難燃剤を用いる。
リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート及びクレジルジ2,6−キシレニルホスフェート等が挙げられる。
また、特に好ましいリン酸エステル系難燃剤である縮合リン酸エステル系難燃剤としては、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート及びビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート等が挙げられる。縮合リン酸エステル系難燃剤は、モノマー型の難燃剤と比べて高分子量であるため揮発し難く、可塑化作用もあるため、フォーム原料の粘度を適度に低下させることもできる。また、トナーシール用フォームの機械的強度等を低下させることもない。
リン系液状難燃剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい
フォーム原料にリン系液状難燃剤を含有させることにより、生成するトナーシール用フォームにリン(リン元素)が含有されることになる。このリンの含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量した場合に、0.3〜2.1質量%(トナーシール用フォームを100質量%とする。)であり、0.7〜2.0質量%であることが好ましい。リンの含有量が0.75〜3.00質量%、特に0.7〜2.0質量%であれば、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を有し、且つ圧縮永久歪が十分に小さいトナーシール用フォームとすることができる。
縮合リン酸エステル系難燃剤を用いる場合、この難燃剤におけるリン(リン元素)の含有量は特に限定されないが、縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンは10〜20質量%、特に12〜18質量%含有されていることが好ましい。縮合リン酸エステル系難燃剤におけるリンの含有量が10〜20質量%であれば、フォーム原料に所定量の縮合リン酸エステル系難燃剤を含有させることにより、前記のように、リンの含有量が0.3〜2.1質量%であるトナーシール用フォームとすることができる。
尚、縮合リン酸エステル系難燃剤におけるリンの含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量することができる。
フォーム原料には、ポリオール、ポリイソシアネート及びリン系液状難燃剤の他、発泡剤、触媒、整泡剤等が含有される。また、必要に応じてその他の助剤等を含有させることもできる。
発泡剤としては、通常、水を用いる。この水は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等の各種の水を用いることができる。トナーシール用フォーム製造時の水の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、2〜6質量部とすることができ、3〜5質量部であることが好ましい。水が2〜6質量部であれば、所定の密度、硬度及び圧縮永久歪等を有するトナーシール用フォームとすることができる。
触媒としては、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等の3級アミン化合物などのアミン系触媒を用いることができる。また、スタナスオクトエート等の有機錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等の有機ニッケル化合物などの金属系触媒を用いることもできる。この触媒としてはアミン系触媒、特にトリエチレンジアミンが好ましい。触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.1〜1.0質量部、特に0.2〜0.5質量部とすることができる。
整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体を用いることができる。更に、ポリシロキサンに有機官能基を付加した特殊な整泡剤を用いることもできる。このように、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が用いられることが多い。整泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。整泡剤の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.5〜2.0質量部、特に0.8〜1.5質量部とすることができる。
また、必要に応じて用いられる助剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びフォーム原料の粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための各種の希釈剤などが挙げられる。これらはトナーシール用フォームの硬度、圧縮永久歪等が損なわれない範囲で適量を含有させることができる。
尚、発泡剤、触媒、整泡剤等は、通常、ポリオールに配合され、反応時にポリイソシアネートと混合される。
本発明のトナーシール用フォームの製造方法は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造における一般的な方法をそのまま採用することができる。また、このトナーシール用フォームは、カートリッジ本体の枠体等の樹脂製の部材を化学的に侵す(所謂、ケミカルアタック)ことがなく、過酷な雰囲気に曝されても、適度な硬度、及び優れた耐湿熱老化性等がほとんど低下せず、優れたシール性が長期に渡って維持され、トナーの漏洩が十分に防止される。
[2]トナーシール材
本発明のトナーシール材は、本発明のトナーシール用フォームを用いてなることを特徴とする。
本発明のトナーシール用フォームを用いてなるトナーシール材であれば、過酷な雰囲気に曝されても長期に渡って、適度な硬度、及び優れた耐湿熱老化性等が維持され、圧縮永久歪が小さく、トナーの漏出が十分に防止される。また、硬度が低く柔軟であってもシール性が良好であり、カートリッジ本体の枠体等の当接面に介装させ、適度に圧縮させるのみでトナーの漏出を十分に防止することができる。そのため、トナーカートリッジ本体の枠体等の部材の構造を簡易なものとすることができ、所要樹脂量を低減させることもできる。従って、コストを抑えるという観点でも有利である。
このトナーシール材となるトナーシール用フォームは、セル数が40〜60個/25mm、特に40〜55個/25mmであり、且つJIS K 7222により測定した密度が17〜27kg/m、特に20〜25kg/m、JIS K 6400により測定した硬度が65〜135N、特に70〜130N、JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が0.2〜2.2cm/cm/秒、特に0.2〜2.0cm/cm/秒、及びJIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が2.0〜10.0%、特に3.0〜9.0%であることが好ましい。このようなトナーシール用フォームであれば、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材とすることができる。また、このトナーシール材は、UL−94 HF−1により測定した燃焼試験に合格することが好ましく、UL−94 HF−2により測定した燃焼試験に合格する必要がある。
本発明のトナーシール材は、例えば、画像形成装置の1種であるプリンタ1(図1参照)に組み込まれたトナーカートリッジ本体2の内部に充填されたトナー21が外部に漏出しないように、トナーカートリッジ本体2の枠体間等に介装されて用いられる。このプリンタ1による印刷は、トナー21を現像シリンダ3を経由して感光ドラム4に付着させ、感光ドラム4に付着したトナーを転写ローラ5により用紙に付着させることによってなされる。この場合、特に長期間用いることによりトナーカートリッジ本体2の枠体間等からトナーが漏出することがあるが、枠体間等に本発明のトナーシール材を介装させることにより、トナーの漏出が十分に防止される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1〜6及び比較例1〜8
[1]使用原料
(1)ポリオール
(A)ポリオール(a):ヒドロキシル末端プレポリマー[三洋化成社製、商品名「FA−136」(粘度;20000mPa・s、数平均分子量;12000、OH価;33)]
(B)ポリオール(b):ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「FA−103」(EO単位含有量;80質量%、粘度;720mPa・s、数平均分子量;3400、官能基数;3、OH価;60)]
(C)ポリオール(a)、(b)を除く他のポリオール(c):ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「GP−3050NS」(EO単位含有量;8質量%、粘度;500mPa・s、数平均分子量;3000、官能基数;3、OH価;56.1)]
(2)発泡剤:水(イオン交換水)
(3)触媒:アミン系触媒(花王社製、商品名「カオライザー No.81」)
(5)整泡剤:シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、商品名「SZ−1919」)
(6)難燃剤
(A)リン系液状難燃剤:縮合リン酸エステル系難燃剤[大八化学社製、商品名「D−880」(リン含有量;15質量%)]
(B)粉状難燃剤(a):メラミン(三井化学社製、商品名「メラミン」)
(C)粉状難燃剤(b):膨張黒鉛(三洋貿易社製、商品名「SYZR 502FP」)
(7)ポリイソシアネート:TDI[住友バイエルウレタン社製、商品名「テスモジュール T−80」(2,4−異性体比;80%)]
[2]トナーシール用フォームの製造
表1(実施例1〜6)及び表2(比較例1〜8)に記載の配合により、先ず、ポリイソシアネートを除くそれぞれの成分を所定の量比でハンドミキサーを用いて攪拌した。その後、所定のイソシアネート指数に従ってポリイソシアネートを配合し、この混合物を発泡箱に投入して発泡、硬化させ、トナーシール用フォームを製造した。
[3]特性評価
上記[2]で製造したトナーシール用フォームのセル数を下記の方法により測定した。また、リンの含有量を前記の方法により測定した。更に、密度、硬度、通気量及び圧縮永久歪を下記の方法により測定し、難燃性を下記の方法により評価した。結果を表1、2に併記する。
(a)セル数;マイクロスコープ(キーエンス社製、型式「VH−50」)により、長さ25mm当たりのセル数(個/25mm)を測定した。数値が大きいほど、セル径が小さく、セルが微細であり、シール性が良好である。
(b)密度;JIS K 7222により測定した。
(c)硬度;JIS K 6400により測定した。
(d)通気量;JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した。数値が小さいほど、通気性が低く、シール性が良好である。
(e)圧縮永久歪;JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した。数値が小さいほど、湿熱下等の環境で長期間用いたときのへたりが少なく、十分なシール性が維持される。
(f)難燃性;UL−94 HF−1の燃焼試験により測定し、評価した。
尚、表1、2における「6mm」は、厚さ2.0〜6.0mmの試験片を用いて測定したときに合格したという意味である。
Figure 0005331037
Figure 0005331037
表1によれば、粘度が高いヒドロキシル末端プレポリマー及びEO単位の含有量が多いポリオールを使用し、且つ縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を用いた実施例1〜7のトナーシール用フォームでは、セルが微細であって、通気量が1.89cm/cm/秒以下であり、且つ密度及び硬度が低く、圧縮永久歪が小さく、優れたシール性を有するとともに、この優れたシール性が経時後も維持されることが推察される。また、燃焼試験では全てが合格である。
一方、表2によれば、ポリオール(a)が含有されていない比較例1では、セル数が少なく(セル径が大きく)、通気量が極めて多く、ポリオール(a)が下限値未満である比較例2でも、セル数がやや少なく、通気量が多く、いずれも圧縮永久歪が大きい。また、リンが過少である比較例3では、燃焼試験に不合格であり、リンが過多である比較例4では、燃焼試験には合格するものの、圧縮永久歪がかなり大きくなる。更に、粉状難燃剤を用いた比較例5、6では、密度が高く、硬くなるとともに、圧縮永久歪がかなり大きくなり、問題である。また、EO単位の含有量が多いポリオールが含有されていない比較例7では、泡体がシュリンクしてしまい、フォームが生成せず、EO単位の含有量が多いポリオールが過多である比較例8では、通気量が多くなるとともに、圧縮永久歪がかなり大きく、問題である。
本発明は、電子写真画像形成装置、例えば、各種プリンタ、ファクシミリ、複写機等に装着されるプロセスカートリッジなどに用いられるトナーシール材の分野において有用である。
1;プリンタ、2;トナーカートリッジ本体、21;トナー、3;現像シリンダ、4;感光ドラム、5;転写ローラ。

Claims (8)

  1. ポリオール、ポリイソシアネート及びリン系液状難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなるトナーシール用軟質ポリウレタンフォームであって、
    上記ポリオールは、25℃における粘度が15000〜30000mPa・sであるポリオール(a)と、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(b)とを含有し、
    上記ポリオールを100質量%とした場合に、上記ポリオール(a)の含有量は50〜98質量%であり、上記ポリオール(b)の含有量は2〜23質量%であって、
    エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.3〜2.1質量%であることを特徴とするトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  2. 上記リン系液状難燃剤が縮合リン酸エステル系難燃剤である請求項1に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  3. JIS K 7222により測定した密度が17〜27 kg/mである請求項1又は2に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  4. JIS K 6400により測定した硬さが65〜135Nである請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  5. JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が0.2〜2.2cm/cm/秒である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  6. JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が2.0〜10.0%である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  7. 上記縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である請求項2乃至6のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
  8. 請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなることを特徴とするトナーシール材。
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